JP6066857B2 - 2基の脱りん炉を備えた溶銑処理工場及び転炉工場における溶銑の運搬方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、脱りん炉を備えた溶銑処理工場と転炉工場が別棟の建屋にある場合でも溶銑鍋の運搬の効率を向上させて脱りん炉の生産阻害を発生させることが無いようにする2基の脱りん炉を備えた溶銑処理工場及び転炉工場における溶銑の運搬方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明にかかる2基の脱りん炉を備えた溶銑処理工場及び転炉工場における溶銑の運搬方法では、2基の脱りん炉が配備された溶銑処理工場と、転炉が配備された転炉工場とが別棟とされた製鋼工場であって、
前記溶銑処理工場は、第1脱りん炉の炉裏側に脱りん処理後の溶銑を出湯する第1出湯ステーションと、第2脱りん炉の炉裏側に脱りん処理後の溶銑を出湯する第2出湯ステーションと、第1脱りん炉で出湯された溶銑が装入された実鍋の受け渡しを行う第1受け渡しステーションと、第2脱りん炉で出湯された溶銑が装入された実鍋の受け渡しを行う第2受け渡しステーションと、前記溶銑処理工場と前記転炉工場との間を移動する運搬台車が発着する第1発着ステーションと、前記第1出湯ステーションと第1受け渡しステーションとの間を移動可能な第1受湯台車と、前記第2出湯ステーションと第2受け渡しステーションとの間を移動可能な第2受湯台車と、前記第1受け渡しステーション及び第2受け渡しステーションと前記第1発着ステーションとの間を移動可能な脱りん炉出湯側クレーンとを備え、
前記転炉工場は、転炉に溶銑を装入する装入ステーションと、前記運搬台車が発着する第2発着ステーションと、前記装入ステーションと第2発着ステーションとの間を移動可能な脱炭炉側クレーンとを備えるものとし、
前記溶銑処理工場での処理として、
前記第1発着ステーションに停止している運搬台車に搭載した空鍋を脱りん炉出湯側クレーンによって吊り上げるステップと、
脱りん炉出湯側クレーンが前記空鍋を吊り上げ後、前記運搬台車を前記第2発着ステーションに向けて移動するステップと、
前記空鍋を吊り上げた脱りん炉出湯側クレーンを第1発着ステーションから第1受け渡しステーションに向けて移動するステップと、
前記空鍋を吊り上げた脱りん炉出湯側クレーンが第1受け渡しステーションに到着後、脱りん炉出湯側クレーンによって空鍋を第1受け渡しステーションの第1受湯台車に据え付けるステップと、
前記空鍋を搭載した第1受湯台車を第1受け渡しステーションから第1出湯ステーションに移動するステップと、
前記空鍋を搭載した第1受湯台車が第1出湯ステーションに到着後、前記空鍋に第1脱りん炉で脱りん処理された溶銑を出湯するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第1受湯台車に空鍋を据え付け後、当該脱りん炉出湯側クレーンを第1受け渡しステーションから第2受け渡しステーションに移動するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第2受け渡しステーションに到着後、前記第2受け渡しステーションに停止している第2受湯台車に搭載した実鍋を吊り上げるステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第2受湯台車の実鍋を吊り上げ後、当該脱りん炉出湯側クレーンを第2受け渡しステーションから第1発着ステーションに移動するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第1発着ステーションに到着後、当該脱りん炉出湯側クレーンが吊り上げている実鍋を前記第1発着ステーションに停止している運搬台車に据え付けるステップと、
