JP4809688B2 - 積層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

積層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体の製造方法 Download PDF

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本発明は、積層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体の製造方法に関する。特に、電荷発生層における色特性を制限することによって、画像メモリの発生を効果的に抑制した積層型電子写真感光体及びそのような積層型電子写真感光体の製造方法に関する。
従来、画像形成装置等の電子写真感光体として、基体上に、電荷発生剤および結着樹脂を含有する電荷発生層と、電荷輸送剤および結着樹脂を含有する電荷輸送層と、を備えた積層型電子写真感光体が知られている。かかる積層型電子写真感光体は、従来の無機感光体に比べて、製造が容易であるとともに、電荷発生剤や電荷輸送剤等の感光性材料の選択肢が多様であることから、構造設計の自由度が高いという利点がある。
しかしながら、積層型電子写真感光体を量産した場合、十分な電気特性及び画像特性が得られない場合があり、特に耐久評価において画像メモリが発生しやすいという問題が見られた。かかる画像メモリの原因としては、電荷発生層中において残留している電子が影響していると考えられている。
そこで、このような問題を解決するために、正帯電型の積層型電子写真感光体においてではあるが、電荷発生層に対して電子輸送能を有する化合物を含有させて、感光体における電気特性を向上させる方法が提案されている。
例えば、電荷発生層及び電荷輸送層に対して、同一の結着樹脂を含有させるとともに、電荷発生層及び電荷輸送層に対して電子輸送能を有するアクセプター性化合物を含有させた積層型電子写真感光体が提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。
特開平7−199487号公報(特許請求の範囲) 特開平7−219251号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、特許文献1及び2に記載された積層型電子写真感光体は、その電気特性を向上させることはできたものの、かかる積層型電子写真感光体を量産した場合には、未だ十分な電気特性及び画像特性が得られない場合があった。
さらに、上述したような性能のばらつきがあるため、製品管理として、全製品に対して画像形成試験を行う必要があり、多大なる労力や時間を要するといった問題が見られた。
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、積層型電子写真感光体において、電荷発生層に電子輸送能を有する化合物を含むとともに、当該電荷発生層のJIS Z 8722に準拠して色差計で測定される値であるΔb値を所定範囲内の値とすることにより、連続的に画像形成を実施した場合であっても、優れた電気特性及び画像特性を安定的に得られ、かつ、製品管理が簡略化でき、製造が容易となることを見出した。
すなわち、本発明は、連続的に画像形成を実施した場合であっても、画像メモリの発生を抑制できるとともに優れた感度を有し、かつ、製造が容易である積層型電子写真感光体及びそのような積層型電子写真感光体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、を含む積層型電子写真感光体であって、中間層は、膜厚が0.1〜50μmの範囲内の値であって、中間層は、無機微粉末を含有するとともに、無機微粉末の添加量を、中間層の固形分に対して0.01〜1重量%の範囲内の値(但し、1重量%は除く)とし、電荷発生層は、膜厚が0.05〜5μmの範囲内の値であって、記電荷発生層が電子輸送能を有する化合物(但し、フェナントレン化合物、フェナントロリン化合物およびアセナフテン化合物を除く)を含有するとともに、電子輸送能を有する化合物が下記式(3)〜(4)で表される化合物を含み、当該電子輸送能を有する化合物の添加量を、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して5〜40重量部の範囲内の値とし、中間層及び電荷発生層を基体上に形成した状態で測定される中間層及び電荷発生層からなる積層体のJIS Z 8722に準拠して色差計で測定されるb値から、中間層を基体上に形成した状態で測定される中間層のb値を差し引いた値をΔb値とした場合に、当該Δb値を−5〜5の範囲内の値とすることを特徴とする積層型電子写真感光体が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、電荷発生層に対してかかる電子輸送能を有する化合物を含有させることによって、連続して画像形成を実施した場合に電荷発生層において残留する電子を、効果的に除去することができる。また、所定のΔb値を有する電荷発生層を備えることにより、電荷発生層における電子輸送能を有する化合物の分散状態を、好適な状態に保持することができるため、連続して画像形成を実施した場合であっても、画像メモリの発生を効果的に抑制することができるばかりか、優れた感度を得ることができる。さらに、画像形成試験を省略した場合であっても、感光体におけるΔb値を測定することで、製品の良否を容易に判定できることから、かかる感光体の製造が容易となる。

