JP6089630B2 - 車両用サンルーフ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用サンルーフ装置に関するものである。
従来、ルーフ開口部に設けられた可動パネルを開閉可能な車両用サンルーフ装置がある。例えば、特許文献1に記載のサンルーフ装置は、ルーフ開口部の幅方向両端部に設けられた左右一対の開閉駆動装置を備えている。また、これらの開閉駆動装置は、車両の前後方向に延びるレールと、そのレール上を移動可能に設けられた移動体と、その移動体を可動パネルに連結する連結機構と、を備えている。そして、その連結機構には、レール上を移動する移動体の相対位置に応じて可動パネルを傾動させるチルト機構と、その移動体が可動パネルに対して相対移動可能なチルト動作状態と当該可動パネルが移動体と一体に移動するスライド動作状態とを切り替え可能な切替機構とが設けられている。
具体的には、チルト機構は、移動体の前方移動に基づいて、その後端を持ち上げる態様で可動パネルをチルトアップするように構成されている。また、可動パネルがチルトアップされる前方位置には、上記切替機構によって可動パネルと移動体との間の連結状態の切り替えが行われる切替領域が設定されている。そして、切替機構は、その切替領域に移動体が移動することにより、そのチルト動作状態にある連結状態をスライド動作状態に切り替えるとともに、そのスライド動作状態にある連結状態をチルト動作状態に切り替えるように構成されている。
即ち、このようなサンルーフ装置において、その可動パネルが全閉状態にある場合には、当該可動パネルと各開閉駆動装置の移動体との間の連結状態は、それぞれ、チルト動作状態となっている。そして、このチルト動作状態においては、各開閉駆動装置の移動体を車両前後方向に移動させることにより、可動パネルの傾動角度(チルト角)、つまりはそのチルト動作による開口量を調整することが可能となっている。
また、各開閉駆動装置の移動体を上記切替領域に移動させることにより、その移動体と可動パネルとの間の連結状態が、チルト動作状態からスライド動作状態に切り替わる。そして、このスライド動作状態においては、各開閉駆動装置の移動体を車両前後方向に移動させることにより、その可動パネルがチルトアップされた状態のまま、当該可動パネルをルーフパネルに沿ってスライドさせる、つまりはそのスライド動作による開口量を調整することが可能となっている。
更に、このようなスライド状態では、各開閉駆動装置の移動体を再び上記切替領域に移動させることにより、その移動体と可動パネルとの間の連結状態がチルト動作状態に切り替わる。そして、その後、各開閉駆動装置の移動体を後方移動させることにより、その可動パネルを全閉状態に移行させることが可能となっている。
以上のように構成することで、チルト動作区間とスライド動作とに分割することなく、その限りあるレール長を有効に利用することができる。そして、これにより、より大きなチルト開口量及びスライド開口量を確保することができるとともに、その駆動源となるモータを大型することなく、速やかに可動パネルを開閉動作させることができる。
ところが、このようなルーフ開口部の幅方向両端部に左右一対の開閉駆動装置が設けられた構成では、例えば、レールとの間のガタ等を要因として、これら二つの開閉駆動装置の間で、その移動体の位置にズレが生じる可能性がある。即ち、左右何れかの一方の開閉駆動装置においては、その移動体と可動パネルとの間の連結状態が切り替わっているにもかかわらず、他方側の開閉駆動装置においては、その連結状態の切り替えが完了していないという状態が起こりうる。そして、このような状態で、各移動体の移動方向を反転させた場合には、その左右で異なる可動パネルの開閉動作によって、各開閉駆動装置に噛み込みが発生するおそれがある。
そこで、上記特許文献1には、その切替領域を含む前方位置に自動領域を設定して両開閉駆動装置を自動的に制御する構成が開示されている。即ち、この自動領域においては、実行中の開閉駆動を変更することなく、両開閉駆動装置の移動体を切替領域に移動させて当該移動体と可動パネルとの連結状態を切り替えた後、両移動体の移動方向を反転して自動領域から脱出させる。そして、この間、操作入力による開閉動作の変更(開閉動作の停止及び反転)を受け付けないことにより、その左右で異なる可動パネルの開閉動作によって各開閉駆動装置に噛み込みが発生するような事態を回避する構成になっている。
特許4858570号公報
しかしながら、車両においては、例えば、エンジンのクランキング等によって、電源電圧が低下する場合があり、これにより、上記のような自動制御を継続できなくなる可能性がある。そして、その停止後、再び開閉駆動を開始する際、可動パネルと移動体との連結状態が左右の開閉駆動装置で異なる状態になっている場合には、その駆動停止後の再開時に各移動体が反転移動することによって、各開閉駆動装置に噛み込みが発生するおそれがあることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、開閉駆動停止後の再開時においても円滑に可動パネルを開閉動作させることのできる車両用サンルーフ装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の前後方向に延びるレールと前記レール上を移動可能に設けられた移動体と該移動体をルーフ開口部に設けられた可動パネルに連結する連結機構とを有して前記ルーフ開口部の幅方向両端部に配置されることにより前記可動パネルを開閉駆動可能な左右一対の開閉駆動装置と、前記各開閉駆動装置の作動を制御する制御装置とを備え、前記連結機構は、前記レール上を移動する前記移動体の相対位置に応じて前記可動パネルを傾動させるチルト機構と、前記移動体が前記可動パネルに対して相対移動可能なチルト動作状態と前記可動パネルが前記移動体と一体に移動するスライド動作状態とを切り替える切替機構とを備え、前記チルト機構は、前記移動体の前方移動に基づき前記可動パネルをチルトアップし、前記切替機構は、前記可動パネルがチルトアップされる前方位置に設定された切替領域に前記移動体が移動することにより、前記チルト動作状態にある前記移動体と前記可動パネルとの間の連結状態を前記スライド動作状態に切り替えるとともに、前記スライド動作状態にある前記連結状態を前記チルト動作状態に切り替え可能な車両用サンルーフ装置において、前記制御装置は、前記開閉駆動が停止した場合には、その停止前における前記移動体の移動方向を記憶領域に記憶し、前記開閉駆動の再開時には、前記停止前の移動方向に前記移動体を移動させるべく前記両開閉駆動装置を制御すること、を要旨とする。
上記構成によれば、その移動体と可動パネルとの間の連結状態が両開閉駆動装置の何れか一方のみ切り替わった状態で当該両開閉駆動装置による可動パネルの開閉駆動が停止された場合であっても、その移動体と可動パネルとの連結状態が左右の開閉駆動装置で相違する状況となることを防止することができる。そして、これにより、各開閉駆動装置に噛み込みが発生する事態を回避することができ、その結果、駆動停止後の再開時においても円滑に可動パネルを開閉動作させることができる。
