JP6061704B2 - 被覆マグネタイト粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、表面がシラン化合物によって被覆されてなる被覆マグネタイト粒子に関する。
表面がシラン化合物によって被覆されてなる被覆マグネタイト粒子において、マグネタイトのコア粒子にマンガンを含有させる技術が種々提案されている。例えば特許文献1には、鉄元素を基準としてマンガンを0.7〜2.0重量%含有し、磁性酸化鉄の鉄溶解率が20重量%までに存在するマンガンの含有量と、該磁性酸化鉄中に存在する全マンガンの含有量との比が50〜90%である磁性酸化鉄が記載されている。この磁性酸化鉄は、粉砕トナーの原料として用いられるものである。
特許文献2には、粒子の中心から表面へ連続的にケイ素成分を含有し、ケイ素成分と結合したZn,Mn,Cu,Ni,Co,Cr,Cd,Al,Sn,Mg,Tiの中から選ばれる少なくとも1種以上の金属成分からなる金属化合物によって外殻が被覆され、かつケイ素成分が露出した芯粒子に疎水化性薬剤を被覆した酸化鉄粒子が記載されている。疎水化性薬剤としては、ビニルトリクロロシランやビニルトリエトキシシラン等が用いられている。
特許文献3及び4には、マンガンを含む磁性酸化鉄粒子を重合トナーの原料として用いることが記載されている。
特開平11−316474号公報 特開2000−272924号公報 特開2005−263619号公報 特開2008−282002号公報
特許文献1に記載の技術は、磁性酸化鉄の表面にマンガンを偏在させることで、粉砕トナーの耐久性やトナーの結着樹脂中への磁性酸化鉄の分散性を向上させるものである。しかし同文献には、磁性酸化鉄を重合トナーの原料とすることについては何らの検討もなされていない。
特許文献2に記載の技術は、酸化鉄中にケイ素を含有させることを必須とし、更にそれ以外に複数種類の金属元素を酸化鉄の外殻に存在させることで、酸化鉄の残留磁化及び保磁力を低くするとともに、電気抵抗を高くしようとするものである。しかし同文献には、この酸化鉄粒子が重合トナーの原料として好適なものであるか否かについての言及はなされていない。
特許文献3及び4では、酸化鉄粒子を重合トナーの原料として使用することが検討されているものの、酸化鉄粒子中にマンガンを含有させることの技術的な意義については何ら言及されていない。
本発明の課題は、重合トナーの原料として特に適した被覆マグネタイト粒子、すなわち粒子の凝集を抑制して分散性が高く、トナー内での着色力や色味が良好である、被覆マグネタイト粒子を提供することにある。
本発明は、マグネタイトのコア粒子の表面に、アルキルシラン化合物層を有し、
前記マグネタイトのコア粒子における鉄の一部がマンガンで置換されており、
前記マグネタイトのコア粒子を、鉄元素基準で表面から10質量%溶解させたときに溶出するマンガンの量が、該コア粒子全体に対して0.05質量%以上0.35質量%以下である、
ことを特徴とする被覆マグネタイト粒子を提供するものである。
本発明によれば、マグネタイトのコア粒子の表面がアルキルシラン化合物によって均一に被覆されてなる被覆マグネタイト粒子が提供される。この被覆マグネタイト粒子は、疎水性が高いとともに粒子どうしの凝集の程度が低いので、有機溶媒中での分散性が高い。そのことに起因して、粒子の表面において重合性単量体の重合が均一に進行しやすくなる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の被覆マグネタイト粒子は、マグネタイトのコア粒子と、該コア粒子の表面を直接被覆するアルキルシラン化合物(以下、単に「シラン化合物」とも言う。)からなるアルキルシラン化合物層(以下、単に「シラン化合物層」とも言う。)とを有する。シラン化合物層は一般に本発明の被覆マグネタイト粒子の最外層をなす。本発明の被覆マグネタイト粒子の各種の性能を更に向上させることを目的として、場合によっては、シラン化合物層の外面に1又は2以上の他の層が配置されていても良い。
本発明の被覆マグネタイト粒子は、コア粒子に含まれている微量元素の分布状態によって特徴付けられる。詳細には、コア粒子には、マグネタイトを構成する元素である鉄及び酸素に加えて特定量のマンガンが含まれている。マンガンは、コア粒子における表面及びその近傍に偏在している。コア粒子の表面に特定量のマンガンが偏在していることによって、本発明の被覆マグネタイト粒子は、シラン化合物層が薄くかつ均一にコア粒子の表面を被覆した状態のものとなる。その結果、本発明の被覆マグネタイト粒子は、疎水性が高いとともに粒子どうしの凝集の程度が低くなる。それによって本発明の被覆マグネタイトは有機溶媒中での分散性が高いものとなる。