また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、電子輸送能を有する化合物において、電界強度を5×105V/cmとした場合の電子移動度を5×10-10〜5×10-7cm2/V/secの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、電荷発生層において残留している電子を効果的に除去することができる。よって、連続して画像形成を実施した場合であっても、使用前後での電位変化を抑制することができる。
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、電子輸送能を有する化合物が、吸収スペクトルにおいて450〜650nmの範囲内の波長領域に吸収ピークを有することが好ましい。
このように構成することにより、電荷発生層におけるΔb値を測定することで、当該電子輸送能を有する化合物の分散性を容易に判断することができる。
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、電荷発生層に含有される電荷発生剤として、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大のピークを有し、かつ、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を用いることが好ましい。
このように構成することにより、連続して画像形成を実施した場合であっても、より効果的に画像メモリの発生を抑制できるとともに、より優れた感度を得ることができる。また、特定のチタニルフタロシアニン結晶を電荷発生剤として用いることにより、かかる結晶型がY型からαやβ型に転移することを抑制し、電荷発生層用塗布液の貯蔵安定性を向上させることができる。よって、電荷発生層の製造が効率的に実施できることから、感光体の製造がさらに容易となる。
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、チタニルフタロシアニン結晶が、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=26.2°にピークを有さないことが好ましい。
このように構成することにより、チタニルフタロシアニン結晶がY型からβ型に転移することをさらに長期にわたって抑制することができ、電荷発生層用塗布液の貯蔵安定性を向上させることができる。
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、チタニルフタロシアニン結晶を、有機溶媒中に7日間浸漬した後に測定したCuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有さないことが好ましい。
このように構成することにより、有機溶媒中における結晶転移を、さらに確実に抑制することができ、その結果、貯蔵安定性に優れたチタニルフタロシアニン結晶の良否を定量的に判断することができる。
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4−ジオキサン、及び1−メトキシ−2−プロパノールからなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
このように構成することにより、かかる有機溶媒を電荷発生層用塗布液における有機溶剤として用いた場合に、特定のチタニルフタロシアニン結晶の安定性をより確実に判断することができる。
また、本発明の別の態様は、基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、を含む積層型電子写真感光体の製造方法であって、樹脂成分を溶解した溶液中に無機微粉末を中間層の固形分に対して0.01〜1重量%の範囲内の値(但し1重量%は除く)で添加して中間層を形成するための中間層用塗布液を製造する工程と、結着樹脂と有機溶剤とを含む結着樹脂溶液中に、電荷発生剤と結着樹脂100重量部に対して5〜40重量部の範囲内の値で、上記式(3)〜(4)で表される化合物を含む電子輸送能を有する化合物(但し、フェナントレン化合物、フェナントロリン化合物およびアセナフテン化合物を除く)を分散させて、電荷発生層を形成するための電荷発生層用塗布液を製造する工程と、中間層を膜厚が0.1〜50μmの範囲内の値で前記基体上に形成する工程と、電荷発生層用塗布液を用いて、前記電荷発生層を膜厚が0.05〜5μmの範囲内の値で中間層上に形成した状態で測定される中間層及び電荷発生層からなる積層体のJIS Z 8722に準拠して色差計で測定されるb値から、中間層を基体上に形成した状態で測定される中間層のb値を差し引いた値をΔb値とした場合に、当該Δb値を−5〜5の範囲内の値とする電荷発生層を形成する工程と、を含むことを特徴とする積層型電子写真感光体の製造方法である
