以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
図1は、一実施例による操作装置100の斜視図である。図1には、互いに直交するx方向、y方向、及びz方向が定義される。x方向は、互いに逆を向くx1方向とx2方向とを区別せずに表す。y方向は互いに逆を向くy1方向とy2方向とを区別せずに表す。z方向は互いに逆を向くz1方向とz2方向とを区別せずに表す。これらの方向は、相対的な位置関係を説明するために便宜上規定するのであって、実際の使用時の方向を限定するわけではない。
操作装置100は、車両(図示せず)のシフトレンジを変更するために操作される装置である。車両は、例えば自動車や鉄道である。
操作装置100は、外形が略直方体で中空の支持体(ケースの一例)110と、支持体110に可動に支持された操作部材120(操作レバーの一例)とを含む。支持体110は、車両に固定されている。操作部材120は、支持体110内で2つの回転方向に傾倒可能に支持されている。操作装置100は、図示しない位置検出部により検出した操作部材120の回転方向と回転量とに応じた電気信号を、車両のトランスミッションの制御装置(図示せず)に与える。制御装置は、操作装置100からの電気信号に応じて、車両のトランスミッションのギア段(シフトレンジ)を変更する。
支持体110は、図1に示すように、第1支持体111と第2支持体112と第3支持体113とを含む。図2は、図1に示す第2支持体112の図示を省略した操作装置100の斜視図である。図2に示すように、第1支持体111のz1側は、開口されており、図1に示すようにxy平面に略平行な平板状の第2支持体112により覆われている。第2支持体112には、z方向に貫通した貫通孔112−1が設けられている。図2に示すように、第1支持体111のy2側は、開口されており、図1に示すようにzx平面に略平行な平板状の第3支持体113により覆われている。
図3は、図1に示す第2支持体112や第3支持体113、後述の傾倒動作規制機構200の一部の構成要素及び規制機構用駆動モータ300の図示を省略した操作装置100の、z1側から見た分解斜視図である。図4は、操作部材120と中間支持体140と第1アクチュエータ160と第2アクチュエータ170との、z2側から見た分解斜視図である。図5は、支持体110を省略した操作装置100の平面図である。図6は、図5の6−6線を通りzx平面に平行な断面における操作装置100の断面図である。図7は、図5の7−7線を通りyz平面に平行な断面における操作装置100の断面図である。図8は、図6の8−8線を通りxy平面に平行な断面における操作装置100の断面図である。
操作装置100は、図3に示すように、支持体110の内部に、さらに、第1カム130と、第2カム135と、中間支持体140と、第1ガイド部材150と、第2ガイド部材155と、第1アクチュエータ160と、第1弾性部材169と、第2アクチュエータ170と、第2弾性部材179と、を含む。
第1支持体111は、図3に示すように、第1軸受114と第2軸受115と第1カム固定部116と第2カム固定部117とを含む。第1軸受114は、第1支持体111内のx1側端部に設けられており、x2方向とz1方向とに解放された窪みである。第2軸受115は、第1支持体111内のx2側端部に設けられており、x1方向とz1方向とに解放された窪みである。第1カム固定部116は、第1支持体111内のy1側端部に設けられており、y2方向とz1方向とに解放された略直方体の部位である。第2カム固定部117は、第1支持体111内のx1側端部付近に設けられており、x2方向とz1方向とに解放された略直方体の部位である。第2カム固定部117は、第1軸受114と第2軸受115との間に位置している。
第1カム130は、図3に示すように、略直方体の外形をもち、x2側の面からx1方向に窪んだ第1窪み131をもち、第1窪み131の中にx2方向を向いた第1凹凸面132をもつ。図6に示すように、第1凹凸面132は、x方向に平行な後述の第2仮想回転軸102に重なる位置において、x1方向に最も窪んだ第1谷部133をもつ。第1カム130のz2側端部付近が、図3に示す第1カム固定部116に固定されている。図2に示すように、第1カム130は、第1支持体111内のx1側端部付近に位置している。
第2カム135は、図3に示すように、略直方体の外形をもち、y2側の面からy1方向に窪んだ第2窪み136をもち、第2窪み136の中にy2方向を向いた第2凹凸面137をもつ。図7に示すように、第2凹凸面137は、y方向に平行な後述の第1仮想回転軸101に重なる位置において、y1方向に最も窪んだ第2谷部138をもつ。第2カム135は、図3に示す第2カム固定部117に固定されており、図2に示すように、第1支持体111内のy1側端部付近に位置している。