また、請求項に記載の発明は、前記可動パネルがチルトアップされる前方位置には、前記切替領域を含む特定領域が設定されるとともに、前記制御装置は、前記開閉駆動の停止前、前記移動体が前記特定領域内にあった場合には、前記開閉駆動の再開時、前記停止前の移動方向に前記移動体を移動させるべく前記両開閉駆動装置を制御すること、を要旨とする。
即ち、左右の開閉駆動装置で連結状態の相違が発生する可能性のある場合に限定して、その開閉駆動の再開時、停止前の移動方向に移動体を移動させる移動方向の保持制御を実行することにより、当該制御の実行による違和感の発生や操作自由度の低下を抑えることができる。
請求項に記載の発明は、前記可動パネルがチルトアップされる前方位置には、前記切替領域を含む自動領域が設定され、前記制御装置は、前記移動体が前記自動領域に突入した場合には、実行中の前記開閉駆動を変更することなく、前記切替領域に前記移動体が移動することにより前記連結状態が切り替えられた後、前記移動体の移動方向を反転して前記自動領域から脱出させるべく、前記両開閉駆動装置を自動的に制御するものであって、前記特定領域は、前記自動領域であること、を要旨とする。
上記構成によれば、より効果的に、違和感の発生や操作自由度の低下を抑えつつ、各開閉駆動装置に噛み込みが発生するような事態を回避することができる。
請求項に記載の発明は、前記移動体は、モータを駆動源として前記レール上を移動するものであって、前記制御装置は、電源電圧を監視し、前記電源電圧が第1の所定値以下に低下した場合には、前記開閉駆動を停止するとともに、前記電源電圧が第2の所定値以上に回復した場合には、前記開閉駆動を再開すること、を要旨とする。
上記構成によれば、安定的に駆動力を発生させることが可能な状況において両開閉駆動装置による可動パネルの開閉駆動が実行される。その結果、より円滑に、可動パネルを開閉動作させることができる。そして、その停止後の再開時には、停止前の移動方向に移動体を移動させるべく両開閉駆動装置を制御して、当該各開閉駆動装置に噛み込みが発生するような事態を回避することにより、その駆動停止後の再開時においても円滑に可動パネルを開閉動作させることができる。
請求項に記載の発明は、前記切替機構は、前記切替領域における前記移動体の移動により相対移動する第1及び第2の連結部材を備え、該第1及び第2の連結部材間の連結及びその連結解除により前記移動体と前記可動パネルとの間の連結状態を切り替えるものであって、前記第1の連結部材は、前記第2の連結部材との相対移動方向に延びる回転軸を有して回転自在に支承された回転カムを備え、前記第2の連結部材には、前記切替領域における前記移動体の前方移動により前記回転カムが挿通される挿通孔と、前記挿通孔に挿通された前記回転カムに当接して該回転カムを回転させるカム面とが形成されるとともに、前記カム面は、前記挿通孔に挿通されることにより前記カム面に当接した前記回転カムの回転位置を前記挿通孔から抜脱不能な位置に変更するとともに、該抜脱不能な回転位置にある前記回転カムが前記切替領域における前記移動体の前方移動により再度前記カム面に当接した場合には、その回転位置を抜脱不能な位置から抜脱可能な位置に変更するように構成されること、を要旨とする。
即ち、このような機械的に移動体と可動パネルとの間の連結状態を切り替える切替機構においては、その切替領域における移動体の移動によって連結状態が切り替わる実際の位置が前後しやすい。従って、このような構成について、その開閉駆動の再開時、停止前の移動方向に移動体を移動させる移動方向の保持制御を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。
本発明によれば、開閉駆動停止後の再開時においても円滑に可動パネルを開閉動作させることができる。
サンルーフ装置の概略構成を示す斜視図。 (a)(b)は、サンルーフ装置を構成する開閉駆動装置の側面図。 開閉駆動装置に設けられた切替機構の斜視図。 (a)は、回転カムの正面図、(b)は、第1カム部の背面図。 切替機構を構成する第1カム部及び第2カム部の展開図。 サンルーフ装置の概略構成を示すブロック図。 開閉駆動装置の制御態様を示す説明図。 電源電圧低下による駆動停止、及び電源電圧回復後の駆動再開時における移動方向の保持制御の処理手順を示すフローチャート。 開閉駆動停止後の再開時における移動方向の保持制御の別例を示すフローチャート。 開閉駆動停止後の再開時における移動方向の保持制御の別例を示すフローチャート。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両1のルーフパネル2には、略矩形状のルーフ開口部3が形成されている。また、このルーフ開口部3には、当該ルーフ開口部3を開閉可能な略平板状の可動パネル10が設けられている。そして、この車両1には、モータ(図示略)を駆動源として可動パネル10を開閉動作させるサンルーフ装置11が設けられている。
詳述すると、本実施形態のサンルーフ装置11は、ルーフ開口部3の幅方向両端部3a,3bに設けられることにより可動パネル10を開閉駆動可能な左右一対の開閉駆動装置20(20L,20R)を備えている。
図2(a)(b)に示すように、本実施形態の開閉駆動装置20は、車両の前後方向に延びるレール21と、このレール21上を移動可能に設けられた移動体22とを備えている。尚、本実施形態では、左右の開閉駆動装置20L,20Rは、その幅方向において左右が反転する以外、同一の構成を有している。このため、説明の便宜上、左側の開閉駆動装置20Lのみを図示して、その説明を行うこととする。
本実施形態の移動体22は、レール21に沿うように延設された長尺板状の側板部23を備えている。また、可動パネル10の裏面24には、車両前後方向に延設された支持ブラケット25が設けられている。そして、本実施形態の開閉駆動装置20は、その移動体22の側板部23と可動パネル10の支持ブラケット25とが連結されることにより、そのレール21に沿った移動体22の前後移動に基づいて、可動パネル10を開閉駆動することが可能となっている。
さらに詳述すると、移動体22の側板部23には、その長手方向、即ち車両前後方向に延設されたガイド孔26が形成されている。また、可動パネル10の支持ブラケット25には、その幅方向外側に突出することにより移動体22側のガイド孔26に挿入されたガイドピン27が設けられている。そして、移動体22は、見かけ上、そのガイド孔26内をガイドピン27が摺動する範囲内において、可動パネル10に対して相対移動することが可能となっている。
