JP4520659B2 - 転炉操業法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転炉にて主として同一炉方式による脱燐精錬および通常転炉操業との双方に適用できる転炉操業法および溶銑鍋ならびに鍋台車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トーピードカーを用いて行われていた溶銑予備処理の設備集約を目的として、転炉で溶銑予備処理を行う技術が注目されてきている。この転炉による溶銑予備処理として、転炉1基で脱燐吹錬および脱炭吹錬を行う方法があった(例えば、S53の鉄鋼協会第54・55回西山記念講座テキストP129〜130)。この転炉による溶銑予備処理の具体的な方法としては、例えば、▲1▼特公平04−33845、▲2▼特開平06−41624、▲3▼特開平11−181512がある(これらの技術内容と欠点は後述する)。
【0003】
ところで、転炉による溶銑予備処理方法による総合的な課題として、転炉で溶銑を脱燐吹錬した後、その溶銑を出湯すると共に、スラグを排滓し、その後、転炉に溶銑を再装入し、脱炭吹錬し、再度、溶鋼の出鋼およびスラグの排滓を行うので、スラグ排滓に伴う熱ロスが大きく、かつ、排滓作業に要する時間のため、転炉工程でのサイクルタイムの増長による生産性の低下という問題があった。
【0004】
また前述の、▲1▼特公平04−33845、▲2▼特開平06−41624、▲3▼特開平11−181512には、次の欠点があった。
【0005】
▲1▼特公平04−33845の技術内容とその短所;
この技術は、脱燐炉と脱炭炉とを別々に専用炉として設けて、2基の転炉でそれぞれ脱燐と脱炭を行うもので、すなわち、脱燐炉の炉前に開孔部を設けて再装入用の注湯鍋の循環運搬経路を形成することにより、[0003]記載の著しい温度低下等の欠点を解消しようとするものである。しかし、この従来例では、
(a)脱炭スラグを脱燐吹錬にリサイクルするには、設備を要し、熱ロスが大きい。
(b)脱燐炉・脱炭炉それぞれの時間差によるロスタイムが発生する。
(c)脱燐操業と通常操業とを切りかえる際には、再装入鍋を台車以外の場所に仮置きする必要がある。このため、予備処理比率が低い場合には、熱ロス大、また、クレーンハンドリング負荷が大である。
(d)脱燐処理後の溶銑を脱炭のため別転炉に装入した後の空鍋を返送するための棟間台車が無いと適用できない。
(e)注湯鍋が造塊棟を経由するため、造塊棟のクレーンを使用する必要が有り、転炉から連鋳間の物流を阻止することになる。また、造塊棟のクレーンの稼働率次第では、適用できない、
等の問題があった。
【0006】
▲2▼特開平06−41624の内容とその短所;
この技術も、脱燐炉と脱炭炉とを別々に専用炉として設けて、2基の転炉でそれぞれ脱燐と脱炭を行うもので、すなわち、前記特公平04−33845の欠点を補うべく、再送入後の再装入鍋を脱燐炉前の開口部から戻す方法を提示しているが、なお、特公平04−33845とほぼ同様に、以下の(a)〜(e)欠点を有する。すなわち、この従来例でも、
(a)脱炭スラグを脱燐吹錬にリサイクルするには、設備を要し、熱ロスが大きい。
(b)脱燐炉・脱炭炉それぞれの時間差によるロスタイムが発生する。
(c)脱燐操業と通常操業とを切りかえる際には、再装入鍋を台車以外の場所に仮置きする必要がある。このため、予備処理比率が低い場合には、熱ロス大、また、クレーンハンドリング負荷が大である。
(d)前記に加えて、脱燐処理後の脱燐溶銑を脱炭のため別転炉に装入した後の空鍋を返送するための棟間台車が無いと適用できない。
