JP6084681B2 - ペリクル膜及びペリクル - Google Patents

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Description

本発明は、極端紫外光を用いたリソグラフィ用のペリクル膜及び該ペリクル膜を備えたペリクルに関する。
半導体集積回路は、1960年代に生産が開始されてから、集積度の向上が図られ、1970代初頭から最近に至るまで、3年に約4倍の高集積化が実現されるという目覚ましい高集積化が続いている。この半導体集積回路の高集積化に貢献してきた技術が、光リソグラフィと呼ばれる露光技術である。この露光技術では、半導体集積回路の配線の最小線幅が解像度により決まり、得られる解像度は、レイリーの式に従い、露光光学系の開口度、露光装置のK1ファクターと呼ばれる装置定数と露光波長λ(以下、単にλとも記載)に依存している。この結果、45nm以下の解像度を得るためには、露光波長をEUV領域と呼ばれるλ=6〜14nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光とも記載)を用いたEUVリソグラフィが最も有力なものと考えられている。
EUVリソグラフィ開発における現時点での課題としては、EUV用光源の出力、EUV用レジスト、EUV用マスクの欠陥やコンタミネーション粒子等が挙げられている。その中でも、EUV用光源の出力、具体的にはEUV光源の出力を十分に大きくできないことは、全ての課題に大きく影響している。例えば、EUV用マスクのコンタミネーション粒子に関する課題では、EUV光がほとんど全ての物質に大きく吸収されるため、従来の露光波長、436nm(g線)、365nm(i線)、248nm(KrF)、193nm(ArF)等での透過縮小投影露光技術とは異なり、EUVリソグラフィでは、反射縮小投影露光技術を用い、EUV用マスクを含む全ての露光装置のコンポーネントが真空中に配置される。
しかしながら、最近のEUVリソグラフィの実証テストから、コンポーネントが真空中に配置されていても、コンタミネーション粒子は露光装置中に多量に発生しており、EUV用マスクの洗浄が頻繁に必要となる可能性が予想されている。そのため、EUV用光源の出力(中間集光点値)が数百W以上得られるようになれば、従来通りペリクルが必要となる。
EUV用ペリクルに用いられるペリクル膜としては、これまでに以下に示す4種類の膜構造を有するものが提案されている。第1の膜構造は、EUV光に対して消光係数k(以下、単にkとも記載)が低い元素、例えば炭素Cからなるカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)等をEUV用マスク表面に柱状(数十nmの間隔、高さ数μm)に成長させている(例えば、特許文献1参照)。
第2の膜構造は、λ=13.5nmのEUV光に対してkが低い元素として珪素Siを用いて、膜厚20〜150nmの極めて薄い平膜を作り、これをEUV用ペリクル膜としている(例えば、特許文献2参照)。
第3の膜構造は、EUV光に対してkが低い元素(珪素(Si)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、金(Au)、レニウム(Rh)、炭素(C)等)、又は、化合物(窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(SiN)、炭化珪素(SiC)等)を用いて、膜厚30〜300nmの単層又は多層の平膜と、矩形状、ハニカム状等の開口部を有し、線径が数十μm、線と線との周期が数百μm〜数mmの、いわゆるグリッド、メッシュと呼ばれる膜(以下、支持膜とも記載)とを接合した複合膜である(例えば、特許文献3〜5、非特許文献2参照)。
第4の膜構造は、EUV光に対してkが低い、元素(Si、Ru、C等)から作製したエアロゲル膜をEUV用ペリクル膜としたものである。エアロゲル膜とは、空気を90.0〜99.8%も含む、見かけ密度が数10−3〜数10−1g/cmのミクロ孔、メソ孔、マクロ孔を多数有するスポンジ状の多孔膜である。入射されるEUV光の波長よりエアロゲル膜中の細孔径を十分小さくし、レイリー散乱による透過率の低下を最小化したエアロゲル膜を用いることで、膜厚が約1.0〜10.0μmという支持膜なしでも十分な膜強度を有し、且つEUV光に対して高透過率を有する膜が得られるとされている(例えば、特許文献6、7参照)。
この膜構造は、(1)EUV領域の物質の吸収が、物質の元素の種類と物質の密度に大きく依存していること、(2)レイリー散乱を許す程度の発泡体構造(多孔膜)とすることで、膜厚を確保し、膜強度を高められること、に着目したものである。特に、特許文献6では、フッ化水素HFを主成分とする溶液を用いて電気化学的にSiを溶解させて作製したシリコンエアロゲル(Siエアロゲル)により、EUV光の透過率が高いEUV用ペリクル膜が得られ、また貴金属又はRu等の遷移金属イオンを含むヒドロゲルにγ線で照射し、金属ナノ粒子を析出して作製した金属発泡エアロゲルにより、高い耐酸化性を有するEUV用ペリクル膜が得られるとされている。
また、特許文献7では、この膜構造をCNTにより実現しようとする試みが示されている。この構造は、CNT自体を何らかの方法を用いて、厚みが1.0〜5.0nmの膜を作成し、EUV用ペリクル膜として用いる。CNT膜の見かけ密度を1.5×10−3〜0.5g/cmとすることでエアロゲルに似た膜構造体を得ることができるとしている。
米国特許第7763394号明細書 特開2009−271262号公報 特開2005−43895号公報 米国特許第7153615号明細書 特開2010−256434号公報 特開2010−509774号公報 米国特許第7767985号明細書
B.L.Henke、E.M.Gullikson and J.C.Davis、X−ray interactions:photoabsorption、scattering、transmission and reflection at E=50−30000eV、Z=1−92、Atomic Data and Nuclear Data Tables Vol.54(No.2)、181−342(July 1993) Y.A.Shroff等."EUV pellicle Development for Mask Defect Control"、Emerging Lithographic Technologies X、Proc. of SPIE Vol. 6151、615104(2006)
しかしながら、上記の第1の膜構造は、kが低い元素としてCを使っているが、EUV用マスク表面に防塵保護膜が直接接触する構造であり、マスク面とペリクル膜の一部分との焦点が重なるため、ペリクルとしての性能を発揮できない可能性がある。また、CNTの構造制御が極めて難しく、製造コストが高くなるおそれがある。したがって、第1の膜構造は現実的ではない。
第2の膜構造は、kの低いSiを用いたとしても、ペリクル膜をEUV光が2回通過した際の透過率を50%以上確保しようとすると、膜の厚みを200nm以下とする必要がある。そのため、高い透過率を得るためには極めて膜厚が薄い平膜が必要となり、膜自体の強度を確保することが難しい。更に、ペリクル膜としてSiを使用した場合、衝撃等によりペリクル膜が破損すると、その破片がEUV用マスク表面上に付着することがある。この場合、ペリクル膜として機能しないだけでなく、除去することが困難なコンタミネーション粒子となってしまう問題が生じ得る。
第3の膜構造は、膜強度を確保することについては有効な構成であり、膜厚を薄くすることを可能としている。しかしながら、支持膜自体がEUV用マスクへの入射光及びEUV用マスクからの反射光に対し、障害物や制限視野として働き、平膜単独の透過率に比べ、透過率を30〜60%程度下げることとなる。また、ペリクル膜の素材として、炭素C以外のものを用いた場合には、破損時におけるコンタミネーション粒子の問題が生じ得る。
第4の膜構造は、EUV光に対し高い透過性を確保するだけでなく、第2の膜構造及び第3の膜構造に比べ、膜厚に関する制約を大幅に改善するという点で優位性がある。しかしながら、特許文献6に示されたEUVペリクル膜には、次の様な問題がある。すなわち、第3の膜構造と同様に、C以外の元素からなるエアロゲル膜をEUV用ペリクル膜とした場合、衝撃等の何らかの原因でEUV用ペリクル膜が破損すると、除去することが困難なコンタミネーション粒子となってしまう問題が生じ得る。
また、特許文献7に示されたCNT膜をエアロゲル膜として用いた場合にも以下の様な問題がある。直径1〜2nm、繊維長が数10μmのCNTを用いて、極めて薄い膜厚1.0〜5.0nmのエアロゲル膜を形成したとしても、十分な機械的な膜強度は得られない。一方で、十分な機械的な膜強度を得ようと、見かけ密度を通常炭素の密度1.5g/cm程度まで高めた場合、本来のエアロゲル膜で得られるような高い透過率を得ることはできない。
更に、一般的に、CNTはその製造過程で、消光係数の高い鉄Fe、コバルトCo、ニッケルNi等の金属触媒を多量に用いるため、必然的に多量の不純物を含み、そのまま用いると消光係数の大きい炭素膜となってしまい、高い透過率を得ることはできない。また、消光係数の低い炭素膜のみとするために上記不純物を除去する場合、その生産性が低下し、製造コストが極めて高くなるという問題もある。
本発明は、EUV光に対する高い透過性を有し、実用上十分な物理強度と耐久性を有すると共に、膜破片を容易に除去でき、且つ生産性に優れたペリクル膜及びペリクルを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、ペリクル膜の素材を汎用的な炭素とすることで、万が一、膜の一部が破損し、EUV用マスク表面に付着した場合でも、容易に除去することが可能であると共に、ペリクルに用い得る細孔径・細孔径分布、及び見かけ密度を有する多孔膜を生産性良く安価に提供することが可能であり、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の一側面に係るペリクル膜は、炭素多孔体膜で構成されており、膜厚Dが100nm〜63μmである。
一実施形態においては、13.5nmの波長の極端紫外光が1回通過する際の透過率Tが84%以上であり、且つ、極端紫外光が1回通過する際の炭素多孔体膜の細孔による散乱量Δが10%以下であってもよい。
一実施形態においては、炭素多孔体膜において、質量を体積で割って得られる見かけ密度が1.0×10−3〜2.1g/cmであってもよい。
一実施形態においては、極端紫外光の波長λを13.5nm、黒鉛の密度Wを2.25g/cm、炭素多孔体膜の見かけ密度(g/cm)をρ、膜厚をD(nm)としたとき、炭素多孔体膜が、以下の各式(1)〜(5)を満たす構造パラメータを有していてもよい。
α≦30(α:細孔サイズパラメータ) …(1)
0.335≦Nd≦13(N:膜厚方向への細孔数(個)、d:細孔の壁厚(nm)) …(2)
αλ/d≦81(λ:露光波長(nm)) …(3)
ただし、上記のN、dは、
N=−1+{(W−ρ)1/3/W1/3}+{D(W−ρ)1/3/αλW1/3} …(4)
d=−αλ+{αλW1/3/(W−ρ)1/3} …(5)
一実施形態においては、極端紫外光の波長λを13.5nm、黒鉛の密度Wを2.25g/cm、炭素多孔体膜の見かけ密度(g/cm)をρ、膜厚(nm)をDとしたとき、炭素多孔体膜が、以下の各式(6)〜(9)を満たす構造パラメータを有していてもよい。
α≦30(α:細孔サイズパラメータ) …(6)
αλ/d≦81(λ:露光波長(nm)) …(7)
0.08g/cm≦ρ≦0.7g/cm …(8)
D:100≦D≦850 …(9)
本発明の他側面に係るペリクルは、上記のペリクル膜と、ペリクル膜が貼付されるフレームと、を備える。
一実施形態においては、フレームには、ペリクル膜が貼付される面とは反対の面に、リソグラフィマスクと接合するためのマスク粘着剤が配設される溝が設けられていてもよい。
一実施形態においては、フレームには、ペリクル膜が支持される面とは反対の面に、リソグラフィマスクと接合するための電磁石が設けられていてもよい。
本発明によれば、EUV光に対する高い透過性を有し、実用上十分な物理強度と耐久性を有すると共に、膜破片を容易に除去でき、且つ生産性に優れたものとすることができる。
(a)は、消光係数と透過率及び反射率との関係を示すグラフであり、(b)は、屈折率と透過率及び反射率との関係を示すグラフである。 波長と屈折率及び消光係数との関係を示すグラフである。 見かけ密度と屈折率及び消光係数との関係を示すグラフである。 炭素多孔体膜の構造モデルを示す模式図である。 炭素多孔体膜の製造工程を示す図である。 一実施形態に係るペリクルを示す斜視図である。 図6におけるVII−VII線での断面構成を示す図である。 フレームの断面構成を示す図である。 フレームの断面構成を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態について、以下、「1.本実施形態で使用する用語の定義又は説明」を説明した後、「2.本実施形態のペリクル膜」、「3.本実施形態のペリクル」の順に具体的に説明する。
