JP3501293B2 - 製鋼方法および製鋼設備 - Google Patents

製鋼方法および製鋼設備

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、転炉を利用した新しい
製鋼方法およびその方法に使用する製鋼設備に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】転炉を利用した伝統的製鋼法は、一の転
炉に於いて脱燐精錬と脱炭精錬をともに行ない製鋼作業
を完了するものであった。しかし、製品である鋼の品質
に対する要求が厳しくなり、鋼中の燐、硫黄の含有量に
対する制限が厳しくなるに従って、伝統的製鋼法ではこ
れらの要求に対応することが困難となってきた。
【0003】この理由として、脱燐精錬は低温ほど有利
であり、脱炭精錬は高温でなされるので、同一転炉で両
精錬を行なうと脱炭精錬中に復燐現象が生じて、燐を目
標値まで下げることが困難であることがあげられる。
【0004】そこで、一の転炉で脱燐精錬を行ない、そ
の溶湯を一度出湯して完全に除滓してから、元の転炉に
再装入して再度精錬する方法が提案されている(例え
ば、「西山記念講座」第54回、55回、日本鉄鋼協
会、P130 )。このような方法により、低温において脱
燐精錬を行い、スラグをほぼ完全に除去してから高温に
おいて脱炭精錬を行うことができ、スラグの除去により
脱炭精錬中における復燐現象を防止できる。
【0005】また、一の転炉で脱燐精錬し、一度出湯後
その溶湯を隣接する他の一の転炉に移しここで脱炭精錬
を行ない製鋼作業を行なうことも種々提案されている。
かかる製鋼作業で問題となるのは、脱燐精錬が終了した
溶湯をいかにして近接する他の一の転炉に運搬し、空に
なった溶湯鍋を先に脱燐精錬を行なった転炉下まで運搬
するかである。
【0006】特開平2ー11714号公報には、図3に
示すような方法が開示されている。図3において、1は
一の転炉、2は受湯台車、3は受湯鍋、4は炉前作業床
に設けられた開口部、11は他の一の転炉、12は炉前
作業床、13は軌条、14は棟替台車である。
【0007】一の転炉1で脱燐精錬を行なった後、その
溶湯を受湯鍋3に注湯し、受湯台車2により炉前棟8に
設けられた作業床開口部4下まで移動し()、この受
湯鍋3を溶銑クレーンにより吊り上げて他の一の転炉1
1まで運搬し()、ついでその溶湯を他の一の転炉1
1で脱炭精錬して、製鋼工程を完了する。空となった受
湯鍋3は前記クレーンで移動し()、棟替台車14に
載せ炉裏棟10に移動し()、別のクレーンで元の受
湯台車2に戻す()。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
ような製鋼作業を行う場合、伝統的製鋼工場にない棟番
台車14を新設しなければならず、また、受湯鍋の移動に
時間を要し、そのため少なくとも3個の受湯鍋を常時使
用しなければならない。発明は、上述した問題点、即
ち棟替台車の新設を不要とし、最低2個の受湯鍋で、一
の転炉で脱燐精錬をし、その溶湯を他の一の転炉に移し
脱炭精錬を行なう製鋼方法を提供することを目的とす
る。更に、発明においては、上記に加え、脱燐精錬の
ために使用する転炉と、脱炭精錬のために使用する転炉
を固定することなく、ある程度のフレキシビリティをも
って選択可能とすると共に、定期的に脱燐炉と脱炭炉を
交換して、転炉の寿命の延長をはかることを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決する手段と作用】発明の目的は、一の転
炉において、主に脱燐精錬を行ない、脱燐精錬の絶了
後、転炉内溶湯を受湯鍋に排出し、前記溶湯を収容する
受湯鍋を、前記転炉に対応する炉前作業床側の開口部直
下に移動し、前記受湯鍋をクレーンにより前記開口部を
通して炉前作業床側に吊り上げ、前記受湯内の溶湯を隣
接する他の一の転炉に装入し、空となった当該受湯鍋を
前記クレーンにより先に通過した開口部を通して、元の
受湯台車に搭載し、当該受湯台車により前記一の転炉の
出鋼側に戻し、前記他の一の転炉において引き続き主に
脱炭精錬を行なう製鋼方法によって達成される。
【0010】更に、本発明の目的は、上記製鋼方法を所