すなわち、かかる積層型電子写真感光体を量産する際に、画像形成試験を省略した場合であっても、感光体の良否を容易に判定することができる。よって、連続的に画像形成を実施した場合であっても優れた電気特性及び画像特性が得られる積層型電子写真感光体を、効率的に製造することができる。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、を含む積層型電子写真感光体であって、中間層は、膜厚が0.1〜50μmの範囲内の値であって、中間層は、無機微粉末を含有するとともに、無機微粉末の添加量を、中間層の固形分に対して0.01〜1重量%の範囲内の値(但し、1重量%は除く)とし、電荷発生層は、膜厚が0.05〜5μmの範囲内の値であって、記電荷発生層が電子輸送能を有する化合物(但し、フェナントレン化合物、フェナントロリン化合物およびアセナフテン化合物を除く)を含有するとともに、電子輸送能を有する化合物が所定の化合物を含み、当該電子輸送能を有する化合物の添加量を、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して5〜40重量部の範囲内の値とし、中間層及び電荷発生層を基体上に形成した状態で測定される電荷発生層のJIS Z 8722に準拠して色差計で測定されるb値から、基体単独で測定されるb値を差し引いた値をΔb値とした場合に、当該Δb値を−5〜5の範囲内の値とすることを特徴とする積層型電子写真感光体である。
以下、本発明の第1の実施形態である積層型電子写真感光体について具体的に説明する。
1.参考基本的構成
図1(a)に示すように、本発明における積層型感光体20は、基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤と電子輸送能を有する化合物を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、電荷輸送剤等と、結着樹脂を含む電荷輸送層用塗布液を塗布し、それを乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作成することができる。
また、上述した構造とは逆の構成として、図1(b)に示すように、基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。
ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図1(a)に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
また、この積層型感光体は、上述の電荷発生層及び電荷輸送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の種類によって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。例えば、図1(a)に示すように、基体12上に電荷発生層24を形成し、その上に電荷輸送層22を形成した場合において、電荷輸送層22における電荷輸送剤として、アミン化合物誘導体やスチルベン誘導体の正孔輸送剤を使用した場合には、感光体は負帯電型となる。
2.基体
積層型感光層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができる。例えば鉄、アルミニウム、アルマイト、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮などの金属にて形成された導電性基体や、上述の金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる基体、あるいはヨウ化アルミニウム、酸化スズ、及び酸化インジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示される。
すなわち、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有するものが好ましい。
また、導電性基体の形状は使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、及びドラム状などのいずれであってもよい。
3.中間層
また、上述した基体と、後述する電荷発生層と、の間に、中間層を介させることを特徴とする。
この理由は、基体側の電荷が容易に感光層へ注入されることを防ぐとともに、感光層を基体上に強固に結着させ、基体表面における欠陥を被覆し、平滑化することができるためである。
(1)基本的構成
図1(c)に示すように、かかる態様における積層型感光体20´´は、基体12上に中間層25を有することを特徴とする。そして、中間層25の上に、蒸着または塗布等の手段によって電荷発生剤と電子輸送能を有する化合物を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24の上に、電荷輸送剤と、結着樹脂を含む電荷輸送層用塗布液を塗布し、それを乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作成することができる。
また、上述の構造とは逆に、中間層25上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。
(2)結着樹脂
結着樹脂として、例えば、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を用いることが好ましい。
(3)添加剤
また、製造時の沈降等が問題とならない範囲であって、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止したり、分散性向上等を図ったりする目的のために、各種添加剤(無機微粉末)を少量添加することを特徴とする。
特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が好ましい添加剤である。