1.本実施形態で使用する用語の定義又は説明
[本実施形態の基準値]
本実施形態の基準値とは、本実施形態の課題を達成する上で好ましいペリクル膜の、透過率、散乱量及び膜厚の3つの物性値の値を示す。
ペリクル膜の透過率T(以下、Tとも記載、単位は%)の値は、EUVリソグラフィで用いられる1枚の反射鏡の反射率70%以上であることが好ましく、Tの基準値とした。露光時、一般的には、EUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)光は入射角θ=6°でEUV用マスク面に入射・反射され、EUV用マスク面を覆ったペリクル膜を往復で2回通過することから、ペリクル膜を1回通過する場合の好ましいTは84%以上となる(2回通過すると、84%×84%=70%となるため)。同様に2回通過時、80%以上、90%以上のTを得るには、1回通過時での必要なTは、それぞれ89%以上、95%以上となる。このTに関する基準値を以下、「透過率基準値」と称し、84%、89%、95%の基準値をそれぞれ第1透過率基準(T1)、第2透過率基準(T2)、第3透過率基準(T3)と称する。
ペリクル膜が多孔膜であるために生じる散乱量(以下、Δとも記載、単位は%)は、その値が大きいと、Tが小さくなるだけでなく、露光時にEUV用マスク表面で回路像のボケを発生する。そのため、散乱量は、できるだけ値が小さいことが望まれるが、明確な基準値は存在しない。本実施形態では、ペリクル膜を1回通過する場合の、好ましい範囲と考えられる散乱量の上限を「散乱量基準値」として、10%、5%、1%の基準値をそれぞれ、第1散乱量基準(Δ1)、第2散乱量基準(Δ2)、第3散乱量基準(Δ3)と称する。なお、散乱量に関しては、EUV用マスク面を覆ったペリクル膜を往復で2回通過する場合の散乱量は、概ね1回通過時の散乱量の2倍となると考えられる。
ペリクル膜の膜厚(以下、Dとも記載、単位はnm)は、膜強度(膜の曲げ剛性)、膜の取り扱いやすさに大きな影響を与える。従来のSi単体の平膜を用いたペリクル膜では、ペリクル膜を往復で2回通過する時に70%以上のTを得るため、Dを50〜100nmにせざるを得なかった。本実施形態のように炭素多孔膜を用いることで、透過率を維持したままDを厚くすることができる。そこで、D=100nm以上を本実施形態の必要最低限の膜厚とする。膜厚Dは、好ましくは300nm以上、より好ましくは500nm以上である。このDに関する基準値を以下、「膜厚基準値」と称し、100nm、300nm、500nmの基準をそれぞれ第1膜厚基準(D1)、第2膜厚基準(D2)、第3膜厚基準(D3)と称する。
[本実施形態のペリクル膜の構造モデル]
本実施形態のペリクル膜は、炭素多孔膜で構成されており、ペリクル膜の膜厚Dが100nm〜63μmである。また、本実施形態のペリクル膜は、後述する特定の構造を有していることが好ましい。以下、ペリクル膜の構造を規定するために用いた、前提、炭素多孔膜の構造モデル、及び、各構造パラメータについて説明する。
(前提1)
現実の炭素多孔膜は、細孔が単分散(細孔の細孔径、壁厚又は柱太さ、形状等が同一で且つその様な細孔の集合状態が均一に出来ているとする構造モデル)しているわけではなく、色々な細孔が混在した多分散した構造をとる。しかし、本実施形態では議論を簡単にするため、現実に得られる炭素多孔膜を後述する様な単分散の立方体殻状又は立方体枠状の細孔からなる炭素多孔膜と近似し(以後、それぞれを順に立方体壁組細孔モデル、立方体軸組細孔モデルと称する)、その構造を構造パラメータで規定することができるものとする。
(前提2)
室温における、黒鉛(g−C)の密度W、非晶質炭素(a−C)の密度の値は、それぞれ、Wが2.25〜2.26g/cm(本実施形態ではW=2.25g/cmとする)、a−Cの密度が1.8〜2.1g/cmである。したがって、実際の炭素の密度はその結晶化度に応じて1.8〜2.26g/cmの範囲内の値を取る。
このように、現実の炭素多孔膜の細孔の壁又は柱を構成する炭素は、全て黒鉛の結晶で形成されているという訳ではないが、本実施形態では黒鉛の微結晶が無配向に凝集した多結晶体で形成されているものとする。炭素の結晶化度が低く、その密度が2.25g/cmより小さければ、後述の[追記]で説明するように壁厚又は柱太さd或いは実質的な壁厚dN又は柱太さdN1/2を、その密度における炭素の光学定数(特にk)に応じて大きくすることができる。
(前提1)及び(前提2)に基づき、本実施形態の炭素多孔膜の細孔構造モデルとして、図4に示すような壁厚又は柱太さdで、一辺の長さL0の立方体殻状又は立方体枠状の細孔(細孔径L)が、厚み方向にN個積み重なった構造を考え、これをそれぞれ順に立方体壁組細孔モデル、立方体軸組細孔モデルと称する。なお、立方体を敷き詰めた各層は、厚み方向に各立方体の四隅の頂点が、隣接する立方体の面の中心に位置するように厚み方向にズレながら積み重なっているものとする。細孔構造モデルを仮定したことで、L、L0、dの間、膜厚D、細孔の積層数N、細孔サイズパラメータα、dの間には、それぞれ
L0=L+d …(10)
D=Nαλ+(N+1)d …(11)
の関係が成立する。
更に、本実施形態の多孔膜の構造を、後述する第1及び第2構造パラメータを用いて規定することができ、各構造パラメータの間には、立方体壁組細孔モデルに関連して式(12)〜式(14)の関係が、立方体軸組細孔モデルに関連して式(15)〜式(17)の関係が成立する。
N=−1+{(W−ρ)1/3/W1/3}+{D(W−ρ)1/3/αλW1/3} …(12)
d=αλ{−1+W1/3/(W−ρ)1/3} …(13)
ρ=W[(L0−L)/L0]=W[{(1+αλ/d)−(αλ/d)}/(1+αλ/d)] …(14)
N=8.32×10−1{D/(αλ)}−10.64{ρ}+3.54×10−2{D1/2}+7.65×10−1 …(15)
d=7.90×10−1{ραλ}+8.43×10−1{(αλ)1/2}−7.93×10−1{ρ−1/3}−7.60×10−1 …(16)
ρ=W[{8(d/2)・(L+d/2)+4(d/2)・L}/L0]=W(1+3αλ/d)/(1+αλ/d) …(17)
立方体壁組細孔モデルに関して、式(11)及び式(14)は、第1構造パラメータ群を用いて第2構造パラメータ群を、式(12)及び式(13)は、第2構造パラメータ群を用いて第1構造パラメータ群を表したものである。
立方体軸組細孔モデルに関して、式(11)及び式(17)は、第1構造パラメータ群を用いて第2構造パラメータ群を、式(15)及び式(16)は、第2構造パラメータ群を用いて第1構造パラメータ群を表したものである。
[構造パラメータ群]
本実施形態における炭素多孔体膜の好ましい構造は、次の3つの物性値、T、Δ、Dの各基準値に応じて決まる。そして、その炭素多孔膜の構造は、細孔径(L)又は細孔サイズパラメータ(α)、細孔を形成する壁厚又は柱太さ(d)、膜厚方向への細孔の積層数(N)を第1構造パラメータ群として、更にL(又はα)、D、更にρ(ap)又はρと記載する炭素多孔膜の見かけ密度を第2構造パラメータ群として、これらの構造パラメータで規定することができるものとする。第1構造パラメータ群は、ミクロ的な構造パラメータであり、炭素多孔膜の構造を規定するには都合がよいが、直接・間接的に計測・観測するのは困難であり、製造プロセス上でこれらの値を用いて膜の構造を制御・規定するのは難しい。第2構造パラメータ群は、マクロ的な構造パラメータであり、直接・間接的に計測・観測するのは比較的容易であり、製造プロセス上でこれらの値を用いて構造を制御し易いが、これらの値から細孔構造モデルを仮定せずにミクロ的な構造を一意的に決定することはできない。
両者の構造パラメータ群の間には、炭素多孔膜の構造モデルを仮定すれば、立方体壁組細孔モデルでは式(12)〜式(14)が、立方体軸組細孔モデルでは式(15)〜式(17)のような具体的関係が成立するが、厳密な対応を常にとることは不可能である。
本実施形態では、適宜両構造パラメータ群を用いて内容を説明し、両者で矛盾が生じた場合は、基準値を満足する範囲内で、現実に炭素多孔膜の構造を規定しやすい第2構造パラメータ群を優先して用いる。
[細孔径L、細孔半径r]
細孔径(L)とは、ガス吸着式細孔分布測定法の吸着等温線から求められる細孔分布曲線の山のピーク細孔半径r(peak)と、最大ピーク半径r(max)(細孔分布の山と細孔分布のベースの交点において、大きい側の細孔半径値を指す)の値を2倍した値(2倍値と称する)をそれぞれL(peak)、L(max)とし、単位は[nm]とする。なお、r(max)、L(max)は、Δの各基準の上限を議論する場合に用い、それ以外の場合、特に断らなければ、L(peak)をL、r(peak)をrとして用いる。実験的・経験的には、林順一、堀河俊英、炭素、No.236、15−21(2009)[以下、参考文献Aとする]の図6、図8に記載のように、r(max)は、細孔分布図の横軸をrの対数目盛で、縦軸を積分細孔容積のdV/d[Log(r)]とした細孔分布曲線において、概ねr(peak)の1.5〜3倍程度になることが多い。また、細孔分布の山が低く、r(max)が分かり難い場合は、r(peak)をr(max)の代替値とする。
ガス吸着式細孔分布測定にあたっては、通常炭化物試料を予め200〜250℃で2〜15時間真空加熱した後、液体窒素温度における窒素の吸脱着等温測定を行い、その吸脱着等温線からDH解析法又はBJH解析法にて細孔分布曲線を求める。本実施形態では、細孔径を求めるためにこの方法を用いる。
[細孔サイズパラメータα]
細孔サイズパラメータ(α)とは、細孔径をL、露光に用いるEUV光の波長をλとした時、
α=L/λ …(18)
で定義される値であり、細孔径をλに対する倍数で表わしたものである。なお、本件のαは、通常のMie散乱理論で用いられるサイズパラメータΛ(≡2πγ/λ=πα、ここでγは球状散乱体の半径、πは円周率である)の、約1/3となっている。
なお、立方体壁組細孔モデルでは、個々の細孔が壁で区切られているため、細孔径は実質的に定義できる。立方体軸組細孔モデルでは、個々の細孔は連結しており、図4(b)で示されるように、あくまでも形式的(仮想的)に区分けされた値である。
[細孔の壁厚又は柱太さd]
本実施形態における細孔の壁厚又は柱太さ(d)とは、立方体壁組細孔モデルでは炭素多孔膜を構成する個々の細孔を区切っている(細孔の障壁となっている)炭素壁の平均的な厚みのことであり、立方体壁組の壁の厚みのことである。立方体軸組細孔モデルでは、炭素多孔膜を構成する細孔と細孔とを形式的に区分する炭素棒(柱)の平均的な太さのことであり、立方体の枠の太さのことである。単位は[nm]とする。
dは、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、多孔膜の断面写真を撮影し、それを画像処理して求めることができる。しかし、高倍率での観察自体が極めて困難であること、更に断面写真から得られる情報自体が局所的で、多孔膜の平均的な壁厚となっているか否か疑わしいことから、本実施形態では、立方体壁組細孔モデルでは式(13)により、立方体軸組細孔モデルでは式(16)により、α、ρ(ap)から算出された値をdとする。
dの値は、炭素原子の大きさが約0.33nm、黒鉛(グラフェンシートの積層体と見なせる)の層間距離が0.335nmであることを考慮すると、1枚のグラフェンシートの厚み約0.335nmがdの下限値となる。しかし、グラフェンシート1層や2層(d=約0.67nm)では、細孔径が大きい場合(例えばα>4)や、ペリクル膜に大きな力がかかる場合等は、壁強度又は柱強度(膜の曲げ剛性)として不十分なため、現実的にはグラフェンシート4層(d=約1.35nm)以上が好ましい。もちろん、細孔径が小さい場合(例えばα<1)や、膜に大きな力がかからない場合は、dを0.335nmに近づけることができる。
[細孔の積層数N]
細孔の積層数(N)とは、細孔径Lの細孔の、膜厚方向への積層数のことである。本実施形態では、立方体壁組細孔モデルでは式(12)により、立方体軸組細孔モデルでは式(15)により、α、ρ(ap)、Dから算出された値をNとする。Nは、言葉の定義上、N≧1の整数となるべきだが、正の実数値も許すものとする。少数点以下の数値の端数部分は、単分散した立方体殻状又は立方体枠状の細孔が綺麗に積み重なった細孔構造モデルからのズレを反映しているものと考える。
[見かけ密度ρ(ap)、算術的な見かけ密度ρ]