中間支持体140は、図5に示すように、z方向から見たとき中空の略長方形に見える枠体141を含む。図3に示すように、枠体141は、共にyz平面に略平行で対向した第1板部141−1と第2板部141−2とを含み、さらに、共にzx平面に略平行で対向した第3板部141−3と第4板部141−4とを含む。第3板部141−3は、第1板部141−1のy1側端部と第2板部141−2のy1側端部とを、x方向に連結している。第4板部141−4は、第1板部141−1のy2側端部と第2板部141−2のy2側端部とを、x方向に連結している。第4板部141−4は、第3板部141−3よりy2側に位置している。
中間支持体140は、図5に示すように、第1板部141−1のx1側の面からx1方向に突出した略円柱形の第1シャフト142(図4)と、第2板部141−2のx2側の面からx2方向に突出した略円柱形の第2シャフト143(図3)とをさらに含む。
第3板部141−3のy2側の面には、図3に示すように、y1方向に窪んだ略円筒形状の第1中間軸受144が設けられている。第4板部141−4には、y方向に貫通した略円筒形状の第2中間軸受145が設けられている。中間支持体140は、さらに、略円柱状の第3シャフト146を含む。図8に示すように、第1中間軸受144と第2中間軸受145と第3シャフト146との各中心は、y方向に平行な第1仮想回転軸101に一致している。第3シャフト146のy1側端部は、第1中間軸受144内に固定されている。第3シャフト146のy2側端部は、第2中間軸受145内に固定されている。
第1シャフト142は、図2に示すように、第1支持体111の第1軸受114により回転可能に支持されている。第2シャフト143は、第1支持体111の第2軸受115により回転可能に支持されている。図8に示すように、第1シャフト142と第2シャフト143との各中心は、x方向に平行な第2仮想回転軸102に一致している。すなわち、中間支持体140の全体が、支持体110(図2)により第2仮想回転軸102のまわりに回転可能に支持されている。
操作部材120は、図3に示すように、基部121と、基部121からz1方向に延びた操作軸122とを含む。
基部121は、図5に示すように、y方向において第3板部141−3と第4板部141−4とにより挟まれているので、y方向に移動しない。図3に示すように、基部121には、y方向に貫通した略円筒形状の貫通軸孔123が設けられている。図8に示すように、貫通軸孔123内に第3シャフト146の一部が位置している。貫通軸孔123の直径は、第3シャフト146の直径と同程度である。貫通軸孔123の中心は、第1仮想回転軸101に一致する。中間支持体140は、第3シャフト146を介して操作部材120を第1仮想回転軸101のまわりに回転可能に支持している。
図3に示す操作軸122の延びる方向は、軸方向と呼ばれ、図8に示す第1仮想回転軸101と第2仮想回転軸102とに略直交する。図3に示す状態において、軸方向はz方向に略一致する。ただし、軸方向は、第1仮想回転軸101のまわりで回転する。操作軸122は、略円筒形状であり、z2側の一端が基部121に固定されている。図1に示すように、操作軸122の一部は、支持体110の貫通孔112−1を通って外部まで延びている。操作部材120は、操作軸122のz1側の端部からz1方向に突出した取り付け突起124をさらに含む。取り付け突起124は、支持体110の外部に位置している。取り付け突起124には、操作者が握る図示しないノブが取り付けられる。
操作部材120は、図8に示すように、操作者の操作を受けて第1仮想回転軸101のまわりで回転可能であることに加えて、中間支持体140と共に第2仮想回転軸102のまわりでも回転可能である。第1仮想回転軸101と第2仮想回転軸102とは、同一平面内で略直交している。第1仮想回転軸101は、操作軸122の軸方向と直交した状態で、操作部材120と共に第2仮想回転軸102のまわりで回転する。
第1ガイド部材150は、図4に示すように、操作部材120と一体的に形成されており、操作部材120に固定されている。第1ガイド部材150は、操作部材120の基部121のx1側からx1方向に突出している。
第1ガイド部材150には、図8に示すように、x1側端部からx2方向に窪んだ略円筒形状の第1外穴151と、第1外穴151のx2側端部からさらにx2方向に窪んだ略円筒形状の第1内穴152とが設けられている。第1外穴151と第1内穴152との各中心は、図8に示す回転位置において第2仮想回転軸102に一致する。第1内穴152の直径は、第1外穴151の直径より小さい。第1ガイド部材150は、操作部材120が第1仮想回転軸101のまわりで回転するときに操作部材120と共に回転する。
