JP6101195B2 - 成形吸着体およびそれを用いた浄水器 - Google Patents

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Description

本発明は、吸着材として活性炭を含む成形吸着体、および、この成形吸着体を備えた浄水器に関する。
従来、浄水器に用いられる吸着体として、吸着材に活性炭を用いた成形吸着体が提案されている。例えば、特許文献1には、活性炭とセルロース繊維を主成分とし、活性炭100質量部に対するセルロース繊維の含有量が0.2質量部以上、40質量部以下であって、活性炭がセルロース繊維によりランダムに絡合保持されている抄紙による立体構造を有する活性炭系吸着体が記載されている(特許文献1(請求項1)参照)。また、特許文献2には、繊維状活性炭、粉末状活性炭および繊維状バインダーからなる混合物を成型せしめてなる活性炭成型体が記載されている(特許文献2(請求項1)参照)。
特開2002−018280号公報 特開2005−013883号公報
特許文献1、2に記載された成形吸着体のように、吸着材として粒子状活性炭を用いる場合、成形吸着体からの活性炭粒子の脱落が問題となる。活性炭粒子の脱落を抑制するには、繊維状バインダーの使用量を増加させる方法があるが、この場合、成形吸着体内部の空隙が減少し、通水時の圧力損失が大きくなるという問題がある。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、吸着性能に優れ、かつ、通水圧力損失が小さい成形吸着体を提供することを目的とする。
上記課題を解決することができた本発明の成形吸着体は、吸着材と、繊維状バインダーとを含有し、前記吸着材が、活性炭を含有し、前記活性炭として、中心粒子径が20μm〜100μm、かつ、粒子径が10μm以下の粒子の含有率が2体積%以下である粒子状活性炭を含有することを特徴とする。中心粒子径が20μm〜100μmの粒子状活性炭は、高い比表面積を有するとともに、成形吸着体を成形した際に活性炭粒子間に適度に空隙が形成されるため、通水圧力損失を低減することができる。粒子径が10μm以下の粒子の含有率が2体積%以下であれば、成形吸着体の通水圧力損失を低減することができる。また、粒子径が10μm以下の粒子の含有率が2体積%以下であれば、成形吸着体の単位体積当たりの吸着性能が向上する。
前記粒子状活性炭は、比表面積(BET法)が900m/g〜1200m/g、細孔容積(BET法)が0.40ml/g〜0.70ml/gであることが好ましい。前記吸着材は、ゼオライト、珪酸チタニウム、チタン酸ナトリウム、アルミノ珪酸塩、酸化チタン、イオン交換樹脂、キレート樹脂、イオン交換繊維およびキレート繊維よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。成形吸着体中の前記吸着材の含有率は、90質量%〜95質量%が好ましい。前記吸着材中の活性炭の含有率は、85質量%以上が好ましい。前記繊維状バインダーの濾水度は、20ml〜250mlが好ましい。本発明には、筒状の軸部材と、この軸部材の外表面に積層された前記成形吸着材とを備える浄水カートリッジ、および、この浄水カートリッジを用いた浄水器も含まれる。
本発明によれば、吸着性能に優れ、かつ、通水圧力損失が小さい成形吸着体が得られる。
浄水カートリッジの一例を示す縦断面図。 浄水カートリッジを内蔵した浄水器の一例を示す側面図。 粒子状活性炭の粒子径分布を示す図。
本発明の成形吸着体は、吸着材と、繊維状バインダーとを含有する。そして、前記吸着材が、中心粒子径が20μm〜100μm、かつ、粒子径が10μm以下の粒子の含有率が2体積%以下である粒子状活性炭を含有する。吸着材は、物理吸着性能または化学吸着性能を有する。活性炭とは、比表面積が800m/g以上の炭素物質である。
本発明で使用する粒子状活性炭は、体積基準の中心粒子径(小径側を0とした体積累積分布における累積50%に対応する粒子径)が20μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは35μm以上であり、100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下である。中心粒子径が20μm以上であれば、成形吸着体を成形した際に活性炭粒子間に適度に空隙が形成されるため、通水圧力損失を低減することができる。中心粒子径が100μm以下であれば、活性炭の単位質量当たりの吸着性能が高くなり、成形吸着体の吸着性能がより向上する。本発明において、体積基準の中心粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定する。