見かけ密度ρ(ap)とは、多孔膜内部に細孔がないものとしたときの膜体積を用いた密度であり、膜の外形寸法から求められる膜の体積Vと膜の質量Gとの比、G/Vとして算出した値である。一方、算術的な見かけ密度ρとは、細孔構造モデルのもと、本実施形態では、立方体壁組細孔モデルでは式(14)により、立方体軸組細孔モデルでは式(17)により、α、ρ(ap)、Dから算出された値をρとする。(前提1)及び(前提2)を仮定しているため、以下、ρ(ap)=ρとして両者を区別せずに扱う。単位は[g/cm]とする。
[膜厚D]
膜厚(D)とは、通常の意味で用いられる、シート、フィルム、膜の厚みのことである。本実施形態の厚みの測定は、電子顕微鏡(SEM)を用いて、非接触で多孔膜を1mm以上の間隔をあけて10点以上撮影し、その寸法を平均した値として求めることができる。単位は、通常[nm]を用い、必要に応じて[μm]も用いることとする。
[細孔形状]
多孔膜の平均的な細孔形状は、参考文献A、松岡秀樹、結晶学会誌、No.41、213−226(1999)、西川恵子、炭素、No.191、71−76(2000)に記載されたように、小角X線散乱(SAXS)の、Debye−Porod領域での散乱強度解析から求めることができる。すなわち、X線散乱強度Iを散乱ベクトルsの関数として、両対数プロットした際、その直線の傾きが−4、−2、−1になれば、細孔の形状がそれぞれ球状、円盤状、円筒状であることを意味する。
2.本実施形態のペリクル膜とその製造方法
2−1.本実施形態のペリクル
本実施形態のペリクル膜について、以下に[技術ポイント]毎に詳細な説明を行う。
[技術ポイント1]
技術ポイント1は、ペリクル膜が多孔膜であることである。Mieの散乱理論(Mie散乱自体は球形粒子による散乱であるが、定性的には形状は問わないものとする)では、球状粒子(球状細孔)による光散乱は、粒子(細孔)の直径(細孔径)を2γ、入射光の波長をλとし、粒径サイズパラメータΛ(=2πγ/λ)を用いたとき、Λが1より十分に小さい(Λ<<1)場合はレイリー散乱が生じ、Λがほぼ1に近い(Λ≒1)の場合はMie散乱が生じ、Λが1より十分に大きい(Λ>>1)場合は幾何学的散乱が生じるとされている。したがって、細孔径がΛ≧1の多孔体(多孔膜)であると、露光の際に光が入射したとき、光が細孔壁又は柱と細孔部の界面で散乱され、十分な透過率が得られないだけでなく、マスクの回路像を正しくウエハ上に結像することができないと考えられていた(上記特許文献6、特許文献7参照)。
しかし、細孔径がΛ≧1以上の多孔体(多孔膜)であっても、細孔壁又は柱の屈折率が細孔部、すなわち真空の屈折率1.0と等しい場合又は細孔壁又は柱の屈折率と細孔部(細孔内の空間)の屈折率との差Δnが0に近い場合、例えばΔn=0.04以下の場合、光は細孔壁と細孔部との界面を認識できず、ほとんど反射・散乱されることなく直進することができることが分かった。
図1に、光学定数(屈折率n、消光係数k)の値と膜厚Dの値とを仮定した平膜(非多孔膜)の、光学定数と入射角θ=6°における透過率T及び反射率Rとの関係を示したグラフを示す。図1に示すグラフは、「Grating Solver Development Company」から市販されている「G−Solver格子分析ソフトウエアツール(G−Solver)」を用いて計算したものである。図1(a)は、D=100nm、n=1.0の平膜の、T及びRのkに対する依存性を、図1(b)は、D=100nm、k=0.0005の平膜の、T及びRのnに対する依存性を示したグラフである。図1(a)において、点線で囲む領域は、T≧84%を確保できるkの領域を示している。図1(a)より、kの僅かな変化でTが大きく変化し、非多孔膜で膜厚が100nm程度である場合、少なくともkは10−3のオーダー以下でなければT≧T1=84%が得られないことが分かる。
また、図1(b)において、点線で囲む領域は、反射率R≦0.2%に抑えられるnの領域を示している。図1(b)より、上述したようにn=0.94〜1.4、すなわちΔn≦0.04では界面からの反射が抑えられ、Tが最大となることが分かる。
ペリクル膜として多孔膜を用いることの第1の利点は、従来のSi単結晶平膜における50〜100nm膜の厚み制限が大幅に緩和され、後述するようにTがT1以上且つΔがΔ1以下であり、且つDが100nm以上(D1以上)、更には300nm以上(D2以上)、500nm以上(D3以上)とすることができることである。
ペリクル膜として多孔膜を用いることの第2の利点は、ダンボール板と呼ばれる波板状の多孔性包装紙材が、同重量同面積の平膜状紙板に比べて曲げ剛性が大きいように、多孔膜の方が、同重量同面積の平膜(非多孔膜)に比べて、曲げ剛性が大きくなることである。
ダンボール板がストロー状の1次元的に伸びた孔を内部に有する多孔性の構造体であるのに対し、本実施形態の多孔膜は3次元的な多孔性の構造であるため、より応力集中が起こりにくく、膜の曲げ剛性が更に高いと言える。この結果、本実施形態の多孔膜をペリクル膜と使用した場合、同面積同重量の他素材の平膜に比べ、自重で膜がたわむ程度が小さい。
[技術ポイント2]
技術ポイント2は、多孔膜が炭素からなることである。多孔膜として炭素を用いることの第1の利点は、多孔膜化した炭素の、光学定数としての優位性である。一般に、膜を構成する元素の種類と、膜の結晶・非晶の構造の割合による密度が決まると、EUV領域における光学定数n、kを上記非特許文献1から求めることができる。実際には、具体的な数値の算出には、CXRO(The Center for X−ray Optics)のウェブページ<http://henke.lbl.gov/optical_constants/getdb2.html>を用いた。
密度として、非多孔体の密度(通常、単純に密度、真密度と呼ばれる)の値より小さい、多孔膜の見かけ密度ρを用いて求めたn、kは、結晶・非晶の構造とその割合が変わらないと仮定すれば、その値はそのρを有する多孔膜の光学定数と見なすことができる。ここで、見かけ密度ρとそのρにおける光学定数とを有する平膜(非多孔膜)を多孔膜代替平膜と称することとすれば、便宜的に細孔による散乱を無視した、種々のρを有する多孔膜代替平膜のn及びkを、非特許文献1から求めることができる。
図2は、炭素C(密度2.2g/cm)、珪素Si(密度2.33g/cm)、炭化珪素SiC(密度3.2g/cm)及び見かけ密度ρ=0.6g/cmのCの、n及びkの波長λに対する依存性を示したグラフである。図2に示されるように、Si、SiCの光学定数がλ=12nm付近でSiのL吸収端による不連続変化が生じるのに対し、Cの光学定数は連続で、nは単調増加し、kは単調減少し、特にkはλ≦12nmではC(ρ=0.6g/cm)の方がSi、SiCよりも小さな値となる。
図3は、Si、SiC及び種々の見かけ密度ρでのCにおける、λ=13.6nm及びλ=6.7nmでの光学定数n、kを示したグラフであるが、EUV領域の光学定数は、使用する光の波長と物資の密度に関係し、例えば、λ=6.7〜13.6nmの波長範囲に対応して、Si(2.33g/cm)の場合、kが9.5×10−3(λ=6.7nm)〜1.8×10−3(λ=13.6nm)、nが0.99(λ=6.7nm)〜1.0(λ=13.6nm)であるのに対し、炭素の場合、黒鉛(2.25g/cm)では、kが7.6×10−4(λ=6.7nm)〜7.2×10−3(λ=13.6nm)、nが0.99(λ=6.7nm〜0.96(λ=13.6nm)となる。
このことは、λ=13.6nm領域ではSiがペリクル膜を作製する上で黒鉛よりも適しているが、λ=6.7nm領域ではむしろ黒鉛の方が優れていることを示している。
更に、炭素を本実施形態のように多孔膜化した場合、ρ=0.6g/cmのCでは、kが2.0×10−4(λ=6.7nm)〜1.9×10−3(λ=13.6nm)、nが1.0〜0.99となる。ρ=0.4g/cmのCでは、kが1.4×10−4(λ=6.7nm)〜1.3×10−3(λ=13.6nm)、nが1.0(λ=6.7nm)〜0.99(λ=13.6nm)となる。ρ=0.2g/cmのCでは、kが6.8×10−5(λ=6.7nm)〜6.4×10−4(λ=13.6nm)、nが1.0(λ=6.7nm)〜1.0(λ=13.6nm)となる。ρ=0.08g/cmのCでは、kが2.7×10−5(λ=6.7nm)〜2.6×10−4(λ=13.6nm)、nが1.0(λ=6.7nm)〜1.0(λ=13.6nm)となる。
このように、炭素は、多孔膜化し、見かけ密度を下げることで、λ=6.7nm領域だけでなくλ=13.6nm領域でもSiと同等以上の低いkと1.0に近いnとを有することとなる。
多孔膜として炭素を用いることの第2の利点は、万が一ペリクル膜が破損し、マスク上に付着した際にも容易に除去可能であることである。例えば、高木紀明等、立命館大学研究報告書、立S22−03、「EUVリソグラフィ用マスク上のカーボン堆積実験:洗浄技術の評価」、老泉博昭、九州工業大学大学院工学研究科博士学位論文「極端紫外線(EUV)を用いたリソグラフィ基礎技術」(平成19年3月)で紹介されているように、有機分子を直接分解することができるVUV光(λ=172nm)、EUV光(λ=13.5nm)自体を用いて、活性酸素により酸化させて、一酸化炭素CO或いは二酸化炭素COとする反応(酸化法)や、原子状水素により還元させてメタン系炭化水素(CH)とする反応(還元法)により、EUV用マスク上に付着した炭素を除去することができる。
多孔膜として炭素を用いることの第3の利点は、既存の炭素多孔膜の製造方法を応用することで、目標とする細孔径、膜厚を有する多孔膜を作り易いことである。すなわち、「2.2 本実施形態のペリクル膜の製造方法」で述べるように、ゾル−ゲル転移を生じる有機化合物の溶液を用いて薄膜を成膜し、ゾル−ゲル法で溶媒を多量に含んだヒドロゲル状態を形成させ、その後、構造が潰れないように溶媒を乾燥除去させることで、多量に気泡を含む多孔体としてのエアロゲル膜を得られる。そして、エアロゲル膜を最終的に炭化して炭素エアロゲルとしての炭素多孔膜を得る方法や、分子構造中に化学反応過程や炭化過程で構造を固定化すると共に気泡が発生する高分子原料(有機化合物である)を用いた高分子溶液を作り、薄膜成膜後、化学反応や炭化反応させ、その過程で発生する気泡又は隙間を細孔とした炭素多孔膜を得る方法、或いはこれらの方法を組み合わせた方法が挙げられる。
薄膜化技術として、蒸着法とは異なり、高分子溶液を使ったスピンコート、ダイコート、グラビアコートといった非真空環境下でのウエット塗工法を用いて膜厚を容易に薄く制御したり、或いは、シリコンウエハの作製法のようにロッド状のものを薄く切削・研磨加工して薄膜化したりすることで、生産性の高い製造が可能となる。
多孔膜として炭素を用いることの第4の利点は、熱的な特性と曲げ剛性が優れていることである。非晶質炭素(a−C)、黒鉛(g−C)及びSiの融点、熱膨張係数は、それぞれ次のようになっている。すなわち、常圧下の融点は、炭素自体が全元素中最も高く、a−C、g−Cには融点は存在せず、Siは1414℃であり、炭素の耐熱性が優れている。熱膨張係数は、a−Cが3.0×10−6/K、g−Cが3.2×10−6/K、Siが3.9×10−6/Kであり、炭素の熱寸法安定性が優れている。
一方、膜の硬さ(物理強度)に相当する曲げ剛性は、炭素とSiのポアソン比が共に0.2程度であるため、ヤング率と膜厚Dの3乗との積に比例する。a−Cのヤング率が30〜33GPa、g−Cのヤング率が14GPaであるのに対し、Siのヤング率が130〜190GPaである。炭素よりSiの方が優れているが、実際は本実施形態では炭素多孔膜であり、膜厚DがSi平膜の2.5倍〜5倍以上に厚くすることができることから、ペリクル膜としては、本実施形態の炭素多孔膜の方が大きくなると考えられる。
[技術ポイント3]
技術ポイント3は、課題を満たす炭素多孔膜を制約された構造パラメータを用いて規定できることである。
炭素多孔膜の構造パラメータが、現実的な炭素膜の膜強度や製造上の経験値を反映した制約条件と、T、Δ、Dに関する基準値を満たす特定の範囲内にあれば、EUVリソグラフィに好適に用いられるペリクル膜を得られる。以下、順にステップを追って説明する。
[構造パラメータ群と基準値(Ti、Δi、Di、i=1〜3)との関係]
(1)ステップ1
N=1層〜5層の立方体壁組細孔モデル及び立方体軸組細孔モデルにおいて、d、αを様々に変化させたモデルを作成した。非特許文献1から求めた炭素(2.25g/cm)の、λ=13.5nmにおける光学定数n、k(それぞれ、9.61×10−1、7.70×10−3)及びλ=6.75nmにおける光学定数n、k(それぞれ、9.91×10−1、7.70×10−4)と、RSoft社製のRCWA法による回折光学素子設計・解析ソフトウェアDiffractMODを使用して、各モデルの入射角θ=6°におけるT、Δ、Dを計算した。なお、Tは、0次の透過率のことであり、またΔは、全透過率から0次の透過率を差し引いた値のことである。
