JP2013256682A - 銅合金箔、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、銅合金箔の製造方法、及びリチウムイオン二次電池用負極の製造方法 - Google Patents

銅合金箔、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、銅合金箔の製造方法、及びリチウムイオン二次電池用負極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池用負極の製造工程での熱処理を経た後であっても、充分な機械的強度を安定的に保つ。
【解決手段】 0.20質量%以上0.40質量%以下のCr、0.01質量%以上0.10質量%以下のAg、及び0.10質量%以上0.20質量%以下のSnを少なくとも含有し、残部がCuからなり、次式(1)のCr固溶指数Zが0.4以下となる。Z=(R−R)/(R−R)・・・(1) 但し、Rは銅合金箔10の導電率Rの実測値(%IACS)であり、RはCrが全て固溶した場合の銅合金箔10の導電率Rの計算値(%IACS)であり、RはCrが全て析出した場合の銅合金箔10の導電率Rの計算値(%IACS)である。
【選択図】図1

Description

本発明は、銅合金箔、係る銅合金箔を用いたリチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、銅合金箔の製造方法、及びリチウムイオン二次電池用負極の製造方法に関する。
電子機器の小型化、軽量化が進み、その電源としてエネルギー密度の高い二次電池が望まれている。二次電池とは、電解質を介した化学反応により正極活物質と負極活物質とが持つ化学エネルギーを電気エネルギーとして外部に取り出すものである。実用化されている中で、高いエネルギー密度を持つ二次電池としてはリチウムイオン二次電池が挙げられる。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、正極と負極とを絶縁するセパレータ、及び正極と負極との間でリチウムイオンの移動を可能にする電解液で構成される。リチウムイオンが正極活物質と負極活物質との間を出入り(インターカレーション、デインターカレーション)することで、充放電を繰り返す。
リチウムイオン二次電池に使用される負極活物質としては、炭素材料が主に用いられている。炭素材料が多層結晶構造を有することで、リチウムイオンの炭素材料の結晶間への吸蔵および結晶間からの放出が可能となる。また、近年、リチウムイオン二次電池には、更なる大容量化が求められており、炭素材料の理論容量を大きく超える充放電容量を持つ次世代の負極活物質、すなわち、大容量負極活物質の開発がすすめられている。具体的には、シリコン(Si)やスズ(Sn)等のリチウム(Li)との合金化が可能な金属を含む材料に期待が寄せられている。
これらの負極活物質をバインダ樹脂成分と導電材と共に溶剤に分散させたスラリーを、負極集電体となる銅箔上に塗布する。その後、溶剤を乾燥、除去して負極活物質層を形成し、ロールプレス機で圧縮成型してリチウムイオン二次電池用負極を製造するのが一般的である。SiやSn等を負極活物質に用いる場合、これらの材料は充放電時のリチウムイオンの吸蔵及び放出に伴う体積変化が大きいため、充放電サイクルによって膨張と収縮とを繰り返すことで、活物質粒子が微粉化したり、負極集電体となった銅箔から剥離又は脱落してしまったりと、サイクル劣化が起こり易くなってしまう。
このため、例えば、特許文献1〜3では、結着性の高いポリイミド等の熱可塑性のバインダ樹脂を使用することが提案されている。つまり、リチウムイオン二次電池用負極の製造において、バインダ樹脂の熱可塑性領域の温度以上で熱処理を行うことで、SiやSn等の活物質粒子の凹凸の凹部内へのバインダ樹脂の入り込みが大きくなって、結着性を向上させることができる。結着性が高いほど、リチウムイオン二次電池用負極内の集電構造の破壊が抑制され、充放電サイクル特性が向上する。
ここで、ポリイミドを用いる場合、イミド化が起こり始める150℃程度の低温では充分なイミド化に長時間を要し、生産性の低下が懸念される。そこで、ポリイミドが完全に分解してしまわない500℃未満の温度領域である350℃〜450℃で熱処理を行うことが好ましい。
また、このような高温での熱処理を行う場合には、スラリーを塗布した銅箔に軟化が起
こり、機械的強度が著しく低下してしまうことを抑制する必要がある。軟化が起きると、充放電による負極活物質の体積変化に伴って、負極集電体となった銅箔の変形が生じてしまい、負極活物質との密着性が低下して充放電サイクル特性が低下してしまうからである。
そこで、負極集電体となる銅箔に用いられる圧延銅箔を、これまでのタフピッチ銅を素材とするものから、銅合金箔とすることが提案されている。例えば、特許文献4には、300℃で30分の熱処理後において400MPa以上の引張強さ維持を目標に、無酸素銅にスズ(Sn)を0.05質量%〜0.22質量%の範囲で含有させ、さらに0.1質量%以下の銀(Ag)を添加した銅合金箔が開示されている。また、熱処理後の引張強さ維持のため、熱処理前には480MPa以上の引張強さを備えることを目標としている。また、例えば、特許文献5には、耐熱性の向上を目的として、亜鉛(Zn)を5質量%〜40質量%の範囲で含有する銅合金箔が開示されている。
特開2006−278123号公報 特開2006−278124号公報 国際公開第2007/114168号パンフレット 特開2011−108442号公報 特開2000−133276号公報
しかしながら、特許文献4においては、300℃、30分を超えるような高温、長時間の熱処理後の引張強さについての保証はされていない。また、300℃で30分の熱処理前後において、引張強さの変化量が非常に大きくなっている。以下に述べるように、このような熱処理前後における引張強さの急激な変化は好ましくない。
一般的な銅合金箔においては、所定温度までの熱処理では引張強さは略一定であり、その所定温度を超えると引張強さの急激な低下が起こる。この現象は、母相の再結晶によるものである。つまり、引張強さが急激に低下する温度が再結晶温度である。再結晶温度付近では、ほんのわずかな温度の違いで引張強さが大きく変化する。
リチウムイオン二次電池用負極の製造工程で施される熱処理は、長尺状の銅箔や銅合金箔に対し、バッチ炉、或いはライン形式の設備で行われる。よって、銅合金箔等の全長に亘って均一な温度で熱処理が施される保証はない。特許文献4のように、熱処理前後で引張強さが大きく変化するような銅合金箔においては、このような熱処理時の温度のばらつきによる引張強さの不均一性が一層顕著となってしまう。
また、負極集電体となる銅合金箔においては、高い導電性を備えることも重要である。特許文献5の実施例1に記載のCu−10%Znは、JIS H 3100に規定される合金番号C2200の銅合金箔にあたり、いくつかの実施例の中で最も導電性が高い銅合金箔である。しかしながら、その導電率は44%IACSに過ぎないことがわかっている。
本発明の目的は、リチウムイオン二次電池用負極の製造工程での熱処理を経た後であっても、充分な機械的強度が安定的に保たれる銅合金箔、係る銅合金箔を用いたリチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、銅合金箔の製造方法、及びリチウムイオン二次電池負極の製造方法を提供することである。
本発明の第1の態様によれば、
