JP6061028B2 - 無段変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の金属エレメントが環状に支持された無段変速機用ベルトを備える無段変速機に関する。
例えば、図11に示すように、無段変速機200では、複数の金属エレメント101を無端リング102で積層支持してなる無段変速機用ベルト100が、駆動用シーブKS及び従動用シーブJSに巻き掛けられている。駆動用シーブKS及び従動用シーブJSは、それぞれ円錐板状の固定シーブと可動シーブとを備えている。無段変速機200は、それぞれの可動シーブが軸J1、J2方向に移動して、巻き掛けられた無段変速機用ベルト100の回転半径を変更することによって、高速から低速まで無段階に変速している。
一般に、無段変速機用ベルト100が、駆動用シーブKSから従動用シーブJSの方向(矢印FFの方向)へ移動するときには、金属エレメント101同士に隙間が生じないが、従動用シーブJSから駆動用シーブKSの方向(矢印FBの方向)へ移動するときには、金属エレメント101同士に僅かな隙間(例えば、全体で0.5〜0.8mm程度)が生じる。そのため、無段変速機用ベルト100が駆動用シーブKSに巻き掛かる箇所KDで、金属エレメント101と駆動用シーブKSとの間でスリップが発生し、駆動力の伝達効率が低下する問題があった。
これを防止するため、本出願人は、無段変速機用ベルト100が、従動用シーブJSから駆動用シーブKSへ移動するとき、金属エレメント101同士の積層方向における隙間を詰めるように、無段変速機用ベルト100の移動方向でエアーを吹き付ける技術を開示している(特許文献1を参照)。
特開2008−128304号公報
しかしながら、特許文献1の発明には、以下の問題があった。すなわち、金属エレメント101同士の積層方向における隙間を詰めるように、無段変速機用ベルト100の移動方向でエアーを吹き付けても、各金属エレメント101の外形形状は同一であり、各金属エレメント101間の隙間は微小であるため、吹き付けたエアーが金属エレメント101に有効に作用しにくい問題があった。また、無段変速機用ベルト100が駆動用シーブKSに巻き掛かる箇所KDでは、金属エレメント101において、外周側に位置する頭部111の移動速度を、内周側に位置する胴体部112の移動速度より大きくしないと、金属エレメント101同士の積層方向における隙間を詰めることができない問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、無段変速機用ベルトが駆動用シーブに巻き掛かるとき、金属エレメントの姿勢を効果的に制御して、無段変速機における駆動力の伝達効率を向上できる無段変速機を提供することを目的とする。
(1)上記課題を解決するため、本発明の一態様である無段変速機は、複数の金属エレメントが無端リングに積層支持された無段変速機用ベルトを駆動用シーブ及び従動用シーブに巻き掛けてなる無段変速機であって、前記金属エレメントの内、少なくとも1個には、前記無端リングに対して外周側に位置する外周部及び/又は内周側に位置する内周部に鍔部又は溝部を形成し、前記無段変速機用ベルトが前記従動用シーブから前記駆動用シーブへ移動する間で、前記鍔部又は溝部に向けて、流体を前記無段変速機用ベルトの移動方向へ吹き付ける流体供給装置を備えたことを特徴とする。
上記態様によれば、金属エレメントの内、少なくとも1個には、無端リングに対して外周側に位置する外周部及び/又は内周側に位置する内周部に鍔部又は溝部を形成し、無段変速機用ベルトが従動用シーブから駆動用シーブへ移動する間で、鍔部又は溝部に向けて、流体を無段変速機用ベルトの移動方向へ吹き付ける流体供給装置を備えたので、流体供給装置から吹き付ける流体が、金属エレメントの外周部及び/又は内周部に形成した鍔部又は溝部に直接的に作用して、移動方向に積層された金属エレメントの姿勢を効果的に制御することができる。そのため、無段変速機用ベルトが駆動用シーブに巻き掛かるとき、金属エレメント同士の積層方向における隙間を確実に低減することができる。その結果、金属エレメントと駆動用シーブとの間でスリップが発生するのを防止し、無段変速機における駆動力の伝達効率を向上できる。
(2)(1)に記載された無段変速機であって、前記鍔部又は溝部を形成した前記金属エレメントは、複数個備え、積層方向で所定の間隔をあけて配置したことが好ましい。
