JP6729171B2 - 光ファイバ用線引炉のシール構造、光ファイバの製造方法 - Google Patents

光ファイバ用線引炉のシール構造、光ファイバの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光ファイバ用線引炉のシール構造、光ファイバの製造方法に関し、詳細には、光ファイバ用線引炉の上端開口部と上端開口部から挿入される光ファイバ用ガラス母材との間の隙間を塞ぐための光ファイバ用線引炉のシール構造、光ファイバの製造方法に関する。
光ファイバは、石英を主成分とする光ファイバ用ガラス母材(以下、ガラス母材という)を光ファイバ用線引炉(以下、線引炉という)の上端開口部から炉心管内に挿入し、ガラス母材の先端が加熱溶融して細径化されることにより、線引炉の下方から線引きされる。このときの線引炉内の温度は、約2000℃と非常に高温となるので、線引炉内の部品には、耐熱性に優れたカーボンが用いられている。
この場合、線引炉内を陽圧にし、外気(酸素)が線引炉内に入り込むことを防いでいるが、線引炉の上端開口部とガラス母材との隙間でうまく気密が取れていないと(シールされていないと)、外気を線引炉内に巻き込んで線引炉の寿命に影響を与える。例えば、特許文献1,2には、線引炉の上端開口部とガラス母材との隙間を塞ぐためのシール構造の技術が開示されている。
特開2012−106915号公報 特開2014−152083号公報
ところで、特許文献2のように、筐体の内部空間にガスを供給したり、この内部空間からガスを排出する場合、この内部空間の圧力変動が線引炉内の圧力変動を招くことがあり、その場合、光ファイバの品質に影響を与える。また、この内部空間に供給されたガスが線引炉内で使用するガス(炉内ガスともいう)とは異なる種類の場合、この内部空間に供給されたガスが線引炉内に入り込むと、線引炉内のガス流れが乱れるため、やはり光ファイバの品質に影響を与える場合がある。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、ガスでブレード部材を動作させる場合に、線引炉内のガス流れの乱れや圧力変動を抑制できる光ファイバ用線引炉のシール構造、光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る光ファイバ用線引炉のシール構造は、光ファイバ用線引炉の上端開口部と該上端開口部から挿入される光ファイバ用ガラス母材との間の隙間を塞ぐための光ファイバ用線引炉のシール構造であって、前記光ファイバ用ガラス母材の周方向側面に当接するように設けたブレード部材と、該ブレード部材を収容し、該ブレード部材を移動自在に支持するガイド部材と、前記ブレード部材を前記光ファイバ用ガラス母材の径方向に移動させる押引作用機構と、を備え、前記上端開口部に連通する炉内圧力空間と、前記ガイド部材の内部空間に設けられ、前記押引作用機構に用いるガスを溜める作動圧力付与空間と、前記炉内圧力空間と前記作動圧力付与空間との間に設けられ、各々の空間及び炉外と連通する圧力緩和空間と、を有し、前記圧力緩和空間の圧力は、大気圧以下の圧力である。
上記によれば、線引炉内のガス流れの乱れや圧力変動を抑制することができる。
本発明の一実施形態による光ファイバ用線引炉の概略を説明する図である。 シール構造の一例を示す図である。 図2のブレード部材およびガイド部材を説明する図である。 図2のIV−IV矢視断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明の一態様に係る光ファイバ用線引炉のシール構造は、(1)光ファイバ用線引炉の上端開口部と該上端開口部から挿入される光ファイバ用ガラス母材との間の隙間を塞ぐための光ファイバ用線引炉のシール構造であって、前記光ファイバ用ガラス母材の周方向側面に当接するように設けたブレード部材と、該ブレード部材を収容し、該ブレード部材を移動自在に支持するガイド部材と、前記ブレード部材を前記光ファイバ用ガラス母材の径方向に移動させる押引作用機構と、を備え、前記上端開口部に連通する炉内圧力空間と、前記ガイド部材の内部空間に設けられ、前記押引作用機構に用いるガスを溜める作動圧力付与空間と、前記炉内圧力空間と前記作動圧力付与空間との間に設けられ、各々の空間及び炉外と連通する圧力緩和空間と、有し、前記圧力緩和空間の圧力は、大気圧以下の圧力である。