JP6110055B2 - 視野角向上フィルム、液晶表示装置及び視野角改善方法 - Google Patents

視野角向上フィルム、液晶表示装置及び視野角改善方法 Download PDF

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Description

本発明は、見る角度による色調変化を抑制した視野角改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた、液晶表示装置の液晶セルの出射光側あるいは入光側に設置される視野角向上フィルム及び該視野角向上フィルムを用いた視野角改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた液晶表示装置に関する。また、本発明は、特定の光学特性を有した視野角向上フィルムを液晶表示装置の液晶セルの出射光側あるいは入光側に設置するという簡便な方法で視野角が狭いという液晶表示装置が抱える課題を解決して液晶表示装置の視野角を改善する方法に関する。
液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてフラットパネルディスプレイとして多用され、その用途は携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして年々拡大している。
しかしながら、液晶表示装置は、CRTに比べて視野角が狭いという問題がある。
視野角とは、液晶表示装置の画面を観察する角度を変化させた場合、例えば、画面の垂線に対する角度を大きくして行く、すなわちより斜めの方向になるに従い正面より観察した場合よりも画面の画像の画質が低下する現象を指している。該画質としては、カラー画像の色合い、画像のコントラスト、白表示画像の輝度及び黒表示画像の光の漏れによる白ボケ等の現象が挙げられる。該画質の低下の中で、カラー画像の色合いの変化は特に重要である。
上記色調変化は、例えば、白色の画像を、角度を変えて観察した場合に、正面観察では白色に見えた画像が斜めから観察すると黄色味を帯びた色調に変化する現象の色調変化の度合いで判定される。以下、該色調変化の度合いをカラーシフト度と、また、該カラーシフトを抑制する効果を視野角改善効果と称する。
上記の視野角改善効果を発現する方法として、液晶表示装置の液晶セルの視認側に光拡散フィルムを設置する方法が知られている。該方法は液晶層内部の液晶配向や電極構造等の変更なしで改善効果が出せるので、液晶表示装置の製造工程においては工程の増加等がなく簡便ではあり有用である。しかし、画面より出光する光が拡散フィルムを通過することにより透過する光が散乱されるために正面から見た場合の画面の明るさ、すなわち輝度が低下して画像が黒っぽくなるという課題を有する。以下、これを正面輝度低下と称する。即ち、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制は二律背反事象となり両立が困難である。そのために、正面輝度低下をできるだけ小さくした形で大きな視野角改善効果が発現できる視野角向上フィルムが嘱望されている。
例えば、特許文献1において、入射光を散乱透過させる機能を有する光拡散性フィルムを液晶表示画面上に設けることが提案されている。このフィルムは、屈折率の異なる透明樹脂を海島構造とした組成物を溶融押出してシート状にし、さらに延伸することによって得られるが、特許文献1の図3及び4に示されているフィルムの拡散透過光の強度分布(以下、変角配光分布パターンとも称する)から、以下の点が示唆されている。
図3のフィルム方向は拡散度が高いので視野角改善効果は優れているが、正面輝度低下が大きくなる。一方、図4のフィルム方向は、拡散度が低いので、正面輝度の低下は抑制されるが、視野角改善効果が劣る。このような光の拡散性がフィルム方向で異なる、いわゆる異方性拡散フィルムの場合は、後述のごとく正面輝度低下は拡散度の大きい方の支配を受けるので本開示技術においては、正面輝度低下は大きいことが示唆される。
即ち、光拡散性フィルムの異方性方向をどちらの方向に向けて設置、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制の両立ができていないことが示唆されている。
また、特許文献2では、波長により異なる散乱角度分布を有し、かつフィルム面に対し方位角が90度異なる2方向で拡散光分布が異なる分光異方性散乱フィルムが提案されている。このフィルムは、特許文献2の図3(a)及び(b)に示されているフィルムの変角配光分布パターンから、左右及び上下のどちら側についても特許文献1と同様に拡散度が高いので視野角改善効果は優れているが、正面輝度低下が大きく視野角改善効果と正面輝度低下の抑制の両立ができていないことが示唆されている。
さらに、特許文献3では、単一の熱可塑性樹脂からなり、内部に微細な多数の空孔を含有する部分を有する透過光散乱制御フィルムが提案されている。このフィルムは、溶融製膜したポリカーボネートを延伸処理し、溝状の亀裂による光の散乱を利用したものであるが、特許文献3の図13のフィルムの変角配光分布パターンから、α=±90°方位及びα=0、180度方位のいずれもが、拡散度が不足しており、正面輝度低下は少なく良好であるが、視野角向上効果が十分でないことが示唆されている。
さらに、特許文献4では、レンズフィルムを用いた方法が提案されている。特許文献4の図8(左右方向)及び9(上下方向)に示されているフィルムの変角配光分布パターンから、図8のフィルムの左右方向については、拡散度が高いので、視野角向上は良好であるが正面輝度低下が大きく、一方、図7のフィルムの上下方向については、逆に拡散度が低いので、視野角改善効果が十分でないことが示唆されている。上記のごとくこのように異方性のある拡散フィルムを用いた場合は、正面輝度低下は拡散度の大きい方の支配を受けるので本開示技術においては、フィルムの使用方向に関係なく、正面輝度低下は大きいことが示唆される。
さらに、特許文献5では、基材フィルムの表面に透光性粒子と透光性樹脂からなる光拡散層が形成されてなる透過光散乱制御フィルムが提案されている。特許文献5の図2に示されているフィルムの変角配光分布パターンから、拡散度が不足しており、正面輝度低下は少なく良好であるが、視野角向上効果が十分でないことが示唆されている。
上記のように、従来の光拡散フィルムにより視野角向上を図る方法においては、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制のいずれか一方の特性を満足したものはあるが、両特性をともに高度なレベルで両立できたものは未だ存在しないのが現状である。
特開平7−114013号公報 特開2004−341309号公報 特開平10−206836号公報 特開平09−179113号公報 特開2003−270409号公報
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、液晶表示装置の液晶セルの出射光側あるいは入光側に設置することで、その画像の色調変化を抑制する視野角改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させることのできる視野角向上フィルム及び該視野角向上フィルムを用いた液晶表示装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、視野角が狭いという液晶表示装置が抱える課題を解決する液晶表示装置の視野角向上特性改善方法を提供することにある。
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、少なくとも二種の樹脂混合物を溶融成形することにより得られた光拡散フィルムの光学特性を特定の範囲に制御することにより、二律背反事象である視野角改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立できることを見出した。また、本発明者は、特定の光学特性を有する視野角向上フィルムを液晶表示装置の液晶セルの出射光側あるいは入光側に設置するという簡便な方法で視野角が狭いという液晶表示装置が抱える課題を解決できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(23)の構成を有する。
(1)液晶表示装置の液晶セルより観測者側に設置され、かつ少なくとも二種の互いに非相溶性の樹脂からなる混合物を溶融押し出し成型してなる視野角向上フィルムであって、主拡散方向の波長440nmの光の出射角0度における透過度(I)に対する出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I×100)が0.33〜5.5%であること、及び波長440nmの光の主拡散方向の変角配光分布パターンの半値幅が18度以下であることを特徴とする視野角向上フィルム。
(2)主拡散方向の波長440nmの光の出射角0度における透過度(I)に対する出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I×100)が0.33〜3.71%であることを特徴とする(1)に記載の視野角向上フィルム。
(3)波長550nmの光の全光線透過率が79〜95%であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の視野角向上フィルム。
)非相溶性の樹脂の少なくとも一種がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の視野角向上フィルム。
)非相溶性の樹脂の二種がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする()に記載の視野角向上フィルム。
)ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれることを特徴とする()に記載の視野角向上フィルム。
)視野角向上フィルムの少なくとも片面の最表面に極性基を含有したポリオレフィン樹脂よりなる接着改良層が積層されていることを特徴とする()又は()に記載の視野角向上フィルム。
)視野角向上フィルムの観察者側の表面に、ハードコート層、反射低減層および防眩層より選ばれた機能性層が少なくとも一層積層されていることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の視野角向上フィルム。
)(1)〜()のいずれかに記載の視野角向上フィルムを、液晶表示装置の液晶セルと光源との間に設置してなることを特徴とする液晶表示装置。
10)視野角向上フィルムの主拡散方向を、液晶表示装置の水平方向に設置してなることを特徴とする()に記載の液晶表示装置。
11)視野角向上フィルムの主拡散方向を、液晶表示装置の垂直方向に設置してなることを特徴とする()に記載の液晶表示装置。
12)バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの両面に設置された偏光子とを有する液晶表示装置において、液晶セルの両面に設置された偏光子のどちらか一方の表面に、(1)〜()のいずれかに記載の視野角向上フィルムを配置して用いることを特徴とする液晶表示装置の視野角特性改善方法。
13)視野角向上フィルムの主拡散方向が表示画面の水平方向であることを特徴とする(12)に記載の液晶表示装置の視野角特性改善方法。
14)視野角向上フィルムの主拡散方向が表示画面の垂直方向であることを特徴とする(12)に記載の液晶表示装置の視野角特性改善方法。
15)視認側に配置して用いられる視野角向上フィルムの視認側に、ハードコート層、反射低減層および防眩層より選ばれた機能性層が少なくとも一層積層されていることを特徴とする(12)〜(14)のいずれかに記載の液晶表示装置の視野角特性改善方法。
16)(12)〜(15)のいずれかに記載の視野角特性改善方法を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
17)偏光子に(1)〜()のいずれかに記載の視野角向上フィルムが積層されていることを特徴とする偏光板。
18)(17)に記載の偏光板の視野角向上フィルム表面に、ハードコート層、反射低減層および防眩層より選ばれた機能性層が少なくとも一層積層されていることを特徴とする偏光板。
19)(1)〜()のいずれかに記載の視野角向上フィルムの片面に自己粘着層が積層されていることを特徴とする視野角向上機能付保護フィルム。
20)自己粘着層が柔軟ポリマーよりなることを特徴とする(19)に記載の視野角向上機能付保護フィルム。
21)一方の面が自己粘着層よりなり、他方の面が感圧粘着層よりなる両面粘着フィルムの感圧粘着層表面に(1)〜()のいずれかに記載の視野角向上フィルムを積層していることを特徴とする(19)又は(20)に記載の視野角向上機能付保護フィルム。
22)視野角向上機能付保護フィルムの自己粘着層の反対面に、ハードコート層、反射低減層および防眩層より選ばれた機能性層が少なくとも一層積層されていることを特徴とする(19)〜(21)のいずれかに記載の視野角向上機能付保護フィルム。
23)(19)〜(22)のいずれかに記載の視野角向上機能付保護フィルムを液晶表示装置の最表面に着脱自在に貼り付けることを特徴とする視野角向上機能付保護フィルムの使用方法。