定の期間蝕続し、所定の期間経過後は、前記他の一の転
炉において脱燐精錬を行ない、前記一の転炉において脱
炭精錬を行って先に記載した製鋼方法を所定期間行う製
鋼方法によって達成される。
【0011】前記発明にかかる製鋼方法は、複数の転炉
設備と、複数の転炉のうち少なくとも2つの各転炉直下
に設けられ、転炉の傾勤方向に転炉の炉裏棟から炉前棟
に亘って走る軌条上を、受湯鍋を搭載して移動する受湯
台車と、前記少なくとも2つの各転炉の炉前作業床に各
々設けられた、受湯鍋が通過できる開口部と、前記開口
部を通して前記受湯鍋を炉前作業床上に吊り上げ,前記
受湯鍋内の一の転炉で精錬した溶湯を他の転炉に注入す
るクレーン設備とを有する製鋼設備を使用して実現でき
る。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1、図2を使用し
て説明する。図1は本発明に係る製鋼設備の一例の平面
図である。図3と同じ設備には同じ符号を付し、説明を
省略する。転炉棟9には、従来の転炉設備1、11が二
基併置されているが、三基併置されていてもよい。各転
炉の炉下には、炉裏棟10(出鋼側)から転炉下を通っ
て炉前棟8まで走る軌条13が設けられている。この軌
条の上を、脱燐精錬された湯を受けた受湯鍋3を炉前棟
8まで運搬する受湯台車2が走る()。
【0013】転炉1、受湯鍋3、炉前作業床12等の高
さ方向の位置関係を図2に示す。転炉は通常出鋼口が炉
裏棟側に向いているため、出鋼された溶湯は炉裏棟にお
いて受湯鍋に受けられる。受湯台車3は、この受湯鍋3
を炉前側に運搬する。炉前棟側に運搬された受湯鍋3
は、従来溶銑クレーンと言われているクレーン5によ
り、作業床開口部4を通して炉前作業床上に吊り上げら
れる。炉前の作業床にある開口部4は、安全な作業のた
めには、例えば開閉ドアー41のようなスライド構造に
より、開閉可能にしておくことが望ましい。
【0014】再び、図1に戻って説明をすると、脱燐精
錬された溶湯は、溶銑クレーン5により他の一の転炉1
1まで運搬()され、その転炉11に装入され主に脱
炭精錬がおこなわれる。空となった受湯鍋3は、溶銑ク
レーン5により先に通過した開口部4を通して、元の受
湯台車2に戻し、受湯台車2により一の転炉1の炉裏棟
10側に運ばれて、再び一の転炉1からの受湯に使用さ
れる。以上の説明は、請求項1の実施例に関するもので
あり、作業床の開口部は、脱燐精錬を行う転炉即ち一の
転炉1側に設けられていればよい。
【0015】以上の様な転炉および溶湯鍋のサイクルの
時間的経過を図4に示す。脱燐精錬の時間と脱炭精錬の
時間ともに約14分であるため、脱燐炉(一の転炉)と
脱炭炉(他の一の転炉)との操業は円滑に行なわれる。
上記のような製鋼作業を127ヒート行ない、その操業
結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】表1は、公称300 ton 転炉を二基使用
して本発明の製鋼方法を127ヒートについて操業を行
なった結果である。表1において、脱燐炉における精錬
時間は平均13.7分であり、脱炭炉における精錬時間
は14.8分で、両者はほぼ等しく、この様な製鋼方法
が円滑に行なえることがわかった。上記127ヒートの
製鋼作業の効果を具体的に表2に示す。
【0018】
【表2】
【0019】表2において、従来法とは、図3に示した
製鋼設備を利用した製鋼方法である。すなわち、棟替台
車14を利用して受湯鍋をリサイクルした場合の製鋼方
法である。かかる従来法と比較して、第一に、従来法で
は受湯鍋が常時3基必要であったのが、本発明では、二
基の転炉に対して2鍋で足りた。いわゆる鍋返しの時間
が短縮されたからである。
【0020】表2においては、前記従来法と本発明の操
業法は同一とした。本発明においては、受湯鍋を短時間
でリサイクルするため、受湯鍋の冷却が減少し、そのた
め脱炭炉に装入される溶湯の装入温度を25℃高くする
ことができた。これにより、安価ではあるが冷却効果が
大きいため従来使用量が制限されていたマンガン鉱石を
より多く添加でき、その分高価なフェロマンガンの添加
量を鋼1トンあたり3kg少なくすることができた。ま
た、転炉の耐火物原単位は、鋼1トンあたり0.05kg減