前記実鍋を運搬台車に据え付け後、当該運搬台車に搭載した空鍋を脱りん炉出湯側クレーンによって吊り上げるステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが空鍋を吊り上げ後、前記運搬台車を前記第2発着ステーションに向けて移動するステップと、
前記空鍋を吊り上げた脱りん炉出湯側クレーンを第1発着ステーションから第2受け渡しステーションに向けて移動するステップと、
前記空鍋を吊り上げた脱りん炉出湯側クレーンが第2受け渡しステーションに到着後、脱りん炉出湯側クレーンによって空鍋を第2受湯台車に据え付けるステップと、
前記空鍋を搭載した第2受湯台車を第2受け渡しステーションから第2出湯ステーションに移動するステップと、
前記空鍋を搭載した第2受湯台車が到着後、空鍋に第2脱りん炉で脱りん処理された溶銑を出湯するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第2受湯台車に空鍋を据え付け後、当該脱りん炉出湯側クレーンを第2受け渡しステーションから第1受け渡しステーションに移動するステップと、
前記第1脱りん炉にて脱りん処理後の溶銑が装入された実鍋を搭載した第1受湯台車を第1出湯ステーションから第1受け渡しステーションに移動するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第1受け渡しステーションに到着後、前記第1受け渡しステーションに停止している第1受湯台車に搭載した実鍋を吊り上げるステップと、
前記実鍋を吊り上げた脱りん炉出湯側クレーンを前記第1受け渡しステーションから第1発着ステーションに移動するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第1発着ステーションに到着後、当該脱りん炉出湯側クレーンが吊り上げている実鍋を、前記第2発着ステーションから移動し前記第1発着ステーションに停止している運搬台車に据え付けるステップと、
を備えていて、
前記転炉工場での処理として、
前記装入ステーションにて溶銑を装入することで空になった空鍋を吊り上げた脱炭炉側クレーンを、当該装入ステーションから第2発着ステーションに移動するステップと、
前記運搬台車及び脱炭炉側クレーンが前記第2発着ステーションに到着後、吊り上げた空鍋を運搬台車に据え付けるステップと、
前記空鍋を運搬台車に据え付け後、当該運搬台車に搭載した実鍋を脱炭炉側クレーンによって吊り上げるステップと、
前記脱炭炉側クレーンが実鍋を吊り上げ後、当該脱炭炉側クレーンを前記装入ステーションに向けて移動するステップと、
前記脱炭炉側クレーンが実鍋を吊り上げ後、前記運搬台車を前記第1発着ステーションに向けて移動するステップと、
前記脱炭炉側クレーンが前記装入ステーションに到着後、実鍋内の溶銑を転炉に装入するステップと、
を備えていることを特徴とする。
まず、溶銑処理工場と転炉工場とを備えた製鋼工場について説明する。
つまり、本発明では、2基の脱りん炉10が配備された溶銑処理工場1と、転炉11が配備された転炉工場2とが別棟(別建屋)であることが前提とし、溶銑処理工場1で処理した溶銑を、運搬台車4を介して転炉工場2に運搬することとされている。
以下、溶銑処理工場1及び転炉工場2の構成について詳しく説明する。
[溶銑処理工場]
溶銑処理工場1には、2基の脱りん炉10が隣接して横並びに配備されている。以下の説明では、説明の便宜上、2基の脱りん炉10のうち、図1の左側の脱りん炉10を第1脱りん炉10Aとし、図1の右側の脱りん炉10を第2脱りん炉10Bとし、説明を進める。また、第1脱りん炉10Aと第2脱りん炉10Bとをまとめて脱りん炉10ということもある。