前記粒子状活性炭は、粒子径が10μm以下の粒子の含有率が2体積%以下、好ましくは1.7体積%以下、より好ましくは1.5体積%以下である。粒子径が10μm以下の粒子の含有率が2体積%以下であれば、成形吸着体を成形した際に、活性炭粒子間に適度に空隙が形成されるため、通水圧力損失を低減することができる。なお、粒子径が10μm以下の粒子の含有率の下限は0体積%である。粒子径が10μm以下の粒子の含有率は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した体積累積分布から求めることができる。
前記粒子状活性炭は、含有する粒子の最小粒子径が3μm以上であることが好ましく、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、30μm以下が好ましく、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。最小粒子径が3μm以上であれば、例えば、成形吸着体を用いた浄水カートリッジの軸部材に不織布を用いたり、成形吸着体の表面を不織布で覆ったりした場合に、活性炭微粒子によって不織布が目詰まりしてしまうことが抑制される。
前記粒子状活性炭の比表面積(BET法)は、900m/g以上が好ましく、より好ましくは950m/g以上、さらに好ましくは1000m/g以上であり、1200m/g以下が好ましく、より好ましくは1150m/g以下、さらに好ましくは1100m/g以下である。比表面積が900m/g以上であれば、活性炭自体の吸着性能が高く、得られる成形吸着体の吸着性能がより向上する。比表面積が1200m/g以下であれば、細孔径が比較的大きく、除去対象物質を素早く吸着できるため、得られる成形吸着体の吸着性能がより向上する。
前記粒子状活性炭の細孔容積(BET法)は、0.40ml/g以上が好ましく、より好ましくは0.45ml/g以上、さらに好ましくは0.50ml/g以上であり、0.70ml/g以下が好ましく、より好ましくは0.65ml/g以下、さらに好ましくは0.60ml/g以下である。細孔容積が0.40ml/g以上であれば、クロロホルム等の揮発性有機化合物を吸着し得る容量が大きくなり、得られる成形吸着体の吸着性能がより向上する。細孔容積が0.70ml/g以下であれば、成形吸着体の密度が高くなり、活性炭単位質量当たりの吸着性能が向上する。
前記粒子状活性炭の平均細孔径(BJH法)は、1.0nm以上が好ましく、より好ましくは1.3nm以上、さらに好ましくは1.5nm以上であり、2.5nm以下が好ましく、より好ましくは2.2nm以下、さらに好ましくは2.0nm以下である。平均細孔径(BJH法)が1.0nm以上であれば、除去対象物質が細孔内に拡散しやすくなり、吸着速度がより向上し、2.5nm以下であれば、除去対象物質と細孔内壁との距離が近くなり、分子間力が強くなるため、吸着力がより高くなる。
前記粒子状活性炭のヨウ素吸着量は、800mg/g以上が好ましく、より好ましくは900mg/g以上、さらに好ましくは1000mg/g以上であり、1500mg/g以下が好ましく、より好ましくは1400mg/g以下、さらに好ましくは1300mg/g以下である。ヨウ素吸着量が800mg/g以上であれば、活性炭自体の吸着性能が高く、得られる成形吸着体の吸着性能がより向上する。1500mg/g以下であれば、細孔径が比較的大きく、除去対象物質を素早く吸着できるため、得られる成形吸着体の吸着性能がより向上する。
前記粒子状活性炭の体積基準の中心粒子径、粒子径が10μm以下の粒子の含有率、最小粒子径は、活性炭の粉砕、分級によって調整できる。粉砕方法は、特に限定されず、ジェットミル、ボールミル、スタンプミルなどが挙げられる。分級方法は、特に限定されず、気流分級、篩による分級などが挙げられる。また、粒子状活性炭の比表面積、細孔容積、平均細孔径、ヨウ素吸着量は、活性炭製造時の賦活条件、粒子径分布などによって調整できる。
本発明の成形吸着体に使用する活性炭は、粒子状活性炭のほかに繊維状活性炭を含有してもよい。この場合、全活性炭中の粒子状活性炭の含有率は、85質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。本発明の成形吸着体は、活性炭として、前記粒子状活性炭のみを含有することも好ましい。なお、本発明において、活性炭粒子のアスペクト比(長径/短径)が3以下のものを粒子状活性炭、アスペクト比が3超のものを繊維状活性炭とする。