上記態様によれば、鍔部又は溝部を形成した金属エレメントは、複数個備え、積層方向で所定の間隔をあけて配置したので、流体供給装置から吹き付ける流体が、金属エレメントに形成した鍔部又は溝部に、周期的に作用することができる。そのため、金属エレメント同士の積層方向の隙間を周期的に詰めさせることができる。その結果、金属エレメントの姿勢を、より一層効果的に制御して、金属エレメント同士の積層方向における隙間をより確実に低減することができる。
(3)(1)又は(2)に記載された無段変速機であって、前記流体供給装置は、前記外周部に形成した前記鍔部又は溝部に向けた第1噴出口と、前記内周部に形成した前記鍔部又は溝部に向けた第2噴出口とを備え、前記第1噴出口から吹き付ける流体の噴出力が、前記第2噴出口から吹き付ける流体の噴出力より大きいことが好ましい。
上記態様によれば、流体供給装置は、外周部に形成した鍔部又は溝部に向けた第1噴出口と、内周部に形成した鍔部又は溝部に向けた第2噴出口とを備え、第1噴出口から吹き付ける流体の噴出力が、第2噴出口から吹き付ける流体の噴出力より大きいので、流体供給装置から吹き付ける流体が、金属エレメントの外周部に形成した鍔部又は溝部に、内周部に形成した鍔部又は溝部より強く作用することができる。そのため、前方に積層された金属エレメントにおける外周側を積極的に押出すことができる。その結果、無段変速機用ベルトが駆動用シーブに巻き掛かる箇所では、金属エレメントにおける外周側の移動速度を、内周側の移動速度より大きくすることができ、金属エレメント同士の積層方向における隙間をより一層詰めることができる。よって、金属エレメントと駆動用シーブとの間でスリップが発生するのを防止し、無段変速機における駆動力の伝達効率を、より一層向上できる。
(4)(1)乃至(3)に記載された無段変速機であって、前記鍔部又は溝部を形成した前記金属エレメントの板厚を、他の金属エレメントの板厚より大きくしたことが好ましい。
上記態様によれば、鍔部又は溝部を形成した金属エレメントの板厚を、他の金属エレメントの板厚より大きくしたので、流体供給装置から吹き付ける流体が、金属エレメントに形成した鍔部又は溝部に、より効果的に作用することができる。具体的には、鍔部を形成した金属エレメントの板厚を、他の金属エレメントの板厚より大きくすることによって、流体によって押出される金属エレメントの慣性力を増大させ、流体を吹き付けた位置から駆動シーブに巻き掛かる位置まで、前方の金属エレメント群の姿勢を安定し続けることができる。また、溝部を形成した金属エレメントの板厚を、他の金属エレメントの板厚より大きくすることによって、溝部を形成した金属エレメントの前後に積層された金属エレメント同士の間隔が拡大されるので、流体供給装置から吹き付ける流体が、その隙間に進入し易くなり、金属エレメントの押出し力を増大させることができる。その結果、金属エレメントの姿勢を、より一層効果的に制御することができる。
(5)(1)乃至(4)に記載された無段変速機において、前記流体供給装置から吹き付ける流体は、前記無段変速機の潤滑油であることが好ましい。
上記態様によれば、流体供給装置から吹き付ける流体は、無段変速機の潤滑油であるので、エアーに比べて噴出口から拡散しにくく、指向性が向上することによって、金属エレメントに形成した鍔部又は溝部に集中的に作用させることができる。そのため、流体の噴出力を金属エレメントに確実に伝達させることができる。また、潤滑油は、エアーに比べて質量が大きく、運動量が大きいので、金属エレメントの押出し力を向上させることができる。さらに、流体供給装置は、無段変速機の潤滑油供給装置を兼用することができる。その結果、無段変速機において、新たに潤滑油供給装置を設けることなく、金属エレメントと駆動用シーブとの間でスリップが発生するのを防止し、無段変速機における駆動力の伝達効率を、より一層向上できる。
本発明によれば、無段変速機用ベルトが駆動用シーブに巻き掛かるとき、金属エレメントの姿勢を効果的に制御して、無段変速機における駆動力の伝達効率を向上できる無段変速機を提供することができる。