具体的には、本実施形態のガイド孔26には、その前端部26aよりも後端部26bの方が高い位置に配置されるように傾きが設定されている。また、支持ブラケット25は、その前端部25aがレール21に係合することにより当該レール21上を摺動可能、且つその前端部25aを支点として傾動可能に構成されている。そして、本実施形態では、これにより、そのレール21上を前後方向に移動する移動体22の相対位置に応じて可動パネル10を傾動させるチルト機構30が形成されている。
即ち、図2(a)に示すように、本実施形態の可動パネル10は、上記ルーフ開口部3を閉塞する全閉状態にあるとき、開閉駆動装置20のレール21に対して略平行に配置されている。そして、このとき、上記のように移動体22側のガイド孔26に挿入されたガイドピン27は、そのガイド孔26の前端部26aに配置されている。
また、図2(b)に示すように、移動体22がレール21上を前方側(同図中、左側)に向かって移動することにより、可動パネル10側のガイドピン27は、見かけ上、その移動体22側のガイド孔26内を前端部26a側から後端部26b側に向かって移動する。そして、これにより、可動パネル10と移動体22との連結点が上方に移動することによって、その支持ブラケット25の後端10b側が持ち上がる態様で、可動パネル10が傾動(チルトアップ)するようになっている。
更に、本実施形態の開閉駆動装置20は、可動パネル10側に設けられた第1の連結部材31と、移動体22側に設けられた第2の連結部材32と、を備えている。そして、これら第1及び第2の連結部材31,32が連結することにより、その可動パネル10に対する移動体22の相対移動が規制されるようになっている。
具体的には、本実施形態では、第2の連結部材32は、移動体22が前方移動することにより、可動パネル10がチルトアップされる前方位置において、可動パネル10側に設けられた第1の連結部材31に接触するように構成されている。また、本実施形態では、このような可動パネル10に対して移動体22が相対移動するチルト動作状態において、その移動体22側に設けられた第2の連結部材32が可動パネル10側に設けられた第1の連結部材31に接触する可能性のある範囲が「切替領域」として設定されている。そして、この切替領域に移動体22が移動することによって、その第1の連結部材31と第2の連結部材32とが連結されるようになっている。
即ち、これら第1及び第2の連結部材31,32間の連結により可動パネル10に対する移動体22の相対移動が規制されることによって、可動パネル10は、移動体22と一体にレール21上を移動することになる。そして、本実施形態では、これにより、その可動パネル10がチルトアップしたままの状態で、当該可動パネル10をルーフパネル2に沿うように前後移動(スライド動作)させることが可能となっている。
また、本実施形態では、このような可動パネル10と移動体22とが一体に移動するスライド動作状態において、移動体22が再度、上記切替領域に移動することによって、その第1及び第2の連結部材31,32間の連結が解除されるようになっている。そして、これにより、そのレール21上を移動する移動体22が可動パネル10に対して相対移動する状態となることによって、上記のような移動体22の相対位置に応じて可動パネル10が傾動するチルト動作状態に復帰する構成となっている。
つまり、本実施形態では、これら第1及び第2の連結部材31,32によって、そのチルト動作状態にある可動パネル10と移動体22との間の連結状態をスライド動作状態に切り替えるとともに、スライド動作状態にある連結状態をチルト動作状態に切替可能な切替機構40が構成されている。そして、本実施形態の開閉駆動装置20は、この切替機構40及び上記チルト機構30が形成する連結機構50の動作に基づいて、可動パネル10を開閉駆動する構成となっている。
図3に示すように、本実施形態では、第1の連結部材31は、可動パネル10の支持ブラケット25に連結されるとともにレール21上を摺動可能に設けられた本体部51を備えている。また、この本体部51には、その後端部51aから車両後方側(図2参照、同図中、右側)、即ち第2の連結部材32との相対移動方向に延びる回転軸52が設けられている。そして、この回転軸52の先端には、回転自在に支承された回転カム53が設けられている。
一方、第2の連結部材32は、車両前方側、つまりは第1の連結部材31側に開口する略円筒状の外形を有するとともに、上記回転カム53と同軸となる位置において移動体22に設けられている。即ち、本実施形態では、切替領域αにおいて移動体22が前方移動することにより、第2の連結部材32の筒内に第1の連結部材31の回転カム53が挿入されるようになっている。そして、この第2の連結部材32の筒内において、当該第2の連結部材32と回転カム53とが係合し、その回転カム53の抜脱が規制されることにより、これら第1及び第2の連結部材31,32が一体移動可能に連結される。
詳述すると、図3及び図4(a)に示すように、第1の連結部材31側の回転カム53は、回転軸52の先端近傍において回転自在に支承された略円柱状の回転カム本体54と、この回転カム本体54の外周から径方向外側に向かって突出する複数の係合突部55とを備えている。具体的には、本実施形態の回転カム53は、略均等角度間隔(略180°間隔)で回転カム本体54の外周に設けられた二つの係合突部55a,55bを備えている。また、本実施形態では、回転軸52の先端には、径方向外側に延びる円板状のフランジ52aが形成されている。更に、回転軸52には、その両端が本体部51及び回転カム53に当接する態様でコイルバネ56が嵌装されている。そして、回転カム53は、そのコイルバネ56の弾性力に基づいてフランジ52aに押し当てられることにより、その回転位置が保持されるようになっている。
一方、図3に示すように、第2の連結部材32は、略円筒状の第1ハウジング60a及び第2ハウジング60bを同軸に連結してなるハウジング60と、このハウジング60内に形成された第1カム部61及び第2カム部62とを備えている。
図3及び図4(b)に示すように、第1カム部61は、第1の連結部材31に対向する開口部を有した第1ハウジング60a内に設けられている。そして、この第1カム部61には、上記のように移動体22が前方移動することによって、その第1の連結部材31側の回転カム53が挿通される挿通孔63が形成されている。
具体的には、この挿通孔63は、回転軸52の先端に設けられたフランジ52aの直径と略等しい(僅かに大きい)直径を有して第1カム部61を軸方向に貫通する円孔64と、当該円孔64の周縁部を切り欠くように軸方向に延設された複数の挿通溝65とにより形成されている。尚、本実施形態では、円孔64の周縁部には、略均等角度間隔(180°間隔)で形成された二つの挿通溝65a,65bが形成されている。そして、回転カム53は、その回転カム本体54が円孔64を通過し、その各係合突部55a,55bが各挿通溝65a,65bを通過する態様で、この第1カム部61の挿通孔63に挿通されるようになっている。