また、前記活性炭として、表面に銀が添着された銀添着活性炭を用いてもよい。銀添着活性炭を使用することで、成形吸着体に抗菌性能を付与できる。銀添着活性炭としては、銀添着粒子状活性炭、銀添着繊維状活性炭のいずれも使用できる。全活性炭中の銀添着活性炭の含有率は、1.0質量%以上が好ましく、より好ましくは1.2質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、2.5質量%以下が好ましく、より好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下である。
前記活性炭は、炭素原料を炭化した後、水蒸気賦活、アルカリ賦活することで得られる。炭素原料としては、フェノール樹脂などの合成樹脂、ヤシ殻、木質、もみ殻、石炭などを用いることができる。これらの中でも、成形した際の充填密度を高くできることから、合成樹脂、ヤシ殻、石炭が好ましい。特に、不純物が少なく、粉砕後にも良好な吸着性能を有することからフェノール樹脂などの合成樹脂やヤシ殻が好ましい。
前記粒子状活性炭としては、市販のものも使用することができる。市販の粒子状活性炭としては、味の素ファインテクノ社製のホクエツ;クラレケミカル社製のクラレコール(登録商標);クレハ社製のBAC(登録商標);日本エンバイロケミカルズ社製の粒状白鷺(登録商標);MCエバテック社製のアマソーブ(登録商標);UES社製の活力炭(登録商標)などが挙げられる。
本発明の成形吸着体は、吸着材として、前記活性炭の他に、ゼオライト、珪酸チタニウム、チタン酸ナトリウム、アルミノ珪酸塩、酸化チタン、イオン交換樹脂、キレート樹脂、イオン交換繊維、キレート繊維などを含有してもよい。この場合、吸着材中の活性炭の含有率は、85質量%以上が好ましく、より好ましくは87質量%以上、さらに好ましくは89質量%以上である。
上記活性炭以外の吸着材において、イオン交換繊維、キレート繊維のような繊維状物質を配合すると、成形吸着体中に適度に空隙を形成することができ、また、繊維状物質が粒子状活性炭と絡み合うことで成形吸着体の機械的強度も高めることができる。よって、吸着材中の繊維状物質の含有率は、1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、15質量%以下が好ましく、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは11質量%以下である。なお、本発明において、繊維状物質の中でも、濾水度が250ml以下の物質は繊維状バインダーに分類する。
本発明の成形吸着体中の吸着材の含有率は、90質量%以上が好ましく、より好ましくは91質量%以上、さらに好ましくは92質量%以上であり、95質量%以下が好ましい。吸着材の含有率が85質量%以上であれば、成形吸着体の吸着性能が向上し、95質量%以下であれば、相対的に繊維状バインダーの含有量が増加し、成形吸着体の機械的強度が向上する。
本発明の成形吸着体は、繊維状バインダーを含有する。繊維状バインダーは、粒子状活性炭などの吸着材に絡み合うことで保持するため、活性炭の吸着性能を維持したまま成形できる。繊維状バインダーとしては、アクリル繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などが挙げられる。これらの中でも、吸着材を保持しやすいことからアクリル繊維、セルロース繊維が好ましく、特に成形吸着体の機械的強度を向上できることからアクリル繊維が好適である。
前記繊維状バインダーとしては、フィブリル化繊維が好ましい。フィブリル化繊維とは、摩擦作用などによって、繊維内部に存在するフィブリル(小繊維)を繊維表面に現させ、繊維表面を毛羽立ちささくれさせた繊維である。繊維状バインダーのフィブリル化は、リファイナー処理、ビーティング処理により行うことができる。
前記繊維状バインダーの濾水度は、20ml以上が好ましく、より好ましくは60ml以上、さらに好ましくは110ml以上、特に好ましくは150ml以上であり、250ml以下が好ましく、より好ましくは240ml以下、さらに好ましくは230ml以下である。繊維状バインダーの濾水度が20ml以上であれば、成形吸着体の通水圧力損失を低減できる。特に、本発明で使用する特定の粒子径分布を有する粒子状活性炭では、濾水度が110ml以上の繊維状バインダーを用いると、成形吸着体の通水圧力損失を一層低減できる。なお、繊維状バインダーの濾水度とは、成形吸着体の作製に使用される繊維状バインダーの濾水度を指す。具体的には、成形吸着体の製造に使用するスラリーに含まれる繊維状バインダーの濾水度である。