第2ガイド部材155は、図4に示すように、中間支持体140と一体的な部材として形成されており、中間支持体140に固定されている。第2ガイド部材155は、中間支持体140の第3板部141−3のy1側の面からy1方向に突出している。
第2ガイド部材155には、図8に示すように、y1側端部からy2方向に窪んだ略円筒形状の第2外穴156と、第2外穴156のy2側端部からさらにy2方向に窪んだ略円筒形状の第2内穴157とが設けられている。第2外穴156と第2内穴157との各中心は、第1仮想回転軸101に一致する。第2内穴157の直径は、第2外穴156の直径より小さい。第2ガイド部材155は、操作部材120と中間支持体140とが第2仮想回転軸102のまわりで回転するときに操作部材120と共に回転する。
第1アクチュエータ160は、図3に示すように、第1大径部161と第1小径部162と第1ヘッド163とを含む。図8に示す回転位置において、第1大径部161と第1小径部162とは、いずれも、第2仮想回転軸102上に中心軸をもつ略円筒形状である。第1大径部161のx2側の面に、第1小径部162のx1側端部が固定されている。第1ヘッド163は、第1大径部161のx1側の面からx1方向に突出している。図8に示す回転位置において、第1ヘッド163は、第2仮想回転軸102上に中心軸をもつ略円錐形状である。第1ヘッド163のx1側に先端が位置しており、先端は丸みを帯びている。
第1大径部161は、図8に示すように、第1外穴151内に位置している。第1小径部162は、第1内穴152内に位置している。図8に示す回転位置において、第1大径部161が第1外穴151内で摺動可能であり、第1小径部162が第1内穴152内で摺動可能である。第1アクチュエータ160は、第1ガイド部材150に規定された経路(以下、第1経路と称する場合がある)に沿って移動可能である。図8に示す1つの回転位置において、第1経路は、第2仮想回転軸102に略平行であり、本実施例では第2仮想回転軸102に一致する。
第1弾性部材169は、図8に示すように、第1アクチュエータ160の第1小径部162のまわりに巻かれた金属製の巻きばねである。第1弾性部材169は、x方向において、第1大径部161内でx2側に位置する第1ガイド部材150の一部と、x1側に位置する第1大径部161との間に挟まれている。第1弾性部材169は、第1アクチュエータ160を弾性的に第1凹凸面132に付勢する。他の例において、第1弾性部材169は、ゴムや板バネなど他の弾性部材であってもよい。
第1ガイド部材150のx1側の端部付近は、部分的に第1カム130の第1窪み131内に位置している。第1アクチュエータ160の第1ヘッド163のx1側端部は、第1カム130の第1凹凸面132に接触している。
第2アクチュエータ170は、図3に示すように、第2大径部171と第2小径部172と第2ヘッド173とを含む。図8に示すように、第2大径部171と第2小径部172とは、いずれも、第1仮想回転軸101上に中心軸をもつ略円筒形状である。第2大径部171のy2側の面に、第2小径部172のy1側端部が固定されている。第2ヘッド173は、第2大径部171のy1側の面からy1方向に突出している。第2ヘッド173は、第1仮想回転軸101上に中心軸をもつ略円錐形状である。第2ヘッド173のy1側に先端が位置しており、先端は丸みを帯びている。
第2大径部171は、図8に示すように、第2外穴156内に位置している。第2小径部172は、第2内穴157内に位置している。第2大径部171が第2外穴156内で第1仮想回転軸101に沿って摺動可能であり、第2小径部172が第2内穴157内で第1仮想回転軸101に沿って摺動可能である。第2アクチュエータ170は、第2ガイド部材155規定された経路(以下、第2経路と称する場合がある)に沿って移動可能である。第2経路は、第1仮想回転軸101に略平行であり、本実施例では第1仮想回転軸101に一致する。
第2アクチュエータ170は、図8に示すように、全体として、第1仮想回転軸101上に配置されており、第1仮想回転軸101を中心として回転対称な形状である。第1経路と第2経路との両方が、軸方向に略直交する方向に延びている。
第2弾性部材179は、図8に示すように、第2アクチュエータ170の第2小径部172のまわりに巻かれた金属製の巻きばねである。第2弾性部材179は、y方向において、第2大径部171内でy2側に位置する第2ガイド部材155の一部と、y1側に位置する第2大径部171との間に挟まれている。第2弾性部材179は、第2アクチュエータ170を弾性的に第2凹凸面137に付勢する。他の例において、第2弾性部材179は、ゴムや板バネなど他の弾性部材であってもよい。