また、図3に示すように、第2カム部62は、第1ハウジング60aの後端(図4(b)に示す部分)に連結される第2ハウジング60b内に設けられることにより、第1カム部61の後方側に配置されている(図2参照、同図中、右側、ハウジング60の筒内における奥側)。そして、この第2カム部62には、上記のように第1カム部61の挿通孔63に挿通された回転カム53に当接して当該回転カム53を回転させるカム面66が形成されている。
具体的には、本実施形態の第2カム部62は、上記第1カム部61の円孔64と同様、回転軸52の先端に設けられたフランジ52aの直径と略等しい(僅かに大きい)直径を有して第2カム部62を軸方向に貫通する円孔67を有している。そして、カム面66は、この円孔67の周縁に形成されている。
即ち、カム面66は、第1カム部61の挿通孔63に挿通された回転カム53の係合突部55(55a,55b)に当接する位置に設けられている。そして、このカム面66は、上記第1カム部61の挿通孔63を介した相対移動により当接した回転カム53を、その挿通孔63から抜脱不能な位置に回転させるように構成されている。
さらに詳述すると、図5に示すように、本実施形態では、カム面66には、その軸方向(同図中、左右方向)に対向する第1カム部61側に向かって突出する複数(本実施形態では4つ)の山部66aが形成されている。具体的には、これらの山部66a及び当該各山部66a間に形成される谷部66bは、それぞれ、円孔67の周縁部に略均等角度間隔(略90°間隔)で形成されている。そして、本実施形態のカム面66において、各山部66aは、第1カム部61の挿通孔63に対向する位置からずれた位置に形成されている。
尚、説明の便宜上、図5中には、一方の係合突部55(55a)の移動軌跡のみを記載し、他方の係合突部55(55b)については、その記載を省略するものとする。
即ち、本実施形態では、見かけ上、その挿通孔63を構成する各挿通溝65(65a,65b)を通過して第1カム部61の後方側(同図中、右側)に移動した回転カム53の各係合突部55(55a,55b)は、上記のように形成されたカム面66における山部66aと谷部66bとの間の斜面部に当接する。尚、本実施形態では、各係合突部55には、そのカム面66との当接部位に当該カム面66に対応する斜面S1が形成されている。そして、そのカム面66に当接した各係合突部55が山部66a側から谷部66b側に向かって移動することにより、その各係合突部55が上記挿通溝65を通過できない回転位置、即ち第1カム部61の挿通孔63から抜脱不能な位置に、回転カム53が回転するようになっている。
ここで、本実施形態の第2カム部62は、第1カム部61から軸方向に離間した位置に設けられている。このため、回転カム53は、上記第1及び第2の連結部材31,32間の相対移動によって、見かけ上、第1カム部61と第2カム部62との間を軸方向移動することが可能となっている。そして、第1カム部61には、その第2カム部62側のカム面66に対向するカム面68が設けられている。
即ち、本実施形態の切替機構40において、回転カム53は、当該回転カム53が設けられた第1の連結部材31と上記第1カム部61及び第2カム部62が設けられた第2の連結部材32とが離間する方向に相対移動、つまり移動体22が車両後方側に移動することにより、第2カム部62のカム面66から離間する。そして、見かけ上、第1カム部61に近接する方向に移動することにより、第1カム部61側のカム面68に当接する。
また、このカム面68は、その第2カム部62側のカム面66から離間して同カム面68に当接した回転カム53を、第1カム部61側のカム面66と同一方向、即ち挿通孔63への挿通時に通過した各挿通溝65(65a,65b)から各係合突部55(55a,55b)が更に離間する方向に回転させるように構成されている。尚、本実施形態では、各係合突部55には、そのカム面68との当接部位に当該カム面68に対応する斜面S2が形成されている。そして、このカム面68には、その当接により更に回転した回転カム53に係合する係合凹部69が形成されている。
具体的には、カム面68には、円孔64の周縁部における各挿通溝65(65a,65b)間に、回転カム53の各係合突部55(55a,55b)に係合可能な係合凹部69(69a,69b)が設けられている。尚、本実施形態では、これらの係合凹部69(69a,69b)は、それぞれ、各挿通溝65(65a,65b)から周方向に所定角度(略90°)離間した位置に設けられている。また、カム面68は、その当接した各係合突部55(55a,55b)を、各係合凹部69(69a,69b)との係合位置に案内する第1案内部71を有している。そして、第1カム部61は、これにより、その挿通孔63から抜脱不能な回転位置に回転した回転カム53を、その抜脱不能な位置で保持する構成となっている。
本実施形態の切替機構40では、このようにして第1の連結部材31と第2の連結部材32とが連結されることにより、その互いに離間する方向の相対移動が規制される。そして、これにより第1及び第2の連結部材31,32が一体に移動することで、その可動パネル10と移動体22との間の連結状態が、チルト動作状態からスライド動作状態に切り替わるようになっている。
また、図3に示すように、第1の連結部材31には、可動パネル10が移動体22と一体に後方移動することにより回転して、その係合突部73aが移動体22に係合する回転チェック73を有している。そして、その可動パネル10と移動体22との間の連結状態がスライド動作状態にある場合には、この回転チェック73によって、第1の連結部材31と第2の連結部材32との間の相対移動が規制されるようになっている。
更に、本実施形態では、この回転チェック73は、移動体22が再び上記切替領域αに移動することによって、その係合突部73aが移動体22に係合しない位置に復帰するように構成されている。そして、これにより、移動体22が切替領域αにある場合には、その第1の連結部材31と第2の連結部材32との間の相対移動が許容されるようになっている。
即ち、図5に示すように、上記のように挿通孔63から抜脱不能な回転位置で第1カム部61側のカム面68(の係合凹部69)に保持された回転カム53は、第1及び第2の連結部材31,32間が近接する方向に相対移動、つまり切替領域αにおいて移動体22が前方移動することによって、第1カム部61の係合凹部69から離間する。そして、回転カム53は、見かけ上、第2カム部62に近接する方向(同図中、右側)に移動して、再び第2カム部62側のカム面66に当接することにより、その挿通孔63への挿通時に通過した各挿通溝65(65a,65b)から各係合突部55(55a,55b)が更に離間する方向に回転する。