なお、T、Δ、Dの計算には、上述のDiffractMODを用いる方法以外に、前述のG−Solverを用いる方法もある。前者は、計算が複雑で高度なため長い計算時間を要する反面、立方体壁組細孔モデル及び立方体軸組細孔モデルのどちらにも対応ができる。一方、後者は、計算が比較的に単純で計算時間も早い反面、立方体壁組細孔モデルのみに対応すること、また計算結果が1回通過時の透過率Tが70〜100%の範囲でTの値が最大10%程度大きめになること、散乱量Δが0〜10%の範囲でΔの値が最大5%程度小さめになる。本実施形態では、特に断らなければ、どちらの細孔構造モデルにも適用できる前者を優先して計算法として用いることとする。
得られた結果に対して、株式会社エスミから市販されているEXCEL多変量解析のソフトウエアツール(重回帰ソフト)を使用して重回帰分析を行ない、各細孔構造モデルにおける、第1構造パラメータ群及び第2構造パラメータ群の、炭素多孔膜のT及びΔへの影響を求めた。
<ステップ1−1>
立方体壁組細孔モデルにおける、第1構造パラメータ群N、d、αによるT、Δへの影響
立方体壁組細孔モデルにおける、第1構造パラメータ群N、d、αによる重回帰分析の結果、λ=13.5nmでのTに関する重回帰式は、
T=[−7.65×10−3{α}−1.53×10−2{dN}+9.95×10−1]×100 …(19)
自由度修正済決定係数R*2=0.97
となり、標準偏回帰係数の絶対値の大小関係を利用して求めた各因子の依存率(各因子の標準偏回帰係数の絶対値を、全因子の標準偏回帰係数の絶対値の和で割った百分率の値とする)は、αが28%、dNが72%となった。なお、Tに関する重回帰式は、ペリクル膜を2回通過する際の透過率が1回通過する場合の値をほぼ二乗する必要がある等を説明する上では理論的には好ましく、
In(T)=[−1.13×10−2{α}−2.04×10−2{dN}+2.93×10−2] …(20)
*2=0.95
とも近似できたが、R*2の大きい式(19)を以後の計算では用いた。
また、λ=13.5nmでのΔに関する重回帰式は、
Δ=[5.05×10−4{dNα}+3.66×10−3]×100 …(21)
*2=0.92
となった。
一方、λ=6.75nmでのTに関する重回帰式は、
T=[−1.98×10−3{α}−4.68×10−3{dN}+1.01]×100 …(22)
*2=0.91
となり、各因子の依存率は、αが34%、dNが66%となった。なお、Tに関する重回帰式は、
In(T)=[−2.16×10−3{α}−5.05×10−3{dN}+1.24×10−2] …(23)
*2=0.90
とも近似できたが、R*2の大きい式(22)を以後の計算では用いた。
また、λ=6.75nmでのΔに関する重回帰式は、
Δ=[1.49×10−4{dNα}−1.47×10−4]×100 …(24)
*2=0.94
となった。
これらの結果より、立方体壁組細孔モデルにおいて、Tには、細孔の壁厚と細孔の積層数との積、すなわち、Ndという膜を構成する材料の、膜厚方向への実質的な厚み(平膜の膜厚に相当する)が大きな影響を与え、細孔の大きさに対応するαは、前者の因子ほど影響は与えないことが分かる。一方、Δには、αNdと積の形であることから、αとNdとが同程度に影響を与えることが分かる。αは、物理的には細孔径L(=λα)に対応しており、Δが細孔径の影響を受けやすいことを意味している。
<ステップ1−2>
立方体軸組細孔モデルにおける、第1構造パラメータ群N、d、αによるT、Δへの影響
立方体軸組細孔モデルにおける、第1構造パラメータ群N、d、αによる重回帰分析の結果、λ=13.5nmでのTに関する重回帰式は、
T=[6.02×10−3{α}−8.69×10−3{dN1/2}+1.00]×100 …(25)
*2=0.86
となり、各因子の依存率は、αが33%、dN1/2が67%となった。なお、Tに関する重回帰式は、
In(T)=[6.86×10−3{α}−5.01×10−3{dN}−1.34×10−2] …(26)
*2=0.79
とも近似できたが、R*2の大きい式(25)を以後の計算では用いた。
また、λ=13.5nmでのΔに関する重回帰式は、
Δ=[1.99×10−3{dN1/2}−1.25×10−2]×100 …(27)
*2=0.71
となった。なお、Δに関する重回帰式は、ペリクル膜を2回通過する際の散乱率が1回通過する場合の値をほぼ2倍する必要がある等を説明する上では理論的には好ましく、
Δ=[9.14×10−4{dN}−7.55×10−3]×100 …(28)
*2=0.66
とも近似できたが、R*2の大きい式(27)を以後の計算では用いた。
一方、λ=6.75nmでのTに関する重回帰式は、
T=[1.07×10−3{α}−2.95×10−3{dN1/2}+1.00]×100 …(29)
*2=0.91
となり、各因子の依存率は、αが22%、dN1/2が78%となった。なお、Tに関する重回帰式は、
In(T)=[1.06×10−3{α}−1.51×10−3{dN}+2.84×10−4] …(30)
*2=0.91
とも近似できたが、式(25)との整合性から式(29)を以後の計算では用いた。
また、λ=6.75nmでのΔに関する重回帰式は、
Δ=[9.06×10−4{dN1/2}−5.50×10−3]×100 …(31)
*2=0.63
となった。なお、Δに関する重回帰式は、
Δ=[4.34×10−4{dN}−3.85×10−3]×100 …(32)
*2=0.62
とも近似できたが、R*2の大きい式(31)を以後の計算では用いた。
これらの結果より、立方体軸組細孔モデルにおいて、Tには、立方体壁組細孔モデルのdNに対応して、膜厚方向への実質的な厚みに相当すると考えられるdN1/2という値が大きな影響を与え、細孔の大きさに対応するαは、前者の因子ほど影響は与えないことが分かる。一方、Δには、立方体軸組細孔モデルでは、連結した細孔であり、αが形式的な意味しか持たないため、α=1とみなされ、dN1/2の形で影響を与える、すなわち、細孔径の影響がないことを意味している。
<ステップ1−3>
立方体壁組細孔モデル及び立方体軸組細孔モデルにおける、第2構造パラメータ群ρ、D、αによるT、Δへの影響
続いて、第2構造パラメータ群ρ、D、αによるT、Δへの影響を調べる。立方体壁組細孔モデルにおける、第2構造パラメータ群ρ、D、αによる重回帰分析の結果、λ=13.5nmでのTに関する重回帰式は、
T=[−1.26×10−3{Dρ(λα)1/2}−9.52×10−3{ρD}+9.60×10−1]×100 …(33)
*2=0.98
となり、各因子の依存率は、Dρ(λα)1/2が60%、ρDが40%となった。また、λ=13.5nmでのΔに関する重回帰式は、
Δ=[9.72×10−4{Dρ(λα)1/2}−3.75×10−3(ρD)+3.16×10−3]×100 …(34)
*2=0.93
となり、各因子の依存率は、Dρ(λα)1/2が74%、ρDが26%となった。
一方、λ=6.75nmでのTに関する重回帰式は、
T=[−6.62×10−4{Dρ(λα)1/2}−1.41×10−3(ρD)+9.96×10−1]×100 …(35)
*2=0.99
となり、各因子の依存率は、Dρ(λα)1/2が81%、ρDが19%となった。
また、λ=6.75nmでのΔに関する重回帰式は、
Δ=[4.49×10−4{Dρ(λα)1/2}−1.11×10−3{ρD}−1.84×10−3]×100 …(36)
*2=0.95
となり、各因子の依存率は、Dρ(λα)1/2が78%、ρDが22%となった。
一方、立方体軸組細孔モデルにおける、第2構造パラメータ群ρ、D、αによる重回帰分析の結果、λ=13.5nmでのTに関する重回帰式は、
T=[−1.59×10−4{Dρ(λα)1/2}−1.59×10−3{ρD}+9.66×10−1]×100 …(37)
*2=0.99
となり、各因子の依存率は、Dρ(λα)1/2が35%、ρDが65%となった。
また、λ=13.5nmでのΔに関する重回帰式は、
Δ=[1.59×10−4{Dρ(λα)1/2}−3.57×10−4(ρD)−2.41×10−3]×100 …(38)
*2=0.91
となり、各因子の依存率は、Dρ(λα)1/2が70%、ρDが30%となった。
一方、λ=6.75nmでのTに関する重回帰式は、
T=[−8.20×10−5{Dρ(λα)1/2}−3.27×10−4(ρD)+1.00]×100 …(39)
*2=0.99
となり、各因子の依存率は、Dρ(λα)1/2が54%、ρDが46%となった。
また、λ=6.75nmでのΔに関する重回帰式は、
Δ=[7.60×10−5{Dρ(λα)1/2}−1.66×10−4{ρD}−1.31×10−3]×100 …(40)
*2=0.93
となり、各因子の依存率は、Dρ(λα)1/2が68%、ρDが32%となった。
これらの結果では、T、Δの説明変数{Dρ(λα)1/2}、{ρD}には共通因子として見かけ密度ρと膜厚Dとの積ρDが含まれた形で大きなR*2が得られていることより、T、Δ共にρDが大きな影響を与えることが分かる。ρDは、膜厚方向への単位面積あたりの膜重量に相当することから、膜厚方向の実質的な物質の量に関係しており、ρが大きければDを薄くする必要があるが、ρが小さければ、Dを大きくできることが分かる。
(2)ステップ2
ステップ1に示した重回帰式より、定性的には、各構造パラメータ群のT、Δへの影響を知ることができた。ステップ1では計算の都合上N≦5としたが、各基準値(Ti、Δi、Di;i=1〜3)を満足する第1構造パラメータ群(N、d、α)及び第2構造パラメータ群(ρ、D、α)の値を知るため、各α、dにおけるTi及びΔiの各基準値を満足するNの値、N(Ti)、N(Δi)を推定し、更に式(2)を用いてT及びΔの各基準値を満足するDの値D(Ti)、D(Δi)を求めた。ただし、Δiに関しては、式(27)及び式(31)のR*2が多少小さいため、Tiに比べて誤差が大きくなることが予想された。そこで、Δiに関しては定義による散乱量の値の1/2を各Δiの上限値とした(例えば、定義によれば散乱量10%をΔ1とするべきだが、5%をΔ1の上限とした)。この結果、ペリクル膜を2回通過したときの散乱量がΔ1、Δ2、Δ3に対応して、それぞれ10%、5%、1%となった。なお、N(Ti)、N(Δi)及びD(Ti)、D(Δi)は、それぞれT及びΔの各基準値を満足する、上限の積層数Nmax、上限の膜厚Dmaxを意味する。
ステップ2より、第1構造パラメータα、dのもとで、T及びΔの各基準値を満足する上限の積層数Nmax、第2構造パラメータα、ρのもとで、T及びΔの各基準値を満足する上限の膜厚Dmaxを、すなわちDの範囲を定量的に知ることができる。
この結果、ρに関しては、ρが小さくなるほど、T及びΔの各基準値を満足する上限の膜厚Dmaxは増大する傾向があった(特に、Tに関しては指数関数的に増大する)。一方、αに関しては、ρの値に対してDmaxの値が大きく変動するため、ρに関する傾向ほど明確には言えないが、Tに対してはαが大きくなるほどDmaxは増大し、Δに対してはαが大きくなるほどDmaxは減少する傾向があった。
(3)ステップ3
ステップ2から、各基準値Ti、Δi、Di(i=1〜3)を満足するために必要な構造パラメータα、N、d、ρ、Dの範囲を求めることができる。しかし、本実施形態では、上記に加えて、現実的に得られる炭素多孔膜としての制約条件1〜制約条件4を満足した構造パラメータα、N、d、ρ、Dの範囲を本実施形態の課題を満足する炭素多孔膜とする。
・制約条件1: 0.335nm≦d …(41)
・制約条件2: 1≦N …(42)
・制約条件3: 0.5≦α …(43)
・制約条件4: 1.0×10−3g/cm≦ρ≦2.25g/cm …(44)
制約条件1及び制約条件2は、d及びNに関する定義においても説明したミクロ構造パラメータに関するもので、計算の前提となるものであった。なお、dに関しては、好ましくは1.35nm以上である。またNに関しては、好ましくは2以上であり、数値が大きければ、各細孔構造モデルにおいて異なるミクロ構造パラメータを有する立方体殻状又は立方体枠状の細孔が、各基準値を満足する範囲内で膜厚方向への積層した膜構造を考えることができる。
制約条件3は、ミクロ及びマクロに共通な構造パラメータであり、ここで言うα値は、細孔分布のL(peak)に対応した値を示す。本実施形態の意義から、その下限を0.5とする。現実に得られる炭素多孔膜にはα値より小さな細孔径の細孔が含まれ、それらを排除することは困難である。しかし、小さな細孔径の細孔は、炭素多孔膜の膜厚の向上にほとんど貢献せず、その壁厚の積層により透過率を下げるだけであり好ましくない。したがって、細孔分布はL(peak)に集中したシャープな形状のものが好ましい。αの上限は、ステップ2より求められるが、経験的にL(max)≒1.5×L(peak)〜3×L(peak)であり、炭素多孔膜中の平均的な細孔径に対応したαの上限値[L(peak)/λ]をステップ2から得られるαの上限の1/1.5〜1/3としておけば、現実に得られる炭素多孔膜中の最大の細孔径はステップ2から得られるαの上限以下に抑えることができると考えられ好ましい。