0.20質量%以上0.40質量%以下のCr、0.01質量%以上0.10質量%以下のAg、及び0.10質量%以上0.20質量%以下のSnを少なくとも含有し、残部がCuからなり、
下記の式(1)のCr固溶指数Zが0.4以下となる
銅合金箔が提供される。
Figure 2013256682
但し、式(1)中、
導電率Rは、
前記銅合金箔の実測上の導電率R(%IACS)であり、
導電率Rは、
前記銅合金箔の計算上の導電率R(%IACS)であり、前記Crが全て固溶した場合に固溶した状態にある各合金元素の含有濃度[原子%](at%)を下記の式(2)に代入することで得られた電気抵抗率ρから、下記の式(3)により定まる導電率R(%IACS)であり、
導電率Rは、
前記銅合金箔の計算上の導電率R(%IACS)であり、前記Crが全て析出した場合に固溶した状態にある各合金元素の含有濃度[原子%](at%)を下記の式(2)に代入することで得られた電気抵抗率ρから、下記の式(3)により定まる導電率R(%IACS)である。
Figure 2013256682
Figure 2013256682
本発明の第2の態様によれば、
350℃以上450℃以下の温度で1時間以上12時間以下の熱処理を施した後に、400N/mm以上の引張強さを保っており、
前記熱処理後における引張強さの前記熱処理前における引張強さに対する差が30N/mm以下であって、
前記熱処理後における導電率が75%IACS以上となる
第1の態様に記載の銅合金箔が提供される。
本発明の第3の態様によれば、
20μm以下の厚さを有する
第1又は第2の態様に記載の銅合金箔が提供される。
本発明の第4の態様によれば、
第1〜第3の態様のいずれかに記載の銅合金箔が熱処理されてなるリチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔と、
前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔の少なくとも片面に形成された負極活
物質層と、
前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔に接続されたタブリードと、を備えるリチウムイオン二次電池用負極が提供される。
本発明の第5の態様によれば、
第4の態様に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、
リチウムイオン二次電池用正極と、
前記リチウムイオン二次電池用負極及び前記リチウムイオン二次電池用正極の間に挿入されたセパレータと、
前記セパレータが間に挿入された前記リチウムイオン二次電池用負極及び前記リチウムイオン二次電池用正極が収容され、電解液が封入された容器と、を備える
リチウムイオン二次電池が提供される。
本発明の第6の態様によれば、
0.20質量%以上0.40質量%以下のCr、0.01質量%以上0.10質量%以下のAg、及び0.10質量%以上0.20質量%以下のSnが少なくとも含有される銅合金素材に熱間圧延を施して板材を形成する熱間圧延工程と、
前記板材に冷間圧延を施して生地を形成する冷間圧延工程と、
前記生地を850℃以上950℃以下に保持して前記生地に溶体化処理を施す生地溶体化工程と、
前記溶体化処理を施された前記生地に冷間圧延を施す最終冷間圧延工程と、を有する
銅合金箔の製造方法が提供される。
本発明の第7の態様によれば、
前記最終冷間圧延工程では、
加工度が95%以上99%以下となる冷間圧延を前記生地に施し、前記生地の厚さを20μm以下とする
第6の態様に記載の銅合金箔の製造方法が提供される。
本発明の第8の態様によれば、
第6又は第7の態様に記載の製造方法により製造される銅合金箔の少なくとも片面に負極活物質とバインダ溶液とを混練したスラリーを塗布するスラリー塗布工程と、
前記スラリーが塗布された前記銅合金箔に350℃以上450℃以下の温度で1時間以上12時間以下の熱処理を施して、少なくとも片面に負極活物質層が形成されたリチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔を製造する熱処理工程と、
前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔にタブリードを接続するタブリード接続工程と、を有し、
前記熱処理工程では、
前記スラリー中のバインダ成分が固化して前記負極活物質層が形成されるとともに、
前記熱処理を受けた前記銅合金箔が、前記熱処理前における引張強さに対する差が30N/mm以下であって、かつ、400N/mm以上の引張強さを保っており、導電率が75%IACSである前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔となる
リチウムイオン二次電池用負極の製造方法が提供される。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池用負極の製造工程での熱処理を経た後であっても、充分な機械的強度が安定的に保たれる銅合金箔、係る銅合金箔を用いたリチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、銅合金箔の製造方法、及びリチウムイオン二次電池負極の製造方法が提供される。
本発明の一実施形態に係る銅合金箔の製造工程を示すフロー図である。 本発明の一実施形態に係る銅合金箔及びリチウムイオン二次電池用負極の平面図である。 本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の斜視断面図である。
<本発明者等が得た知見>
上述のように、リチウムイオン二次電池用負極の集電体として、例えば特許文献4,5のような銅合金箔を用いたとしても、充分な機械的強度は得られていなかった。また、導電性も不充分であった。
そこで、本発明者等は、リチウムイオン二次電池用負極の集電体として、例えば銅−クロム(Cu−Cr)系合金素材が圧延された銅合金箔等を用いることとした。このような銅合金箔においては、Crが母相であるCu中に析出した状態にあると、銅合金箔の機械的強度および導電性を向上させる働きがある。Crは、例えば上述のような熱処理により、母相のCu中に多く析出させることができる。
一方で、本発明者等は、Crが母相のCu中に固溶した状態にあると、銅合金箔の耐熱性を向上させ、例えば上述のような熱処理において、銅合金箔の軟化を抑制する働きがあることを見いだした。
つまり、本発明者等によれば、熱処理前の銅合金箔の状態では、母相中の固溶Cr量が高い状態に保たれていることが重要である。また、熱処理後には、このような固溶Crが多く析出し、銅合金が硬化して機械的強度および導電性の高い状態となっていることが重要である。
さらに、本発明者等は、鋭意研究の結果、母相中の固溶Cr量は、銅合金箔の導電率の値により調べることができるとの知見を得た。
本発明は、発明者等が見いだしたこのような知見に基づくものである。
なお、本明細書において、リチウムイオン二次電池用負極の製造工程における熱処理を施される前の状態のものを、原則、銅合金箔と呼ぶ。また、リチウムイオン二次電池用負極の製造工程における熱処理を施された後の状態のものを、原則、リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔と呼ぶ。
<本発明の一実施形態>
(1)リチウムイオン二次電池の概略構成