(e)さらに、注湯鍋が造塊棟を経由するため、造塊棟のクレーンを使用する必要が有り、転炉から連鋳間の物流を阻止することになる、
等の問題があった。
【0007】
▲3▼特開平11−181512の技術内容とその短所;
この技術は、本出願人の先願に係り、特開平06−41624を改良する技術として提案されている。この従来技術の概要を図7〜図10によって説明する。
なお、図7、図8は従来例、図9、図10は比較例を示す。
【0008】
この従来技術は、同一転炉において、脱燐吹錬と脱炭吹錬を効率よく行うものである。すなわち、図7に示すように、▲1▼転炉1において主に脱燐吹錬を行い、▲2▼脱燐吹錬の終了後、傾動した転炉1の出鋼孔から転炉内脱燐溶銑を再装入鍋台車4に載置された再装入鍋2(このとき当該再装入鍋2は、図7の右側に移動している)に出湯する。つぎに、▲3▼脱燐溶銑出湯後の転炉1内のスラグを排滓鍋台車3aに載置した排滓鍋3に排滓し、▲4▼前記▲2▼で転炉1から排出された脱燐溶銑を収納している再装入鍋2を図示左側の位置に移動させ、再装入鍋2を開孔部5を通して吊上げて、再装入鍋2の脱燐溶銑をもう一度、前記スラグ排出後の転炉1に再装入し、▲5▼主に脱炭吹錬を行い、▲6▼前記脱炭吹錬の終了後、転炉内溶鋼を溶鋼鍋台車6に載っている溶鋼鍋7に出鋼し、▲7▼前記溶鋼出鋼後の転炉内スラグを残したまま次チャージの溶銑を装入し、主に脱燐吹錬を行うものである。(前記▲1▼〜▲7▼の操業フローを図8に示す)
【0009】
前記の操業法を実施する製鋼設備は、烏口9を有し溶銑を受湯する専用の再装入鍋2と溶鋼を受鋼する溶鋼鍋7の2種類の鍋および、各鍋を載置する再装入鍋台車4と溶鋼鍋台車6の2台の台車を備えている。このように、前記製鋼設備は、脱炭製錬後の溶鋼を受鋼する鍋および鍋台車と、該鍋台車とは別に脱燐精錬後の溶湯を受湯する専用の鍋および台車を備え、また、該専用鍋を該専用台車に搭載した時の該専用鍋の上端を、転炉が直立した時の転炉炉体下端よりも低く設けている。
【0010】
特開平11−181512によると、特開平06−41624(a)、(b)、(c)の欠点が解消されていて、再装入鍋(受湯鍋)は、再装入時以外は、再装入鍋台車4上にあり、鍋物流がスムーズであり、クレーンの負荷も少ないが、なお下記の欠点がある。
【0011】
(1)溶鋼鍋台車6とは別に、転炉1に溶銑を再装入する再装入鍋2用の再装入鍋台車4を必要とする。このため、設備費用が増大し、また2台の台車4、6が転炉1の炉下(転炉作業床8の下部)にあるため、装入側・造塊側両方からの給電が必要となり、設備構成が複雑になる。つまり、転炉作業床8の下部での給電ケーブル焼損防止等の特別対策が必要となる。また、操業的にも運転制御が複雑となる。すなわち、複数台の台車4、6の台車同士の衝突防止・連動制御などが必要となり、また、転炉1の炉下清掃などの障害がおきやすい。すなわち、炉下のスラグ地金清掃のためのブルドーザーの炉下への進入との干渉が起き易い等の制約がある。
【0012】
(2)また、専用台車方式であれば、脱燐操業と通常操業との繰り返しないし、混合操業時も溶湯鍋を仮置きさせる必要は無いが、専用の再装入鍋の待機による熱ロスは生じる。
【0013】
(3)他方、特開平11−181512の利点を生かしつつ、前記の欠点を解消するため、再装入鍋台車4を使わず溶鋼鍋台車6のみとし、この1台の溶鋼鍋台車6に再装入鍋2と溶鋼鍋7を交互に載置し、移動させることが考えられる。しかし、1台の溶鋼鍋台車6を用いて、これに再装入鍋2と溶鋼鍋7を交互に載せ下すようにすると、前記▲1▼〜▲7▼の工程を繰り返す予備処理連続操業時において、少なくとも脱炭吹錬が終わる時点までに溶鋼鍋7を溶鋼鍋台車6載置する必要があり、再装入鍋2と干渉する事態が生じる。
