JP6648365B2 - 連続鋳造の開始時刻の決定方法 - Google Patents
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Description
精錬処理後の溶鋼は、取鍋に移し替えられて二次精錬設備へと移送され、溶鋼に対する更なる精錬が行われる。二次精錬後の溶鋼は連続鋳造機に移送され、スラブやブルームなどの鋳片へと鋳造される。鋳片を連続的に鋳造する連続鋳造機では、連続鋳造装置の生産性を向上させるために、(鋼種が異なる場合も含めて)複数のチャージを連続的に鋳造する連続鋳造が行われる。
連続鋳造機における取鍋の物流を考慮した技術としては、特許文献1に開示されたものがある。
とはいえ、様々な原因により、各設備での作業遅延が発生することがあり、スケジュールに狂いが生じ、ひいては、連続鋳造に途切れが発生することがあった。
しかしながら、このような対策は、現場の熟練したオペレータの知識が必要とされるものであり、経験の浅いオペレータでは対応不可能なことが多い。
すなわち、本発明にかかる連続鋳造の開始時刻の決定方法は、転炉と二次精錬設備と連続鋳造機と取鍋を搬送する搬送設備とを有する製鋼工場を操業するに際し、前記連続鋳造機における連続鋳造の最初のチャージを鋳造する開始時刻を決定する方法において、
前記最初のチャージの開始時刻を、下記の式(1)に基づいて、前記最初のチャージ向けの実鍋が前記連続鋳造機に到着する時刻よりΔtだけ遅い時刻に設定することを特徴とする。
Δt=(N−M)×K ・・・(1)
N:1回の連続鋳造で行うチャージ数
M:使用する取鍋の数
K:1回の差し合い(遅れ)で発生する取鍋の待ち時間
本発明の連続鋳造の開始時刻の決定方法を説明する前に、本発明が適用される製鋼工場1について説明を行う。
図1は、本発明が適用される製鋼工場1を模式的に示したものである。
まず、高炉から出銑された溶銑は、例えばトピードカーなどにより転炉2に移送され、転炉2において精錬処理(脱りん処理、脱炭処理)が行われる。
精錬処理後の溶鋼は、取鍋6に移し替えられ、搬送設備3を用いて二次精錬設備4へと移送され、溶鋼に対する二次精錬が行われる。
この精錬設備では、供給装置にてフラックス等を溶鋼に投入した後、電極式加熱装置で溶鋼を所定温度まで上げて、吹き込み装置からガスを吹き込んで溶鋼を攪拌することによって、化学成分の微調整を行うと共に、溶鋼内に含まれる非金属介在物の低減を行う。
連続鋳造機5の1つである垂直曲げ型連続鋳造機は、鋳造する溶鋼が装入された取鍋6と、この取鍋6からの溶鋼を一時的に貯留するタンディッシュと、このタンディッシュから供給される溶鋼を成形する鋳型とを備えている。また、垂直曲げ型スラブ連続鋳造機5は、鋳型直下に設置されて鋳造する鋳片を支持するロール(フットロール、サポートロール)を備えている。
なお、連続鋳造機5に溶鋼を挿入して空となった溶鋼鍋(空鍋と呼ぶ)は、滓などを排出する作業や溶鋼鍋の手入れ作業が行われる場合があるが、本図ではそれは省略している。
なお、上記した連続鋳造機5では、同一鋼種が連続鋳造される場合もあれば、異鋼種の連続鋳造が行われる場合もある。連続鋳造(連々鋳と呼ぶこともある)とは、複数チャージの溶鋼を途切れることなく連続的に鋳造するものであり、連続鋳造設備の生産性を向上させることができるものとなっている。
図4には、連々鋳切れが発生した際のガントチャートが示されている。この図に示されているように、連々鋳切れの原因の1つとして、複数の取鍋6が搬送設備3を取り合うために発生する、取鍋6の待ちなどが挙げられる。
図2は、実鍋のみが存在する場合(取鍋6が返送されない)の製鋼工場1におけるガントチャートを示したものである。なお、連続鋳造機5に溶鋼を挿入して空となった溶鋼鍋(空鍋と呼ぶ)は、滓などを排出する作業や溶鋼鍋の手入れ作業が行われる場合があるが、本図ではそれは省略している。
例えば、図3において、連続鋳造機5のチャージ(2)に対して溶鋼を供給した後の空鍋は、搬送設備3により、転炉2側へ搬送される。この際、搬送設備3は1ラインであるため、この搬送設備3において、転炉2〜二次精錬設備4の間での差し合い(実鍋を先に運ぶか、空鍋を先に運ぶかの取り合い)が発生する。
