JP6059199B2 - 車両の独立懸架装置 - Google Patents

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Description

本発明は、独立請求項1の冒頭部分に記載の特徴を有する車両の独立懸架装置に関する。
要約すると、本発明を、マクファーソン構造として一般的に知られている車両の独立懸架装置の構造の進化形と考えることができ、そのような進化の目的は、マクファーソン構造を現時点において最も一般的な車両の前輪の懸架装置の構成にしているマクファーソン構造のコストおよびサイズに関する利点を維持しつつ、マクファーソン構造の弾性−運動学的性能を改善することにある。
マクファーソン懸架装置の構造は、基本的には、ダンパを懸架装置の構造の一体の一部分として利用するという考えに基づいている。マクファーソン構造による車両の前輪の懸架装置の例をそれぞれ斜視図および正面図にて概略的に示している添付図面の図1および図2を参照すると、懸架装置が、車輪を保持するストラット22(以下、単にストラットと称する)に下端において堅固に接続されたダンパ12と、車体(図2においてBとして示されている)への関節接続のための2つの横方向内側の取り付け点16,18と、ストラットへの関節接続のための横方向外側の取り付け点20とを有している三角形のロアアーム14と、車両の操舵制御機構への接続のための横方向内側の取り付け点26と、ストラット22への関節接続のための横方向外側の取り付け点28とを有する操舵ロッド24とを備えている。ダンパとストラットとの間の剛的な接続ゆえに、車輪に作用する縦方向(longitudinal)および横方向(lateral)の力が、ダンパに曲げおよびせん断応力を生じさせ、ダンパの上部取り付け部を介して車体へと伝えられる。
マクファーソン構造の主たる利点は、コストが低いこと、および全体としてのサイズが小さいことにある。実際に、衝撃の吸収、ばねのための取り付け部の提供、および車輪に作用する荷重への反応といった機能が、ダンパによって実行されるため、懸架装置の構成部品の数を大きく減らすことができ、結果として懸架装置のコストを下げることができる。さらには、上部の横方向制御アームがなくなることで、懸架装置の全体としてのサイズが小さくなり、前輪の懸架装置の場合には、エンジンのためにより多くの空間を利用できるようになり、エンジンおよび変速機のユニットが横置きされる前輪駆動の自動車において特に好都合である。
しかしながら、マクファーソン構造は、特に車輪のバンプ/リバウンド運動時のキャンバ変化に関して、運動学的性能が低いという欠点を抱えている。荷重の吸収に関するマクファーソン構造の性能は、特に制動または衝撃の場合に車輪に作用する縦方向の力に関して、低い。より具体的には、車輪の中心においてマクファーソン構造がもたらす縦方向の剛性は、良好な快適性能を保証するために必要な剛性よりもはるかに大きい。マクファーソン構造のさらなる欠点は、駆動(traction)および制動における懸架装置のトー変化の応答に差を付けることが、あまりできない点にある。さらには、マクファーソン構造においては、懸架装置の縦方向のコンプライアンスのすべてが下側の三角アームによってもたらされ、その形状が、大きな縦方向のコンプライアンスを大きな横方向の剛性と組み合わせるという要件を満たす必要性によっておおむね決定され、したがって設計者にとって自由度があまり残されない。
さらには、マクファーソン構造によれば、懸架装置の縦方向の剛性が最大である点が、ダンパの上部取り付け部に位置しており、結果として、車輪と路面との間の接地部分における懸架装置の縦方向の剛性が、例えば50%〜75%など、車輪の中心における縦方向の剛性よりもはるかに低い(ダンパの上部取り付け部、すなわち縦方向の剛性が最大である点からこれら2つの位置までの垂直距離に比例)。これは、制動の応答に不利な影響をもたらす。縦方向のコンプライアンスのすべてがロアアームによってもたらされるため、ロアアームとストラットとの間のボールジョイントが、縦方向に大きく変位し、これが制動時のキャスタの減少に直結し、したがって車両の安定性の喪失に直結する。この実際の成り行きとして、設計者は、接地部分における過度の縦方向のコンプライアンスを回避し、制動におけるキャスタの過度の減少を回避するために、車輪の中心における縦方向のコンプライアンスを減らさざるを得ない。
