JP5219330B2 - 転炉設備の操業方法 - Google Patents
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Description
しかし、近年、転炉工程で溶銑予備処理を行う方法が一般的になりつつある。
転炉工程で溶銑予備処理を行う方法では、混銑車等で移送された溶銑は脱りん用の転炉に装入され、副原料および酸素吹き込みにより脱りん処理が行われる。続いて、脱りん後の溶銑は脱炭用の転炉に装入され、酸素吹き込みにより脱炭処理が行われる。りん濃度および炭素濃度が所定の値に調整された溶鋼は、後の連続鋳造工程によりスラブ等に成型される。スラブ等は、圧延されて厚板または薄板等の鉄鋼製品に加工される(圧延工程)。
例えば、特許文献1には、2基の転炉を有する設備において、転炉を脱りんまたは脱炭いずれかの専用炉とするのではなく、各転炉で脱りんおよび脱炭を交互に行うことにより、各処理のサイクルタイムの不一致による待ち時間を短縮して転炉の稼働率を向上させる方法が開示されている。
ところで、脱りん工程および脱炭工程のいずれにおいても、サイクルタイムは、溶銑の装入、精錬、調質、出湯、および排滓などの個別の作業の所要時間によって決定される。また、溶銑または溶鋼の出湯時間は、通常チャージ数を重ねるごとに出湯孔が次第に拡大して短くなり、脱りん工程および脱炭工程のサイクルタイムは全体として徐々に短くなる。溶銑または溶鋼の出湯時間は、極度に短くならないように所定のチャージ数を重ねた後にまたは所定の時間よりも短くなったときに、孔巻き(出湯孔の補修)を行うことによって管理される。
特許文献2には、脱りん工程の時間短縮を図るための脱りん処理の方法が記載されている。しかし、特許文献2にも、脱りん炉および脱炭炉のサイクルタイムが互いに異なる周期で変化する場合における脱炭炉の待ち時間の短縮のための有効な知見を開示してはいない。
すなわち、本発明に係る転炉設備の操業方法は、脱りん処理を行う脱りん炉、および前記脱りん炉から出湯した溶銑を装入して脱炭処理を行う脱炭炉を備えると共に、同一の走行レール上に第1クレーン、第2クレーン、スクラップクレーンを備え、クレーン走行方向に沿って上工程側から、脱りん炉、脱炭炉が配置され、さらに前記脱りん炉及び脱炭炉の装入側にクレーン走行方向に沿って上工程側から、第1クレーン、第2クレーン、スクラップクレーンが配置されている構成を備えた転炉設備の操業方法であって、前記脱炭炉への第2クレーンによる溶銑装入を、前記脱りん炉への第1クレーンによる溶銑装入開始より、少なくとも前記脱りん炉への第1クレーンによる溶銑装入の時間と前記脱炭炉に装入される溶銑が入った取鍋を第2クレーンにより吊り上げる時間との合計時間遅らせて開始することを特徴とする。
前記吊り上げる時間とは、前記脱りん炉から出湯された溶銑が入った取鍋を吊り上げ、前記脱炭炉への溶銑の装入のために搬送するのに要する時間をいう。
好ましくは、前記脱りん処理の前に前記脱りん炉にスクラップクレーンによりスクラップを装入し、前記脱炭処理の前に前記脱炭炉にスクラップクレーンによりスクラップを装入する。
本発明によれば、所定の時間ずらして脱りん炉への溶銑の装入と脱炭炉への溶銑の装入とを行うので、例えば、溶銑の装入に使用するクレーンとスクラップの装入に使用するクレーンとが同一のレール上を走行する場合にも、クレーンの差し合いに起因するいずれかの転炉における作業の待ちが生じない。
T1≦T2 … (1)
本発明によれば、脱炭炉を待たせることなく脱りん炉から出湯した溶銑の装入を行うことができ、脱炭炉における溶鋼の生産を効率よく行うことができる。
好ましくは、前記脱りん炉における操業の前記管理が、前記脱りん炉からの溶銑の出湯時間の管理である。
