図1は、本発明の一実施の形態である画像形成装置1の全体構成を示し、以下に説明する。
画像形成装置1は、トナー像の担持体となる感光体10と、該感光体10近傍に配設される帯電器20、露光手段21、現像器22、転写器23及びクリーナ24から構成されている。また、画像形成装置1は、シート状の記録媒体である用紙Pを搬送する搬送手段26と、感光体10又は転写器23の用紙搬送方向Xの下流側に配設される定着器25とを有している。
感光体10は、軸線Zを中心とし回転自在に装置本体の筐体に支持され、不図示のモータ等の駆動手段によって、帯電器20、露光手段21、現像器22、転写器23、クリーナ24の順で感光体10表面が通過し、回転するように構成されている。
また、感光体10は、例えば円柱又は円筒形状である導電性の支持体11で構成され、該支持体11上には、図4を用いて後述する形成工程により感光層12が形成されている。つまり、該感光層12は、含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下となるトリベンジルアミン化合物を用いて形成されている。このことから、感光体10には、気泡が極めて少ない感光層12が形成されている。ここで、感光層12としては、電荷発生物質及び電荷輸送物質の双方をバインダ樹脂に分散させた単層で構成される単層タイプの感光層と、電荷発生物質をバインダ樹脂に分散させた電荷発生層及び電荷輸送物質をバインダ樹脂に分散させた電荷輸送層の二層で構成される積層タイプの感光層とに大別される。
また、支持体11としては、具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼又はチタン等の金属材料が用いられる。または、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、硬質紙又はガラス等の基体表面に、金属箔をラミネート又は金属材料を蒸着した部材を用いても構わない。もしくは、導電性高分子、酸化スズ又は酸化インジウム等の導電性化合物の層を蒸着又は塗布した部材を用いても構わない。
さらに、支持体11表面には、陽極酸化皮膜処理、薬品又は熱水等による表面処理、着色処理又は表面を粗面化することによる乱反射処理等が、必要に応じて施される。ここで、乱反射処理は、露光手段21の光源として、半導体レーザを用いる場合に特に有効である。つまり、半導体レーザを用いる場合、レーザ光の波長が揃っているため、感光体10表面で反射されるレーザ光と、感光体10内部で反射されるレーザ光とが干渉を起こし、該干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、支持体11表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
帯電器20は、感光体10表面を所定の電位に帯電させる。具体的には、例えばスコロトロンチャージャー20a及び該スコロトロンチャージャー20aに電圧を印加するバイアス電源20bから構成されている。
露光手段21は、感光体10表面に静電潜像を形成する。具体的には、例えば半導体レーザを光源として備え、該光源から出力されるレーザ光Rを、帯電器20と現像器22との間の感光体10表面に照射することで、帯電器20により帯電されている感光体10表面に静電潜像を形成する。
現像器22は、感光体10表面に形成されている静電潜像を現像剤によって現像する。具体的には、例えば感光体10表面にトナーを供給する現像ローラ22a及び該現像ローラ22aが供給するトナーを含む現像剤を貯留するケーシング22bから構成されている。
転写器23は、現像器22によって感光体10表面に現像されているトナー像を、感光体10と転写器23との間に給紙される用紙Pに転写させる。具体的には、例えば用紙Pにトナーと逆極性の電荷を与える帯電手段を備え、トナー像を非接触で用紙Pに転写させる。
クリーナ24は、感光体10表面において、転写器23により用紙Pに転写されずに残留するトナーを除去し回収する。具体的には、例えば感光体10表面に残留するトナーを剥離するクリーニングブレード24a及び該クリーニングブレード24aによって剥離されるトナーを収容する回収用ケーシング24bから構成されている。
定着器25は、転写器23によって転写される未定着のトナー像を用紙Pに定着させる。具体的には、例えばヒータ等の熱源を有する加熱ローラ25a及び加圧ローラ25bから構成され、該加熱ローラ25a及び加圧ローラ25bに用紙Pが挟持されて移動する際、熱と圧力によって未定着のトナー像を溶融し定着させる。
このように構成される画像形成装置1では、以下に説明する動作で用紙Pに所望する画像を形成する。すなわち、感光体10を所定の方向に回転駆動させることで、先ず、帯電器20によって、感光体10表面を正または負の所定電位で均一に帯電させる。
次いで、露光手段21によって、感光体10表面に所望の画像情報に応じるレーザ光Rを照射し、照射領域の表面電位を除去する。つまり、レーザ光Rが照射されずに帯電したままの領域と表面電位が除去された領域とが混在する静電潜像が、感光体10表面に形成される。
