JP6041779B2 - 銅合金箔 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池(LIB)をはじめとする二次電池の負極集電体材料、フレキシブル銅張積層板(FCCL)の導電体材料、電線被覆材等の電磁波シールド体材料等として好適な銅合金箔およびそれを用いた電子部品に関する。
電子・電気機器には、銅箔が多用されている。ここでは厚みが0.05mm以下の金属板を箔とする。銅箔には圧延銅箔と電解銅箔がある。電解銅箔に対する圧延銅箔の特徴は、合金元素の添加と圧延・熱処理条件の調整により、強度、ヤング率、疲労、耐熱性、導電性、耐食性等の諸特性を随意に調整できる点にある。したがって、より高い機能が求められる用途には、圧延銅合金箔(以下、銅合金箔とする)が用いられることが多い。
例えば、特開2009−097075(特許文献1)では、FCCL用銅箔として、CuにSn、Mg、In、Agの中の二種以上を添加し耐熱性と屈曲性を改善した銅合金箔が開示されている。また、特開2011−216463(特許文献2)では、二次電池の充放電サイクル寿命を改善することを目的に、その負極集電体用銅箔として、CuにAg、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Sn、Te、Ti、Zn、Zrの中の一種以上を添加するとともにヤング率の異方性を低減した銅合金箔を用いている。
特開2009−097075号公報 特開2011−216463号公報
電子・電気機器の小型化、高機能化に伴い、銅箔の特性に対する要求はますます高まっている。例えば、二次電池の負極集電体における充放電サイクル寿命、FCCLにおける屈曲寿命、電磁波シールド体における耐久性等があげられる。本発明は、これら要求に対応できる銅合金箔を提供することを課題とする。
本発明者は、銅合金箔に弾性限以下の応力を負荷し長時間保持すると、室温であっても微小な伸びが生じることを発見した。そして、この室温で生じる微小クリープ伸び(以下、クリープとする)が小さい銅合金箔を用いると、電子・電気機器の機能性が向上することを見出した。
例えば、この銅合金箔に炭素質材料等を活物質としてコーティングし、これを負極集電体としてLIBを作製すると、LIBの充放電サイクル寿命が向上した。LIBの充電時にはリチウムイオンが正極から負極に移動し、放電時にはリチウムイオンが負極から正極に移動する。このリチウムイオンの移動に伴って負極活物質が膨張収縮するため、銅箔は充放電によって機械的な繰り返し応力を受ける。その結果、銅箔が永久変形して活物質が剥離し、電池特性が劣化する。クリープが小さい銅合金箔の場合、繰り返し応力下での銅合金箔の永久変形が軽減され、電池特性の劣化が改善されると考えられた。
また、クリープが小さい銅合金箔を用いてFCCLを作製すると、このFCCLを用いて作製したフレキシブルプリント基板(FPC)の屈曲寿命が向上した。クリープが小さい銅合金箔の場合、FPCが屈曲を受けた際の銅合金箔の永久変形が軽減され、これにより銅合金箔のクラック生成と成長が抑制されると考えられた。
同様に電磁波シールド用の電線被覆材においても、クリープが小さい銅箔を用いると、電線を繰り返し折り曲げた際の銅合金箔の損傷が軽減される傾向が見られた。
銅合金箔のクリープ伸びは極微小であるが、長期間に渡って繰り返し応力を受ける環境下においては、上記のような影響が顕在化すると推察された。
さらに、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、銅合金箔の圧延面に配向する結晶粒の方位がクリープに影響を及ぼすことを見出した。具体的には、クリープを低減するためには、圧延面において(111)面および(220)面を増やすことが有効であり、逆に(200)面の増加は有害であった。そして、実験的検討を経て、クリープの指標となる結晶方位指数を発明し、この指数を制御することによりクリープの低減を成し得た。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、Ag、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Te、Ti、ZnおよびZrの中の一種以上を合計で0.01〜0.50質量%含有し残部がCu及び不純物からなり、80%IACS以上の導電率を有し、300℃で30分間加熱後に300MPa以上の引張り強さを維持し、次式で与えられるA値が0.5以上であることを特徴とする銅合金箔を提供する。