まずは、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の概略構成について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る銅合金箔10及びリチウムイオン二次電池用負極1の平面図である。図3は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池50の斜視断面図である。
図3に示すように、リチウムイオン二次電池50は、図示しない電解液が封入された容器としての電池外挿缶5を備えている。電池外挿缶5には、タブリード13を備えたリチウムイオン二次電池用負極1(以下、単に「負極1」ともいう)と、タブリード23を備えたリチウムイオン二次電池用正極2(以下、単に「正極2」ともいう)とが、間にセパレータ3が挿入された状態で収容されている。
また、図2に示すように、負極1は、例えば銅合金箔10からなるリチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔11(以下、単に「負極集電銅合金箔11」ともいう)と、例えばその片面または両面に形成された負極活物質層12とを備える。上述のタブリード13は、負極集電銅合金箔11の露出領域11sに直接接続されている。リチウムイオン二次電池50及びリチウムイオン二次電池用負極1の詳細の構成については後述する。
(2)銅合金箔の構成
本発明の一実施形態に係る銅合金箔10は、例えば後述するように、少なくとも片面に負極活物質層12が形成される際に所定の熱処理が施され、リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔11となるよう構成されている。以下に、本発明の一実施形態に係る銅合金箔10について説明する。
(銅合金箔の概要)
銅合金箔10は、例えばクロム(Cr)等の所定の合金元素を含有し、残部が銅(Cu)からなるCu−Cr系合金の素材が圧延された銅合金箔として、例えば20μm以下の厚さに形成されている。銅合金箔10は、係る所定の合金元素として、例えば、0.20質量%以上0.40質量%以下のCr、0.01質量%以上0.10質量%以下の銀(Ag)、及び0.10質量%以上0.20質量%以下のスズ(Sn)を少なくとも含有する。これらの合金元素には、銅合金箔10や熱処理後の負極集電銅合金箔11の機械的強度や耐熱性等を向上させる働きがある。
すなわち、上述のように、Crは母相中に固溶した状態になっていることで銅合金箔10の耐熱性を向上させ、熱処理による軟化を抑制する。また、固溶状態にあるCrは熱処理によって単体で母相中に析出し、機械的強度や導電性を向上させる。上述のように、Crを0.20質量%以上とすることで、固溶Crをより多く確実に析出させることができる。また、Crを0.40質量%以下としているので、後述する溶体化処理時に、未固溶Crが粗粒第2相析出物を形成するのが抑制される。よって、析出Crの微細分散が妨げられるなどして、固溶Crの析出に伴う銅合金箔10の機械的強度の向上が阻害されたり、加工性が低下してしまったりすることを低減できる。なお、Crについては、後述の式(1)〜(3)による規定を併せて設けることで、機械的強度の確保をより確実なものとしている。
また、銅合金箔10中に含有されるAgやSnは、引張強さや耐熱性の維持および向上の機能を更に強化する。Crが母相中に析出すると銅合金箔10に析出硬化(析出強化)が起こる一方、母相中の固溶Crの量が低下するため、母相の再結晶による軟化は起こり易くなる。銅合金箔10中のAgやSnは、Crが析出した後の軟化を抑制し、銅合金箔10の引張強さや耐熱性を維持し、あるいは向上させる。
このとき、Agの含有量を例えば0.01質量%以上とすることで、引張強さおよび耐熱性を維持、向上させる充分な効果が得られる。また、Agは高価な元素であるため、不必要に含有量を増やすのは好ましくない。そこで、上限を例えば0.10質量%以下としている。
同様に、Snの含有量を例えば0.10質量%以上とすることで、引張強さおよび耐熱性を維持、向上させる充分な効果が得られる。一方で、Snには銅合金箔10の導電率を低下させてしまう作用もあるため、上限を例えば0.20質量%以下としている。これにより、導電率の低下を抑制することができ、銅合金箔10を用いたリチウムイオン二次電池50の内部抵抗を低く抑えて放電レート特性等の電池特性を向上させることができる。
なお、銅合金箔10には、機械的強度や耐熱性を向上させる他の合金元素や、銅合金箔
10の他の特性を制御する合金元素が更に添加されていてもよい。また、銅合金箔10には、この他にも、不可避的な不純物が含まれる場合がある。
(銅合金箔のCr固溶指数)
上述のように、本発明者等によれば、熱処理前の銅合金箔10の状態で、母相中の固溶Cr量を高い状態に保つことで、リチウムイオン二次電池用負極1の製造工程において、高温での熱処理によりCrを析出させ、銅合金箔10を硬化させる時効硬化を起こすことができる。
しかしながら、固溶Cr量を正確に把握し制御するのは、非常に困難である。熱処理前であっても、銅合金箔中には、析出したCrが微細分散した状態にある。このような結晶組織状態で、母相中の固溶Cr量を直接的に、且つ正確に測ることは容易ではない。また、析出状態にあるCr量の測定により間接的に固溶Cr量を算出したとしても精度が劣る。
そこで、本発明者等は、銅合金箔中の固溶Cr量が銅合金箔の導電率に大きく影響を与える点を利用することに想い到った。なおかつ、このとき、Cr以外の合金組成も導電率の値に影響することを考慮に入れなければならない。
本発明者等は、合金組成が種々に異なりうる銅合金箔10に対し、導電率を指標として固溶Cr量を正確に把握し、且つ、制御すべく、以下の式(1)〜(3)による規定を設けた。すなわち、銅合金箔10においては、次式(1)のCr固溶指数Zが0.4以下となるよう各種値が制御されている。
Figure 2013256682
但し、式(1)中、
導電率Rは、
銅合金箔10の実測上の導電率R(%IACS)であり、
導電率Rは、
銅合金箔10の計算上の導電率R(%IACS)であり、Crが全て固溶した場合に固溶した状態にある各合金元素の含有濃度[原子%](at%)を下記の式(2)に代入することで得られた電気抵抗率ρから、下記の式(3)により定まる導電率R(%IACS)であり、
導電率Rは、
銅合金箔10の計算上の導電率R(%IACS)であり、Crが全て析出した場合に固溶した状態にある各合金元素の含有濃度[原子%](at%)を下記の式(2)に代入することで得られた電気抵抗率ρから、下記の式(3)により定まる導電率R(%IACS)である。
ここで、各導電率R(%IACS)は、電気抵抗率が17.24nΩ・mの標準焼なまし銅線の導電率Rを100%としたときの所定物質の導電率Rである。
Figure 2013256682
Figure 2013256682
式(2)を用い、例えば導電率Rを算出する際は、式(2)のCr濃度[at%]に代入されるべき値は、Crが全て固溶した状態のときに固溶した状態にあるCrの量、つまり、銅合金箔10中に含有されるCrの全量を濃度(原子%)に換算した値である。
また、例えば導電率Rを算出する際は、式(2)のCr濃度[at%]に代入されるべき値は、Crが全て析出した状態のときに固溶した状態にあるCrの量、つまり、ゼロである。