前記繊維状バインダーの含有量は、前記吸着材100質量部に対して1質量部以上が好ましく、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。繊維状バインダーの含有量が1質量部以上であれば、成形吸着体の機械的強度が向上し、20質量部以下であれば、成形吸着体の通水圧力損失がより低減される。
本発明の成形吸着体の形状は特に限定されず、使用用途に応じて適宜調節すればよい。成形吸着体の形状としては、円柱状、円筒状などが挙げられる。例えば、成形吸着体を水栓一体型の浄水器に使用する場合、成形吸着体の形状は、内径4mm〜20mm、外径20mm〜50mm、全長50mm〜250mmの円筒状が好ましい。
本発明の成形吸着体の密度は、0.30g/ml以上が好ましく、より好ましくは0.32g/ml以上、さらに好ましくは0.35g/ml以上であり、0.50g/ml以下が好ましく、より好ましくは0.48g/ml以下、さらに好ましくは0.46g/ml以下である。密度が0.30g/ml以上であれば、単位体積当たりの吸着材の含有量が多く、吸着性能がより良好となる。特に本発明の成形吸着体は、特定の粒子径分布を有する粒子状活性炭を用いているため、密度を高くしても通水圧力損失を低くすることができる。密度が0.50g/ml以下であれば、成形吸着体の通水圧力損失をより低減できる。
本発明の成形吸着体の通水圧力損失は、0.10MPa以下が好ましく、より好ましくは0.08MPa以下、さらに好ましくは0.06MPa以下である。通水圧力損失の下限は特に限定されないが、通常0.01MPa程度である。通水圧力損失の測定方法は後述する。
本発明の成形吸着体は、湿式成形により作製できる。湿式成形は、例えば、スラリー調製工程、吸引工程、乾燥工程を有することが好ましい。
前記スラリー調製工程では、吸着材および繊維状バインダーを含有する混合材料を水に分散させてスラリーを調製する。混合材料を分散させる方法は特に限定されないが、例えば、ビーターを用いることができる。なお、スラリーの調製は、吸着材、繊維状バインダー等の材料を別々に水に投入した後、混合してもよい。スラリーを調製する際、水の使用量は、混合材料100質量部に対して、2000質量部以上が好ましく、より好ましくは3000質量部以上、さらに好ましくは4000質量部以上であり、10000質量部以下が好ましく、より好ましくは9000質量部以下、さらに好ましくは8000質量部以下である。
前記吸引工程では、吸引用成形型をスラリー中に浸漬し、ポンプを用いてスラリーを吸引し、成形型の表面に混合材料を堆積させる。前記吸引用成形型は、スラリーを吸引できるように吸引用の貫通孔が形成されており、この貫通孔に連通するノズルにポンプを接続する。スラリーを吸引する時間(成形時間)は、特に限定されないが、50秒以下が好ましく、より好ましくは40秒以下、さらに好ましくは35秒以下である。成形時間が短いほど生産性が向上する。成形時間の下限は特に限定されないが、通常5秒程度である。特に、繊維状バインダーとして濾水度が110ml以上(好ましくは150ml以上)のものを使用すれば、繊維状バインダーの保水力が低くなり、成形時間を短縮することができる。
なお、後述する軸部材を備えた浄水カートリッジを作製する場合には、吸引用成形型に代えて軸部材を使用し、軸部材の表面に混合材料を堆積させてもよい。この場合、粒子状活性炭の最小粒子径が3μm以上であれば、不織布を巻き付けた軸部材を用いても、不織布の目つまりが抑制され、成形時間を短縮することができる。
前記乾燥工程では、混合材料が堆積した吸引用成形型を引き上げ、堆積物を乾燥させる。乾燥後の混合材料を吸引用成形型から取り外すことで、成形吸着体が得られる。乾燥温度は100℃〜120℃、乾燥時間は4時間〜6時間が好ましい。なお、吸引用成形型に代えて軸部材を用いている場合には、堆積物を乾燥すれば、浄水カートリッジが得られる。