上端開口部に連通する炉内圧力空間と作動圧力付与空間との間に圧力緩和空間を設けたので、作動圧力付与空間が炉内圧力空間に対し陽圧や陰圧に変化しても、圧力緩和空間が緩衝領域となり、炉内圧力空間の圧力に影響しない。よって、ガスでブレード部材を動作させる場合でも、線引炉内の圧力変動を抑えることができる。
前記炉内圧力空間の圧力をP1、前記圧力緩和空間の圧力をP2としたとき、P1>P2に設定される。上端開口部に連通する炉内圧力空間と作動圧力付与空間との間に圧力緩和空間を設け、圧力緩和空間の圧力を炉内圧力空間の圧力より低くしたので、光ファイバを線引きする際に作動圧力付与空間に供給されたガスは、炉内圧力空間には到達しにくく、圧力緩和空間から炉外に排出される。また、作動圧力付与空間が炉内圧力空間に対し陽圧や陰圧に変化しても、圧力緩和空間が緩衝領域となるので、炉内圧力空間の圧力に影響しない。よって、ガスでブレード部材を動作させる場合でも、線引炉内のガス流れの乱れや圧力変動を抑えることができる。
(3)前記押引作用機構は、前記ガイド部材の内部空間へのガスの供給と該内部空間からのガスの排出とによって、前記ブレード部材を前記光ファイバ用ガラス母材の径方向に移動させる。これにより、ガスを用いて、ブレード部材がガラス母材の径方向に容易に移動できる。
(4)前記ガイド部材の内部空間に供給されるガスは、少なくとも水分あるいは酸素を0.1%以上含むガスである。ブレード部材やガイド部材として、カーボンや金属、石英ガラスを用いた場合、その周囲を水分や酸素を含む雰囲気とすることにより、摩擦係数の増加を抑えてガイド部材に対するブレード部材の摺動性を良好に維持することができる。
(5)上記の光ファイバ用線引炉のシール構造を用いて光ファイバを線引きする、光ファイバの製造方法である。上述のシール構造を用いているため、ガスでブレード部材を動作させる場合、線引炉内の圧力変動を抑えることができ、光ファイバのガラス径変動や断線が発生し難くなる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照しながら、本発明による光ファイバ用線引炉のシール構造、光ファイバの製造方法の好適な実施の形態について説明する。なお、以下ではヒータにより炉心管を加熱する抵抗炉を例に説明するが、コイルに高周波電源を印加し、炉心管を誘導加熱する誘導炉にも、本発明は適用可能である。また、ガラス母材の吊り下げ機構や、断熱材の構成なども、下記で説明するのは一例であり、これに限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態による光ファイバ用線引炉の概略を説明する図である。線引炉1は、炉筐体2と、炉心管3と、加熱源(ヒータ)4と、シール構造10とを備えている。炉筐体2は、上端開口部2aと下端開口部2bを有し、例えば、ステンレス鋼製で形成されている。炉心管3は、炉筐体2の中央部に円筒状で形成され、上端開口部2aと連通している。炉心管3はカーボン製であり、この炉心管3内には、ガラス母材5が上端開口部2aからシール構造10でシールされた状態で挿入される。
炉筐体2内には、ヒータ4が炉心管3を囲むように配置され、断熱材7がヒータ4の外側を覆うように収納されている。ヒータ4は、炉心管3の内部に挿入されたガラス母材5を加熱溶融し、その下端部5aから溶融縮径された光ファイバ5bを垂下させる。ガラス母材5は、別途設けた移動機構により線引方向(下側方向)に移動可能であり、ガラス母材5の上側には、ガラス母材5を吊り下げて支持するための支持棒6が連結されている。また、線引炉1には不活性ガス等による炉内ガスの供給機構(図示省略)が設けられ、炉心管3内やヒータ4の周りに、酸化や劣化防止のための不活性ガス等を供給可能である。