また、その他の合金元素Ag,Snは、Crの状態がどうであれ基本的には全て固溶した状態となっている。このため、上述の式(2)の導電率R及び導電率Rのいずれにおいても、Ag濃度[at%]およびSn濃度[at%]に代入されるべき値は、銅合金箔10中に含有されるAg,Snの全量をそれぞれ濃度(原子%)に換算した値である。
上述のように、現実の固溶Cr量の正確な把握とその制御には、種々の困難が伴う。本発明者等は、少なくともCr,Ag,Snを含有する種々の銅合金箔について、これら合金元素の含有量や製造条件等を様々に変え、機械的強度や導電性等の測定データを取得し、解析を行った。
式(2)の電気抵抗率ρは、係る測定データを踏まえ、リンデ−ノルトハイム(Linde−Nordheim)則により算出される銅合金箔10の電気抵抗率(nΩ・m)である。式中の数値「17.241(nΩ・m)」は、上述の通り、標準焼なまし銅線の電気抵抗率Rである。式中の他の項は、銅合金箔10に含有されるCr,Ag,Snの電気抵抗率の上昇値を規定する項である。各係数の値は、下記の技術文献(イ)に基づくものである。
(イ)小松伸也、“銅合金の比抵抗、その解釈と応用”、銅と銅合金第41巻1号(2002)p.1〜p.9
以下に、上述の式(1)の意義について説明する。
上述のように、本実施形態に係る銅合金箔10においては、時効硬化を起こさせるのに有効な固溶Cr量を高く保つため、導電率を用いたCr固溶指数Zにより固溶Cr量を評価し、制御する。固溶Cr量の評価にあたっては、銅合金箔中の合金組成が異なることによっても導電率の値が変動してしまう点に注意が必要である。上述の式(1)では、このような合金組成の変化に伴う導電率の変動の影響をも考慮している。
具体的には、銅合金箔10中に含まれるCrの全量がCuの母相中に固溶したと仮定すると、Crの含有量に影響され易い導電率Rは最も小さくなる。この最小状態にあるのが、導電率Rである。また、銅合金箔10中に含まれるCrの全量がCuの母相中に析出したと仮定すると、導電率Rは最も大きくなる。この最大状態にあるのが、導電率Rである。
すなわち、式(1)の分母は、導電率Rの最大変動幅に相当し、固溶Cr量の変動域と捉えることができる。また、式(1)の分子は、銅合金箔10中の実際の固溶Cr量の多寡を反映した値である。つまり、式(1)で表わされるCr固溶指数Zは、所定の含有量
のCrを含む銅合金箔10において、固溶Cr量の変動域を表わすスケール上で、母相中の実際の固溶Cr量がどの位置にあるか、つまり、銅合金箔10における固溶Cr量がどの程度であるかを示す指標となっている。
このように、Cr固溶指数Zによって、母相中の固溶Cr量の多寡を評価することができる。つまり、Cr固溶指数Zが小さいほど固溶Cr量が多く、Cr固溶指数Zが大きいほど固溶Cr量が少ないこととなる。本実施形態においては、Cr固溶指数Zを0.4以下としているので、銅合金箔10中には充分な分量の固溶Crが確保された状態にある。
なお、時効硬化により充分な機械的強度を得るには、固溶Cr量や析出Cr量等だけでなく、析出物のサイズや分散状態が大きく影響する。固溶Cr量や析出物のサイズ、分散状態等の制御手法については、後述する。
(銅合金箔の特性)
以上のような構成とすることで、銅合金箔10は、リチウムイオン二次電池用負極1の製造工程での熱処理を経て負極集電銅合金箔11となった後であっても、充分な機械的強度を有する。具体的には、銅合金箔10、又は負極集電銅合金箔11が有する機械的強度は、以下のように規定される。
すなわち、銅合金箔10は、負極1の製造工程において、350℃以上450℃以下での熱処理を1時間以上12時間以下施されて負極集電銅合金箔11となった後に、圧延方向の引張強さが400N/mm以上となる機械的強度を保つように構成される。また、このとき、圧延方向でみて、熱処理後における引張強さの熱処理前における引張強さに対する差が30N/mm以下となるよう構成される。係る差は、マイナスの値であってもよい。つまり、熱処理前における引張強さより熱処理後における引張強さが増す場合も含む。
また、上述の構成により、銅合金箔10は、高い導電率を有する負極集電銅合金箔11となる。すなわち、上述した所定条件の熱処理後、負極集電銅合金箔11は、好ましくは75%IACS以上の導電率となるよう構成される。
このように、本実施形態に係る銅合金箔10によれば、高温、長時間での熱処理による軟化を抑制し、負極1の製造工程での熱処理を利用した時効硬化を制御することができる。また、温度条件がばらつきがちな熱処理を受けても、充分な機械的強度を安定的に保つことができる。この機械的強度の安定性について、以下に詳述する。
上述のように、負極1の製造工程で施される熱処理は、長尺状の銅合金箔に対し、バッチ炉、或いはライン形式の設備で行われる。バッチ炉では、長尺状の銅合金箔がコイル状に巻かれた状態で炉内に収容され、炉内の雰囲気温度を制御することで熱処理が行われる。この場合、コイルの内側付近と外周付近とでは銅合金箔が炉内の雰囲気に触れる面積が違い、熱の伝わり方が異なるため、銅合金箔の全長に亘って同じ温度分布(温度プロファイル)で熱処理を行うことは困難である。
また、ライン形式の設備では、雰囲気温度を制御した炉内で、銅合金箔を一定速度で通過させ、所定の雰囲気温度に曝される時間を一定とすることで熱処理が行われる。炉内を通過後、銅合金箔はコイルに巻き取られる。この場合、コイルへの巻き取り量によって、炉内を通過中の銅合金箔に伝わる外気温の熱量が異なり、また、炉内を通過した後の冷却過程が異なるため、やはり、銅合金箔の全長に亘って同じ温度分布で熱処理を行うことは困難である。
また、これらの熱処理の手法においては、銅合金箔の実際の温度を直接測定しながら熱処理を施すことが困難であるため、設定温度に対して常に±5℃程度の温度のばらつきを想定したうえで、銅合金箔を構成することが好ましい。
上述の特許文献4においては、合金元素の種類や含有量等によって、熱処理で起こる母相の再結晶による回復を抑制し、耐熱性を高めている。このような場合、特許文献4の実施例でもみられるように、所定温度までは略一定であった引張強さが、その所定温度、つまり、再結晶温度を超える熱処理では急激に低下することがある。このように、再結晶温度付近では、ほんのわずかな温度の違いで引張強さが大きく変化してしまう。よって、熱処理前後での引張強さの差が激しい特許文献4の構成では、上述のような熱処理時の温度のばらつきによる引張強さの不均一性が一層顕著となってしまう。
本実施形態においては、上述のように、負極集電銅合金箔11となったときの圧延方向の引張強さの低下量が例えば30N/mm以下に留まるよう構成される。よって、たとえ熱処理の温度がばらついても局所的な引張強さの低下等が起こり難く、安定的な機械的強度を保つことができる。
(3)銅合金箔の製造方法
次に、図1を参照しながら、銅合金箔10の製造方法について説明する。図1は、本実施形態に係る銅合金箔10の製造工程を示すフロー図である。
(銅合金素材準備工程S10)
図1に示すように、まずは、原材料となる銅合金素材としてのインゴット(鋳塊)を用意する。係るインゴットは、0.20質量%以上0.40質量%以下のCr、0.01質量%以上0.10質量%以下のAg、及び0.10質量%以上0.20質量%以下のSnが少なくとも含有されるよう、Cr,Ag,SnとCuとを溶解して鋳造されたものである。母材となるCuには、例えば無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)やタフピッチ銅等を用いることができる。
(熱間圧延工程S20)