コア粒子の表面に特定量のマンガンが偏在していることが、シラン化合物層の薄くかつ均一な被覆をもたらす理由を、本発明者らは次のように考えている。マンガンは複数の価数を有することができる元素であり、そのことに起因して活性が高いものである。したがって、コア粒子の表面にシラン化合物層が形成されるときに、該表面に活性の高い元素であるマンガンが特定量存在していると、反応が活性化され、シラン化合物層が首尾良く形成されると考えられる。マンガンの量が多すぎると、シラン化合物の反応が過度に進行してしまい、不均一なシラン化合物層が形成されやすい。一方、マンガンの量が少なすぎると、シラン化合物の反応が促進されず、やはり不均一なシラン化合物層が形成されやすい。これらの観点から、コア粒子の表面に存在するマンガンの含有量が決定される。本発明者が鋭意検討した結果、コア粒子を、鉄元素基準で表面から10質量%溶解させたときに溶出するマンガンの量を、該コア粒子全体に対して0.05質量%以上0.35質量%以下に設定すると、薄くかつ均一なシラン化合物層が形成されることが判明した(以下、この含有量のことを、「粒子表面マンガン量」と言う。)。この有利な効果を一層顕著なものとする観点から、粒子表面マンガン量は、0.065質量%以上0.33質量%以下とすることが好ましく、0.080質量%以上0.30質量%以下とすることが更に好ましい。
粒子表面マンガン量は、以下の方法で測定される。コア粒子25gを脱イオン交換水で4Lにメスアップする。ウォーターバスで40℃に保ちながら、撹拌速度200rpmで撹拌する。このスラリー中に、特級塩酸試薬(濃度35質量%)429mLを脱イオン水に溶解し全体の体積を1,000mLとした塩酸水溶液を加える。これによってコア粒子の溶解を開始する。コア粒子の溶解開始から該粒子がすべて溶解してスラリーが透明になるまでの間、5分毎に25mLの液をサンプリングする。サンプリングした液を0.1μmメンブランフィルターで濾過して、濾液を採取する。採取した濾液を用い、プラズマ発光分析(ICP)によって鉄元素の定量を行う。そして、鉄元素溶解率(質量%)を以下の式から算出する。
Figure 0006061704
マンガンの量は、前記の濾液を用い、ICPによって定量する。そして、上述の方法で求めた鉄元素溶解率が10質量%までのサンプルに含まれていたマンガンの全量を算出し、コア粒子の全量(25g)で除して100を乗じる。なお、本発明の被覆マグネタイト粒子においては、シラン化合物層は、コア粒子の表面を薄く被覆しているので、被覆マグネタイト粒子の質量とコア粒子の質量はほぼ同一とみなすことができる。したがって、粒子表面マンガン量の測定においては、測定対象をコア粒子とした場合と、被覆マグネタイト粒子とした場合とで実質的な差異は生じない。
本発明においては、上述のとおり、コア粒子の表面及びその近傍にマンガンが存在していることが必要であるところ、コア粒子の内部にはマンガンが存在していても良く、あるいは存在していなくても良い。いずれの場合であっても、シラン化合物層を首尾良く形成する観点から、コア粒子全体に存在するマンガンの含有量(以下、この含有量のことを、「粒子全体マンガン量」と言う。)を、0.08質量%以上0.7質量%以下とすることが好ましい。粒子全体マンガン量を0.08質量%以上に設定するか、又は0.7質量%以下に設定することで、シラン化合物層の形成を均一に行うことができ、被覆マグネタイト粒子が過度に凝集することを効果的に防止することができ、また疎水性が低下することを効果的に防止することができる。シラン化合物層を一層首尾良く形成する観点から、粒子全体マンガン量は、0.08質量%以上0.7質量%以下とすることが更に好ましく、0.10質量%以上0.55質量%以下とすることが一層好ましい。
粒子全体マンガン量は、先に述べた粒子表面マンガン量の測定において、コア粒子全体を溶解させて得られた液中に含まれるマンガンをICPで定量し、定量値をコア粒子の全量で除し、100を乗じて算出される。
本発明の被覆マグネタイト粒子において、マンガンは主として、マグネタイト中の鉄と置換することでコア粒子中に存在していると発明者らは考えている。マグネタイト中の鉄と置換せず、マンガン酸化物やマンガンフェライトの状態等で存在しているマンガンがコア粒子中に存在していることは許容される。しかし、シラン化合物の均一な形成を考慮すると、マグネタイト中の鉄と置換していないマンガンの存在量は少ないことが好ましい。
本発明の被覆マグネタイト粒子においては、コア粒子の構成元素は、鉄、マンガン及び酸素を主体とし、必要に応じてそれ以外の元素が含まれていても良い。それ以外の元素としては、例えばSi、Ti、Al、Zr、Zn、Mg、Pなどが挙げられる。コア粒子の質量に占める鉄、マンガン及び酸素以外の元素の総量は、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.10〜8質量%であることが更に好ましい。
