JP2003166118A - バインダー繊維素材 - Google Patents

バインダー繊維素材

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JP2003166118A
JP2003166118A JP2002276037A JP2002276037A JP2003166118A JP 2003166118 A JP2003166118 A JP 2003166118A JP 2002276037 A JP2002276037 A JP 2002276037A JP 2002276037 A JP2002276037 A JP 2002276037A JP 2003166118 A JP2003166118 A JP 2003166118A
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fibrillated
fibers
binder fiber
binder
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Shunji Tatsumi
俊二 巽
Hiroichi Abe
博一 阿部
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粉体の特性を損なうことのない、粉体に対し
て高度の接着性を有するバインダー繊維材の提供。 【解決手段】 フィブリル径が1μm以下であるフィブ
リルの網目状構造を有するフィブリル化繊維からなり、
かつフィブリル化繊維が水で膨潤されてなることを特徴
とするバインダー繊維素材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フィブリル繊維の
網目状構造を有するフィブリル化繊維からなるバインダ
ー繊維素材に関する。
【0002】
【従来の技術】バインダー素材といわれる材料には、接
着剤で代表されるエポキシ樹脂、アクリル系ラテック
ス、ポリビニルアルコール、でんぷん糊などの、液状も
しくは乳化物がある。有機溶剤の使用を避ける目的で、
近年では、アモルファスポリオレフィン等もバインダー
素材として使用されるケースも見られる。
【0003】繊維状のバインダー素材としては、熱融着
性を有するポリエステル繊維がよく知られており、ま
た、フィブリル化ポリオレフィンやフィブリル化セルロ
ース等も知られている。
【0004】アクリル系繊維では、古くは特開昭48−
56925号公報等に易フィブリル化繊維が開示されて
いる。最近では、バインダー機能をもつ易フィブリル化
繊維が特開2000−265321号公報に開示されて
いる。これらのバインダー繊維材は、不織布や紙の補強
を目的とする素材であり、不織布や紙などの繊維のマス
構造中に粉体を捕捉、保持することを目的とするもので
はない。これらの既知文献には、紙の強度アップに関す
る記載されているが、フィブリル化繊維におけるフィブ
リルの状態、構造についての記載はない。特開平11−
293516号公報には、湿式抄紙工程での強度保持性
について改質された割繊極細吸水性アクリル繊維が開示
され、ワイパーやフィルターに用いられるとの例示があ
るが、叩解等の割繊作用により得られる極細繊維乃至フ
ィブリルの形状、状態等についても、また極細繊維塊の
紛体の捕捉、保持機能についても示唆する開示がない。
【0005】一方、最近では、さまざまな粉体をシート
状にして粉体の機能を有効に活用しようとする動きがあ
る。代表的には、活性炭をサンドイッチにしたシート状
活性炭が挙げられる。この例では、活性炭の細孔を閉鎖
せずに、高度に接着性を高めることが開発のポイントと
推察される。
【0006】また、粉体の利用に係る新素材の開発で
は、粉体をシート化したいというニーズは高い。粉体を
フィルム中に練り込んだり、樹脂に含浸して接着させる
等の方法が採られることが多いが、粉体の表面特性の有
効な発現を損なう欠点がある。
【特許文献1】特開昭48−56925号公報
【特許文献2】特開2000−265321号公報
【特許文献3】特開平10−101175号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、粉体の特性
を損なわないで、粉体に対して高度の接着性を有するバ
インダー素材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、細かな粉
体を捕捉し、強固に接着固定化して脱落しにくくするバ
インダー素材を探求した結果、本発明を完成した。
【0009】すなわち本発明は次の通りである。
【0010】1.フィブリル径が1μm以下であるフィ
ブリル繊維から構成された網目状構造を有するフィブリ
ル化繊維でなり、該フィブリル化繊維が水で膨潤されて
なることを特徴とするバインダー繊維素材。
【0011】2.フィブリル繊維が酸性基を有すること
を特徴とする請求項1記載のバインダー繊維素材。
【0012】3.酸性基がカルボキシル基であることを
特徴とする請求項2記載のバインダー繊維素材。
【0013】4.フィブリル繊維がアクリル系繊維であ
ることを特徴とする請求項1、2又は3記載のバインダ
ー繊維素材。 5.カルボキシル基が2〜15wt%含有される請求項
1〜4のいずれかの請求項に記載されるバインダー繊維
素材。 6.フィブリル化繊維の水膨潤度が300wt%以上で
あることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載さ
れたバインダー繊維素材。 7.フィブリル径が1μm以下であるフィブリル繊維か
ら形成された網目状構造を有するフィブリル化繊維から
なり、かつフィブリル化繊維が水で膨潤され、粉体抱き
込み性強度(T)が60以上を示すフィブリル化繊維か
らなるバインダー繊維素材。 8.ゼーター(ζ)電位が、PH2〜10の範囲におい
て、−10〜−20Vであることを特徴とする請求項1
から4のいずれかの請求項に記載されたバインダー繊維
素材。 9.カルボキシル基含有モノマーを共重合したアクリル
系ポリマーを、これとは組成の異なるアクリル系ポリマ
ーと混合して硝酸濃厚溶液に溶解してなる紡糸原液を希
硝酸溶液中に押し出してなる凝固物を水洗−延伸して得
られる繊度1dtex〜17dtexのアクリル繊維を
脱水後、一度も乾燥させることをしないで、短繊維状に
カットし、該短繊維をスラリー状態で叩解処理し、直径
が1μm以下からなるフィブリルの網状構造を含むフィ
ブリル化繊維とすることを特徴とする請求項1記載のバ
インダー繊維の製造法。 10.請求項1から4のいずれかの請求項記載のバイン
ダー繊維素材と紛体を含有することを特徴とするシート
状物。 11.請求項1から4のいずれかに記載されたバインダ
ー繊維素材と紛体を含有することを特徴とする成形体。
【0014】本発明は、フィブリルが網目状構造を形成
しているフィブリル化繊維及びそのフィブリルの網目構
造のバインダー作用を着想の基礎とするバインダー繊維
素材である。以下、本発明につき詳述する。
【0015】本発明のバインダー繊維素材を構成するフ
ィブリル化繊維は、叩解等により繊維形成性重合体の単
繊維がその主軸に沿ってランダムに解裂して形成された
多数のフィブリルを有する繊維であって、その繊維塊は
湿式抄造可能な性質をもっている。特にフィブリルの網
目状構造は、繊維が叩解作用によりフィブリルに解裂す
るときに繊維の端面からの解裂だけでなく繊維の端面間
においても解裂が進行することにより形成されている。
ここに網目構造は、フィブリル(フィブリル繊維と呼ぶ
こともある)の径が1μm以下のミクロフィブリルで形
成されている。フィブリル径が1μmを超えると、網目
状構造内のフィブリル間の隙間が大きくなり過ぎて、微
粒粉体を抱き込む効果が乏しくなる。また、フィブリル
径が小さ過ぎるとフィブリルが切断し易くなる。フィブ
リル径の下限は0.1μm程度であることが好ましい。
図1に、本発明のフィブリルの状態を参考までに示す。
図1で示した様に、主軸の太い繊維から、解裂した1μ
mを超える太いフィブリルとは違って1μm以下の細い
フィブリルが、枝状に分かれ、網目状の構造を形成して
いる。更に、詳細に観察すると、1μm以下の細いフィ
ブリルの間隙に、膜状部分が見られる。これらの膜状の
部分を含めて本発明では網目状構造と云う。図2に、比
較例の写真を示している。図2においては主軸の太い繊
維から僅かな細いフィブリルが枝分れしているが、フィ
ブリルは概ね太さが1μm以上であり、図1に見られる
様な膜状部分を含む網目状構造が見られない。本発明で
は、微粒粉体が図1で示したフィブリルの網目状構造
に、よく抱き込まれて、粉体の捕捉性を有している。こ
の細いフィブリルの網状構造が本発明のバインダー繊維
材に後述の粉体抱き込み性試験による粉体抱き込み性強
度(T)が60以上を示す強力な粉体捕捉保性を付与し
ているものと考えられる。
【0016】本発明におけるフィブリルの網目状構造
は、そのネットワーク構造が水で膨潤している。水で膨
潤していることで、ネットワーク構造が広がり、ネット
ワークを形成しているフィブリルの絡みも広がって、粘
着性が発現する。網目状構造の膨潤は、フィブリル化繊
維の乾燥重量に対する水の重量百分率で表され、300
wt%以上であることが好ましく、より好ましくは40
0wt%以上である。フィブリルの網目状構造が水の存
在下で適度に膨潤すると、網目構造において粘性が発現
して、フィブリル繊維が微粒紛体を捕捉し易くなり、網
目構造内に捕捉された微粒紛体粒子が網目構造に固定化
されて脱落しにくくなる。膨潤度が高いほど粉体を捕捉
し易くなるので好ましい。しかし取り扱い性などの点か
ら1500wt%以下であることが好ましい。本発明の
フィブリル化繊維に含まれる網目状構造は、フィブリル
化繊維が一度乾燥されるとフィブリルが互いに接着し
て、再び膨潤しなくなる性質をもっている。従って、本
発明に係るバインダー繊維素材では、フィブリル化繊維
が使用されるに先立って未乾燥状態におかれていること
が肝要である。
【0017】本発明のバインダー繊維素材においては、
フィブリル化繊維が水で膨潤し易いこと、微細な粉体を
イオン性で吸着し易くすること、更に乾燥時に粉体及び
シートを構成する他の繊維素材(例えば、パルプ、レー
ヨン、アクリル繊維、PET繊維)との接着性を強固に
するために、酸性基を含んでいることが好ましい。酸性
基としては、カルボキシル基、スルホン酸基が挙げられ
る。取り扱い易さの観点から、酸性基はカルボキシル基
であることが好ましい。酸性基の含有量は、接着効果と
取り扱い性の観点から、繊維中に1〜20wt%含まれ
ることが好ましく、さらに好ましくは、3〜15wt%
である。酸性基の含有量がこの範囲であると、樹脂化す