制約条件4は、炭素エアロゲルとして現実に得られている見かけ密度ρの下限値から定めたものである。ρとαλ/dの逆数は、立方体壁組細孔モデルでは式(5)と、立方体軸組細孔モデルでは式(8)と関連している。αλ/dはその項の構成より、個々の細孔自体の強度の指標となるものである。具体的には、その値が小さければ(ρが大きければ)、細孔自体は強固なものとなる。
現実的に得られる炭素多孔膜としての制約条件1〜制約条件4のもと、ステップ2から、各基準値Ti、Δi、Di(i=1〜3)を満足するために必要な構造パラメータD、ρ、α、dの範囲は、以下のように求められた。
膜厚Dの範囲は、立方体軸組細孔モデルでは、λ=13.5nmにおいてはD=100nm〜23881nm(23μm)、λ=6.75nmにおいてはD=100nm〜63850nm(63μm)であった。立方体壁組細孔モデルでは、λ=13.5nmにおいてはD=100nm〜517nm、λ=6.75nmにおいてはD=100nm〜1711nmであり、Dの上限値はそれぞれの細孔構造モデルにおいて最小のρ、最大のαλ/dで実現した。
見かけ密度ρの範囲は、立方体軸組細孔モデルでは、λ=13.5nmにおいてはρ=1.0×10−3〜9.4×10−1g/cm、λ=6.75nmにおいてはρ=1.2×10−3〜2.1g/cmであった。立方体壁組細孔モデルでは、λ=13.5nmにおいてはρ=8.2×10−2〜5.6×10−1g/cm、λ=6.75nmにおいてはρ=8.8×10−2〜1.7g/cmであった。一方、個々の細孔自体の強度の指標となるαλ/dの範囲は、ρの上限値はそれぞれの細孔構造モデル及び対応するλにおいての最小のαλ/dに、ρの下限値は最大のαλ/dに対応した。すなわち、上記のρの範囲に対応する形でαλ/dの範囲を表記すると、立方体軸組細孔モデルでは、λ=13.5nmにおいてはαλ/d=81〜1.25、λ=6.75nmにおいてはαλ/d=75〜0.16であった。立方体壁組細孔モデルでは、λ=13.5nmにおいてはαλ/d=81〜10、λ=6.75nmにおいてはαλ/d=75〜1.7であった。
細孔サイズパラメータαの範囲は、立方体軸組細孔モデルでは、λ=13.5nmにおいてはα=0.5〜181、λ=6.75nmにおいてはα=0.5〜726である。立方体壁組細孔モデルでは、0.335nm≦dのもとでは、λ=13.5nmにおいてはα=0.5〜20、λ=6.75nmにおいてはα=0.5〜86であった。また、1.35nm≦dのもとでは、λ=13.5nmにおいてはα=0.5〜18、λ=6.75nmにおいてはα=0.5〜84であった。
細孔の壁厚又は柱太さdの範囲は、立方体軸組細孔モデルでは、λ=13.5nmにおいてはd=0.335nm〜30.5nm、λ=6.75nmにおいてはd=0.335nm〜60.6nmである。立方体壁組細孔モデルでは、λ=13.5nmにおいてはd=0.335nm〜6.74nm、λ=6.75nmにおいてはα=0.335nm〜32.2nmであった。
以下、ステップ3において、ペリクル膜として好ましい特徴的構造(但し、d≧1.35nmとする場合)の例を示す。なお、構造パラメータ群及び制約条件の値の各範囲を{α、d[単位nm]、D[単位nm]、ρ[単位g/cm]、αλ/d}の形で各細孔構造モデル、EUV光の波長毎にその構造の例を表記する。なお、{A1、B1、C11−C12、D1、E1}−{A2、B1、C21−C22、D2、E2}は、壁厚又は柱太さdが同B1値のもと、細孔サイズパラメータαがA1からA2の範囲をそれぞれのαに対応して膜厚DがC11−C22、C21−C22の範囲で本実施形態の基準値を取り得ることを意味するものとする。
<ステップ3−1>
ペリクル膜として理想的な構造−T3・δ3・D3
特徴的構造1は、ペリクル膜として理想的な構造である。立方体軸組細孔モデルのλ=13.5nmにおいては、
{α、d、D、ρ、αλ/d}={2、1.35、500−835、1.5×10−2、20}−{8、1.35、500−4659、1.0×10−3、80}、{3、2.01、500−677、1.5×10−2、20}−{10、2.01、500−2635、1.4×10−3、67}、{4、2.7、500−592、1.5×10−2、20}−{15、2.70、500−2188、1.6×10−3、75}、{6、3.35、500−587、1.0×10−2、24}−{20、3.35、500−1894、1.0×10−3、81}、{8、4.02、500−542、8.5×10−3、27}−{20、4.02、500−1320、1.4×10−3、67}、{15、4.69、500−736、3.4×10−3、43}−{25、4.69、500−1212、1.3×10−3、72}、{15、5.40、500−559、4.5×10−3、38}−{30、5.40、500−1098、1.2×10−3、75}
の構造パラメータを有する炭素多孔膜である。
これらの構造パラメータを有する炭素多孔膜は、T=T3、Δ=Δ3、D=D3の物性値を得ることができることから、ペリクル膜として最も適した構造である。特に、
{2、1.35、500−835、1.5×10−2、20}、{3、2.01、500−677、1.5×10−2、20}、{4、2.7、500−592、1.5×10−2、20}、{6、3.35、500−587、1.0×10−2、24}
の構造パラメータを有する炭素多孔膜は、ρ≧1.0×10−2g/cmであり、膜強度の観点から更に好ましい。
立方体壁組細孔モデルでは、λ=13.5nm及び6.75nmにおいては、T=T3、Δ=Δ3、D=D3の物性値を得る構造パラメータを有する炭素多孔膜は存在しない。
<ステップ3−2>
立方体壁組細孔モデルでの透過率優先の構造−T2・δ2・D1
特徴的構造2として、立方体壁組細孔モデルのλ=13.5nmでは、高透過率優先の構造として、T=T2、Δ=Δ2、D=D1の物性値を得る構造パラメータを有する炭素多孔膜が存在する。すなわち、
{α、d、D、ρ、αλ/d}={2、1.35、100−119、3.1×10−1、20}−{8、1.35、111−210、8.2×10−2、80}、{3、2.01、100−110、3.0×10−1、20}−{8、2.01、112−143、1.2×10−1、54}、{6、2.70、100−114、2.1×10−1、30}
の構造パラメータを有する炭素多孔膜であり、ρ≧1.0×10−2g/cmであり、膜強度の観点から好ましい。
<ステップ3−3>
膜厚優先の構造−T1・Δ1・D3
特徴的構造3として、膜厚優先の構造、すなわちT=T1、Δ=Δ1、D=D3の物性値を得る構造パラメータを有する炭素多孔膜が存在する。立方体軸組細孔モデルのλ=13.5nmでは、
{α、d、D、ρ、αλ/d}={0.5、1.35、1588−1636、1.7×10−1、5}−{8、1.35、21402−35650、1.0×10−3、80}、{0.5、2.01、776−799、3.0×10−1、3.4}−{10、2.01、12388−22508、1.4×10−3、67}、{1、2.70、796−850、1.7×10−1、5}−{15、2.70、14350−24047、1.2×10−3、75}、{1、3.35、540−578、2.3、4}−{20、3.35、16523−24140、1.0×10−3、81}、{2、4.02、690−789、1.0×10−1、67}−{20、4.02、11504−16806、1.4×10−3、67}、{2、4.69、520−594、1.3×10−1、5.8}−{25、4.69、13551−15420、1.3×10−3、72}、{3、5.40、568−694、8.6×10−2、7.5}−{25、5.40、10245−11658、1.7×10−3、63}、{6、8.1、500−726、5.2×10−2、10}−{25、8.1、4595−5228、3.7×10−3、42}、{8、10.8、500−618、5.2×10−2、10}−{25、10.8、2612−2970、6.4×10−3、31}、{10、13.5、500−554、5.2×10−2、10}−{25、13.5、1691−1922、9.7×10−3、25}、{15、16.2、500−728、3.5×10−2、13}−{25、16.2、1191−1352、1.4×10−2、21}、{20、21.6、500−641、3.5×10−2、12.5}−{25、21.6、693−784、2.3×10−2、15.6}
の構造パラメータを有する炭素多孔膜である。
特に、
{α、d、D、ρ、αλ/d}={0.5、1.35、1588−1636、1.7×10−1、5}−{2、1.35、5550−6359、1.5×10−2、20}、{0.5、2.01、776−799、3.0×10−1、3.4}−{2、2.01、2564−2937、3.1×10−2、13}、{1、2.70、796−850、1.7×10−1、5}−{4、2.70、2778−3632、1.9×10−2、20}、{1、3.35、540−578、2.3、4}−{6、3.35、2685−3976、1.0×10−2、24}、{2、4.02、690−789、1.0×10−1、67}−{6、4.02、1881−2784、1.5×10−3、20}、{2、4.69、520−594、1.3×10−1、5.8}−{8、4.69、1833−3049、1.1×10−2、23}、{3、5.40、568−694、8.6×10−2、7.5}−{8、5.40、1393−2316、1.5×10−2、20}、{6、8.1、500−726、5.2×10−2、10}−{10、8.1、806−1456、2.1×10−2、8.1}、{8、10.8、500−618、5.2×10−2、10}−{15、10.8、944−1573、1.7×10−2、19}、{10、13.5、500−554、5.2×10−2、10}−{20、13.5、1069−1555、1.5×10−2、20}、{15、16.2、500−728、3.5×10−2、13}−{25、16.2、1191−1352、1.4×10−2、21}、{20、21.6、500−641、3.5×10−2、12.5}−{25、21.6、693−784、2.3×10−2、15.6}
の構造パラメータを有する炭素多孔膜は、ρ≧1.0×10−2g/cmであり、膜強度の観点から更に好ましい。
立方体壁組細孔モデルのλ=13.5nmでは、
{α、d、D、ρ、αλ/d}={8、1.35、500−517、8.2×10−2、80}
の構造パラメータを有する炭素多孔膜である。
上記は、ペリクル膜として好ましい特徴的構造の例を、構造パラメータ群及び制約条件の値の各範囲を用いて示したが、数式を用いても、EUV光が炭素多孔膜を1回通過する際の透過率Tが84%以上、散乱量Δが10%以下、膜厚Dが100nm以上となるEUV用ペリクル膜を示すことができる。例えば、上記のG−Solverを用いて計算すれば、EUV光の波長λを13.5nm、黒鉛の密度Wを2.25g/cm、炭素多孔体膜の見かけ密度(g/cm)をρ、膜厚をD(nm)としたとき、第一構造パラメータを用いて、立方体壁組細孔モデルでは、炭素多孔体膜が、以下の各式(1)〜(5)の構造パラメータの範囲を満たすEUV用ペリクル膜が好ましいとすることができる。
α≦30(α:細孔サイズパラメータ) …(1)
0.335≦Nd≦13(N:膜厚方向への細孔数(個)、d:細孔の壁厚(nm)) …(2)
αλ/d≦81(λ:露光波長(nm)) …(3)
ただし、上記N、dは、
N=−1+{(W−ρ)1/3/W1/3}+{D(W−ρ)1/3/αλW1/3} …(4)
d=−αλ+{αλW1/3/(W−ρ)1/3} …(5)
同様に、第二構造パラメータを用いて、立方体壁組細孔モデルでは、炭素多孔体膜が、以下の各式(6)〜(9)の構造パラメータの範囲を満たすEUV用ペリクル膜が好ましいとすることができる。
α≦30(α:細孔サイズパラメータ) …(6)
αλ/d≦81(λ:露光波長(nm)) …(7)
0.08g/cm≦ρ≦0.7g/cm …(8)
D:100nm≦D≦850nm …(9)
このように、適切な計算手法のもと露光波長λ、近似する細孔構造モデルに対応して、EUV用ペリクル膜として好ましい特徴的構造を、数式を用いても示すことができる。
以上、[技術ポイント1]及び[技術ポイント2]から、本実施形態は、ペリクル膜であって、炭素多孔体膜で構成されており、且つ[技術ポイント3]からペリクル膜の膜厚Dが100nm〜63μmであることを特徴とする、ペリクル膜である。