次いで、現像器22によって、感光体10表面にトナーを供給する。つまり、静電潜像が形成された感光体10表面にトナーを供給することで、感光体10表面にトナー像を形成する。
次いで、転写器23によって、該転写器23と感光体10との間に給紙される用紙Pに、感光体10表面に形成されたトナー像を転写する。
次いで、定着器25によって、転写されたトナー像を用紙Pに定着させ、該用紙Pを搬送手段26によって画像形成装置1外部へと排紙する。
一方、クリーナ24によって、転写器23により用紙Pに転写されずに残留したトナーを、感光体10表面から除去し回収する。
このように、本発明の一実施の形態である画像形成装置1では、感光体10表面に、図4を用いて後述する形成工程により形成された感光層12を有している。つまり、画像形成装置1の感光体10表面には、気泡が極めて少ない感光層12が形成されており、画像形成における画像欠陥が生じにくい画像形成装置を実現することができる。
図2は、単層タイプの感光層12において4種類の構成例を示す図である。また、図3は、積層タイプの感光層12において4種類の構成例を示す図である。これら図面を用いて、感光体10表面に形成される感光層12の各層について、以下に説明する。
図2(A)は、単層型感光層120のみで構成される感光層12を示す。また、図2(B)は、図2(A)で示す感光層12との比較において、単層型感光層120上に表面保護層125が形成された感光層12を示す。また、図2(C)は、図2(A)で示す感光層12との比較において、支持体11と単層型感光層120との間に中間層126が形成された感光層12を示す。また、図2(D)は、図2(C)で示す感光層12との比較において、単層型感光層120上に表面保護層125が形成された感光層12を示す。
ここで、単層型感光層120は、光を吸収して電荷キャリアを発生させる電荷発生機能及び該電荷キャリアを移動させる電荷輸送機能を有する感光層である。
また、図3(A)は、支持体11上に形成される電荷発生層121及び該電荷発生層121上に積層された電荷輸送層122を含む積層型感光層123が形成された感光層12を示す。また、図3(B)は、図3(A)で示す感光層12との比較において、積層型感光層123上に表面保護層125が形成された感光層12を示す。また、図3(C)は、図3(A)で示す感光層12との比較において、支持体11と積層型感光層123との間に中間層126が形成された感光層12を示す。また、図3(D)は、図3(C)で示す感光層12との比較において、積層型感光層123上に表面保護層125が形成された感光層12を示す。
ここで、電荷発生層121は、光を吸収して電荷キャリアを発生させる電荷発生機能を有する。一方、電荷輸送層122は、電荷発生層121で発生させた電荷キャリアを受け入れて移動させる電荷輸送機能を有する。つまり、積層型感光層123では、電荷発生機能と電荷輸送機能を分離させている。これにより、単層型感光層が形成される感光体との比較において、各々効率の高い電荷発生機能及び電荷移動機能を実現する化合物を組合せることで、高感度の感光体を製造することができる。
このように、本発明の一実施の形態である画像形成装置1は、支持体11上に、単層型感光層120、もしくは電荷発生層121及び電荷輸送層122が形成される積層型感光層123のいずれか一方を含む感光層12を形成し、製造された感光体10を有している。
図4は、単層型感光層120、積層型感光層123における電荷発生層121及び電荷輸送層122の形成工程を示すフローチャートである。本図に示すとおり、単層型感光層120、電荷発生層121及び電荷輸送層122は、塗布液調製前工程、塗布液調製工程、塗布工程、溶剤除去工程を順に行うことによって形成される。以下に、各工程の詳細について説明する。
先ず、塗布液調製前工程において、単層型感光層120、電荷発生層121及び電荷輸送層122を形成するために必要な材料の生成又は準備を行う。特に、単層型感光層120、電荷発生層121及び電荷輸送層122の各層の酸化を防止するために、後述する実施例1又は実施例2の生成方法を用いて、含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下となるトリベンジルアミン化合物を生成する。
次いで、塗布液調製工程において、形成する感光層に応じた材料及び塗布液調製前工程において生成したトリベンジルアミン化合物を有機溶剤に溶解又は分散し、塗布液を調製する。
ここで、有機溶剤としては、具体的には、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼン等)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロプロパン等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等)、ケトン類(メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロン等)、エステル類(安息香酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、含イオウ溶剤(ジフェニルスルフィド等)、フッ素系溶剤(ヘキサフロオロイソプロパノール等)、非プロトン性極性溶剤(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)等が用いられる。また、これら有機溶剤を複数種組み合せて用いても構わない。さらに、これら有機溶剤に、アルコール類、アセトニトリル又はメチルエチルケトンを加えた混合溶剤を用いても構わない。