本発明の被覆マグネタイト粒子においては、コア粒子の表面及びその近傍に特定量のマンガンが偏在していることに起因して、シラン化合物はコア粒子の表面を薄くかつ均一に被覆している。このことによって、本発明の被覆マグネタイト粒子の表面を十分に疎水化することができる。シラン化合物による疎水化は、本発明の被覆マグネタイト粒子が有機溶媒へ分散することを促進させる。シラン化合物は、例えばSiの原子に直接結合したアルキル基を1個又は2個以上有する有機シランから生成する化合物である。「有機シランから生成する化合物」には、例えば有機シランの加水分解生成物や脱水縮合生成物等が包含される。シラン化合物は好ましくは炭素数2〜10のアルキル基を有している。このアルキル基は、その水素原子の1又は2以上が、フェニル基及びスチリル基などのアリル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ビニル基等で置換されていてもよい。このようなシラン化合物を生成させるための有機シランとしては、例えばアルコキシシランや、シランカップリング剤として知られる化合物が挙げられる。例えば有機シランとしてR1 xSi(OR24-xで表されるものを用いることができる。式中R1は、同一の又は異なる炭素数2〜10のアルキル基を表し、R2は、R1と同じ鎖長であるか又はそれよりも短鎖のアルキル基を表す。xは好ましくは1〜3の整数、更に好ましくは1又は2、一層好ましくは1を表す。xが2又は3である場合、R1は、その炭素数が上述の範囲であることを条件として、同種のアルキル基でも良く、あるいは異種のアルキル基でも良い。
マグネタイトのコア粒子の表面を被覆する前記のシラン化合物において、アルキル基の炭素数を好ましくは2〜10に設定すると、長鎖アルキル基による疎水性相互作用に起因する粒子どうしの凝集が防止されるとともに、マグネタイトのコア粒子の表面がシラン化合物によって薄くかつ均一に被覆され、かつ被覆マグネタイト粒子の有機溶媒中での分散安定性が高まる。これらの効果を一層顕著なものとする観点から、前記のシラン化合物におけるアルキル基の炭素数は更に好ましくは3〜8であり、一層好ましくは3〜6である。
前記のシラン化合物を生成する有機シランの具体例としては、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、iso−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、iso−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、iso−デシルトリメトキシシラン、tert−デシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、iso−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、iso−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、iso−デシルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。これらの有機シランは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の被覆マグネタイト粒子中に含まれる前記のシラン化合物の量は、該シラン化合物に含まれるアルキル基のカーボン換算で、被覆マグネタイト粒子の質量に対して0.1〜2.0質量%、特に0.2〜1.5質量%であることが好ましい。シラン化合物の含有量がこの範囲内であることによって、一次粒子の凝集が抑制されるという有利な効果が奏される。被覆マグネタイト粒子中に含まれる前記のシラン化合物の量(カーボン換算)は、例えば炭素分析装置(堀場製作所、EMIA−110)によって測定される。
シラン化合物によって被覆されるコア粒子としては、X線回折測定したときに主ピークがマグネタイトのピークと一致するものが用いられる。この場合、マグネタイトのピークのみが観察されても良く、あるいはマグネタイトの主ピークの他に、一部マグヘマイト等のピークが観察されても良い。コア粒子には、必要に応じ、Si、Ti、Al、Zr、Mn、Zn、Mg等の1種又は2種以上の元素を含有させても良い。
コア粒子はその形状が球状、多面体状(例えば六面体状、八面体状)等であり得る。コア粒子が球状であると、上述のシラン化合物による被覆が極めて良好に行えるので好ましい。したがってコア粒子として、多面体状のものよりも、球状のものを用いることが好ましい。コア粒子の形状は、後述する被覆マグネタイト粒子の製造方法において、酸化性ガスを吹き込みながらの水酸化第一鉄の湿式酸化における液のpHを制御することで、コントロールすることができる。またコア粒子のBET比表面積は、2〜50m2/g、特に3〜30m2/gに設定されていることが好ましい。BET比表面積は、例えば後述する方法で測定される。
本発明の被覆マグネタイト粒子においては、コア粒子の表面を被覆するシラン化合物層は薄いものなので、被覆マグネタイト粒子の粒径とコア粒子の粒径とはほぼ同一とみなせる。被覆マグネタイト粒子はその一次粒子の平均粒径が0.08〜0.5μm、特に0.11〜0.40μmであることが、被覆マグネタイト粒子を、プリンターや電子複写機のトナー用材料として用いる場合に好ましい。被覆マグネタイト粒子の平均粒径がこの範囲内であれば、トナー中での着色力や色味が良好となる。被覆マグネタイト粒子の平均粒径は、次の方法で測定される。
〔被覆マグネタイト粒子の一次粒子の平均粒径の測定方法〕
被覆マグネタイト粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して撮影された像から測定する。具体的には、SEM写真(倍率40,000倍)を用い、写真上の粒径を同軸方向に200個以上計測し、その個数平均から求める。