なお、本実施形態の炭素多孔膜の更なる改善案[補足処理]として、公知な技術を組み合わせたものも挙げることができる。
第1の例は、特許文献2に記載のように、本実施形態の炭素多孔膜の表面の片面又は両面に、EUVの高出力光源からの光による炭素多孔膜の酸化・還元を防止するために、Si、SiC、SiO、Si、イットリウムY、モリブデンMo、Ru、ロジウムRh等を本発明の課題の目標値を満足する範囲内で、公知のスパッタ法、真空蒸着法等の方法で数nm被覆することである。Siは、EUV光の消光係数が低く、屈折率が1.0に近く、炭素と反応し炭素膜表面に強度的に優れた数nmのSiC膜を形成することから特に好ましい。
第2の例は、本実施形態の炭素多孔膜は、EUV光に対し、高い透過性と、実用的に十分な耐久性を有する膜厚を有するが、更なる膜強度が必要とされる場合、本発明の課題の目標値を満足する範囲内で、特許文献3、特許文献4、特許文献5、非特許文献2のようにメッシュを支持膜として(材料はSi、Zr、Mo、チタンTi、ニッケルNi、アルミウムAl、銅Cu等及びそれらの炭化物が、消光係数及びΔnが小さく、汎用品として入手が容易であるという観点から好ましい)接合補強することである。この場合、支持膜(メッシュの厚みが数十μm、メッシュを構成する線径が数十μm、孔部の大きさが数百μm〜数mmの膜)により透過率が10%以上下がるので、本発明の炭素多孔膜単独の透過率TはT2、T3のものを用いることとなる。なお、支持膜は散乱量Δにはほとんど影響を与えない。
[追記]として、構造パラメータの補正法について述べる。[技術ポイント3]における式(19)〜式(40)、式(1)〜式(5)、式(6)〜式(9)で示した、本実施形態の透過率T、散乱量Δと炭素多孔膜の構造パラメータ群との関係式や、T、Δ、Dの基準値を得るための構造パラメータ群を用いた制約範囲は、(前提1)及び(前提2)のもと、EUV光の波長λ=13.5及びλ=6.75nmのときの、密度W=2.25g/cmの黒鉛の光学定数n、kの値を用いて透過率T及び散乱量Δを計算し、算出したものである。したがって、黒鉛の密度Wの前提値を変えた場合には対応する新たな光学定数を用いて、ステップ1〜ステップ3と同様にしてT及びΔを再計算し、本実施形態の炭素多孔膜の構造パラメータの制約範囲やTi、Δi、Diを再算出すればよい。例えば、黒鉛の密度Wの前提値が小さくなると、炭素の消光係数kが低くなり、屈折率nは1に近づくため、構造パラメータの厚みD、見かけ密度ρ、細孔サイズパラメータαの本実施形態の制限の範囲が広がることとなる。
2−2.本実施形態のペリクル膜の製造方法
本実施形態のペリクル膜の製造方法を以下に紹介するが、本実施形態のペリクル膜としての炭素多孔膜は、この製造方法及びその実施例に限定されるものではない。図5は、ペリクル膜の製造方法を示す図である。
炭素多孔膜を得る方法には、次の様な方法がある。第1の方法は、焼結・炭化時に溶融・破壊することのない、目標とする細孔サイズの等倍〜数十倍程度の微細な炭素前駆体粒子や炭素粒子にバインダーを加えて混合・成膜した後、焼結・炭化することで、粒子の隙間を細孔とした炭素多孔膜を得る方法である。
第2の方法(方法A)は、ゾル−ゲル法により、初めにゾル−ゲル転移する原料を用いて、溶媒を多量に含んだ溶媒和ゲル(例えばヒドロゲル)の膜を形成し、続いてその溶媒和の構造が潰れないように溶媒だけを乾燥除去することで多量に気泡を含むエアロゲル膜を得て、最終的にそのエアロゲル膜を炭化することで、炭素エアロゲルとしての炭素多孔膜を得る方法である。
第3の方法(方法B)は、分子構造中に化学反応過程や炭化過程で構造が固定化すると共に気泡が発生する原料を用いて、化学反応や炭化反応をさせ、それらの過程で発生する気泡又は隙間を細孔とした炭素多孔膜を得る方法である。第1の方法より、粒径を制御し、EUV光の波長の0.5倍〜10倍程度の細孔径を有する炭素多孔膜を製造することは他の方法に比べ比較的容易ではあるが、見かけ密度1.0g/cm以下の低密度の炭素多孔膜を得ることは難しい。本実施形態の炭素多孔膜は、第2及び第3の方法によって得ることができる。
本実施形態の炭素多孔膜は、[技術ポイント2]の第2の利点でも触れたように、既存の炭素多孔膜の製造技術を応用する。ただし、それらの製造技術とは、2つの点、[技術ポイント4]、[技術ポイント5]で異なるものとなる。
[技術ポイント4]
技術ポイント4は、薄膜の成膜技術を導入することである。技術ポイント4は、本実施形態の炭素多孔膜の用途が、既存の炭素多孔膜の用途として全く考えられていなかったペリクル膜であるため、薄膜を得るための成膜技術が追加されていることである。すなわち、後述する本実施形態の炭素多孔膜の製造方法の中の、薄膜化に適した成膜工程(工程A2、工程B2、工程AB2)及び薄膜を得るための塗工液の調合工程(工程A1、工程B1、工程AB1)が重要な技術ポイントとなる。
調合工程では、塗工液の組成、分子量、温度を調整し、塗工液の粘度を下げ、成膜・乾燥後の膜厚が数十nm〜数百μmに薄膜塗工できるようにすることが好ましい。構造固定・乾燥工程(工程A3、工程B3、工程AB3)や炭化工程(工程A4、工程B4、工程AB4)で膜厚が塗工時の約0.5倍〜3倍となり、炭化後の膜厚が100nm〜63μmとなるためである。塗工液の粘度を下げるには、技術ポイント5で述べる製造パラメータの範囲内で塗工液中の最終的に炭素質となる溶質の濃度を下げればよい。特に、塗工液が高分子溶液である場合、乾燥後に塗工時の基材から塗膜を剥離する際に塗膜が破損しない強度を有する程度まで分子量を下げることが好ましい。
また、薄膜を得るための塗工方法としては、蒸着法に代表されるドライコート法ではなく、低粘度の塗工液を薄く塗工できるウエット塗工法を用いることが好ましい。具体的には、スピンコート法、ノズルスキャン塗布法、インクジェット塗布法等のように生産性は低いが薄膜化に有利な塗工法やバーコート、グラビアコート、ダイコート、ドクターコート、キスコート等の薄膜化には限界があるがロールトゥロールと呼ばれる連続的塗工により生産性の高い塗工法を用いることができる。更に、塗工液粘度・組成や塗工方法を適正に調整・選択するだけでなく、塗工速度や塗工温度、塗工時間等の塗工条件を調整することで、均一な薄膜を得ることができる。
[技術ポイント5]
技術ポイント5は、[技術ポイント3]で述べた構造パラメータを有する炭素多孔膜を得るために、各製造方法に応じて製造パラメータ(炭素質となる溶質の種類とその分子量、溶液組成、溶液濃度、架橋触媒種・脱ハロゲン種とその濃度、乾燥条件、炭化条件等)を調整することであり、以下にその詳細を述べる。
2−2−1.炭素エアロゲル系炭素多孔膜の製造方法
本実施形態の炭素多孔膜を得る方法A(上述の第2の方法)は、参考文献A、米国特許US4873218号公報[以下、参考文献Bとする]、田門肇、表面、38(1)、1−9(2000)[以下、参考文献Cとする]、特表平8−508535公報[以下、参考文献Dとする]、及び、R.Saliger等、J.Non−Crystalline Solids、221、144−150(1997)[以下、参考文献Eとする]に紹介されている方法を応用する。これらの文献では、断熱材、電池やキャパシタ等に用いるメソ孔を有する炭素材料として紹介され、本実施形態の用途は全く考慮されていない。しかし、薄膜の成膜技術を追加し、膜厚の薄いヒドロゲル膜が得られるように製造パラメータを調整することで、本実施形態の用途に応用することができる。
すなわち、図5に示されるように、工程A1として、炭素質原料としてレゾルシノール(R)、フェノール、カテコール、フロログルシノール及び他のポリヒドロキシ−ベンゼン化合物からなるいづれか1つ以上のモノマーと、ホルムアルデヒド(F)、フルフラールのいずれか1つ以上のモノマーとを、またゲル化(重合)のアルカリ触媒(Ca)として炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)等のアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩のいずれか1つ以上を水(Wa)に溶かし、これらを混合して塗工液A(RF粘凋液)を調合する。
工程A2として、工程A1に引き続き、この塗工液Aを後から剥離させやすいように離形フィルムや離形基板上に、炭化後の膜厚が100〜850nmになるように塗工(前述のバーコートやスピンコート等)・成膜する。この際、離形フィルムや離形基板の周りを取り囲む共に密閉し、塗膜が離形フィルムや離形基板の周囲から流出しないように、且つ溶媒(水)が蒸発して塗工液の組成が変化したり、膜細孔となる領域が潰れたりしないように密封しておくことが好ましい。
工程A3として、工程A2に引き続き、室温(20℃)〜100℃で段階的に温度を高めたり、数日間(1〜14日間)静置したりして、十分にゲル化(重合)させ、薄膜状のヒドロゲル膜を得る。固形のヒドロゲル膜を早く得るためには、参考文献Dに示されたように、静置の際に加熱(50〜100℃)することができるが、大きな細孔径を有するヒドロゲル膜を得るには加熱温度は低いことが好ましい。
続いて、ヒドロゲル膜を離形フィルムや離形基板から剥離し、細孔径・細孔形状をより保持できるように乾燥するため、ヒドロゲル膜中の溶媒(水)をアセトンやシクロヘキサン等で置換して二酸化炭素超臨界乾燥(CO超臨界乾燥)したり[乾燥法1]、凍結乾燥(必要ならばt−ブタノール等で置換した後に)したり[乾燥法2]、室温〜100℃で熱風乾燥又は減圧乾燥(熱風・減圧乾燥)(必要ならば乾燥法1または乾燥法2で用いた処理液で置換した後)したり[乾燥法3]して、ヒドロゲル膜中の水を飛散して多孔性のRF系エアロゲル膜を得る。置換にあたっては、置換液との接触による細孔径、細孔形状の変化を抑えるためにヒドロゲル膜中の水からアセトン、シクロヘキサン、t−ブタノール等への置換濃度を徐々に高めたり、置換回数を増やしたりすることが好ましい。
また、乾燥方法としては、乾燥時の溶媒の界面張力による毛管収縮をできるだけ抑えるため、[乾燥法1]が最も好ましい。しかし、超臨界乾燥の替わりに参考文献Cに示された[乾燥法2]、参考文献D、参考文献Eに示された[乾燥法3]も、細孔径・細孔形状を多少の犠牲にする(収縮する)ことになるが、製造コストを低く抑えるには優位になり、本実施形態に用いることができる。
工程A4として、工程A3に引き続き、RF系エアロゲル膜を不活性雰囲気下又は窒素雰囲気下で、600〜3000℃で10分〜20時間炭化処理を行い、本実施形態のRF系炭素エアロゲルとしての炭素多孔膜を得る。炭化処理は、炭素前駆体を粉砕することなく、固形フィルム、シートの炭化・賦活処理に使われる固定床方式、移動床方式、トンネルキルン等の炭化・賦活製造方式を使うことができる。
炭化に伴い、RF系エアロゲルの細孔径は収縮し、炭化温度が高くなるほど収縮の割合は低下するが、細孔径、細孔分布は小さくなる傾向を有する。したがって、目標とする細孔径に応じて炭化温度を調整することができる。通常、炭化温度は700〜1500℃で行い、更に膜強度、導電性、熱伝導性を高める必要がある場合は2000〜3000℃で処理を行うことができる。また、得られた炭素多孔膜を必要に応じて賦活処理を行い、細孔径及び細孔分布を大きくすることで細孔構造を調整することもできる。賦活方法としては、水蒸気、塩化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法を用いることが好ましい。
なお、炭化処理の際、エアロゲル膜は大きく収縮し、無緊張状態で炭化すると膜にシワが発生しやすいため、枠で固定したり、2枚の黒鉛板や黒鉛シート間に挟む等を行い、エアロゲル膜を緊張下で炭化したり、空気中又はヨウ素(I)蒸気下、150℃〜250℃で事前に構造の熱安定化を行うことが好ましい。
参考文献C中の図1、及び、R.W.Pekala、F−M.Kong、Polym.、Prep、30、221−223(1989)[以下、参考文献Fとする]中の図2には、RF系エアロゲルの形成機構の模式図、RF系エアロゲル及びその炭化物としてのRF系炭素エアロゲルの電子顕微鏡写真が記載されている。
数珠状の微粒子の集合体がRF系炭素エアロゲルとしての炭素多孔膜を形成している。現実の炭素多孔膜は、立方体軸組細孔構造モデルと立方体壁組細孔構造モデルとの中間的な構造を有すると考えられるが、敢えて言えばRF系炭素エアロゲルの細孔構造は、立方体軸組細孔構造モデルに似た構造であることが分かる。
また、参考文献A中の図10〜図13には、RF系炭素エアロゲルの細孔分布のグラフとSAXSのDebye−Porod解析のグラフが記載されている。同文献の図10から、RF系炭素エアロゲルの細孔分布への触媒種の依存性として、アルカリ金属炭酸塩より、アルカリ金属炭酸水素塩の方が大きなピーク細孔半径r(peak)、細孔径Lが得られることが、同文献の図12からR/Cの依存性として、R/Cが大きくなると細孔径Lは大きくなるが、細孔分布はブロードとなり、細孔分布曲線の山のピーク高さも低くなることが分かる。