更に、回転カム53は、この状態において第1の連結部材31と第2の連結部材32とが離間する方向に相対移動、即ち移動体22が車両後方側に移動することにより、第2カム部62のカム面66から離間して第1カム部61に近接する方向(同図中、左側)に移動する。また、第1カム部61側のカム面68は、その軸方向移動により当接した回転カム53の各係合突部55(55a,55b)を、上記挿通孔63への挿通時に通過した側とは反対側の各挿通溝65(65a,65b)に案内する第2案内部72を有している。そして、これにより、第2カム部62側のカム面66と第1カム部61側のカム面68とが協働して、回転カム53を上記挿通孔63から抜脱可能な位置に回転させることが可能となっている。
本実施形態の切替機構40では、このようにして第1の連結部材31と第2の連結部材32との連結が解除されることにより、その互いに離間する方向の相対移動が許容される。そして、これにより、その可動パネル10と移動体22との間の連結状態が、スライド動作状態からチルト動作状態に切り替わるようになっている。
次に、本実施形態におけるサンルーフ装置11の電気的構成について説明する。
図6に示すように、本実施形態のサンルーフ装置11は、モータMを駆動源とするアクチュエータ80と、このアクチュエータ80に駆動電力を供給するECU81とを備えている。そして、上記のように構成された各開閉駆動装置20は、このアクチュエータ80が発生する駆動力に基づいて、その移動体22がレール21上を移動するように構成されている。
詳述すると、本実施形態では、アクチュエータ80の発生する駆動力は、動力伝達機構82を介して左右の開閉駆動装置20(20L,20R)に伝達される。尚、この動力伝達機構82は、例えば、ベルトやチェーン等を用いて構成される。また、ECU81は、車載電源(バッテリー)83の電源電圧Vbに基づいた駆動電力をモータMに供給する。そして、制御装置としてのECU81は、そのモータMに対する駆動電力の供給を通じて、各開閉駆動装置20の作動を制御する。
具体的には、ECU81には、図示しない車室内に設けられた操作スイッチ84の出力信号(操作入力信号Ssw)が入力されるようになっている。また、本実施形態では、アクチュエータ80には、モータMの回転に同期したパルス信号Spを出力するパルスセンサ85が設けられており、このパルス信号Sp(のエッジ)をカウントすることによって、そのレール21上における移動体22の移動位置を検出する。そして、ECU81は、その操作スイッチ84に対する操作入力、及び移動体22の移動位置に基づいて、各開閉駆動装置20の作動を制御する。
次に、本実施形態のECU81による各開閉駆動装置20の制御態様について説明する。
本実施形態では、図7に示すように、可動パネル10に対して各開閉駆動装置20の移動体22が相対移動するチルト動作状態にある場合(図2(a)参照)、ECU81は、その可動パネル10の開動作を要求する操作入力信号Sswに基づいて、移動体22を前方移動させる。また、その可動パネル10の閉動作を要求する操作入力信号Sswに基づいて、移動体22を後方移動させる。そして、これにより、そのチルト動作によって可動パネル10が開閉するように、各開閉駆動装置20の作動を制御する。
一方、可動パネル10と移動体22とが一体に移動するスライド動作状態にある場合(図2(b)参照)、ECU81は、その可動パネル10の開動作を要求する操作入力信号Sswに基づいて、移動体22を後方移動させる。また、その可動パネル10の閉動作を要求する操作入力信号Sswに基づいて、移動体22を前方移動させる。そして、これにより、そのスライド動作によって可動パネル10が開閉するように、各開閉駆動装置20の作動を制御する。
また、本実施形態では、上記のように可動パネル10がチルトアップされる前方位置には、切替領域αを含む自動領域βが設定されている。具体的には、この自動領域βは、切替領域αを内包する態様で当該切替領域αよりも前方側及び後方側に広がりを有している。そして、本実施形態のECU81は、この自動領域β内に移動体22がある場合には、その実行中の開閉駆動を変更することなく、両開閉駆動装置20の移動体22が自動領域βから脱出するまで、これら両開閉駆動装置20を自動的に制御する。
尚、この場合における「開閉駆動」とは言うまでもなく、「チルトアップ&スライドオープン」による可動パネル10の開駆動、又は「スライドクローズ&チルトダウン」による可動パネル10の閉駆動の何れかである。そして、自動領域βの後端位置P1´は、可動パネル10が略完全にチルトアップする位置P1よりも前方側に設定されている。
即ち、本実施形態のECU81は、その各開閉駆動装置20の移動体22が可動パネル10の全閉位置P0から上記自動領域βの後端位置P1´までの後方位置にある場合においては、その操作スイッチ84を介した開動作要求に基づき移動体22を前方移動させ、及びその閉動作要求に基づき移動体22を後方移動させる。そして、その各開閉駆動装置20の移動体22が上記自動領域βの後端位置P1´から可動パネル10の全開位置P3までの後方位置にある場合においては、その操作スイッチ84を介した開動作要求に基づき移動体22を後方移動させ、及びその閉動作要求に基づき移動体22を前方移動させる。
また、各開閉駆動装置20(20L,20R)の移動体22が上記自動領域βに突入した場合には、これら両開閉駆動装置20の移動体22が切替領域αを通過することにより可動パネル10と連結状態が切り替わるまで、自動的に、その移動体22を前方に移動させる。そして、その後、移動体22を自動領域βから脱出させるべく、その移動方向を反転して当該自動領域βの後端位置P1´まで、自動的に、その移動体22を後方移動させる。尚、本実施形態では、この移動体22の移動方向を反転させる位置P2が自動領域βの前端位置P2´となっている。
即ち、本実施形態のECU81は、各開閉駆動装置20(20L,20R)の移動体22が自動領域βにある場合には、その操作スイッチ84を介した操作入力を受け付けないことにより、左右の何れか一方のみの連結状態が切り替わった状態で移動体22が反転移動することを防止する。そして、これにより、その左右で異なる可動パネル10の開閉動作によって、各開閉駆動装置20(20L,20R)に噛み込みが発生するような事態を回避する構成になっている。
(電源電圧低下による駆動停止、及び電源電圧回復後の駆動再開時における移動方向の保持制御)
次に、本実施形態のECU81が実行する電源電圧低下に基づいた駆動停止、及び電源電圧回復後の駆動再開時における移動方向の保持制御の態様について説明する。
図6に示すように、本実施形態のECU81は、車載電源83の電源電圧Vbを監視する。そして、その電源電圧Vbが、アクチュエータ80のモータMに対する駆動電力の供給に必要な電圧よりも低くなった場合、具体的には、安定的に駆動力を発生させることが困難な値として設定された所定電圧V1以下になった場合には、その両開閉駆動装置20による可動パネル10の開閉駆動を停止する。