したがって、本発明の目的は、特に縦方向の力について、荷重の吸収に関して、上述したマクファーソン構造よりも良好な性能を有しつつ、この公知の構造のコストおよび全体としてのサイズに関する利点を維持している自動車の独立懸架装置を提供することにある。
この目的が、本発明によれば、添付の独立請求項1の特徴部分に記載の特徴を有する自動車の独立懸架装置によって、十分に達成される。
要約すると、本発明は、マクファーソン構造に類似した構造を有しているが、ダンパがストラットに堅固に接続されるのではなくて関節接続され、実質的に横方向(transverse)の関節運動軸を中心にしてストラットに対して自由に回転できるという相違点を有している懸架装置を提供するという考えに基づいている。この懸架装置が、ダンパとストラットとの間に介装され、上述の関節運動軸を中心とするダンパとストラットとの間の関節接続のねじり剛性を制御するねじり剛性制御手段をさらに備える。
したがって、ダンパとストラットとの間の関節接続によって導入される回転の自由度は、制御された自由度であって、並列に作用する以下の2つの構成要素によって概念的に具現化することができる。
‐上述の関節運動軸を中心とする回転運動だけを可能にするように構成されたヒンジ。
‐ダンパとストラットとの間の関節接続のねじり剛性を制御するように構成されたねじりばね(または、同等のねじり剛性制御装置)。
この制御された自由度を用意することで、懸架装置は、快適性の改善につながる車輪の中心におけるより大きな縦方向のコンプライアンスを、制動の応答の改善につながるタイヤと路面との間の接地部分におけるより小さな縦方向のコンプライアンスとともに提供することができる。
好ましくは、関節運動軸が、車両の横方向の垂直面内で傾けられ、結果として、制動および駆動の縦方向の力の作用のもとでのトー変化の制御性をより高めることができ、したがって制動および加速の際の車両の安定性を向上させることができる。
本発明による懸架装置においては、マクファーソン構造と異なり、車輪の中心における縦方向のコンプライアンスが、下側の三角形のアームによって決定されるのではなく、ダンパとストラットとの間の関節接続のねじり剛性制御手段によって決定される。したがって、設計者が、懸架装置の下側制御アームの設計において、より広い自由度を有する。
以下の説明から明らかになるとおり、本発明による懸架装置の構造の主たる利点は、以下のとおりである。
‐車輪の中心における縦方向のコンプライアンスと接地部分における縦方向のコンプライアンスとのより好都合な組み合わせからもたらされる快適性および制動の応答の改善。
‐懸架装置が駆動および制動に対して異なる応答を提供することができるがゆえの車両の安定性の改善。
‐下側制御アームにより単純な形状を使用することができるがゆえのこのアームのコスト削減。
本発明のさらなる特徴および利点が、添付の図面を参照しつつあくまでも本発明を限定するものではない例として提示される以下の詳細な説明から、さらに明らかになるであろう。
マクファーソン式の独立懸架装置の構造を概略的に示す斜視図である。 マクファーソン式の独立懸架装置の構造を概略的に示す正面図である。 本発明による車両の独立懸架装置の構造を概略的に示す斜視図である。 本発明による車両の独立懸架装置の構造を概略的に示す正面図である。 駆動および衝撃の縦方向の力に対する本発明による懸架装置の応答を概略的に示す正面図である。 駆動および衝撃の縦方向の力に対する本発明による懸架装置の応答を概略的に示す平面図である。 制動の縦方向の力に対する本発明による懸架装置の応答を概略的に示す正面図である。 制動の縦方向の力に対する本発明による懸架装置の応答を概略的に示す平面図である。 本発明による車両の独立懸架装置の構造のそれぞれの実施形態を概略的に示す斜視図である。 本発明による車両の独立懸架装置の構造のそれぞれの実施形態を概略的に示す斜視図である。 本発明による車両の独立懸架装置の構造のそれぞれの実施形態を概略的に示す斜視図である。 本発明による車両の独立懸架装置の構造のそれぞれの実施形態を概略的に示す斜視図である。 本発明の好ましい実施形態による車両の独立懸架装置の構造の斜視図である。 図13の懸架装置に設けられる楕円形のブシュの分解図である。 図13の懸架装置に設けられる楕円形のブシュの構成の一変種の斜視図である。 