第2ガイド部材155のy1側の端部付近は、部分的に第2カム135の第2窪み136内に位置している。第2アクチュエータ170の第2ヘッド173のy1側端部は、第2カム135の第2凹凸面137に接触している。
図1から図8は、操作部材120をどの方向にも回転させていない初期位置における操作装置100の図である。初期位置において、操作装置100は、図8に示す第1仮想回転軸101のまわりの回転という観点から、初期状態の第1安定位置にある。初期位置において、操作装置100は、図8に示す第2仮想回転軸102のまわりの回転という観点から、初期状態の第2安定位置にある。
操作装置100は、図8に示す第1仮想回転軸101を中心として、図6に示す第1回転方向181と第2回転方向182とに回転させることができる。第1回転方向181は、操作部材120のz1側端部がx1方向に動く方向である。第2回転方向182は、操作部材120のz1側端部がx2方向に動く方向である。さらに、操作装置100は、図8に示す第2仮想回転軸102を中心として、図7に示す第3回転方向183と第4回転方向184とに回転させることができる。第3回転方向183は、操作部材120のz1側端部がy1方向に動く方向である。第4回転方向184は、操作部材120のz1側端部がy2方向に動く方向である。
図6に示す第1安定位置において、第1アクチュエータ160の移動可能な第1経路は、第2仮想回転軸102に略平行であり、第1アクチュエータ160の回転対称の中心は第2仮想回転軸102に略一致している。操作部材120が図6に示す第1安定位置に位置しているとき、第1アクチュエータ160の第1ヘッド163のx1側端部が第1谷部133にはまる。そのため、操作部材120は、ある程度の力を受けないと第1仮想回転軸101(図8)のまわりで回転しない。
図7に示すように、第2アクチュエータ170の移動可能な第2経路は、回転位置にかかわらず第1仮想回転軸101に略平行であり、第2アクチュエータ170の回転対称の中心は回転位置にかかわらず第1仮想回転軸101に略一致している。図7に示す第2安定位置において、第1仮想回転軸101は、y方向に略平行である。操作部材120が図7に示す第2安定位置に位置しているとき、第2アクチュエータ170の第2ヘッド173のy1側端部が第2谷部138にはまる。そのため、操作部材120は、ある程度の力を受けないと第2仮想回転軸102(図8)のまわりで回転しない。
次に、図2及び図9以降を参照して、操作装置100における傾倒動作規制機構200について説明する。
以下では、上述した操作部材120の第1仮想回転軸101(第1軸の一例)まわりの回転動作を、「第1傾倒動作」と称し、上述した操作部材120の第2仮想回転軸102(第2軸の一例)まわりの回転動作を、「第2傾倒動作」と称する。また、便宜上、x方向を前後方向とし、x1を「前」とし、また、y方向を左右方向とし、y1を「左」とする。
操作装置100は、図2に示すように、傾倒動作規制機構200と、規制機構用駆動モータ300とを含む。
傾倒動作規制機構200は、第1及び第2傾倒動作を選択的に規制又は許容する。本実施例では、一例として、傾倒動作規制機構200は、車両のトランスミッションのシフトレンジやシフトモード(スポーツモードないしマニュアルモードや、オートマチックモード)等に応じて、第1及び第2傾倒動作の規制状態を変更する。規制状態の変更とは、完全に規制された状態(傾倒動作が許容された状態)から部分的に規制される状態への変更やその逆の変更、完全に規制された状態から完全に規制が解除された状態への変更やその逆の変更、部分的に規制される状態から完全に規制が解除された状態への変更やその逆の変更等を含む概念である。部分的に規制される状態とは、第1傾倒動作については、第1回転方向181及び第2回転方向182のうちのいずれか一方だけが規制される状態であり、第2傾倒動作については、例えば第3回転方向183及び第4回転方向184のうちのいずれか一方だけが規制される状態である。
図9は、車両のシフトレンジと第1及び第2傾倒動作の規制/許容との関係の一例を示す表図である。図10は、第1及び第2傾倒動作によるシフトパターンを模式的に示す図である。
図9に示す例では、シフトレンジが「A1レンジ」であるときは、第1傾倒動作が許容されるが、第2傾倒動作は左右ともに規制される。第2傾倒動作が規制されると、例えば、図10に示すHポジションから、Lポジション及びRポジションのいずれへの第2傾倒動作も不能となる。尚、Hポジションは、第1アクチュエータ160の第1ヘッド163が第1カム130の第1谷部133に嵌り、かつ、第2アクチュエータ170の第2ヘッド173の第2谷部138に嵌るときの中立ポジションに対応する。