本発明の被覆マグネタイト粒子においては、上述のシラン化合物は、コア粒子の表面を薄く被覆している。したがって、被覆マグネタイト粒子の形状はコア粒子の形状を引き継いだものとなる。上述したとおり、コア粒子は球状であることが好ましいので、被覆マグネタイト粒子も球状であることが好ましい。
均一な厚みのシラン化合物層が形成されている本発明の被覆マグネタイト粒子は、そのことに起因して凝集が抑制されて、有機溶媒中での分散性が高いものでもある。具体的には、以下の方法で測定されるスチレン中での沈降速度が0.35mm/min以下であることが好ましく、0.30mm/min以下であることが更に好ましい。スチレン中での沈降速度は、被覆マグネタイト粒子の凝集状態を反映しており、沈降速度が遅いほど疎水性が高く良く分散されていることを意味する。
〔スチレン中での被覆マグネタイト粒子の沈降速度〕
被覆マグネタイト粒子0.2gとスチレン(関東化学社製)10ccを試験管に入れ、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製SONIFIER450、出力80W)を用いて60秒間超音波を照射する。次いで溶液安定性評価装置(フォーマルアクション社製タービスキャンMA2000)を用いて沈降速度を測定する。
また、シラン化合物で被覆されている本発明の被覆マグネタイト粒子は、該シラン化合物の作用によって表面が疎水化されている。疎水化の程度は、メタノール疎水化度を尺度として表現することができる。メタノール疎水化度は0〜100%の値をとり、疎水性が高いほど、その値は高くなる傾向にある。したがって、疎水性の観点からはメタノール疎水化度の値は高い方が好ましい。被覆マグネタイト粒子は、このメタノール疎水化度が好ましくは53〜75%、更に好ましくは55〜75%、一層好ましくは58〜75%である。メタノール疎水化度がこの範囲であることによって、被覆マグネタイト粒子は、有機溶媒のみならず、スチレン−アクリル系樹脂を始めとする各種樹脂への分散性が良好になる。メタノール疎水化度は、以下の方法によって測定される。
〔メタノール疎水化度の測定方法〕
粉体濡れ性試験機(株式会社レスカ製WET101P)を用い、体積濃度40%(温度25℃)のメタノール水溶液60mlに被覆マグネタイト粒子50mgを添加し、撹拌羽根により撹拌する。この状態下にメタノールを滴下し、これとともにメタノール水溶液に波長780nmのレーザー光を照射し、その透過率を測定する。被覆マグネタイト粒子が濡れて沈降、懸濁していき、透過率が80%となるところのメタノール水溶液の体積濃度をメタノール疎水化度とする。
更に、シラン化合物層で被覆されている本発明の被覆マグネタイト粒子は、該シラン化合物層の作用によって、有機溶媒中における該シラン化合物層からのシラン化合物の溶出が抑制されている。具体的には、以下の方法で測定されるシラン化合物の溶出率が、粒子全体に含まれるシラン化合物の質量に対して好ましくは30質量%以下、更に好ましくは15質量%以下となっている。
〔シラン化合物の溶出率の測定方法〕
被覆マグタイト粒子3gを30ccのガラス容器に取り、ここにテトラヒドロフラン(THF)を20cc投入する。超音波ホモジナイザー(BRANSON社製SONIFIER Model450,出力80W)を用いて30秒間超音波を照射して洗浄を行う。次いで、磁石でマグネタイト粒子を沈降させ、上澄み液を除去する。その後50℃で3時間乾燥してから、被覆マグネタイト粒子中に含まれるカーボンの量を、炭素分析装置(堀場製作所製、EMIA−110)を用いて測定する。シラン化合物の溶出率は、次式で求める。
溶出率(%)=((A−B)/A)×100
式中、AはTHF洗浄前の被覆マグネタイト粒子に含まれるカーボンの量であり、BはTHF洗浄前の被覆マグネタイト粒子に含まれるカーボンの量である。
本発明の被覆マグネタイト粒子は、そのBET比表面積が3〜20m2/g、特に3.5〜18m2/gに設定されていることが好ましい。被覆マグネタイト粒子のBET比表面積は、有機溶媒中での該粒子の分散性に影響を及ぼすものであるところ、BET比表面積を上述の範囲に設定することで、有機溶媒中での分散性が良好となるので好ましい。BET比表面積を、上述の範囲に設定するためには、例えばコア粒子に含まれるマンガンの量を調整したり、コア粒子の表面に形成するシラン化合物の量を調整したりすれば良い。
BET比表面積に関し、本発明の被覆マグネタイト粒子は、BET比表面積の維持率が60%以上90%未満であることが好ましく、60%以上87%以下であることが更に好ましく、60%以上85%以下であることが一層好ましい。BET比表面積の維持率は、被覆マグネタイト粒子におけるシラン化合物層の被覆状態についての指標となるものであるところ、該維持率が前記の範囲内である被覆マグネタイト粒子は、適切な量のシラン化合物が均一にマグネタイトのコア粒子の表面を被覆しているものとなる。BET比表面積の維持率は以下の方法で測定される。
〔BET比表面積の維持率の測定方法〕
次に示す式から算出した。
BET比表面積維持率(%)=B/A×100
式中、Aはコア粒子のBET比表面積であり、Bは被覆マグネタイト粒子の比表面積である。BET比表面積は、例えば島津−マイクロメリティックス製2200型BET計を用いて測定することができる。