本発明の別の好ましい実施形態による車両の独立懸架装置の構造について、ダンパとストラットとの間の関節接続機構を詳しく示す斜視図である。 図16の懸架装置に設けられる平坦なブシュの斜視図である。 本発明の別の実施形態による車両の独立懸架装置の構造の斜視図である。 図18の懸架装置におけるダンパとストラットとの間の接続のためのブシュの配置を示す斜視透視図である。 本発明の別の実施形態による車両の独立懸架装置の構造について、ダンパとストラットとの間の関節接続機構を詳しく示す斜視図である。 図20のダンパとストラットとの間の関節接続機構を概略的に示す断面図である。 図20のダンパとストラットとの間の関節接続機構の分解図である。 本発明の別の好ましい実施形態による車両の独立懸架装置の構造について、ダンパとストラットとの間の関節接続機構を詳しく示す斜視図である。 本発明の別の好ましい実施形態による車両の独立懸架装置の構造について、ダンパとストラットとの間の関節接続機構を詳しく示す斜視図である。 本発明の別の好ましい実施形態による車両の独立懸架装置の構造について、ダンパとストラットとの間の関節接続機構を詳しく示す斜視図である。 図25のダンパとストラットとの間の関節接続機構を概略的に示す断面図である。 図25のダンパとストラットとの間の関節接続機構の分解図である。
以下の説明および特許請求の範囲において、「縦」および「横」、「内」および「外」、「前」および「後」、「上」および「下」、などといった用語は、車両に取り付けられた懸架装置の状態を指すように意図される。
最初に図3および図4を参照すると、図1および図2(従来技術)の部品および構成要素と同一または機能的に同等の部品および構成要素には図1および図2と同じ参照符号が与えられているが、自動車の前輪の独立懸架装置が、全体として10で指し示されており、ダンパ12と、この例では車体(図4においてBで示されている)への関節接続のための一対の横方向内側の取り付け点16,18と、車輪Wのストラット22への関節接続のための横方向外側の取り付け点20とを有する三角形のアームとして形成されている下側制御アーム14と、操舵制御機構への接続のための横方向内側の取り付け点26と、ストラット22への関節接続のための横方向外側の取り付け点28とを有する操舵ロッド24とを、基本的に備えている。
マクファーソン構造と異なり、本発明によれば、ダンパ12が、ストラット22へと剛的に(rigidly)固定されるのではなく、実質的に横方向の垂直面(transverse vertical plane)内に位置し、好ましくは(図4の正面図において見て取ることができるとおり)水平に対してわずかに傾いている関節運動軸Hを中心にして、ストラット22へと関節接続されている。ダンパ12とストラット22との間の関節接続は、並行して機能する以下の2つの要素によって、図3および図4に概略的に示されている。
‐軸Hを中心とするダンパ12とストラット22との間の回転の自由度を定めているヒンジ30。
‐ダンパ12(より具体的には、ダンパ12の下端部)とストラット22との間に介装され、ヒンジ30によって定められる回転の自由度に関するねじり剛性を制御するねじり剛性制御装置32(図3においては、この装置が、例として接続ロッドとして製作されている)。
しかしながら、ダンパ12とストラット22との間の関節接続を、以下で詳しく説明されるように、多数の他の方法で得ることが可能である。
ダンパとストラットとの間の関節接続によって導入される追加のねじりのコンプライアンスが、車輪の中心に関するより大きな縦方向のコンプライアンスをもたらす。この第1の結果として、下側制御アーム14が、もはや必要な縦方向のコンプライアンスをもたらす必要がなく、したがってこのアームの形状が、もはやこの要件を満たす必要によって決定されることがない。
