JP4667284B2 - 転炉の操業方法 - Google Patents
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Description
特許文献2での転炉の操業方法にあっては、転炉の出鋼口を通過するスラグをセンサで検知した後に出鋼を停止することによって、出鋼時におけるスラグの流出を最小にすると共に、転炉内に残る溶鋼量をできるだけ少なくし可及的に出鋼量を増加させている。
上記のような問題が起こらないように予め低い出鋼量で操業しているのが実情である。 また、低い出鋼量で操業した場合、出鋼効率が悪くなるばかりか、出鋼した際に取鍋内で溶鋼の湯面が低すぎることとなり、その結果、取鍋内に設けた耐火物の溶損を促進して取鍋の寿命が低下することがある。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、転炉の出鋼側の同一取鍋についての操業実績に基づいてフリーボード(L)と出鋼側の取鍋に装入された溶鋼量(Ws)との関係式(Ws(L))を予め求めておき、前記関係式(Ws(L))と当該チャージで上限として設定したフリーボード(L)とから当該チャージでの溶鋼量(Ws)を算出し、算出された溶鋼量(Ws)と式(1)とを用いて転炉からの出鋼量の上限値(A)を求めると共に、溶鋼を取鍋へ出鋼した際に浴面が取鍋に設定したスラグライン部より下にならないように、転炉からの出鋼量の下限値(A’)を求め、当該チャージでの出鋼量が前記上下限値(A,A’)の範囲に入るように、転炉から溶鋼を出鋼する点にある。
式(1)の入力変数2項目は、出鋼側のクレーンの定格重量から出鋼側の取鍋の空重量を引くことで、出鋼クレーンの吊り上げ重量(出鋼側のクレーン制約)を考慮した当該チャージの出鋼量を求めることができる。
したがって、実際の出鋼時においては、容量制約や出鋼側のクレーンの制約をクリアしたものとなり、転炉からの出鋼をスムーズに行うことができる。また、実際の出鋼量を上限に可及的に近づけることで、出鋼増加させることができる。
本発明における課題解決のための他の技術的手段は、転炉の出鋼側の同一取鍋についての操業実績に基づいてフリーボード(L)と出鋼側の取鍋に装入された溶鋼量(Ws)との関係式(Ws(L))を予め求めておき、前記関係式(Ws(L))と当該チャージで上限として設定したフリーボード(L)とから当該チャージでの溶鋼量(Ws)を算出し、算出された溶鋼量(Ws)と式(2)とを用いて転炉からの出鋼量の上限値(B)を求めると共に、溶鋼を取鍋へ出鋼した際に浴面が取鍋に設定したスラグライン部より下にならないように、転炉からの出鋼量の下限値(B’)を求め、当該チャージでの出鋼量が前記上下限値(B,B’)の範囲に入るように、転炉から溶鋼を出鋼する点にある。
式(2)の入力変数2項目は、出鋼側のクレーンの定格重量から出鋼側の取鍋の空重量を引くことで、出鋼クレーンの吊り上げ重量(出鋼側のクレーン制約)を考慮した当該チャージの出鋼量を求めることができる。
ゆえに、式(2)を用いることで、容量制約,出鋼側のクレーン制約,装入側のクレーン制約とから求めた出鋼量のうち最も小さな値を操業時の出鋼量の上限とすることができる。
したがって、実際の出鋼時においては、容量制約,出鋼側のクレーンの制約,装入側のクレーン制約をクリアしたものとなり、転炉からの出鋼をスムーズに行うことができる。また、実際の出鋼量を上限に可及的に近づけることで、出鋼増加させることができる。
前記フリーボード(L)と溶鋼量(Ws)とを求めるにあたり、溶鋼量(Ws)をスラグを含まない溶鋼の重量としていることが好ましい。
高炉から出銑された溶銑は、混銑車(トピートカー)に装入されて転炉設備まで搬送され、転炉設備に配備された取鍋に払い出しされる。