なお、繊維状バインダーの種類や堆積物の乾燥条件によっては、乾燥工程において繊維状バインダーが溶融又は変形する場合がある。繊維状バインダーの変形等の程度が大きくなると、成形吸着体中の空隙の体積が縮小し、浄水カートリッジの通水圧力損失が高くなったり、寸法安定性が低下したりする傾向がある。そのため、繊維状バインダーの種類に応じて堆積物の乾燥条件を選択することが好ましく、特に乾燥温度を低く設定することがより好ましい。繊維状バインダーの変形等を抑制する方法としては、繊維状バインダーとしてアクリル樹脂製繊維(アクリロニトリルを主成分(85質量%以上)とする共重合体製の繊維)を使用し、且つ、乾燥温度100℃〜120℃の条件で乾燥工程を行う事により、繊維状バインダーの変形等を充分に抑止することができる。
本発明の成形吸着体は、浄水器に用いられる浄水カートリッジに好適に使用できる。浄水カートリッジの構成としては、例えば、筒状の軸部材と、この軸部材の外表面に積層された成形吸着材とを備える構成が挙げられる。軸部材を有することにより、成形吸着体の機械的強度を高めることができる。前記軸部材としては、貫通孔を有する多孔性筒部材が好ましい。多孔性筒部材の形状は特に限定されず、円筒状、多角柱状が挙げられる。多孔性筒部材の材質としては樹脂、金属などが使用できる。また、活性炭粒子が軸部材内部へ入り込むことを防止できることから、軸部材としては、外表面に不織布を巻き付けた多孔性筒部材が好ましい。
浄水カートリッジの具体的な構成の一例を、図1を参照して説明する。なお、浄水カートリッジは、図1に記載された態様に限定されるものではない。浄水カートリッジ1は、筒状の軸部材2と、この軸部材の外表面に積層された成形吸着材3と、前記軸部材2の一方の端部に取り付けられた接続部材4と、前記多孔性軸部材の他方の端部に取り付けられたカバー5とを有する。前記軸部材2は、円筒状であり、複数の貫通孔2aが形成されている。軸部材2の外表面には、不織布6が巻き付けられている。接続部材4は、浄水器本体に接続可能に形成されている。また、前記成形吸着体3の周囲には、成形吸着体3を保護する不織布7が巻き付けられている。
図1に示した浄水カートリッジ1は、成形吸着体3の外側を原水流路とする。原水は成形吸着体3を通過し、軸部材2の内部に流入する。この際、成形吸着体3に含まれる吸着材(図示せず)により浄化され、浄水となる。得られた浄水は、接続部4から排出される。
本発明の浄水器は、前記浄水カートリッジを用いたものであれば特に限定されない。浄水器としては、例えば、水道の蛇口の先端に直接取り付ける蛇口直結型;蛇口または蛇口に設けた分岐水栓からホースまたは配管などで接続して、蛇口近傍に設置する据え置き型;蛇口に浄水カートリッジが組み込まれた蛇口一体型(水栓一体型);シンクの下に設置するアンダーシンク型などが挙げられる。
図2は、浄水器の好ましい態様を示す側面図である。浄水器10は、蛇口内部に浄水カートリッジ1が交換可能に内蔵された水栓一体型浄水器である。浄水器10は、分離可能な頭部11と胴部12とを有する。頭部11と胴部12とを分離して、浄水器10の内部に浄水カートリッジ1を装着する。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
1.評価方法
[中心粒子径、最小粒子径、粒子径10μm以下の粒子含有率]
粒子状活性炭の中心粒子径、最小粒子径、粒子径10μm以下の粒子含有率は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製、マイクロトラック、型式「MT3300」)を用いて測定した。粒子径分布は、粒子径0.021μm〜2000μmの範囲を対数スケールで132分割して、各区間の粒子径を有する活性炭粒子の体積を計測した。
[比表面積、細孔容積、平均細孔径]
粒子状活性炭の比表面積、細孔容積、平均細孔径は、比表面積測定装置(日本ベル社製、BELSORP−18PLUS HT)を用いて測定した。なお、比表面積および細孔容積はBET法により算出し、平均細孔径はBJH法により算出した。
[ヨウ素吸着量]
粒子状活性炭のヨウ素吸着量は、JIS K 1474(2007)の6.1.1.1ヨウ素吸着性能に準拠して測定した。具体的には、粒子状活性炭にヨウ素溶液(0.05mol/L)を50mL加え、室温(20〜30℃)で吸着させた後、上澄み液を分離した。上澄み液10mLに指示薬としてでんぷん溶液(10g/L)を加え,チオ硫酸ナトリウム溶液(0.1mol/L)で滴定した。残留しているヨウ素濃度から粒子状活性炭の単位質量当たりの吸着量を求め、吸着等温線を作成し、その吸着等温線からヨウ素の残留濃度2.5g/Lのときの吸着量を求めた。
[濾水度]