本発明の視野角向上フィルムは、直進透過性と拡散透過性の両方の特性を兼備した特徴ある変角配光分布パターンを有する。また、視野角向上フィルムを通過して出光される光の変角配光分布パターンが光の波長により変化するように制御されているので、液晶表示装置の液晶セルの出射光側あるいは入光側に設置することにより、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制という二律背反事象を高度なレベルで両立させることができ、視野角改善効果と正面輝度低下抑制とが両立した液晶表示装置を提供することができる。すなわち、正面輝度に大きく寄与するフィルム面より出光する光は550nmの波長の光の透過度が高く、かつ視野角改善効果に寄与するフィルム面の垂線よりの角度が高い方向に出光する光は青色に近い440nmの波長の光の透過度が高くなるように設計されていることで、視野角改善効果と正面輝度低下とを両立させることができる。
高拡散性の光拡散フィルムで視野角改善を図った場合の、観察角度による輝度変化の一例を示す図である。 本発明に用いられる視野角向上フィルムが具備すべき好ましい変角配光分布パターンの一例を示す図である。
(視野角向上フィルムの基本特性)
本発明の視野角向上フィルムは、少なくとも二種の互いに非相溶性の樹脂からなる混合物を溶融押し出し成型してなり、明細書中で記載した方法で測定される主拡散方向の波長440nmの光の出射角0度における透過度(I)に対する出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I×100)が0.25〜5.5%であることを特徴とする。
(半値幅拡散度)
本発明の視野角向上フィルムは、実施例において記載される方法で測定される波長440nmの光の主拡散方向の変角配光分布パターンの半値幅が18度以下であることが好ましい。
該半値幅が18度を超える場合は、本発明の視野角特性改善方法に用いた場合に液晶表示装置の正面輝度低下が増大し、本発明の所期の効果を得ることができない。
前記半値幅の好ましい上限は16度、更に好ましい上限は14度である。また、前記半値幅の下限は特に制限されないが、好ましくは3度であり、更に好ましくは4度である。
一般に拡散性は、半値幅(変角配光分布パターンのピークトップの半分の高さにおける角度)で評価され、半値幅が大きい程拡散性が強く、半値幅が小さければ拡散性は乏しいとされている。上記の半値幅は実施例において記載される方法で測定され、従来から広く用いられている拡散性の尺度である。以下、該測定値を半値幅拡散度と称することもある。しかしながら、半値幅拡散度を指標とするだけでは、後述する視野角改善効果及び正面輝度低下抑制を両立させるに適した変角配光分布パターンにおける拡散性を適確に示すことはできない。
前述のごとく、光拡散フィルムで視野角改善効果を発現できることは公知である。実際に図1に示すごとく、半値幅が57度である高拡散性フィルムを本発明方法で用いた場合は、斜め方向(高角度)から観察した時の輝度を向上させることができ、いわゆる視野角向上効果が発現できるが、同時に正面の輝度が大幅に低下する。従って、視野角改善効果と正面輝度低下とは、二律背反事象となる。
図1の輝度の角度依存性は、以下の方法で測定した。
〔輝度の角度依存性の測定方法〕
RISA−COLOR/ONE−II(ハイランド社製)を用いて測定を行った。市販のVA型液晶表示装置を試料台上に水平に設置し、このパネルの中央部に131×131mmの大きさで白の画像(Nokia monitor test for windows V 1.0(Nokia 社製)のFarbeモード)を表示し、その白画像の上にスポイトにて水を3滴落とし、さらにその上に光拡散フィルムを置き、パネルとフィルムの間の水を均一に広げて密着させ、CCDカメラとディスプレイ間の距離を垂直状態で1mとして、CCDカメラを液晶表示装置のパネル表面に対して−70°から+70°までの間の赤道上を移動させて以下の条件で輝度を測定し、輝度の角度依存性のプロファイルを求めた。
ブランク測定は視野角向上フィルムを貼り付けることなしに同様に測定を行った。
輝度は上記の白の画像を5×5の25個の部分に分割し、その中心部の3×3の9個の部分の全ピクセルの輝度を測定してその平均値で表示した。
従って、この視野角改善効果と正面輝度低下の抑制の二律背反事象を打ち破り、両特性を高度なレベルで両立させるには、半値幅拡散度は上記のごとくむしろ低い範囲に設定する必要がある。その上で視野角改善効果を発現できる拡散性を付与する必要がある。
(好ましい変角配光分布パターン)
本発明者等は、上記の一見矛盾する課題を解決する方法について鋭意検討をした結果、視野角改善効果と正面輝度抑制という二律背反特性の両立を図るには、高い直進透過性を有し、かつ適度な拡散性を付与する必要があること、すなわち、半値幅拡散度を上記範囲とし、かつても変角配光分布パターンの裾の広がりで評価される拡散性を高めることで発現でき、さらにかつ該拡散性が出射角30度の透過率で評価できることを見出した。
上記の光学特性を満たすのに好ましい変角配光分布パターンの一例を図2に示す。図2において示されるように、直進透過性と拡散透過性の両方の透過性を兼ね備えた特徴のある特性の変角配光分布パターンであることが好ましい。
本変角配光分布パターンは以下の方法で測定して得たものである。
〔変角配光分布パターンの測定方法〕
自動変角光度計(GP−200:株式会社村上色彩研究所製)を用いて測定を行った。透過測定モード、光線入射角:0°(試料面に対して上下、左右共に直角になる角度)、受光角度:−90°〜90°(赤道線面上の角度)、フィルター:ND10使用、光束絞り:10.5mm(VS−1 3.0)、受光絞り:9.1mm(VS−3 4.0)の条件で、主拡散方向が水平方向になるように試料台に固定し、透過光の変角光度曲線のピークトップの値がフルスケールに対して約80%の範囲になるようにSENSITIVITY及びHIGH VOLTONの設定を調整し、透過光の変角光度曲線を求めた。
(裾広がり拡散度)
本発明に用いられる視野角向上フィルムは、実施例において記載される方法で測定される主拡散方向の出射角度30度における波長440nmの光の透過度が0.7〜10であることが好ましく、0.8〜9がより好ましく、1.0〜8がさらに好ましい。上限はさらには7以下が好ましく、6以下が特に好ましく、5.5以下が最も好ましい。
該出射角度30度における波長440nmの相対透過度はフィルム面に直交する方向に光を入光させた時の出射光の変角配光分布パターンの裾の広がりに注目した拡散性の尺度であり、該値が大きい程、裾の広がり、即ち、出射光が0になるまでの角度が大きくなる。以下、本特性を裾広がり拡散度と称する。
該裾広がり拡散度が0.7未満では、拡散性が不足するために視野角改善効果が不足するので好ましくない。
一方、該裾広がり拡散度が10を越えた場合は、視野角改善効果が過剰となり、斜めより観察した時に青味をおびた色調になるので好ましくない。また、正面輝度低下の抑制効果が低下することもある。
なお、該裾広がり拡散度は本発明者等が本発明において新たに創出した新規な拡散性の評価尺度である。
(裾広がり拡散度比率)
上記の裾広がり拡散度は視野角改善効果に対しては重要であるが、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制の二律背反事象を打ち破り、両特性を高度なレベルで両立させるには充分な特性とは言えない。
上記の好ましい変角配光分布パターンにおいては、正面輝度低下の抑制の点では直進透過性が高いことが好ましい。即ち、出射角0度における透過度が高いことが好ましい。それ故、上記両特性を高度なレベルで両立させるには出射角0度における透過度と裾広がり拡散度との比率が重要となる。この比率は出射角0度における透過度(I)に対する出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I×100)で表示できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、実施例において記載される方法で測定される主拡散方向の波長440nmの光の出射角0度における透過度(I)に対する出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I×100)が0.25〜5.5%であることが重要である。
該裾広がり拡散度比率は、0.30〜4.5%がより好ましく、0.35〜4.0%がさらに好ましく、0.35〜3.5%が特に好ましい。
以下上記特性を裾広がり拡散度比率と称する。
該裾広がり拡散度比率を上記範囲で満たすことにより初めて二律背反事象の上記の両特性を高度なレベルで両立させるができる。即ち、裾広がり拡散度が0.25%未満では正面輝度低下抑制は良好であるが、視野角改善効果が不足するので好ましくない。逆に、裾広がり拡散度比率が5.5%を超えた場合は、正面輝度低下が大きくなるので好ましくない。また、カラーシフトの補正効果が過剰となり青味をおびた色調になる場合もある。
例えば、前述の特許文献に記載された図より、本裾広がり拡散度比率を求めると、特許文献1の高拡散度側、特許文献2の図3の(b)及び特許文献4の高拡散度側の拡散度比率はそれぞれ88%、60%及び78%となる。従って、上記の好ましい裾広がり拡散度比率は、これらの特許文献で開示されているフィルムに比べて著しく低い範囲にあると言える。
(波長分散性)
前記裾広がり拡散度や裾広がり拡散度比率の規定において、波長「440nm」に注目した事も重要である。前述のごとく視野角特性が低いという現象は正面から観察して時に白く見える色調が高角度より観察した時に黄色味を帯びた色調になることにより引き起こされている。本発明者等は、視野角改善効果を発現させるための1つの手段として、そういった色調変化を打ち消すためには、高角度において青色の光がより透過し易くなることが重要であると考え、440nmの波長に注目した。
従って、上記の裾広がり拡散度や裾広がり拡散度比率は拡散性と波長分散性の二つの要因を合体した新規な特性値であると言える。
即ち、本発明の視野角向上フィルムは、従来公知の拡散フィルムとは、光学設計思想が全く異なるのである。
なお、本発明においては、前記の半値幅拡散度についても波長440nmに注目している。後述のごとく正面輝度低下に関しては550nmの波長が重要である。半値幅拡散度に関しては光の波長の影響は小さいので、波長550nmで評価しても大差はない。
(異方性度)
本発明に用いられる視野角向上フィルムは、実施例において記載される方法で測定される異方性度が2.0以上であることが好ましい。5.0以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。
上記下限未満では、異方性付与の効果が低下するので好ましくない。
一方、上限は限定されないが200以上は技術的に困難であり、かつ異方性付与の効果も飽和してくるので200未満が好ましい。
上記範囲を満たすことにより、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制効果をより好ましい方向でバランスを取ることができる。
該異方性度の高いフィルムの場合は、拡散度が高い方向である主拡散方向の視野角改善効果が大きくなる。従って、視野角の改善を必要とする方向により、視野角向上フィルムの設置方向を変える必要がある。即ち、液晶表示装置の左右方向の視野角向上を図る時は、主拡散方向がパネルの左右方向に平行になるように、逆に、上下方向の視野角向上を図る時は、主拡散方向が上下方向に平行になるように設置するのが好ましい。
該対応により、必要な方向のみの視野角改善効果を発現させることが可能であるというメリットもある。
(全光線透過率)
本発明の視野角向上フィルムは、明細書中で記載した方法で測定される波長550nmの光の全光線透過率が好ましくは79〜95%、より好ましくは82〜93%である。
上限はより好ましくは92%以下であり、さらに好ましくは91%以下であり、特に好ましくは90%以下である。
該全光線透過率は正面輝度低下の指標であり、本発明では、実施例において記載された方法で測定される。すなわち、主拡散方向が水平になるように自記分光光度計の試料台に固定して測定したものである。等方的に拡散するフィルムの場合は、フィルムの固定方向が変わっても全光線透過率は変化しないが、特定方向に光が拡散されるいわゆる異方性拡散フィルムの場合は、測定時のフィルムの固定方向により全光線透過率が変わるためである。全光線透過率は積分球で受光し測定されるので、本来フィルムの固定方向により変わらないと思われるが、異方性拡散フィルムの場合は、その固定方向により全光線透過率が大きく変わる場合があるゆえの対処である。
主拡散方向は、例えば、フィルムにレーザーマーカーの光を通過させた場合の透過光の拡散で判定できる。即ち、フィルムにレーザーマーカーで光を透過させた時の出射光が広がる方向を主拡散方向とした。なお、該主拡散方向を水平方向になるように固定して測定した時の方が、全光線透過率が低くなる。
上記現象が生じる理由は、積分球における受光部の位置の影響によるものと推察している。主拡散方向の拡散光が積分球の受光部に直接入射する位置関係になると、この直接入射される拡散光の影響を強く受けるためではないかと考えられる。
なお、後述の実施例において記載する本発明における測定法に用いられる測定装置に用いられている積分球は、積分球の上部の頂点に受光部が設けられているので、この受光部に直接入射する光の影響を最も受けにくい方向での測定値を用いており、真の全光線透過率を反映した値になっていると想定をしている。
従って、実施例において記載する測定方法において使用している自記分光光度計(UV−3150;島津製作所社製)及び積分球付属装置(ISR−3100;島津製作所社製)を用いて測定することが重要である。
該全光線透過率が79%未満では正面輝度低下が大きくなり、液晶表示装置の正面より観察した時の輝度の低下率が大きくなる可能性がある。