払い出しステーション12は、例えば、高炉から出銑した溶銑を運搬する混銑車14内の溶銑を、溶銑鍋15に装入する場所であって、この実施形態では、2つの払い出しステーション12が配備されている。払い出しステーション12には、高炉から延設された軌道26が敷設されており、当該払い出しステーション12には、高炉側から移動してきた混銑車14が到着する。
これによれば、混銑車14内の溶銑を払い出しステーション12にて溶銑鍋15に払い出した後、溶銑鍋15を脱硫ステーション13や除滓ステーションに移動して溶銑の脱硫処理や除滓処理を行うことができる。また、脱硫処理及び除滓処理後の溶銑が装入された溶銑鍋15を脱りん装入側クレーン17にて第1脱りん炉10A又は第2脱りん炉10Bの炉前に移動させ、第1脱りん炉10A又は第2脱りん炉10Bに溶銑鍋15内の溶銑を装入することにより脱りん処理を行うことができる。
さて、第1脱りん炉10Aの炉裏(溶銑出湯側)と、第2脱りん炉10Bの炉裏(溶銑出湯側)とは同じ側であって、第1脱りん炉10Aの炉裏には、脱りん処理後の溶銑を出湯する第1出湯ステーション20Aが配備されている。また、第2脱りん炉10Bの炉裏(溶銑出湯側)には、脱りん処理後の溶銑を出湯する第2出湯ステーション20Bが配備されている。
第1受湯台車21Aや第2受湯台車21Bを転炉11(転炉工場2)まで移動させるとした場合、転炉11に向かった第1受湯台車21Aや第2受湯台車21Bが第1出湯ステーション20Aや第2出湯ステーション20Bに帰ってくるまで溶銑を出湯することができず、運搬効率(物流効率)が低下する。
また、第2受湯台車21Bは、1つの溶銑鍋15(例えば、1つの実鍋或いは1つの空鍋15A)を搭載するもので、第2出湯ステーション20Bの実鍋15Bを第2受け渡しステーション22Bに運搬したり、第2受け渡しステーション22Bで受け取った空鍋15Aを第2出湯ステーション20Bに運搬する。
第1受け渡しステーション22Aは、当該第1受け渡しステーション22Aに位置する脱りん炉出湯側クレーン24と第1脱りん炉10Aとが干渉しない程度に、第1脱りん炉10A(第1出湯ステーション20A)から離れて設置されている。この第1受け渡しステーション22Aは、第1受湯台車21Aに搭載された実鍋15Bを脱りん炉出湯側クレーン24に受け渡したり、脱りん炉出湯側クレーン24が吊っている空鍋15Aを第1受湯台車21Aに据え付ける場所である。即ち、第1受け渡しステーション22Aは、少なくとも溶銑が装入された実鍋15Bの受け渡しを行う場所である。
[転炉工場]
一方、転炉工場2には、溶銑の脱炭処理を行う転炉11が配備されている。溶銑処理工場1における転炉11の基数は、例えば、溶銑処理工場1から持ち込まれる溶銑量等によって定められている。例えば、脱りん炉10での吹錬時間(脱りん処理時間)に対して転炉11での吹錬時間(脱炭処理時間)が長く、脱りん炉10での生産に阻害を与える(例えば、生産性が低下するなど)場合は、転炉11の基数は3基とすることが望ましい。
以上のように、溶銑処理工場1及び転炉工場2を構成することによって、溶銑処理工場1に配備した2基の脱りん炉10で脱りん処理した溶銑を、転炉工場2に運搬して当該転炉工場2にて脱炭処理を行うことができる。特に、本発明では、受湯台車21、脱りん炉出湯側クレーン24、運搬台車4、脱炭炉側クレーン31を効率よく動かすことによって、溶銑の物流を向上させている。
[溶銑処理工場の操業]
次に、第1受湯台車21A、第2受湯台車21B、脱りん炉出湯側クレーン24、運搬台車4及び脱炭炉側クレーン31の動きを中心に溶銑処理工場1及び転炉工場2の操業について説明する。
図2(a)では、第1発着ステーション23に停止している運搬台車4Bに搭載した空鍋15Aを脱りん炉出湯側クレーン24を吊り上げている状態を示している。この状況下では、第1発着ステーション23に停止している運搬台車4Bには、第1脱りん炉10Aで出湯した溶銑が装入された実鍋15Bが既に搭載されている。また、第2出湯ステーション20Bでは、第2受湯台車21Bに搭載した空鍋15Aに溶銑を出湯している。また、第1受け渡しステーション22Aには溶銑鍋15を搭載していない第1受湯台車21Aが停止している。