繊維状バインダーの濾水度は、JIS P 8121−2(2012)「カナダ標準濾水度法」に準拠して測定した。具体的には、繊維を精製水に分散させた懸濁液(固形分濃度0.30質量%)を1000mL調製した。繊維の分散は、成形吸着体の作製に使用するスラリーの調製時と同じ条件にて攪拌を行った。この懸濁液の温度を20.0℃に調整した。この懸濁液を試験試料として、カナダ標準ろ水度試験器(安田精機製作所製、カナディアンスタンダード フリーネステスター)を用いて測定を行った。測定は、2回行いその平均値を算出した。
[密度]
成形吸着体の密度は、成形吸着体の質量を見かけ体積で除することで求めた。なお、見かけ体積は、ノギスを用いて成形吸着体の寸法を測定し、算出した。
[通水圧力損失]
成形吸着体の通水圧力損失は、成形吸着体に対して3L/分の流量で通水したときの圧力損失を測定した。なお、成形吸着体の形状は、内径が7.5mmφ、外径が27mmφ、全長が118.2mmの円筒状とした。円筒状成形吸着体の外周面から径方向内方に向けて通水した。
[吸着性能]
浄水カートリッジの吸着性能は、JIS S 3201(2010)の「6.4除去性能試験」に準拠して測定した。具体的には、被除去物を含む水を、浄水カートリッジに3L/分の流量で1200L通水し、ろ過水中の被除去物の除去率を求めた。
2.粒子状活性炭の準備
表1に示す物性を有する粒子状活性炭を準備した。粒子状活性炭AおよびBには、市販されている粒子状活性炭を使用し、粒子状活性炭Hには市販の銀添着粒子状活性炭を使用した。粒子状活性炭C、F、Gは、粒子状活性炭Aを原料として、超音波篩分級装置(セイシン社製、型式「KSFR−800」)を用いて調製した。篩(目開き25μm)のふるい上を粒子状活性炭C、篩(目開き25μm)のふるい下を粒子状活性炭F、篩(目開き53μm)のふるい上を粒子状活性炭Gとした。粒子状活性炭D、Eは、粒子状活性炭Aを原料として、気流分級装置(ホソカワミクロン社製、型式「100ATP」)を用いて調製した。分級条件は、粒子状活性炭Dは、ローター回転速度5000rpm、風量4.0Nm/min、2次風量2.0Nm/minとし、粒子状活性炭Eは、ローター回転速度7000rpm、風量4.0Nm/min、2次風量2.0Nm/minとした。粒子状活性炭Iは、粒子状活性炭Dと粒子状活性炭Hとを、質量比で98:2で混合して調製した。粒子状活性炭A、D、F、GおよびIの粒子径分布を図3に示した。
3.浄水カートリッジの製造
浄水カートリッジNo.1〜13は、下記のようにして作製した。なお、軸部材には、いずれも樹脂製多孔性円筒部材の外表面に不織布を巻き付けたもの(内径:6mm、外径:7.5mm、全長:118.2mm)を使用した。また、軸部材の外表面に形成する成形吸着体の形状はいずれも、内径が7.5mmφ、外径が27mmφ、全長が118.2mm(見かけ体積63.7mL)の円筒状体となるように調整した。
3−1.浄水カートリッジNo.1
吸着材として、粒子状活性炭Cを90質量%、キレート繊維(中部キレスト社製、キレストファイバー IRY−SW)を3質量%、繊維状バインダーとしてアクリル繊維(東洋紡績社製、「BiPUL(登録商標)」、ビーターにより濾水度を70mLに調製したもの)を7質量%含有する混合材料を調製した。この混合材料100質量部を、5000質量部の水に分散させてスラリーを調整した。
このスラリーを用いて湿式成形により成形吸着体を成形した。具体的には、軸部材の両端に、ポンプに接続されたチューブを接続した。このチューブを接続した軸部材を、スラリーを満たしたタンクに浸漬した後、ポンプを駆動してスラリーを吸引し、軸部材の表面に混合材料を堆積させた。この際、乾燥後の成形吸着体の外径が27mmとなるようにポンプの駆動時間を調整した。混合材料が堆積した軸部材をタンクから引き揚げ、堆積物を120℃で4時間乾燥させ、軸部材の外表面に成形吸着体が積層した浄水カートリッジを得た。得られた浄水カートリッジNo.1の成形吸着体は、通水圧力損失が0.025MPa、成形吸着体の密度が0.354g/mLであった。
3−2.浄水カートリッジNo.2
前記浄水カートリッジNo.1の製造方法において、繊維状バインダーを、アクリル繊維(東洋紡績社製、「BiPUL」、ビーターにより濾水度を180mLに調製したもの)に変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.2を得た。得られた浄水カートリッジNo.2は、通水圧力損失が0.023MPa、成形吸着体の密度が0.357g/mLであった。
3−3.浄水カートリッジNo.3