また、同文献の図13より、細孔形状は、R/Cが数100(例えば200)以下ならば、Debye−Porodプロットの直線の傾きが−4に近いことから触媒種に関係なく球状に近いことが分かる。
以下に、参考文献A、参考文献B、参考文献Cに記載された代表的な実験値から、工程A1として炭素質となる原料にR、Fを、CaとしてNaCOを様々な組成比の塗工液Aを調合し、工程A2として塗工液Aをスピンコートにて薄膜成膜してヒドロゲル膜を得た後、工程A3としてヒドロゲル膜を室温〜100℃でゲル化(重合)させ、CO超臨界乾燥又は凍結乾燥又は熱風乾燥を行ってエアロゲル膜を得た後、工程A4としてエアロゲル膜を1000℃で炭化処理を行ない、最終的に本実施形態の炭素多孔膜の得たものと仮定した時の、組成比と得られる構造パラメータとの重回帰式、式(36)、式(37)を求めた。見掛け密度は、
ρ=−1.27×10−1・ln(R/Ca)+7.07・(R/Wa)+7.24×10−1 …(45)
*2=0.92
となり、各因子の依存率は、ln(R/Ca)が36%、R/Waが64%となった。
また、細孔半径rは、
ln(r)=2.41×10−1・ln(R/Ca)−5.23×10−1・ln(R/Wa)+5.36×10−1・ln(R/F)−9.69×10−1 …(46)
*2=0.79
となり、各因子の依存率は、ln(R/Ca)が39%、ln(R/Wa)が37%、ln(R/F)が25%となった。なお、細孔半径rに対応するαは、式(18)に従い、rを2倍し、λで割ることで得られる。
式(45)及び式(46)より、以下のことが分かる。RとCaとのモル比R/Caは増大するに伴い、見かけ密度ρは小さく、細孔半径rに対応するαが大きくなる。また、上記引用文献4によれば、Caの種類の影響は、KCO≒NaCO<NaHCO<KHCO順でαが大きくなり、R/Caが小さくなると細孔分布はシャープとなり、0<R/Ca≦200では球状の細孔が、R/Ca>800では円盤状の細孔が得られている。したがって、球状の大きな細孔でシャープな細孔分布を得るためには、アルカリ金属炭酸水素塩を用い、できるだけR/Caを小さくすることが好ましい。
一方、RとWaとのモル比R/Waは増大するに伴い、ρは大きく、αは小さくなる。また、RとFとのモル比R/Fは増大するに伴い、αは大きくなる。したがって、大きな細孔を得るためには、R/Waはできるだけ小さく、R/Fはできるだけ大きくすることが好ましい。
更に、第2構造パラメータ群とT、Δとの重回帰式、すなわち立方体壁組細孔モデルで近似した場合には、λ=13.5nmでは式(33)、式(34)を用いて、λ=6.75nmでは式(35)、式(36)を用いて、立方体軸組細孔モデルで近似した場合には、λ=13.5nmでは式(37)、式(38)を用いて、λ=6.75nmでは式(39)、式(40)を用いることで、本実施形態の課題を満たすTi、Δi、Diの組成範囲を知ることができる。
以上のように、ゾル−ゲル法により、初めにゾル−ゲル転移する原料を用いて、溶媒を多量に含んだ溶媒和ゲル(例えばヒドロゲル)の膜を形成し、続いてその溶媒和の構造が潰れないように溶媒だけを乾燥除去することで多量に気泡を含むエアロゲル膜を得て、最終的にそのエアロゲル膜を炭化することで、炭素エアロゲルとしての本実施形態の炭素多孔膜を得ることができる。
2−2−2.ハロゲン化ビニル樹脂系又はハロゲン化ビニリデン樹脂系炭素多孔膜の製造法
本実施形態の炭素多孔膜を得る方法B(上述の第3の方法)は、本発明者による特許4871319号公報[以下、参考文献Gとする]、山下順也、塩谷正俊、炭素、No204、182−191(2002)[参考文献Hとする]に紹介されている方法を応用する。これらの参考文献Gや参考文献Hは、触媒担持材料、ガス吸蔵材料、ガス分離材料、電極材料等に用いるメソ孔を有する炭素材料の製造法に関するものとして紹介され、本実施形態への応用は全く考慮されていない。しかし、薄膜の成膜技術を追加し、膜厚の薄いハロゲン化ビニル樹脂膜又はハロゲン化ビニリデン樹脂膜が得られるように製造パラメータを調整することで、本実施形態の用途へ応用することができる。
すなわち、図5に示すように、工程B1として、炭素質原料にハロゲン化ビニル組成60モル%以上のハロゲン化ビニル樹脂又はハロゲン化ビニル共重合体の樹脂(総称してハロゲン化ビニル樹脂と呼ぶ)中のハロゲンの重量比が60wt%以上の高ハロゲン化ビニル樹脂、又はハロゲン化ビニリデン組成60モル%以上のハロゲン化ビニリデン又はハロゲン化ビニリデン共重合体の樹脂(総称してハロゲン化ビニリデン樹脂と呼ぶ)を用いる(以後、高ハロゲン化ビニル樹脂とハロゲン化ビニリデン樹脂とを同等に扱い、特に断わらなければ、簡単にハロゲン化ビニリデン樹脂と称することとする)。これらの樹脂を良溶媒に溶かした溶液又はハロゲン化ビニリデン樹脂の微粒子が水に分散したラテックスを調合し、これらの溶液及びラテックスを総称して塗工液Bと呼ぶ。
工程B2として、工程B1に引き続き、この塗工液Bを離形フィルムや離形基板上に、炭化後の膜厚が100nm〜63μmになるように塗工・成膜し、室温〜溶媒の沸点以下の温度で熱風・減圧乾燥させて溶媒又は水を飛散し、薄膜状のハロゲン化ビニリデン樹脂の樹脂膜(ハロゲン化ビニリデン樹脂膜)を得る。
工程B3として、工程B2に引き続き、ハロゲン化ビニリデン樹脂膜を、アルカリ金属水酸化物[水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等]の脱ハロゲン化水素剤(塩基)の水溶液及び/又はアミン溶液[アンモニア水(NH水)、1、8−ジアザビシクロ[5、4、0]−7−ウンデセン(DBU)等]の脱ハロゲン化水素剤(塩基)の溶液と、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)等のハロゲン化ビニリデン樹脂を一部又は全部溶解する良溶媒と、水、アルコール及び/又はエーテル等のハロゲン化ビニリデン樹脂の貧溶媒との混合溶液を用いて、室温〜混合溶液の沸点以下の温度で1秒〜2週間、脱ハロゲン化水素反応処理し、ハロゲン化ビニリデン樹脂系炭素前駆体膜を得る。なお、混合溶液は組成によっては、相分離をする場合がある。本実施形態で用いる混合溶液は、相分離をしない組成のものであり、炭素前駆体の脱ハロゲン化水素反応を再現性良く起こすには必須なものである。
工程B2及び工程B3においては、工程A2及び工程A3と異なり、離形フィルムや離形基板上の塗工膜のゲル化に時間を要したり、塗工膜を熱風乾燥させた後わざわざ剥離する操作をしたりせずに、塗工膜を直接混合溶液中に浸漬することもできる。混合溶液との接触により塗工膜の脱ハロゲン水素化による架橋(構造の固定化)が起こると同時に、発生する脱ハロゲン化水素ガスにより、離形フィルムや離形基板からハロゲン化ビニリデン樹脂膜が自然に剥離されるからである。したがって、方法Aに比べ極めて短時間でハロゲン化ビニリデン樹脂膜を得ることができる。
更に、工程B3の塗工膜の脱ハロゲン水素化では、ハロゲン化ビニリデン樹脂膜中にポリエン構造(−C=C−又はC≡C−を有する分子骨格構造を意味する)と呼ばれる架橋構造と脱ハロゲン化水素で生じた気泡を発生し、その気泡が膜中に多数残ったハロゲン化ビニリデン樹脂系炭素前駆体膜となる。この炭素前駆体膜は多数の架橋構造により、その後の工程B4でも、溶融することなく、更に脱ハロゲン化水素反応と炭化(非昌質炭素化、黒鉛化)が進行して行くことができる。
工程B4として、工程B3に引き続き、ハロゲン化ビニリデン樹脂系炭素前駆体膜を工程A4と同様に不活性雰囲気下又は窒素雰囲気下で、600〜3000℃で、10分〜20時間、緊張下で加熱炭化を行い、本実施形態のハロゲン化ビニリデン樹脂系炭素多孔膜を得る方法である。
方法Bによる細孔径・細孔分布の制御としては、工程B1では樹脂中の高ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデンの組成モル%、樹脂の分子量、塗工液B中の樹脂濃度で決まり、これらの値が高くなる程細孔径は小さくなる。また、工程B2では膜厚を薄くすることで膜中の細孔分布をシャープにすることができる。更に、工程B3では混合溶液中のアルカリ金属水酸化物、アミン等の塩基(脱ハロゲン化水素剤)の濃度が高いほど、混合溶液中のハロゲン化ビニリデン樹脂の良溶媒の濃度が高いほど細孔径が大きくなる。工程B4では工程A4同様、炭化温度が高くなるほど細孔径は小さくなる傾向を有するが、炭素前駆体中の残存ハロゲン量によっては600℃〜1200℃で細孔径・細孔分布を大きくすることもできる。更に、工程A4同様、賦活処理により、細孔径及び細孔分布を大きくすることで細孔構造を調整することもできる。方法Bの例として、参考文献G、参考文献Hの例を以下に述べる。
工程B1として、炭素質原料に塩化ビニリデン(VDC)組成60モル%以上の塩化ビニリデン樹脂又は塩化ビニリデン共重合体の樹脂(総称してPVDC樹脂)を、PVDC樹脂の良溶媒としてTHFを用いて溶解して塗工液Bを作る。
工程B2として、炭化後の膜厚が100〜850nmになるようにガラス製離形基板上に塗工液Bをスピンコートし、80℃で熱風乾燥して薄膜状のPVDC樹脂膜を得る。
工程B3として、PVDC樹脂膜をアルカリ金属水酸化物KOHの水溶液と良溶媒THFと貧溶媒メタノールとの混合溶液を用いて、脱塩化水素反応処理(脱HCl処理)し、PVDC系炭素前駆体膜を得る。
最後に工程B4として、このPVDC系炭素前駆体膜を窒素雰囲気下で600〜3000℃で緊張加熱炭化を行い、本実施形態のPVDC系炭素多孔膜を得ることができる。
PVDC樹脂は、参考文献Gの[0011]〜[0012]に記載した組成ものを用いることができる。PVDC樹脂中のVDC成分のモル含有率が高い程、工程B3の脱HCl反応によって、1分子中に発生するポリエン構造が多くなり、複数の分子間での架橋構造が容易に発生し、溶解・溶融することなく固体状態のまま炭化することができるので好ましい。
しかし、VDC組成100モル%のPVDC樹脂は均一に溶解することが難しかったり、そのPVDC膜が硬く脆かったりするため、取り扱い難く、塩化ビニリデン共重合体(VDC共重合体)が好ましい。VDC共重合体中のVDCのモル組成比は、0.6(60モル%)、好ましくは0.8(80モル%)以上、より好ましくは0.9(90モル%)以上であることが好ましい。
なお、(−CH−CHCl−)、[Cl含有率57wt%]の構造式で与えられる通常のPVC樹脂に対し、その構造式が[(−CH−CHCl−)−CHCl−CHCl−]、[Cl含有率61wt%]である塩素化PVC樹脂や[(−CHCl−C(CH)Cl−CHCl−CHCl−)、[Cl含有率68wt%]である塩素化ゴム等の、塩素含有率(Cl含有率)が約60wt%を超える高塩素化PVC樹脂でも、工程B3において(−CH−CCl−)、[Cl含有率73wt%]であるPVDC樹脂と同様に高い架橋構造体が得られ、工程B4の炭化時でも、溶融することなく炭化することができるため、本実施形態の炭素質原料として用いることができる。
塗工液Bとしては、ラテックスと呼ばれるPVDC樹脂の水分散液か、PVDC樹脂を参考文献Gの[0014]中に示されるTHF、1、4−ジオキサン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、DMF、メチルエチルケトン、エチルアセテート等のPVDC樹脂の良溶媒に溶解したPVDC樹脂溶液を用いることができる。良溶媒として好ましくはTHF、DMFである。
PVDC系炭素前駆体膜は、混合溶液として、参考文献Gの[0014]〜[0015]に示されるアルカリ処理液の組成や処理条件を用いて脱HCl処理を、またPVDC系炭素多孔膜は、参考文献Gの[0017]に示される炭化条件にて行うことができる。なお、本実施形態のPVDC樹脂膜、PVDC系炭素前駆体膜は薄膜であるため、アルカリ(塩基)濃度や良溶媒濃度、脱HCl処理温度、更に脱HCl処理や炭化処理時間を同特許文献に比べ、低く、短く抑えることができる。
参考文献G中の図3に、PVDC系炭素多孔膜のTEM写真が記載されている。同文献の図2は、PVDC系炭素多孔膜の細孔分布のグラフである。同文献の図3より、細孔壁に囲まれた球状の多数の細孔がPVDC系炭素多孔膜を形成しており、同文献の図2より炭素多孔膜中にL≒13nm(α≒1.0)の細孔が多数形成していることが分かる。このように、ハロゲン化ビニリデン系炭素多孔膜は、炭素エアロゲル系炭素多孔膜に比べ、細孔壁厚が厚く強固な炭素多孔膜となる傾向がある。現実の炭素多孔膜は、立方体軸組細孔構造モデルと立方体壁組細孔構造モデルとの中間的な構造を有すると考えられるが、敢えて言えばハロゲン化ビニリデン系炭素多孔膜の細孔構造は、立方体壁組細孔構造モデルに似た構造であることが分かる。