次に、係るインゴットに対し、熱間圧延を施して板材を形成する。なお、熱間圧延工程S20に先んじて、鋳造組織中に生じている偏析を均質化する加熱処理を行っておくことが望ましい。具体的には、平衡状態で均質な固溶状態となる温度以上の温度域に30分以上、インゴットを保持する。加熱温度は、例えば800℃以上950℃以下が好ましい。
(繰り返し工程S30)
続いて、熱間圧延を施された板材に対し、冷間圧延工程S31と生地溶体化工程S32とを複数回繰り返す繰返し工程S30を行う。
冷間圧延工程S31は、例えば50%以上の加工度で行う。ここで、加工度は、熱間圧延工程S20前の加工対象物(銅の板材)の厚さをTとし、熱間圧延工程S20後の加工対象物の厚さをTとすると、加工度(%)=[(T−T)/T]×100で表わされる。
生地溶体化工程S32では、溶体化処理を所定温度で施すことで、生地中に固溶Cr量を充分に確保させる。このときの最適温度は合金組成によって多少変動するが、例えば850℃以上950℃以下の温度で溶体化処理を施すことで、冷却後にCr固溶指数Zが0.4以下となった生地が得られる。溶体化処理後のCr固溶指数Zが所定値以下となっていることで、リチウムイオン二次電池用負極1の製造工程での熱処理で、析出Crが充分に生成して析出硬化が起こり、高い機械的強度と導電性とを備えた負極集電銅合金箔11
が得られる。
(最終冷間圧延工程S40)
次に、繰返し工程S30を経て溶体化処理を施された生地に、最終冷間圧延工程S40を施して、所定の厚さ、例えば20μm以下の圧延銅合金箔とする。このとき、加工度を95%以上99%以下として、上述の溶体化処理にて固溶したCrの析出の起点となる歪を充分に導入することが好ましい。このように、充分な歪を確保することで、リチウムイオン二次電池用負極1の製造工程での熱処理で析出Crが生成する際、Crの析出物の微細分散が起こる。Crの析出物が微細分散した状態にあることで、機械的強度及び導電性を向上させる効果が一層発揮されやすくなる。
以上の工程を経た生地に、例えば粗化処理および防錆処理等の所定の表面処理を施してもよい。
以上により、銅合金箔10が製造される。
(4)リチウムイオン二次電池用負極の製造方法
次に、図2に示す構成を備えるリチウムイオン二次電池用負極1の製造方法について説明する。
(スラリー塗布工程)
まずは、銅合金箔10にスラリーを塗布する方法について説明する。係る工程は、例えばコイル・ツー・コイル方式の連続ラインにより、銅合金箔10にスラリーを塗布するアプリケータ等の装置を用いて行う。
具体的には、例えば負極活物質、バインダ溶液、及び必要に応じて導電助剤を混練したスラリーを、銅合金箔10の片面または両面に塗布し、例えば70℃〜130℃で数分間〜数十分間、乾燥する。
スラリーに含まれる負極活物質としては、例えばSnやSi等の合金、或いは化合物等の粉末を用いることができる。個々の粉末の直径は、例えば数μm〜数十μmである。また、バインダ溶液としては、ポリイミド(PI)等のイミド系樹脂やその他の樹脂の前駆体等の溶液を用いることができる。
(熱処理工程)
次に、例えばバッチ形式、あるいはライン形式の赤外線加熱炉等を用い、スラリーが塗布された銅合金箔10に対し、バインダ成分の熱可塑性領域の温度以上となる高温かつ長時間の熱処理を施す。具体的には、350℃以上450℃以下での熱処理を1時間以上12時間以下施す。これにより、例えばイミド系樹脂等の前駆体からなるバインダ成分は、負極活物質粒子の凹凸の凹部内へと入り込みつつイミド化反応が進行して固化する。
また、上述の熱処理によって、銅合金箔10中の固溶Crは単体でCuの母相中に析出し、析出Crとなる。上述のように、銅合金箔10はCr固溶指数Zが0.4以下となるよう制御されており、充分な析出Cr量が得られることで析出硬化が起こる。よって、高温、長時間での熱処理による軟化を抑制しつつ、充分な機械的強度と導電性とを兼ね備える負極集電銅合金箔11となる。また、負極集電銅合金箔11は、銅合金箔10の製造工程において95%以上99%以下の加工度となる最終冷間圧延工程S40を経ている。よって、析出Crが微細分散し、機械的強度と導電性とを向上させる効果が一層高まる。
このように、リチウムイオン二次電池用負極1の製造工程での熱処理を利用した時効硬
化により、充分な機械的強度と導電性とを有する負極集電銅合金箔11が得られる。よって、充放電に伴う負極集電銅合金箔11の体積変化が抑制され、負極活物質層12との高い結着性を確保することができる。また、負極集電銅合金箔11の片面または両面に、負極活物質及びイミド化されたバインダ樹脂を含む負極活物質層12が、高い結着性を有して形成される。
(圧縮成型工程)
続いて、負極集電銅合金箔11の片面または両面に形成された負極活物質層12を圧縮成型する。係る工程では、例えばコイル・ツー・コイル方式のロールプレス機等を用い、負極活物質層12を略均一の厚みに均して成型する。
(タブリード接続工程)
次に、図2を参照しながら、負極集電銅合金箔11にタブリード13を接続する方法について説明する。
図2に示すように、片面または両面に負極活物質層12が形成され、例えば圧延方向に沿って短冊状に切り離された負極集電銅合金箔11は、少なくとも片面或いは両面の一端に、負極活物質層12が形成されていない露出領域11sを有する。リチウムイオン二次電池50が備える電池外挿缶5と電気的接続を取るため、この負極集電銅合金箔11の露出領域11sに例えば溶接によりタブリード13を接続する。
すなわち、負極集電銅合金箔11の露出領域11sと、例えばNi又はNiめっき銅等からなるタブリード13とを重ね合わせ、例えば超音波溶接機にて、所定の加圧力、負荷エネルギーを加えつつ、所定の負荷時間で溶接処理を行う。これにより、負極集電銅合金箔11とタブリード13とが接続される。
以上により、銅合金箔10が熱処理されてなるリチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔11と、負極集電銅合金箔11の片面または両面に形成された負極活物質層12と、負極集電銅合金箔11に接続されたタブリード13と、を備えるリチウムイオン二次電池用負極1が製造される。
(5)リチウムイオン二次電池の製造方法
次に、図3を参照しながら、リチウムイオン二次電池50の製造方法について説明する。ここでは、図3に示す円筒型のリチウムイオン二次電池50を例にとって説明するが、リチウムイオン二次電池は、角型、ラミネート型等、他の形態を有していてもよい。
まず、リチウムイオン二次電池用負極1とリチウムイオン二次電池用正極2とをセパレータ3を介して重ね合わせ、図示しない巻芯に巻き取った捲回体4を製作する。正極2は、リチウムイオン二次電池用正極集電金属箔と、正極集電金属箔の例えば片面または両面に形成された正極活物質層と(いずれも図示せず)、正極集電金属箔に接続されたタブリード23と、を備える。正極集電金属箔を構成する金属は、例えばアルミニウム(Al)やその他の金属等である。正極活物質層は、例えばLiを含む金属複合酸化物等からなる。セパレータ3は、例えば多孔質の樹脂等からなる。
次に、容器としての電池外挿缶5に、図示しない下部絶縁板と、捲回体4とをこの順に収容する。続いて、図示しないマンドレル(芯金)を捲回体4の中心に挿入し、上部絶縁板を電池外挿缶5に収容した後に、電池外挿缶5に溝6を形成(溝入れ)する。この後、乾燥を行って電池外挿缶5内の水分を飛ばす。電池外挿缶5内が充分に乾燥したら、図示しない電解液を注入する。次に、電池外挿缶5の溝6近傍にガスケット7を装着し、負極1のタブリード13を電池外挿缶5に、正極2のタブリード23をキャップ8の備える端