なお、本発明に係る転炉設備の操業方法の最も好ましい形態は、脱りん処理を行う脱りん炉、および前記脱りん炉から出湯した溶銑を装入して脱炭処理を行う脱炭炉を備えると共に、同一の走行レール上に第1クレーン、第2クレーン、スクラップクレーンを備え、クレーン走行方向に沿って上工程側から、脱りん炉、脱炭炉が配置され、さらに前記脱りん炉及び脱炭炉の装入側にクレーン走行方向に沿って上工程側から、第1クレーン、第2クレーン、スクラップクレーンが配置されている構成を備えた転炉設備の操業方法であって、前記脱りん炉で脱りん処理を行うと共に、前記脱りん処理後の溶銑に対して脱炭炉で脱炭処理を行うこととし、前記脱炭炉への第2クレーンによる溶銑装入を、前記脱りん炉への第1クレーンによる溶銑装入開始より、前記脱りん炉への第1クレーンによる溶銑装入の時間と前記脱炭炉に装入される溶銑が入った取鍋を第2クレーンにより吊り上げる時間との合計時間遅らせて開始することとし、前記脱りん炉への溶銑装入前に前記脱りん炉にスクラップクレーンによりスクラップを装入し、前記脱炭炉への溶銑装入前に前記脱炭炉にスクラップクレーンによりスクラップを装入することを特徴とする。
好ましくは、前記脱りん炉における全処理のサイクルタイム(T1)と前記脱炭炉における全処理のサイクルタイム(T2)とが式(1)を満たすように、前記脱りん炉における操業の管理を行うこととし、前記脱りん炉における前記操業の管理が、前記脱りん炉からの溶銑の出湯時間の管理であって、脱りん炉の出湯時間の管理下限を3分30秒とし、脱炭炉の出湯時間の管理上限を7分としているとよい。
T1≦T2 … (1)
図1,2において、転炉設備1は、払い出しステーション2a,2b、脱硫ステーション3a,3b、除滓ステーション4a,4b、スラグドラッガー5a,5b、第1クレーン6、第2クレーン7、スクラップクレーン8、脱りん炉9、脱炭炉10などからなる。
なお、以下の説明において、図1の右を「下工程側」、上を「装入側」、下を「出湯側」、および横方向を「クレーン走行方向」ということがある。
除滓ステーション4a,4bは、脱硫ステーション3a,3bの出湯側に、脱硫ステーション3a,3bのそれぞれに対応させて2カ所に設けられている。除滓ステーション4a,4bには、脱硫ステーション3a,3bで脱硫処理が終了した取鍋11a,11bが移送される。
第1クレーン6は、図1における横方向(クレーン走行方向)に設けられた走行レール14上を走行し、取鍋11a,11bを吊り上げて、払い出しステーション2a,2bの台車12a,12b上から脱硫ステーション3a,3bへの運搬、および脱りん炉9への溶銑装入などを行う。
スクラップクレーン8は、第1クレーン6および第2クレーン7と同一の走行レール14上を走行し、2基のスクラップシュート16a,16bを吊り上げて脱りん炉9および脱炭炉10へのスクラップの装入を行う。スクラップクレーン8は、2基のスクラップシュート16a,16bを同時に吊り上げ可能に構成されている。スクラップシュート16a,16bには、図示しないスクラップヤードで、脱りん炉9および脱炭炉10に装入されるスクラップが積み込まれる。
脱りん炉9は、脱硫ステーション3bの下工程側に、脱硫ステーション3bから適度な間隔を有して設置されている。ここで、適度な間隔とは、第1クレーン6が脱硫ステーション3bの上にあり、スクラップクレーン8が脱りん炉9にスクラップの装入を行っているときに、第2クレーン7を待避させ得る間隔をいう。
脱炭炉10は、溶銑装入、吹錬、調質、出湯、排滓、およびスクラップ装入を1サイクルとして操業される。脱炭炉10には、脱りん炉9で脱りん処理された溶銑が装入され、溶銑から炭素を除去する処理(脱炭処理、「吹錬」ということがある。)が行われる。脱炭炉10では、溶銑に含まれる炭素がその上面に吹き付けられた酸素ガスと反応して一酸化炭素または二酸化炭素になって脱炭炉10の外に排出される。
次に、本発明に係る転炉設備1の操業方法について、溶銑等の運搬に関わる第1クレーン6、第2クレーン7、およびスクラップクレーン8の動作に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、第1クレーン6、第2クレーン7、およびスクラップクレーン8の位置を説明する便宜のため、走行レール14を7つの区間に区切り、それぞれの区間に位置番号を付す。そして、例えば、図1における位置番号が1の区間を「位置(1)」という。
図1,2も参照しながら、第1クレーン6は、位置(2)において空の取鍋11bを払い出しステーション2bの台車12b上に載置する(#0)。台車12bは払い出しステーション2b内を装入側に移動し、取鍋11bに混銑車13から溶銑が払い出される(#1)。第1クレーン6は、位置(1)に移動し、混銑車13からの溶銑の払い出しを終えた取鍋11aを吊り上げて(#2)、同じ位置(1)内において脱硫ステーション3aまで運搬し、待機する図示しない台車上に載置する(#3)。