さらには、マクファーソン構造に比べ、懸架装置の縦方向の剛性が最大である点の位置が、ダンパの上部取り付け部の直下の高さから、車輪の中心を下回る高さ(その正確な値は、ダンパとストラットとの間の回転の自由度に関するねじり剛性、ならびにダンパの上部取り付け部および下側制御アームの縦方向の剛性に依存して決まる)へと下げられる。したがって、縦方向の力が作用するとき、ストラットが、この縦方向の剛性が最大である点に近い点を中心にして回転しようとする。縦方向の剛性が最大である点が、下側制御アームの平面の高さに近い高さに位置すると仮定し、すなわち車輪の中心からの距離と路面からの距離とがほぼ等しい高さに位置すると仮定し、接地部分における縦方向の剛性は、車輪の中心における所与の縦方向のコンプライアンスにおいて、マクファーソン構造の場合よりも大であり、結果としてより良好な制動応答がもたらされる。さらには、車輪の中心における縦方向のコンプライアンスが、ねじりのコンプライアンスに依存し、もはや下側制御アームの縦方向の変形に依存しないため、下側制御アームとストラットとを接続しているボールジョイントが制動において被る後方への変位が、マクファーソン構造の場合よりも大幅に小さくなり、結果として制動時のキャスタの減少も小さくなる。
理論的には5つの拘束された自由度に関して無限大の剛性を有するはずであるヒンジをダンパとストラットとの間に設けることは、現実には、懸架装置の横方向のコンプライアンスに加えられ、コーナリングにおいて生じる横力が懸架装置に作用する場合に接地部分において特に役に立つ寄生のコンプライアンスを伴う。
図5〜図8に、相対の関節運動軸Hを中心とするダンパとストラットとの間の関節接続によってもたらされるさらなる利点を示す。縦方向の力の結果として、ストラットが、縦方向の剛性が最大である点(本発明による懸架装置の構造では、車輪の中心の下方に位置する)を通過し、関節運動軸Hに平行である回転軸Rを中心にして、回転しようとする。軸Hが正面図(すなわち、車両を横断する垂直面)において傾けられている場合、ストラットの実際の回転は、垂直軸を中心とする成分も有し、したがってトーの変化を引き起こし、その方向は軸Hの傾きの向きおよび軸Rを中心とするストラットの回転の向きの両方に依存して決まる。
図5と図6に示すように、車輪の中心に作用する駆動または衝撃の力(FT/Iで示されている)のもとでは、軸Rを中心とするストラットの回転(矢印Rによって示されている)が、トーの増加を生じさせる垂直軸を中心とする成分(矢印Rによって示されている)を有している。反対に、図7と図8に示すように、接地部分に作用する制動力(Fで示されている)のもとでは、軸Rを中心とするストラットの回転(矢印Rによって示されている)が、トーの減少を生じさせる垂直軸を中心とする成分(矢印Rによって示されている)を有している。このように、本発明による懸架装置の構造によれば、ダンパとストラットとの間の関節運動軸Hの傾きを適切に定めることによって、一方(すなわち、駆動力/衝撃力)および他方(すなわち、制動力)への懸架装置の応答を、トーの変化に関して、相違させることができる。当然ながら、このトーの変化の作用が望ましくない場合には、関節運動軸Hを傾けなければよい。
図9〜図12(図3および図4の部品および構成要素と同一または機能的に同等の部品および構成要素には、図3および図4と同じ参照符号が与えられている)に、関節運動軸を中心とする懸架装置のダンパおよびストラットによって制御される回転の自由度を協働して定めるヒンジおよびねじり剛性制御装置に関し、その構造に関する種々の技術的解決策を概略的に示す。
例えば、ヒンジは、単純に、ボールベアリングまたはローラベアリング、一対のゴムブシュ、一対のボールジョイント、あるいは1つ以上の(特に、ブレード状の)可撓部材であってよい。ねじり剛性制御装置に関しては、理論的には(図4に概略的に示すような)ねじりばねであってよいが、実際的見地からは、並進運動に関する剛性(translational stiffness)をもたらすことができる部材を使用することが好ましく、そのような部材は、関節運動軸から離して配置され、この軸に対して接線方向に作用する。そのような装置は、例えば、単一のゴムブシュ、一対のゴム緩衝器、または接続ロッドであってよい。好ましくは、そのような装置が、非線形なコンプライアンス(または、剛性)の特性を有することで、懸架装置が、車輪の中心において非線形な縦方向のコンプライアンス特性を有する。ヒンジおよびねじり剛性制御装置について提案されるさまざまな構成に関する技術的解決策、ならびに本明細書には示されないが考えることができるさらなる技術的解決策を、さまざまな方法で互いに組み合わせることが可能である。
図9に示した例では、ヒンジが、ボールベアリングまたはローラベアリング30によって形成される一方で、ねじり剛性制御装置が、ブシュまたは緩衝器32によって形成される。この場合、関節運動軸Hは、ベアリング30の軸によって定められる。