一方、95%を超えた場合は、正面輝度低下の抑制効果が飽和する可能性がある。
本発明者等は、正面輝度低下は、大まかには直進光の透過率の支配、すなわち、平行光線透過率の支配を受けることを見出した。しかしながら、高い正面輝度と視野角改善効果の両立を満足させる狭い領域では、従来の技術であるヘーズメーター等を使用した非分光の平行光線透過率だけでは不満足であることがわかった。
そこで、正面輝度低下を支配する要因を明確化するために鋭意検討をして、本発明で規定する全光線透過率に至った。
実際の表示装置において正面から観察した場合、フィルムの法線方向の光源から拡散フィルムを直進通過した光だけでなく、法線方向以外の光源からの光が拡散フィルムによって曲げられ、フィルムの法線方向に出光されるものもある。正面輝度はこれら光の総合を見るべきであり、本発明で規定する全光線透過率が、特定の方向の光に大きく偏ることなく実際の観察状態に近いものであると考えられる。
また、550nmの波長が重要であることに対しては、人間の目に対して波長550nm付近の光が分光視感効率が最も高いとされており、このことが大きく影響していると推察している。
本発明の正面輝度低下の度合いは限定されないが、バックライト装置の輝度向上等の液晶表示装置全体のシステムの構成を変えることなく正面輝度低下の許容範囲で視野角改善効果を図れる点よりして、視野角向上フィルムを設置しない場合の輝度を100%とした時の視野角向上フィルムを設置した時の輝度の低下率を%で表示した輝度の低下率(以下、該正面輝度低下率を含めて正面輝度低下の語句を統一する)が20%以下であることが好ましい。18%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。
なお、正面輝度はパネルの方式や種類によりその絶対値は異なるが、上記の正面輝度低下で評価するとパネルの方式や種類が変わってもほぼ一定の値になることの確認をしている。
前記の全光線透過率を満たすことで上記の正面輝度低下を好ましい範囲とすることができる。
(作用機構)
光拡散フィルムで正面輝度を犠牲にすれば、視野角改善効果を発現できることは公知である。確かに、前述のごとく、従来公知の半値幅法拡散度で評価される高拡散性フィルムの使用で斜め方向(高角度)から観察した時の輝度を向上させることができるが、同時に正面の輝度が大幅に低下する。従って、視野角改善効果と正面輝度低下とは、二律背反事象となり、その両立は困難であった。
この視野角改善効果と正面輝度低下抑制の二律背反事象を打破するためには、前記した図2に示した変角配光分布パターンにすることが重要である。即ち、裾広がり拡散度比率を特定範囲にすることが重要である。裾広がり拡散度比率を特定範囲にすることで正面輝度に大きく寄与する直進透過性と視野角向上に大きく寄与する拡散透過性のバランスが取れる。このことで、正面輝度と視野角向上の二律背反事象を打ち破ることができ、高い正面輝度と高い視野角の両立が図れた推察している。
さらに、視野角向上フィルムを透過してきた出射光の波長分散性も重要である。即ち、視野角改善効果に寄与するフィルム面の垂線よりの角度が高い方向に出射する光は青色に近い440nmの波長の光の相対透過度が高くなるように設計することが重要であり、これらの要因の相乗効果により視野角改善効果と正面輝度の両立が高度なレベルで図れたと推察している。
上記の個々の要因の一部については従来技術でもその重要性が開示されているが、上記の全要因を同時に満たすことによる作用機構により、視野角改善効果と正面輝度低下の二律背反事象を打破した光拡散フィルムは本発明において初めて成し得たものである。
異方性度を上げることにより、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制効果をより両立できる理由は定かでないが、異方性度を高めることにより出射光が特定方向に集光されることが寄与しており、視野角改善効果と正面輝度低下とではこの集光効果の寄与度に差があるにより引き起こされているものと推察している。
(好ましい正面輝度低下の範囲)
本発明の正面輝度低下の度合いは限定されないが、バックライト装置の輝度向上等の液晶表示装置全体のシステムの構成を変えることなく正面輝度低下の許容範囲で視野角改善効果を図れる点よりして、視野角向上フィルムを設置しない場合の輝度を100%とした時の視野角向上フィルムを設置した時の輝度の低下率を%で表示した輝度の低下率(以下、該正面輝度低下率を含めて正面輝度低下の語句を統一する)が20%以下であることが好ましい。18%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。
なお、正面輝度はパネルの方式や種類によりその絶対値は異なるが、上記の正面輝度低下で評価するとパネルの方式や種類が変わってもほぼ一定の値になることの確認をしている。
前記の全光線透過率を満たすことで上記の正面輝度低下を好ましい範囲とすることができる。
(好ましい視野角改善効果の範囲)
本発明においては、視野角改善効果は、実施例において記載する方法で評価した。すなわち、市販の液晶表示装置のパネルに白の画像を映し出し、CCDカメラを該画像の赤道上を移動させ、CIE表色系のYxy系のx値の角度依存性を測定し、垂線に対して0度の時のx値(x0)及び70度の時のx値(x70)を求めた。一方、視野角向上フィルム試料を設置しないパネル自身のx値(x70)を求めて、Δx(70度)=x70−x70を算出した値で評価した。以下、該Δx(70度)をカラーシフト度と称する。一般に液晶表示装置のパネルは、該カラーシフト度がプラスになる。y値もx値とほぼ同じ挙動をしており、緑色及び赤色方向に変位するので、結果として黄色味を帯びることになる。x値及びy値共に殆ど類似した挙動を示すので、本発明においては、x値を代表値とした。
このカラーシフト度のプラス側へのずれを打ち消すことにより視野角改善効果が発現される。それ故、視野角向上フィルムのカラーシフト度はマイナス方向に色座標が移動するのが好ましい。該カラーシフト度は、パネルの方式や種類により異なるが、例えば、VA方式の場合は、−0.006〜−0.02が好ましい。−0.008〜−0.018がより好ましい。
−0.006を超えた場合は、カラーシフト度が不足し視野角改善効果が少なくなるので好ましくない。逆に、−0.02未満の場合は、カラーシフト度が高すぎるので、視野角改善効果が過剰となり、斜めから観察した時の白の画像が青味をおびた色調になるので好ましくない。
(視野角向上フィルムの構成)
本発明の光拡散フィルムは、少なくとも二種の互いに非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物を溶融押し出し成型することによって得られることができる。少なくとも二種の互いに非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物の存在形態は、上述の光学特性を満たせば特に限定されず、連続相及び分散相としてそれぞれの樹脂が独立して存在するいわゆる海/島構造であってもよいし、両樹脂が共連続相を形成した構造であってもよい。両樹脂の界面における光の屈折や散乱により上述の特性を制御することができる。
使用する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂及びポリメチルペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂は、それぞれの樹脂を製膜工程で配合してもよいし、予め混練法等で事前に配合した形で用いてもよい。
本発明においては、三種以上の熱可塑性樹脂を配合してもよいし、それぞれの樹脂の馴染み性向上のための相溶化剤や分散径調整剤等の添加剤を併用しても構わない。また、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤や帯電防止剤等の添加剤を配合してもよい。また、上記の光学特性を阻害しない範囲であれば、無機粒子やポリマービーズ等の微粒子を添加してもよい。
これらの熱可塑性樹脂より互いに非相溶性(互いに溶け合わない)の樹脂の少なくとも二種類を選択すればよい。上記の少なくとも二種の互いに非相溶性の熱可塑性樹脂の配合割合は、それぞれ質量比で5/95〜95/5であることが好ましく、10/90〜90/10がより好ましく、20/80〜80/20の割合が更に好ましいと言えるが、さらに後述のように樹脂成分の種類及び後述の層構成、光拡散層の厚み及び製造方法等を考慮して設定するのが良い。
なお、二種の互いに非相溶性の熱可塑性樹脂の配合割合が多い方が連続相となる傾向がある。特にメルトフローレートが近い場合、比率により海島構造の成分が逆転することも考慮に入れる必要がある。
上記樹脂は、一般に市販されている汎用性の高い樹脂より選択すれば良いが、より安定した生産ができる等の対応のために特注品を使用しても良い。
ポリエステル系樹脂は、上記光学特性が達成し易く、かつ光学特性以外の機械的特性や熱的特性に優れている点より、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートの単一重合体及び/または共重合体の使用が好ましい。また、経済的にも優位である。
ポリエステルと組み合わせる樹脂としては後述するポリオレフィン系樹脂が好ましい。
また、フッ素系樹脂も、上記特性を満たせば限定されないが、上記光学特性が達成し易く、かつ経済的にも優位である点より、フッ化ビニリデン系樹脂及びパーフルオロエチレン等のフッ素含有モノマーとエチレンやプロピレン等のオレフィン系モノマーとの共重合体の使用が好ましい。
該フッ素樹脂は、耐光性に優れており、例えば、ポリオレフィン系樹脂と組み合わせることにより、耐光性の優れた異方性光拡散フィルムを得ることができる。
フッ素系樹脂と組み合わせる樹脂としては後述するポリオレフィン系樹脂が好ましい。
前述の特性を安定して発現させることができる点より、少なくとも1種がポリオレフィン系樹脂よりなることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリメチルペンテン等やこれらの共重合体、環状ポリオレフィン等が挙げられる。
耐光性や経済性の点より二種類ともにポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。二種類ともにポリオレフィン系樹脂を使用する場合は、その組み合わせは特に限定されないが、二種類のポリオレフィン系樹脂の屈折率差を0.003〜0.07の範囲にするのが好ましい。0.005〜0.06の範囲がより好ましく、0.01〜0.05がさらに好ましい。この屈折率差を範囲にすることで、前述した光学特性の視野角向上をより安定して得ることができる。例えば、屈折率差が0.07を超えた場合は、例えば、全光線透過率が低くなり、前記特性を満たすことができなくなる。
即ち、屈折率差が大きいほど、二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の界面での角度変化が大きくなり、拡散には有利に働くが、一方界面での反射は指数関数的に増加するためと考えられる。
従って、上記範囲において、前述した種々の光学特性を同時に満足することができ易くなる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネンやテトラシクロドデセン等の環状のポリオレフィン構造を有したものが挙げられる。例えば、(1)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を、必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のごときポリマー変性を行なった後に、水素添加した樹脂、(2)ノルボルネン系モノマーを付加型重合させた樹脂、(3)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加型共重合させた樹脂などを挙げることができる。重合方法及び水素添加方法は、常法により行なうことができる。
これらのものはガラス転移温度を高くすることができ、ダイ内でのシェアやドラフトにより細くなった島成分が冷却中に速やかに固化され、安定した特性を出しやすくなると考えられる。
ガラス転移温度は好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。上限はモノマー種により自ずと決まるが(環状モノマー100%のTg)、好ましくは230℃以下さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは190℃以下である。上限を超えると溶融押し出し時に高温が必要となり、着色することがあったり、未溶解物が発生することがある。なお値はISO11357−1,−2,−3に準拠して10℃/minの昇温速度で測定した値である。
環状ポリオレフィン系樹脂の環状成分の含有量としては、好ましくは70−90質量%、さらに好ましくは73−85質量%である。特にノルボルネン系の場合はこの範囲が好ましい。
特にエチレンを共重合させている環状ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂との親和性が高く特性を達成するためには好ましい。
エチレンの含有量としては好ましくは30−10質量%、さらに好ましくは27−15質量%である。
ポリエチレン系樹脂としては、単一重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。共重合体の場合は50モル%以上がエチレン成分であるのが好ましい。該ポリエチレン樹脂の密度や重合方法等も限定されないが、密度が0.909以下の共重合体の使用が好ましい。例えば、オクテンとの共重合体が挙げられる。重合方法はメタロセン触媒法及び非メタロセン触媒法のいずれでも構わない。