【0014】
前記の同一転炉への溶銑戻し方式で、かつ再装入鍋用と溶鋼鍋用の台車を1台の台車で兼用して実施した場合の操業フロー図を図9、図10に示す。この方式には、鍋の仮置きを装入棟で行う方法(図9)と、造塊棟で行う方法(図10)がある。図9、図10の何れの場合にも、溶鋼鍋台車に溶鋼鍋と再装入鍋の台車を兼用させるには、再装入鍋から溶銑を転炉1に再装入した後に、この再装入鍋は、一旦別の場所に仮置きしておき、脱炭吹錬・出鋼完了後に溶鋼鍋が溶鋼鍋台車から吊上げられて、当該溶鋼鍋台車が空いた後に、前記再装入鍋をこの溶鋼鍋台車に戻す操業となる。しかし、この方法では、再装入鍋2を吊上げ、吊り下すためのクレーンの負荷が大で、場合によっては、クレーンの制約で生産性が阻害される。
【0015】
さらに、再装入鍋(受湯鍋)が再装入専用であるため、溶銑脱燐操業の比率が低いか、溶銑脱燐操業を中断した間隔が長いと再装入鍋の温度が低下し、地金付きなどの問題が起き易い。
【0016】
さらに、前述の図9に示す、再装入鍋の仮置きを装入棟で行う操業方法で、かつ溶銑棟にクレーンが1台しか設置されていない場合には、溶銑装入を終わった溶鋼鍋を受銑設備に戻し、仮置きしてある再装入鍋を吊上げて、台車に吊り下ろすには10分程度掛かり、この間に転炉側では脱燐吹錬が終了している。造塊棟で再装入鍋を仮置きする場合も同様の現象を生じ、脱炭の終わった転炉での溶鋼鍋の出鋼待ちが起きる。また、クレーンを2台使う場合でもクレーン稼働率が高いと待ちを生じる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、特開平11−181512に開示の技術が、再装入鍋(受湯鍋)と溶銑装入鍋の2つの鍋と、再装入鍋台車と溶鋼鍋台車の2台の台車を具備した操業法であるので、この操業方法をさらに簡潔化できないか研究を重ねた。その結果、再装入鍋と溶銑装入鍋を一種類の鍋で兼用させると共に、台車も兼用鍋用と溶鋼鍋用の1台の台車で兼用させて操業できれば、特開平11−181512の製錬設備を更に簡潔化できるとの知見を得た。すなわち、そうすることで、従来の溶鋼鍋や再装専用鍋の仮置き工程を省略した方法を実現するものである。
【0018】
本発明は、前記の知見に基づき、かつ前記の諸問題を解決した、新規な転炉操業法および、それに用いる溶銑鍋を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため、本発明に係る転炉操業法およびそれに用いる溶銑鍋は、次のように構成する。
【0020】
第1の発明は、転炉に少なくとも溶銑装入鍋にて溶銑を装入して主に脱燐吹錬を行い、脱燐吹錬の終了後、転炉内脱燐溶銑を台車に載置した再装入鍋(受湯鍋)に出銑し、溶銑排出後の転炉内のスラグを排滓鍋に排滓し、前記再装入鍋に出銑した脱燐溶銑をスラグ排滓後の前記転炉に再装入し、主に脱炭吹錬を行い、脱炭吹錬の終了後、転炉内溶鋼を台車に載置した溶鋼鍋に出鋼する転炉操業法において、前記溶銑装入鍋と再装入鍋とを一種類の兼用鍋で兼用させ、かつ兼用鍋と前記溶鋼鍋の両者を載置可能な1台の台車を設け、兼用鍋載置、脱燐溶銑出銑、スラグ排滓、脱燐溶銑再装入のための兼用鍋吊上げのタイミングに合わせて、前記1台の台車を、前記兼用鍋を載置した状態で、兼用鍋載置位置、脱燐溶銑出銑位置、スラグ排滓鍋と干渉しない位置、兼用鍋吊上げを行う位置の各位置へ、前記転炉の炉下を移動させ、また、前記1台の台車を、溶鋼鍋を載置した状態で、出鋼位置、造塊側の溶鋼鍋載置位置、吊上げ位置、溶鋼鍋保温位置の各位置へ移動させ、前記各位置へ、前記兼用鍋および前記溶鋼鍋の搬送を行う方法であって、前記溶銑ないし脱燐溶銑を、前記兼用鍋から前記転炉へ装入する際に、前記兼用鍋を水平まで傾けた際の烏口先端を、直立より50°前傾した前記転炉の炉内まで到達させて装入することを特徴とする。