また、脱りん炉出湯側クレーン24が運搬台車4Bに搭載した空鍋15Aの吊り上げが終了すると、この空鍋15Aを吊った状態で脱りん炉出湯側クレーン24は、第1発着ステーション23から第1受け渡しステーション22Aに向けて移動する。
[転炉工場の操業]
図7は、転炉工場2における脱炭炉側クレーン31及び運搬台車4の動作をまとめたものである。
図7(a)に示すように、実鍋15Bを搭載した運搬台車4が第2発着ステーション32に到着する頃、装入ステーション30に位置する脱炭炉側クレーン31は実鍋15Bの溶鋼を装入することが完了していて、当該装入ステーション30にて溶銑を装入することで空になった空鍋15Aを吊り上げた状況にある。脱炭炉側クレーン31は、吊っている実鍋15Bが空鍋15Aになると、運搬台車4が第2発着ステーション32に到着するのと同時、或いは、運搬台車4が第2発着ステーション32に到着する前に、装入ステーション30から第2発着ステーション32に移動する。
図7(c)に示すように、脱炭炉側クレーン31が空鍋15Aを運搬台車4に据え付け後、運搬台車4に搭載した実鍋15Bを吊り上げる。即ち、実鍋15Bを運搬台車4の空きスペースに据え付け後、脱炭炉側クレーン31を空きスペースに隣接する運搬台車4の実鍋15B搭載スペースに移動させ、運搬台車4の実鍋15B搭載スペースにある実鍋15Bを脱炭炉側クレーン31によって吊り上げる。
図7(e)に示すように、実鍋15Bを吊った脱炭炉側クレーン31が装入ステーション30に到着後、実鍋15B内の溶銑を転炉11に装入する。空鍋15Aが搭載された運搬台車4は、溶銑処理工場1へと帰って行く。その後、実鍋15Aを搭載した運搬台車4が到着し、図7(a)の状況となる。すなわち、図7(a)〜図7(e)までが、脱炭炉側クレーン31及び運搬台車4の溶銑処理工場1における1サイクルの操業であり、当該溶銑処理工場1では、上述した動作を受湯台車21、脱りん炉出湯側クレーン24及び運搬台車4が繰り返し行う。
この場合、例えば、第1発着ステーション23から第2発着ステーション32に向かう運搬台車4は軌道3を直進し、第2発着ステーション32から第1発着ステーション23に向かう運搬台車4は、第1分岐軌道3Cを通過することで、両者の運搬台車4をすれ違うことができるようにする。或いは、逆に、第1発着ステーション23から第2発着ステーション32に向かう運搬台車4は第1分岐軌道3Cを通過し、第2発着ステーション32から第1発着ステーション23に向かう運搬台車4は、軌道3を直進することで、両者の運搬台車4をすれ違うことができるようにする。つまり、2台の運搬台車4のうち、第1発着ステーション23から第2発着ステーション32に向かう運搬台車4と、第2発着ステーション32から第1発着ステーション23に向かう運搬台車とのどちらか一方は分岐軌道3Cを走行(移動)することで互いの運搬台車がすれ違うようにする。
図9の変形例をまとめると、軌道3には、当該軌道3から分岐して第1発着ステーション23又は第2発着ステーション32のいずれかに入る第2分岐軌道3D、3Eを敷設する。そして、第1発着ステーション23から第2発着ステーション32に向かう運搬台車4と、第2発着ステーション32から第1発着ステーション23に向かう運搬台車4とのどちらか一方は分岐軌道3D、3Eを走行(移動)することで互いの運搬台車4をすれ違いできるようにする。