ることなく網目状構造体が得られ易く、また乾燥時に粉
体との接着性が良好な網目状構造を有するフィブリル化
繊維が得られる。
【0018】酸性基の含有量は、アルカリによる中和滴
定で求めることができる。水中での滴定量として、フィ
ブリル化繊維1gに対して、濃度1/10NのNaOH
水溶液の滴定量で、4〜40mlが好ましく、6〜30
mlがさらに好ましい。
【0019】本発明におけるフィブリル繊維の素材ポリ
マーは、特に限定されない。湿式紡糸法により繊維を形
成できる種々の繊維形成性ポリマー例えばセルロースポ
リマー、アラミド等を原料とすることができる。共重合
により酸性基を導入しやすく、親水性、親油性の両性を
備えて、幅広い粉体に対し親和性が期待でき、より汎用
性があるという点から、アクリル系重合体であることが
好ましい。アクリル系繊維は、2種以上のポリマーを混
合した原液を用いるブレンド紡糸を用いることが好まし
い。混合するポリマーのうち、1つの成分は酸性基を相
当量含有するポリマーとし他の成分は必ずしも酸性基を
含む必要のないか殆んど含まないポリマーとすることが
好ましい。
【0020】アクリル系繊維の調製に使用される溶剤
は、残留有機溶剤が含まれないようにするため、無機系
溶剤が好ましく、特に、フィブリル化を容易にするため
には、溶剤として硝酸を用いる湿式紡糸法を採ることが
好ましい。繊維のフィブリル化は叩解法による叩解をア
クリル繊維が湿式紡糸により得られた繊維が未だ一度も
乾燥されない状態で行うことにより網状構造が形成され
易い。
【0021】アクリル系繊維で、フィブリル繊維を製造
する場合は、フィブリルとなった繊維部分が延伸により
配向し、繊維状物の所定の物性を有していることが重要
である。
【0022】湿式紡糸において、急激な凝固を行ない、
延伸を抑えることで、含水率を高め、空隙を増やした場
合には、叩解処理により、フィブリル化と同時に、繊維
の粉末化が進行し、バインダーとしての接着強度が低く
なるという問題がある。
【0023】本発明において、網目状構造を有するフィ
ブリル化繊維を製造するあたり、ポリマーをブレンドし
て紡糸することにより繊維を調製する。
【0024】本発明において、ブレンド紡糸を行うに
は、ブレンドするポリマーの内、1種は酸性基を含有し
ていることが重要である。このポリマーは酸性基をもつ
ビニル系モノマーとアクリロニトリルを共重合して得る
ことができる。酸性基をもつビニル系モノマーはアクリ
ル酸、イタコン酸などカルボキシル基を含有するもの
や、アリルスルホン酸のようにスルホン酸基を含有する
モノマーが挙げられる。多量に共重合しやすく取り扱い
が容易である点からカルボキシル基含有モノマーを共重
合することが好適である。この共重合割合は5wt%〜
30wt%を推奨する。これ未満では、フィブリル化に
しにくく、これ以上では、ポリマーが樹脂化しやすく取
り扱いが困難となる。他の混合ポリマー成分は酸性基を
ほとんど含有しないものであることを推奨する。アクリ
ロニトリル90%以上含有して、酸性基をほとんど含有
していない(1wt%未満)ことが好ましい。アクリル
酸メチルや、酢酸ビニルを共重合しているものを好適で
ある。酸性基を多量に含有するポリマーと酸性基を含有
しないポリマーをブレンドすることで、フィブリル化が
容易となる。これらの2種ポリマー混合する割合は2
0:80〜80:20の範囲を推奨する。この際、更に
他のポリマーをブレンドしてもよい。このブレンド物を
公知の溶剤に溶解する。酸成分を含むポリマーは有機溶
剤や、ロダン塩では取り扱いが難しいことがあり、溶剤
として硝酸を用いることが好ましい。硝酸は脱溶剤も容
易で、フィブリル化を進行させやすいという特徴もあ
る。有機溶剤系では、繊維形成において内部に溶剤が残
留しやすく、フィブリル化が進行しにくくなるという欠
点がある。
【0025】溶剤に溶解したポリマーのドープを、公知
の条件で、ノズルから押し出し、紡糸、水洗、アルカリ
中和処理、延伸を経て、アクリル繊維を得る。この繊維
を20mm以下好ましくは15mm、更に好ましくは数
mm以下の長さにカットしたのち、水スラリーとしてビ
ータもしくはデイスク・リファイナーなどで叩解するこ
とにより、網目状構造を形成させることができる。叩解
時のスラリー濃度は任意である。水中濃度1%〜2%か
ら20%程度場合によっては、それ以上の濃度のスラリ
ーで叩解の目的を達成することができる。
【0026】繊維の叩解時において、水中に分散した状
態でのスラリーPHは4以上であることが好ましい。P
Hが4以上であると、フィブリル繊維はささくれた状態
になることがなく、良好な網目状構造体が得られる。膨
潤性をさらに高めるためには、PHは高い方が好ましい
が、叩解前にPHを上げ過ぎると、叩解しにくくなる傾
向がある。
【0027】上記のようにポリマーをブレンドして紡糸
する方法以外に、例えば、アクリル酸とアクリロニトリ
ルを共重合し、紡糸性に適した重合体を得る。これをア
クリル繊維の溶剤(硝酸、塩化亜鉛、ロダン塩、DM
F、DAMC、DMSO、EC等)に溶解する。これに
ポリエチレンオキサイドを適当量ブレンドして原液とし
た後、公知の手段に従い、紡糸、水洗、延伸、乾燥を行
い、多孔アクリル繊維を得る。短繊維(1〜40mm)
にカットした後、必要に応じてPHコントロールを行
い、その後、ビータやデイスク・リファイナーでフィブ
リル化させることにより、膨潤性を有する網目状構造を