また、塗布液調製工程に先立ち、有機溶剤により溶解又は分散させる材料を予備粉砕しても構わない。なお、予備粉砕は、具体的に、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機等の一般的な粉砕機を用いて行うことができる。
さらに、各種材料を有機溶剤に溶解又は分散させる際には、具体的に、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミル等の一般的な分散機を用いて行うことができる。このとき、容器及び分散機を構成する部材から摩耗等によって不純物が発生し、塗布液に混入しないように、分散条件を適宜設定するのが好ましい。
次いで、塗布工程において、支持体11表面又は事前に形成される中間層126等の他層表面に、塗布液調製工程において調製された塗布液を塗布して塗布膜を形成する。ここで、塗布膜を形成する方法としては、ロール塗布、スプレー塗布、ブレード塗布、浸漬塗布等が用いられる。特に、浸漬塗布によって塗布膜を形成することは、感光体10を大量に製造する場合に好適である。
最後に、溶剤除去工程において、支持体11表面又は他層表面の塗布膜を乾燥させ、塗布膜の有機溶剤を除去する。具体的には、例えば130度で1時間加熱乾燥させる。
ここで、調整される塗布液には、後述する実施例1又は実施例2の生成方法を用いて生成されるトリベンジルアミン化合物を含有している。つまり、塗布液に含有されるトリベンジルアミン化合物は、含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下であり、溶剤除去工程での塗布膜の乾燥によって気泡が発生することは極めて少なくなる。また、常温常湿の環境では雰囲気中に多くの水分が含まれていることから、素早く水分を除去するために100度以上の高温で加熱乾燥させることが好ましい。特に、塗布工程において浸漬塗布によって塗布膜を形成する場合に好適である。
<単層型感光層及び積層型感光層における塗布液、溶剤及び形成方法>
以下に、単層型感光層120、積層型感光層123における電荷発生層121及び電荷輸送層122を形成する際に用いられる塗布液、溶剤及び形成方法の詳細について説明する。
<単層型感光層120>
単層型感光層120は、電荷発生物質及び電荷輸送物質の双方を含有する単層型感光層用塗布液が調製されて形成される。また、該単層型感光層用塗布液には、単層型感光層120の機械的強度又は耐久性等を向上させるためのバインダ樹脂を含有する。さらに、単層型感光層120の酸化を防止するために、含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下となるトリベンジルアミン化合物も含有する。
ここで、単層型感光層120の膜厚は、5.0〜100μmとすることが好ましく、特に10〜50μmが好適である。膜厚を5.0μm未満とすると電荷発生機能又は電荷輸送機能が低下する場合がある。一方、膜厚を100μm超とすると単層型感光層120の形成において生産性が低下する。
また、電荷輸送物質に対するトリベンジルアミン化合物の含有量を、0.1%以上20%以下とすることが好ましく、0.1%未満とすると酸化防止効果が極めて小さくなる場合がある。一方、20%を超えると電荷輸送機能が低下する場合がある。
さらに、単層型感光層用塗布液には、トリベンジルアミン化合物と異なる別の酸化防止剤等の添加剤を、必要に応じて含有させても構わない。該添加剤を含有させることで、単層型感光層用塗布液の利用寿命を延長させることができる。また、酸化性不純物の含有量が軽減されるため、製造される感光体10の物性面での耐久性を向上させることができる。このような効果が得られる添加剤として、例えばヒンダードフェノール誘導体、ヒンダードアミン誘導体等が挙げられる。なお、添加剤を含有させる場合には、電荷輸送物質に対する添加剤の含有量を、0.1%以上10%以下とすることが好ましく、0.1%未満とすると塗布液の利用寿命を延長させる効果又は製造される感光体10の物性面での耐久性を向上させる効果等が十分に得られない場合がある。一方、10%を超えると電荷発生機能又は電荷輸送機能が低下する場合がある。
また、単層型感光層用塗布液の総量に対するバインダ樹脂の含有量を、1.0%以上10%以下とすることが好ましく、1.0%未満とすると形成される単層型感光層120の膜強度が低下する場合がある。一方、10%を超えると電荷発生機能又は電荷輸送機能が低下する場合がある。
<電荷発生層121>
積層型感光層123における電荷発生層121は、電荷輸送物質を含有せずに、単層型感光層用塗布液の電荷発生物質と同等の電荷発生物質を含有する電荷発生層用塗布液が調製されて形成される。また、該電荷発生層用塗布液には、単層型感光層用塗布液のバインダ樹脂及びトリベンジルアミン化合物と同等のバインダ樹脂及びトリベンジルアミン化合物が含有される。