また、微粉末等の添加剤を添加する場合、その粒径を0.01〜3μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかる粒径が大きすぎると中間層の凹凸が大きくなったり、電気的に不均一な部分が生じたり、さらには、画質欠陥を生じ易くなったりする場合があるためである。一方、かかる粒径が小さすぎると、十分な光散乱効果が得られない場合があるためである。
なお、無機微粉末の添加剤を添加する場合、その添加量を、中間層の固形分に対して重量比で10重量%以下の値、0.01〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましいが、0.01〜1重量%(但し、1重量%は除く)の範囲内の値とすることを特徴とする。
(4)厚さ
また、中間層は膜厚を厚くすることによって、基材における凹凸の隠蔽性が高まるため、スポット状の画質欠陥は低減する傾向にあって好ましいが、それとは逆に、残留電位の上昇等の電気的特性が低下する傾向にある。
したがって、中間層の膜厚を0.1〜50μmの範囲内の値とすることを特徴とし、1〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
4.電荷発生層
(1)電荷発生剤
(1)−1 種類
電荷発生剤の種類としては特に制限されるものではないが、例えば、無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、ペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
また、上述した電荷発生剤の中でも、特に、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大のピークを有し、かつ、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を用いることが好ましい。
以下、チタニルフタロシアニン結晶の内容について詳述する。
(1)−2 光学特性
電荷発生剤としてのチタニルフタロシアニン結晶は、光学特性として、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大のピークを有することが好ましい(第1の光学特性)。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=26.2°にピークを有さないことが好ましい(第2の光学特性)。
さらに、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=7.4°にピークを有さないことが好ましい(第3の光学特性)。
この理由は、かかる第1の光学特性を備えない場合には、このような光学特性を有するチタニルフタロシアニン結晶と比較して、有機溶媒中における安定性が著しく低下する傾向にあるためである。逆に言えば、第1の光学特性、より好ましくは、第2の光学特性及び第3の光学特性を備えることにより、有機溶媒中における貯蔵安定性を向上させることができるためである。その結果、チタニルフタロシアニン結晶の電荷発生能が効果的に発揮されるため、連続して画像形成を実施した場合であっても、効果的に画像メモリの発生を抑制できるとともに、優れた感度を得ることができる。
また、有機溶媒中に7日間浸漬した後に回収したチタニルフタロシアニン結晶が、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有さないことが好ましい。
この理由は、有機溶媒中において7日間浸漬した場合であっても、チタニルフタロシアニン結晶が、上述した特性を保持できることによって、チタニルフタロシアニン結晶の有機溶媒中における結晶転移を、さらに確実に制御することができるためである。
なお、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価する基準となる有機溶媒への浸漬実験評価は、例えば、電子写真用感光体を作成するための電荷発生層用塗布液(以下、電荷発生層用塗布液)を実際に保管する条件と、同一条件で実施することが好ましい。したがって、例えば、温度23±1℃、相対湿度50〜60%RHの条件下で、密閉系中において、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価することが好ましい。
また、チタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価する際の有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4−ジオキサン、及び1−メトキシ−2−プロパノールからなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
この理由は、かかる有機溶媒を電荷発生層用塗布液における有機溶剤として用いた場合に、特定のチタニルフタロシアニン結晶の安定性をより確実に判断することができるとともに、特定のチタニルフタロシアニン結晶、後述する電子輸送能を有する化合物、及び結着樹脂等における相溶性が良好となるためである。したがって、特定のチタニルフタロシアニン結晶及び電子輸送能を有する化合物等の特性を、より有効に発揮させる感光体を形成することができ、さらに電気特性及び画像特性に優れた電子写真感光体を、安定して製造することができるためである。