有するフィブリル化繊維を得ることができる。
【0028】上記と同様に、叩解後、酸性基の中和度を
コントロールすることにより、さらに膨潤状態や粘性を
コントロールすることができ、紛体の捕獲性能を増すこ
とができる。
【0029】カルボキシル基をアクリル系のフィブリル
繊維に付与する方法としては、あらかじめ共重合性カル
ボキシル基含有モノマーをアクリロニトリルと共重合さ
せて、その後、これを繊維状として、フィブリル化させ
る方法が好ましい。この時、ポリアルキレングリコール
等の相溶性の無いものをブレンドして紡糸することも、
異なる組成の2種以上のポリマーをブレンドして溶解
し、紡糸することもできる。又、あらかじめフィブリル
化させたアクリル系繊維を、加水分解により、アミド化
合物を経てカルボキシル基を導入することもできるが加
水分解処理中に形成されるフィブリルの配向が乱れ易く
なる傾向がある。
【0030】安定した品質のフィブリル化繊維を得やす
いという点で、予め共重合させる方法が好ましい。
【0031】このようにして得られた網目状構造体を有
するバインダー素材は、以下に例示のさまざまな用途に
使用することが可能である。
【0032】活性炭を、このバインダー繊維素材を用い
て必要に応じてパルプその他の素材と共に混抄し、シー
ト化することができる。接着性をさらに高めるために、
助剤を併用することもできる。このようにして得られた
シートは、活性炭の性能劣化がほとんどなく、粉落ちの
少ない活性炭シートとして、吸着体や、フィルターとし
て使用することができる。活性炭などの粉体を、このバ
インダー繊維素材を用いて高い含有率でシート化するこ
ともできる。既存のフィブリル化繊維では、含有率を高
めると、白水への脱落が多くなり、工業的に適さないと
いう課題があったが、このバインダー繊維素材を用いる
と、これまで以上の高い歩留まりで高い含有率を得るこ
とができる。一般の抄紙のみならず、湿式モールド成形
においても、このバインダー繊維素材は有効である。例
えば、活性炭モールド成型に用いると、活性炭含有率を
上げることができる。また、スピーカーコーンはモール
ド成型により作られているものが多いが、ここでも粉体
の歩留まりを上げ、かつ軽くて硬い音響特性に優れた製
品を得ることができる。粉体を多量に含んだシート状物
として、クラッチ板の摩擦材がある。ここにも粉体の歩
留まりアップと細孔コントロールのために用いることが
できる。電池セパレータは液体との濡れ性と、細孔コン
トロールが重要な要素である。ここでも本発明のバイン
ダー繊維素材を用いることができる。すなわち、様々な
粒子を含有したシート状とすることで、シートの細孔分
布もコントロールすることができる。本発明のバインダ
ー繊維素材のもつ酸性基を利用して、イオンクロマトの
シートを作ることもできる。カーボンナノチューブを本
発明のバインダー繊維素材を用いて、シート状もしく
は、成形体として、様々な用途に用いることもできる。
【0033】同様にして、さまざまな粉体を抱きこむこ
とができる。例えば、粉体としては、活性炭、黒鉛、カ
ーボンブラック、カーボンナノチューブ、顔料、チタ
ン、シリカ、鉄、フェライト、ガリウム、砒素、砂、
土、すす、チタン酸バリウム、光酸化触媒チタン、トル
マリン、モザナイト、さんご礁粉体、多孔質シリカ、キ
シリトール、蛍光染料樹脂粉末、お茶殻の粉体、キト酸
粉体、シルクパウダー、各種抗菌剤、金、銀、銅、白
金、コバルト、水素貯蔵合金等が挙げられ、有機から無
機の化合物の幅広い粉体を抱き込むことができる。
【0034】粉体の粒子径としては、サブミクロン〜数
10μmのものを捕捉しやすいが、これに限定されるも
のでは無い。例えば、サブミクロン以下の粉体であれ
ば、水中で分散せず、浮遊するケースがあるが、このよ
うな場合は、超音波を使用するとか、アルコール類を少
量添加するなどすることにより、水中への分散を可能と
することができれば、捕捉することができる。逆に、大
きな粒状物質に対しても、有用であり、例えば、活性炭
粒子に対し、本発明のバインダー繊維素材を添加するこ
とにより、活性炭粒子の粉の脱落を抑制することもでき
る。これまでにあるフィブリル状繊維で、粒子を捕捉す
るには、物理的なからめ取り作用によるところが大き
く、一般にサブミクロンの細かな粒子は捕捉できなかっ
た。本発明のバインダー繊維素材はこのようなサブミク
ロンの細かな粒子でも捕捉することが可能である。粒子
は細分化されるほど表面積が増大し、活性が高くなる
が、これまでの技術では到達できなかった、高い活性の
シート状物や、成形体をこのバインダー繊維素材を用い
ることで創出することができるようになる。
【0035】理由は明らかではないが、本発明のバイン
ダー繊維素材は、炭素系の粉体(活性炭、黒鉛、カーボ
ンブラック、カーボンナノチューブ、すす等)に対して
は相性が良い。特にカーボンとの混合においてその相性
が良く、例えば、排ガスをこの混合素材の中を通すこと
で、煤等を効率良く除去することもできる。カーボンナ
ノチューブを賦形化し、様々な用途に用いることができ
る。
【0036】また、フィブリル化繊維に付与する酸性基
に対し、アルカリ化を進めることにより、水中において
網目状構造が更に膨潤し、粘度が高くなり、これによ
り、重い粉体をも安定的に捕捉することができ、更に、
各種の形状に安定的に賦形化できる。フィブリル化し
て、増粘することにより、これまでの技術では苦手とさ