次に、本発明の被覆マグネタイト粒子の好適な製造方法について説明する。本発明の被覆マグネタイト粒子の好適な製造方法としては、以下の方法1及び方法2が挙げられる。
〔方法1〕
二価の鉄源化合物及び二価のマンガン源化合物を含む水溶液を、塩基性物質によって中和し、それによって生じた水酸化第一鉄のスラリーに酸化性ガスを吹き込んで、鉄の一部がマンガンで置換されたマグネタイトのコア粒子を生成させるコア粒子生成工程と、
生成したマグネタイトのコア粒子の表面を、アルキルシラン化合物で被覆する被覆工程とを備えた被覆マグネタイト粒子の製造方法であって、
前記コア粒子生成工程においては、水酸化第一鉄の酸化が80質量%となるまでは、前記スラリーのpHを5.5以上7.0以下に維持するとともに、
水酸化第一鉄の酸化が80%超になったら、前記スラリーのpHを7.0超7.5以下に維持する、被覆マグネタイト粒子の製造方法。
〔方法2〕
二価の鉄源化合物を含む水溶液を、塩基性物質によって中和し、それによって生じた水酸化第一鉄のスラリーに酸化性ガスを吹き込んで、マグネタイトのコア粒子を生成させるコア粒子生成工程と、
生成したマグネタイトのコア粒子の表面を、アルキルシラン化合物で被覆する被覆工程とを備えた被覆マグネタイト粒子の製造方法であって、
前記コア粒子生成工程においては、水酸化第一鉄の酸化が80質量%となるまでは、前記スラリーのpHを7以下に維持するとともに、
水酸化第一鉄の酸化が80%超になったら、前記スラリー中に二価のマンガン源化合物を添加するとともに、スラリーのpHを、それまでよりも高いことを条件として6.5〜7.5に維持し、
更に、二価のマンガン源化合物を、該マンガン源化合物のスラリー中での濃度が、スラリー中の鉄の濃度に対して0.07〜1.0質量%となるように添加する、被覆マグネタイト粒子の製造方法。
方法1及び方法2のいずれにおいても、本製造方法は、(1)マグネタイトのコア粒子の製造工程、(2)シラン化合物によるコア粒子の表面の被覆工程の2つに大別される。以下、それぞれの工程について説明する。
(1)のマグネタイトのコア粒子の製造工程において、マグネタイトのコア粒子は、当該技術分野で公知の方法に従い製造することができる。例えば、アルカリ(塩基性物質)を用いた第一鉄塩の中和反応によって生じた水酸化第一鉄スラリーに、空気や酸素を始めとする酸化性ガスを吹き込む湿式酸化法によってマグネタイトのコア粒子を製造できる。この場合、必要に応じ、Si、Ti、Al、Zr、Mn、Zn、Mg等の1種又は2種以上を含む水溶性化合物を、反応用溶液に投入しても良く(反応前、反応開始時、又は反応途中のいずれでも可)、あるいはコア粒子の生成完了後に投入しても良い。第一鉄塩の中和反応には、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸ナトリウム等の炭酸塩を始めとするアルカリ(塩基性物質)が用いられる。
(1)の工程においては、マンガンの添加時期及びスラリーのpHを適切に調節することで、表面及びその近傍にマンガンが偏在したコア粒子を製造することができる。マンガンの添加時期については、(ア)反応の当初から反応液に存在させる場合と、(イ)反応の当初には反応液にマンガンは存在させず、反応の途中でマンガンを反応液に添加する場合とに大別される。
前記(ア)の場合には、二価の鉄源化合物及び二価のマンガン源化合物を含む水溶液を、塩基性物質によって中和し、それによって生じたスラリーに酸化性ガスを吹き込んで、二価の鉄の一部がマンガンで置換されたマグネタイトのコア粒子を生成させる。二価の鉄源化合物としては、例えば硫酸鉄(II)や塩化鉄(II)などが挙げられる。二価のマンガン源化合物としては、例えば硫酸マンガン(II)などが挙げられる。硫酸鉄(II)の品位によっては、該硫酸鉄(II)中に硫酸マンガン(II)が含まれている場合があり、そのような場合には、二価の鉄源化合物と二価のマンガン源化合物を別個に使用する必要はない。反応液における二価のマンガンの濃度は、先に述べた粒子全体マンガン量が満たされるような量とすれば良い。例えば二価のマンガンの濃度は、好ましくは鉄の濃度に対して0.01〜0.14質量%、更に好ましくは鉄の濃度に対して0.02〜0.12質量%とすることができる。
反応の当初から反応液中に二価のマンガンを存在させる場合には、スラリーのpHを調整して、マグネタイトのコア粒子が生成する初期段階では、該マグネタイト中にマンガンが取り込まれないようにすることが好ましい。本発明者の検討の結果、スラリーのpHを低く設定すると、二価のマンガンは反応液中に存在し、マグネタイト中に取り込まれにくく、逆にスラリーのpHを高く設定すると、二価のマンガンはマグネタイト中に取り込まれやすいことが判明した。そこで、コア粒子の生成工程においては、水酸化第一鉄の酸化が80質量%となるまでは、スラリーのpHを低めの値である5.5〜7.0、特に5.7〜6.8に維持することが好ましい。そして、マグネタイトの生成反応が進行し、水酸化第一鉄の酸化が80質量%超になったら、スラリーのpHを高めの値である7.0〜7.5、特に7.1〜7.3に維持し、マグネタイトへのマンガンの取り込みを促進することが好ましい。このようにして、表面及びその近傍にマンガンが偏在したコア粒子を製造することができる。この方法を採用すると、中心域から表面にわたってマンガンが実質的に連続して存在しているコア粒子を製造することができる。