また、ECU81は、その駆動制御の停止後も電源電圧Vbの監視を継続する。そして、その電源電圧Vbが駆動電力の供給に要求される電圧に回復した場合、具体的には、モータMが安定的に駆動力を発生することが可能な値として設定された所定電圧V2以上になった場合には、その両開閉駆動装置20による可動パネル10の開閉駆動を再開する。
ここで、本実施形態のECU81は、上記のように両開閉駆動装置20(20L,20R)の駆動制御を停止した場合には、その停止前における移動体22の移動方向を記憶(保持)する。具体的には、本実施形態のECU81は、記憶領域Xに移動体22の移動方向を記憶する。尚、その検出された移動体22の移動位置についても、記憶領域Xに記憶する。そして、開閉駆動の再開時には、その停止前の移動方向に移動体22を移動させるべく両開閉駆動装置20を制御する。
詳述すると、図8のフローチャートに示すように、ECU81は、所定の検出タイミングで電源電圧Vbを取得すると(ステップ101)、続いて、その電源電圧Vbが所定電圧V1以下であるか否かを判定する(ステップ102)。また、ECU81は、上記両開閉駆動装置20の駆動中であるか否かを判定する(ステップ103)。そして、当該両開閉駆動装置20の駆動中である場合(ステップ103:YES)において、電源電圧Vbが所定電圧V1以下である場合(Vb≦V1、ステップ102:YES)には、両開閉駆動装置20における移動体22の移動方向を記憶して(ステップ104)、その両開閉駆動装置20の駆動制御を停止する(ステップ105)。
また、ECU81は、この駆動制御の停止後においても、所定の検出タイミングで電源電圧Vbを取得し(ステップ106)、その電源電圧Vbが所定電圧V2以上であるか否かを判定する(ステップ107)。そして、電源電圧Vbが所定電圧V2以上に回復した場合(Vb≧V2、ステップ107:YES)には、上記ステップ104において記憶した停止前の移動方向を読み出して(ステップ108)、その停止前の移動方向に移動体22を移動させるべく、両開閉駆動装置20の駆動制御を再開する(ステップ109)。
尚、上記ステップ102において、電源電圧Vbが所定電圧V1を超える場合(Vb>V1、ステップ102:NO)、又は上記ステップ103において、両開閉駆動装置20の駆動中ではないと判定した場合(ステップ103:NO)、ECU81は、上記ステップ104以降の処理を実行しない。
次に、上記のように構成されたサンルーフ装置11の作用について説明する。
即ち、本実施形態のサンルーフ装置11では、その両開閉駆動装置20の駆動源であるモータMに駆動電力を供給するための電源電圧Vbが所定電圧V1以下に低下した場合には、その両開閉駆動装置20による可動パネル10の開閉駆動が停止される。また、その後、電源電圧Vbが所定電圧V2以上に回復した場合には、両開閉駆動装置20による可動パネル10の開閉駆動が再開される。そして、このとき、両開閉駆動装置20は、その移動体22が停止前の移動方向に移動するように制御される。
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)サンルーフ装置11は、レール21上を車両前後方向に移動する移動体22の移動位置に基づいて可動パネル10を開閉駆動可能な左右一対の開閉駆動装置20(20L,20R)と、これら両開閉駆動装置20の作動を制御する制御装置としてのECU81とを備える。各開閉駆動装置20は、可動パネル10がチルトアップされる前方位置に設定された切替領域αに移動体22が移動することにより、当該移動体22と可動パネル10との間の連結状態を切り替え可能な切替機構40を備える。また、ECU81は、両開閉駆動装置20による可動パネル10の開閉駆動を停止した場合には、その停止前における移動体22の移動方向を記憶する。そして、その開閉駆動の再開時には、停止前の移動方向に移動体22を移動させるべく両開閉駆動装置20を制御する。
上記構成によれば、その移動体22と可動パネル10との連結状態が両開閉駆動装置20の何れか一方のみ切り替わった状態で当該両開閉駆動装置20による可動パネル10の開閉駆動が停止された場合であっても、その連結状態が左右の開閉駆動装置20(20L,20R)で相違する状況となることを防止することができる。そして、これにより、各開閉駆動装置20に噛み込みが発生するような事態を回避することができ、その結果、駆動停止後の再開時においても円滑に可動パネル10を開閉動作させることができる。
(2)ECU81は、両開閉駆動装置20の駆動源であるモータMに駆動電力を供給するための電源電圧Vbを監視する。そして、その電源電圧Vbが所定電圧V1以下に低下した場合には、両開閉駆動装置20の駆動制御を停止し、その電源電圧Vbが所定電圧V2以上に回復した場合には、両開閉駆動装置20の駆動制御を再開する。
上記構成によれば、安定的に駆動力を発生させることが可能な状況において両開閉駆動装置20による可動パネル10の開閉駆動が実行される。その結果、より円滑に、可動パネル10を開閉動作させることができる。そして、その停止後の再開時には、停止前の移動方向に移動体22を移動させるべく両開閉駆動装置20を制御して、当該各開閉駆動装置20に噛み込みが発生するような事態を回避することにより、その駆動停止後の再開時においても円滑に可動パネル10を開閉動作させることができる。
(3)切替機構40は、切替領域αにおける移動体22の移動により相対移動する第1及び第2の連結部材31,32を備え、これら第1及び第2の連結部材31,32間の連結及びその連結解除によって、移動体22と可動パネル10との間の連結状態を切り替える。第1の連結部材31は、第2の連結部材32との相対移動方向に延びる回転軸52を有して回転自在に支承された回転カム53を備える。また、第2の連結部材32は、切替領域αにおける移動体22の前方移動により回転カムが挿通される挿通孔63が形成された第1カム部61と、その挿通孔63に挿通された回転カム53に当接して該回転カム53を回転させるカム面66を有した第2カム部62と、を備えてなる。第1カム部61のカム面66は、挿通孔63に挿通されることにより同カム面66に当接した回転カム53の回転位置を、その挿通孔63から抜脱不能な位置に変更するように構成される。そして、このカム面66は、更に、その抜脱不能な回転位置にある回転カム53が上記切替領域αにおける移動体22の前方移動によって再度同カム面66に当接した場合には、その回転位置を抜脱不能な位置から抜脱可能な位置に変更するように構成される。
即ち、このような機械的に移動体22と可動パネル10との間の連結状態を切り替える切替機構40においては、その切替領域における移動体22の移動によって連結状態が切り替わる実際の位置が前後しやすい。従って、このような構成について、上記(1)に示される駆動制御を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、可動パネル10側に設けられた第1の連結部材31と、移動体22側に設けられた第2の連結部材32とにより切替機構40が構成される。そして、これら第1及び第2の連結部材31,32間の連結及びその連結解除によって、移動体22と可動パネル10との間の連結状態を切り替えることした。しかし、これに限らず、第1の連結部材31が移動体22側に設けられ、第2の連結部材32が可動パネル10側に設けられる構成であってもよい。