第1クレーン6は、取鍋11aを脱硫ステーション3aまで運搬した後(#3)脱硫ステーション3bに移動して、すでに脱硫処理およびノロカキが終了した溶銑を収容する取鍋11bを吊り上げる(#6)。ここで、ノロカキが終了した溶銑を収容する取鍋11bは、払い出しステーション2bで混銑車13から溶銑の払い出し(#1)を受ける取鍋11bとは別のものである。第1クレーン6は、次の脱りん炉9への溶銑装入(#7)まで、溶銑を収容する取鍋11bを吊り上げたまま位置(2)に待機する。
また、第1クレーン6が上記動作を行う間に、第2クレーン7は、溶銑装入(#12)により空になった溶銑鍋15を位置(4)において待機する受湯台車17に載置する(#14)。溶銑鍋15を積載する受湯台車17は、脱りん炉9からの出湯に備えて装入側から出湯側に移動する。
出湯(#15)が終了した脱りん炉9では排滓が行われ、スクラップクレーン8によりスクラップが装入される(#16)。このとき、第2クレーン7は、位置(4)におけるスクラップクレーン8との差し合いを避けるために、位置(3)に移動する(#17)。第1クレーン6が溶銑を収容する取鍋11bを吊り上げたまま位置(2)で待機し続けるのは、位置(3)への第2クレーン7の移動を可能にするためである。
ここで、スクラップクレーン8の動作について説明する。スクラップクレーン8は、スクラップを収容した2基のスクラップシュート16a,16bを図示しないスクラップヤードにおいて吊り上げ、先ず位置(4)に移動してスクラップシュート16aから脱りん炉9にスクラップの装入を行う(#16,#25)。その後、一旦、位置(6)に待避して脱りん炉9への溶銑装入(#7)を待ち、第2クレーン7が位置(4)において溶銑鍋15の吊り上げ(#21)を始めたら位置(5)に移動し、スクラップシュート16bから脱炭炉10にスクラップの装入を行う(#22)。
図4からわかるように、本発明に係る転炉設備1の操業方法では、脱炭炉10への溶銑装入(#23)を、脱りん炉9への溶銑装入(#7)開始より、脱りん炉9への溶銑装入の時間と脱炭炉10に装入される溶銑が入った溶銑鍋15を吊り上げる時間との合計時間T遅らせて開始することによって、第1クレーン6および第2クレーン7を使用する作業、ならびに脱りん炉9から出湯される溶銑を受け入れるための溶銑鍋15の手配などを円滑に行うことができる。特に、脱炭炉10における溶銑装入(#12)からスクラップ装入(#22)までの一連の作業は待ち時間なく連続して行われるので、脱炭炉10を効率的に稼働させることができる。
図5は脱りん工程のサイクルタイムが脱炭工程のサイクルタイムよりも長い場合のガントチャートである。図5における各サイクルタイムは、脱りん工程が23分、および脱炭工程が22分である。図5からわかるように、脱りん工程のサイクルタイムが脱炭工程のサイクルタイムよりも長くなるような場合であっても、脱炭炉10への溶銑の装入(#27)開始を脱りん炉9への溶銑の装入(#26)開始から所定の時間遅らせて行うことにより、第1クレーン6および第2クレーン7を使用する作業、ならびに脱りん炉9から出湯される溶銑を受け入れるための溶銑鍋15の手配などを円滑に行うことができる。そのため、脱りん炉9は、サイクルタイムに各クレーンの差し合い回避のために不可欠な約1分を加えたサイクルで脱りん処理を行うことができる。また、脱炭炉10の操業も、脱りん炉9のサイクルタイムに合わせた最低限の待ち時間(#28)で脱炭処理を繰り返すことができ、脱炭炉10を効率的に稼働させることができる。
図4の例では脱りん工程のサイクルタイムが21分および脱炭工程のサイクルタイムが23分なので、脱りん炉9の孔巻き直後の出湯時間を4分プラス2分、つまり6分以下に管理すれば、脱炭工程に待ち時間を設定する必要がなく脱炭炉10を効率的に稼働することができる。本実施形態では、脱りん炉9の出湯時間は5分ないし3分30秒に管理される。
次に、脱りん炉9および脱炭炉10における出湯時間が図6の管理範囲内で変動した場合についての転炉設備1の操業方法について説明する。