【0021】
第2の発明は、第1の発明の転炉操業法において、前記兼用鍋が、トーピードカーまたは混銑炉から当該兼用鍋に溶銑を受銑できる大きさであること、転炉下の台車に載置するための支え座を有すること、当該台車に兼用鍋を載置した状態における当該兼用鍋の上端が前記の転炉が直立した状態における当該転炉の下端よりも低いこと、1回の脱燐吹錬の脱燐溶銑全部を受湯できる内容積を有すること、クレーンで吊上げまた傾倒させるためのトラニオンを有する構造の溶銑鍋を用いることを特徴とする。
【0022】
第3の発明は、第2の発明の転炉操業法において、前記兼用鍋は、前記台車に兼用鍋を載置した状態における当該兼用鍋の上端が前記の転炉を傾転させた状態における当該転炉の下端よりも低い構造の溶銑鍋を用いることを特徴とする。
【0023】
【作用】
本発明によると、溶銑予備処理方式にして、かつ主に同一転炉への溶銑戻し方式において、溶銑装入鍋と再装入鍋(受湯鍋)を兼ねる兼用鍋と溶鋼鍋の何れかを乗せた1台の台車を用いて操業することことを可能としたので、(a)、特開平11−181512の狙う、「低熱ロスでのスラグリサイクル」、「時間差によるロスタイム防止」のメリットを承継しつつ、(b)、クレーン負荷増のミニマム化、(c)、専用台車増設によるデメリット回避、(d)、予備処理比率が低い工場でも、鍋による熱ロスミニマムで予備処理操業が可能な方法である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0025】
まず、本発明の構成要因を説明すると、下記(1)、(2)、(3)のとおりである。
【0026】
(1)本発明では、通常の転炉への溶銑装入と、脱燐吹錬後の再装入とを同一の鍋(兼用鍋)で行うが、そのためには、兼用鍋が次の(a)〜(c)の条件を満たすことが必要である。すなわち、
【0027】
(a)トーピードカー、混銑炉等から当該兼用鍋に溶銑を受銑できること。通常は、鍋底でえい鍋(満載状態の鍋)を平置きできればこの要因を満たす。あるいは、その他の構造であれば、その要因を満たすことである。
【0028】
(b)第1に、脱燐後に転炉から脱燐銑を兼用鍋が受銑できること。すなわち、兼用鍋用台車に鍋を載置できること(通常は、トラニオンないしその下の支え座にてえい鍋を支持できればこの要因を満たす)。第2に、兼用鍋台車に鍋を載置した状態で溶湯の入った転炉の炉下を通過できること。これは特開平11−181512に明示されるように、転炉が直立した状態でその下を鍋を載置した兼用鍋台車が通過できる必要は無く、溶銑が入った状態で溶湯がこぼれない範囲であればよい通常は、転炉が炉前に倒炉した状態までなら傾動しても溶湯がこぼれない。その状態での転炉の炉下を通過できればよい。特開平11−181512のように炉直立下で通過できれば更によい。
【0029】