(1)−3 熱特性
また、電荷発生剤としてのチタニルフタロシアニン結晶は、熱特性として、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有することが好ましい。
この理由は、かかる光学特性及び熱特性を有するチタニルフタロシアニ結晶であれば、有機溶媒中に添加して長時間放置した場合であっても、結晶構造が、α型結晶及びβ型結晶への結晶転移することを有効に抑制することができるためである。したがって、このようなチタニルフタロシアニン結晶を用いることによって、貯蔵安定性に優れた電荷発生層用塗布液を得るこができ、その結果、チタニルフタロシアニン結晶の電荷発生能がより効果的に発揮されるため、連続して画像形成を実施した場合であっても、より効果的に画像メモリの発生を抑制できるとともに、より優れた感度を得ることができる。
なお、CuKα特性X線回折スペクトルにおけるブラッグ角の具体的な測定方法、及び、示差走査熱量分析の具体的な方法については、後述する実施例1において詳述する。
(1)−4 チタニルフタロシアニン化合物
また、チタニルフタロシアニン化合物の構造が、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
この理由は、このような構造のチタニルフタロシアニン化合物を用いることによって、特定のチタニルフタロシアニン結晶の安定性をさらに向上させることができるばかりでなく、かかる特定のチタニルフタロシアニン結晶を安定して製造することができるためである。
また、一般式(1)で表される化合物の中でも、特に、下記式(2)で表される無置換のチタニルフタロシアニン化合物であることが好ましい。
この理由は、このような構造のチタニルフタロシアニン化合物を用いることによって、より安定した性質を備えた特定のチタニルフタロシアニン結晶をさらに容易に製造することができるためである。
(一般式(1)中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、またはニトロ基を示しており、繰り返し数eは1〜4の整数を示す。)

(1)−5 添加量
また、電荷発生剤の添加量は、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して、5〜1000重量部の範囲内の値でとすることが好ましく、30〜500重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
(2)電子輸送能を有する化合物
また、本発明の電荷発生層は、電子輸送能を有する化合物を含有する(但し、フェナントレン化合物、フェナントロリン化合物およびアセナフテン化合物を除く)ことを特徴とする。
この理由は、電荷発生層に対してかかる電子輸送能を有する化合物を含有させることによって、連続して画像形成した場合に電荷発生層において残留する電子を、効果的に除去することができるためである。
すなわち、かかる残留した電子を除去することによって、電荷発生剤から発生した電荷が、効率的に電荷輸送層に輸送されるため、画像メモリの発生を抑制することができるとともに、優れた感度を得ることができるためである。
なお、本発明における電子輸送能を有する化合物とは、電子輸送能を有している化合物であればよく、一般的な電子輸送剤に限られない。
(2)−1 種類
また、本発明において、使用される電子輸送能を有する化合物としては、例えば、ベンゾキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、フルオレノン系化合物〔例えば2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノンなど〕、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、無水こはく酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、2,4,7−トリニトロフルオレノンイミン系化合物、エチル化ニトロフルオレノンイミン系化合物、トリプトアントリン系化合物、トリプトアントリンイミン系化合物、アザフルオレノン系化合物、ジニトロピリドキナゾリン系化合物、チオキサンテン系化合物、2−フェニル−1,4−ベンゾキノン系化合物、2−フェニル−1,4−ナフトキノン系化合物、5,12−ナフタセンキノン系化合物、α−シアノスチルベン系化合物、4,’−ニトロスチルベン系化合物、及びベンゾキノン系化合物の陰イオンラジカルとカチオンとの塩などの電子吸引性化合物が好適に使用される。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
中でも特に、下記式(3)〜(4)で表される化合物(ETM−1〜2)を含むことを特徴とする。
(2)−2 電子移動度
また、電子輸送能を有する化合物において、電界強度を5×105V/cmとした場合の電子移動度を5×10-10〜5×10-7cm2/V/secの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる電子輸送能を有する化合物において、電界強度を5×105V/cmとした場合の電子移動度を5×10-10〜5×10-7cm2/V/secの範囲内の値とすることによって、電荷発生層において残留している電子を効果的に除去することができるためである。