れてきた、比重の重い粒子を紙にすき込むこともでき
る。通常重い粒子は抄造時に素早く沈んでしまい、紙の
表面に偏って付着した形状となってしまうが、本発明の
バインダー素材はこれらの粒子を捕捉し、かつ自らの増
粘効果により、従来よりゆるかかな沈降速度で抄造する
ことができる。これにより、従来技術では達成できなか
った、様々な比重の重い粒子をすき込むことも可能とな
る。
【0037】例えば、半導体チップを、紙などのシート
状物に賦形化することもできる。また、例えば、粉体を
抱き込んだシートを積層し、焼成することにより、粉体
を抱きこんだまま賦形化し、新規の材料を作り出すこと
もできる。
【0038】メゾフェースピッチと本発明のバインダー
繊維素材を混合し、型に合わせて賦形化し、これを焼成
することで、多孔、軽量の電極を作ることもできる。
【0039】更に、本発明のバインダー繊維素材にイオ
ン基を含有させることで、膨潤性のゲルを作り出すこと
が可能であり、この素材を電池材料として応用すること
もできる。
【0040】本発明のバインダー繊維素材を糊剤として
使用し、布に処理することにより、布の引き裂き強度を
向上させることもできる。
【0041】本発明のバインダー素材を洗浄の助剤とし
て使用することもできる。例えば、研磨剤として汚染面
に塗り、これをふき取ることで、カーボン汚れなど頑固
な汚れを洗浄することにも利用できる。
【0042】また、本発明のバインダー繊維素材を不織
布へ塗布し、乾燥処理することで、バインダー素材が表
層に固着した素材を得ることができる。これは、食器洗
い等の水周りタワシとして使用することも、油や煤汚れ
でふき取りにくい用途でのワイパーとして使用すること
もできる。
【0043】本発明のバインダー繊維素材で、紙に補強
を行うと、きわめて強固にパルプを捕捉するため、水中
での紙の寸法変化を抑制することができる。この為に、
この性質を利用して、壁紙としての寸法変化を抑制する
ために使用することや、インクジェットプリンターでの
紙の変形を抑制することや、紙幣に使用して、紙幣の劣
化防止や、紙幣の検査、検出用に利用することもでき
る。また、ひんじ性の改善も期待できる。もちろん、こ
の素材を紙や、不織布の一般補強素材として使用するこ
とで、紙力の強度向上も期待できる。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、実施例を挙げて本発明をさ
らに具体的に説明する。
【0045】なお、測定方法、評価方法等は下記の通り
である。
【0046】(1)走査型電子顕微鏡(SEM)による
フィブリル径、網目状の評価 機器はABT−60(TOPCON製)を用い、倍率:
3000倍で行った。フィブリル化繊維(バインダー繊
維素材)を水中に分散し、濃度0.001wt%に希釈
する。これを走査型電子顕微鏡の試料台(直径1cm)
に1滴滴下し、風乾させる。風乾したフィブリル化繊維
を走査型電子顕微鏡で観察して3000倍で写真撮影を
行った。繊維単糸の主軸部とフィブリル部の両方が見え
る位置を観察し、フィブリル構造部分のフィブリルの径
を測定した。また、フィブリルの部分に結合点が観察さ
れる網目構造を有しているか否かで網目状構造の存否を
評価した。
【0047】(2)酸性基含有量(NaOH滴定法) 濃度1wt%のバインダー繊維素材を、塩酸を用いてP
Hを3以下とした後、脱水、水洗を行い、風乾してバイ
ンダー繊維素材を取り出した。繊維分1gを秤量し、こ
れをDMF(N,N’−ジメチルホルムアマイド:試薬
特級)30ml中に入れて撹拌し溶解した。この溶液に
フェノールフタレインを数滴滴下し、これを1/10N
濃度のNaOH標準液を用いて滴定した。一方、ブラン
クとして、DMF30mlに水10mlを入れて混合
し、この溶液を同様にして滴定量を測定した。サンプル
の滴定量からブランクの滴定量を差し引いて中和滴定量
(酸性基の含有量)を求めた。
【0048】(3)繊維のビータによる叩解 熊谷理機工業(株)製の25Lビータを用い、予めパル
パーで離解したスラリー繊維分ドライ重量換算で約30
0gをビータに供給し、荷重5kg、濃度約1.2重量
%の条件で叩解した。
【0049】(4)角型抄造マシーン 熊谷理機工業(株)製の25cm×25cm角型抄造マ
シーンを用いた。
【0050】(5)繊維又はフィブリル化繊維の膨潤度
の測定 以下の <1>〜<6> の操作を行い、下記の式にて算出し
た。 <1>サンプルを水に分散し、一昼夜放置する(濃度1
wt%程度)。 <2>150メッシュの金網で容器を作成し、秤量する
(A)。 <3>サンプルを固形分1g程度採取し、<2>の容器
に入れる。 <4>サンプルを金網容器ごと遠心分離する。遠心分離
は、HITACHICENTRIFUGE‐05P−2
1遠心分離機を用いて、2500rpm、5分の条件で
行った。 <5>遠心分離終了後にサンプルを容器ごと計量する
(B)。 <6>計量後、サンプルを取り出し、120℃、2時間
乾燥させ、デシケータ中で1時間放冷した後、秤量する
(C)。 膨潤度(%)={(B−A)/C}×100
【0051】(6)粉体抱き込み性試験 フィブリル化繊維0.5gと活性炭(Ardrich chemical
Co.Inc. Activateclcarbon Darco(商標)G−60:
100mesh powder)2.5gを秤量し、水
を加えて1リットルとし、5分間撹拌し、繊維濃度0.