この点をさらに説明すると、新設の工場では、「作業しやすい転炉装入用の鍋、すなわち、鍋高さないし鳥口高さ大」と「当該鍋が直立状態の転炉の炉下を通過すること」の両立は容易である。既存の工場では、転炉炉底から地面(GL)の高さが制約され、両立が困難なことが多い。そこで、実験検討を行った結果、次の条件を満たせば溶銑装入と脱燐銑受銑および再装入が可能と判明した。つまり、直立より50°前傾した転炉の炉口下側の水平位置より、水平まで傾けた当該鍋の鳥口先端が炉内まで到達していること。このような幾何学的相関を満たせば、どの転炉においても一般的に、溶銑ないし脱燐銑装入初期の鍋傾動開始後の溶湯の落ち始めも、末期の鍋を90°以上傾けたときも、共にこぼさず装入が可能なことが判明した。
【0030】
前述のように転炉直立で、鍋が炉下を通過する必要はなく、前傾90°等角度を問わず転炉炉下を通過できればよい。脱燐銑受銑後に炉前側の吊上げ位置に向けて炉下を通過する際には、排滓直後で転炉はおのずと90°等の状態に近く、時間ロスを生じない。また、受銑前に炉前側の鍋載置から受銑位置に移動する際は、直立通行可でなければ、脱燐吹錬後に通過可能な角度まで転炉を傾転させて鍋を通過させればよく、その結果通過可能な角度までの傾転・その後の傾転戻しとの時間ロスを生じるが、鍋を兼用できる効果の方が大である。
【0031】
(2)脱燐吹錬を行った同一の転炉に、当該転炉の脱燐排滓後に脱燐銑を再装入して、脱炭吹錬を行うこと(なお、本発明の主たる狙いは、同一の転炉方式への適用で、この場合に著しい作用効果が発揮され、このため本実施形態では、同一の転炉方式への適用例を示しているが、それ以外にも、本発明を脱燐炉・脱炭炉の2方式にも適用することは吝かでなく、また溶銑装入鍋と再装入鍋の兼用化による熱ロス低減の効果は享受しうるもので、従って、請求項は両方式への適用を含むものである)。
【0032】
(3)前記の兼用鍋に纏わる物流は、次の(a)、(b)、(c)のとおりである。(図5、図6にフロー図を示す)
【0033】
(a)転炉予備処理操業を行う場合には、例えば、「トーピードカー、混銑炉等からの溶銑受銑」→「(必要に応じて)脱硫処理および/または鍋上スラグの除滓」→「転炉への装入」→「溶鋼鍋台車への載置」および「脱燐吹錬」→「脱燐銑受銑」→(「転炉排滓」)→「転炉への再装入」→「次ヒートのための溶銑受銑」(以下繰り返し)となる。(図5参照)
【0034】
(b)通常操業を行う場合には、「トーピードカー、混銑炉からの溶銑受銑」→「(必要に応じて)脱硫処理および/または鍋上スラグの除滓」→「転炉への装入」→「次ヒートのための溶銑受銑」(以下繰り返し)となる。(図6参照)
【0035】
(c)前記(a)と(b)とは、適宜必要に応じて組合せて操業する。例えば、鍋2基以上が適宜(a)、(b)を交互に繰り返すようにすることもできる。
【0036】
本発明は、前記(1)〜(3)の構成要因を全て満足させるように構成している。以下、図1〜図4を参照して説明する。
【0037】
図1は、本発明を実施するに当り、合理的な製鋼設備を模式的に示す配置図、図2は転炉と兼用鍋の構成を示す説明図、図3(A)、(B)、(C)は、転炉への兼用鍋からの溶銑の再装入態様を示す説明図である。
【0038】
本発明の操業法を実施する製鋼設備には、溶銑を転炉に装入する溶銑装入鍋と脱燐銑を受銑する再装入鍋(受湯鍋)を兼ねる兼用鍋12、溶銑棟および造塊棟にあり、台車から兼用鍋および溶湯鍋を吊り上げ、吊り下すクレーン(図示省略する)、および兼用鍋用と溶鋼鍋用の1台の台車13を備えている。
【0039】
図1に示す製鋼設備おいて、転炉作業床8に開孔部5が設けられていると共に、転炉1は、図示実線の直立位置で脱燐吹錬および脱炭吹錬が行われ、図示実線と点線の間の角度に傾動した状態で溶銑、脱燐銑、スクラップ等の装入が行われ、また図示点線と反対側に傾動した状態で兼用鍋12への脱燐銑出銑および溶鋼鍋への出鋼が行われる。また、図2に示すように台車13に載置した兼用鍋12を、トラニオン10にクレーンフック11を引掛けて吊上げ、つぎに、図3(A)、(B)、(C)に示す過程を経て、所定角度傾動した転炉1の炉口15に鳥口9が届くまで兼用鍋12を垂直状態からほぼ水平に曲げ傾けて、兼用鍋12の脱燐溶銑を転炉1に装入する。