すなわち、本実施形態においては、脱炭炉10への溶銑の装入開始を脱りん炉9への溶銑の装入開始から所定の時間遅らせて行うことにより、脱りん炉9のその後の各作業と脱炭炉10のその後の各作業とが適切な時間差を有して行うことができ、かつ、各クレーンの差し合いを最小限に止めることができる。その結果、脱炭炉10では待ち時間を設定することなく一連の作業を行うことができ、脱炭炉10を効率的に稼働させることができる。
図9は脱りん炉9へのスクラップ装入後に脱炭炉10への溶銑装入を始める場合のガントチャート、図10は脱りん炉9での排滓作業後に脱炭炉10への溶銑装入を始める場合のガントチャート、図11は脱りん炉9からの出湯後に脱炭炉10への溶銑装入を始める場合のガントチャートである。これらの図は、図4に示される本実施形態との比較のために提示した。
図11に示される脱りん炉9における排滓(#71)前に脱炭炉10への溶銑装入(#72)を始める場合では、図10の場合と同様に、スクラップクレーン8と第2クレーン7との差し合いを回避するため、脱りん炉9へのスクラップ装入(#73)を脱炭炉10への溶銑装入(#72)後に行わねばならない。そのため、出湯(#74)から脱りん炉9への溶銑装入(#75)までの間隔が長くなり、脱りん炉9の溶銑装入(#76)から次の溶銑装入(#75)までの時間は28分になる。したがって、サイクルタイムが23分の脱炭炉10は、5分の待ち時間が必要になる。
このように、図9〜11に示される転炉設備1の操業方法では、いずれも脱炭炉10の各作業を円滑に連続して行うことが難しく、脱りん炉9で行われる各作業との関係から、脱炭炉10におけるいずれかの作業を待たせなければならない。これに対し、本発明に係る操業方法では、図4に示されるように、脱炭炉10の各作業を円滑に連続して行うことができ、脱炭炉10を効率的に稼働させることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、脱りん炉9および脱炭炉10における各作業の所用時間が上記実施形態と異なる転炉設備にも本発明を適用することができる。また、本発明は、脱りん工程および脱炭工程のサイクルタイムが周期を有しこれらの周期が互いに異なるときに、脱炭炉10を効率的に稼働させることができるが、これらの工程のサイクルタイムが変化することを前提とするものではない。本発明は、工程のサイクルタイムが変化しない転炉設備にも適用でき、脱炭炉の効率的な稼働を実現することができる。
9 脱りん炉
10 脱炭炉
15 溶銑鍋(取鍋)
Claims (2)
- 脱りん処理を行う脱りん炉、および前記脱りん炉から出湯した溶銑を装入して脱炭処理を行う脱炭炉を備えると共に、同一の走行レール上に第1クレーン、第2クレーン、スクラップクレーンを備え、クレーン走行方向に沿って上工程側から、脱りん炉、脱炭炉が配置され、さらに前記脱りん炉及び脱炭炉の装入側にクレーン走行方向に沿って上工程側から、第1クレーン、第2クレーン、スクラップクレーンが配置されている構成を備えた転炉設備の操業方法であって、
前記脱りん炉で脱りん処理を行うと共に、前記脱りん処理後の溶銑に対して脱炭炉で脱炭処理を行うこととし、
前記脱炭炉への第2クレーンによる溶銑装入を、前記脱りん炉への第1クレーンによる溶銑装入開始より、前記脱りん炉への第1クレーンによる溶銑装入の時間と前記脱炭炉に装入される溶銑が入った取鍋を第2クレーンにより吊り上げる時間との合計時間遅らせて開始することとし、
前記脱りん炉への溶銑装入前に前記脱りん炉にスクラップクレーンによりスクラップを装入し、前記脱炭炉への溶銑装入前に前記脱炭炉にスクラップクレーンによりスクラップを装入する
ことを特徴とする転炉設備の操業方法。 - 前記脱りん炉における全処理のサイクルタイム(T1)と前記脱炭炉における全処理のサイクルタイム(T2)とが式(1)を満たすように、前記脱りん炉における操業の管理を行うこととし、
前記脱りん炉における前記操業の管理が、前記脱りん炉からの溶銑の出湯時間の管理であって、脱りん炉の出湯時間の管理下限を3分30秒とし、脱炭炉の出湯時間の管理上限を7分としていることを特徴とする請求項1に記載の転炉設備の操業方法。
T1≦T2 … (1)
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