本実施形態に係る無段変速機の模式的側面図である。 図1に示す無段変速機用ベルトの部分斜視図である。 図1に示す一方の金属エレメント(頭部及び胴体部に鍔部を形成したもの)の正面図である。 図1に示す他方の金属エレメント(頭部及び胴体部に鍔部を形成しないもの)の正面図である。 図1に示す一方の金属エレメントの形状バリエーションを表す正面図である。 図1に示す無段変速機用ベルトにおける一方の金属エレメントに形成した鍔部に流体を吹き付けたときの断面図である。 図6に示す一方の金属エレメントの板厚を他方の金属エレメントの板厚より大きくしたときの断面図である。 図1に示す無段変速機用ベルトにおける一方の金属エレメントに形成した溝部に流体を吹き付けたときの断面図である。 図8に示す一方の金属エレメントの板厚を他方の金属エレメントの板厚より大きくしたときの断面図である。 図1に示す無段変速機用ベルトにおける金属エレメントの回動抑制に関する説明図である。 従来の無段変速機の模式的側面である。
次に、本実施形態に係る無段変速機について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、無段変速機の全体構造について説明し、次に、無段変速機用ベルト及び金属エレメントの詳細構造について説明する。その後、金属エレメントの鍔部又は溝部に流体を吹き付けて、金属エレメントの姿勢を制御する方法について説明する。
<無段変速機の全体構造>
はじめに、本実施形態に係る無段変速機の全体構造について、図1を用いて説明する。図1に、本実施形態に係る無段変速機の模式的側面図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る無段変速機10は、駆動用シーブKSと、従動用シーブJSと、無段変速機用ベルト3と、流体供給装置4(4a、4b)とを備えている。駆動用シーブKS及び従動用シーブJSは、それぞれ円錐板状の固定シーブと可動シーブとを備え、それぞれの軸J1、J2が離間して配置されている。無段変速機10は、それぞれの可動シーブが軸J1、J2方向に移動して、巻き掛けられた無段変速機用ベルト3の回転半径を変更することによって、高速から低速まで無段階に変速している。無段変速機用ベルト3は、プッシュ式ベルトであるので、駆動用シーブKSから従動用シーブJSの方向(矢印FFの方向)へ移動するときには、金属エレメント1同士に隙間が生じないが、従動用シーブJSから駆動用シーブKSの方向(矢印FBの方向)へ移動するときには、金属エレメント1同士に僅かな隙間(例えば、全体で0.5〜0.8mm程度)が生じるように設定されている。流体供給装置4(4a、4b)は、無段変速機用ベルト3が従動用シーブJSから駆動用シーブKSの方向(矢印FBの方向)へ移動する間に、金属エレメント1同士の隙間を詰めるため、金属エレメント1の頭部11に向けて液体(潤滑油)を噴出する噴出口4aと、金属エレメント1の胴体部12に向けて液体(潤滑油)を噴出する噴出口4bとを備えている。本図では、噴出口4a及び噴出口4bを駆動用シーブKSの入口付近に配置しているが、他の場所に配置しても良い。例えば、従動用シーブJSの出口付近に配置(仮想線で表示)しても良い。また、噴出口4aから噴出する液体(潤滑油)の噴出量又は噴出速度を、噴出口4bから噴出する液体(潤滑油)の噴出量又は噴出速度より大きくする等によって、両者の噴出力に差を設けることもできる。
<無段変速機用ベルト及び金属エレメントの詳細構造>
次に、無段変速機用ベルト及び金属エレメントの詳細構造について、図2〜図5を用いて説明する。図2に、図1に示す無段変速機用ベルトの部分斜視図を示す。図3に、図1に示す一方の金属エレメント(頭部及び胴体部に鍔部を形成したもの)の正面図を示す。図4に、図1に示す他方の金属エレメント(頭部及び胴体部に鍔部を形成しないもの)の正面図を示す。図5に、図1に示す一方の金属エレメントの形状バリエーションを表す正面図を示す。
図2に示すように、無段変速機用ベルト3は、2種類の金属エレメント1(1a、1b)と、無端リング2とを備えている。2種類の金属エレメント1(1a、1b)は、一方の金属エレメント1aが他方の金属エレメント1bの間に積層方向で所定の間隔をあけて配置されている。ここでは、一方の金属エレメント1aは、他方の金属エレメント1bを3個積層する度に繰り返し配置しているが、必ずしも3個に限る必要はない。また、一方の金属エレメント1aを複数個重ねて配置した後に、他方の金属エレメント1bを複数個重ねて配置し、両者の間に積層方向で所定の間隔をあけて配置してもよい。なお、一方の金属エレメント1aと他方の金属エレメント1bの詳細構造は、後述する。