前記浄水カートリッジNo.2の製造方法において、粒子状活性炭を、粒子状活性炭Dに変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.3を得た。得られた浄水カートリッジNo.3は、通水圧力損失が0.037MPa、成形吸着体の密度が0.391g/mL、であった。
3−4.浄水カートリッジNo.4
前記浄水カートリッジNo.2の製造方法において、粒子状活性炭を、粒子状活性炭Eに変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.4を得た。得られた浄水カートリッジNo.4は、通水圧力損失が0.052MPa、成形吸着体の密度が0.393g/mLであった。
3−5.浄水カートリッジNo.5
前記浄水カートリッジNo.1の製造方法において、粒子状活性炭を、粒子状活性炭Bに変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.5を得た。得られた浄水カートリッジNo.5は、通水圧力損失が0.077MPa、成形吸着体の密度が0.450g/mLであった。
3−6.浄水カートリッジNo.6
前記浄水カートリッジNo.5の製造方法において、繊維状バインダーを、アクリル繊維(東洋紡績社製、「BiPUL」、ビーターにより濾水度を180mLに調製したもの)に変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.6を得た。得られた浄水カートリッジNo.6は、通水圧力損失が0.077MPa、成形吸着体の密度が0.444g/mLであった。
3−7.浄水カートリッジNo.7
前記浄水カートリッジNo.2の製造方法において、粒子状活性炭を、粒子状活性炭Iに変更し、各材料の使用量を粒子状活性炭Iを91.5質量%、キレート繊維を3.5質量%、繊維状バインダーを5質量%に変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.7を得た。得られた浄水カートリッジNo.7は、通水圧力損失が0.036MPa、成形吸着体の密度が0.390g/mLであった。
3−8.浄水カートリッジNo.8
吸着材として粒子状活性炭Aを90質量%、繊維状バインダーとしてアクリル繊維(東洋紡績社製、「BiPUL」、ビーターにより濾水度を180mLに調製したもの)を10質量%含有する混合材料を調製した。この混合材料100質量部を、5000質量部の水に分散させてスラリーを調整した。このスラリーを用いて浄水カートリッジNo.1の製造方法と同様にして湿式成形により浄水カートリッジを作製した。得られた浄水カートリッジNo.8は、通水圧力損失が0.099MPa、成形吸着体の密度が0.352g/mLであった。
3−9.浄水カートリッジNo.9
前記浄水カートリッジNo.8の製造方法において、吸着材を粒子状活性炭82質量%、珪酸チタニウム(クラレケミカル社製、「クラレコール(登録商標) MAP60/200T」)11質量%に変更し、繊維状バインダーの含有率を7質量%に変更したこと以外は同様にして、浄水カートリッジNo.9を得た。得られた浄水カートリッジNo.9は、通水圧力損失が0.103MPa、成形吸着体の密度が0.353g/mLであった。
3−10.浄水カートリッジNo.10
前記浄水カートリッジNo.9の製造方法において、繊維状バインダーを、アクリル繊維(東洋紡績社製、「BiPUL」、ビーターにより濾水度を70mLに調製したもの)に変更したこと以外は同様にして、浄水カートリッジNo.10を得た。得られた浄水カートリッジNo.10は、通水圧力損失が0.082MPa、成形吸着体の密度が0.356g/mLであった。
3−11.浄水カートリッジNo.11
前記浄水カートリッジNo.10の製造方法において、珪酸チタニウムを、キレート繊維(中部キレスト社製、キレストファイバー(登録商標) IRY−SW)に変更したこと以外は同様にして、浄水カートリッジNo.11を得た。得られた浄水カートリッジNo.11は、通水圧力損失が0.073MPa、成形吸着体の密度が0.365g/mLであった。
3−12.浄水カートリッジNo.12
前記浄水カートリッジNo.9の製造方法において、粒子状活性炭を、粒子状活性炭Fに変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジを作製した。しかし、混合材料を軸部材の表面に十分に堆積させることができなかった。これは、粒子状活性炭中の粒子径10μm以下の粒子の含有率が高いため、軸部材の表面に少量の混合材料が堆積すると、不織布が目詰まりしてしまい、スラリーの吸引が阻害されたためと考えられる。