図10に示した例では、ヒンジが、一対のボールジョイント30(あるいは、半径方向および軸方向の剛性が大きい一対のブシュ)によって形成される一方で、ねじり剛性制御装置が、ブシュまたは緩衝器32によって形成される。この場合、関節運動軸Hは、2つのボールジョイント30の中心を通過する軸によって定められる。
図11および図12に示した例では、ヒンジが、それぞれブレード状の可撓部材30または同一平面に位置する2枚のブレード状の可撓部材30によって形成される一方で、ねじり剛性制御装置が、接続ロッド32によって形成される(なお、1つ若しくは複数のブレード30の曲げ剛性(小さいが)も、ねじり剛性に或る程度は寄与するかもしれない)。いずれの場合も、関節運動軸Hは、1つ若しくは複数のブレード30の曲がりの軸によって定められる。
好都合には、単一の構成部品(例えば、自身の軸を除くすべての方向について剛であるブシュ)が、関節運動軸を定める機能およびこの軸を中心とするねじり剛性を制御する機能を実行することができる。そのようなブシュの構造の例が、図13〜図17に示されており、図3および図4の部品および構成要素と同一または機能的に同等の部品および構成要素には、図3および図4と同じ参照符号が与えられている。
図13〜図15に示されている実施形態によれば、楕円ブシュ34が、ダンパ12とストラット22との間に介装されており、楕円形断面の円柱の形状の内側本体36と、内側本体36が間にゴム42を存在させつつ収容される楕円形断面の座40を有している外側本体38とを備えている。ブシュ34の内側本体36は、固定ピン45(図15)が収容される円柱形の貫通穴44を有しており、この固定ピンの両端が、ストラット22(あるいは、ストラットとは別であるが、ストラットへと堅固に接続される部品)の一対の支持タブ48に設けられたそれぞれの穴46に挿入されて固定される。ブシュ34の外側本体38は、図示の例では、ダンパ12の下端に取り付けられたブラケット部材52へとねじ50によって取り付けられる。ブシュ34の内側本体36および外側本体38が、好ましくは押し出しによるアルミニウム部品である一方で、ブラケット部材52は、好ましくはプレスおよび溶接による鋼製の部品である。関節運動軸は、通常のブシュと同様に、ゴム塊42の形状によって定められる。ブシュの内側本体およびそれぞれの座が、回転対称の形状を有していないため、ブシュがダンパとストラットとの間の関節接続のねじり剛性に寄与し、したがって関節運動軸を中心とするねじり剛性の制御という機能を実行するために特定的に設計された部品または装置を、追加する必要がない。
図15に示した構造の変種(図13および図14の部品および構成要素と同一または機能的に同等の部品および構成要素には、図13および図14と同じ参照符号が与えられている)によれば、楕円形のブシュ34にゴム緩衝器54が設けられており、そのようなゴム緩衝器54が、ストラットに対するダンパの角度移動を制限するために、ストラット22の両側に配置された一対の移動制限用突起56の内面に取り付けられている。
図16および図17に示されている実施形態(図13および図14の部品および構成要素と同一または機能的に同等の部品および構成要素には、図13および図14と同じ参照符号が与えられている)によれば、平坦なブシュ34が、ダンパとストラットとの間に介装されており、平坦な内側本体36と、内側本体36が間にゴム42を存在させつつ収容されるふたこぶ(two-lobe)断面の座40を有している外側本体38とを備えている(図17)。この場合には、ダンパ12とストラット22との間の関節接続の関節運動軸Hは、ブシュ34の内側本体36の真ん中の軸に一致する。内側本体36が、ダンパの下端に取り付けられたブラケット部材52のフォーク状の部位58へとねじ50によって固定される。外側本体38が、この外側本体の一対の取り付けフランジ62の間に挿入されるストラット22の部位へと、ねじ60によって固定される。内側本体36が、好ましくは鋼製の部品である一方で、外側本体38は、好ましくは押し出しによるアルミニウム部品である。この場合にも、ブシュの内側本体およびそれぞれの座が、回転対称の形状を有していないため、ブシュがダンパとストラットとの間の関節接続のねじり剛性に寄与し、したがって関節運動軸を中心とするねじり剛性の制御という機能を実行するために特定的に設計された部品または装置を、追加する必要がない。