一方、例えば、運搬台車4に1本の溶銑鍋15しか搭載できない場合は、転炉工場2で転炉11に装入が完了した空鍋15Aを積載した運搬台車4が溶銑処理工場1に帰ってくるまで、出湯ステーション20に溶銑を受けるための空鍋15Aを準備することができず、脱りん炉10は空鍋15Aの到着待ちのため出湯が開始できず、脱りん炉10の生産が阻害されることになる。また、運搬台車4に1本の溶銑鍋15しか搭載できない場合は、運搬台車4に積載された空鍋15Aを脱りん炉出湯側クレーン24で吊上げた後、脱りん炉出湯側クレーン24を運搬台車4上から退避させ、脱りん炉10で溶銑を受湯した実鍋15Bを別の脱りん炉出湯側クレーン24を使用して運搬台車4に据付けることによって、溶銑鍋15の運搬時間を短縮することができるものの、脱りん炉出湯側クレーン24が退避する時間が必要なことに加え、操業スケジュールが非常に過密となり、生産性を向上させることが難しくなる。
[ガントチャート]
図10〜22は、本発明である「2基の脱りん炉10を備えた溶銑処理工場1及び転炉工場2における溶銑の運搬方法」で操業を行った実施例のガントチャートと、本発明とは異なる方法で操業を行った比較例のガントチャートとを示したものである。
図18のガントチャートは、溶銑処理工場1と転炉工場2とを結ぶ軌道3を図1のように2本とし、運搬台車4には2本の溶銑鍋15を搭載できるようにしたうえで脱りん炉の炉裏には2基の脱りん炉出湯側クレーン24を設置した場合の結果を示したものである。
溶銑処理工場1は、脱りん炉10を2基保有するものとした。なお、溶銑処理工場1内に混銑車14で運搬してきた溶銑を溶銑鍋15に払出す払出設備や脱硫処理設備、スラグを除さい可能な除滓設備などがあってもよいが、脱炭処理を行う転炉11は存在しない。
転炉工場2は、脱炭処理を行う転炉11を有するものとした。溶銑処理工場1には、溶鋼処理設備などの設備があってもよいが、脱りん処理を行う脱りん炉10は存在しない。
脱りん処理後の溶銑温度は、溶銑を溶銑鍋に出湯時に測定した。脱りん処理後の溶銑温度は、1280〜1320℃とした。
転炉の装入する溶銑成分は、脱りん10の吹錬後の溶銑成分と同じものを使用した。転炉の装入時の溶銑温度は、脱りん処理後の溶銑温度に、出湯後から転炉に装入されるまでの時間の溶銑温度降下量を計算して算出した。転炉の装入時の溶銑温度は、1260〜1310℃とした。転炉の吹錬後の溶鋼成分は、製造する鋼種別の規格目標となるように調整する。溶鋼のうち[C]は、サブランスを使用して測定し、[P]、Si、Mnは、スパーク放電発光分析法(カントバック法)で測定した。転炉での吹錬後の[C]は、0.001〜1.1質量%とした。
運搬台車4は、溶銑処理工場1と転炉工場2間の溶銑鍋15を積載して運搬するもので、台車の定格加重は360ton、台車は連結が可能である。また、運搬台車4は、機関車により牽引されて溶銑処理工場1と溶銑処理工場1を移動する。なお、運搬台車4及び機関車は有人でも無人でもよい。走行時間は略一定である。
次にガントチャートにおける各項目について説明する。
脱りん炉サイクルタイムは、脱りん処理の1チャージ当たりの処理時間のことであり、スクラップ装入(SC)、溶銑装入(装入)、脱りん吹錬(吹錬)、出湯前作業(前作)、出湯、排さい処理(除滓)の一連の時間合計である。脱りん炉サイクルタイムにおいて平均サイクルタイムは24min、最小サイクルタイムは22min、最大サイクルタイムは31minであった。
スクラップ装入とは、脱りん炉10にスクラップ・銑鉄などを装入することで、脱りん炉10に近接するスクラップピットに備蓄されたスクラップをリフティングマグネットクレーンを使用してスクラップシュートに積み込み、スクラップシュート内のスクラップをスクラップ装入クレーン19を使用して脱りん炉10内に装入する。製鉄所では、製鉄所内で発生したスクラップや地金を転炉11もしくは、脱りん炉10で使用することは一般的である。製造する鋼種によっては、スクラップを投入しない場合も稀にあるが、実施例では、脱りん炉10でスクラップを使用する場合を規定する。