また、2種類の金属エレメント1(1a、1b)は、それぞれ略三角形状の頭部11と略矩形状の胴体部12と首部13とを有し、頭部11と胴体部12とを首部13で連結して形成された板状体である。ここで、頭部11は、請求項に記載された「外周部」に該当し、胴体部12は、請求項に記載された「内周部」に該当する。胴体部12は、板厚が厚い厚肉部123と、厚肉部123の下方に形成されて板厚が下方に向けて徐々に薄くなる薄肉部124とを備えている。胴体部12の左右両側端には、下内方に傾斜する傾斜面が形成されている。傾斜面は、駆動用シーブKS及び従動用シーブJSの円錐壁面と摩擦接触して駆動力を伝達する駆動力伝達部122を構成する。
頭部11と胴体部12の間には、首部13を挟んで無端リング2を挿入するリング保持溝111が形成されている。リング保持溝111の下端には、無端リングの内周面が当接するサドル部121が形成されている。サドル部121は、胴体部12の上端に平行に形成されている。また、頭部11の前端中央には、凸部112が形成され、その後端中央には、凹部113(図示せず)が形成されている。隣接する金属エレメント1同士において、凸部112と凹部113が嵌合することによって、上下左右の位置ズレを防止している。金属エレメント1には、熱処理が可能で耐摩耗性に優れる鋼材、例えば、炭素工具鋼(SK材)を用いることができる。金属エレメント1の厚みは、1〜2mm程度である。無端リング2はリング体21を3枚積層したものを示しているが、リング体21の積層枚数は、これに限ることなく、例えば、9枚でも12枚でもよい。また、無端リング2には、熱処理が可能で引張強度及び耐摩耗性に優れる鋼材、例えば、マルエージング鋼を用いることができる。リング体21の厚みは、150〜200μm程度である。
図3、図4に示すように、2種類の金属エレメント1の内、一方の金属エレメント1aには、無端リング2に対して外周側に位置する頭部11に、外周側に突出する第1鍔部(斜線部)113aが形成されている。第1鍔部(斜線部)113aは、頭部11の左右対称の傾斜辺(仮想線)114aからそれぞれ円弧状に外方へ突出している。また、一方の金属エレメント1aには、無端リング2に対して内周側に位置する胴体部12に、内周側に突出する第2鍔部(斜線部)124aが形成されている。第2鍔部(斜線部)124aは、胴体部12の薄肉部124に形成された左右対称の円弧辺(仮想線)125aからそれぞれ三日月状に外方へ突出している。
2種類の金属エレメント1の内、他方の金属エレメント1bには、一方の金属エレメント1aに形成した第1鍔部(斜線部)113a及び第2鍔部(斜線部)124aが形成されていない。他方の金属エレメント1bには、頭部11に左右対称の傾斜辺113bが形成され、胴体部12に左右対称の円弧辺124bが形成されている。傾斜辺113bは、傾斜辺(仮想線)114aと同一の形状をし、円弧辺124bは、円弧辺(仮想線)125aと同一の形状をしている。一方の金属エレメント1aと他方の金属エレメント1bとは、第1鍔部(斜線部)113a及び第2鍔部(斜線部)124aの有無が相違するのみで、それ以外の構造は互いに共通している。
なお、一方の金属エレメント1aの、傾斜辺(仮想線)114aは第1溝部に該当し、円弧辺(仮想線)125aは第2溝部に該当する。一方の金属エレメント1aに第1溝部(114a)及び第2溝部(125a)を形成したときには、他方の金属エレメント1bは、傾斜辺114b(仮想線)及び弦辺125b(仮想線)によって形成される。第1鍔部(斜線部)113a及び第2鍔部(斜線部)124aに関しては、図6、図7にて詳述する。第1溝部(114a)及び第2溝部(125a)に関しては、図8、図9にて詳述する。
図5に示すように、一方の金属エレメント1aの頭部11に形成する第1鍔部113a−1、113a−2、113a−3の形状、及び胴体部12に形成する第2鍔部124a−1、124a−2、124a−3の形状は、金属エレメント1同士の隙間を詰める上で、最適となる形状を選定する。例えば、外周側の突出量が大きい第1鍔部113a−1と、内周側の突出量が小さい第2鍔部124a−3とを組み合わせることが、好ましい。無段変速機用ベルト3が駆動用シーブKSに巻き掛かる箇所で、金属エレメント1(1a、1b)における外周側の移動速度を、内周側の移動速度より大きくすることができ、金属エレメント1(1a、1b)同士の積層方向における隙間をより一層詰めることができる。その結果、金属エレメント1(1a、1b)と駆動用シーブKSとの間でスリップをより一層低減し易くなるからである。