特に、高拡散性が安定に付与できる点で、エチレンとオクテンのブロック共重合体の使用が好ましい。例えば、該樹脂としては、ダウケミカル社製のINFUSE(TM)が挙げられる。該樹脂は、ブロック構造のために、結晶性の部分を有するので、低密度でありながら高融点であるという特徴があり、得られる視野角向上フィルムの耐熱性等を向上させることができるので好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、単一重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。共重合体の場合は、50モル%以上がプロピレン成分であるのが好ましい。該樹脂の製造方法、分子量等は、特に限定されないが、耐熱性等の点から結晶性の高いものが好ましい。具体的には、結晶性は、示差走査熱量計(DSC)による融解熱で判断され、融解熱が65J/g以上のものが好ましい。
エチレン及び/又はブテンが含まれたポリオレフィン系樹脂としては、ホモポリエチレン樹脂、ホモポリブテン樹脂、及びこれらの樹脂の他のオレフィン系モノマーとの共重合体、アクリル酸やメタクリル酸及びこれらのエステル誘導体との共重合体等が挙げられる。他のオレフィン系モノマーとの共重合体の場合は、ランダム、ブロック及びグラフト共重合体のいずれでもよい。また、EPラバー等の分散体でも構わない。該樹脂の製造方法や分子量等も特に限定されない。例えば、上記したポリエチレン系樹脂やエチレンとブテンの共重合体の使用が好ましい。
ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂は、ポリマーの結晶/非晶構造がナノオーダーで制御され、該結晶がナノオーダーで網目構造を有する熱可塑性のポリオレフィン系エラストマーであり、例えば、三井化学社製のノティオ(商標登録)が挙げられる。従来のポリオレフィン系エラストマー樹脂は結晶サイズがミクロンオーダーであるのに対して、ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂は、結晶サイズがナノオーダーで制御されているという特徴を有する。このため、従来のポリオレフィン系エラストマー樹脂に比べて、透明性、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性などに優れている場合が多い。従って、該ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂を配合することによって、得られるフィルムの外観を向上できる場合がある。
上記の少なくとも二種の互いに非相溶性の熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、上記の光学特性を満たせば特に限定されない。それぞれの熱可塑性樹脂は、230℃で測定したメルトフローレートが0.1〜100、好ましくは0.2〜50の範囲で適宜選択される。
上記樹脂のメルトフローレートは、樹脂の組成、組成比、どちらの樹脂を海成分にするか及び所望する光学特性等を考慮して適宜選択される。
その指針は組成割合の方が多くて、かつメルトフローレートが低い方が海成分になる。同量の場合は、メルトフローレートが高い方が海成分になり易い。組成割合の高い方のメルトフローレートが高い場合は、単純な海/島構造ではなく、例えば共連続相といった形成される場合もある。
本発明においては、前述のごとく拡散度に異方性を付与するのが好ましい。該特性を付与するには島構造に異方性を持たせるのが好ましい。このような形状の島構造を形成するためには、海成分樹脂と島成分樹脂の溶融粘度に差を付けるのが好ましい。特に、海成分よりも島成分の溶融粘度を低くするのが好ましい。このためには、例えば、メルトフローレートの差を付けるのが好ましく、海成分より、島成分の方のメルトフローレートを高くするのが好ましい。また、海成分樹脂と島成分樹脂の剛性に差を付けるのも好ましい。特に、海成分よりも島成分の剛性を低くするのが好ましい。
また、島成分のメルトフローレートが低い場合には、ダイ内でのシェアやドラフトにより島成分が細くなる力がかかりにくくなり、異方性が低下することがある。質量比が50/50から離れるほどこの傾向は強くなる。これらの傾向を考慮して、各特性の調整を行う。
二種の樹脂が共にポリオレフィン系樹脂の場合は、環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂との組み合わせや、該三種の組み合わせが前述の特性のフィルムが得られ易い点や経済性の点で好ましい。
環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂との組み合わせの場合は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を海相として、かつ該海相のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートを島相の環状ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも高くするが好ましい。
環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂の組み合わせの場合は、全樹脂量中に環状ポリオレフィン系樹脂が10〜60質量%配合されているのが好ましく、さらに好ましくは10〜50質量%である。
上記範囲が、後述のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を海相とする好ましい実施態様の実現に対して好ましい。
上記構成と逆の構成である環状ポリオレフィン系樹脂を海相とした場合は、ダイス内でのシェア、海相の柔軟性や流動性が関係して、所望した光学特性、特に、異方性度の高い視野角向上フィルムが得にくい。
上記実施態様により、製膜装置を変えた場合においても、所望した光学特性を有する光拡散フィルムが安定して得ることができるという効果もでる。この理由は定かでないが、製膜装置を変えた場合に発生する押し出し条件の差異やダイス形状の相違によりシェア等の変化があっても、海相の樹脂を島相樹脂より柔らかくして、かつその流動性を高めることにより、その影響が緩和されるためと推察している。
二種共にポリオレフィン系樹脂よりなる場合の島相のサイズは特に限定されないが、レーザ散乱法で求められる短径の平均サイズが0.1〜2μmが好ましい。0.1μm未満では拡散度が不足するので好ましくない。逆に、2μmを超えた場合は、後方散乱の度合いが増加して、全光線透過率が低下するので好ましくない。
(接着改良層の積層)
本発明の視野角向上フィルムは、主として二種の互いに非相溶性のポリオレフィン系樹脂よりなる光拡散層の少なくとも片面に、主として極性基を含有するポリオレフィン樹脂よりなる接着改良層が最表面になるように積層された多層光拡散フィルムであることが好ましい。
該対応により、視野角向上フィルムの他の部材への接着性を向上させることができる。例えば、液晶セルに組み込まれる偏光板に視野角向上フィルムを水系の接着剤で貼り付けることが可能となり、液晶表示装置への視野角向上フィルムの組み込みが容易となる。
(接着改良層)
本発明における極性基を含有するポリオレフィン樹脂は、その骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、メチルペンテンおよび環状オレフィンのうち少なくとも1種のモノマーを含んでいること好ましい。
上記モノマーを一種類用いたホモポリマーであっても二種以上のモノマーを用いた共重合体であっても構わない。
本発明における上記極性基を含有するポリオレフィン樹脂は、少なくとも1種類の極性基を含有していることが好ましい。極性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、水酸基、グリシジル基、イソシアネート基、アミノ基、イミド基、オキサゾリン基、エステル基、エーテル基、カルボン酸金属塩基、スルホン酸金属塩基、ホスホン酸金属塩基、3級アミン塩基または4級アミン塩基等があげられる。該極性基は一種であってもよいし、二種以上を含んでもよい。
極性基の種類は、光拡散層を構成するポリオレフィン系樹脂の組成や密着対象の部材の種類や必要とする密着力等により適宜選択すれば良いが、少なくともカルボン酸基を含むことが、好ましい実施態様である。
また、本発明における極性基を含有したポリオレフィン樹脂は、極性基がポリオレフィン樹脂の高分子鎖中に直接導入されていても、また、他の樹脂に導入し、添加、混合されている状態であっても構わない。また、場合により本発明のポリオレフィン樹脂は、分子鎖の末端や内部に導入された、例えば、カルボン酸基や水酸基にこれらと反応しうる化合物を反応させて変性して使用することも可能である。
本発明においては、上記極性基を含有するポリオレフィン樹脂は、一種の単独使用であってもよいし、二種以上を配合した配合組成物であってもよい。また、極性基を含有しないポリオレフィン樹脂や他の種類の樹脂を配合した配合組成物であってもよい。該配合組成物の場合は、上記の極性基を含有したポリオレフィン樹脂は10質量%以上で含まれることが好ましい。さらに好ましくは30質量%以上である。
上記の接着改良層は、片面積層及び両面積層のいずれでも構わない。総厚みは限定されないが、10〜500μmが好ましい。厚み構成比も限定されないが、密着層厚みが片面の厚みで2〜100μmであることが好ましい。
上記の光拡散層/接着改良層の厚み構成比は100/1〜3/1であることが好ましく、10/1〜4/1がより好ましい。このようにすることによって、視野角向上効果と接着性改良効果のバランスがとれる。
(視野角向上フィルムの製造方法)
本発明の視野角向上フィルムの製造方法も前述の光学特性を満たせば特に限定されないが、経済性の点で溶融押し出し成型により製膜する方法が好ましい。
本発明においては、光拡散性を付与するために、非溶融性微粒子を含有させる必要がないので、溶融押し出し成型法で実施しても、製膜工程における溶融樹脂の濾過フィルタの目詰まりが低減でき、生産性が優れるとともに得られるフィルムの清澄度も高いという特長を有する。
上記溶融押し出し成型法による製膜方法としては、特に制限されず、例えば、Tダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。また、未延伸のままのフィルムでもよく、延伸処理を行ってもよい。
上記溶融押し出し成型法は、一般に、押し出し機で溶融した樹脂をダイからシート状に押し出してし、該シートを冷却ロールに密着させ冷却固化させて製膜される。冷却ロールへの密着は、一般に広く用いられている押し圧ロールで押さえ付けて行っても良いが、異方性を付与するという点においては、上記の冷却ロールへの密着時に、該密着部の入り口部分に液溜りゾーン(バンクと称されることもある)が形成されないことが好ましい。該液溜りゾーンの形成は、冷却ロールへの密着時に圧接された場合、即ち、強い圧力で押さえられた時に発生するので、該密着時の密着圧力を低くするのが好ましい。例えば、一般に広く用いられている押し圧ロールで圧接して密着させるという方法は避けた方がよい。
弱い圧力で密着させる方法であれば限定されないが、例えば、押し出し機で溶融した樹脂をダイからシート状に押し出して、該シートをガス圧による押さえ方法及び/又は吸引法及び/又は静電気密着法で密着させ冷却固化させて製膜されてなることが好ましい。該方法により、異方性を有した視野角向上フィルムを安定して得ることができる。
上記のガス圧による押さえ方法及び/又は吸引法及び/又は静電気密着法で密着させ冷却固化させる方法は限定されない。例えば、ガス圧による押さえ方法としては、例えば、空気等のガス圧で押さえ付ける、いわゆるエアーナイフ法等の方法、減圧ノズルで吸引して密着させるバキュームチャンバー法、静電気力で密着させる静電気密着法等が挙げられる。該方法は単独で用いてもよいし、複数の方法を併用しても良い。得られるフィルムの厚み精度を高めることができる点で、後者で実施するのが好ましい実施態様である。
本発明の視野角向上フィルムは、無延伸法及び延伸法のいずれで製造しても良い。例えば、光拡散層にポリエステル系樹脂を用いた場合は、一軸延伸をするのが好ましい。延伸倍率は2倍以上が好ましい。上限は限定されないが、10倍未満が好ましい。該対応により、島相が延伸方向に引き伸ばされ細長い構造になり、該島相の配向方向と直交した方向の光拡散性が著しく向上し、異方性で、かつ高拡散性が確保できる。
無延伸法で製造する場合に、溶融押し出しされたシートを冷却個化する前に伸長する方法、即ち、ドラフト率を高める方法で製造しても良い。
また、本発明の視野角向上フィルムは単層であってもよいし、2層以上の多層構成であっても構わない。多層構成の場合は、少なくとも一層が上記の構成よりなる光拡散フィルムからなる層であれば、他の層は、光拡散性を有しない単なる透明層であってもよい。また、全層が光拡散層の構成であってもよい。
上記多層構成の場合は、多層共押出し法で製造してもよいし、押出しラミネート法やドライラミネート法で実施してもよい。
上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物は、それぞれの熱可塑性樹脂を製膜工程の押出し機などで配合してもよいし、予め混練法等で事前に混合物とした形で用いてもよい。
本発明の視野角向上フィルムの厚みは10〜500μmが好ましく、20〜500μmがより好ましく、20〜200μmがさらに好ましいと言える。光拡散層の樹脂成分の種類、配合比、層構成及び製造方法等とともにフィルム厚みにより、光学特性が大きく変化する。