ここで、電荷発生層121の膜厚は、0.05〜5.0μmとすることが好ましく、特に0.1〜1.0μmが好適である。膜厚を0.05μm未満又は5.0μm超とすると電荷発生機能が低下する場合がある。
また、電荷発生層用塗布液の総量に対する電荷発生物質の含有量を、10%以上99%以下とすることが好ましく、10%未満とすると電荷発生機能が低下する場合がある。一方、99%を超えると電荷発生層121の膜強度が低下する場合がある。また、同様に99%を超えると電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子の量が増大し、レーザ光Rの未照射領域の電荷減少による画像欠陥が発生する場合がある。具体的には、例えば白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される「黒ポチ」と呼称される画像かぶりの発生頻度が高まる可能性がある。
さらに、電荷発生層用塗布液には、分散安定剤、増感剤、トリベンジルアミン化合物と異なる別の酸化防止剤等の添加剤を、必要に応じて含有させても構わない。該添加剤を含有させることで、電荷発生層用塗布液の安定性が高まり、製造される感光体10の物性面での耐久性を向上させることができる。
<電荷輸送層122>
積層型感光層123における電荷輸送層122は、電荷発生物質を含有せずに、単層型感光層用塗布液の電荷輸送物質と同等の電荷発生物質を含有する電荷輸送層用塗布液が調製されて形成される。また、該電荷輸送層用塗布液には、単層型感光層用塗布液のバインダ樹脂及びトリベンジルアミン化合物と同等のバインダ樹脂及びトリベンジルアミン化合物が含有される。さらに、単層型感光層用塗布液と同様に、トリベンジルアミン化合物と異なる別の酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて含有させても構わない。
ここで、電荷輸送物質に対するトリベンジルアミン化合物の含有量の許容範囲は、単層型感光層用塗布液における含有量の許容範囲と同等である。また、塗布液の総量に対するバインダ樹脂の含有量の許容範囲は、単層型感光層用塗布液における含有量の許容範囲と同等である。従って、これらの含有量の許容範囲の説明は省略する。
ここで、電荷輸送層122の膜厚は、5.0〜50μmとすることが好ましく、特に10〜40μmが好適である。膜厚を5.0μm未満とすると、電荷輸送機能が低下する場合がある。一方、50μm超とすると、感光体10の解像度が低下する場合がある。
<塗布液に使用される材料>
以下に、単層型感光層用塗布液、電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用に用いられる各材料の詳細について説明する。
<電荷発生物質>
感光層12の各層を形成するための塗布液に使用される電荷発生物質は、光を吸収することにより電荷を発生させるために用いられる。具体的には、アゾ系顔料(モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料等)、インジゴ系顔料(インジゴ、チオインジゴ等)、ペリレン系顔料(ペリレンイミド、ペリレン酸無水物等)、多環キノン系顔料(アントラキノン、ピレンキノン等)、フタロシアニン系顔料(金属フタロシアニン、X型無金属フタロシアニン等)、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素等の有機顔料、染料、セレン又は非晶質シリコン等の無機材料等が用いられる。また、これら電荷発生物質を複数種組み合せて用いても構わない。
ここで、フタロシアニン系顔料は、高い電荷発生効率を有するため、光を吸収することによって多量の電荷を発生するとともに、発生した電荷を分子内に蓄積することなく電荷輸送物質に電荷が移動するため、高感度かつ高解像度の感光体を得ることができる。このことから、電荷発生物質として、フタロシアニン系顔料を用いることが好ましく、特にオキソチタニウムフタロシアニンが最も好適である。
さらに、電荷発生物質は、増感染料と組み合せて用いても構わない。具体的には、トリフェニルメタン系染料(メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルー、ビクトリアブルー等)、アクリジン染料(エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジ、フラペオシン等)、チアジン染料(メチレンブルー、メチレングリーン等)、オキサジン染料(カプリブルー、メルドラブルー等)、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料又はチオピリリウム塩染料等が、増感染料として用いられる。
<電荷輸送物質>
感光層12の各層を形成するための塗布液に使用される電荷輸送物質は、電荷発生物質により発生させた電荷を受入れ輸送するために用いられ、ホール輸送物質又は電子輸送物質を含んでいる。