・また、可動パネル10がチルトアップされる前方位置に設定された切替領域αに移動体22が移動することにより、チルト動作状態にある連結状態をスライド動作状態に切り替えるとともに、スライド動作状態にある連結状態をチルト動作状態に切り替え可能なものであれば、切替機構40の構成はどのようなものであってもよい。具体的には、例えば、上記特許文献1に開示された構成によりチルト動作状態とスライド動作状態とを切り替えるものであってもよい。
・両開閉駆動装置20の駆動制御を停止する所定電圧V1、及びその駆動制御を再開する所定電圧V2は、任意に設定してもよい。例えば、所定電圧V1,V2の値を等しくする、或いはその「再開する所定電圧V2」を「停止する所定電圧V1」よりも高く設定する等とするとよい。
・上記実施形態では、電源電圧Vbの低下(Vb≦V1)により両開閉駆動装置20による可動パネル10の開閉駆動を停止した後、当該開閉駆動の再開時には、その停止前の移動方向に移動体22を移動させるべく両開閉駆動装置20の制御することとした。しかし、これに限らず、その他の要因により両開閉駆動装置20による可動パネル10の開閉駆動を停止した場合において、その駆動停止後の再開時、停止前の移動方向に移動体22を移動させる構成としてもよい。
・上記実施形態では、可動パネル10がチルトアップされる前方位置には、切替領域αを含む自動領域βが設定される。そして、ECU81は、この自動領域β内に移動体22がある場合には、その実行中の開閉駆動を変更することなく、両開閉駆動装置20の移動体22が自動領域βから脱出するまで、これら両開閉駆動装置20を自動的に制御することとした。しかし、これに限らず、上記のような駆動停止後の再開時、停止前の移動方向に移動体22を移動させる移動方向の保持制御は、このような自動領域βが設定されていない構成に具体化してもよい。
・また、開閉駆動の停止前、切替領域αを含む特定領域内に移動体22があったことを条件として、その停止前の移動方向に移動体22を移動させる移動方向の保持制御を実行する構成としてもよい。
例えば、図9のフローチャートに示すように、開閉駆動の停止後、その再開条件が成立した場合(ステップ201:YES)には、続いて、その開閉駆動の停止前、各開閉駆動装置20の移動体22が自動領域βにあったか否かを判定する(ステップ202)。そして、その開閉駆動の停止前に移動体22が自動領域βにあった場合(ステップ202:YES)には、その開閉駆動の停止時に記憶した停止前の移動方向を読み出して(ステップ203)、その停止前の移動方向に移動体22を移動させるべく、両開閉駆動装置20の駆動制御を再開する(ステップ204)。
一方、上記ステップ202において、その開閉駆動の停止前に移動体22が自動領域βになかった場合(ステップ202:NO)には、上記操作入力信号Sswを取得する(ステップ205)。そして、その操作スイッチ84を介した操作入力に基づいて両開閉駆動装置20の駆動制御を再開する(ステップ206)。尚、上記ステップ201において、開閉駆動停止後の再開条件が成立していない場合(ステップ201:NO)には、上記ステップ202〜ステップ206の処理は実行されない。
このように左右の開閉駆動装置20(20L,20R)で連結状態の相違が発生する可能性のある場合に限定して、その開閉駆動の再開時、停止前の移動方向に移動体22を移動させる移動方向の保持制御を実行することにより、当該制御の実行による違和感の発生やその操作自由度の低下を抑えることができる。そして、このような特定領域は自動領域βに限らず任意に設定してもよい。
・更に、駆動停止後の再開時、停止前の移動方向に移動体22を移動させる移動方向の保持制御の継続範囲については、任意に設定してもよい。例えば、その自動領域β内における自動制御の実行によって、切替領域αに移動体22が移動して連結状態が切り替えられた後、その移動体22の移動方向を反転するまで等とすればよい。また、所定時間が経過するまで、停止前の移動方向に移動体22を移動させる移動方向の保持制御を継続する構成としてもよい。そして、その移動範囲と時間制限とを組み合わせる構成であってもよい。
・また、停止前の移動方向が前方移動であった場合に限定して、駆動停止後の再開時、その停止前の移動方向、即ち当該移動体22を前方移動させる構成としてもよい。
例えば、図10のフローチャートに示すように、開閉駆動の停止後、その再開条件が成立した場合(ステップ301:YES)には、その開閉駆動の停止時に記憶した停止前の移動方向を読み出すとともに(ステップ302)、その停止前の移動方向が前方移動であったか否かを判定する(ステップ303)。そして、その停止前の移動方向が前方移動であった場合(ステップ303:YES)には、移動体22を前方移動させるべく、両開閉駆動装置20の駆動制御を再開する(ステップ304)。
尚、上記ステップ303において、その開閉駆動の停止前の移動方向が後方移動であった場合(ステップ303:NO)には、上記操作入力信号Sswを取得する(ステップ305)。そして、その操作スイッチ84を介した操作入力に基づいて両開閉駆動装置20の駆動制御を再開する構成とすればよい(ステップ306)。
即ち、切替機構40による可動パネル10と移動体22との間の連結状態の切り替えが、基本的に移動体22の前方移動によるものであるならば、開閉駆動の停止前の移動方向が後方移動である場合には、開閉駆動の再開時、左右の開閉駆動装置20に連結状態の相違が生ずる可能性は小さい。従って、上記構成によれば、より効果的に、その操作自由度の低下や違和感の発生を抑えつつ、各開閉駆動装置20に噛み込みが発生するような事態を回避することができる。
・上記実施形態では、第2カム部62側のカム面66と第1カム部61側のカム面68とが協働して、回転カム53を上記挿通孔63から抜脱可能な位置に回転させることとした。しかし、これに限らず、第2カム部62側のカム面66が単独で、その抜脱不能な回転位置にある回転カム53を抜脱可能な位置に変更する構成であってもよい。同様に、第2カム部62側のカム面66が単独で、第1カム部61の挿通孔63を介した相対移動により当接した回転カム53を、第1カム部61側の係合凹部69との係合位置まで回転させる構成であってもよい。