なお、厚みを調整する場合、ドラフト比、押し出し流量、リップ幅等の変更により調節できる。
(視野角特性改善方法)
本発明における視野角特性改善方法は、バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの出光側あるいは入光側配した偏光子とを少なくとも有する液晶表示装置において、少なくとも前記出光側あるいは入光側の偏光子のそれぞれ出光側あるいは入光側に上記視野角向上フィルムを設置することを特徴とする。従って、本発明の方法は、液晶表示装置製造工程の工程数を増やすことなく改善ができ、また、あらゆる液晶表示装置に適用可能であることから非常に経済性の高く、かつ適用範囲の広い方法である。従って、通常方法により生産された液晶表示装置の液晶セルの最表面に上記した視野角向上フィルムを設置しても良いし、液晶セルの視認側に設置される偏光子に上記した視野角向上フィルムを積層して視野角向上フィルムが視認側になるように液晶表示装置のパネルに組み込んでも良い。また、液晶表示装置に用いられ液晶セルの入光側の最表面に上記した視野角向上フィルムを設置しても良いし、液晶セルの入光側に設置される偏光子に上記した視野角向上フィルムを積層して視野角向上フィルムが入光側になるように液晶表示装置の液晶セルに組み込んでも良い。
(偏光子)
本発明における偏光子は、偏光機能を有したフィルムやシートよりなれば限定されない。例えば、PVAなどにヨウ素あるいは二色性色素を染着させたものが挙げられる。また、偏光子単体であってもよいし、例えば、各種保護フィルムとの複合体であっても良い。
(視野角向上フィルムと偏光子積層体及びそれに用いられる接着剤)
本発明においては、上記のごとく視野角向上フィルムを液晶セルに組み込まれる偏光子と積層して液晶セルに組み込むのが好ましい実施態様の一つである。該積層体の構成は限定されないが上記の視野角向上フィルムと偏光子とを接着剤で貼り合わせてなることが好ましい実施態様の一つである。
上記接着剤は透明で、かつ視野角向上フィルムと偏光板との両方と接着性を有するものであれば限定されない。例えば、熱やUV等の活性線等で架橋性を有するものが挙げられる。例えば、視野角向上フィルムと偏光板の両方に馴染みがあり、透明なモノマー、オリゴマー及びポリマーと架橋剤の配合体が挙げられる。また、上記透明なモノマー、オリゴマー及びポリマーの分子中に上記方法で架橋反応を引き起こす官能基を有するものあるいは該成分と架橋剤との配合体であっても良い。
偏光板はPVA系のポリマーを主成分としたものが多いので、上記接着剤はPVA系ポリマーよりなるものが好ましい。例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のけん化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコール;などが挙げられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は1種のみ用いても良いし2種以上を併用しても良い。
PVA系ポリマーのケン価度は限定されないが60〜85%のものが好ましい。
該PVA系ポリマーを用いた場合の架橋剤としては特に限定されないが水溶性や水分散性のものが好ましい。例えば、水酸基と架橋性を有するものであれば特に限定されないが、メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系等の化合物が挙げられる。塗布液の経時安定性の点からメラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系の化合物が挙げられる。さらに、架橋剤はポリビニルアルコール系メラミン系化合物もしくはイソシアネート系化合物ものが好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用しても良い。
上記の偏光子と積層して液晶表示装置に組み込む場合は、液晶表示装置のモードの違いによる偏光子の吸収軸の方向の違いを配慮して対応するのが好ましい。
(視野角向上機能付保護フィルム)
本発明においては、上記の視野角向上フィルムの片面に自己粘着層を積層することにより、得られた積層体は、例えば、液晶表示装置の液晶セルの表面に着脱自在に貼着することができるので、液晶表示装置の視野角改善をするのみでなく、液晶表示装置の表面の汚染や傷付きの防止をする保護機能をも付加することができる。その上、着脱自在であるので、例えば、視野角向上フィルムの表面が汚れたり、あるいは傷が付いたりして視認性が悪化した場合等に新しいものに貼り替えることが可能となる。すなわち、視野角向上機能付保護フィルムとして使用することができるようになるので、好ましい実施態様の一つである。
上記自己粘着層は視野角向上フィルムの表面に直接形成しても良いし、他の基材フィルムの表面に形成して、該自己粘着層積層フィルムと視野角向上フィルムを積層しても良い。特に、後者の方法が、汎用性が高く、かつ選択幅が広げられるので好ましい。後者の方法の場合は、両面粘着層よりなる、いわゆる両面粘着フィルムに視野角向上フィルムを貼着して自己粘着層を形成するのが良い。該両面粘着フィルムは、両面とも自己粘着層として、片面の自己粘着層で視野角向上フィルムを固定しても良いが、片面は、例えば、アクリル系等の感圧粘着層を形成し、該感圧粘着層側に視野角向上フィルムを貼着する方法が視野角向上フィルムを強固に固定できる点や経済性の点で好ましい。
該両面粘着フィルムを用いて視野角向上機能付保護フィルムを作製する場合の両面粘着フィルムの種類や製造方法も限定されないが、例えば、特開2009―73937号公報で開示されている方法で得られる両面粘着フィルムの使用が、自己粘着層の自己粘着特性に優れ、かつコストパフォーマンス等に優れるので好ましい。
また、例えば、特開2009−299021号公報等において開示されている非晶質のポリオレフィン系樹脂層を前記した視野角向上フィルムと直接複合する方法も経済性等の点より好ましい。上記複合方法は限定されない。例えば、共押し出し法や押し出しラミネート法が挙げられる。
(自己粘着層)
本発明における自己粘着性とは、被着面への貼り付けの際、外から圧力を掛けなくても、粘着できる性質を意味する。
更に詳しくは、複数回貼着および剥離を繰り返すことができれば限定されないが、柔軟なポリマーよりなる事が、貼着及び剥離を繰り返してもその貼着性能や剥離性能の変化が小さく、かつ、剥離した場合に表示画面表面に該自己粘着層の成分が転写して表示画面を汚染させる現象が起こりにくいので好ましい。
柔軟なポリマーは、非架橋ポリマーであっても架橋ポリマーであっても構わない。また、ゲル体であっても良い。ポリマーの種類も限定されない。例えば、ポリオレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー及びシリコーン系ポリマー等が挙げられる。ポリオレフィン系ポリマー及びポリオレフィン系ポリマーと他のポリマーとの組成物及びシリコーン系ポリマーが、上記特性がより優れているので好ましい。
シリコーン系ポリマーの種類や架橋方法も限定されないが、例えば、特開2009―113420号公報で開示されている方法が好ましい。また、付加型シリコーンポリマーが好ましい。
上記柔軟ポリマーよりなる自己粘着層は、以下の測定方法で評価される表層ダイナミック硬度が0.01〜100mN/μmであることが好ましく、0.03〜80mN/μmであることがより好ましい。
上記の表層ダイナミック硬度が0.01mN/μm未満では剥離が困難になって前記のリペアー性が低下し、反対に100mN/μmを超えると固定力が不足する。
〔表層ダイナミック硬度〕
島津製作所製の島津ダイナミック超微小硬度計DUH202型を用い、試験モード:モード3(軟質材料試験)、圧子の種類:115、試験加重:1.97mN、負荷速度:0.0142mN/秒、保持時間:5秒の条件で測定した。試料はスライドガラス上にエポキシ接着剤で固定し、測定台にセットした。本測定法で評価されるダイナミック硬度は、試料の表面からの深さによって異なる測定値が得られる。表面から3μmの深さの測定値を表層硬度とした。
また、上記柔軟ポリマーよりなる自己粘着層は、その表面の平均表面粗度(Ra)が、0.12μm以下、好ましくは0.08μm以下、特に好ましくは0.05μm以下に設定される事が好ましい。これによって自己粘着層の自己粘着性による実用的な固定力、すなわち表面タック力が発現する。ただし、上記の平均表面粗度(Ra)が0.12μmを超えると、自己粘着性が発現せず、自己粘着による固定が不可能になる。なお、上記平均表面粗度(Ra)は、以下の方法で測定された値である。
〔平均表面粗度(Ra)〕
小坂製作所製SE−200型表面粗度計を用い、縦倍率:1000、横倍率:20、カットオフ:0.08mm、測定長:8mm、測定速度:0.1mm/分の条件で測定した。
(液晶表示装置)
本発明が適用できる液晶表示装置は、バックライト光源と液晶セルと、液層セルの視認側に配した偏光子とを少なくとも有する液晶表示装置であれば限定されない。例えば、TN、VA、OCB、IPS及びECBモードの液晶表示装置が挙げられる。
(ハードコート層等の機能性層の積層使用)
本発明の液晶表示装置では、視野角向上フィルムの観察者側の表面に、ハードコート層層、反射低減層および防眩層より選ばれた機能性層が少なくとも一層積層されてなることが好ましい。上記機能層はそれぞれ単独の構成でも良いし、複数の機能を積層して用いても良い。
ハードコート層の積層により視野角向上フィルム表面の耐傷付き性が向上する。また、反射低減層及び/または防眩層の複合により、液晶表示装置を外光が映り込む環境で使用しても、外光の映り込みが低減され、画像の視認性が向上する。また、明るい環境で使用しても、視野角向上効果の低減が見られなくなる。反射低減層や防眩層は、その表面が反射防止機能を持てばよく、例えば、アンチグレアータイプ、アンチリフレクションタイプ及びその両機能を併有したタイプ等が使用できる。特に、後二者の使用が好ましい。
上記機能層の複合は、視野角向上フィルムの表面に直接積層して積層しても良いし、上記機能層を有する、TACやPET等のプラスチックフィルムと積層して用いても良い。後者の方が広く市場に流通している製品を使用して実施できるので好ましい場合がある。後者の機能性層を有したフィルムの複合方法は、粘着剤あるいは接着剤で固定するのが好ましいが、単に重ね合わせて治具で固定しても良い。
本発明においては、視野角向上フィルムや上記の機能性層複合体の液晶表示装置への設置方法としては、例えば反射損失の少ない接着剤や粘着剤等によって液晶セルの偏光子や偏光板に貼着することが好ましい。
接着剤や粘着剤は視野角向上フィルムと対象物とが固定できれば限定されないが、光学用の製品を用いるのが好ましい。
(視野角向上フィルムの貼り付け方向)
本発明の視野角向上フィルムは、前記の異方性度を高めることにより液晶表示装置の視野角改善効果が発現される方向を変えることができる。
例えば、TVにおいては水平方向の視野角改善効果が求められるが、パソコンや各種装置用のモニターやデジタルサイネージ用の表示装置においては、垂直方向の視野角改善効果も求められることもある。
該要求に答えるには、視野角向上フィルムの設置方向を変更することで達成することができる。
すなわち、視野角向上フィルムの主拡散方向の視野角が改善されるので、例えば、水平方向の視野角改善を図りたい時は、視野角向上フィルムの主拡散方向が液晶表示装置の略横方向に設置するのが好ましい。一方、垂直方向の視野角改善を図りたい時は、視野角向上フィルムの主拡散方向が液晶表示装置の略縦方向に設置するのが好ましい。
なお、上記設置方向は液晶表示装置を縦方向に立てて設置した場合の方向で表示している。従って、水平方向は左右方向と、また、垂直方向は上下方向と表現することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例で採用した測定・評価方法は次の通りである。また、実施例中で「部」とあるのは断りのない限り「質量部」を意味し、「%」とあるのは断りのない限り「質量%」を意味する。なお、本実施例においては、本発明の特性を満たさない比較例のフィルムも便宜上、視野角向上フィルムと称する。
1.半値幅拡散度(波長440nmの光の主拡散方向の変角配光分布パターンの半値幅)
変角分光測色システムGCMS−4型(GSP−2型:株式会社村上色彩研究所製、変角分光光度計GPS−2型)を用いて測定を行った。透過測定モード、光線入射角:0°(フィルム法線方向)、受光角度:−80°〜80°(フィルム法線からの極角。方位角は水平)、光源:D65、視野:2°の条件で、試料の主拡散方向が水平方向になるように試料台に固定し、透過光の変角分光光度曲線を求めた。あおり角は0°とした。
実際に使用する場合には、試料台の軸と主拡散方向の軸とのずれは20度程度までは許容される。
5°ピッチで測定した。
上記測定により得られた変角配光分布パターンのピークトップの半分の高さにおける角度を求め半値幅拡散度とした。
測定に先立ち株式会社村上色彩研究所製のGCMS−4用の透過拡散標準板(オパールガラス)を用いて装置の校正を行い、該透過拡散標準板の受光角度0度における透過光強度を基準(1.000)として、相対透過度を測定した。なお、前記透過拡散標準板は、積分球式分光計測で空気層を1.000とした時の440nmの透過率が0.3069であった。
本測定は、各試料とも3回測定しその平均値で表示した。
試料の両面で表面粗度が異なる場合は、視野角向上フィルムとして使用する場合の光の透過方向が一致する向きで試料を固定して測定するのが良い。本発明においては、表面粗度が低い方から入光する向きで固定して測定した。