なお、図1では、炉心管3の内壁の上端部がそのまま上端開口部2aを形成している例を挙げているが、これに限ったものではない。例えば、炉心管3の内径dよりさらに狭い上端開口部となる上蓋を炉心管3の上側に設けてもよく、この場合にシール対象となる隙間は、この狭い上端開口部とガラス母材5との間に生じる隙間となる。また、ガラス母材5の断面形状は、基本的に真円を目指して生成されたものとするが、その精度を問わず一部で非円が存在してもよく、また楕円形などであってもよい。また、上端開口部2aの断面は円形としておけばよいが、この精度は問わない。
本発明の一実施形態は、線引炉1の上端開口部2aと上端開口部2aから挿入されたガラス母材5の外周との間の隙間Sを塞ぐためのシール構造10を対象とするものであり、特に、上端開口部2aに設けたシール構造10によって炉外の外気を巻き込まないようにしながら、線引炉内のガラス母材5をヒータ4により加熱している。
以下、図2〜図4を参照してシール構造の一例を説明する。図2はシール構造の一例を示す図、図3は図2のブレード部材およびガイド部材を説明する図であり、図4は図2のIV−IV矢視断面図である。
シール構造10は、耐熱性を持った複数のブレード部材14,15と、これらブレード部材14,15を収容し、ブレード部材14,15を直線的にスライド移動させるためのガイド部材17と、ガイド部材17を収容する筐体11と、ブレード部材14,15を、圧力差を利用して内方に押し付けたり、外方に引っ張ったりする作用を有した機構(以下、押引作用機構という)とを備えている。
図2に示すように、筐体11は、同心の貫通孔を有した円盤状の部材であり、図2の一部を拡大した図3(A)に示すように、ブレード部材15を挿通させるための開口11bや、図3(A)よりも奥の断面図である図3(B)に示すように、ブレード部材14を挿通させるための開口11aが、筐体11の内周面上に、例えば互い違いに設けられている。なお、開口11a,11bは、小さいほど炉内のガスは漏れにくく、好ましい。また、筐体11は、例えばステンレス鋼製で形成され、ブレード部材14,15を例えば400℃以下(カーボン製のブレード部材の場合には300℃以下にすることが好ましい)となるように冷却する機構(例えば水冷方式)を有することもできる。
ブレード部材14,15は、筐体11の中心軸に対して、それぞれ放射状に延びて筐体11内に設置され、ブレード部材14は筐体11の内周面に沿って等間隔で複数設けられ、ブレード部材15も筐体11の内周面に沿って等間隔で複数設けられている。ブレード部材14,15は、例えば、移動方向に垂直な面での断面形状が略長方形となる略直方体形状であり、上下2段で互い違いに配されている。
また、図3に示すように、ブレード部材14,15は、筐体11から突出してガラス母材の側面に当接可能な先端部14a,15a、筐体11内でガイド部材17に接触して摺動する側面4面の外周面部14b,15b、後述の作動圧力付与空間40に配される後端部14c,15cで構成されている。
先端部14a,15aは、ガラス母材の側面に当接した際に、ガラス母材との隙間を可能な限り小さくする必要がある。このため、先端部14a,15aの先端は、ガラス母材の半径として想定される最大値(使用されるガラス母材の最大径)に合うような曲率を持つ円弧形状にしておくことが好ましい。
先端部14a,15aがガラス母材の側面に当接した際に、先端部14aと先端部15aとの間は、上下方向に隙間が生じないようにし、さらに、隣接する先端部14aで生じる隙間を先端部15aで埋めて、隣接する先端部15aで生じる隙間を先端部14aで埋めている。これにより、図1の隙間Sを塞ぎ、外気を炉内に巻き込まないようにシールすることができる。