05wt%、活性炭濃度0.25wt%の分散液を作っ
た。これを撹拌した後、直径2cmの50mlサンプル
瓶に50mlを採取した。このサンプル瓶を1分間撹拌
した後、静置1分後に上澄み液をスポイトで4ml採取
し、光度計(JASCO:V best-30)を用いて、波
長400nmの光源を用いて上澄み液の透過度(T%)
を測定した。この上澄液の透過度値を粉体抱き込み性強
度(T)と定義する。粉体抱き込み性強度(T)が60
以上を示すフィブリル化繊維の粉体保持性が良好である
と判定した。
【0052】(7)粉体のシートからの脱落性 バインダー素材をdry重量換算で1.5gと、活性炭
(AldrichA・C 100mesh)2gとアクリル繊
維 旭化成 PF A101 1.7dtex3mmを
dry重量換算で1.5gを5Lパルパーに入れ、水3
Lを加え1分間混合したのち、25cm×25cmの角
型シートマシーンにて80meshの金網へ抄造した。
繊維素材が積層された金網の上に濾紙(東洋濾紙 N
o.26:280mm×280mm)を載せ、さらに鉄
板を乗せて、付属の金属ローラーを5回前後させ、脱水
した。その後、金網より、抄造したシートと濾紙を共に
剥離し、回転ドラム乾燥機にて乾燥し目標坪量80g/
2 の活性炭含有シートを得た。得られた活性炭含有シ
ートを白い紙の上で垂直にして3回叩き、白い紙の上に
脱落した活性炭の有無を観察した。また、抄造途中で用
いた濾紙を観察し、活性炭の濾紙への移行の有無を観察
した。 (8)フィブリル化繊維のゼ−タ電位測定法 試料 : 水中に分散したフィブリル化繊維の約1.5wt
%のスラリー試料を使用 装置 : 日立(株)製 流動電位測定器ZP-10B 充填法: 試料液を純水で5倍程度に希釈し、充填筒に
充填、軽く吸引する。直径14mm 厚さ1mmに充填 流動液: 0.01N KCl水溶液 pH調整: 水酸化ナトリウムまたは塩酸の希水溶液で
pHを調整する 測定温度: 20℃±2℃
【0053】〔実施例1〕第1成分ポリマー(アクリロ
ニトリル91.5wt%、アクリル酸メチル8wt%及
びメタリルスルホン酸ソーダ0.5wt%)60wt%
と第2成分ポリマー(アクリロニトリル89wt%及び
アクリル酸21wt%)40wt%混合し、75wt%
硝酸に溶解して、ポリマー濃度15%の紡糸原液を調製
した。この紡糸原液を25wt%硝酸水溶液中へ押し出
し、凝固させ、水洗を経た後、アンモニア水で中和し
(水分散PH6.7)、次いで6倍延伸し、脱水して、
含水率230wt%の海島構造を有するアクリル繊維
(単糸繊度:3.3dtex)を得た。
【0054】この繊維の含水率を維持したまま3mmに
カットし、これを水中へ分散した後、パルバーで1分間
離解した後、25Lのビーターに移し、濃度約1.2w
t%のスラリーとして、荷重5kgで30分間叩解し
た。この処理液のカナデアン・スタンダード・フリーネ
ス(CSF)は150ccであった。
【0055】この叩解液に懸濁する繊維のSEMによる
写真を図1に示す。観察の結果、直径1μm以下のフィ
ブリルによる網目状構造を有するフィブリル化繊維が得
られていることが判明した。フィブリル化繊維が直径1
μm以下のフィブリルによる網状構造を有していること
明瞭に示されている。(図1参照)。
【0056】この網目状構造を有するフィブリル化繊維
塊を塩酸でPH3以下とした後、水洗、脱水、風乾後、
素材1gをDMF30mlに溶解し、これを、1/10
N濃度のNaOH標準液で滴定したところ、中和には1
1.4mlが必要であった。
【0057】ブランクとして、DMF30mlに水10
mlを入れて同様に滴定したところ、滴定量は0.4m
lであった。
【0058】サンプルの滴定量からブランクの滴定量を
差し引いて得られる算出値を酸性基の含有量とした。
【0059】このフィブリル化繊維スラリーをdry重
量換算で0.5gと、活性炭(AldrichA・C 100
mesh)2.5gに水を加えて、1Lとし、5分間撹
拌し、繊維濃度0.05wt%、活性炭濃度0.25w
t%の分散液を作った。これを撹拌したのち、直径2c
mの50mlサンプル瓶に50mlを採取した。このサ
ンプル瓶を1分間撹拌したのち、静置すると上澄み液が
透明になった。1分後にスポイトで上澄み液4mlを採
取し、光度計(JASCO:V best-30)を用いて波長
400nmの光源を用いて上澄み液の透過度(T%)を
測定したところ、78%で、ほぼ透明であった。一般に
上澄み液には、微細な粒子が浮遊し、捕捉しにくいもの
であるが、本発明のバインダー素材は優れた捕捉効果を
持っているものである。
【0060】このフィブリル化繊維の懸濁スラリーに活
性炭を添加して活性炭含有シートを調製したところ、得
られた活性炭含有シートからの活性炭粉末の脱落はなか
った。かくして、このフィブリル化繊維は、バインダー
繊維素材として有用である。なお、叩解液に懸濁するフ
ィブリル化繊維のゼータ電位を測定した結果を表1に示
す。
【表1】 表2で明らかなとおり、得られたフィブリル化繊維は、
分散媒のPHの変化にかかわらず、ゼータ電位が−14
V近辺で安定している。一般に、ゼータ電位は0±20V
の範囲が水中での凝集性が優れるといわれる。本発明の
フィブリル化繊維は、水中でpHが変化しても、ゼータ
電位が0±20Vの範囲にあり、優れた粉体捕捉性能を有
する、バインダー繊維素材としての機能をもっている。
【0061】〔実施例2及び3〕実施例1に記載された
第1成分のポリマーと第2成分のポリマーの混合比を表
1に示すように変化させたこと以外は、実施例1と同様
にしてミクロフィブリルの網目状構造を有するフィブリ