また、図9に示す例では、シフトレンジが「A2レンジ」であるときは、第1傾倒動作が許容されるが、第2傾倒動作は右だけ規制される。右への第2傾倒動作が規制されると、例えば、図10に示すHポジションから、Rポジションへの第2傾倒動作が不能となる。他方、図10に示すHポジションから、Lポジションへの第2傾倒動作は可能である。
また、図9に示す例では、シフトモードが「A3モード」であるときは、第1傾倒動作は規制される。第1傾倒動作が規制されると、例えば、図10に示すHポジションから、F1ポジションを超えてF2ポジションへの第1傾倒動作や、Hポジションから、B1ポジションを超えてB2ポジションへの第1傾倒動作が不能となる。また、シフトモードが「A3モード」であるときは、図10に示すHポジションから、第2傾倒動作は左だけ規制される。左への第2傾倒動作が規制されると、例えば、図10に示すHポジションから、Lポジションへの第2傾倒動作が不能となる。他方、図10に示すHポジションから、Rポジションへの第2傾倒動作は可能である。
尚、A1レンジや、A2レンジは、操作装置100の使用態様に応じて設計段階で決定され、A3モードの具体的な役割(前進レンジへの切り替え、後退レンジへの切り替え、マニュアルモードとオートマチックモードとの間のモード切替等)は、操作装置100の使用態様に応じて設計段階で決定される。また、各ポジションへの傾倒動作により実現される機能も、A1レンジや、A2レンジ、A3モードの特性等に応じて決定される。例えば、シフトモードが「A3モード」であるとき、Rポジションへの第2傾倒動作は、シフトモードを「通常モード」に戻す機能を有してもよい。
図11は、傾倒動作規制機構200の説明図であり、傾倒動作規制機構200の構成要素を示す分解斜視図である。
傾倒動作規制機構200は、支持体110(図1参照)の内部に設けられる。傾倒動作規制機構200は、円筒状の回転部材210(第2可動部材の一例)と、スライド部材230(第1可動部材の一例)とを含む。
回転部材210は、円筒状の本体部212と、ウォームホイール214と、ロックリンク216とを含む。
本体部212は、径方向外側に突出する第1突出部212−1及び第2突出部212−2とを、周方向の異なる位置に含む。第1突出部212−1及び第2突出部212−2は、後述するが、中間支持体140に形成される第1突出部140−1及び第2突出部140−2と協動して、中間支持体140の回転変位を規制する機能を有する。
ウォームホイール214は、本体部212に対して回転不能に取り付けられる。従って、ウォームホイール214は、本体部212と共に回転する。尚、ウォームホイール214は、本体部212に一体に形成されてもよい。ウォームホイール214は、規制機構用駆動モータ300のウォームギア302(図2参照)と噛み合う。回転部材210は、ウォームホイール214とウォームギア302との噛み合いを介して、規制機構用駆動モータ300(図2参照)により回転駆動される。
ロックリンク216は、本体部212に対して回転不能に取り付けられる。従って、ロックリンク216は、本体部212と共に回転する。ロックリンク216は、円環状の形態であり、z1側に突出するピン216−1を含む。尚、ロックリンク216は、本体部212に一体に形成されてもよい。
スライド部材230は、y方向に平行にスライド動作する。スライド部材230は、z方向に視て、C字状(コの字状)の形態であり、x方向の両側に、y方向に延在する係止部231,232を含む。また、スライド部材230は、ピン216−1が挿入される長穴234を含む。長穴234は、x方向を長手方向とする形態である。このようにして、スライド部材230は、ピン216−1が長穴234に挿入されることで、回転部材210に連結される。
図12は、スライド部材230、ホルダ118及び第2支持体112の3者の関係を示す断面図であり、図1のラインA−Aに沿った断面図である。スライド部材230は、図12に示すように、z方向でホルダ118(図2参照)と第2支持体112との間に、y方向に摺動可能に支持される。ホルダ118は、図2に示すように、操作部材120が通る開口部118−1を備え、ボルト1181(図2参照)により第2支持体112に固定される。
図12に示すように、係止部231,232は、z1側に突出した形態である。第2支持体112の内部側の表面には、z2側に突出する突条部1121,1122が形成される。突条部1121,1122は、y方向に延在する。x方向で突条部1121,1122の間には、係止部231,232が位置する。突条部1121,1122は、係止部231,232とx方向で当接することで、第2支持体112に対するスライド部材230のx方向の変位を規制する。このようにして、スライド部材230は、y方向の変位以外は拘束されるので、y方向にのみ変位可能である。従って、ピン216−1が長穴234内で動くと、スライド部材230のy方向の変位が発生する。即ち、ピン216−1及び長穴234は、回転部材210の回転動作をスライド部材230のスライド動作に変換する連結部を形成する。