すなわち、かかる電子移動度が5×10-10cm2/V/sec未満の値となると、連続して画像形成を実施した際に、電荷発生層において残留する電子を、効率的に基体へと除去することが困難となる場合があるためである。一方、かかる電子移動度が5×10-7cm2/V/secを超えた値となると、基体側から電荷発生層への電子の注入が起こりやすくなる場合があるためである。
したがって、かかる電子移動度を8×10-10〜1×10-7cm2/V/secの範囲内の値とすることがより好ましく、1×10-9〜5×10-8cm2/V/secの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる電子移動度の測定方法としては、電子移動度の測定上のばらつきを小さくするために、該当する電子輸送材料を平均分子量50,000のポリカーボネート樹脂中に、40重量%の濃度になるように添加したものを測定試料用の塗布液とする。次いで、得られた塗布液を基材上に塗布し、80℃で30分間熱処理を行って、膜厚7μmの測定資料を作成する。このようにして得られた測定試料は、常温下で、通常のTOF(Time of Flight)法を用いて電子移動度を測定する。なお、測定の際の電界強度を5×105v/cmの一定値とする。
(2)−3 吸収スペクトル
また、電子輸送能を有する化合物が、吸収スペクトルにおいて450〜650nmの範囲内の波長領域に吸収ピークを有することが好ましい。
この理由は、電子輸送能を有する化合物が、吸収スペクトルにおいて450〜650nmの範囲内の波長領域に吸収ピークを有することによって、電荷発生層におけるΔb値から、当該電子輸送能を有する化合物の分散性を容易に判断することができるためである。
すなわち、電子輸送能を有する化合物が、吸収スペクトルにおいてかかる範囲内の波長領域に吸収ピークを有することで、後の項において詳述するように、Δb値と、電荷発生層における電子輸送能を有する化合物の分散性との相関が明確になり、Δb値を測定することによって、当該電子輸送能を有する化合物の分散性を、より確実に制御することができるようになるためである。その結果、電荷発生層における残留した電子を、さらに効率的に基体へと除去することができるためである。
(2)−4 添加量
また、電子輸送能を有する化合物の添加量を、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して、5〜40重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、電子輸送能を有する化合物の添加量を、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して、5〜40重量部の範囲内の値とすることによって、連続して画像形成を実施した場合に電荷発生層において残留する電子を、さらに効率的に基体へと除去することができるためである。
すなわち、電子輸送能を有する化合物の添加量が、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して5重量部未満の値となると、電荷発生層において残留している電子を、十分に除去することが困難となる場合があるためである。一方、かかる化合物の添加量が、電荷発生層を形成する結着樹脂100重量部に対して40重量部を超えた値となると、電荷発生層におけるかかる化合物の分散性が低下するばかりか、電荷発生剤の分散性も低下させてしまい、効率的な電荷輸送が困難となる傾向があるためである。
したがって、電子輸送能を有する化合物の添加量を、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して10〜30重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜25重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(3)結着樹脂
また、電荷発生層に用いる結着樹脂としては、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプまたはビスフェノールCタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、N−ビニルカルバゾール等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
(4)溶媒
また、電荷発生層を形成する際に使用する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル、或いはこれらの混合溶剤等が挙げられる。
(5)厚さ
また、電荷発生層の膜厚を0.05〜5μmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、電荷発生層の膜厚が、かかる範囲内の値であれば、後述する電荷発生層におけるΔb値を測定することによって、当該電荷発生層の膜厚に関わらず、電子輸送能を有する化合物の分散性を評価することができるためである。また、電荷発生層の膜厚がかかる範囲内の値であれば、均一に塗布液を塗布することが容易となるとともに、電荷発生層の機械的強度についても優れるためである。
ここで、図2を用いて、電荷発生層の膜厚(μm)と、電荷発生層におけるΔb値との関係を説明する。