図4に示すように、転炉2のチャージ(4)からの溶鋼が装入された実鍋は、二次精錬設備4へと搬送され、二次精錬処理が行われる。二次精錬処理後の実鍋は、連続鋳造機5へ移送され溶鋼がタンディッシュへ装入される。チャージ(4)の溶鋼が装入された実鍋は、搬送設備3により転炉2から二次精錬設備4へ搬送されようとするが、このとき、搬送設備3に差し合いが発生するが、まずは、連続鋳造におけるチャージ2からの空鍋を返送するようになる。そのため、チャージ(4)の実鍋に待ちが発生し、結果的に連続鋳続機における連々鋳切れ(チャージ(3)とチャージ(4)との間の鋳造切れ、10分)が発生する状況となる。
ここで、実鍋の到着遅れ時間(1回あたり)は、状況に依存して常に一定ではない。連続鋳造機5におけるチャージ(4)への実鍋は10分の遅れ、チャージ(5)への実鍋は5分の遅れ、チャージ(6)(7)への実鍋は遅れなし、チャージ(8)への実鍋は5分の遅れである。すなわち、図4の場合、3回で合計20分の連々鋳切れが発生することになる。
合計の遅れ時間については、予測は難しいが、経験的に遅れの対象となり、実鍋の本数が増加するとそれに比例して増加する。差し合いにより遅れる可能性がある実鍋本数は、「連々数−鍋本数」であることが知見されており、この例の場合、5本である。言い換えれば、10連々を10本の鍋で回すのであれば、差し合いによる遅れを考慮する必要はないこととなる。
図3に示すように、取鍋6による搬送設備3取り合いは、連鋳機から空鍋を転炉に戻す回数だけ発生している。即ち、連続鋳造のチャージ数から鍋数(取鍋6の数)を引いた回数だけ発生している。これは、そのため、開始時刻を遅らせる時間Δtを、連続鋳造機5での連続鋳造の数Nと、取鍋6の数M、搬送設備3での取鍋6の待ち時間Kとを基に算出するようにしている。
このような問題発生を回避するには、図5に示す如く、チャージ(1)の鋳造開始時間を遅れの総時間分、即ち、20分遅らせればよい。それにより、連々鋳切れにつながる実鍋到着遅れを埋めることが可能となり、連々鋳切れを起こさないで済むことになる。
個々のチャージの溶鋼鍋の遅れ時間を正確に予測し、その和を計算することで、Δtを導出する事は容易では無い。その実現には、まず、物流シミュレータの構築が必要である。そして、図2〜5では一定時間に設定されている、各設備(転炉、二次精錬、鋳造)の処理時間や搬送設備(クレーン、台車)の搬送時間を、正確に把握して入力する必要がある。また、処理時間や搬送時間の確率的な変動も考慮する必要がある。特許文献1が示すように、後ろ向きのシミュレーションと前向きのシミュレーションを実施するとなると、更にそのシステム構築の難易度は高くなり、計算時間なども考慮すると実用には多数の課題が存在する。
しかし、発生する搬送設備の取り合い(実鍋と空鍋による搬送設備の取り合い)が発生する回数が多い場合には、遅れ時間の総和は指し合いの回数に比例して増加する傾向が見られる。
Δt=(N−M)×K ・・・(1)
N:1回の連続鋳造で行うチャージ数(図4の場合は10チャージ)
M:使用する取鍋6の数(図4の場合は5個)
K:1回の差し合い(遅れ)で発生する取鍋6の待ち時間
で算出される遅れ時間Δtを算出し、連続鋳造機5における連続鋳造の開示時刻を算出したΔtだけ遅らせることとする。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 転炉
3 搬送設備
3−1 転炉と二次精錬設備を結ぶ搬送設備
3−2 二次精錬と連続鋳造機を結ぶ搬送設備
4 二次精錬設備
5 連続鋳造機
6 取鍋
Claims (1)
- 転炉と二次精錬設備と連続鋳造機と取鍋を搬送する搬送設備とを有する製鋼工場を操業するに際し、前記連続鋳造機における連続鋳造の最初のチャージを鋳造する開始時刻を決定する方法において、
前記最初のチャージの開始時刻を、下記の式(1)に基づいて、前記最初のチャージ向けの実鍋が前記連続鋳造機に到着する時刻よりΔtだけ遅い時刻に設定することを特徴とする連続鋳造の開始時刻の決定方法。
Δt=(N−M)×K ・・・(1)
N:1回の連続鋳造で行うチャージ数
M:使用する取鍋の数
K:1回の差し合い(遅れ)で発生する取鍋の待ち時間
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