A=2X(111)+X(220)−X(200)
(hkl)=I(hkl)/I0(hkl)
ただし、I(hkl)およびI0(hkl)はそれぞれX線回折法を用い圧延面および銅粉に対し求めた(hkl)面の回折積分強度である。
また、本発明は別の一側面において、Ag、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Te、Ti、ZnおよびZrの中の一種以上を合計で0.01〜0.50質量%含有し残部がCu及び不純物からなり、80%IACS以上の導電率を有し、300℃で30分間加熱後に300MPa以上の引張り強さを維持し、30℃にて100MPaの引張応力を付加し100時間保持したとき伸びが0.1%以下であることを特徴とする銅合金箔を提供する。
前述した銅合金箔において、Zrを0.01〜0.20質量%含有し残部がCu及び不純物からなることが好ましい。
前述した銅合金箔において、さらにSnを0.01〜0.20質量%含有し残部がCu及び不純物からなり、A値が6.4以上であることが好ましい。
前述した銅合金箔において、Agを0.05〜0.50質量%含有し残部がCu及び不純物からなることが好ましい。
前述した銅合金箔において、Feを0.05〜0.50質量%、Pを0.005〜0.10質量%含有し残部がCu及び不純物からなることが好ましい。
前述した各銅合金箔において、厚みが0.003〜0.05mmであることが好ましい。
前述した各銅合金箔は、二次電池の負極集電体に用いることができる。
この観点から、本発明は別の一側面において、前述した銅合金箔より構成される負極集電体を用いた二次電池を提供する。
前述した各銅合金箔は、フレキシブル銅張積層板に用いることができる。
この観点から、本発明は別の一側面において、前述した銅合金箔より構成されるフレキシブル銅張積層板を提供する。
前述した各銅合金箔は、電磁波シールド体に用いることができる。
この観点から、本発明は別の一側面において、前述した銅合金箔より構成される電磁波シールド体を提供する。
クリープ特性の測定原理を説明する図である。 一般的な二次電池の構造を示す概略図である。
(1)銅箔の成分
本発明の銅合金箔は、銅箔の強度および耐熱性を改善するために、銅にAg、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Sn、Te、Ti、ZnおよびZrの中の一種以上を合計で0.01〜0.50質量%含有する。上記元素の合計量が、0.50質量%を超えると導電率が低下し、導電材料として不適当になる。添加元素の合計量が0.01質量%未満では、含有元素の効果が発現せず強度や耐熱性が不足する。
ベースとするCu材料としてはJIS−C1020規定の無酸素銅またはJIS−C1100規定のタフピッチ銅が適する。無酸素銅溶湯の酸素濃度は通常0.001質量%以下であり、タフピッチ銅溶湯の酸素濃度は通常0.01〜0.05質量%である。
Cuよりも酸化しやすいCr、Fe、In、Ni、P、Si、Sn、Te、Ti、ZnおよびZrのいずれか1種以上の元素を採用する場合は、これら元素が酸化物を形成して耐熱性改善効果が得られないことを避けるために無酸素銅溶湯中に添加するのが一般的である。
AgはCuより酸化しにくいので、タフピッチ銅溶湯中、無酸素銅溶湯中ともに添加できる。
Ag、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Sn、Te、Ti、Zn及びZrの添加量は、合計で0.01〜0.50質量%の範囲で、後述する目的の引張強さ、耐熱性、導電率を満足するよう適宜調整する。
Ag、Teを添加することで、導電率をほとんど低下させることなく、強度と耐熱性を改善することができる。
Sn、Inは強度と耐熱性の改善に比較的高い効果を示し、インゴット溶製の際の取り扱いも比較的容易である。
Zr、Ti、Crは、Cu中で析出し強度と耐熱性を著しく改善するが、非常に活性なため溶銅中で酸化物や炭化物を作りやすい。酸化物や炭化物が生成すると、箔に圧延する過程で材料が破断したりピンホールが発生したりするので、インゴット溶製の際に注意を要する。
