JP6818979B2 - 製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法 - Google Patents
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Description
精錬処理後の溶鋼は、溶鋼鍋に移し替えられて二次精錬設備へと移送され、溶鋼に対する更なる精錬が行われる。二次精錬後の溶鋼は連続鋳造機に移送され、スラブやブルームなどの鋳片へと鋳造される。鋳片を連続的に鋳造する連続鋳造機では、連続鋳造装置の生産性を向上させるために、鋼種が異なる場合を含めた複数のチャージを連続的に鋳造する連続鋳造が行われる。
特許文献1は、複数の転炉、二次精錬設備、連続鋳造機、搬送設備を有する製鋼プロセスの操業スケジュール作成システムにおいて、連続鋳造機の鋳造スケジュールをもとにして、鋳造工程から上工程に対して時間軸と工程をさかのぼりながら、物流シミュレーション実行システムを用いて搬送台車やクレーンの干渉を考慮し、操業スケジュールを仮決定する第一ステップと、第一ステップから得られた製鋼プロセスの吹錬スケジュールをもとにして、転炉設備から下工程に対して工程と時間軸を下りながら溶銑鍋の後処理工程による操業スケジュールへの影響を検証し、操業スケジュールを再計算する第二ステップを組み合わせる製鋼プロセスの操業スケジュール作成システムが開示されている。
とはいえ、様々な原因により、各設備での作業遅延が発生することがあり、スケジュールに狂いが生じ、ひいては、連続鋳造に途切れが発生することがあった。
具体的には、図1に示す如く、転炉から出鋼された溶鋼は、溶鋼鍋に装入され、二次精錬設備へと移送される。二次精錬処理が行われた後は、溶鋼鍋は連続鋳造機に運ばれ、鍋内の溶鋼を連続鋳造機にて鋳片へ鋳造される。
ここで、排滓場においては、排滓ポットに対して滓が装入されることになるが、排滓ポットは6〜7チャージの滓で満杯になるため、満杯になる前に、空の排滓ポットとの交換が不可欠な事項となる。
排滓ポットが滓で満杯になったものの、空の排滓ポットと交換することができない場合、溶鋼鍋の滓を払い出すことができなくなり、溶鋼鍋の物流が滞ることになる。かかる状況が続くと、最悪の場合、連続鋳造機において連々鋳切れが発生することになる。
このような観点から、特許文献1を考えるに、特許文献1の技術は「鋳造工程から上工程に対して時間軸と工程をさかのぼりながら、物流シミュレーションを実行すると共に、転炉設備から下工程に対して工程と時間軸を下りながら鍋の後処理工程による操業スケジュールへの影響を検証するもの」であり、非常に複雑なシステムである。そのため、そのシステムの精度の維持は容易ではなく、また、物流シミュレーションを行うために大きな計算機能力や、多くのパラメータ(例えば、各チャージの各設備での処理時間)の入力を必要とするものであり、実際の現場で継続的に活用するには困難を伴うものとなっている。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、異鋼種を連続的に鋳造するような連続鋳造において、連続鋳造に途切れが起こることを防ぐべく、適切な排滓ポットの交換タイミングを導出する方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明にかかる製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法は、転炉と、二次精錬設備と、連続鋳造機と、溶鋼鍋を搬送する搬送設備と、溶鋼鍋内の滓を排滓する排滓場とを有する製鋼工程を操業するに際し、前記排滓場での排滓ポットの交換を実施可能なタイミングを算出する製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法であって、基本となる型組を用意すると共に、鋼種毎における各処理に要する所要時間を定めておき、前記型組及び処理時間を基に、ガントチャートを作成し、作成したガントチャートにおいて、前記搬送設備の非稼働時間が所定時間以上となっている期間が存在するか否かを判断し、前記搬送設備の非稼働時間が所定時間以上となっている期間が存在する場合には、当該期間を排滓ポットの交換タイミングとすることを特徴とする。
(1) 所定の型組、溶鋼鍋の本数を基に、型組における全チャージについて、各設備での処理時間を求める。
(2) 所定の型組、溶鋼鍋の本数を基に、型組における全チャージについて、溶鋼鍋の動きを求める。
(4) 作成したガントチャートから、搬送設備の非稼動時間を算出する。
(5) 前記ガントチャート上において、搬送設備の非稼動時間が排滓ポットの交換に必要とされる時間より大きくなる期間を抽出し、抽出した期間を基に、搬送設備の稼動開始時刻と搬送設備の稼動終了時刻とを算出する。
本発明のかかる排滓ポットの交換タイミングの導出方法を説明する前に、本発明が適用される製鋼工程1について説明を行う。
本発明が適用される製鋼工程1では、まず、高炉から出銑された溶銑は、例えばトピードカーなどにより転炉2に移送され、転炉2において精錬処理(脱りん処理、脱炭処理)が行われる。
図1に示す如く、精錬処理後の溶鋼は、溶鋼鍋Zに移し替えられ、搬送設備を用いて二次精錬設備へと実鍋が移送され、溶鋼に対する二次精錬が行われる。
二次精錬設備は、溶鋼から不純物を除く操作および成分元素を添加する工程および操作である。ここでは二次精錬設備3と、二次精錬設備4とを備えている。
なお、連続鋳造機5に溶鋼を装入して空となった溶鋼鍋Z(空鍋と呼ぶ)に対しては、滓などを排出する作業や溶鋼鍋Zの手入れ作業が行われる。