【0040】
次に、本発明の操業法を実施する工程を、図5のフロー図を参照して説明する。
[1]転炉に溶銑SC(スクラップ)を装入する。造塊棟クレーンで溶鋼鍋を吊上げた後の鍋無しの台車が造塊棟で待機している。
[2]転炉に溶銑を装入する。つまり、前記鍋無しの台車が装入棟の吊上げ位置で待機していることが望ましい。
[3]溶銑装入が終了したら脱燐吹錬が開始する。兼用鍋は吊り下して台車に載置する。
[4],[5]兼用鍋を載置した台車は、脱燐吹錬末期までに受銑受鋼位置に移動待機している。
[6]脱燐銑の出銑を行う。このとき、台車に載置した前記の兼用鍋に受銑する。
[7]排滓を行う。この間、台車は受銑した兼用鍋を載置したまま排滓が完了するまで待機するか、排滓鍋台車を牽引して排滓作業を行う。
[8]他方、脱燐銑を受銑した兼用鍋を載置した台車は、転炉下を通過して、吊上げ位置に移動する。その次に脱燐銑を収納している兼用鍋を再装入のため、溶銑棟のクレーンで吊り上げる。
[9]転炉に脱燐銑を再装入する。このとき、兼用鍋はクレーンで吊上げられていて、鍋無しの台車は、[8]と同じ吊上げ位置で待機する。
[10]脱燐銑の再装入が終われば脱炭吹錬を開始する。他方、クレーンで吊上げられた兼用鍋は次回の溶銑受銑のため受銑設備に搬送される。
[11]転炉で脱炭吹錬(中期)を行う。このとき、造塊棟の鍋クレーンで吊上げられた溶鋼鍋は脱炭吹錬後の溶鋼受鋼のため造塊棟で待機中の台車に載置される。
[12]台車は溶鋼鍋を載置した状態で受銑受鋼位置に移動し来て、該位置で待機している。
[13]出鋼を行う。つまり、台車に載置した溶鋼鍋に受鋼する。
[14]次ヒートの準備を行う。溶鋼鍋をクレーンで台車から吊上げる。以下、[1]の工程に戻る。
【0041】
前記[1]〜[14]の工程が繰り返されて、本発明の操業法が実施される。
そして、前記操業フロー図に示すように、本発明によると著しく操業がスムーズとなり、クレーンの稼働率も下がる。なお、本発明は既述したように、特開平11−181512が目指す熱ロスの少ないスラグリサイクルを継承することを主たる目的としているので、同一炉戻しを条件としているが、実操業上は、従来技術(特公平04−33845等)のように他の転炉に再装入する方式に適用することも吝かではない。
【0042】
【発明の効果】
本発明によると、溶銑予備処理方式にして、かつ主に同一転炉への溶銑戻し方式において、溶銑装入鍋と脱燐銑の再装入鍋(受湯鍋)を一種類の鍋(兼用鍋)で兼用し、該兼用鍋と溶鋼鍋の両者を交互に載置可能な1台の台車を用い、かつ、兼用鍋と溶鋼鍋の何れかを乗せた状態または何れの鍋も載せない状態で転炉炉下を通過させながら操業することを可能としたので、(a)、特開平11−181512の狙う、「低熱ロスでのスラグリサイクル」、「時間差によるロスタイム防止」のメリットを承継しつつ、(b)、クレーン負荷増のミニマム化、(c)、専用台車増設によるデメリット回避、(d)、予備処理比率が低い工場でも、鍋による熱ロスミニマムで予備処理操業が可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するに当り、合理的な専用炉方式の製鋼設備を模式的に示す配置図である。