脱りん処理前の溶銑中Si濃度[Si]や溶銑中のP濃度[P]が高い場合、或いは、溶銑温度が低い場合や溶銑量が多い場合は、脱りん吹錬に必要な酸素量が増加するため、脱りん吹錬の時間が延長する。脱りん吹錬中に大規模なスラグフォーミングが発生する場合は、脱りん吹錬を一時中断するため、脱りん吹錬の時間が長くなる場合がある。
出湯とは、脱りん吹錬が終了した溶銑を受湯台車21上の溶銑鍋15内に排出することで、脱りん炉10を傾動させ、脱りん炉10の炉腹部の出湯孔から溶銑を排出する。炉体の傾動角度に併せて、受湯台車21を走行させて溶銑鍋15の位置を調整する。
排滓とは、出湯終了後に脱りん炉10内に残留した脱りんスラグをスラグポットに排出することで、出湯の位置とは逆方向に脱りん炉10を傾動させてスラグを排出する。脱りんスラグは残留すると、次チャージ時に脱りん処理で複りんするため、毎回排滓を実施する。
溶銑鍋運搬サイクルタイムとは、溶銑鍋15を脱りん炉10に供給するサイクルタイムのことで、当該チャージの溶銑が入った溶銑鍋15を脱りん炉10の出湯位置(出湯ステーション20)に運搬完了後から、次のチャージの溶銑鍋15を脱りん炉10の出湯位置(出湯ステーション20)に運搬するまでの時間のことである。
転炉サイクルタイムとは、転炉11での1チャージ当たりの処理時間のことで、スクラップ装入(SC)、溶銑装入(装入)、脱炭吹錬(吹錬)、調質、出鋼、排滓、スラグコーティングの一連の連続した時間合計のことである。転炉サイクルタイムの平均サイクルタイムは30min、最小サイクルタイムは22min、最大サイクルタイムは46minであった。
出鋼の最小時間は4min、平均時間は5min、最大時間は7minであった。出鋼する溶銑量が少ないほど、出湯時間が短くなる。また、転炉の出鋼孔スリーブの使用回数が多くなると出湯スリーブの孔径が溶銑により大きくなるため、出頭時間が短縮する。
次に、図10〜22のガントチャートに示した文字や記号について説明する。
また、「実吊上」とは、脱りん炉出湯側クレーン25等のクレーンを用いて受湯台車21や運搬台車4に据え付けている実鍋を吊り上げることを示している。「空据付」とは、脱りん炉出湯側クレーン25等のクレーンを用いて受湯台車21や運搬台車4に空鍋の据え付けることを示している。「走」とは受湯台車21が走行したことを示している。
実施例1−1では、脱りん炉サイクルが12分、溶銑鍋運搬サイクルは11分であった。実施例1−2では、脱りん炉サイクルが11分、溶銑鍋運搬サイクルは11分であった。実施例1−3では、脱りん炉サイクルが15.5分、溶銑鍋運搬サイクルは14分であった。実施例1−4では、脱りん炉サイクルが15.5分、溶銑鍋運搬サイクルは14分であった。
一方、比較例1−1では、脱りん炉サイクルが12分、溶銑鍋運搬サイクルは18.5分であった。比較例1−2では、脱りん炉サイクルが11分、溶銑鍋運搬サイクルは19分であった。比較例1−3では、脱りん炉サイクルが15.5分、溶銑鍋運搬サイクルは23分であった。比較例1−4では、脱りん炉サイクルが15.5分、溶銑鍋運搬サイクルは19分であった。上述した比較例では、いずれも溶銑鍋運搬サイクルが脱りん炉サイクルよりも大きくなっており、脱りん炉の生産が阻害された。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
2 転炉工場
3 軌道
4 運搬台車
10 脱りん炉
10A 第1脱りん炉
10B 第2脱りん炉
11 転炉
12 払い出しステーション
13 脱硫ステーション
14 混銑車
15 溶銑鍋
15A 空鍋
15B 実鍋
16 軌道
17 装入側クレーン
18 スクラップヤード
19 スクラップ装入クレーン
20A 第1出湯ステーション
20B 第2出湯ステーション
21A 第1受湯台車