溶鋼鍋Zの手入れ作業は、鍋整備場6で行われる。鍋整備場6で整備が行われた溶鋼鍋Zは、空鍋の状態で、転炉2の出鋼側へ移送され、再び、溶鋼が装入されることとなる。
なお、上記した連続鋳造機5では、同一鋼種が連続鋳造される場合もあれば、異鋼種の連続鋳造が行われる場合もある。連続鋳造(連々鋳と呼ぶこともある)とは、複数チャージの溶鋼を途切れることなく連続的に鋳造するものであり、連続鋳造設備の生産性を向上させることができるものとなっている。
図2に示したように、排滓場7にて排滓ポット8を交換することができない状況が発生することを避け、連々鋳切れを起こさないために、本発明では、クレーンが非稼働状態となっている時間が、排滓ポット8交換時間より長いものとなっている状態が発生する時間帯を算出し、オペレータに提示する技術を開示するものとなっている。
まず、推定方法の基本的な考え方(アプローチ)について、述べる。
基本の考え方では、最初に、表1に示すような基本となる型組を用意する。
つまり、表1、表2の情報及び図2や図3の如きガントチャートに基づけば、連続鋳造機5で連続鋳造されるチャージの内容、つまり連続鋳造設備で連鋳される鋼種の順番が決定する。また、表2に基づけば、各チャージで連続鋳造機5、排滓場7、鍋整備場6、転炉2、二次精錬設備3、二次精錬設備4などの各精錬処理を行うための工程条件、つまり各チャージの精錬処理工程に必要な工程処理時間も決定する。さらに、過去の操業実績などに基づけば、各クレーンや各台車の吊上、移動、据付などに必要な工程時間を割り出すことができ、各チャージの精錬処理工程についてこれらの工程時間を割り付けて、ガントチャートを作成することができる。
例えば、異なる鋼種の連続鋳造が続き、実鍋時間などが増えることで、クレーンの稼働率が高い状態が続いた場合、排滓ポット8の交換タイミングを得ることはできない。このようなクレーンの稼働率が高いという事実が、算出されたガントチャートから判った場合には、オペレータは型組を変更して再びガントチャートを作成し、再作成したガントチャートで排滓ポット8が交換可能かどうかを判断することもできる。
まず、表1のような型組(連鋳スケジュール)、表2のような各種処理時間、搬送時間、製鋼工程1を行う設備の情報(クレーンや台車等の設備)、鍋本数Nが与えられたとする。
次に、鍋の動きを決定するようにする。すなわち、kチャージ目の鋼種をSg(k)、鋼種(Steel grade)における設備Dの基本(Base)所要時間をB(Sg,D)、kチャージ目における当日の設備依存調整(Adjust)時間を A(k,D) とする。
その時、1周目(k<=N、例えば、溶鋼鍋Zが6基の場合、1チャージ目から6チャージ目)の場合、鋼種Sgに依存した設備Dにおける各種処理時間P(Sg(k),D)は、式(1)のようになる。
次に、型組の全チャージについて鍋の動きを決定する。すなわち、kチャージ目が型組の最後のチャージでない場合、k=k+1として1を繰り返す。最後のチャージならば、次に述べる処理を行う。
最後に、非稼動時間Temptyと排滓ポット8の交換所要時間nとを比較し、式(3)を満たす時間を抽出し、排滓ポット8の交換開始可能時刻(クレーン稼動終了時刻)と、排滓ポット8の交換終了時刻(クレーン稼動開始時刻)を、オペレータに提示する。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 転炉
3 二次精錬設備
4 二次精錬設備
5 連続鋳造機
6 鍋整備場
7 排滓場
8 排滓ポット
Z 溶鋼鍋
Claims (2)
- 転炉と、二次精錬設備と、連続鋳造機と、溶鋼鍋を搬送する搬送設備と、溶鋼鍋内の滓を排滓する排滓場とを有する製鋼工程を操業するに際し、前記排滓場での排滓ポットの交換を実施可能なタイミングを算出する製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法であって、
基本となる型組を用意すると共に、鋼種毎における各処理に要する所要時間を定めておき、
前記型組及び処理時間を基に、ガントチャートを作成し、
作成したガントチャートにおいて、前記搬送設備の非稼働時間が所定時間以上となっている期間が存在するか否かを判断し、
前記搬送設備の非稼働時間が所定時間以上となっている期間が存在する場合には、当該期間を排滓ポットの交換タイミングとする
ことを特徴とする製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法。 - 前記搬送設備の非稼働時間を求めるに際しては、以下に示す工程(1)〜工程(6)を行うことを特徴とする請求項1に記載の製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法。
(1) 所定の型組、溶鋼鍋の本数を基に、型組における全チャージについて、各設備での処理時間を求める。
(2) 所定の型組、溶鋼鍋の本数を基に、型組における全チャージについて、溶鋼鍋の動きを求める。
(3) 得られた各設備での処理時間及び溶鋼鍋の動きを基に、ガントチャートを作成する。
(4) 作成したガントチャートから、搬送設備の非稼動時間を算出する。
(5) 前記ガントチャート上において、搬送設備の非稼動時間が排滓ポットの交換に必要とされる時間より大きくなる期間を抽出し、抽出した期間を基に、搬送設備の稼動開始時刻と搬送設備の稼動終了時刻とを算出する。
(6) 算出した搬送設備の稼動開始時刻と稼動終了時刻とを基に、排滓ポット交換の開始時刻と終了時刻とを求める。
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