なお、主拡散方向とは最大の光拡散性が得られるフィルム面内の方向であり、レーザーポインター等を用いて簡単に決定することが出来る。
2.裾広がり拡散度(主拡散方向の出射角度30度における波長440nmの光の相対透過度)
変角分光測色システムGCMS−4型(GSP−2型:株式会社村上色彩研究所製、変角分光光度計GPS−2型)を用いて測定を行った。透過測定モード、光線入射角:0°(フィルム法線方向)、受光角度:0°〜80°(フィルム法線からの極角。方位角は水平)、光源:D65、視野:2°の条件で、試料の主拡散方向が水平方向になるように試料台に固定(試料台の軸と主拡散方向の軸とのずれは20度程度までは許容される)し、透過光の変角分光光度曲線を求めた。あおり角は0°とした。
受光角0°から10°までは、1°ピッチで、10°から80°までは5°ピッチで測定した。
測定に先立ち株式会社村上色彩研究所製のGCMS−4用の透過拡散標準板(オパールガラス)を用いて装置の校正を行い、該透過拡散標準板の受光角度0度における透過光強度を基準(1.000)として、相対透過度を測定した。なお、前記透過拡散標準板は、積分球式分光計測で空気層を1.000とした時の440nmの透過率が0.3069であった。
本測定は、各試料とも3回測定しその平均値で表示した。受光角(以下、出射角と称する)30度における波長440nmの透過度で表示した。
試料の両面で表面粗度が異なる場合は、視野角向上フィルムとして使用する場合の光の透過方向が一致する向きで試料を固定して測定するのが良い。本発明においては、表面粗度が低い方から入光する向きで固定して測定した。
なお、主拡散方向とは最大の光拡散性が得られるフィルム面内の方向であり、レーザーポインター等を用いて簡単に決定することが出来る。
3.裾広がり拡散度比率(主拡散方向の波長440nmの光の出射角0度における透過度(I)に対する出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I×100))
上記の裾広がり拡散度と同じ方法で、波長440nmの出射角0°及び30°の透過度を測定して、出射角0度における透過度(I)に対する出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I×100)を求めて%表示した。
試料の両面で表面粗度が異なる場合は、実際に使用する場合の光の透過方向が一致する向きで試料を固定して測定する。本発明においては、表面粗度が低い方から入光する向きで固定して測定した。
4.異方性度
上記の裾広がり拡散度測定法で得られた裾広がり拡散度を(I30とした。
また、上記の裾広がり拡散度測定法において、試料の主拡散方向が垂直方向になるように試料台に固定し、上記と同様の方法で、上記の(I30と直交する方向の裾広がり拡散度である(I30を求めた。
異方性度は下記(1)で算出した。
(I30/(I30 (1)
5.全光線透過率
自記分光光度計(UV−3150;島津製作所社製)に積分球付属装置(ISR−3100;島津製作所社製)をセットして、スリット幅12nmで波長300〜800nmの範囲を高速でスキャンし分光スペクトルの測定を行い、550nmにおける透過率で表示した。
該測定においては、試料の主拡散方向が水平方向になるように試料固定器具に固定して測定をした時の値を用いた。主拡散方向は、試料にレーザーマーカーで光を当てて、出射光の拡散方向を検知して決定した。
試料の両面で表面粗度が異なる場合は、実際に使用する場合の光の透過方向が一致する向きで試料を固定して測定するのが良い。本発明においては、表面粗度が低い方から入光する向きで固定して測定した。
6.正面輝度低下
RISA−COLOR/ONE−II(ハイランド社製)を用いて測定を行った。市販のVA型液晶表示装置を料台上に水平に設置し、このパネルの中央部に131×131mmの大きさで白の画像(Nokia monitor test for windows V 1.0(Nokia 社製)のFarbeモード)を表示し、その白画像の上にスポイトにて水を3滴落とし、さらにその上に試料フィルムを置き、パネルとフィルムの間の水を均一に広げて密着させ、CCDカメラはディスプレイ表面から垂直方向1mの位置に固定し、以下の条件で輝度測定をした。求められた輝度をIsとした。
一方、試料フィルムを密着させないパネル自体の輝度を同様な方法で輝度測定をした。求められた輝度をIbとし、下記(1)式で正面輝度低下を算出し、正面輝度低下を%で表示した。
輝度の低下=(Ib−Is/Ib)×100(%) (1)
輝度は上記の白の画像を5×5の25個の部分に分割し、その中心部の3×3の9個の部分の全ピクセルの輝度を測定してその平均値で表示した。
また、試料フィルムは主拡散方向がパネルの横方向と略平行になるように設置して測定した。
7.視野角改善効果
RISA−COLOR/ONE−II(ハイランド社製)を用いて測定を行った。市販のVA型液晶表示装置を水平に設置し、このパネルの中央部に131×131mmの大きさで白の画像(Nokia monitor test for windows V 1.0(Nokia 社製)のFarbeモード)を表示し、その白画像の上にスポイトにて水を3滴落とし、さらにその上に拡散フィルムを置き、パネルとフィルムの間の水を均一に広げて密着させ、CCDカメラとディスプレイ間の距離を垂直状態で1mとして、CCDカメラを液晶表示装置のパネル表面に対して−70°から+70°までの間の赤道上を移動させて以下の条件でCIE表色系のYxy系のx値の角度依存性を測定し、垂線に対して0度の時のx値(x0)より70度の時のx値(x70)を求めた。一方、視野角向上フィルム試料を設置しないパネル自身のx値(x70)を求めて、Δx(70度)=x70−x70を算出した値で表示した。
x値は上記の白の画像を5×5の25個の部分に分割し、その中心部の3×3の9個の部分の全ピクセルの輝度を測定してその平均値で表示した。
また、試料フィルムは主拡散方向がパネルの横方向と略平行になるように設置して測定した。
なお、液晶表示装置の画面水平方向の視野角改善効果を評価する場合は、液晶画面の水平方向が上記の赤道方向になるように設置して測定をした。一方、液晶表示装置の画面垂直方向の視野角改善効果を評価する場合は、液晶画面の垂直方向が上記の赤道方向になるように設置して測定をした。
(実施例1)
環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013F−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))10質量部とポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住友ノーブレン メルトフローレート:2.5(230℃))90質量部とを、池貝鉄工社製PCM45押出機を用いて樹脂温度250℃にて溶融混合してTダイで押出し、鏡面の冷却ロールで冷却することにより厚み90μmの視野角向上フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着は静電気密着法で行った。冷却ロールの表面温度は20℃に設定した。フィルムは3m/分の速度で巻き取った。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、正面輝度低下が20%以内に抑制され、かつ顕著な視野角改善効果が発現しており、高品質であった。
なお、視野角向上フィルムを貼り付けない場合のパネル自体のΔx(70度)は+0.016であった。
(実施例2)
2台の溶融押し出し機を用い、基層として第1の押し出し機にて、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))35質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM)D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))65質量部を事前に混練をして供給し、表層として第2の押し出し機にて、ポリプロピレン系の接着性樹脂(アドマー(TM)QF551 三井化学社製 メルトフローレート:5.7(190℃))を供給して、Tダイ方式にて溶融共押出し後、梨地の冷却ロールで冷却することにより厚み56μmの視野角向上フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着はバキュームチャンバーを用いて行った。第1押し出し機および第2押し出し機共に一軸方式であり、出口温度はそれぞれ230及び250℃とした。また、冷却ロールの表面温度は50℃に設定した。フィルムは21m/分の速度で巻き取った。層厚み構成は8/40/8(μm)であった。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例1で得られた視野角向上フィルムよりもさらに正面輝度低下が少なく高品質であった。
(実施例3)
実施例2の方法において、フィルム厚み及び層厚み構成を40μm及び6/28/6(μm)として、押し出し機の出口温度を両方共に270℃に、巻き取り速度を18m/分に変更する以外は、実施例2と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果及び正面輝度低下共に優れており高品質であった。
(実施例4)
2台の溶融押し出し機を用い、基層として第1の押し出し機にて、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)5013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:8.6(230℃))50質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM)D9100.15 メルトフローレート:2.4(230℃))50質量部を供給し、表層として、第2の押し出し機にてポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住友ノーブレン メルトフローレート:2.5(230℃))を供給し、Tダイ方式にて溶融共押出し後、鏡面の冷却ロールで冷却することにより厚み115μm、層厚み構成30/55/30(μm)の視野角向上フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着はバキュームチャンバーを用いて行った。第1押し出し機は二軸方式であり、第2押し出し機共は一軸方式であった。出口温度は両押し出し機共に250℃とした。また、冷却ロールの表面温度は20℃に設定した。フィルムは3.0m/分の速度で巻き取った。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例1で得られた視野角向上フィルムよりは、視野角改善効果がやや劣るが、正面輝度低下が小さく高品質であった。
(実施例5)
実施例2の方法において、第1押し出し機および第2押し出し機の出口温度はそれぞれ250及び230℃に、冷却ロールの表面を梨地に、巻き取り速度を15m/分に変更する以外は、実施例2と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例2で得られた視野角向上フィルムより正面輝度低下が若干悪化するが、視野角改善効果が向上した。
(実施例6)
実施例1の方法において、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013F−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))とポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住友ノーブレン メルトフローレート:2.5(230℃))の配合割合をそれぞれ35質量部及び65質量部に、フィルム厚みを30μmに変更する以外は、実施例1と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例1で得られた視野角向上フィルムに比べて視野角改善効果が低下するが正面輝度低下が良化する。
(実施例7)
実施例1の方法で、フィルム厚みを60μmに変更する以外は、実施例1と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例1で得られた視野角向上フィルムよりは正面輝度低下は良くなるが、視野角改善効果が少なくなった。
(実施例8)
実施例2において、第1の押し出し機に供給する樹脂組成を環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))20質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM)D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))80質量部に、フィルム厚み及び層厚み構成を108μm及び24/60/24(μm)変更する以外は、実施例2と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果及び正面輝度低下共に優れており高品質であった。
(実施例9)