【図2】本発明の製鋼設備における転炉と兼用鍋の構成を示す説明図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は、転炉への兼用鍋からの溶銑の装入態様および脱燐銑の再装入態様を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、同一炉方式で、兼用鍋用と溶鋼鍋用の1台の台車を用いて行う操業法を実施する工程を示すフロー図である。
【図5】本発明を適用して転炉予備操業法を実施する工程を示すフロー図である。
【図6】本発明を適用して通常操業法を実施する工程を示すフロー図である。
【図7】従来の再装入用の専用鍋および該専用鍋用台車方式の製鋼設備を模式的に示す配置図である。
【図8】図7に示す製鋼設備において、再装入鍋用および溶鋼鍋用の2台の台車を用いて行う操業法のフロー図である。
【図9】本発明の比較例として、再装入鍋および溶鋼鍋と、1台の鍋用台車を用いて装入棟側で再装入鍋の仮置きを行う操業法のフロー図である。
【図10】本発明の比較例として、再装入鍋および溶鋼鍋と、1台の鍋用台車を用いて造塊棟側で再装入鍋の仮置きを行う操業法のフロー図である。
【符号の説明】
1 転炉
2 再装入鍋
3 排滓鍋
3a 排滓鍋台車
4 再装入鍋台車
5 開孔部
6 受鋼台車
7 溶鋼鍋
8 転炉作業床
9 鳥口
10 トラニオン
11 クレーンフック
12 兼用鍋
13 台車
15 炉口
Claims (3)
- 転炉に少なくとも溶銑装入鍋にて溶銑を装入して主に脱燐吹錬を行い、脱燐吹錬の終了後、転炉内脱燐溶銑を台車に載置した再装入鍋(受湯鍋)に出銑し、溶銑排出後の転炉内のスラグを排滓鍋に排滓し、前記再装入鍋に出銑した脱燐溶銑をスラグ排滓後の前記転炉に再装入し、主に脱炭吹錬を行い、脱炭吹錬の終了後、転炉内溶鋼を台車に載置した溶鋼鍋に出鋼する転炉操業法において、
前記溶銑装入鍋と再装入鍋とを一種類の兼用鍋で兼用させ、かつ兼用鍋と前記溶鋼鍋の両者を載置可能な1台の台車を設け、
兼用鍋載置、脱燐溶銑出銑、スラグ排滓、脱燐溶銑再装入のための兼用鍋吊上げのタイミングに合わせて、前記1台の台車を、前記兼用鍋を載置した状態で、兼用鍋載置位置、脱燐溶銑出銑位置、スラグ排滓鍋と干渉しない位置、兼用鍋吊上げを行う位置の各位置へ、前記転炉の炉下を移動させ、
また、前記1台の台車を、溶鋼鍋を載置した状態で、出鋼位置、造塊側の溶鋼鍋載置位置、吊上げ位置、溶鋼鍋保温位置の各位置へ移動させ、
前記各位置へ、前記兼用鍋および前記溶鋼鍋の搬送を行う方法であって、
前記溶銑ないし脱燐溶銑を、前記兼用鍋から前記転炉へ装入する際に、前記兼用鍋を水平まで傾けた際の烏口先端を、直立より50°前傾した前記転炉の炉内まで到達させて装入することを特徴とする転炉操業法。 - 請求項1記載の転炉操業法において、前記兼用鍋は、トーピードカーまたは混銑炉から当該兼用鍋に溶銑を受銑できる大きさであること、転炉下の台車に載置するための支え座を有すること、当該台車に兼用鍋を載置した状態における当該兼用鍋の上端が前記の転炉が直立した状態における当該転炉の下端よりも低いこと、1回の脱燐吹錬の脱燐溶銑全部を受湯できる内容積を有すること、クレーンで吊上げまた傾倒させるためのトラニオンを有する構造の溶銑鍋を用いることを特徴とする転炉操業法。
- 請求項2記載の転炉操業法において、前記兼用鍋は、前記台車に兼用鍋を載置した状態における当該兼用鍋の上端が前記の転炉を傾転させた状態における当該転炉の下端よりも低い構造の溶銑鍋を用いることを特徴とする転炉操業法。
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