・上記実施形態では、回転カム53は、略均等角度間隔(略180°間隔)で回転カム本体54の外周に設けられた二つの係合突部55a,55bを備える。そして、挿通孔63には、これら各係合突部55a,55bに対応して略均等角度間隔(180°間隔)で形成された二つの挿通溝65a,65bが形成されることとした。しかし、これに限らず、回転カム53側の係合突部、及び挿通孔63側の挿通溝65の数は、任意に変更してもよい。そして、その回転カム53及び挿通孔63の形状についてもまた、切替機構40として機能する範囲において、任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、移動体22側にガイド孔26が設けられ、可動パネル10側(の支持ブラケット25)にガイドピン27が設けられることとした。しかし、これに限らず、移動体22側にガイドピン27が設けられ、可動パネル10側(の支持ブラケット25)にガイド孔26が設けられる構成であってもよい(特許文献1参照)。
・上記実施形態では、各開閉駆動装置20は、モータMを駆動源とするアクチュエータ80が発生する駆動力に基づいて、その移動体22がレール21上を移動するように構成されることとした。しかし、これに限らず、各開閉駆動装置20が独立した駆動源を有する構成であってもよい。
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記制御装置は、前記開閉駆動の停止前、前記移動体が前方側に向かって移動していた場合には、前記開閉駆動の再開時、前記移動体を前方移動させるべく前記両開閉駆動装置を制御すること、を特徴とする車両用サンルーフ装置。
即ち、切替機構による可動パネルと移動体との間の連結状態の切り替えが、基本的に当該移動体の前方移動によるものであるならば、その開閉駆動の停止前の移動方向が後方移動である場合には、開閉駆動の再開時、左右の開閉駆動装置に連結状態の相違が生ずる可能性は小さい。従って、上記構成によれば、より効果的に、その操作自由度の低下や違和感の発生を抑えつつ、各開閉駆動装置に噛み込みが発生するような事態を回避することができる。
1…車両、2…ルーフパネル、3…ルーフ開口部、3a,3b…幅方向両端部、10…可動パネル、10b…後端、11…サンルーフ装置、20(20L,20R)…開閉駆動装置、21…レール、22…移動体、30…チルト機構、31…第1の連結部材、32…第2の連結部材、40…切替機構、50…連結機構、52…回転軸、53…回転カム、61…第1カム部、62…第2カム部、63…挿通孔、66,68…カム面、69…係合凹部、80…アクチュエータ、81…ECU(制御装置)、X…記憶領域、83…車載電源、84…操作スイッチ、85…パルスセンサ、M…モータ、P0…全閉位置、P1…位置(チルトアップ位置)、P2…位置(反転位置)、P3…全開位置、α…切替領域、β…自動領域(特定領域)、P1´…自動領域βの後端位置、P2´…自動領域βの前端位置、Vb…電源電圧、V1,V2…所定電圧、Ssw…操作入力信号。

Claims (4)

  1. 車両の前後方向に延びるレールと前記レール上を移動可能に設けられた移動体と該移動体をルーフ開口部に設けられた可動パネルに連結する連結機構とを有して前記ルーフ開口部の幅方向両端部に配置されることにより前記可動パネルを開閉駆動可能な左右一対の開閉駆動装置と、前記各開閉駆動装置の作動を制御する制御装置とを備え、
    前記連結機構は、前記レール上を移動する前記移動体の相対位置に応じて前記可動パネルを傾動させるチルト機構と、前記移動体が前記可動パネルに対して相対移動可能なチルト動作状態と前記可動パネルが前記移動体と一体に移動するスライド動作状態とを切り替える切替機構とを備え、
    前記チルト機構は、前記移動体の前方移動に基づき前記可動パネルをチルトアップし、
    前記切替機構は、前記可動パネルがチルトアップされる前方位置に設定された切替領域に前記移動体が移動することにより、前記チルト動作状態にある前記移動体と前記可動パネルとの間の連結状態を前記スライド動作状態に切り替えるとともに、前記スライド動作状態にある前記連結状態を前記チルト動作状態に切り替え可能な車両用サンルーフ装置において、
    前記制御装置は、前記開閉駆動が停止した場合には、その停止前における前記移動体の移動方向を記憶領域に記憶し、前記開閉駆動の再開時には、前記停止前の移動方向に前記移動体を移動させるべく前記両開閉駆動装置を制御し、
    前記可動パネルがチルトアップされる前方位置には、前記切替領域を含む特定領域が設定されるとともに、
    前記制御装置は、前記開閉駆動の停止前、前記移動体が前記特定領域内にあった場合には、前記開閉駆動の再開時、前記停止前の移動方向に前記移動体を移動させるべく前記両開閉駆動装置を制御すること、
    を特徴とする車両用サンルーフ装置。
  2. 請求項に記載の車両用サンルーフ装置において、
    前記可動パネルがチルトアップされる前方位置には、前記切替領域を含む自動領域が設定され、
    前記制御装置は、前記移動体が前記自動領域に突入した場合には、実行中の前記開閉駆動を変更することなく、前記切替領域に前記移動体が移動することにより前記連結状態が切り替えられた後、前記移動体の移動方向を反転して前記自動領域から脱出させるべく、前記両開閉駆動装置を自動的に制御するものであって、
    前記特定領域は、前記自動領域であること、を特徴とする車両用サンルーフ装置。
  3. 請求項1又は請求項に記載の車両用サンルーフ装置において、
    前記移動体は、モータを駆動源として前記レール上を移動するものであって、
    前記制御装置は、電源電圧を監視し、前記電源電圧が第1の所定値以下に低下した場合には、前記開閉駆動を停止するとともに、前記電源電圧が第2の所定値以上に回復した場合には、前記開閉駆動を再開すること、を特徴とする車両用サンルーフ装置。
  4. 請求項1〜請求項の何れか一項に記載の車両用サンルーフ装置において、
    前記切替機構は、前記切替領域における前記移動体の移動により相対移動する第1及び第2の連結部材を備え、該第1及び第2の連結部材間の連結及びその連結解除により前記移動体と前記可動パネルとの間の連結状態を切り替えるものであって、
    前記第1の連結部材は、前記第2の連結部材との相対移動方向に延びる回転軸を有して回転自在に支承された回転カムを備え、
    前記第2の連結部材には、前記切替領域における前記移動体の前方移動により前記回転
    カムが挿通される挿通孔と、前記挿通孔に挿通された前記回転カムに当接して該回転カムを回転させるカム面とが形成されるとともに、
    前記カム面は、前記挿通孔に挿通されることにより前記カム面に当接した前記回転カムの回転位置を前記挿通孔から抜脱不能な位置に変更するとともに、該抜脱不能な回転位置にある前記回転カムが前記切替領域における前記移動体の前方移動により再度前記カム面に当接した場合には、その回転位置を抜脱不能な位置から抜脱可能な位置に変更するように構成されること、を特徴とする車両用サンルーフ装置。
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