規制機構用駆動モータ300は、傾倒動作規制機構200を駆動する。規制機構用駆動モータ300は、電気モータであり、出力軸にはウォームギア302が取り付けられる。規制機構用駆動モータ300は、上述のように、ウォームホイール214及びウォームギア302を介して、回転部材210を回転動作させる。回転部材210が回転動作すると、上述のように、回転部材210の回転動作がスライド部材230のスライド動作に変換され、スライド部材230がスライド動作する。
図13乃至図15は、スライド部材230によるスライド動作の説明図である。
図13乃至図15は、第2支持体112を省略した操作装置100の上面図であり、図13は、シフトレンジが「A1レンジ」であるときの状態を示す図であり、図14は、シフトレンジが「A2レンジ」であるときの状態を示す図であり、図15は、シフトモードが「A3モード」であるときの状態を示す図である。尚、図13等には、第3支持体113に取り付けられるセンサ400と、回転部材210に取り付けられるリング状の磁石402が示される。センサ400及び磁石402は、回転部材210の回転位置を検出する機能を果たす。
図13に示すように、シフトレンジが「A1レンジ」であるときの状態では、スライド部材230がy方向のy2側の位置(第2位置の一例)にある。この場合は、操作部材120は、図13に示すように、x方向に視て、スライド部材230の係止部231,232にオーバーラップしておらず、従って、操作部材120は、第1仮想回転軸101まわりの回転が可能である(図6参照)。このようにして、シフトレンジが「A1レンジ」であるときの状態では、第1傾倒動作が許容される(図9参照)。
図13に示す状態では、ピン216−1は、スライド部材230の長穴234のx2側の端部に位置する。この状態で、規制機構用駆動モータ300の駆動により回転部材210が図13のビューで反時計回りに回転すると、ピン216−1が反時計回りに回転する。この際、ピン216−1が長穴234をy1側に押しながらx1側に移動する。これにより、スライド部材230がy1側に変位し、図14に示す状態へと遷移する。
図14に示すように、シフトレンジが「A2レンジ」であるときの状態では、操作部材120は、図14に示すように、x方向に視て、スライド部材230の係止部231,232にオーバーラップしておらず、従って、操作部材120は、第1仮想回転軸101まわりの回転が可能である(図6参照)。このようにして、シフトレンジが「A2レンジ」であるときの状態では、第1傾倒動作が許容される(図9参照)。
図14に示す状態では、ピン216−1は、図14のビューで12時の位置にあり、スライド部材230の長穴234のx1側の端部に位置する。この状態で、規制機構用駆動モータ300の駆動により回転部材210が図14のビューで反時計回りに回転すると、ピン216−1が反時計回りに回転する。この際、ピン216−1が長穴234をy1側に押しながらx2側に移動する。これにより、スライド部材230がy1側に変位し、図15に示す状態へと遷移する。
図15に示すように、シフトモードが「A3モード」であるときの状態では、スライド部材230がy方向のy1側の位置(第1位置の一例)にある。この場合は、操作部材120は、図15に示すように、x方向に視て、スライド部材230の係止部231,232にオーバーラップしており、操作部材120は、第1仮想回転軸101まわりの回転が規制される。即ち、操作部材120を第1仮想回転軸101まわりに回転させようとすると、操作部材120がスライド部材230の係止部231,232に当たる。スライド部材230は、上述のように、支持体110の第2支持体112に対してx方向で拘束されている。従って、操作部材120は、スライド部材230に当たるとそれ以上は第1仮想回転軸101まわりに回転できなくなる。このようにして、シフトモードが「A3モード」であるときの状態では、第1傾倒動作が規制される(図9参照)。
図16乃至図18は、回転部材210による規制機能の説明図である。
図16は、支持体110を省略した操作装置100のz2側から視た斜視図であり、シフトレンジが「A1レンジ」であるときの状態を示す図である。図17は、支持体110を省略した操作装置100のz1側から視た斜視図であり、シフトレンジが「A2レンジ」であるときの状態を示す図である。図18は、支持体110を省略した操作装置100のz1側から視た斜視図であり、シフトモードが「A3モード」であるときの状態を示す図である。尚、図16に示す状態は、図13に示す状態に対応し、図17に示す状態は、図14に示す状態に対応し、図18に示す状態は、図15に示す状態に対応する。