ホール輸送物質としては、具体的には、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマー(ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、エチルカルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ−9−ビニルアントラセン等)、ポリシラン等が用いられる。
また、電子輸送物質としては、具体的には、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フルオレノン誘導体、キサントン誘導体、フェナントラキノン誘導体、無水フタール酸誘導体、ジフェノキノン誘導体等の有機化合物、アモルファスシリコン、アモルファスセレン、テルル、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の無機材料が用いられる。
また、ホール輸送物質及び電子輸送物質において、上述したホール輸送物質又は電子輸送物質を複数種組み合せて用いても構わない。
<バインダ樹脂>
感光層12の各層を形成するための塗布液に使用されるバインダ樹脂は、具体的には、ビニル系樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等)、熱可塑性樹脂(ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリフェニレンオキサイド等)、熱硬化性樹脂(フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等)が用いられる。または、これらの樹脂の部分架橋物、これらの樹脂に含まれる構成単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂等の絶縁性樹脂)等を用いても構わない。さらに、これら樹脂を複数種組み合せて用いても構わない。
ここで、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンオキサイドは、感光層12の各々の層に含有されるトリベンジルアミンとの相溶性に特に優れている。また、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性にも優れ、成膜性、電位特性等にも優れている。このことから、これら樹脂を用いることが好ましく、特にポリカーボネートが最も好適である。
<表面保護層及び中間層における塗布液、溶剤及び形成方法>
以下に、感光層12における表面保護層125及び中間層126を形成する際に用いられる塗布液、溶剤及び形成方法の詳細について説明する。
<表面保護層125>
表面保護層125は、感光体10の物性面及び機械的耐久性を向上させるために形成される保護層であり、単層型感光層用塗布液の電荷発生物質及びバインダ樹脂と同等の電荷発生物質及びバインダ樹脂を含有する表面保護層用塗布液が調製されて形成される。
ここで、表面保護層125の酸化を防止するために、表面保護層用塗布液には、単層型感光層用塗布液のトリベンジルアミン化合物と同等のトリベンジルアミン化合物を含有しても構わない。また、単層型感光層用塗布液を調製する際に用いられる有機溶剤と同等の有機溶剤が、表面保護層用塗布液を調製する際に用いられる。
さらに、表面保護層125は、事前に形成される単層型感光層120又は積層型感光層123表面に、表面保護層用塗布液を塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜を乾燥させ、塗布膜の有機溶剤を除去することで形成される。なお、表面保護層125は、0.5〜10μmとすることが好ましく、特に1.0〜5.0μmが好適である。膜厚を0.5μm未満とすると、製造される感光体10の物性面及び機械的耐久性を向上させる効果等が十分に得られない場合がある。一方、10μm超とすると、感光体10の解像度が低下する場合がある。
<中間層126>
中間層126は、導電性である支持体11の影響を受けて、単層型感光層120又は積層型感光層123の帯電性の低下を抑制するために形成される保護層であり、該中間層126を形成することにより、レーザ光Rの未照射領域の電荷の減少が抑制され、画像欠陥の発生を防止することができる。具体的には、例えば反転現像プロセスによる画像形成の際、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される「黒ポチ」と呼称される画像かぶりの発生を防止できる。さらに支持体11表面を被覆するように中間層126を形成することで、支持体11表面の凹凸を軽減し均一化させる。これにより、単層型感光層120又は積層型感光層123の成膜性を高め、支持体11との密着性を向上させることができる。
ここで、中間層126は、樹脂材料を含有する中間層用塗布液が調製されて形成される。該樹脂材料として、例えば単層型感光層用塗布液に含有されるバインダ樹脂と同等の樹脂材料に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース等の天然高分子材料が用いられる。また、中間層用塗布液を調製する際、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、グライム類(メチルカルビトール、ブチルカルビトール等)等の溶剤が用いられる。なお、これら溶剤を複数種組み合せて用いても構わない。