3−13.浄水カートリッジNo.13
前記浄水カートリッジNo.9の製造方法において、粒子状活性炭を、粒子状活性炭Gに変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.13を得た。得られた浄水カートリッジNo.13は、通水圧力損失が0.029MPa、成形吸着体の密度が0.440g/mLであった。
得られた浄水カートリッジ、成形吸着体の評価結果を表2に示した。
吸着材として、中心粒子径が20μm〜100μm、かつ、粒子径が10μm以下の粒子の含有率が2体積%以下である粒子状活性炭を用いた浄水カートリッジNo.1〜7は、成形吸着体の通水圧力損失が低く、吸着性能に優れている。粒子状活性炭Aを用いた成形吸着体No.8〜10は、クロロホルム除去性能は優れるものの、通水圧力損失が大きい。浄水カートリッジNo.11は、粒子状活性炭中の粒子径10μm以下の粒子の含有率が高く、かつ、成形吸着体の密度が低いため、成形吸着体の強度が低かった。そのため、長時間の使用に耐えうる強度を有さなかった。浄水カートリッジNo.12は、吸着材として、中心粒子径が20μm未満である粒子状活性炭を用いた場合であるが、製造時の吸引工程において、軸部材の不織布が目詰まりしてしまい成形吸着体を作製できなかった。浄水カートリッジNo.13は、吸着材として、中心粒子径が100μm超である粒子状活性炭を用いた場合であるが、成形吸着体の通水圧力損失は低いものの、十分な吸着性能が得られなかった。
本発明の成形吸着体は、浄水器の吸着材として好適に使用できる。
1:浄水カートリッジ、2:軸部材、3:成形吸着体、4:接続部材、5:カバー、6:不織布、7:不織布、10:浄水器、11:頭部、12:胴部

Claims (10)

  1. 吸着材と、繊維状バインダーとを含有する成形吸着体であって、
    前記吸着材が、活性炭を含有し、
    前記活性炭として、中心粒子径が20μm〜100μm、粒子径が10μm以下の粒子の含有率が2体積%以下、かつ、含有する粒子の最小粒子径が3μm〜25μmである粒子状活性炭を含有し、
    前記繊維状バインダーの濾水度が、110ml〜250mlであることを特徴とする成形吸着体。
  2. 吸着材と、繊維状バインダーとを含有する成形吸着体であって、
    前記吸着材が、活性炭を含有し、
    前記活性炭として、中心粒子径が20μm〜76.3μm、かつ、粒子径が10μm以下の粒子の含有率が2体積%以下である粒子状活性炭を含有し、
    前記繊維状バインダーの濾水度が、110ml〜250mlであることを特徴とする成形吸着体。
  3. 前記粒子状活性炭は、比表面積(BET法)が900m2/g〜1200m2/g、細孔容積(BET法)が0.40ml/g〜0.70ml/gである請求項1または2に記載の成形吸着体。
  4. 前記吸着材が、ゼオライト、珪酸チタニウム、チタン酸ナトリウム、アルミノ珪酸塩、酸化チタン、イオン交換樹脂、キレート樹脂、イオン交換繊維およびキレート繊維よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形吸着体。
  5. 成形吸着体中の前記吸着材の含有率が、90質量%〜95質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形吸着体。
  6. 前記吸着材中の活性炭の含有率が、85質量%以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形吸着体。
  7. 前記吸着材が、イオン交換樹脂および/またはキレート樹脂を含有し、
    前記吸着材中のイオン交換樹脂および/またはキレート樹脂の含有率が、1質量%〜15質量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形吸着体。
  8. 密度が、0.30g/ml〜0.50g/mlである請求項1〜7のいずれか一項に記載の成形吸着体。
  9. 筒状の軸部材と、この軸部材の外表面に積層された請求項1〜8のいずれか一項に記載の成形吸着体とを備えることを特徴とする浄水カートリッジ。
  10. 請求項9に記載の浄水カートリッジを用いることを特徴とする浄水器。
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