図16に示すように、シフトレンジが「A1レンジ」であるときの状態では、回転部材210は、z方向に視て、第2突出部212−2が中間支持体140の第1突出部140−1及び第2突出部140−2のいずれにもオーバーラップする回転位置(第1回転位置の一例)にある。従って、操作部材120は、第2仮想回転軸102まわりの回転であって、いずれの方向への回転(正転及び逆転)も規制される。即ち、図16の矢印R1方向(正転方向又は逆転方向の一例)に回転させようとすると、中間支持体140の第1突出部140−1がz1側で第2突出部212−2に当たることでそれ以上の回転が不能となる。また、図16の矢印R2方向(逆転方向又は正転方向の一例)に回転させようとすると、中間支持体140の第2突出部140−2がz2側で第2突出部212−2に当たることでそれ以上の回転が不能となる。このようにして、シフトレンジが「A1レンジ」であるときの状態では、第2傾倒動作が左右ともに規制される(図9参照)。
図16に示す状態で、規制機構用駆動モータ300の駆動により回転部材210が図16の回転方向R3で回転すると、z方向に視て、第2突出部212−2が中間支持体140の第1突出部140−1及び第2突出部140−2のうちの、第2突出部140−2とオーバーラップしなくなる回転位置(第2回転位置の一例)に至る。即ち、図16に示す状態から図17に示す状態へと遷移する。尚、図17に示す状態(図16に示す状態も同様)では、第1突出部212−1は、z方向に視て、中間支持体140の第1突出部140−1及び第2突出部140−2のいずれにもオーバーラップしていない。
図17に示すように、シフトレンジが「A2レンジ」であるときの状態では、回転部材210は、z方向に視て、第2突出部212−2が中間支持体140の第1突出部140−1にオーバーラップする回転位置(第2回転位置の一例)にある。従って、操作部材120は、第2仮想回転軸102まわりの一方向の回転が規制される。即ち、図17の矢印R1方向に回転させようとすると、中間支持体140の第1突出部140−1がz1側で第2突出部212−2に当たることでそれ以上の回転が不能となる。他方、図17の矢印R2方向に回転させるときは、中間支持体140が回転部材210に干渉せず、回転が可能である。このようにして、シフトレンジが「A2レンジ」であるときの状態では、第2傾倒動作が右方向だけが規制される(図9参照)。
図17に示す状態で、規制機構用駆動モータ300の駆動により回転部材210が図17の回転方向R3で回転すると、z方向に視て、第1突出部212−1が中間支持体140の第2突出部140−2にオーバーラップする回転位置(第2回転位置の一例)に至る。即ち、図17に示す状態から図18に示す状態へと遷移する。尚、図18に示す状態では、第2突出部212−2は、z方向に視て、中間支持体140の第1突出部140−1及び第2突出部140−2のいずれにもオーバーラップしていない。
図18に示すように、シフトモードが「A3モード」であるときの状態では、回転部材210は、z方向に視て、第1突出部212−1が中間支持体140の第2突出部140−2にオーバーラップする回転位置(第2回転位置の一例)にある。従って、操作部材120は、第2仮想回転軸102まわりの一方向の回転が規制される。即ち、図18の矢印R2方向に回転させようとすると、中間支持体140の第2突出部140−2がz2側で第1突出部212−1に当たることでそれ以上の回転が不能となる。他方、図18の矢印R1方向に回転させるときは、中間支持体140が回転部材210に干渉せず、回転が可能である。このようにして、シフトモードが「A3モード」であるときの状態では、第2傾倒動作が左方向だけが規制される(図9参照)。
以上説明したように、本実施例によれば、単一の規制機構用駆動モータ300を用いて、操作部材120の第1傾倒動作及び第2傾倒動作の双方を規制できる。即ち、回転部材210を規制機構用駆動モータ300により回転駆動し、回転部材210を所望の回転位置に回転させることで、図9に示す各規制状態を実現できる。従って、本実施例によれば、単一の規制機構用駆動モータ300を用いることで、2つのモータを用いる場合に比べて、操作装置100のコスト及び体格を低減できる。
次に、図19及び図20を参照して、操作装置100の制御系について概説する。
図19は、操作装置100の制御系を示す構成図である。