FeおよびNiは、PやSiと同時に添加することにより、Fe−P、Ni−P、Fe−Si、Ni−Siといった化合物が析出し、単独で添加する場合より、より高い強度と耐熱性が得られる。
Znは、強度や耐熱性を改善する効果はそれほど大きくないが、めっき性や耐マイグレーション性などの表面特性を改善する効果も有する。
本発明の効果は、次の成分の銅合金箔において、特に好適に発揮される。
(a)Zrを0.01〜0.20質量%含有し残部がCu及び不純物からなることを特徴とする銅合金箔。
(b)Snを0.01〜0.20質量%含有し残部がCu及び不純物からなることを特徴とする銅合金箔。
(c)Agを0.05〜0.50質量%含有し残部がCu及び不純物からなることを特徴とする銅合金箔。
(d)Feを0.05〜0.50質量%、Pを0.005〜0.10質量%含有し残部がCu及び不純物からなることを特徴とする銅合金箔。
(2)銅合金箔の厚み
銅合金箔の厚みは、0.003〜0.05mmであることが好ましい。厚みが0.003mm未満になると、銅合金箔の取り扱いが難しくなる。厚みが0.05mmを超えると、電子部品の小型化が難しくなる。より好ましい厚みは、0.005〜0.02mmである。
(3)クリープ特性
クリープ特性として、30℃にて100MPaの引張応力を付加し100時間保持したときの伸び率を評価する。当該伸び率が、0.1%以下、より好ましくは0.05%以下になると、電子・電気機器の機能が向上する。
(4)圧延面の結晶方位
次式で与えられる結晶方位指数A(以下、単にA値と記す)を0.5以上、より好ましくは1.0以上に調整する。ここで、I(hkl)およびI0(hkl)はそれぞれX線回折法を用い圧延面および銅粉に対し求めた(hkl)面の回折積分強度である。
A=2X(111)+X(220)−X(200)
(hkl)=I(hkl)/I0(hkl)
A値を0.5以上に調整すると、前記クリープ伸びが0.1%以下となり、電子・電気機器の機能が向上する。A値の上限値については、前記クリープ伸びの点からは制限されないものの、A値は典型的には10.0以下の値をとる。
(5)耐熱性、引張強さ、導電率
電子部品に加工される過程において、銅合金箔は熱処理を受ける。例えば、二次電池の負極集電体では、銅合金箔に塗布した活物質の乾燥が行われる。また、FCCLにおいては、銅合金箔をポリイミド等の樹脂フィルムに貼り合わせる際に熱が加えられる。このような熱処理で銅合金箔が軟化すると、電子・電気機器の機能が低下してしまう。
そこで、本発明では、300℃で30分間加熱後の銅合金箔の引張強さを300MPa以上、好ましくは350MPa以上に規定する。300℃、30分は銅合金箔を加工する際の熱処理における一般的加熱条件に比べ厳しいものであり、この熱処理後に300MPa以上の引張強さを維持していれば、充分な耐熱性を有しているといえる。上記添加元素は、300℃で30分間加熱後の引張強さが300MPa以上になるように選択される。
300℃で30分間加熱後に300MPa以上の引張強さを維持するためには、加熱前の状態で350MPa以上の引張強さを有していることが好ましく、400MPa以上の引張強さを有していることがさらに好ましい。
タフピッチ銅を素材とする従来の圧延銅箔の導電率は約100%IACSであるが、素材を銅合金化することにより導電率が低下すると、電子・電気機器の機能が低下する傾向がある。そこで、銅合金箔の導電率を80%IACS以上、好ましくは83%IACS以上に規定する。このレベルであると電子・電気機器の機能は低下しない。
(6)製造方法
酸素濃度が調整された溶湯に合金元素を添加し、厚み30〜300mm程度のインゴットに鋳造する。このインゴットを熱間圧延により厚み3〜30mm程度の板とした後、冷間圧延と再結晶焼鈍とを繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げる。
A値を0.5以上に調整する方法は特定の方法に限定されないが、例えば熱間圧延条件の制御により可能となる。本発明の熱間圧延では、800〜1000℃に加熱したインゴットを一対の圧延ロール間に繰り返し通過させ、目標の板厚に仕上げてゆく。A値には1パスあたりの加工度が影響を及ぼす。ここで、1パスあたりの加工度R(%)とは、圧延ロールを1回通過したときの板厚減少率であり、R=(T0−T)/T0×100(T0:圧延ロール通過前の厚み、T:圧延ロール通過後の厚み)で与えられる。