さらに、中間層126は、支持体11表面に中間層用塗布液を塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜を乾燥させ、塗布膜の有機溶剤を除去することで形成される。なお、中間層126は、0.01〜20μmとすることが好ましく、特に0.1〜10μmが好適である。膜厚を0.01μm未満とすると、単層型感光層120又は積層型感光層123の帯電性の低下を抑制する効果が実質上得られなくなる場合がある。一方、20μm超とすると、支持体11表面の凹凸を軽減し均一化させることが困難となる。
また、中間層用塗布液には、金属酸化物粒子を含有させても構わない。該金属酸化物粒子を含有させることで中間層126の体積抵抗値を容易に調節することが可能となり、例えば単層型感光層120又は積層型感光層123の帯電性の低下をさらに抑制することができる。このような効果が得られる金属酸化物粒子として、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズ等が挙げられる。
なお、中間層用塗布液における樹脂材料及び金属酸化物粒子の含有量に対する溶剤の含有量を、1/99(約0.01)〜40/60(約0.67)とすることが好ましく、特に、2/98(約0.02)〜30/70(約0.43)が好適である。また、樹脂材料の含有量に対する金属酸化物粒子の含有量を、1/99(約0.01)〜90/10(9.0)とすることが好ましく、特に、5/95(約0.05)〜70/30(約2.33)が好適である。
このように、本発明の一実施の形態である画像形成装置1の感光体10では、後述する実施例1又は実施例2の生成方法を用いて生成されるトリベンジルアミン化合物を生成する塗布液調製前工程、及び該塗布液調製前工程により生成されたトリベンジルアミン化合物を含有する塗布液を調製する塗布液調製工程を有する形成工程により、感光膜12が形成されている。つまり、含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下となるトリベンジルアミン化合物を用いて感光層12を形成していることから、気泡が極めて少ない感光層12を有する感光体10を製造することができる。
図5は、含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下となるトリベンジルアミン化合物を生成する第1の生成方法を示すフローチャートであり、以下に説明する。なお、以下の説明において、各々の工程を「S」で表し、各々の工程を数字で区別している。
ここで、第1の生成方法では、アンモニアを用いずにトリベンジルアミン化合物を生成する。つまり、第1の生成方法は、不純物である塩化アンモニウムを含有しないトリベンジルアミン化合物を生成する方法である。
図5に示す第1の生成方法では、先ず、無水1,4-ジオキサン80mlの溶液中に、ベンジルクロライド4.84g及びジベンジルアミン2.00gを投入し、アイスバスにて氷冷下に冷却する(S100)。
次いで、S100の溶液中に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン5.07gを徐々に投入し、反応溶液を生成する(S101)。
次いで、該反応溶液の温度が100〜110度となるまで徐々に加熱し、4時間、100〜110度の温度に保つように加熱しながら攪拌する(S102)。
最後に、反応が終了した溶液を放冷し、溶液中に生じた沈殿物を濾取して充分に水洗し、該沈殿物をエタノール及び酢酸エチルの混合溶剤で再結晶を行い(S103)、塩化アンモニウムを含有しないトリベンジルアミン化合物を生成する。ここで、混合溶剤として、具体的には、エタノールと酢酸エチルの混合比が8:2から7:3までの範囲の混合溶剤を用いる。なお、上述した条件によってトリベンジルアミン化合物の生成を行った場合、純度99.3%であるトリベンジルアミン化合物5.25gが得られた。
図6は、実験例1から6において、形成された感光層12の気泡の有無及び物性面での耐久性の評価を行った結果を示す図である。また、図7は、実験例1における感光層12の表面状態を示す写真である。また、図8は、実験例4における感光層12の表面状態を示す写真である。さらに、図9は、実験例5における感光層12の表面状態を示す写真である。これら図面を用いて、含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下となるトリベンジルアミン化合物を用いて感光層12を形成することで得られる効果について、以下に説明する。
図6に示す実験例1では、上述の第1の生成方法によって生成されたトリベンジルアミン化合物を用い、感光層12を形成している。つまり、実験例1では塩化アンモニウムを含有しないトリベンジルアミン化合物を用いて感光層12を形成している。
また、実験例2では、実験例1との比較において、上述の第1の生成方法によって生成したトリベンジルアミン化合物において、含有するトリベンジルアミンに対して0.05%に相当する塩化アンモニウムを混合して、感光層12を形成している。