本発明による車両の独立懸架装置のさらなる実施形態が、図18および図19に示されており、図3および図4の部品および構成要素と同一または機能的に同等の部品および構成要素には、図3および図4と同じ参照符号が与えられている。この実施形態によれば、関節運動軸Hが、整列した一対の剛体ブシュ30によって定められる一方で、ダンパ12とストラット22との間の関節接続のねじり剛性が、柔らかいブシュ32によってもたらされる。2つの剛体ブシュ30が、例えば10N/mm程度(あくまでも例として、3×10N/mm)の大きな半径方向の剛性を有する一方で、柔らかいブシュ32は、例えば10N/mm程度(あくまでも例として、3.5×10N/mm)の小さな半径方向の剛性、すなわち剛体ブシュ30の半径方向の剛性よりもおよそ2桁小さい半径方向の剛性を有する。柔らかいブシュ32は、2つの剛体ブシュ30の軸(関節運動軸H)から離されており、自身の軸が軸Hに交差するように配置されている。したがって、柔らかいブシュ32の半径方向の剛性が、軸Hに対して接線方向に作用し、すなわち軸Hを中心とするダンパとストラットとの間の関節接続に対してねじり剛性として作用する。ここに提示された構成例では、ブシュ30,32の関節運動のピンが、ストラット22のそれぞれのフォーク状の支持構造体によって保持される一方で、ブシュ30,32の外側本体が、ダンパ12の下端に取り付けられたブラケット部材52によって形成されたそれぞれの支持体に収容される。
図20〜図27(これまでの図の部品および構成要素と同一または機能的に同等の部品および構成要素には、これまでの図と同じ参照符号が与えられている)に、懸架装置の2つの構成部品(ダンパおよびストラット)の間に関節接続をもたらすために、一方ではダンパへと接続され、他方ではストラットへと接続される可撓なプレート部材(特に、ブレード状の部材)を設けるという考えを共有する本発明のさらなる実施形態を示す。ブレード状の部材を、金属または非金属(例えば、炭素繊維複合材料)のいずれかで製作することができる。実際、ブレード状の部材は、自身の固有の曲げコンプライアンスにより、自身の曲げの軸を中心にして、ブレード状の部材へと接続された2つの構成部品の間の相対の回転を可能にする。他方で、プレート状の部材は、自身の曲げの軸を中心とする特定の曲げ剛性(限定的であるが)を有しているため、プレート部材は、少なくとも部分的に、関節運動軸を中心とするダンパとストラットとの間の関節接続のねじり剛性を制御するという機能も同時に果たす。ブレード状の部材は、静的な荷重のもとで張力を受けているようにダンパおよびストラットへと接続される。この場合、緩衝装置(いくつかの考えられる構成の技術的解決策に関して後述される)が、ブレード状の部材に組み合わせられる。
図20〜図22を参照すると、ブレード状の部材34が、ダンパ(図示せず)の下端に取り付けられたブラケット部材52とストラット22との間に配置され、自身の固有の曲げコンプライアンスによってダンパとストラットとの間に実質的に横方向を向いた関節運動軸Hを定めるように、横方向の垂直面内に実質的に位置している。横方向の垂直面におけるブレード状の部材34の向きに応じて、関節運動軸Hを、水平に向けることができ、あるいは制動および駆動の縦方向の力のもとでのトー変化についてより幅広い制御を得、制動および加速の動作の際の車両の安定性を向上させるために、水平に対して特定の角度に傾けることができる。ブレード状の部材34は、上端において、例えばねじ接続によって、上に向かって狭くなるストラット22の一対の垂直アーム64の上端へと堅固に接続される。ブラケット部材52が、互いに平行に延びる一対の水平な上部アーム66を形成しており、そのような上部アーム66が、ブレード状の部材34およびストラット22の垂直アーム64の上端と同じ高さに位置し、これらの外側に位置している。さらにブラケット部材52は、ブレード状の部材34およびストラット22の垂直アーム64の下端と同じ高さに位置する一対の水平な下部アーム68を形成しており、そのような下部アーム68が、互いに近付くように延びてアーム64の下端の間に入り込むとともに、ブレード状の部材34の下端を挟み、例えば溶接によってブレード状の部材34へと堅固に固定されている。このような構成のおかげで、ダンパを介してブレード状の部材34へと作用する車両の重量は、ブレード状の部材34に引っ張りの応力を生じさせる。ストラット22のアーム66およびブラケット部材22のアーム64,68は、ブレード状の部材34よりも大幅に大きい曲げ剛性を有しているため、ダンパとストラットとの間の相対の回転運動を許容し、制御するのは、アーム64,66,68ではなくて、ブレード状の部材34である。特に図21に見て取ることができるとおり、ゴム緩衝器54が、ストラットのアーム66ならびにブラケット部材52のアーム64,68との間に介装され、ダンパとストラットとの間の大きな角度変位の場合に、アームの向かい合う端部の間の直接の接触を防止する機能を有している。