ル化アクリル繊維を調製した。得られたフィブリル化繊
維を、実施例1と同様にして評価した。評価の結果を表
2に示す。
【0062】実施例2で得られたバインダー素材のSE
M観察の結果、直径1μm以下のフィブリルの網目状構
造を有するフィブリル化繊維であった。
【0063】〔比較例1、2〕それぞれの成分が表2に
示される、繊度3.3dtexの繊維長3mmのアクリ
ル繊維を実施例1と同濃度、同条件で叩解した。ここで
得られたスラリーを取りだしSEM観察したところ、い
ずれも網目構造は観察されなかった。 〔比較例3〕ポリオレフィンパルプ(商品名:SWP
(E620)三井石油化学社製)を濃度2%で5Lパル
パーで15分間離解した。ここで得られたスラリーを取
りだしSEM観察したところ、2μm以上の太いフィブ
リルが観察され、網目構造は見られなかった。 〔比較例4〕木材パルプNBKPをあらかじめ水中に浸
漬し、パルパーで離解したものを25Lビータで濃度2
%荷重5kgで30分叩解した。ここで得られたスラリ
ーを取りだしSEM観察したところ、こまかな髭状のフ
ィブリルが観察された。網目構造は観察されなかった。
前記の比較例1〜4で記載したスラリーを用いて、実施
例1と同様にして、各々の評価を実施した。評価結果を
表2に示す。
【0064】〔実施例4〕実施例1で使用した第2成分
のポリマーが濃度16wt%、エチレンオキサイドとプ
ロピレンオキサイド(75:25)のランダム共重合型
ポリエーテル(数平均分子量10000)が濃度2.4
wt%となるように、75wt%硝酸に溶解して紡糸原
液を調製した。この紡糸原液を4時間静置した後、紡糸
口金より26wt%硝酸水溶液中に押し出して凝固さ
せ、水洗後、沸騰水中で8倍延伸し70℃の熱風で乾燥
して3.3dtexのカルボキシル基含有多孔性アクリ
ル繊維を得た。この繊維を3mmにカットし、水中へ分
散し、パルパーで離解し濃度1.5wt%のスラリーを
得た。熊谷理機工業(株)KRK型デイスク・リファイ
ナー(クリアランス0.1mm、プレートパターンB6
31AN)を4回通過させて叩解した。
【0065】得られた叩解液を用いて活性炭含有シート
を調製した。得られた叩解繊維、活性炭含有シートにつ
いて、実施例と同様に評価した。評価結果を表2に示
す。
【0066】〔比較例5〕実施例1で使用した第1成分
のポリマーが濃度15wt%、及びエチレンオキサイド
とプロピレンオキサイド(75:25)のランダム共重
合型ポリエーテル(数平均分子量10000)を濃度
2.4wt%となるように、67wt%硝酸に溶解して
紡糸原液を調製した。この原液を4時間静置した後、紡
糸口金より35wt%硝酸水溶液中に押し出して凝固さ
せ、水洗後、沸騰水中で9倍延伸し、70℃の熱風で乾
燥して3.3dtexの多孔性アクリル繊維を得た。こ
の繊維を3mmにカットし、実施例4と同様の叩解方
法、条件を用いて叩解した。得られたフィブリル化繊維
は、図2に示すように、フィブリルの径が1ミクロン以
下であるが、網目状構造が形成されていなかった。
【0067】得られた叩解液を用いて活性炭含有シート
を調製した。得られた叩解繊維、活性炭含有シートにつ
いて、実施例と同様に評価した。評価結果を表2に示
す。
【0068】
【表2】
【0069】〔実施例5〕〔比較例6〕〜〔比較例8〕 実施例1で得た含水率230%の海島構造を有する3.
3dtexのアクリル繊維を3mmにカットし、水中へ
分散し、パルパーで1分間離解した後、1.2wt%濃
度で、25Lビータに入れ、荷重5kgで15分間叩解し
た。このものの濾水度は450ccであった。この叩解
スラリーから、フィブリル化繊維を、dry重量換算
で、2g採取し、活性炭(Aldrich 100mesh)2g及び
水3Lをパルパーで混合し、20cm×20cmの角型
シートマシーンに総量14Lの混合液として投入し、8
0meshの金網を用いて抄紙した。このときの排水
(白水)を全量バケツに採取した。得られた紙を定法に
則り、脱水、乾燥を行った後、乾燥紙の重量を測定し
た。白水は、別途ろ過(濾紙:Whatman GF-B使用)し
て、ろ過残渣を乾燥して残査重量を求めた。比較例6,
7及び8として、原料のフィブリル化繊維として、ポリ
オレフィンパルプSWP-EST8(三井化学社製)、NBKP/LB
KP=4/1混合パルプ(CSF400)と市販フィブリル状アクリ
ル繊維(スターリン社製 CFFV114-3)を用いて、実
施例5と同様にして、抄造して得た紙の乾燥重量及び白
水の残査重量を測定した。以上の評価結果を表3にまと
めて示す。
【表3】 各々の活性炭含有が得られたが、実施例5以外の白水
は、非常に黒く、一般の抄造工程では、排水が問題とな
り使用できないレベルであった。実施例5以外の方法
は、凝集剤やバインダー剤を添加しないと工場での生産
が一般的に不可能である。加えて、凝集剤やバインダー
剤の添加は、活性炭の性能を劣化させてしまう。以上の
例示は、本発明のフィブリル化繊維がバインダー繊維素
材として用られることで、他のフィブリル化繊維では得
られない、混合粉体の保持効果を著しく高めることがで
き、更には、粉体をその性能を劣化させずに、高い含有
率で含むシートが調製できることを示している。従っ
て、本発明は、従来技術では得られない、優れた機能を
発揮するシート状物の製造を可能にする。 〔実施例6、比較例9〕実施例1で得た含水率230%
の海島構造を有するアクリル繊維を3mmにカットし、
1wt%濃度で、25Lビータに入れ、荷重5kgで15
分間叩解した。このものの濾水度(CSF)は450c
cであった。この叩解液から、叩解繊維dry重量換算
で2g採取し、Fe3O4((株)高純度化学研究所 powde