また、実験例3では、実験例1との比較において、上述の第1の生成方法によって生成したトリベンジルアミン化合物において、含有するトリベンジルアミンに対して0.1%に相当する塩化アンモニウムを混合して、感光層12を形成している。
また、実験例4では、実験例1との比較において、上述の第1の生成方法によって生成したトリベンジルアミン化合物において、含有するトリベンジルアミンに対して0.2%に相当する塩化アンモニウムを混合して、感光層12を形成している。
また、実験例5では、実験例1との比較において、含有するトリベンジルアミンに対して0.3%に相当する塩化アンモニウムを含有する市販のトリベンジルアミン化合物を使用して、感光層12を形成している。ここで、塩化アンモニウムの含有量は、蛍光X線分析装置(商品名:ZSX・PrimusII、理学電機工業株式会社製)を用い、セルロースを媒体として検量線を作成し、トリベンジルアミン中の塩素含有量を求めて算出している。
また、実験例6では、実験例1との比較において、トリベンジルアミン化合物を用いず、酸化防止剤BHTを使用して、感光層12を形成している。
<実験例1から6における感光層の形成方法>
実験例1から6では、図3(C)を用いて上述した感光層12を形成している。つまり、先ず、酸化チタン60g(商品名:TTO−M1−1、石原産業株式会社製)、アルコール可溶性ナイロン樹脂60g(商品名:アミランCM8000、東レ株式会社製)及びメタノール1200gを、1,3−ジオキソラン800gに加え、ペイントシェイカにて10時間分散処理して中間層用塗布液を調製する。
次いで、直径30mm、長さ340mmのアルミニウム製円筒状の支持体11上に、調製した中間層用塗布液を浸漬塗布法によって塗布し、自然乾燥して膜厚0.9μmの中間層126を形成する。
次いで、ブチラール樹脂10g(商品名:BM−2、積水化学工業株式会社製)及び電荷発生物質としてチタニルフタロシアニン15gを、1,3−ジオキソラン1400gに加え、ボールミルにて72時間分散処理して電荷発生層用塗布液を調製する。
次いで、事前に形成した中間層126上に、調製した電荷発生層用塗布液を浸漬塗布法によって塗布し、自然乾燥して膜厚0.2μmの電荷発生層121を形成する。
次いで、ポリカーボネート樹脂140g(商品名:Z−400、三菱瓦斯化学株式会社製)及び下記化学式(5)で表される電荷輸送物質100gと、実験例1から5において上述した塩化アンモニウムの含有量が各々異なるトリベンジルアミン化合物2g又は実験例6において酸化防止剤BHT2gとを、テトラヒドロフラン1600gに溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製する。
次いで、事前に形成した電荷発生層121上に、調整した電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法によって塗布し、130度で1時間乾燥させて膜厚24μmの電荷輸送層122を形成する。
<形成された感光層の気泡有無による評価>
実験例1から6では、目視及び光学顕微鏡により、形成された感光層12の表面の気泡の有無を観察し、形成された感光膜12の品質を評価している。
実験例1では、図7に示す感光層12が観察される。つまり、図6の評価結果に示すように、実験例1で形成された感光層12において気泡の発生が確認されていない。
実験例2、3及び6では、実験例1と同様に、図7と同様の感光層12が観察される。つまり、実験例2、3及び6で形成された感光層12において気泡が確認されていない。
一方、実験例4では、図8に示す感光層12が観察されている。つまり、実験例4で形成された感光層12において、少なくとも4箇所に気泡A、B、C及びDが確認されている。さらに、実験例5では、図9に示す感光層12が観察されている。つまり、実験例5で形成された感光層12において、無数の気泡が確認されている。
このように、酸化防止剤としてトリベンジルアミンを使用しない場合、気泡を発生させずに感光層12が形成できる。さらに、酸化防止剤として含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下となるトリベンジルアミン化合物を用いると、気泡を発生させずに感光層12が形成できる。
このことから、酸化防止剤としてトリベンジルアミン化合物を使用する場合、含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下となるトリベンジルアミン化合物を用いて感光層を形成することで、画像形成における画像欠陥が生じにくい感光体を製造することができる。
<感光層の物性面での耐久性の評価>
実験例1から6では、温度25度、相対湿度50%の常温/常湿の環境下において、以下に示す、形成された感光層12の物性面での耐久性の評価を行っている。
耐久性の評価には、コロナ放電タイプの帯電器20が採用されている市販の複写機(商品名:MX−M503N、シャープ株式会社製)を用い、画像形成過程における感光体10の表面電位を測定するために、装置内部に表面電位計(商品名:CATE751、ジェンテック社製)を設置している。ここで、評価に用いた複写機MX−M503Nは、感光体10表面を負に帯電させる負帯電タイプの画像形成装置である。