子8tにそれぞれ溶接し、キャップ8を電池外挿缶5にクリンプ(圧着)して電解液を封入する。
以上により、セパレータ3が間に挿入されたリチウムイオン二次電池用負極1及びリチウムイオン二次電池用正極2が収容され、電解液が封入された電池外挿缶5を備えるリチウムイオン二次電池50が製造される。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上述の実施形態においては、最終冷間圧延工程S40での加工度を95%以上とし、機械的強度をより向上させることとしたが、加工度が95%未満であっても、Cr,Ag,Snを所定の含有量とし、また、式(1)〜(3)の規定に従うことで熱処理後の機械的強度を保つ本願の手法において所定の効果は得られる。
また、上述の実施形態では、負極活物質としてSnやSi等の合金や化合物を用い、正極活物質としてLiを含む金属複合酸化物等を用いることとしたが、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる物質であれば他の材料を用いてもよい。負極活物質の具体例としては、各種の炭素質物質、金属複合酸化物、リチウムニトリド金属化合物等がある。正極活物質の具体例としては、金属複合酸化物、特にリチウム(Li)及び鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)の少なくとも1種類以上の金属を含有する金属複合酸化物等がある。
また、上述の実施形態では、バインダとしてPI等のイミド系樹脂を用いたが、リチウムイオン二次電池に一般的に用いられるものであれば他の材料を用いてもよい。とりわけ、ポリイミド系ポリマーやポリイミドアミド系ポリマー等、高温での熱処理が必要な樹脂を用いた場合には、本願発明の効果が生じ易い。具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミド、ポリイミドなどのポリアミド酸またはポリイミド酸ポリマー等がある。また、以上に挙げたものに加え、ジエン系ゴム、スチレン系ゴム、ニトリル基含有ゴム、飽和主鎖を持つゴム、スチレン系ブロック共重合体ポリマー、含フッ素ポリマー、ポリアルキレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、セルロース化合物(これらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩等の塩類を含む)等のうちから複数の材料を用いた複合ポリマーも用いることができる。
また、これらのバインダを溶解または分散させる媒体(溶媒)としては、常温(20℃)、常圧で液体となるものが好ましい。具体例としては、水が挙げられるほか、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノールなどのアルコール類等がある。また、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、エチルプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどのケトン類や、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−n−アミルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチル−n−アミルエーテル、エチルイソアミルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等がある。また、γ−ブチロラクトン、δ−ブチロラクトンなどのラクトン類や、β−ラクタムなどのラクタム類等がある。また、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどの環状脂肪族類や、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、イソブチ
ルベンゼン、n−アミルベンゼンなどの芳香族炭化水素類や、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素類等がある。また、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの鎖状・環状のアミド類や、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、安息香酸メチルなどのエステル類等がある。また、以下に例示するように、電解液に用いられる電解液溶媒も、バインダを溶解または分散させる媒体として使用することができる。
電池外挿缶5に封入される電解液や電解液溶媒は、リチウムイオン二次電池に一般的に用いられるものであればよい。電解液溶媒の具体例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどのカーボネート類や、γ−ブチルラクトンなどのラクトン類等がある。また、トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類や、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類等がある。また、1,3−ジオキソラン、4―メチル−1,3―ジオキソランなどのオキソラン類や、アセトニトリルやニトロメタンなどの含窒素類等がある。また、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの有機酸エステル類や、リン酸トリエステル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピルのような炭酸ジエステルなどの無機酸エステル類等がある。また、ジグライム類や、トリグライム類や、スルホラン類等がある。また、3−メチル−2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン類や、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトンなどのスルトン類等がある。また、以上に挙げたもののうち、二種以上の混合溶媒が使用できる。
また、上述の実施形態に示すような銅合金箔の表面には、液状媒体に分散され、負極活物質層との結着性を更に向上させる被覆用材料が被覆されていてもよい。被覆用材料としては各種ポリマーを用いることができる。具体例としては、ジエン系ポリマー、オレフィン系ポリマー、スチレン系ポリマー、アクリレート系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリイミドアミド系ポリマー、エステル系ポリマー、セルロース系ポリマー、熱可塑性ポリマーが挙げられる。とりわけ、ポリイミド系ポリマーやポリイミドアミド系ポリマー等、高温での熱処理が必要な樹脂を用いた場合には、本願発明の効果が生じ易い。ポリイミド系ポリマーとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミド、ポリイミドなどのポリアミド酸またはポリイミド酸ポリマー等がある。