<金属エレメントの姿勢制御方法>
次に金属エレメントの姿勢制御方法について、図6〜図10を用いて説明する。図6に、図1に示す無段変速機用ベルトにおける一方の金属エレメントに形成した鍔部に流体を吹き付けたときの断面図を示す。図7に、図6に示す一方の金属エレメントの板厚を他方の金属エレメントの板厚より大きくしたときの断面図を示す。図8に、図1に示す無段変速機用ベルトにおける一方の金属エレメントに形成した溝部に流体を吹き付けたときの断面図を示す。図9に、図8に示す一方の金属エレメントの板厚を他方の金属エレメントの板厚より大きくしたときの断面図を示す。図10に、図1に示す無段変速機用ベルトにおける金属エレメントの回動抑制に関する説明図を示す。
(第1実施例)
図6に示すように、第1実施例は、一方の金属エレメント1aの頭部11に第1鍔部113aを形成し、胴体部12に第2鍔部124aを形成した上で、無段変速機用ベルト3が従動用シーブから駆動用シーブの方向(矢印FBの方向)へ移動する間で、第1鍔部113a及び第2鍔部124aに向けて、噴射口4a、4bから流体(潤滑油)4aw、4bwを無段変速機用ベルト3の移動方向へ吹き付ける事例である。この場合、一方の金属エレメント1aに形成した第1鍔部113a及び第2鍔部124aは、他方の金属エレメント1bの傾斜辺113b及び円弧辺124bより外方へ突出している。そのため、流体供給装置4の噴出口4a、4bから吹き付ける流体(潤滑油)4aw、4bwが、一方の金属エレメント1aに形成した第1鍔部113a及び第2鍔部124aに直接的に作用して、移動方向に積層された他方の金属エレメント1bを押出して互いに当接させることができる。その結果、流体(潤滑油)4aw、4bwを吹き付けられた一方の金属エレメント1aより前方に積層された他方の金属エレメント1bの姿勢を効果的に制御することができる。なお、更なる姿勢制御が必要な場合は、噴出口4a、4bを複数箇所で設置することもできる。例えば、姿勢制御を有効かつ効率的に行うために、噴出口が奇数個となる場合もある。その場合、金属エレメント1(1a、1b)間の隙間を詰め、更にそれぞれの噴射の強さを制御することで、金属エレメント1(1a、1b)の姿勢制御の自由度が拡大する。
(第2実施例)
図7に示すように、第2実施例は、第1実施例における一方の金属エレメント1aの板厚t1を他方の金属エレメント1bの板厚t2より大きくした事例である。一方の金属エレメント1aの板厚t1を、他の金属エレメント1bの板厚t2より大きくすることによって、流体(潤滑油)4aw、4bwによって押出される一方の金属エレメント1aの慣性力を増大させることができる。その結果、流体(潤滑油)4aw、4bwを吹き付けた位置から駆動シーブKSに巻き掛かる位置まで、流体(潤滑油)4aw、4bwを吹き付けられた一方の金属エレメント1aより前方に積層された金属エレメント1a、1b群の姿勢を安定し続けることができる。なお、板厚t1を大きくした一方の金属エレメント1aは、複数存在し、他方の金属エレメント1bの間に適当な間隔で配置されても良い。
(第3実施例)
図8に示すように、第3実施例は、一方の金属エレメント1aの頭部11に第1溝部114aを形成し、胴体部12に第2溝部125aを形成した上で、無段変速機用ベルト3が従動用シーブから駆動用シーブの方向(矢印FBの方向)へ移動する間で、第1溝部114a及び第2溝部125aに向けて、噴射口4a、4bから流体(潤滑油)4aw、4bwを無段変速機用ベルト3の移動方向へ吹き付ける事例である。この場合、一方の金属エレメント1aに形成した第1溝部114a及び第2溝部125aは、他方の金属エレメント1bの傾斜辺114b及び弦辺125bより内方へ陥没している。そのため、流体供給装置4の噴出口4a、4bから吹き付ける流体(潤滑油)4aw、4bwが、第1溝部114a及び第2溝部125aが形成された一方の金属エレメント1aの前方に積層された他方の金属エレメント1bの背面14に直接的に作用して、移動方向に積層された他方の金属エレメント1bを押出して互いに当接させることができる。その結果、流体(潤滑油)4aw、4bwを吹き付けられた他方の金属エレメント1bより前方に積層された他方の金属エレメント1bの姿勢を効果的に制御することができる。