図23および図24に示す実施形態によれば、ブレード状の部材34が、その下端において、ダンパ(図示せず)の下端に取り付けられたブラケット部材52から延びている下部水平アーム68へと堅固に接続され、その上端において、ストラット(図示せず)の垂直アーム66へと堅固に接続されている。ブレード状の部材34の向きに関しては、図20〜図22の実施形態に関して上述した内容が当てはまる。この場合にも、実際に、ブレード状の部材34が、自身の固有の曲げコンプライアンスによってダンパとストラットとの間に実質的に横方向を向いた関節運動軸を定めるように、横方向の垂直面内に実質的に位置している。横方向の垂直面におけるブレード状の部材34の向きに応じて、関節運動軸Hを、水平に向けることができ、あるいは制動および駆動の縦方向の力のもとでのトー変化についてより幅広い制御を得、制動および加速の動作の際の車両の安定性を向上させるために、水平に対して特定の角度に傾けることができる。この実施形態においては、緩衝装置が、好ましくは非線形な剛性の特性を有しているゴムブシュ70で構成され、その軸がブレード状の部材34から離され、関節運動軸Hに平行に向けられている。図示の構成例では、ブシュ70の外側本体が、ストラットの垂直アーム66の専用の座に取り付けられる一方で、内側本体は、ブラケット部材52から突き出している上部水平アーム72に取り付けられている。
最後に、図25〜図27に示されている実施形態によれば、ブレード状の部材34が、その下端において、例えばねじ74によって、ダンパ(図示せず)の下端に取り付けられたブラケット部材52から延びている一対の下部水平アーム68へと堅固に接続され、その上端において、例えばねじ76によって、ストラット(図示せず)の一対の上部水平アーム66へと堅固に接続されている。ブレード状の部材34の向きに関しては、図20〜図22の実施形態に関して上述した内容が当てはまる。関節運動軸Hの位置に関しては、図26に示すように、ブレード状の部材34の軸の位置にほぼ一致する(少なくとも小さな変位において)。この場合には、緩衝装置は、ブレード状の部材34の下端に堅固に接続されて、ブレード状の部材の両側を上方へと延びている一対の下側当接部材(abutment member)78と、ブレード状の部材34の上端に堅固に接続されて、ブレード状の部材の両側を下方へと延びている一対の上側当接部材80で構成されている。下側当接部材78および上側当接部材80が、2つずつ間隔を空けて向かい合う水平な当接面82,84をそれぞれ有している。図20〜図22の実施形態に関して上述したゴム緩衝器の機能と同様の機能を有するそれぞれのゴム緩衝器54が、当接面のうちの2つに取り付けられ、図示の例では上側当接部材80の表面84に取り付けられている。
当然ながら、本発明の原理を変えることなく、実施形態および製造の詳細を、あくまでも本発明を限定するものではない例として上述および図示した内容から、幅広く変更することが可能である。
例えば、本発明を前輪の懸架装置に関して説明および図示したが、後輪の懸架装置にも等しく適用が可能である。すなわち、本発明は、操舵輪の懸架装置および非操舵輪の懸架装置の両方に適用可能である。特に、後輪の懸架装置の場合には、三角形のロアアームおよび操舵ロッドを、ホイールキャリアの残りの3つの自由度を制御するために、それぞれが一端においてストラットへと関節接続され、他端において車体へと関節接続される3本の下部ロッド(2本の横方向のロッドおよび1本の縦方向のロッド)によって置き換えることが可能である。しかしながら、本発明は、車輪を保持するストラットの3つの自由度を制御するために、構造的なダンパおよびアーム/ロッド系を車輪を保持するストラットと車体との間に介装して備えている他の任意の懸架装置構造へと、同様に良好に適用することが可能である。