図1(a)に示すように、転炉設備では溶銑が装入された取鍋2aを、装入側に配備されたクレーン4(以降、装入クレーンとする)によって転炉3まで搬送する。そして、転炉設備では、前記取鍋2a内の溶銑をスクラップ等の主原料と共に転炉3に装入して脱炭処理を行う。
図1(c)に示すように、溶鋼が装入された取鍋2bは台車5によって出鋼側に配備されたクレーン6(以降、出鋼クレーンとする)まで搬送される。出鋼側の取鍋2bは出鋼クレーン6によって吊り上げられ、他の台車に搭載された後、CAS装置,RH脱ガス装置,LF装置等の二次精錬設備に搬送される。
以下、説明の便宜上、溶銑が装入された取鍋2a若しくは溶銑装入のために装入側に配置された取鍋2aのことを溶銑取鍋とする。また、溶鋼が装入された取鍋2b若しくは払い出しのために出鋼側に配置された取鍋2bのことを、出鋼取鍋とする。
言い換えれば、転炉の操業方法では、図2に示すように、前記容量制約や出鋼側のクレーン制約から出鋼量の上限Wsu(上限出鋼量)を求め、それぞれの条件から求めた上限出鋼量Wsuのうち小さい値を実際の出鋼量の上限Aとしている。また、転炉の操業方法では、出鋼した際に溶鋼の浴面が出鋼取鍋2bに設定したスラグライン部より下にならない溶鋼量を出鋼量の下限値A’としている。そして、出鋼する際は、実際の出鋼量が上下限値(A,A’)の範囲に入るようにしている。
出鋼側のクレーン制約では、出鋼クレーン6の吊り上げ可能重量(定格重量)から出鋼取鍋2bの空重量を引き、その値が上限出鋼量Wsuとなる。
容量制約とは、出鋼取鍋2bの搬送状態や二次精錬の精錬条件によって、チャージ毎に出鋼後のフリーボードLを決め、このフリーボードLにより出鋼取鍋2bに装入可能な溶鋼量Ws、即ち、上限出鋼量Wsuを決めることである。
例えば、出鋼取鍋2bは二次精錬設備に搬送されるが、出鋼時のフリーボードLが非常に小さければ、搬送時のスッロシングにより出鋼取鍋2b内の溶鋼が外に溢れる恐れがある。そこで、実施形態では、搬送中にスロッシングによって溶鋼が出鋼取鍋2bから溢れないように、フリーボードLは最低でも200mm以上としている。
また、LT(Ladle Teraement)装置でも、脱流を目的として不活性ガスをインジェクションして溶鋼2を強力に攪拌して精錬処理を行うため、溶鋼2の飛散によって出鋼取鍋2bの上側に地金が付着するのを低減したり、鉄ロスを防止するためフリーボードを400mm以上としている。逆に、これを満たさなければ、地金を除去する出鋼取鍋2bの整備回数が多くなり、鍋整備設備で付着した地金を除去する回数(整備回数)が増えると地金処理の際に、出鋼取鍋2bの耐火物に衝撃が加わることにより耐火物を脱落させてしまう可能性が大となる。
このように、容量制約では、出鋼後の取鍋の搬送状態を考慮しつつ、CAS装置,RH脱ガス装置,LF装置等の向け先に応じてフリーボードを適宜決定し、当該フリーボードから溶鋼の上限出鋼量Wsuを決定している。
なお、図3に示すように、出鋼取鍋2b内には耐火物7が設けられており、耐火物7はチャージ数が増加するに伴って溶損、或いは、剥離損耗する。このように耐火物7の溶損等により、同じフリーボードの値でも出鋼取鍋2bに装入できる溶鋼量Ws(上限出鋼量Wsu)は変化することから、容量制約で上限出鋼量Wsuを求める場合は、操業実績に基づいてフリーボードLと溶鋼量Wsとの関係式(Ws(L))を求めることで、正確な上限出鋼量Wsuを求めることができるようにしている。
以下、転炉の操業方法を図2のフローチャートを用いて説明する。
まず、容量制約によって出鋼できる上限出鋼量Wsuを求める。
同一取鍋(同じ出鋼取鍋2b)について過去数チャージ(例えば15チャージ)のフリーボードLと、溶鋼量Wsと測定して取得おき、図5に示すようにデータ化しておく(S1)。
次に、フリーボードLと溶鋼量Wsとの関係が式(3)に示す一次回帰式になると仮定して、測定したフリーボードLと、溶鋼量Wsとから式(3)の傾きaを求める(S2)。