なお、前記の方法においては、水酸化第一鉄の酸化が80%超になった時点で直ちにスラリーのpHを上昇させてもよく、あるいは80%超になった後のある時点で(例えば82質量%になった時点や、85質量%になった時点で)スラリーのpHを上昇させてもよい。しかし少なくとも、水酸化第一鉄の酸化が92.5質量%になるまでの間にスラリーのpHを7以上に上昇させることが好ましい。
前記の(イ)の場合には、湿式酸化法を行うときのスラリーのpHを7以下、好ましくは5.5〜7.0、更に好ましくは5.5〜6.0に保ちつつ、該液に空気等の酸化性ガスを吹き込み、湿式酸化を行う。そして、水酸化第一鉄の酸化が80質量%超になったら、スラリー中に二価のマンガン源化合物を添加するとともに、スラリーのpHを、それまでよりも高くしてマグネタイトへのマンガンの取り込みを促進することが好ましい。具体的には、前記のpHの範囲よりも高いことを条件として、pHを6.5〜7.5、特に7.1〜7.3に維持することが好ましい。このようにしても、表面及びその近傍にマンガンが偏在したコア粒子を製造することができる。この方法を採用すると、中心域にマンガンを実質的に含まないコア粒子を製造することができる。
添加するマンガン源化合物の量は、先に述べた粒子全体マンガン量が満たされるような量とすれば良い。例えばスラリー中の二価のマンガンの濃度は、好ましくはスラリー中の鉄の濃度に対して0.07〜1.0質量%、更に好ましくは鉄の濃度に対して0.1〜0.8質量%とすることができる。ここで言うスラリー中の鉄の濃度とは、液中に存在する鉄源化合物の量及びマグネタイトを構成する鉄の量の合計量の濃度のことであり、スラリー全体として含有している鉄元素の濃度の合計に等しい。
なお、湿式酸化における空気等の酸化性ガスの吹き込み条件は、本製造方法において特に臨界的でなく、公知の条件を適宜採用することができる。
(1)の工程によって得られたマグネタイトのコア粒子は、次いで(2)の工程に付される。(2)の工程においては、コア粒子の表面を、好ましくは炭素数2〜10のアルキル鎖を有するシラン化合物で被覆してシラン化合物層を形成する。この被覆のために、本工程においては、疎水基として炭素数2〜10のアルキル鎖を有するアルコキシシランを用い、このアルコキシシランから前記のシラン化合物を生成させることが好ましい。
具体的には、上述したアルコキシシランとコア粒子とを混合し、次いで大気雰囲気下に熱処理して、アルコキシシランをコア粒子の表面で加水分解させて、その加水分解物や脱水縮合物等からなる前記のシラン化合物を生成させ、これによってコア粒子の表面を被覆する。アルコキシシランを加水分解させて生成したシラン化合物をコア粒子の表面に被覆する方法には、湿式法と乾式法がある。湿式法では、水を媒体とし、コア粒子を含み、pHが所定の範囲に設定されたスラリーにアルコキシシランを添加してコア粒子の表面を被覆する。乾式法では、コア粒子とアルコキシシランとを、それ以外の液媒体の非存在下に混合して該コア粒子の表面を被覆する。これら2つの方法のうち、乾式法を用いることが、シラン化合物によるコア粒子の表面の被覆を首尾良く行い得る点から好ましい。
乾式法において、コア粒子とアルコキシシランとの混合には、公知の混合撹拌装置を用いることができる。例えば、ヘンシェルミキサ、ハイスピードミキサ、エッジランナー、リボンブレンダー等を用いることができる。これらの装置の運転条件としては、混合撹拌時の温度を10〜50℃、特に10〜40℃に設定することが好ましい。これによって、両者が十分に混合される前にアルコキシシランが意図せず縮合してしまうことや、アルコキシシランがコア粒子と十分に混合される前に揮発してしまうことを効果的に防止できる。コア粒子とアルコキシシランの配合の割合は、コア粒子100質量部に対して、アルコキシシランを0.1〜10質量部、特に0.3〜3質量部とすることが、得られる被覆マグネタイト粒子に含まれるシラン化合物の量が適切になり、被覆マグネタイト粒子の凝集を効果的に防止し得る点から好ましい。
乾式混合が完了したら、アルコキシシランの脱水縮合が生じる温度にまで混合物を加熱して該アルコキシシランの脱水縮合を生じさせる。本製造方法においては、コア粒子の表面に活性の高い元素であるマンガンが偏在しているので、アルコキシシランの脱水縮合反応は均一にかつ円滑に進行する。アルコキシシランの種類にもよるが、加熱温度は80〜180℃、特に105〜160℃という比較的低温とすることが好ましい。加熱をこの温度範囲で行うことで、コア粒子の過度の凝集を防止しつつ、アルコキシシランの脱水縮合を行うことができる。加熱時の雰囲気に特に制限はなく、大気下で加熱を行っても良い。