さらには、本発明は、自動車の懸架装置だけでなく、産業用の軽車両から産業用の大型車両まで、三輪車または四輪車からバスまで、あらゆる種類の動力車両の懸架装置へと広く適用可能である。

Claims (10)

  1. 車輪(W)を保持するように意図された車輪保持部材(22)と、下端が前記車輪保持部材(22)へと接続されたダンパ(12)と、一方で車体(B)に接続され、他方で前記車輪保持部材(22)へと接続された複数のアームおよび/またはロッド(14,24)と、を備える車両の独立懸架装置(10)であって、
    前記ダンパ(12)と前記車輪保持部材(22)との間に介装され、これら2つの構成部品を、関節運動軸(H)を中心にして互いに対して回転できるようにするヒンジ手段(30;34)と、
    前記ダンパ(12)と前記車輪保持部材(22)との間に介装され、前記関節運動軸(H)を中心とするこれら2つの構成部品の間の関節接続のねじり剛性を制御するねじり剛性制御手段(32;34;34,70)と
    をさらに備え
    前記ヒンジ手段が、1枚以上の可撓なプレート部材(30;34)を備えており、前記関節運動軸(H)が、前記プレート部材(30)の曲げの軸によって定められる
    懸架装置。
  2. 前記ねじり剛性制御手段が、非線形な剛性の特性を有している、請求項1に記載の懸架装置。
  3. 前記ねじり剛性制御手段が、前記関節運動軸(H)から離れて位置し、この軸に対して接線方向剛性をもたらすように構成されている少なくとも1つの部材(32;34;34,70)を備えている、請求項1又は請求項2に記載の懸架装置。
  4. 前記ねじり剛性制御手段が、軸が前記関節運動軸(H)に交差するように配置されたゴムブシュ(32)を備えている、請求項に記載の懸架装置。
  5. 前記ねじり剛性制御手段が、一端においてダンパ(12)へと接続され、他端において車輪保持部材(22)へと接続された接続ロッド(32)を備えている、請求項に記載の懸架装置。
  6. 車体横断垂直面内に実質的に位置し、上端において前記車輪保持部材(22)へと堅固に接続され、下端において前記ダンパ(12)へと堅固に接続された可撓プレート部材(34)を備えており、
    前記ねじり剛性制御手段が、軸が前記可撓プレート部材(34)から離れて位置し、前記関節運動軸(H)に平行に向けられているゴムブシュ(70)を備えており、該ブシュ(70)が、前記車輪保持部材(22)に堅固に接続された外側本体と、前記ダンパ(12)に堅固に接続された内側本体とを有している、請求項に記載の懸架装置。
  7. 車体横断垂直面内に実質的に位置し、上端において前記車輪保持部材(22)へと堅固に接続され、下端において前記ダンパ(12)へと堅固に接続された可撓プレート部材(34)を備えており、
    前記ねじり剛性制御手段が、前記可撓プレート部材(34)の下端に堅固に接続され、該部材の両側を上方へと延びている一対の下側当接部材(78)と、前記可撓プレート部材(34)の上端に堅固に接続され、該部材の両側を下方へと延びている一対の上側当接部材(80)と、2つずつ間隔をあけて対面している下側および上側当接部材(78,80)の水平な当接面(82,84)の対の間に介装された一対のゴム緩衝器(54)とを備えている、請求項に記載の懸架装置。
  8. 前記車体(B)への関節接続のための一対の車幅方向内側の取り付け点(16,18)と、前記車輪保持部材(22)への関節接続のための車幅方向外側の取り付け点(20)とを有している下側制御アーム(14)と、車両の操舵制御機構への接続のための車幅方向内側の取り付け点(26)と、前記車輪保持部材(22)への関節接続のための車幅方向外側の取り付け点(28)とを有する操舵ロッド(24)を備えている、請求項1〜のいずれか一項に記載の懸架装置。
  9. 一対の車幅方向に延びるロッドと、車体前後方向に延びるロッドとを備えており、各々のロッドが、一端において前記車輪保持部材(22)へと関節接続され、他端において前記車体(B)へと関節接続されるように意図されている請求項1〜のいずれか一項に記載の懸架装置。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載の懸架装置を備えている車両。
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