なお、切片bはバラツキが見られたため、同一の出鋼取鍋2bにおいて、出鋼する際に適宜決定するのが良いことが分かった。また、傾きaは取鍋の形状により算出される固定値を用いても良い。
次に、1チャージ前のフリーボードL(図5のF1)と溶鋼量Ws(図5のD1)とを式(3)に代入して切片bを求める(S3)。
次に、出鋼側のクレーン制約から決まる上限出鋼量Wsuを求める。出鋼側のクレーン制約では、出鋼取鍋2bの空重量を測定する(S5)。前記空重量と、出鋼クレーン6の定格重量(吊り限界重量)とを式(4)に代入して、上限出鋼量Wsuを算出する(S6)。ここで、実際の出鋼量にはバラツキαが考えられるため、式(4)に示すように、出鋼量のバラツキαを考慮して上限出鋼量Wsuを求めることが好ましい。
そして、転炉3から出鋼する際には、出鋼量が上下限値A,A’の範囲に入るように、転炉内から溶鋼を出鋼する。例えば、転炉3で脱炭処理が終了した際に、転炉3内の溶鋼量が上下限値A,A’内に入るように、転炉3に装入する溶銑やスクラップ等の主原料を調整する(S9)。或いは、転炉3で脱炭処理が終了した際に、転炉3内の溶鋼量が上下限値A,A’よりも多い場合には、出鋼する際に、当該出鋼量が上下限値A,A’内に入るように、転炉3内の溶鋼を残す(S10)。或いは、一旦出鋼した溶鋼の一部を鋳型などに捨てる(捨て湯する)。
また、出鋼量の下限A’を出鋼量の上限Aに0.9を掛けた値にしたのは、出鋼取鍋2bに溶鋼を装入した際に溶鋼の浴面がスラグライン部より下とならない溶鋼量Wsを、操業実績から求めたところ、出鋼量の上限Aで示すと0.9を掛けた数値になっているからである。
ゆえに、フリーボードLが900mm以下にならない溶鋼量Wsを出鋼量の下限値A’として考えても良い。
上記の実施の形態では、容量制約,出鋼側のクレーン制約を考慮して出鋼量の上限を求めているが、これに加え、図4に示すように、装入側のクレーン制約を考慮して出鋼量の上限B(上限出鋼量Wsu)を求めるようにしてもよい。装入側のクレーン制約では、出鋼側のクレーン制約と同様に、装入側のクレーンが吊り上げられる重量から上限出鋼量Wsuを求めている。
なお,容量制約,出鋼側のクレーン制約は上述した通りであり説明を省略する。
まず、過去の操業実績に基づいて、当該チャージにおける出鋼歩留Y,溶銑配合率HMRを決定する(S11)。次に、溶銑取鍋2aの空重量を測定する(S12)。出鋼歩留Y,溶銑配合率HMR,溶銑取鍋2aの空重量,装入クレーン5の定格重量(吊り限界重量)とを式(5)に代入して、上限出鋼量Wsuを算出する(S13)。
そして、容量制約,出鋼側のクレーン制約,装入側のクレーン制約からそれぞれの上限出鋼量Wsuを求め,式2に示すように、最も小さい値を実際の出鋼量の上限Bとする(S14)。出鋼量の下限値を、出鋼量の上限Bに0.9を掛けた値が出鋼量の下限B’としている(S15)。
図3に示すように、上記の実施の形態では、フリーボードLをスラグ層8の浴面9(表面)から取鍋上部10までの距離としていたが、これに代え、フリーボードLをスラグ層8を含む浴面9(スラグ層8の表面)から取鍋上部10までの距離をとしてもよい。
例えば、スラグ層8の浴面9から取鍋上部10までの距離を測定すると共に、スラグ層8の厚みを測定しておき、式(6)を用いてフリーボードLを補正してもよい。
例えば、溶鋼量Wsを算出する際、スラグの厚みを測定しておき、式(7),式(8)を用いて溶鋼量Wsを補正することで、溶鋼量Wsにスラグの重量を含まないようにすることができる。
上記の実施の形態では、1チャージ前のフリーボードLと溶鋼量Wsとを式(3)に代入して切片bを求めていたが、過去数チャージで測定したフリーボードLを式(9)を用いて補正し、式(9)で補正した補正フリーボードL’と溶鋼量Wsとを用いて切片bを求めるようにしてもよい。
具体的には、図5,6に示すように、過去15チャージの出鋼取鍋2bの空重量を測定しておく(S20)。そして,nチャージ前での出鋼取鍋2bの空重量と、1チャージ前の出鋼取鍋2bの空重量と、nチャージ前のフリーボードLとを式(9)に代入して、nチャージ前のフリーボードLを補正する(S21)。