このRについて、全パスのうちの最大値(Rmax)を25%以下にし、全パスの平均値(Rave)を20%以下にすることが好ましい。これら両条件を満足することで、A値が0.5以上になる。より好ましくはRaveを19%以下とする。
再結晶焼鈍では、圧延組織の一部または全てを再結晶化させる。最終冷間圧延前の再結晶焼鈍では、平均結晶粒径を50μm以下に調整する。平均結晶粒径が大きすぎると、製品の引張強さを350MPa以上に調整することが難しくなる。
最終冷間圧延前の再結晶焼鈍の条件は、目標とする焼鈍後の結晶粒径に基づき決定する。具体的には、バッチ炉または連続焼鈍炉を用い、炉内温度を250〜800℃として焼鈍を行えばよい。バッチ炉では250〜600℃の炉内温度において30分から30時間の範囲で加熱時間を適宜調整すればよい。連続焼鈍炉では450〜800℃の炉内温度において5秒から10分の範囲で加熱時間を適宜調整すればよい。
最終冷間圧延では、一対の圧延ロール間に材料を繰り返し通過させ、目標の板厚に仕上げていく。最終冷間圧延の加工度は25〜99%とするのが好ましい。ここで加工度r(%)は、r=(t0−t)/t0×100(t0:圧延前の板厚、t:圧延後の板厚)で与えられる。rが小さすぎると、引張強さを350MPa以上に調整することが難しくなる。rが大きすぎると、圧延材のエッジが割れることがある。
(7)銅合金箔の使用例
(7−1)リチウムイオン二次電池
(電池の構成)
本発明に関わる負極板及び二次電池は、上記銅合金箔を負極集電体として用いることを特徴とするものであり、これ以外の構成については限定されず、一般に用いられている公知のものを用いることができる。
(負極)
負極は、負極集電体としての銅合金箔と、負極集電体の片面もしくは両面に形成される負極活物質より構成される。
負極活物質と結着剤とを溶剤に混練分散したペーストを、銅合金箔の片面もしくは両面に塗布して負極板材とし、必要に応じ加圧しながら、150〜300℃の温度で数時間から数十時間加熱し乾燥させた後、所定形状の負極板へ成型する。
負極活物質としては、リチウムの吸蔵放出が可能な炭素質物、金属、金属化合物(金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物)、リチウム合金などが挙げられる。
前記炭素質物としては、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素、熱分解気相炭素質物、樹脂焼成体などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料;熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ系炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体などに500〜3000℃で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料又は炭素質材料;等が挙げられる。
前記金属としては、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、すず、けい素等が挙げられる。
前記金属酸化物としては、すず酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物等が挙げられる。前記金属硫化物としては、すず硫化物、チタン硫化物等が挙げられる。前記金属窒化物としては、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等が挙げられる。
リチウム合金としては、リチウムアルミニウム合金、リチウムすず合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等が挙げられる。
負極活物質含有層には結着剤を含有させることができる。結着剤としては、例えば、有機溶剤系のポリフッ化ビニリデン(PVDF)、水分散系のスチレンブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。SBRには、増粘剤として、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)を併用することができる。SBRとCMCの混合物を使用することによって、負極活物質と集電体との密着性をより高くすることができる。