実施例2の方法において、第1の押し出し機に供給する樹脂組成を環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))10質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM)D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))90質量部に、厚みを108μm、層厚み構成を24/60/24(μm)に変更する以外は、実施例2と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例2で得られた視野角向上フィルムと同等の特性を有しており高品質であった。
(実施例10)
実施例2の方法において、厚みを84μm、層厚み構成を12/60/12(μm)に変更する以外は、実施例2と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例2で得られた視野角向上フィルムより正面輝度低下が大きくなるが、視野角改善効果が良くなり高品質であった。
(実施例11)
実施例5の方法において、冷却ロールの表面を鏡面に、冷却ロールの表面温度を20℃に、巻き取り速度を23m/分に変更する以外は、実施例5と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例5で得られた視野角向上フィルムと同等の特性を有しており高品質であった。
(実施例12)
2台の溶融押し出し機を用い、基層として第1の押し出し機にて、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)5013S−04 TopasAdvanced Polymers社製メルトフローレート:8.6(230℃))50質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製INFUSE(TM)D9100.15 メルトフローレート:2.4(23℃))50質量部を供給し、表層として、第2の押し出し機にてポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住友ノーブレンメルトフローレート:2.5(230℃))を供給し、Tダイ方式にて溶融共押出し後、鏡面の冷却ロールで冷却することにより厚み90μm、層厚み構成30/30/30(μm)の視野角向上フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着はバキュームチャンバーを用いて行った。第1押し出し機は二軸方式であり、第2押し出し機共は一軸方式であった。出口温度は両押し出し機共に250℃とした。また、冷却ロールの表面温度は20℃に設定した。フィルムは3.0m/分の速度で巻き取った。得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例5で得られた視野角向上フィルムよりは、視野角改善効果がやや劣るが、正面輝度低下が小さく高品質であった。
(実施例13)
実施例8の方法において、第1の押し出し機に供給する樹脂組成を環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 TopasAdvanced Polymers社製メルトフローレート:2.0(230℃))20質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製INFUSE(TM)D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))80質量部に、厚みを56μm、層厚み構成を12/32/12(μm)に変更する以外は、実施例8と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例8で得られた視野角向上フィルムよりは視野角改善効果が劣るが正面輝度低下が小さく優れていた。
(実施例14)
実施例1の方法で、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013F−04 Topas Advanced Polymers社製メルトフローレート:2.0(230℃))とポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住友ノーブレンメルトフローレート:2.5(230℃))の配合割合をそれぞれ35質量部及び65質量部に変更する以外は、実施例1と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例1で得られた視野角向上フィルムよりは正面輝度低下が若干悪化するが、視野角改善効果が向上した。
(実施例15)
実施例5の方法において、第1の押し出し機に供給する環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製メルトフローレート:2.0(230℃))35質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製INFUSE(TM)D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))65質量部を事前に混練をすることなく供給し、厚みを40μm、層厚み構成を6/28/6(μm)、第1押し出し機および第2押し出し機の出口温度はそれぞれ270及び290℃とした。また、冷却ロールの表面温度は20℃、フィルム巻き取り速度を9.5m/分に変更する以外は、実施例5と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例5で得られた視野角向上フィルムと同様の特性を有しており高品質であった。
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂(住友化学社製、住友ノーブレン FS2011DG3)50質量部、エチレン・ブテン共重合体(三井化学社製、タフマー A0585X)30質量部及びナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂(三井化学社製、ノティオ PN3560)20質量部を予め2軸の押し出し機で溶融押し出しすることにより得た混練されたポリオレフィン系樹脂組成物を、60mmφ単軸押出機(L/D;22)内で樹脂温度240℃にて溶融混合してTダイで押出した後、20℃のキャスティングロールで冷却することにより未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを縦延伸機のロール周速差を利用して延伸温度118℃で4.5倍に延伸し、更に横方向に145℃で8.2倍に延伸をし、158度で熱セットをした。引き続きその片面にコロナ処理をして厚み25μmの光拡散フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、正面輝度低下は小さいが、視野角改善効果が劣っており低品質であった。
(比較例2)
2台の溶融押し出し機を用い、基材層のA層として、第1の押し出し機にてポリプロピレン樹脂WF836DG3(住友化学社製、住友ノーブレン)100質量部を供給し、拡散層のB層として、第2の押し出し機にてポリプロピレン樹脂WF836DG3(住友化学社製、住友ノーブレン)17質量部とプロピレン・エチレン共重合体 HF3101C(日本ポリプロ社製)83質量部を供給し、ダイス内にてA/Bとなるように、Tダイ方式にて溶融共押出し後、20℃のキャスティングロールで冷却することにより未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを縦延伸機のロール周速差を利用して延伸温度120℃で4.8倍に延伸し、引き続いてテンタ―式延伸機により、165℃で加熱後、155℃の延伸温度で横方向に9倍延伸した。次いで166℃で熱固定を行って、A層及びB層の厚みはそれぞれ22.2μm及び2.8μmである視野角向上フィルムを得た。巻き取り直前において基層A表面にコロナ処理を行った。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、正面輝度低下は小さいが、視野角改善効果が劣っており低品質であった。
(比較例3)
実施例9の方法において、厚みを28μmに、層厚み構成を6/16/6(μm)に変更する以外は、実施例9と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、正面輝度低下は小さいが、視野角改善効果が劣っており低品質であった。
(比較例4)
実施例1の方法において、厚みを30μmに変更する以外は、実施例1と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、正面輝度低下は小さいが、視野角改善効果が劣っており低品質であった。
(比較例5)
実施例5の方法で、厚みを175μmに、層厚み構成を25/125/25(μm)に変更する以外は、実施例5と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果は良好であるが、正面輝度低下が大きく低品質であった。
(比較例6)
実施例6の方法において、厚みを150μmに変更する以外は、実施例6と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果は良好であるが、正面輝度低下が大きく低品質であった。
(比較例7)
実施例9の方法において、フィルム厚みを216μmに、層厚み構成を48/120/48(μm)に変更する以外は、実施例9と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果は良好であるが、正面輝度低下が大きく低品質であった。
(比較例8)
厚み100μmの高透明性ポリエステルフィルム(東洋紡績社製 コスモシャインA4300)の片面に、平均粒径が3μmの真球状のアクリル樹脂粒子(東洋紡績社製 タフチック(TM)FH−S300)50質量部とポリウレタン樹脂50質量部の混合部が乾燥後厚みで30μmになるように、塗工機を用いて、塗布および乾燥をすることにより視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果は良好であるが、正面輝度低下が大きく低品質であった。
(実施例16及び実施例17)
実施例1及び実施例2で得られた視野角向上フィルムを光学用両面粘着テープで市販のVA方式の液晶モニターの表面に主拡散方向がモニターの略水平方向になるように貼り付けて、水平方向の視野角改善効果及び正面輝度低下の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1及び実施例2と同等の結果が得られ、正面輝度低下を抑制した形で視野角改善効果が発現された。肉眼観察によっても水平方向の視野角改善効果が確認された。また、正面から観察した時の輝度低下も小さかった。
(比較例9及び比較例10)
比較例3及び比較例4で得られた視野角向上フィルムを光学用両面粘着テープで市販のVA方式の液晶モニターの表面に主拡散方向がモニターの略水平方向になるように貼り付けて、水平方向の視野角改善効果及び正面輝度低下の評価を行った。結果を表2に示す。
比較例3及び比較例4と同等の結果が得られ、正面輝度低下は小さかったが視野角改善効果が小さかった。肉眼観察によっても視野角改善効果は小さかった。
(比較例11及び実施例12)
比較例5及び比較例8で得られた視野角向上フィルムを光学用両面粘着テープで市販のVA方式の液晶モニターの表面に主拡散方向がモニターの略水平方向になるように貼り付けて、水平方向の視野角改善効果及び正面輝度低下の評価を行った。結果を表2に示す。
比較例6及び実施例7と同等の結果が得られ、視野角改善効果は良好であったが、正面輝度低下が大きかった。肉眼観察によっても水平方向の視野角改善効果は良好であったが正面から観察した時の輝度低下が大きかった。
(実施例18及び実施例19)
実施例16及び実施例17の視野角向上フィルムの両面粘着テープを貼り付けた表面の反対面に、クレハエラストマー社製のハード加工されたアンチリフレクションタイプのディスプレイ用保護フィルムを貼着して機能層が複合され視野角向上フィルム複合体を得た。該視野角向上フィルム複合体の両面粘着テープ側のセパレータを外して、市販のVA方式の液晶モニターの表面に主拡散方向がモニターの略水平方向になるように貼り付けて、水平方向の視野角改善効果及び正面輝度低下の評価を行った。
実施例16及び実施例17と同等の結果が得られた。さらに、反射防止効果が付加されるので、上記液晶パネルを明るい環境において観察しても視野角向上効果の低下が見られなかった。また、外光の映り込む場所で使用しても外光の映り込みが抑制されるので画像の視認性が向上した。また、ハード加工がされているので傷が付き難くなった。
(実施例20及び実施例21)
実施例16及び実施例17の視野角向上フィルムの両面粘着テープを貼り付けた表面の反対面に、クレハエラストマー社製のハード加工されたアンチグレアータイプのディスプレイ用保護フィルムを貼着して機能性層が複合され視野角向上フィルム複合体を得た。該視野角向上フィルム複合体の両面粘着テープ側のセパレータを外して、市販のVA方式の液晶モニターの表面に主拡散方向がモニターの略水平方向になるように貼り付けて、水平方向の視野角改善効果及び正面輝度低下の評価を行った。
実施例16及び実施例17と同等の結果が得られた。さらに、反射防止効果が付加されるので、上記液晶パネルを明るい環境において観察しても視野角向上効果の低下が見られなかった。また、外光の映り込む場所で使用しても外光の映り込みが抑制されるので画像の視認性が向上した。また、ハード加工がされているので傷が付き難くなった。
(実施例22及び実施例23)