本実施例では、内径3.7mの取鍋を用いているため、式(9)で溶損量を溶鋼量Wsに変換するための変数が数値「35」となっているが、前記変数は取鍋の内径によって変化する。よって、溶損量を溶鋼量Wsに変換するための変数は、数値「35」に限らず、取鍋の内径に応じて変化するものと考えて良い。
また、次のように切片bを求めるようにしてもよい。
なお、スラグライン部の下端(最下端)での溶鋼量は、出鋼中に湯面が当該最下端に到達した時点での秤量値により求めた。スラグライン部の最下端をフリーボードに換算しておき(例えば、L=900mm)、このフリーボードLを式(3)に代入することで、スラグライン部の最下端での溶鋼量を求めることが可能である。
従来例2では、式(2)による出鋼量の上限値をオーバーしたため、その出鋼量が出鋼側のクレーンの定格重量を超えてしまうのを防止するために捨て湯が多くなり、その作業のために時間を要して生産性が著しく低下した。
従来例3,4では、式(1)又は式(2)による出鋼量の下限値よりも少なく、溶鋼2の湯面がスラグライン部より下になったので、スラグライン部よりも耐火物7の厚みtが小さく耐食性が低い部分での溶損が進行し、取鍋の寿命が低下した。また、出鋼量が非常に少ないので取鍋2の湯面レベルが非常に低くRH脱ガス装置における浸漬管が溶鋼に届かない恐れがあり溶鋼処理不能となる。
従来例3,4では、出鋼量を低く抑え過ぎているため、生産性の低下及び熱ロスが大きくなっている。また、従来例2では、捨て湯による物流障害のため著しい生産性の低下を招いている。
2b 出鋼側の取鍋
3 転炉
4 装入側のクレーン
5 出鋼側のクレーン
Claims (5)
- 転炉の出鋼側の同一取鍋についての操業実績に基づいてフリーボード(L)と出鋼側の取鍋に装入された溶鋼量(Ws)との関係式(Ws(L))を予め求めておき、
前記関係式(Ws(L))と当該チャージで上限として設定したフリーボード(L)とから当該チャージでの溶鋼量(Ws)を算出し、算出された溶鋼量(Ws)と式(1)とを用いて転炉からの出鋼量の上限値(A)を求めると共に、溶鋼を取鍋へ出鋼した際に浴面が取鍋に設定したスラグライン部より下にならないように、転炉からの出鋼量の下限値(A’)を求め、
当該チャージでの出鋼量が前記上下限値(A,A’)の範囲に入るように、転炉から溶鋼を出鋼することを特徴とする転炉の操業方法。
- 転炉の出鋼側の同一取鍋についての操業実績に基づいてフリーボード(L)と出鋼側の取鍋に装入された溶鋼量(Ws)との関係式(Ws(L))を予め求めておき、
前記関係式(Ws(L))と当該チャージで上限として設定したフリーボード(L)とから当該チャージでの溶鋼量(Ws)を算出し、算出された溶鋼量(Ws)と式(2)とを用いて転炉からの出鋼量の上限値(B)を求めると共に、溶鋼を取鍋へ出鋼した際に浴面が取鍋に設定したスラグライン部より下にならないように、転炉からの出鋼量の下限値(B’)を求め、
当該チャージでの出鋼量が前記上下限値(B,B’)の範囲に入るように、転炉から溶鋼を出鋼することを特徴とする転炉の操業方法。
- 前記出鋼量の下限値(A’)は、前記上限値(A)に0.9をかけたものであることを特徴とする請求項1に記載の転炉の操業方法。
- 前記出鋼量の下限値(B’)は、前記上限値(B)に0.9をかけたものであることを特徴とする請求項2に記載の転炉の操業方法。
- 前記フリーボード(L)と溶鋼量(Ws)との関係式(Ws(L))を求めるにあたり、溶鋼量(Ws)をスラグを含まない溶鋼の重量としていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の転炉の操業方法。
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