以上の方法によって製造された本発明の被覆マグネタイト粒子は、疎水性が高く、かつ有機溶媒への分散性が良好なので、重合法トナーの原料として特に有用である。例えば懸濁重合法を行う場合、本発明の被覆マグネタイト粒子を、バインダのモノマー成分や電荷制御剤とともに混合し、次いで水を添加し、更に懸濁安定化剤を加えて懸濁させ、懸濁液をモノマーの重合工程に付して重合することでトナーが得られる。この方法によれば粒径のそろったトナーを一工程で得ることができる。また、本発明の被覆マグネタイト粒子を、粉砕法トナーの原料として用いても何ら差し支えない。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。実施例及び比較例の説明に先立ち、マグネタイトのコア粒子の製造例を説明する。
〔コア粒子1の製造例〕
Fe2+を1.8mol/L含有し、かつMn2+を鉄の質量に対して0.05質量%含有する硫酸鉄(II)及び硫酸マンガン(II)の混合水溶液70リットルと、水酸化ナトリウム10.6kgを純水に溶解したアルカリ溶液70リットルとを混合した。これによって全量約140リットルの水酸化第一鉄のスラリーを得た。このスラリーを90℃に維持した状態下に、空気を20リットル/分の量で吹き込んだ。この間、水酸化ナトリウム水溶液を添加することで、液のpHを6.5に維持した。水酸化第一鉄の酸化が80%超になった時点で、水酸化ナトリウム水溶液を添加して液のpHを7.1に上昇させて、このpHを維持した。そして、そのまま空気の吹き込みを継続した。この湿式酸化は、液中に鉄(II)イオン及び水酸化第一鉄が存在しなくなるまで行った。液中にこれらの化学種が存在しないことは、スラリーをサンプリングし、スラリー中に存在する希硫酸に可溶な鉄(II)イオン及び水酸化第一鉄を、過マンガン酸カリウムを用いて滴定することによって確認した。その後、水洗、乾燥及び粉砕を行った。このようにして、球状のコア粒子を得た。得られたコア粒子の一次粒子の平均粒径(SEM観察径)、BET比表面積、粒子表面マンガン量及び粒子全体マンガン量は表1に示すとおりであった(以下の製造例についても同様。)。
〔コア粒子2及び3の製造例〕
仕込みのMn2+の濃度を鉄の質量に対して0.02質量%(製造例2)、及び鉄に対して0.11質量%(製造例3)とする以外は製造例1と同様にしてマグネタイトのコア粒子を得た。
〔コア粒子4の製造例〕
マンガン品位が0.23質量%である硫酸鉄(II)を用いた。この硫酸鉄(II)を水に溶解して硫酸鉄(II)及び硫酸マンガン(II)の混合水溶液を調製した。この混合水溶液中におけるFe2+の濃度は1.8mol/L、Mn2+の濃度は鉄の質量に対して0.44質量%であった。これ以外は製造例1と同様にしてマグネタイトのコア粒子を得た。
〔コア粒子5の製造例〕
Fe2+を1.8mol/L含有する硫酸鉄(II)の水溶液70リットルと、水酸化ナトリウム10.6kgを純水に溶解したアルカリ溶液70リットルとを混合した。これによって全量約140リットルの水酸化第一鉄のスラリーを得た。このスラリーを90℃に維持した状態下に、空気を20リットル/分の量で吹き込んだ。この間、水酸化ナトリウム水溶液を添加することで、液のpHを6.5に維持した。水酸化第一鉄の酸化が80%超となった時点で、Mn2+を0.60mol/L含有する硫酸マンガン(II)の水溶液1リットルを添加(鉄の質量に対してMn2+が0.47質量%)するとともに水酸化ナトリウム水溶液を添加して液のpHを7.1に上昇させて、このpHを維持した。そして、そのまま空気の吹き込みを継続した。これ以外は製造例1と同様にしてマグネタイトのコア粒子を得た。
〔コア粒子6(比較)の製造例〕
Fe2+を1.8mol/L含有する硫酸第一鉄水溶液70リットルと、水酸化ナトリウム10.6kgを純水に溶解したアルカリ溶液70リットルとを混合した。これによって全量約140リットルの水酸化第一鉄のスラリーを得た。このスラリーを90℃に維持した状態下に、空気を20リットル/分の量で吹き込んだ。この間、水酸化ナトリウム水溶液を添加することで、液のpHを6.5に維持した。これ以外は製造例1と同様にしてマグネタイトのコア粒子を得た。
〔コア粒子7(比較)の製造例〕
仕込みのMn2+の濃度を鉄の質量に対して0.15質量%とする以外は製造例1と同様にしてマグネタイトのコア粒子を得た。
〔コア粒子8(比較)の製造例〕
Fe2+を1.8mol/L含有する硫酸鉄(II)の水溶液70リットルと、水酸化ナトリウム10.6kgを純水に溶解したアルカリ溶液70リットルとを混合した。これによって全量約140リットルの水酸化第一鉄のスラリーを得た。このスラリーを90℃に維持した状態下に、空気を20リットル/分の量で吹き込んだ。この間、水酸化ナトリウム水溶液を添加することで、液のpHを6.5に維持した。水酸化第一鉄の酸化が85質量%超になった時点で、Mn2+を0.60mol/L含有する硫酸マンガン(II)の水溶液3リットルを添加する(鉄の質量に対して1.41%)とともに水酸化ナトリウム水溶液を添加して液のpHを7.1に上昇させて、このpHを維持した。そして、そのまま空気の吹き込みを継続した。これ以外は製造例1と同様にしてマグネタイトのコア粒子を得た。
〔コア粒子9(比較)の製造例〕