参考文献Hを活用した方法を以下に述べる。参考文献Hには、PVDC樹脂の代わりにフッ化ビニリデン樹脂(PVDF樹脂)フィルムを用いて、有機系強塩基DBUとPVDFの良溶媒DMFとPVDFの貧溶媒エタノールの混合溶液を用いて、脱フッ化水素処理してPVDF系炭素前駆体膜を得た後、炭化処理して多数のメソ孔を有するPVDF系炭素多孔膜を得る方法が紹介されており、これも本実施形態の炭素多孔膜として用いることができる。
更に、参考文献Hには、方法Aと方法Bの折衷的な方法(方法AB)が紹介されており、この方法も本実施形態に応用することができる。すなわち、図5に示す炭素多孔膜の製造工程のように、工程AB1として数平均分子量Mの異なる塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)を炭素質原料として用い、PVC樹脂粉末をDMFに溶解して、その溶液にDBUを室温で滴下し、PVC樹脂の一部を脱HClさせて、PVC、DMF及びDBUの3成分からなる粘凋な塗工液ABを調合する。
続いて、工程AB2として、塗工液ABを離形フィルムや離形基板上に、炭化後の膜厚が100nm〜63μmになるように塗工・成膜する。この際、離形フィルムや離形基板の周りを取り囲む共に密閉し、塗膜が離形フィルムや離形基板の周囲から流出しないように、且つ溶媒(水)が蒸発して塗工液の組成が変化したり、膜細孔となる領域が潰れたりしないように密封した後、室温〜70℃で順次加熱して十分にゲル化させ、PVC系ゲル膜を得る。
工程AB3として、PVC系ゲル膜を離形フィルムや離形基板から剥離した後、ゲル中のDMFを液体COで直接置換した後、CO超臨界乾燥を行い、溶媒を飛散して多孔性のPVC系エアロゲル膜を得る。
最後に、工程AB4として、PVC系エアロゲル膜を空気中(O下)で150〜250℃で段階的に加熱して熱安定化させるか、PVC系ゲル膜をヨウ素(I)の蒸気によって150〜250℃で熱安定化させた後、PVDC系炭素多孔膜、PVDF系炭素多孔膜と同様に更に不活性雰囲気下又は窒素雰囲気下で、700℃〜3500℃(ここでは1000℃)に加熱炭化してPVC系炭素エアロゲルによる炭素多孔膜を得ることができる。
工程AB4でそのままPVCエアロゲル膜を加熱するとPVCエアロゲル膜が溶融し、その細孔構造が崩れるため、塩素化PVC樹脂やPVDC樹脂を炭素質原料とした場合と異なり、熱安定化による細孔構造の固定化が必須となる。
参考文献H中の図8にPVC系炭素エアロゲルの細孔分布が記載されている。図8より細孔分布への分子量Mの依存性、PVC濃度の依存性が分かる。
以下に、参考文献Hに記載された代表的な実験値から、方法ABに従い本実施形態の炭素多孔膜の得たものと仮定したときの、PVC、DMF、DBU3成分からなる溶液中のPVCの重量パーセント濃度(wt%濃度、[PVC])、PVCの数平均分子量(M)、PVC分子中の塩素原子(Cl)に対するDBU分子のモル比(DBU/Cl)と得られる構造パラメータとの重回帰式、式(47)、式(48)を求めた。見かけ密度ρは、
ρ=2.15×10−1・([PVC])+4.64×10−2・(M×10)+5.52×10−2・(DBU/Cl)−2.87×10−1 …(47)
*2=0.86
となり、各因子の依存率は、[PVC]が66%、Mが27%、DBU/Clが7%となった。
また、細孔半径rは、
r=−4.31・([PVC])−1.12・(M×10)+1.83・(DBU/Cl)+2.74×10 …(48)
*2=0.74
となり、各因子の依存率は、[PVC]が58%、Mが32%、DBU/Clが10%となった。なお、細孔半径rに対応するαは、式2に従い、rを2倍し、λで割ることで得られる。
式(47)及び式(48)より、以下のことが分かる。[PVC]は、増大するに伴い、見かけ密度ρは大きく、細孔半径rに対応するαは小さくなる。一方、Mは増大するに伴い、ρは大きく、αは小さくなり、DBU/Clは増大するに伴い、ρ及びαは大きくなる。したがって、大きな細孔を得るためには、[PVC]、Mはできるだけ小さく、DBU/Clはできるだけ大きくすることが好ましい。
更に、第2構造パラメータ群とT、Δとの重回帰式、すなわち立方体壁組細孔モデルで近似した場合には、λ=13.5nmでは式(33)、式(34)を用いて、λ=6.75nmでは式(35)、式(36)を用いて、立方体軸組細孔モデルで近似した場合には、λ=13.5nmでは式(37)、式(38)を用いて、λ=6.75nmでは式(39)、式(40)を用いることで、本実施形態の課題を満たすTi、Δi、Diの組成範囲を知ることができる。
以上のように、分子構造中に化学反応過程や炭化過程で構造が固定化すると共に気泡が発生する原料を用いて、化学反応や炭化反応をさせ、それらの過程で発生する気泡又は隙間を細孔とすることで、ハロゲン化ビニル樹脂系又はハロゲン化ビニリデン樹脂系炭素多孔膜としての本実施形態の炭素多孔膜を得ることができる。
2−2−3.補足処理
図5に示す補足処理として、本実施形態の炭素多孔膜を得た後、炭素多孔膜の表面の片面又は両面に、EUVの高出力光源からの光による炭素多孔膜の酸化・還元を防止するために、Si、SiC、SiO、Si、Y、Mo、Ru、Rh等を本実施形態の課題の目標値を満足する範囲内で、公知のスパッタ法、真空蒸着法等の方法で、数nm被覆することができる。Siは、EUV光の消光係数が低く、屈折率が1.0に近く、更に炭素と反応し炭素膜表面に強度的に優れた数nmのSiC膜を形成することから特に好ましい。
3.本実施形態のペリクル
図6は、ペリクルを示す斜視図である。図7は、図6におけるVII−VII線に沿った断面構成を示す図である。本実施形態のペリクル10は、図6に示されるように、上述した炭素多孔膜をペリクル膜1として、フレーム3に膜接着剤2を用いて接着したものである。また、ペリクルのマスクとの接着面側には、マスク粘着剤(その保護フィルムも含む)又はフレームとの接合機構4が施されている。
本実施形態で用いるフレーム3は、通常のペリクルで用いられている、側面に1個以上の通気孔5が設けられたフレームを用いることができる。フレーム素材としては、好ましくはZnとMgを添加してアルミ合金の中で最も強度を高めたAl−Zn系アルミ合金フレーム(7000系アルミ合金フレーム)がよい。更に好ましくは、EUV光がフレームに照射した際の迷光を抑えるため、EUV光の屈折率が、真空の屈折率1.0に近く、消光係数kも大きい元素MgとSiを添加し強度、耐食性を向上させたAl−Mg−Si系アルミ合金フレーム(6000系アルミ合金フレーム)が良い。或いは、アルミ合金フレームの表面をこれらの元素Si、SiC、Mg、Znで蒸着したフレームを用いることもできる。
マスク粘着剤4としては、例えば特開2011−107488公報で紹介されているArF用ペリクルに使われている(メタ)アクリル酸アルキルエステルと多官能性エポキシ化合物との反応生成物を含む粘着剤を用いることができる。粘着剤にEUV光が照射されると粘着剤の成分から分解ガスが発生する可能性があるため、マスクにフレームを接着した場合、フレーム幅の端からマスク粘着剤がはみ出さないように、フレーム3の幅より狭く塗布することができる。また、マスク粘着剤4の配置形態として、一形態としては、図8(a)に示すように、フレーム3に設けられた溝6にマスク粘着剤4を配置することができる。このとき、溝6の中において溝6の深さより僅かに厚くマスク粘着剤4を塗布する。また、図8(b)に示すように、マスク粘着剤4が配置される溝6の両側に、マスク粘着剤がフレームの幅からはみ出さないように更に溝7,8を設けてもよい。
しかし、通常EUV用マスクはペリクルを剥離し、再度使用することも多く、その際EUV用マスクへのマスク粘着剤の糊残りが問題となることがある。したがって、ペリクル10とEUV用マスクとの接合機構として、マスク粘着剤の替わりに、図9に示すように、鉄Fe、コバルトCo、ニッケルNi等の強磁性体の線芯11に導電性コイル12(金属ナノワイヤー、カーボンナノワイヤ等)を巻きつけた電磁石13をフレーム3の溝6に埋め込み又は粘着剤等を用いて接合し、一方、EUV用マスク側にも強磁性体面を設けることで電磁的に接合することがより好ましい。また、フレーム3に電磁石13を設置する代わりに、EUV用マスク側に電磁石を設置し、フレームの溝には強磁性体の線等を設けることもできる。
なお、ゼロ膨張ガラス(LTEガラス)にSiとモリブデン(Mo)とを交互に40層対以上蒸着した多層膜で出来たEUV用マスクへの強磁性体面の設置方法としては、フレームと接着するマスクの領域に予めパーマロイ薄膜やアモルファス希土類鉄系合金膜等の強磁性で構成された枠やシールを貼付したり、これらの強磁性体薄膜を真空蒸着法、スパッタ蒸着、電着法で作製したりしておけばよい。
膜接着剤2には、接着力があり且つEUV光が照射された場合にも分解ガスの発生が少なく、露光に影響を与えない無機系接着剤を用いることが好ましい。例えば、無機物の混ざったエポキシ樹脂系接着剤、例えば藤倉化成株式会社製A−3/C−3(カーボンブラックをフィラーに使用したエポキシ樹脂系接着剤)、無機物の混ざったフェノール系接着剤、例えば藤倉化成株式会社製FC−403R・XC−223(黒鉛をフィラーに使用したフェノール樹脂系接着剤)、或いはシリケート系、ホスフェート系、コロイダルシリカ系等の無機物系反応形接着剤を用いることができる。
続いて、ペリクル10の製造方法について説明する。まず、予め膜接着剤2を塗布したフレーム3と本実施形態のペリクル膜1とを接着した後、マスク粘着剤4を使う場合は、フレーム3のEUV用マスクとの接着面側にマスク粘着剤4を塗布し、その後、保護フィルムを貼付することで、本実施形態のペリクル10を得ることができる。
なお、フレーム3のEUV用マスクとの接合が電磁式等の、粘着剤を使わない場合は、この操作は不要となる。予めフレーム3のEUV用マスクとの接着面側に電磁石13等を接着したフレーム3を用いることができる。
本発明は、リソグラフィマスクを汚染から保護するためのペリクル膜及びペリクルとして、EUVリソグラフィの分野で好適に利用できる。
1…ペリクル膜、3…フレーム、4…マスク粘着剤、13…電磁石。

Claims (8)

  1. 炭素の密度が1.8〜2.26g/cm である炭素多孔体膜で構成されており、
    膜厚Dが100nm〜63μmであり、
    13.5nmの波長の極端紫外光が1回通過する際の透過率Tが84%以上であり、且つ、前記極端紫外光が1回通過する際の前記炭素多孔体膜の細孔による散乱量Δが10%以下である、ペリクル膜。
  2. 前記炭素多孔体膜の細孔径が、6.75nm以上2430nm以下である、請求項1に記載のペリクル膜。
  3. 前記炭素多孔体膜において、質量を体積で割って得られる見かけ密度が1.0×10−3〜2.1g/cmである、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
  4. 極端紫外光の波長λを13.5nm、黒鉛の密度Wを2.25g/cm、前記炭素多孔体膜の見かけ密度(g/cm)をρ、膜厚(nm)をDとしたとき、前記炭素多孔体膜が、以下の各式を満たす構造パラメータを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のペリクル膜。
    α≦30(α:細孔サイズパラメータ)
    0.335≦Nd≦13(N:膜厚方向への細孔数(個)、d:細孔の壁厚(nm))
    αλ/d≦81(λ:波長(nm))
    ただし、N、dは、
    N=−1+{(W−ρ)1/3/W1/3}+{D(W−ρ)1/3/αλW1/3
    d=−αλ+{αλW1/3/(W−ρ)1/3
  5. 極端紫外光の波長λを13.5nm、黒鉛の密度Wを2.25g/cm、前記炭素多孔体膜の見かけ密度(g/cm)をρ、膜厚(nm)をDとしたとき、前記炭素多孔体膜が、以下の各式を満たす構造パラメータを有する、請求項1〜のいずれか一項記載のペリクル膜。
    α≦30(α:細孔サイズパラメータ)
    αλ/d≦81(λ:波長(nm)、d:細孔の壁厚(nm)
    0.08g/cm≦ρ≦0.7g/cm
    D:100≦D≦850
  6. 請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のペリクル膜と、
    前記ペリクル膜が貼付されるフレームと、を備えるペリクル。
  7. 前記フレームには、前記ペリクル膜が貼付される面とは反対の面に、リソグラフィマスクと接合するためのマスク粘着剤が配設される溝が設けられている、請求項に記載のペリクル。
  8. 前記フレームには、前記ペリクル膜が支持される面とは反対の面に、リソグラフィマスクと接合するための電磁石が設けられている、請求項に記載のペリクル。
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