r ca.1μm under)2g及び水3リットルをパルパー
で混合し、20cm×20cmの角型シートマシーンに
総量14Lの混合液として投入して、80meshの金
網を用いて抄紙した。このときの排水(白水)を全量バ
ケツに採取した。この抄紙シートは定法に則り、脱水、
乾燥を行い、乾燥の重量を測定した。白水は、別途ろ
過、乾燥し、残査重量を求めた。比較例9として、市販
のフィブリル状アクリル繊維(スターリン社製、CFF
V114−3)を原料として用いて、濃度2%のスラリ
ーとし、これをパルパーで5分間離解し、離解パルプの
スラリーを得た。このスラリーの濾水度(CSF)は2
70mlであった。このスラリーから繊維分乾燥重量換
算で2g採取してFe34 を混合して実施例6と同様
方法、条件で抄紙した紙の乾燥重量及び白水の残渣を測
定した。実施例9により、本発明のフィブリル化繊維は
フェライトに対しても非常に優れたバインダー繊維とし
ての機能を発揮することがわかる。 〔実施例7〕実施例4と同じようにして、26wt%硝
酸溶液中に押し出して、凝固させ、水洗後、アンモニア
中和し、沸騰水中で8倍延伸して、脱水し、膨潤度18
0%の多孔繊維を得た。この繊維を乾燥することなく3
mmにカットし、実施例4と同条件で叩解した。得られ
た叩解液を用いて、叩解繊維、活性炭含有シートについ
て、実施例1と同様に評価した。評価結果を表2に示
す。
【表4】
【0070】
【発明の効果】本発明のバインダー繊維素材は、粉体の
特性を損なうことなく、粉体に対して高度の接着性を有
するので、細かな粉体を捕捉して、強固に接着固定化し
て脱落しにくくすることができる。本発明のバインダー
繊維素材を用いることにより、例えば、活性炭を、その
活性を損なうことなくシート化することができるので、
吸着体やフィルターとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のフィブリルの網目状構造体を有する
フィブリル化繊維でなるバインダー繊維素材の構造を示
すSEMによる写真である。
【図2】比較例5のフィブリル化繊維の構造をしめすS
EMによる写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L035 BB03 BB07 DD06 DD19 EE20 FF06 4L036 MA04 MA35 RA10 4L055 AF27 AF29 AF44 AF46 AF47 AG02 AG15 AH01 BA11 BB03 EA01 EA16 EA29 EA35 FA10 FA13 FA18 GA01 GA38 GA45

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フィブリル径が1μm以下であるフィブ
    リル繊維から形成された網目状構造を有するフィブリル
    化繊維からなり、かつフィブリル化繊維が水で膨潤され
    てなることを特徴とするバインダー繊維素材。
  2. 【請求項2】 フィブリル化繊維が酸性基を有すること
    を特徴とする請求項1記載のバインダー繊維素材。
  3. 【請求項3】 酸性基がカルボキシル基であることを特
    徴とする請求項2記載のバインダー繊維素材。
  4. 【請求項4】 フィブリル繊維がアクリル系繊維である
    ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のバインダー
    繊維素材。
  5. 【請求項5】 カルボキシル基が2〜15wt%含有さ
    れる請求項1〜4のいずれかの請求項に記載されるバイ
    ンダー繊維素材。
  6. 【請求項6】 フィブリル化繊維の水膨潤度が300w
    t%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれ
    かに記載されたバインダー繊維素材。
  7. 【請求項7】 フィブリル径が1μm以下であるフィブ
    リル繊維から形成された網目状構造を有するフィブリル
    化繊維からなり、かつフィブリル化繊維が水で膨潤さ
    れ、粉体抱き込み性強度(T)が60以上を示すフィブ
    リル化繊維からなるバインダー繊維素材。
  8. 【請求項8】 ゼーター電位が、PH2〜10の範囲に
    おいて、−10〜−20Vであることを特徴とする請求
    項1から4のいずれかの請求項に記載されたバインダー
    繊維素材。
  9. 【請求項9】 カルボキシル基含有モノマーを共重合し
    たアクリル系ポリマーを、これとは組成の異なるアクリ
    ル系ポリマーと混合して硝酸濃厚溶液に溶解してなる紡
    糸原液を希硝酸溶液中に押し出してなる凝固物を水洗−
    延伸して得られる繊度1dtex〜17dtexのアク
    リル繊維を脱水後、一度も乾燥させることをしないで、
    短繊維状にカットし、該短繊維状繊維をスラリー状態で
    叩解処理し、直径が1μm以下からなるフィブリルの網
    状構造を有するフィブリル化繊維とすることを特徴とす
    る請求項1記載のバインダー繊維素材の製法。
  10. 【請求項10】 請求項1から4のいずれかの請求項に
    記載されたバインダー繊維素材と紛体を含有することを
    特徴とするシート状物。
  11. 【請求項11】 請求項1から4のいずれかの請求項に
    記載されたのバインダー繊維素材と紛体とを含有するこ
    とを特徴とする成形体。
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