少し、受湯鍋の耐火物原単位も鋼1トンあたり0.06kg
減少した。
【0021】ところで、脱燐精錬は1400℃以下の温
度で行なわれるため、転炉耐火物の溶損が少ないが,脱
炭精錬は1400℃以上の高温で行なわれるため脱炭炉
の溶損は大きい。そこで、脱炭炉の溶損が著しいとき
は、一時的に、または、定期的に脱炭炉と脱燐炉を交換
して製鋼作業を行なうと、結果的に転炉の寿命を延長す
ることができる。
【0022】発明は、このような知見に基づくもので
あり、所定時間毎に、一の転炉1と他の一の転炉11の
役割を交換して使用するものである。即ち、所定時間経
過後は、他の一の転炉11が脱燐精錬用に使用され、受
湯鍋3は、他の一の転炉11側の作業床開口部を通して
作業床上に溶銑クレーン5により引き上げられ、一の転
炉1に装入されて脱炭精錬が行われる。
【0023】発明の実施は、図3に示す従来技術にお
ける製鋼設備では不可能であり、本発明は、図1に示す
ように、少なくとも2つの転炉1、11について、転炉
の傾動方向に転炉の炉裏棟から炉前棟に亘って走る軌条
13上を、受湯鍋3を搭載して移動する受湯台車2と、
各転炉の炉前作業床12に各々設けられた、受湯鍋3が
通過できる開口部4が必要である。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、棟替台車の新設が不要
であり、かつ、最低2個の受湯鍋で、一の転炉で脱燐精
錬をし、その溶湯を他の一の転炉に移し脱炭精錬を行な
うことができる。さらに、受湯鍋のハンドリング時間が
短縮されるので、脱炭炉に装入される溶湯温度が高くな
り、フエロマンガンの使用量を少なくすることができ、
加えて、転炉および受揚鍋の耐火物原単位を少なくする
ことができる。さらに、発明によれば、転炉の寿命の
延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例である製鋼設備の概要を示す
平面図である。
【図2】本発明の1実施例である製鋼設備の概要を示す
立面図である。
【図3】従来の製鋼設備の概要を示す平面図である。
【図4】本発明における転炉の稼働状況と受湯鍋の移動
状況を時間軸に対して示す図である。
【符号の説明】
1 一の転炉 2 受湯台車 3 受湯鍋 4 作業床開口部 5 溶銑クレーン 11 他の一の転炉 12 炉前作業床 13 軌条 14 棟替台車

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の工程からなる製鋼方法。 (1)一の転炉において、溶湯の脱燐精錬を行ない、 (2)前記脱燐精錬の終了後、転炉内溶湯を受湯鍋に排
    出し、 (3)前記溶湯を収容する受湯鍋を、前記転炉に対応す
    る炉前作業床側の開口部直下に移動し、 (4)前記受湯鍋をクレーンにより前記開口部を通して
    炉前作業床側に吊り上げ、前記受湯内の溶湯を隣接する
    他の一の転炉に装入し、空となった当該受湯鍋を前記ク
    レーンにより先に通過した開口部を通して、元の受湯台
    車に搭載し、当該受湯台車により前記一の転炉の出鋼側
    に戻し、(5)前記他の一の転炉において前記脱燐精錬された溶
    湯を引き続き主に脱炭精錬を行ない、 (6)前記(1)から(5)の精錬作業を所定の期間継
    続し、 (7)前記期間経過後は、前記他の一の転炉において脱
    燐精錬を、前記一の転炉において脱炭精錬を、前記
    (1)から(5)工程に従って行なう。
  2. 【請求項2】 下記の設備を具えた製鋼設備。 (1)複数の転炉設備と、 (2)前記複数の転炉のうち,脱燐炉及び脱炭炉として
    機能する少なくとも2つの各転炉直下に設けられ、転炉
    の傾動方向に転炉の炉裏棟から炉前棟に亘って走る軌条
    上を、受湯鍋を搭載して移動する受湯台車と、 (3)前記少なくとも2つの各転炉の炉前作業床に各々
    設けられた、受湯鍋が通過できる開口部と、 (4)前記開口部を通して前記受湯鍋を炉前作業床上に
    吊り上げ,前記湯鍋内の一の転炉で精錬した溶湯を他
    の転炉に注入するクレーン設備。
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