21B 第2受湯台車
22A 第1受け渡しステーション
22B 第2受け渡しステーション
23 第1発着ステーション
24 脱りん炉出湯側クレーン
25 運搬台車
30 装入ステーション
31 脱炭炉側クレーン
32 第2発着ステーション
Claims (3)
- 2基の脱りん炉が配備された溶銑処理工場と、転炉が配備された転炉工場とが別棟とされた製鋼工場であって、
前記溶銑処理工場は、第1脱りん炉の炉裏側に脱りん処理後の溶銑を出湯する第1出湯ステーションと、第2脱りん炉の炉裏側に脱りん処理後の溶銑を出湯する第2出湯ステーションと、第1脱りん炉で出湯された溶銑が装入された実鍋の受け渡しを行う第1受け渡しステーションと、第2脱りん炉で出湯された溶銑が装入された実鍋の受け渡しを行う第2受け渡しステーションと、前記溶銑処理工場と前記転炉工場との間を移動する運搬台車が発着する第1発着ステーションと、前記第1出湯ステーションと第1受け渡しステーションとの間を移動可能な第1受湯台車と、前記第2出湯ステーションと第2受け渡しステーションとの間を移動可能な第2受湯台車と、前記第1受け渡しステーション及び第2受け渡しステーションと前記第1発着ステーションとの間を移動可能な脱りん炉出湯側クレーンとを備え、
前記転炉工場は、転炉に溶銑を装入する装入ステーションと、前記運搬台車が発着する第2発着ステーションと、前記装入ステーションと第2発着ステーションとの間を移動可能な脱炭炉側クレーンとを備えるものとし、
前記溶銑処理工場での処理として、
前記第1発着ステーションに停止している運搬台車に搭載した空鍋を脱りん炉出湯側クレーンによって吊り上げるステップと、
脱りん炉出湯側クレーンが前記空鍋を吊り上げ後、前記運搬台車を前記第2発着ステーションに向けて移動するステップと、
前記空鍋を吊り上げた脱りん炉出湯側クレーンを第1発着ステーションから第1受け渡しステーションに向けて移動するステップと、
前記空鍋を吊り上げた脱りん炉出湯側クレーンが第1受け渡しステーションに到着後、脱りん炉出湯側クレーンによって空鍋を第1受け渡しステーションの第1受湯台車に据え付けるステップと、
前記空鍋を搭載した第1受湯台車を第1受け渡しステーションから第1出湯ステーションに移動するステップと、
前記空鍋を搭載した第1受湯台車が第1出湯ステーションに到着後、前記空鍋に第1脱りん炉で脱りん処理された溶銑を出湯するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第1受湯台車に空鍋を据え付け後、当該脱りん炉出湯側クレーンを第1受け渡しステーションから第2受け渡しステーションに移動するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第2受け渡しステーションに到着後、前記第2受け渡しステーションに停止している第2受湯台車に搭載した実鍋を吊り上げるステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第2受湯台車の実鍋を吊り上げ後、当該脱りん炉出湯側クレーンを第2受け渡しステーションから第1発着ステーションに移動するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第1発着ステーションに到着後、当該脱りん炉出湯側クレーンが吊り上げている実鍋を前記第1発着ステーションに停止している運搬台車に据え付けるステップと、
前記実鍋を運搬台車に据え付け後、当該運搬台車に搭載した空鍋を脱りん炉出湯側クレーンによって吊り上げるステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが空鍋を吊り上げ後、前記運搬台車を前記第2発着ステーションに向けて移動するステップと、