マンガン品位が0.23質量%である硫酸鉄(II)を用いた。この硫酸鉄を水に溶解して硫酸鉄(II)及び硫酸マンガン(II)の混合水溶液を調製した。この混合水溶液中におけるFe2+の濃度は1.8mol/L、Mn2+の濃度は鉄の質量に対して0.05質量%であった。また、液のpHは反応の全体にわたって7.8に維持した。これ以外は製造例1と同様にしてマグネタイトのコア粒子を得た。
Figure 0006061704
〔実施例1ないし9及び比較例1ないし4〕
深江パウテック製のハイスピードミキサLFS−2型を用い、これに表2に示すコア粒子1kgを投入して30℃、2,000rpmで撹拌を行った。次いで、表2に示すアルキルアルコキシシランを含む液を5分間にわたり滴下した。添加量は表2に示すとおりとした。滴下完了後、撹拌を5分間継続し、次いで110℃に加温して1時間熱処理を行った。このようにして、コア粒子の表面に直接シラン化合物層を形成し、目的とする被覆マグネタイト粒子を得た。
Figure 0006061704
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた被覆マグネタイト粒子について、上述した方法でBET比表面積、BET維持率、カーボン量(溶出前後)、カーボンの溶出率、沈降速度及び疎水化度を測定した。それらの結果を表3に示す。
Figure 0006061704
表3に示すとおり、各実施例で得られた被覆マグネタイト粒子(本発明品)は、カーボン量が適切な量になっており、カーボンの溶出率も適度な値になっている。BET比表面積の維持率も適度な値になっている。更に疎水化度が高く、沈降速度の値が小さくなっている。これらのことから、各実施例で得られた被覆マグネタイト粒子は疎水性が高く、有機溶媒への分散性が良好となっている。すなわち本発明により、粒子の凝集を抑制して分散性が高く、トナー内での着色力や色味が良好な、被覆マグネタイト粒子が得られることが判る。

Claims (3)

  1. マグネタイトのコア粒子の表面に、炭素数3〜8のアルキル基を有するアルキルシラン化合物層を有する被覆マグネタイト粒子であって、
    前記マグネタイトのコア粒子における鉄の一部がマンガンで置換されており、
    マンガンは、前記マグネタイトのコア粒子における表面及びその近傍にのみ偏在しており、
    前記マグネタイトのコア粒子を、鉄元素基準で表面から10質量%溶解させたときに溶出するマンガンの量が、該コア粒子全体に対して0.08質量%以上0.33質量%以下であ
    前記マグネタイトのコア粒子全体に存在するマンガンの含有量が0.10質量%以上0.7質量%以下であり、
    前記被覆マグネタイト粒子中に含まれる前記アルキルシラン化合物の量が、該アルキルシラン化合物に含まれるアルキル基のカーボン換算で、前記被覆マグネタイト粒子の質量に対して0.2質量%以上1.5質量%以下であり、
    以下の方法で測定される前記アルキルシラン化合物の溶出率が30質量%以下であり、
    以下の方法で測定されるスチレン中での沈降速度が0.30mm/min以下であることを特徴とする被覆マグネタイト粒子。
    〔アルキルシラン化合物の溶出率〕
    被覆マグタイト粒子3gを30ccのガラス容器に取り、ここにテトラヒドロフラン(THF)を20cc投入する。超音波ホモジナイザー(BRANSON社製SONIFIER Model450,出力80W)を用いて30秒間超音波を照射して洗浄を行う。次いで、磁石でマグネタイト粒子を沈降させ、上澄み液を除去する。その後50℃で3時間乾燥してから、被覆マグネタイト粒子中に含まれるカーボンの量を、炭素分析装置(堀場製作所製、EMIA−110)を用いて測定する。シラン化合物の溶出率は、次式で求める。
    溶出率(%)=((A−B)/A)×100
    式中、AはTHF洗浄前の被覆マグネタイト粒子に含まれるカーボンの量であり、BはTHF洗浄前の被覆マグネタイト粒子に含まれるカーボンの量である。
    〔スチレン中での被覆マグネタイト粒子の沈降速度〕
    被覆マグネタイト粒子0.2gとスチレン10ccを試験管に入れ、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製SONIFIER450、出力80W)を用いて60秒間超音波を照射する。次いで溶液安定性評価装置(フォーマルアクション社製タービスキャンMA2000)を用いて沈降速度を測定する。
  2. 以下の方法で測定されるメタノール疎水化度が55%以上75%以下である請求項1に記載の被覆マグネタイト粒子。
    〔メタノール疎水化度〕
    粉体濡れ性試験機(株式会社レスカ製WET101P)を用い、体積濃度40%(温度25℃)のメタノール水溶液60mlに被覆マグネタイト粒子50mgを添加し、撹拌羽根により撹拌する。この状態下にメタノールを滴下し、これとともにメタノール水溶液に波長780nmのレーザー光を照射し、その透過率を測定する。被覆マグネタイト粒子が濡れて沈降、懸濁していき、透過率が80%となるところのメタノール水溶液の体積濃度をメタノール疎水化度とする。
  3. BET比表面積の維持率が60%以上90%未満である請求項1又は2に記載の被覆マグネタイト粒子。
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