ブレード部材14,15の材料はカーボンであることが好ましい。カーボンは、耐熱性に優れるだけでなく、やわらかい素材であるためガラス母材を傷付ける心配もない。特に、本例のブレード部材14,15には、ショア硬度100以下の軟質のカーボンを採用することが好ましい。また、カーボンは、プレス成型や削り出しなどにより容易に成型することができる点でも好ましい。
また、ブレード部材14,15の材料としては、カーボンの他に、例えば、石英ガラス、SiCコートカーボンなどを採用することもできる。他の硬質の材料を用いた場合でも、例えば、先端部分のみだけでも軟質のカーボンを使用することで、ガラス母材を傷付けないようにすることは可能である。
なお、上述したブレード部材14,15の幅や枚数は、使用するガラス母材の外径や外径変動量や曲がり量などに応じて、適宜選べばよい。
ガイド部材17は、例えばブレード部材14,15の外周面部14b,15bを挿通させる筒状に形成され、例えば筐体11の底面に設置されている。詳しくは、ガイド部材17は、図3(B)に示すように、作動圧力付与空間40を区画する摺動面17cを4面有し、この摺動面17cがブレード部材14の外周面部14bに周囲から当接可能に構成されている。また、図3(A)に示すように、摺動面17cよりも低い位置の作動圧力付与空間40を区画する摺動面17bも4面有し、この摺動面17bがブレード部材15の外周面部15bに周囲から当接可能に構成されている。
ガイド部材17の材料もカーボンであることが好ましいが、窒化ボロン(BN)や、金属の場合にはステンレス、二硫化モリブテン(MoS2)などの金属を採用することもできる。あるいは、酸化膜を有した金属、フッ素コートや金メッキ、窒化クロムコート、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コートなどの各種コーティングを施した金属、若しくは石英ガラスなどを採用してもよい。なお、ガイド部材17も、筐体と同様に、カーボン製のブレード部材の酸化劣化などを防止するための冷却する機構(例えば水冷方式)を有してもよい。
図3に示すように、筐体11には、ガイド部材17内の作動圧力付与空間40と筐体11の外部とを接続し、外部から空気を導入する給排ポート12a,12bが設けられ、図2に示したガス供給部21からのガスを作動圧力付与空間40に溜めることができる。また、作動圧力付与空間40に溜まったガスは、給排ポート12a,12bを介して図2に示したガス排出部22から排出する(吸い出す)ことも可能である。ガス供給部21やガス排出部22はコントローラ20に電気的に接続されていることが好ましい。なお、コントローラ20、ガス供給部21やガス排出部22が本発明の押引作用機構に相当する。
なお、上記押引作用機構は、複数のブレード部材14,15を個別にガラス母材の径方向(より正確には筐体11の径方向)に押圧でき、ブレード部材14,15の先端部14a,15aをガラス母材の側面に当接させる。この押圧力はガラス母材の下降を阻害しない程度に弱いものである。
ところで、図2に示すように、ガラス母材5の径方向外側であって、筐体11の内周面の径方向内側のうち、ブレード部材14,15の下側には、ブレード部材14,15がガラス母材5の側面に当接した際、図1で説明した上端開口部2aに連通する炉内圧力空間30が設けられる。炉内圧力空間30の圧力P1は、線引炉内の圧力とほぼ等しくなるため、大気圧よりも高い状態を維持する必要がある。
一方、この炉内圧力空間30とガイド部材17内の作動圧力付与空間40との間には、圧力緩和空間50が設けられている。
具体的には、圧力緩和空間50は、例えば筐体11内であってガイド部材17外に設けられており、図3で説明した筐体11の開口11a,11bとブレード部材14,15との隙間を介して炉内圧力空間30に連通すると共に、ガイド部材17の摺動面17b,17cとブレード部材14,15との隙間を介して作動圧力付与空間40に連通している。