実施例16及び実施例17において、主拡散方向フィルムの貼り付け方向を視野角向上フィルムの主拡散方向がパネルの略垂直方向になるように変更した。パネル画像の垂直方向の視野角改善効果が発現した。
(実施例24及び実施例25)
実施例16及び実施例17の方法において、液晶表示装置をTNタイプに変更して、視野角向上フィルムの貼り付け方向をそれぞれ略水平方向に貼着して水平方向の視野角改善効果及び正面輝度低下の評価をした。
結果を表3に示す。
(実施例26及び実施例27)
実施例16及び実施例17の方法において、液晶表示装置をTNタイプに変更して、視野角向上フィルムの貼り付け方向をそれぞれ略垂直方向に貼着して垂直方向の視野角改善効果及び正面輝度低下の評価をした。
結果を表3に示す。
(比較例13及び比較例14)
実施例23及び実施例24の方法において、液晶表示装置に貼着するフィルムを比較例4及び比較例5のフィルムを用いる以外は、実施例23及び実施例24と同様にして評価した結果を表3に示す。
(比較例15及び16)
実施例25及び実施例26の方法において、液晶表示装置に貼着するフィルムを比較例4及び比較例5のフィルムを用いる以外は、実施例25及び実施例26と同様にして評価した結果を表3に示す。
なお、視野角向上フィルムを貼り付けない場合のパネル自体のΔx(70度)は左右方向、下方向及び上方向の値はそれぞれ+0.048、−0.05及び+0.014であった。
表3より以下のことがわかる。
水平方向に関しては、本発明の視野角向上フィルムの使用により、VAタイプの液晶表示装置と同様に正面輝度低下を抑制した形で視野角特性が改善できる。
垂直方向は上側からの観察と下側からの観察とで改善効果が異なる。下方向よりの観察では水平方向よりはその効果が小さいが視野角特性が改善できる。しかし、上側からの観察での視野角特性の改善効果は極僅かである。上側からの観察においては、液晶表示装置自体の視野角特性が下側からの観察や水平方向の観察に比べて優れていることが該挙動差の原因になっていると推察している。
TNタイプの液晶表示装置は、色調反転の大きさが重要であるとされている。上記のカラーシフトでの上方向の効果は僅かであるが、色調反転特性では本発明の視野角向上フィルムにおいて上方向を含めていずれの方向においても顕著な改善が見られる。従って、本発明の視野角特性改善方法はTNタイプの液晶表示装置についても有効であると言える。
(実施例28)
実施例24の方法において、視野角向上フィルムの貼着場所を液晶セルの入光側に変更する以外は、実施例25と同様にして評価した。
Δx(70度)はー0.014であり、正面輝度低下率は13.6%であった。視野角向上フィルムを液晶セルの入光側に設置しても視野角向上効果が発現した。
(実施例29及び30)
それぞれ実施例2及び実施例5の視野角向上フィルムをPVAとヨウ素からなる偏光子の片側に偏光膜の吸収軸と視野角向上フィルムの主拡散方向配が直交するように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。
市販のVAタイプの液晶表示装置のパネルの上面側の偏光板を剥がして、上記偏光板に変更して、視野角向上フィルムの主拡散方向が水平方向になるように設置し、水平方向の視野角改善効果及び正面輝度低下を評価した。
実施例2及び実施例5と同等の結果が得られた。
なお、実施例2及び実施例5の視野角向上フィルムは、以下に示す方法による接着性評価により評価した結果、良好な貼着性を有していた。
一方、実施例1、4及び12等の表層に極性基を含有したポリオレフィン樹脂よりなる接着改良層が積層されていない視野角向上フィルムは該接着性が劣っていた。
(接着性評価法)
視野角向上フィルムの表面に、固形分濃度5質量%に調整したけん化度が74モル%であるポリビニルアルコールポリマー水溶液に下記方法で重合処理をしたブロックポリイソシアネート架橋剤及び有機スズ系化合物よりなる触媒をポリビニルアルコールポリマーに対してそれぞれ固形分比で0.04及び0.02になるように添加した配合溶液を、乾燥後のポリビニルアルコールポリマー層の厚みが、5μmになるようにワイヤーバーで塗布し、70℃で5分間乾燥した。ポリビニルアルコールポリマー水溶液には、判定が容易となるよう赤色染料を加えたものを使用した。作成した評価用試料を、両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、評価用試料のポリビニルアルコールポリマー層が形成された面の反対面を上記両面テープに貼り付けた。次いで、ポリビニルアルコールポリマー層を貫通して、基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、粘着テープ(ニチバン社製セロテープ(登録商標)CT−24;24mm幅)を升目状の切り傷面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して、完全に密着させた後、粘着テープを勢いよく垂直に引き剥がす作業を10回実施した。ポリビニルアルコールポリマー層が剥がれていない升目の個数を数え接着性を評価した。ポリビニルアルコールポリマー層が剥がれた升目の数が10回の平均値で50個以下の場合を良、50個を超える場合を不良とした。
(実施例31及び実施例32)
それぞれ実施例2及び実施例5の視野角向上フィルムをPVAとヨウ素からなる偏光子の片側に偏光膜の吸収軸と視野角向上フィルムの主拡散方向配が45度になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。
市販のTNタイプの液晶表示装置のパネルの上面側の偏光板を剥がして、上記偏光板に変更して、視野角向上フィルムの主拡散方向が水平方向になるように設置し、水平方向の視野角改善効果及び正面輝度低下を評価した。
実施例25と同等の結果が得られた。
(実施例33及び実施例34)
特開2009―73937号公報の実施例1の段落0204〜段落0205に記載された方法により製造した、片面が自己粘着層で反対面がアクリル系粘着層よりなる、光学用の両面粘着フィルム(基材フィルムの厚みは38μmに変更した)のアクリル系粘着層側のセパレートフィルムを剥がし、該アクリル系粘着層表面に、それぞれ実施例1及び実施例2の視野角向上フィルムを貼着することにより、視野角向上機能付保護フィルムを得た。
なお、上記光学用の両面粘着フィルムの自己粘着層表面の表層ダイナミック硬度は0.09mN/μmであった。また、平均表面粗度(Ra)は、0.04μmであった。
得られたそれぞれの視野角向上機能付保護フィルムの自己粘着層側のセパレートフィルムを剥がし、実施例24や実施例25において用いたTNタイプの液晶表示装置表面に視野角向上フィルムの主拡散方向が略水平方向に貼着して水平方向の視野角改善効果及び正面輝度低下の評価をした。
実施例24や実施例25と同等の視野角向上性能が発現され、視野角向上性能が優れていた。また、自己粘着層で表示画面表面に貼着されるので、貼着性に優れており、空気の噛み込みなしに貼着できた。例えば、少量の空気の噛み込みがあった場合も経時で空気が抜けて行く。また、自己粘着層はリペアー性を有しているので、簡単に取り外せ、再度貼着することもできた。一旦、取り外したときには、表示画面には全く糊残りはなく、表示画面の汚染は認められなかった。さらに、自己粘着層はクッション性を有するので表示画面の保護機能を有していた。
本発明の視野角向上フィルムは、直進透過性と拡散透過性の両方の特性兼備した変角配光分布パターンを有し、かつ出射光の角度により出射される光の波長依存性が視野角改善効果や正面輝度低下抑制に有効に働くように制御されているので、液晶表示装置の液晶セルの出射光側あるいは入光側に設置することにより、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制という二律背反事象を高度なレベルで満足させることができ、視野角改善効果と正面輝度低下抑制とが両立した液晶表示装置を提供することができるので、液晶表示装置の機能向上に極めて有用である。また、液晶表示装置は、視野角改善効果と正面輝度低下抑制とが両立しており商品価値が高い。従って、産業界への寄与は大きい。

Claims (23)

  1. 液晶表示装置の液晶セルより観測者側に設置され、かつ少なくとも二種の互いに非相溶性の樹脂からなる混合物を溶融押し出し成型してなる視野角向上フィルムであって、主拡散方向の波長440nmの光の出射角0度における透過度(I)に対する出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I×100)が0.33〜5.5%であること、及び波長440nmの光の主拡散方向の変角配光分布パターンの半値幅が18度以下であることを特徴とする視野角向上フィルム。
  2. 主拡散方向の波長440nmの光の出射角0度における透過度(I)に対する出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I×100)が0.33〜3.71%であることを特徴とする請求項1に記載の視野角向上フィルム。
  3. 波長550nmの光の全光線透過率が79〜95%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の視野角向上フィルム。
  4. 非相溶性の樹脂の少なくとも一種がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の視野角向上フィルム。
  5. 非相溶性の樹脂の二種がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項に記載の視野角向上フィルム。
  6. ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれることを特徴とする請求項に記載の視野角向上フィルム。
  7. 視野角向上フィルムの少なくとも片面の最表面に極性基を含有したポリオレフィン樹脂よりなる接着改良層が積層されていることを特徴とする請求項又はに記載の視野角向上フィルム。
  8. 視野角向上フィルムの観察者側の表面に、ハードコート層、反射低減層および防眩層より選ばれた機能性層が少なくとも一層積層されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の視野角向上フィルム。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の視野角向上フィルムを、液晶表示装置の液晶セルと光源との間に設置してなることを特徴とする液晶表示装置。
  10. 視野角向上フィルムの主拡散方向を、液晶表示装置の水平方向に設置してなることを特徴とする請求項に記載の液晶表示装置。
  11. 視野角向上フィルムの主拡散方向を、液晶表示装置の垂直方向に設置してなることを特徴とする請求項に記載の液晶表示装置。
  12. バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの両面に設置された偏光子とを有する液晶表示装置において、液晶セルの両面に設置された偏光子のどちらか一方の表面に、請求項1〜のいずれかに記載の視野角向上フィルムを配置して用いることを特徴とする液晶表示装置の視野角特性改善方法。
  13. 視野角向上フィルムの主拡散方向が表示画面の水平方向であることを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置の視野角特性改善方法。
  14. 視野角向上フィルムの主拡散方向が表示画面の垂直方向であることを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置の視野角特性改善方法。
  15. 視認側に配置して用いられる視野角向上フィルムの視認側に、ハードコート層、反射低減層および防眩層より選ばれた機能性層が少なくとも一層積層されていることを特徴とする請求項1214のいずれかに記載の液晶表示装置の視野角特性改善方法。
  16. 請求項1215のいずれかに記載の視野角特性改善方法を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
  17. 偏光子に請求項1〜のいずれかに記載の視野角向上フィルムが積層されていることを特徴とする偏光板。
  18. 請求項17に記載の偏光板の視野角向上フィルム表面に、ハードコート層、反射低減層および防眩層より選ばれた機能性層が少なくとも一層積層されていることを特徴とする偏光板。
  19. 請求項1〜のいずれかに記載の視野角向上フィルムの片面に自己粘着層が積層されていることを特徴とする視野角向上機能付保護フィルム。
  20. 自己粘着層が柔軟ポリマーよりなることを特徴とする請求項19に記載の視野角向上機能付保護フィルム。
  21. 一方の面が自己粘着層よりなり、他方の面が感圧粘着層よりなる両面粘着フィルムの感圧粘着層表面に請求項1〜のいずれかに記載の視野角向上フィルムを積層していることを特徴とする請求項19又は20に記載の視野角向上機能付保護フィルム。
  22. 視野角向上機能付保護フィルムの自己粘着層の反対面に、ハードコート層、反射低減層および防眩層より選ばれた機能性層が少なくとも一層積層されていることを特徴とする請求項1921のいずれかに記載の視野角向上機能付保護フィルム。
  23. 請求項1922のいずれかに記載の視野角向上機能付保護フィルムを液晶表示装置の最表面に着脱自在に貼り付けることを特徴とする視野角向上機能付保護フィルムの使用方法。
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