また、これらの被覆用材料を分散させる液状媒体としては、無機系または有機系の液状媒体を用いることができる。具体例としては、例えば、水のほか、炭化水素化合物、含窒素系有機化合物、含酸素系有機化合物、含塩素系有機化合物、含硫黄系有機化合物などの有機液状媒体等がある。炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系化合物や、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ノナン、デカン、デカリン、ドデカン、ガソリン、工業用ガソリンなどの飽和炭化水素系有機化合物等がある。また、含窒素系有機化合物としては、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、アセトニトリル、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ホルホリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等がある。また、含酸素系有機化合物としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第二ブチルアルコール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、へキシレングリコール、グリ
セリンなどのヒドロキシル基を有する化合物等がある。また、含酸素系有機化合物としてはエーテル類が挙げられ、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、n−アミルエーテル、イソアミルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチル−n−アミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチル−n−アミルエーテル、エチルイソアミルエーテルなどの脂肪族飽和系エーテル類や、アリルエーテル、エチルアリルエーテルなどの脂肪族不飽和系エーテル類や、アニソール、フェネトール、フェニルエーテル、ベンジルエーテルなどの芳香族エーテル類や、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エーテル類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコール類等がある。また、含酸素系有機化合物としては、ギ酸、酢酸、無水酢酸、酪酸などの有機酸類や、ギ酸ブチル、ギ酸アミル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸−2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、酪酸ブチル、炭酸ジエチル、シュウ酸ジエチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、リン酸トリエチルなどの有機酸エステル類や、アセトン、エチルケトン、プロピルケトン、ブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどのケトン類等がある。また、1,4−ジオキサン、イソホロン、フルフラールなどのその他の含酸素有機化合物が挙げられる。また、含塩素系有機化合物としては、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、ジクロロペンタン、クロルベンゼンなどの炭化水素の塩素置換体がある。また、含硫黄系有機化合物としては、チオフェン、スルホラン、ジメチルスルホキシド等がある。これらの中でも常圧での沸点が60℃〜200℃の有機液状媒体が好ましい。
本発明の実施例に係る銅合金箔の機械的強度及び導電性の評価結果について以下に説明する。
(1)銅合金箔の製作
まずは、以下に述べる手順に従い、実施例1〜17及び比較例1〜12に係る銅合金箔を製作した。
評価に用いる銅合金箔として、無酸素銅を母材とし、Cr,Ag,Snの合金元素を適宜含有させた銅合金箔を、上述の実施形態と同様の手順及び手法により製作し、実施例1〜17及び比較例1〜12とした。ただし、実施例16,17は、最終冷間圧延工程での加工度を所定値未満とした。また、比較例9,10については、処理温度が850℃以上となる溶体化処理ではなく、850℃未満の焼鈍を施した。また、比較例11,12については、上述の実施形態と同様の繰返し工程の後、最終冷間圧延工程の前に、時効処理にあたる400℃〜500℃での熱処理を施した。その他の比較例においても、上述の実施形態の構成と外れる条件が含まれることとした。
実施例1〜17及び比較例1〜12に係る銅合金箔から、圧延方向に幅15mm、長さ200mmの試験片を切り出し、リチウムイオン二次電池用負極の製造工程での熱処理工程を模し熱処理を施した。つまり、比較例11,12については、最終冷間圧延工程前後で計2回の熱処理を施したことになる。また、このとき、全ての実施例、比較例について
、所定温度に対し、±1℃以内のばらつきとした条件、−5℃外れた条件、+5℃外れた条件、の3つの条件にて、それぞれの試験片を処理した。係る温度は、K熱電対(クロメル−アルメル熱電対)の有する接合点のうち測温接点を試験片に当てて、試験片の実際の温度を測定したものである。
また、上述のリチウムイオン二次電池用負極の製造工程を模した熱処理の前後で、各試験片の20℃における電気抵抗を四端子測定法により測定した。また、これを基に、実施例1〜17及び比較例1〜12についてのCr固溶指数Zを求めた。
また、上述のリチウムイオン二次電池用負極の製造工程を模した熱処理の前後で、各試験片に対して引張試験を行って、機械的強度の指標となる引張強さを評価した。係る引張試験は、ASTMインターナショナル(旧・米国材料試験協会:American Society for Testing and Materials)E−345に準拠し、圧延方向と平行に引張強さを測定した。
(2)銅合金箔の評価結果
±1℃以内のばらつきで熱処理工程を経た各試験片の各種測定結果を以下の表1に示す。また、±1℃以内、−5℃、+5℃の熱処理工程を経た各試験片の引張強さの結果を以下の表2に示す。
Figure 2013256682
Figure 2013256682
表1に示すように、実施例1〜15においては、Crや他の元素の含有量や、Cr固溶指数Z、最終冷間圧延工程における加工度等の銅合金箔の製造工程での各種条件は所定値内となっている。よって、上述のリチウムイオン二次電池用負極の製造工程を模した温度のばらつきが±1℃以内の熱処理後において、引張強さが400N/mm以上と極めて良好な結果が得られた。引張強さの低下量(強度低下量)、すなわち、引張強さの差も、熱処理前と比べて30N/mm以下となっている。また、導電率についても、熱処理後において75%IACS以上の高い値が得られた。
また、表2に示すように、±5℃の範囲内であれば、熱処理後の引張強さが大きく異なってしまうことはなかった。
このように、上述の各種条件を全て満していれば、熱処理後であっても、引張強さ、導
電率ともに、高い値が得られることがわかった。
また、実施例16,17では、いずれも最終冷間圧延工程での加工度が95%未満となっている。この場合、熱処理後の引張強さは400N/mmを若干上回る程度と比較的低めだが所定値内であり、引張強さの差は30N/mm以下となっている。また、熱処理後の導電率も所定値を満たしていた。また、±5℃の範囲内であれば、熱処理後の引張強さが大きく異なってしまうことはなかった。
このように、最終冷間圧延工程での加工度を95%以上とすることは必須要件ではなく、加工度が95%未満であっても所定の効果が得られることがわかった。