(第4実施例)
図9に示すように、第4実施例は、第3実施例における一方の金属エレメント1aの板厚t1を他方の金属エレメント1bの板厚t2より大きくした事例である。第1溝部114a及び第2溝部125aを形成した一方の金属エレメント1aの前後に積層された他方の金属エレメント1b同士の間隔が拡大されるので、流体供給装置4の噴出口4a、4bから吹き付ける流体(潤滑油)4aw、4bwが、その隙間に進入し易くなり、流体(潤滑油)4aw、4bwを吹き付けられた他方の金属エレメント1bの押出し力を増大させることができる。その結果、前方に積層された他方の金属エレメント1bの姿勢を、より一層効果的に制御することができる。
(金属エレメントと無端リングとの干渉防止)
次に、第1実施例から第4実施例の流体供給装置4を用いて、金属エレメント1と無端リング2との干渉防止方法について説明する。前述したように、無端リング2に支持された金属エレメント1は、従動用シーブJSから駆動用シーブKSの方向へ移動するとき、金属エレメント1同士の間に僅かな隙間が生じる。そのため、図10(A)に示すように、金属エレメント1の姿勢は、矢印X、Y、Zの各方向へ回動する場合がある。一般に、矢印Xの方向への回動をローリングといい、矢印Yの方向への回動をピッチングといい、矢印Zの方向への回動をヨーイングといい、いずれの回動によっても、金属エレメント1と無端リング2とが干渉し、それぞれの耐久性が低下する。ここでは、上述した流体供給装置4に噴出口4a、4bをそれぞれ左右方向にも設定している。これによって、図10(B)に示すように、金属エレメント1の頭部11に左右方向から流体(潤滑油)4awR、4awLを吹き付け、胴体部12に左右方向から流体(潤滑油)4bwR4bwLを吹き付けることができる。その結果、金属エレメント1が矢印X、Y、Zの各方向へ回動するのを抑制することができ、金属エレメント1と無端リング2との干渉を防止して、それぞれの耐久性を向上させることができる。
本発明は、複数の金属エレメントが環状に支持された無段変速機用ベルトを備える無段変速機として利用できる。
1、1a、1b 金属エレメント
2 無端リング
3 無段変速機用ベルト
4 流体供給装置
4a、4b 流体供給装置の噴出口
10 無段変速機
11 頭部(外周部)
12 胴体部(内周部)
13 首部
14 背面
113a 第1鍔部
124a 第2鍔部
114a 第1溝部
125a 第2溝部
KS 駆動用シーブ
JS 従動用シーブ

Claims (4)

  1. 複数の金属エレメントが無端リングに積層支持された無段変速機用ベルトを駆動用シーブ及び従動用シーブに巻き掛けてなる無段変速機であって、
    前記金属エレメントの内、少なくとも1個には、前記無端リングに対して外周側に位置する外周部及び内周側に位置する内周部に鍔部又は溝部を形成し、
    前記無段変速機用ベルトが前記従動用シーブから前記駆動用シーブへ移動する間で、前記鍔部又は溝部に向けて、流体を前記無段変速機用ベルトの移動方向へ吹き付ける流体供給装置を備えたこと
    前記流体供給装置は、前記外周部に形成した前記鍔部又は溝部に向けた第1噴出口と、前記内周部に形成した前記鍔部又は溝部に向けた第2噴出口とを備え、
    前記第1噴出口から吹き付ける流体の噴出力が、前記第2噴出口から吹き付ける流体の噴出力より大きいことを特徴とする無段変速機。
  2. 請求項1に記載された無段変速機であって、
    前記鍔部又は溝部を形成した前記金属エレメントは、複数個備え、積層方向で所定の間隔をあけて配置したことを特徴とする無段変速機。
  3. 請求項1又は請求項2に記載された無段変速機であって、
    前記鍔部又は溝部を形成した前記金属エレメントの板厚を、他の金属エレメントの板厚より大きくしたことを特徴とする無段変速機。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された無段変速機であって、
    前記流体供給装置から吹き付ける流体は、前記無段変速機の潤滑油であることを特徴とする無段変速機。
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