負極活物質含有層には、導電剤を含有させることができる。導電剤としては、アセチレンブラック、粉末状膨張黒鉛などのグラファイト類、炭素繊維粉砕物、黒鉛化炭素繊維粉砕物、等が挙げられる。
(正極)
正極は、正極集電体と、前記正極集電体の片面もしくは両面に形成される正極活物質含有層より構成される。
正極集電体としては、アルミニウム板、アルミニウムメッシュ材等が挙げられる。
正極活物質としては、二酸化マンガン、二硫化モリブデン、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24等のカルコゲン化合物が挙げられる。これらのカルコゲン化合物は、2種以上の混合物で用いても良い。
正極活物質含有層には結着剤を含有させることができる。結着剤としては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂のような熱可塑性エラストマー系樹脂、又はフッ素ゴムのようなゴム系樹脂を用いることができる。その一例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。結着剤には、増粘剤としては、例えばCMCを併用することができる。
活物質含有層には、導電補助材としてアセチレンブラック、粉末状膨張黒鉛などのグラファイト類、炭素繊維粉砕物、黒鉛化炭素繊維粉砕物、等をさらに含有することができる。
(セパレータ)
正極と負極の間には、セパレータか、固体もしくはゲル状の電解質層を配置することができる。セパレータとしては、例えば20〜30μmの厚さを有するポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム等を用いることができる。
(非水電解質)
非水電解質には、液状、ゲル状もしくは固体状の形態を有するものを使用することができる。また、非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解される電解質とを含むことが望ましい。
非水溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸メチル等が挙げられる。使用する非水溶媒の種類は、1種類もしくは2種類以上にすることが可能である。
電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)等が挙げられる。電解質は、単独でも混合物の形態でも使用することができる。
(7−2)FCCL
(FCCLの構成)
本発明に関わるFCCLは、上記銅合金箔を導電体として用いることを特徴とするものであり、これ以外の構成については限定されず、一般に用いられている公知のものを用いることができる。
(銅合金箔の粗化処理)
最終冷間圧延後の銅合金箔には、投錨効果による樹脂層との密着性改善等を目的とし、表面の粗化処理が行われる。粗化処理の方法としては、ブラスト処理、機械研磨、電解研磨、化学研磨及び電着粒のめっき等の方法が知られており、これらの中でも特に電着粒のめっき(粗化めっき)が多用されている。粗化めっきは、銅箔表面に樹枝状又は小球状の銅などの金属を多数電着せしめて微細な凹凸を形成するものである。
(樹脂層の形成)
ポリイミド系樹脂層の片面又は両面に銅合金箔を積層することで、FCCLを製造する。積層方法により三層FCCL、二層FCCL等の種類がある。
三層FCCLではエポキシ等の熱硬化性樹脂からなる接着剤を用いて、銅箔とポリイミド樹脂フィルムを貼り合わせる。この接着剤を硬化させるために、例えば130〜170℃の温度で0.5〜50時間程度の加熱処理を行う。
二層FCCLの製造方法の一つであるキャスティング法では、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を含むワニスを、銅箔上に塗布して加熱硬化させ、銅箔上にポリイミド被膜を形成する。この加熱硬化処理では、300〜450℃程度の温度で5〜40分程度加熱する。
両面に銅合金箔を積層する場合は、片面銅張積層板を形成後、銅箔層を熱プレスにより圧着する方法、2枚の銅箔層間にポリイミドフィルムを挟み、熱プレスにより圧着する方法等がある。