一方で、比較例1はSnを含有しておらず、比較例2はAgを含有していない。このため、比較例1,2ともに、熱処理での軟化が起こり、熱処理後の引張強さが400N/mm未満となってしまった。また、引張強さの差が30N/mmを超えてしまった。
また、比較例3はCrを含有しておらず、比較例4はCrの含有量が不足している。このため、熱処理での軟化が起こり、比較例4では、熱処理後の引張強さが400N/mm未満となってしまった。また、比較例3,4ともに、引張強さの差が30N/mmを超えてしまった。
また、比較例5はCrの含有量が過剰のため、析出物の微細分散が妨げられ、熱処理後の引張強さが400N/mm未満となり、また、引張強さの差が30N/mmを超えてしまった。
また、比較例6はSnの含有量が過剰のため、熱処理後の導電率が75%IACS未満となってしまった。
また、比較例7は熱処理時の温度が低すぎるため、固溶Crの析出が充分に起こらず、熱処理後の導電率が75%IACS未満となってしまった。また、比較例8は熱処理時の温度が高すぎるため、熱処理での軟化が起こり、熱処理後の引張強さが400N/mm未満となってしまった。
また、溶体化処理より低温の焼鈍を施した比較例9,10、及び最終冷間圧延工程の前に時効処理を施した比較例11,12ではCr固溶指数Zが0.4を超えていた。このため、熱処理での軟化が起こって、引張強さの差が30N/mmを超えてしまった。また、表2に示すように、±5℃の範囲内であっても、熱処理後の引張強さが大きく異なってしまった。
1 リチウムイオン二次電池用負極
2 リチウムイオン二次電池用正極
3 セパレータ
4 捲回体
5 電池外挿缶(容器)
6 溝
7 ガスケット
8 キャップ
8t 端子
10 銅合金箔
11 リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔
12 負極活物質層
13,23 タブリード
50 リチウムイオン二次電池

Claims (8)

  1. 0.20質量%以上0.40質量%以下のCr、0.01質量%以上0.10質量%以下のAg、及び0.10質量%以上0.20質量%以下のSnを少なくとも含有し、残部がCuからなり、
    下記の式(1)のCr固溶指数Zが0.4以下となる
    ことを特徴とする銅合金箔。
    Figure 2013256682
    但し、式(1)中、
    導電率Rは、
    前記銅合金箔の実測上の導電率R(%IACS)であり、
    導電率Rは、
    前記銅合金箔の計算上の導電率R(%IACS)であり、前記Crが全て固溶した場合に固溶した状態にある各合金元素の含有濃度[原子%](at%)を下記の式(2)に代入することで得られた電気抵抗率ρから、下記の式(3)により定まる導電率R(%IACS)であり、
    導電率Rは、
    前記銅合金箔の計算上の導電率R(%IACS)であり、前記Crが全て析出した場合に固溶した状態にある各合金元素の含有濃度[原子%](at%)を下記の式(2)に代入することで得られた電気抵抗率ρから、下記の式(3)により定まる導電率R(%IACS)である。
    Figure 2013256682
    Figure 2013256682
  2. 350℃以上450℃以下の温度で1時間以上12時間以下の熱処理を施した後に、400N/mm以上の引張強さを保っており、
    前記熱処理後における引張強さの前記熱処理前における引張強さに対する差が30N/mm以下であって、
    前記熱処理後における導電率が75%IACS以上となる
    ことを特徴とする請求項1に記載の銅合金箔。
  3. 20μm以下の厚さを有する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の銅合金箔。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の銅合金箔が熱処理されてなるリチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔と、
    前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔の少なくとも片面に形成された負極活物質層と、
    前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔に接続されたタブリードと、を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
  5. 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、
    リチウムイオン二次電池用正極と、
    前記リチウムイオン二次電池用負極及び前記リチウムイオン二次電池用正極の間に挿入されたセパレータと、
    前記セパレータが間に挿入された前記リチウムイオン二次電池用負極及び前記リチウムイオン二次電池用正極が収容され、電解液が封入された容器と、を備える
    ことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  6. 0.20質量%以上0.40質量%以下のCr、0.01質量%以上0.10質量%以下のAg、及び0.10質量%以上0.20質量%以下のSnが少なくとも含有される銅合金素材に熱間圧延を施して板材を形成する熱間圧延工程と、
    前記板材に冷間圧延を施して生地を形成する冷間圧延工程と、
    前記生地を850℃以上950℃以下に保持して前記生地に溶体化処理を施す生地溶体化工程と、
    前記溶体化処理を施された前記生地に冷間圧延を施す最終冷間圧延工程と、を有する
    ことを特徴とする銅合金箔の製造方法。
  7. 前記最終冷間圧延工程では、
    加工度が95%以上99%以下となる冷間圧延を前記生地に施し、前記生地の厚さを20μm以下とする
    ことを特徴とする請求項6に記載の銅合金箔の製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載の製造方法により製造される銅合金箔の少なくとも片面に負極活物質とバインダ溶液とを混練したスラリーを塗布するスラリー塗布工程と、
    前記スラリーが塗布された前記銅合金箔に350℃以上450℃以下の温度で1時間以上12時間以下の熱処理を施して、少なくとも片面に負極活物質層が形成されたリチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔を製造する熱処理工程と、
    前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔にタブリードを接続するタブリード接続工程と、を有し、
    前記熱処理工程では、
    前記スラリー中のバインダ成分が固化して前記負極活物質層が形成されるとともに、
    前記熱処理を受けた前記銅合金箔が、前記熱処理前における引張強さに対する差が30N/mm以下であって、かつ、400N/mm以上の引張強さを保っており、導電率が75%IACSである前記リチウムイオン二次電池用負極集電銅合金箔となる
    ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
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