前記空鍋を吊り上げた脱りん炉出湯側クレーンを第1発着ステーションから第2受け渡しステーションに向けて移動するステップと、
前記空鍋を吊り上げた脱りん炉出湯側クレーンが第2受け渡しステーションに到着後、脱りん炉出湯側クレーンによって空鍋を第2受湯台車に据え付けるステップと、
前記空鍋を搭載した第2受湯台車を第2受け渡しステーションから第2出湯ステーションに移動するステップと、
前記空鍋を搭載した第2受湯台車が到着後、空鍋に第2脱りん炉で脱りん処理された溶銑を出湯するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第2受湯台車に空鍋を据え付け後、当該脱りん炉出湯側クレーンを第2受け渡しステーションから第1受け渡しステーションに移動するステップと、
前記第1脱りん炉にて脱りん処理後の溶銑が装入された実鍋を搭載した第1受湯台車を第1出湯ステーションから第1受け渡しステーションに移動するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第1受け渡しステーションに到着後、前記第1受け渡しステーションに停止している第1受湯台車に搭載した実鍋を吊り上げるステップと、
前記実鍋を吊り上げた脱りん炉出湯側クレーンを前記第1受け渡しステーションから第1発着ステーションに移動するステップと、
前記脱りん炉出湯側クレーンが第1発着ステーションに到着後、当該脱りん炉出湯側クレーンが吊り上げている実鍋を、前記第2発着ステーションから移動し前記第1発着ステーションに停止している運搬台車に据え付けるステップと、
を備えていて、
前記転炉工場での処理として、
前記装入ステーションにて溶銑を装入することで空になった空鍋を吊り上げた脱炭炉側クレーンを、当該装入ステーションから第2発着ステーションに移動するステップと、
前記運搬台車及び脱炭炉側クレーンが前記第2発着ステーションに到着後、吊り上げた空鍋を運搬台車に据え付けるステップと、
前記空鍋を運搬台車に据え付け後、当該運搬台車に搭載した実鍋を脱炭炉側クレーンによって吊り上げるステップと、
前記脱炭炉側クレーンが実鍋を吊り上げ後、当該脱炭炉側クレーンを前記装入ステーションに向けて移動するステップと、
前記脱炭炉側クレーンが実鍋を吊り上げ後、前記運搬台車を前記第1発着ステーションに向けて移動するステップと、
前記脱炭炉側クレーンが前記装入ステーションに到着後、実鍋内の溶銑を転炉に装入するステップと、
を備えている
ことを特徴とする2基の脱りん炉を備えた溶銑処理工場及び転炉工場における溶銑の運搬方法。 - 前記第1発着ステーションと前記第2発着ステーションとの間に1本の軌道が敷設されており、前記軌道には、当該軌道から分岐して再び当該軌道に接続する第1分岐軌道が敷設されており、前記第1発着ステーションから第2発着ステーションに向かう運搬台車と、前記第2発着ステーションから第1発着ステーションに向かう運搬台車とのどちらか一方は前記第1分岐軌道を移動することで互いの運搬台車がすれ違うことを特徴とする請求項1に記載の2基の脱りん炉を備えた溶銑処理工場及び転炉工場における溶銑の運搬方法。
- 前記第1発着ステーションと前記第2発着ステーションとの間に1本の軌道が敷設されており、前記軌道には、当該軌道から分岐して前記第1発着ステーション又は第2発着ステーションのいずれかに入る第2分岐軌道が敷設されており、前記第1発着ステーションから第2発着ステーションに向かう運搬台車と、前記第2発着ステーションから第1発着ステーションに向かう運搬台車とのどちらか一方は前記第2分岐軌道を移動することで互いの運搬台車がすれ違うことを特徴とする請求項1に記載の2基の脱りん炉を備えた溶銑処理工場及び転炉工場における溶銑の運搬方法。
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