実験例1から6では、上述した形成方法により感光層12を形成した直後の初期時において、感光層帯電器20によって帯電させた直後の感光体10の表面電位である帯電電位Vo1、及び露光手段21によりレーザ光を照射した直後の感光体10の表面帯電電位である残留電位Vr1を測定する。
次いで、所定のパターンのテスト画像を10万枚に連続して複写させた後において、初期時と同様に、感光層帯電器20によって帯電させた直後の感光体10の表面電位である帯電電位Vo2、及び露光手段21によりレーザ光を照射した直後の感光体10の表面帯電電位である残留電位Vr2を測定する。
次いで、初期時における帯電電位Vo1と10万枚複写後の帯電電位Vo2との差分値である帯電電位変化量ΔVo、及びVo2初期時における残留電位Vr1と10万枚複写後の残留電位Vr2との差分値である残留電位変化量ΔVrを算出し、帯電電位変化量ΔVo及び残留電位変化量ΔVrによって、形成された感光膜12の物性面での耐久性を評価している。
図6の評価結果に示すように、実験例1では、帯電電位変化量ΔVoは10V、残留電位変化量ΔVrは10Vであり、帯電電位変化量ΔVo及び残留電位変化量ΔVrともに10V以下となっている。
また、実験例2では、帯電電位変化量ΔVoは0V、残留電位変化量ΔVrは5Vであり、実験例1と同様に、帯電電位変化量ΔVo及び残留電位変化量ΔVrともに10V以下となっている。
また、実験例3では、帯電電位変化量ΔVoは15V、残留電位変化量ΔVrは5Vであり、残留電位変化量ΔVrは10V以下であるが、帯電電位変化量ΔVoは10Vを超過している。つまり、実験例1及び2と比べ、感光層12の帯電特性において、若干耐久性が低いが実使用上問題がない感光膜12が形成されていると評価できる。
さらに、実験例4では、帯電電位変化量ΔVoは20V、残留電位変化量ΔVrは15Vであり、帯電電位変化量ΔVo及び残留電位変化量ΔVrともに10Vを超過している。つまり、実験例3と比べ、感光層12の帯電特性において、さらに耐久性の低い感光膜12が形成されていると評価できる。
また、実験例5では、帯電電位変化量ΔVoは50V、残留電位変化量ΔVrは50Vであり、帯電電位変化量ΔVo及び残留電位変化量ΔVrともに10Vを超過している。つまり、実験例3と比べ、感光層12の帯電特性において、さらに耐久性の低い感光膜12が形成されていると評価できる。
また、実験例6では、帯電電位変化量ΔVoは40V、残留電位変化量ΔVrは55Vであり、帯電電位変化量ΔVo及び残留電位変化量ΔVrともに10Vを超過している。つまり、実験例3と比べ、感光層12の帯電特性において、さらに耐久性の低い感光膜12が形成されていると評価できる。
このように、酸化防止剤としてトリベンジルアミンを使用し、また含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下となるトリベンジルアミン化合物を用いると、繰返し使用することによって帯電特性の劣化が生じにくい感光層12が形成できる。つまり、耐久性に優れた感光体を製造することができる。
図10は、含有するトリベンジルアミンに対して塩化アンモニウム含有量が0.1%以下となるトリベンジルアミン化合物を生成する第2の生成方法を示すフローチャートであり、以下に説明する。なお、以下の説明において、各々の工程を「S」で表し、各々の工程を数字で区別している。
ここで、第2の生成方法は、市販のトリベンジルアミン化合物において、不純物である塩化アンモニウムの含有量を減少させる生成方法である。つまり、生成されたトリベンジルアミン化合物の塩化アンモニウム含有量が0.1%を超える場合には、0.1%以下となるまで、該第2の生成方法を繰り返し実行する。
図10に示す第2の生成方法では、先ず、市販のトリベンジルアミン化合物5gをトルエン120mlに溶解させ、該トルエン溶液を分液漏斗に移して、水80mlを加える(S200)。
次いで、分液漏斗を振盪させた後、分液漏斗を静置して、トルエンの有機層と水層との2層に分離させる(S201)。ここで、塩化アンモニウムは水溶性であることから、下層側の水層に溶解される。
次いで、下層側の水層を除去、つまり上層側の有機層を取り出し、取り出した有機層を無水炭酸カリウムで脱水する(S202)。
次いで、無水炭酸カリウムを除去した有機層をロータリーエバポレーターで濃縮する(S203)。
最後に、濃縮した白色結晶をエタノール及び酢酸エチルの混合溶剤で再結晶を行い(S204)、市販のトリベンジルアミン化合物において、不純物である塩化アンモニウムの含有量を減少させたトリベンジルアミン化合物を生成する。
このように、塗布液調製前工程においてトリベンジルアミン化合物を生成する際、図5を用いて上述した第1の生成方法に代えて、塩化アンモニウム含有量が0.1%を超過する市販のトリベンジルアミン化合物から、図10を用いて上述した第2の生成方法により生成しても構わない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。