ポリイミド系樹脂層には任意の公知材料を使用すれば良く特に制限はないが、二層FCCLの場合、一般的には、公知のジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で反応させて得られるポリイミド前駆体樹脂(ポリアミック酸)を熱処理することによって形成することができる。ポリイミド系樹脂層は、単層のみからなるものでも、複数層から形成されるものでもよい。複数層のポリイミド樹脂層を形成する場合、異なる構成成分からなるポリイミド系樹脂層の上に他のポリイミド樹脂を順次塗布して形成することができる。ポリイミド樹脂層が3層以上からなる場合、同一の構成のポリイミド樹脂を2回以上使用してもよい。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
溶銅に合金元素を添加した後、厚みが200mmのインゴットに鋳造した。インゴットを950℃で3時間加熱し、熱間圧延により厚み15mmの板にした。熱間圧延後の板表面の酸化スケールを研削、除去した後、焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げた。
熱間圧延では、1パスあたりの加工度の最大値(Rmax)および平均値(Rave)を種々変化させた。
最終再結晶焼鈍(最終冷間圧延直前の焼鈍)は連続焼鈍ラインを用いて行った。炉温を700℃とし、焼鈍後の結晶粒径が10〜20μmになるように、材料の通板速度(炉内の保持時間)を調整した。
最終冷間圧延における加工度(r)を変化させるために、最終再結晶焼鈍を施す板厚を予め調整した。
最終冷間圧延後の銅合金箔につき、次の調査を行った。
(成分)
最終冷間圧延後の箔の合金元素濃度をICP−質量分析法で分析した。
(引張強さ、耐熱性)
最終冷間圧延上がりの箔に対しIPC(Institute for Interconnecting and Packaging Electronics Circuits)規格、IPC−TM−650;Method 2.4.19に準じて引張強さを求めた。試験片は、幅12.7mm、長さ150mmとし、試験片の長さ方向が圧延方向と平行になるように採取した。引張り速度は50mm/minとした。また、300℃で30分間加熱した後の試料に対しても、同様に引張強さを求めた。
(導電率)
最終冷間圧延上がりの試料に対し、引張り試験用の試験片を用い、四端子法により20℃での導電率を求めた。
(圧延面の結晶方位)
最終冷間圧延後の箔の表面に対し、厚み方向に(hkl)面のX線回折積分強度(I(hkl))を測定した。また、銅粉末(関東化学株式会社製、銅(粉末),2N5、>99.5%、325mesh)に対しても、(hkl)面のX線回折積分強度(I0(hkl))を測定した。X線回折装置には(株)リガク製RINT2500を使用し、Cu管球にて、管電圧25kV、管電流20mAで測定を行った。測定面((hkl))は(111)、(220)および(100)の三面とし、次式によりA値を算出した。
A=2X(111)+X(220)−X(200)
(hkl)=I(hkl)/I0(hkl)
なお、銅合金箔が薄く、X線が試料を透過する恐れがあるときは、複数枚の試料を重ねて測定を行った。
(クリープ特性)
最終冷間圧延後の箔から、幅15.5mm、長さ200mmの短冊形状の試験片を、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように採取した。次に、長手方向にL0(=100mm)の間隔を空け、試験片の幅方向中央に二点の打痕を刻印した。その後、図1に示すように、試験片の一端を支持して試験片を垂下し、他端に重りを取り付けた。重りの質量は、試験片に負荷される引張応力が100MPaになるよう調整した。この状態で、30℃にて100時間放置した。重りを取り外して打痕間隔(L)を測定し、(L−L0)/L0×100の式で、クリープ伸び(%)を算出した。
(FPCの屈曲寿命)
次の手順で屈曲試験用のFPC試料を作製した。
(A)最終圧延後の箔の片面に粗化めっきを施した。粗化めっきは、銅−コバルト−ニッケルめっきとし、銅を17mg/dm2、コバルトを2000μg/dm2、ニッケルを500μg/dm2付着させた。