操作装置100の制御系は、制御装置500を含む。制御装置500は、コンピュータにより形成される。制御装置500には、規制機構用駆動モータ300及びセンサ400が接続される。また、制御装置500には、CAN(controller area network)などの車載ネットワーク502を介して、トランスミッションを制御するトランスミッション制御装置600が接続される。尚、トランスミッション制御装置600は、コンピュータにより形成され、例えばエンジンを制御するECU(Electronic Control Unit)により実現されてもよい。また、制御装置500は、トランスミッション制御装置600により実現されてもよい。
制御装置500は、トランスミッション制御装置600からトランスミッション制御情報を取得する。トランスミッション制御情報は、例えば、トランスミッションの現在のシフトレンジや、現在形成中のシフトモードを表す。
制御装置500は、センサ400からの情報(規制機構用駆動モータ300の回転位置情報)やトランスミッション制御装置600からのトランスミッション制御情報に基づいて、規制機構用駆動モータ300を制御する。
図20は、制御装置500により実行される処理の一例を示す概略フローチャートである。
ステップS200では、制御装置500は、トランスミッション制御装置600からトランスミッション制御情報を取得する。
ステップS202では、制御装置500は、ステップS200で得たトランスミッション制御情報に基づいて、現在形成中のシフトモードが「A3モード」であるか否かを判定する。現在形成中のシフトモードが「A3モード」である場合は、ステップS204に進み、それ以外の場合は、ステップS206に進む。
ステップS204では、制御装置500は、「A3モード」用の規制状態を形成又は維持する。例えば、制御装置500は、センサ400からの情報に基づいて、規制機構用駆動モータ300の現在の回転位置が、「A3モード」用の回転位置(図15及び図18参照)でない場合は、「A3モード」用の回転位置(図15及び図18参照)まで規制機構用駆動モータ300を駆動する。
ステップS206では、制御装置500は、ステップS200で得たトランスミッション制御情報に基づいて、現在のシフトレンジが「A1レンジ」であるか否かを判定する。現在のシフトレンジが「A1レンジ」である場合は、ステップS208に進み、それ以外の場合(即ち現在のシフトレンジが「A2レンジ」)は、ステップS210に進む。
ステップS208では、制御装置500は、「A1レンジ」用の規制状態を形成又は維持する。例えば、制御装置500は、センサ400からの情報に基づいて、規制機構用駆動モータ300の現在の回転位置が、「A1レンジ」用の回転位置(図13及び図16参照)でない場合は、「A1レンジ」用の回転位置(図13及び図16参照)まで規制機構用駆動モータ300を駆動する。
ステップS210では、制御装置500は、「A2レンジ」用の規制状態を形成又は維持する。例えば、制御装置500は、センサ400からの情報に基づいて、規制機構用駆動モータ300の現在の回転位置が、「A2レンジ」用の回転位置(図14及び図17参照)でない場合は、「A2レンジ」用の回転位置(図14及び図17参照)まで規制機構用駆動モータ300を駆動する。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例では、操作装置100は、車両に設けられるが、これに限られない。例えば、操作装置100は、航空機や、船舶、宇宙船、建設機械、ヘリコプターなどに設けられてもよい。
また、上述した実施例では、操作部材120が中立ポジション(第1アクチュエータ160の第1ヘッド163が第1カム130の第1谷部133に嵌り、かつ、第2アクチュエータ170の第2ヘッド173の第2谷部138に嵌る状態)に付勢されるモーメンタリタイプであったが、これに限られない。即ち、操作部材が中立ポジション以外のポジションで保持されるステーショナリ型のタイプの操作装置にも適用できる。
また、上述した実施例では、中間支持体140は、回転部材210の回転範囲の全体にわたり、少なくとも一の回転方向での回転が回転部材210により規制されるが、これに限られない。例えば、回転部材210が所定の回転位置にあるとき、中間支持体140は回転部材210により規制されずにいずれの方向にも回転が可能とされてもよい。
また、上述した実施例では、スライド部材230は、2つの係止部231,232を有しているが、係止部231,232のうちの一方のみを有してもよい。この場合、係止部を有する側への傾倒動作だけが規制対象となる。
また、上述した実施例では、スライド部材230と回転部材210との連結は、スライド部材230側の長穴234と、回転部材210側のピン216とにより実現されているが、これに限られない。例えば、スライド部材230側にピンを設け、回転部材210側に長穴(例えば径方向に長い長穴)を設けることで、同様の連結を実現してもよい。