ガイド部材17には、図3(B)、図4に示すように、例えばブレード部材14の下方でガイド部材17を略水平方向に貫通した連通路17aが設けられている。さらに、筐体11には、図3(B)に示すように、連通路17aと筐体11の外部(大気圧雰囲気)とを接続する開口部13が設けられている。このため、圧力緩和空間50の圧力P2は略大気圧に設定することができる。
なお、この開口部13にもガス排出部を設置し、圧力緩和空間に溜まったガスを筐体外に排出(吸い出す)することも可能であり、P2を略大気圧以下に設定することもできる。
また、ガイド部材17がブレード部材15の下方にも連通路を有し、筐体がこの連通路と筐体外とを接続する開口部を有してもよい。
作業者からの指示などに基づき、図2で説明したコントローラ20がガス供給部21に駆動信号を出力すると、ガスが図3(A)で説明した給排ポート12aや図3(B)で説明した給排ポート12bを介して各作動圧力付与空間40に供給される。作動圧力付与空間40は、加圧されて炉内圧力空間に対し陽圧の雰囲気(圧力P3:例えば+1000Pa〜+5000Pa>炉内圧力空間30の圧力P1)となり、作動圧力付与空間40と炉内圧力空間30との圧力差でブレード部材14,15をガラス母材の側面に近づくように移動させ、ブレード部材14,15をガラス母材の側面に当接させる。
線引きの進行によりガラス母材5が図2に矢印で示すように下降し、ガラス母材5の外径が、例えば、φ1からφ2(>φ1)まで増加した場合、ブレード部材14,15はガラス母材5の側面に当接し続ける。逆にガラス母材5の外径が減少した場合にも、作動圧力付与空間40のガスの押圧力により、ブレード部材14,15はガラス母材5の側面に当接する。
この場合、圧力緩和空間50の圧力P2は、炉内圧力空間30の圧力P1よりも低い略大気圧以下に設定されているので、作動圧力付与空間40に供給されたガスは、圧力緩和空間50には到達しても、圧力緩和空間50よりも高圧の炉内圧力空間30には到達しない。よって、ガスでブレード部材を動作させても、そのガスが線引炉内に流れることを抑制できるので、線引炉内のガス流れが安定する。
これに対し、コントローラ20がガス排出部22に駆動信号を出力すると、各作動圧力付与空間40に溜まっていたガスが図3(A)で説明した給排ポート12aや図3(B)で説明した給排ポート12bを介して筐体11外に排出される。作動圧力付与空間40は、減圧されて炉内圧力空間に対し陰圧の雰囲気(圧力P4:例えば−1000Pa〜−5000Pa<炉内圧力空間30の圧力P1)となり、作動圧力付与空間40と炉内圧力空間30との圧力差でブレード部材14,15をガラス母材の側面から離れるように移動させ、ブレード部材14,15をガラス母材の側面から離す。
この場合も、圧力緩和空間50の圧力P2が略大気圧以下に設定されているので、作動圧力付与空間40が上記の陽圧から陰圧に変化しても、圧力緩和空間50で均されて炉内圧力空間30の圧力P1に影響しにくい。よって、ガスでブレード部材を動作させても、線引炉内の圧力変動が生じるのを抑制することができる。
ここで、上記ガス供給部21から作動圧力付与空間40に供給されるガスは、線引炉内に流れ込むことを抑制できるので、少なくとも水分あるいは酸素を0.1%以上含むガス(例えば空気)を使用することもできる。水分や酸素を含むガスを使用することで、ガイド部材17内におけるブレード部材14,15とガイド部材17との摺動面は、少なくとも水分あるいは酸素を含む雰囲気の空間に配置される。このようにすると、ブレード部材やガイド部材にカーボンを使用している場合、カーボンが水分子または酸素分子と結合し、カーボン同士で結合することは無いため、カーボンの自己潤滑性を維持することができ、ガイド部材に対するブレード部材の摺動性を良好に維持することができる。