(B)FCCLの製造ラインにおいて、前記銅合金箔の粗化めっきを施した面上に、市販のポリイミド前駆体ワニス(宇部興産株式会社製、商品名U−ワニス−A)を塗布、乾燥し、銅箔層上にポリイミド前駆体樹脂層が形成された積層体を得た。この積層体をオーブンに入れて、300℃で30分間の熱処理を施し、ポリイミド樹脂厚み25μmの片面FCCLを得た。
(C)FCCLから、幅8mm、長さ150mmの試験片を、その長手方向が圧延方向と平行になるように採取した。
(D)試験片に0.2mm幅のラインアンドスペース回路を形成し、この回路上にプレスによりカバー材を積層し、屈曲試験用のFPCを得た。カバー材にはニッカン工業(株)製のCISV−1215を用いた。
屈曲試験では、信越エンジニアリング(株)製IPC屈曲試験機を用い、曲率半径1.25mm、振動ストローク20mm、振動速度1500回/分の条件で、FPC試料に屈曲変形を繰り返し与え、試料の電気抵抗値が5%上昇するまでの回数を求めた。
銅合金箔が薄くなると、屈曲の際に銅箔表面に生じる歪が小さくなるため、屈曲寿命が増加する。そこで、箔厚に応じ、屈曲寿命を表1のように◎○×の三水準で評価した。
(リチウムイオン二次電池のサイクル寿命)
厚みが0.010mmの銅合金箔につき、図2に示す円筒型のリチウムイオン二次電池を以下の手順で作製し、サイクル寿命を測定した。
(a)負極活物質として鱗片状黒鉛粉末50重量部、結着剤としてSBR5重量部、そして増粘剤としてCMC1重量部に対して水99重量部に溶解した増粘剤水溶液23重量部を、混錬分散して負極用ペーストを得た。この負極用ペーストを圧延銅箔試料表面にドクターブレード方式で厚さ200μmに両面塗布し、300℃で30分間加熱し乾燥した。加圧して厚さを160μmに調整した後、せん断加工により成型し負極板6を得た。
(b)正極活物質としてLiCoO2粉末50重量部、導電剤としてアセチレンブラック1.5重量部、結着剤としてPTFE50重量%水性ディスパージョン7重量部、増粘剤としてCMC1重量%水溶液41.5重量部を、混練分散して正極用ペーストを得た。この正極用ペーストを、厚さ30μmのアルミニウム箔からなる集電体上にドクターブレード方式で厚さ約230μmに両面塗布して200℃で1時間加熱し乾燥した。加圧して厚さを180μmに調整した後、せん断加工により成型し正極板5を得た。
(c)正極板5と負極板6とを、厚さ20μmのポリプロピレン樹脂製の微多孔膜からなるセパレータ7を介して絶縁した状態で渦巻状に巻回した電極群を電池ケース8に収容した。
(d)負極板6から連接する負極リード9を、前記ケース8と下部絶縁板10を介して電気的に接続した。同様に正極板5から連接する正極リード3を、封口板1の内部端子に上部絶縁板4を介して電気的に接続した。これらの後、非水電解液を注液し、封口板1と電池ケース8とを絶縁ガスケット2を介してかしめ封口して、直径17mm、高さ50mmサイズで電池容量が780mAhの円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。
(e)電解液は、エチレンカーボネート30体積%、メチルエチルカーボネート50体積%、プロピオン酸メチル20体積%の混合溶媒中に、電解質としてLiPF6を1.0モル溶かした電解液を所定量注液した。この電解液を正極活物質層及び負極活物質層内に含浸させた。
作製した電池を用い、充放電サイクル特性を評価した。20℃の環境下で充放電を行い、3サイクル目における放電容量を初期容量とし、初期容量に対して放電容量が80%に低下するまでサイクル数を計数し、これをサイクル寿命とした。充電条件:4.2Vで2時間の定電流−定電圧充電を行い、電池電圧が4.2Vに達するまでは550mA(0.7CmA)の定電流充電を行った後、さらに電流値が減衰して40mA(0.05CmA)になるまで充電した。放電条件:780mA(1CmA)の定電流で3.0Vの放電終止電圧まで放電した。サイクル寿命が600回以上のときを良好(○)、600回未満の時を不良(×)と評価した。
表2に評価結果を示す。表3には熱間圧延の各パスにおける材料の仕上げ厚みおよび1パスあたりの加工度として、表2の発明例1、発明例4、比較例1および比較例5のものを例示した。