また、金属をガイド部材に用いた場合、不活性ガス雰囲気では酸化膜が除去されるため、摺動性が悪化するが、摺動面を、酸素を含む雰囲気にすれば、酸化膜が除去されるのを抑制できるので、ブレード部材の摺動性を良好に維持することができる。
また、例えば、石英ガラスのブレード部材、またはガイド部材を使用した場合、作動圧力付与空間40内を、水分を含む雰囲気(乾燥していない雰囲気)にすれば、摺動面には洗浄研磨された乾燥状態で大きくなる摩擦が生じにくいので、ブレード部材の摺動性を良好に維持することができる。
そして、上述のシール構造を用いた光ファイバの製造方法によれば、ガスでブレード部材を動作させる場合、線引炉内の圧力変動を抑えることができ、光ファイバのガラス径変動や断線が発生し難くなる。
なお、上記の構成により、ガス供給部21から作動圧力付与空間40に供給されたガスは線引炉内に到達し難くなることから、当該ガスは、上記したような、水分あるいは酸素を0.1%以上含むガス(例えば空気)を用いてもよく、炉内ガス(例えばアルゴンガス)と異なるガス(例えばアルゴンガスとは異種の不活性ガス)を用いてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1…光ファイバ用線引炉、2…炉筐体、2a…上端開口部、2b…下端開口部、3…炉心管、4…ヒータ、5…光ファイバ用ガラス母材、5a…下端部、5b…光ファイバ、6…支持棒、7…断熱材、10…シール構造、11…筐体、11a,11b…開口、12a,12b…給排ポート、13…開口部、14,15…ブレード部材、14a,15a…先端部、14b,15b…外周面部、14c,15c…後端部、17…ガイド部材、17a…連通路、17b,17c…摺動面、20…コントローラ、21…ガス供給部、22…ガス排出部、30…炉内圧力空間、40…作動圧力付与空間、50…圧力緩和空間。

Claims (5)

  1. 光ファイバ用線引炉の上端開口部と該上端開口部から挿入される光ファイバ用ガラス母材との間の隙間を塞ぐための光ファイバ用線引炉のシール構造であって、
    前記光ファイバ用ガラス母材の周方向側面に当接するように設けたブレード部材と、該ブレード部材を収容し、該ブレード部材を移動自在に支持するガイド部材と、前記ブレード部材を前記光ファイバ用ガラス母材の径方向に移動させる押引作用機構と、を備え、
    前記上端開口部に連通する炉内圧力空間と、前記ガイド部材の内部空間に設けられ、前記押引作用機構に用いるガスを溜める作動圧力付与空間と、前記炉内圧力空間と前記作動圧力付与空間との間に設けられ、各々の空間及び炉外と連通する圧力緩和空間と、を有し、
    前記圧力緩和空間の圧力は、大気圧以下の圧力である、光ファイバ用線引炉のシール構造。
  2. 前記炉内圧力空間の圧力をP1、前記圧力緩和空間の圧力をP2としたとき、P1>P2に設定される、請求項1に記載の光ファイバ用線引炉のシール構造。
  3. 前記押引作用機構は、前記ガイド部材の内部空間へのガスの供給と該内部空間からのガスの排出とによって、前記ブレード部材を前記光ファイバ用ガラス母材の径方向に移動させる、請求項1または2に記載の光ファイバ用線引炉のシール構造。
  4. 前記ガイド部材の内部空間に供給されるガスは、少なくとも水分あるいは酸素を0.1%以上含むガスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバ用線引炉のシール構造。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバ用線引炉のシール構造を用いて光ファイバを線引きする、光ファイバの製造方法。
JP2016162733A 2016-08-23 2016-08-23 光ファイバ用線引炉のシール構造、光ファイバの製造方法 Active JP6729171B2 (ja)

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