発明例1〜5、9〜15、17、18、20〜24、26、27及び参考例1〜6の銅合金箔では、Ag、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Sn、Te、Ti、ZnおよびZrの中の一種以上を合計で0.01〜0.50質量%添加し、熱間圧延においてRmaxを25%以下、Raveを20%以下とし、最終冷間圧延において加工度を25〜99%とした。その結果、A値が0.5以上となり、クリープ伸びが0.1%以下となった。また、80%IACS以上の導電率が得られ、300℃で30分間加熱後に300MPa以上の引張り強さが得られた。
クリープ伸びが0.05%以下の発明例及び参考例の屈曲特性は◎の評価となり、クリープ伸びが0.06〜0.1%の発明例及び参考例の屈曲特性は○の評価となった。
また、発明例及び参考例の電池特性は○の評価となった。
比較例1〜6では、RmaxまたはRave、あるいはその両方が本発明の規定から外れたため、A値が0.5未満になり、クリープ伸びは0.1%を超えた。その結果、屈曲特性、電池特性とも、×の評価となった。
比較例7では、Ag、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Sn、Te、Ti、ZnおよびZrの中の一種以上の合計が0.01質量%未満であったため、300℃で30分間加熱の引張強さが300MPa未満となった。このように比較例7は耐熱性に劣るため、屈曲試験用のFPCの作製過程において軟化し、クリープ伸びが0.1%以下であったにもかかわらず、屈曲特性は×の評価となった。
1:封口板
2:絶縁ガスケット
3:正極リード
4:上部絶縁板
5:正極板
6:負極板
7:セパレータ
8:電池ケース
9:負極リード
10:下部絶縁板

Claims (13)

  1. Ag、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Te、Ti、ZnおよびZrの中の一種以上を合計で0.01〜0.50質量%含有し残部がCu及び不純物からなり、80%IACS以上の導電率を有し、300℃で30分間加熱後に300MPa以上の引張り強さを維持し、次式で与えられるA値が0.5以上であることを特徴とする銅合金箔。
    A=2X(111)+X(220)−X(200)
    (hkl)=I(hkl)/I0(hkl)
    ただし、I(hkl)およびI0(hkl)はそれぞれX線回折法を用い圧延面および銅粉に対し求めた(hkl)面の回折積分強度である。
  2. Ag、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Te、Ti、ZnおよびZrの中の一種以上を合計で0.01〜0.50質量%含有し残部がCu及び不純物からなり、80%IACS以上の導電率を有し、300℃で30分間加熱後に300MPa以上の引張り強さを維持し、30℃にて100MPaの引張応力を付加し100時間保持したとき伸びが0.1%以下であることを特徴とする銅合金箔。
  3. Zrを0.01〜0.20質量%含有し残部がCu及び不純物からなることを特徴とする、請求項1または2の銅合金箔。
  4. さらにSnを0.01〜0.20質量%含有し残部がCu及び不純物からなり、A値が6.4以上であることを特徴とする、請求項1の銅合金箔。
  5. Agを0.05〜0.50質量%含有し残部がCu及び不純物からなることを特徴とする、請求項1または2の銅合金箔。
  6. Feを0.05〜0.50質量%、Pを0.005〜0.10質量%含有し残部がCu及び不純物からなることを特徴とする、請求項1または2の銅合金箔。
  7. 厚みが0.003〜0.05mmであることを特徴とする請求項1〜6の銅合金箔。
  8. 二次電池の負極集電体に用いられる請求項1〜7の銅合金箔。
  9. 請求項8に記載の銅合金箔より構成される負極集電体を用いた二次電池。
  10. フレキシブル銅張積層板に用いられることを特徴とする請求項1〜6の銅合金箔。
  11. 請求項10に記載の銅合金箔より構成されるフレキシブル銅張積層板。
  12. 電磁波シールド体に用いられることを特徴とする請求項1〜6の銅合金箔。
  13. 請求項12に記載の銅合金箔より構成される電磁波シールド体。
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