図2中には、横軸に電荷発生層の膜厚(μm)を採り、縦軸に電荷発生層におけるΔb値を採った特性曲線が示されている。なお、かかる電荷発生層には、結着樹脂100重量部に対して、上述した式(3)で表される電子輸送能を有する化合物(ETM−1)を10重量部添加してある。
かかる特性曲線から理解できるように、膜厚(μm)の値が増加するにしたがって、Δb値が減少している。
より具体的には、膜厚(μm)の値が0(μm)から0.05(μm)へと増加するにともなって、Δb値が5から−3へと急激に減少していることがわかる。一方、膜厚(μm)の値が0.05μm)以上の範囲で増加するにともなって、Δb値は緩やかに減少し、約−5付近の値を維持していることがわかる。
したがって、電荷発生層の膜厚が0.05〜5μmの範囲内の値であれば、そのΔb値を測定することによって、当該電荷発生層の膜厚に関わらず、電子輸送能を有する化合物の分散性を評価できることが理解できる。
したがって、電荷発生層の膜厚を0.1〜3μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.2〜2μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(6)Δb値(JIS Z 8722に準拠)
また、中間層及び電荷発生層を基体上に形成した状態で測定される中間層及び電荷発生層からなる積層体のJIS Z 8722に準拠して色差計で測定されるb値から、中間層を基体上に形成した状態で測定される中間層のb値を差し引いた値をΔb値とした場合に、当該Δb値を−5〜5の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、Δb値の範囲を−5〜5の範囲内の値とすることによって、上述した電子輸送能を有する化合物の分散性を、好適な状態に制御することができるためである。
ここで、図3を用いて、電荷発生層におけるΔb値と、電荷発生層における結着樹脂100重量部に対する電子輸送能を有する化合物の添加量(重量部)と、の関係を説明する。
図3中には、横軸に電荷発生層における電子輸送能を有する化合物の添加量(重量部)を採り、縦軸に電荷発生層におけるΔb値を採った場合の特性曲線が示されている。
かかる特性曲線から理解できるように、電子輸送能を有する化合物の添加量が増加するにしたがって、Δb値も増加している。
具体的には、電子輸送能を有する化合物の添加量が0〜5重量部へと増加すると、それにともなって、Δb値は−14〜−5へと急激に増加している。一方電子輸送能を有する化合物の添加量が5以上の値である時には、かかる値の増加にともなって、Δb値は−5から緩やかに増加している。
すなわち、電子輸送能を有する化合物の添加量と、Δb値と、の間には、かかる相関があるため、特にΔb値が−5以上の値である場合には、かかるΔb値を測定することによって、電荷発生層における電子輸送能を有する化合物の分散性を正確かつ容易に判断することができるのである。
また、ここで、図4を用いて、電荷発生層におけるΔb値と、画像メモリ電位との関係を説明する。
図4中には、横軸にΔb値を採り、縦軸に画像メモリ電位(V)を採った特性曲線が示されている。
かかる特性曲線から理解できるように、Δb値の変化にともなって、画像メモリ電位(V)が臨界的に変化し、下に凸のピークを形成している。
より具体的には、Δb値が−15から−2へと増加するのにともなって、画像メモリ電位(V)の値は約45(V)から約20(V)へと減少していることが分かる。一方、Δb値が−2から7へと増加する場合には、それにともなって、画像メモリ電位(V)の値も約20(V)から約45(V)へと増加していることがわかる。
したがって、かかる特性曲線から、Δb値が−5〜5の範囲内の値であるとき、画像メモリ電位(V)を30V以下の値に抑制することができることがわかる。
さらに、ここで、図5を用いて、電荷発生層におけるΔb値と、感光体における明電位(V)との関係を説明する。
図5中には、横軸にΔb値を採り、縦軸に明電位(V)を採った特性曲線が示されている。
かかる特性曲線から理解できるように、Δb値の変化にともなって、明電位(V)の値は臨界的変化し、Δb値が所定の範囲内の値であるときに低い値をとっている。
より具体的には、Δb値が−5未満の値である時には、Δb値の増加にともなって、明電位(V)の値が緩やかに減少していることがわかる。そして、Δb値が0近傍の値であるとき、明電位(V)の値は、20V近傍で極小値をとり、その後、Δb値が5近傍の値まで増加するにともない、明電位(V)の値は緩やかに増加し、Δb値が5を超えた値となると、その増加にともなって、明電位(V)の値は急激に増加している。
したがって、かかる特性曲線から、Δb値が−5〜5の範囲内の値である時、明電位が、約25V以下の値をとっており、十分な感度を発揮していることが理解できる。
以上、図3〜5を用いて説明してきたように、Δb値が−5〜5の範囲内の値とすることによって、電荷発生層における電子輸送能を有する化合物の分散性を、正確かつ容易に判断することができるとともに、画像メモリ電位を抑制し、さらには感度を向上させることができる。すなわち、画像メモリを抑制し、かつ感度に優れた積層型電子写真感光体を、容易に製造することができる。したがってΔb値を−4〜4の範囲内の値とすることがより好ましく、−3〜3の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、中間層を有する積層型電子写真感光体における電荷発生層のΔb値の測定は、以下のようにして実施することを特徴とする。
すなわち、中間層及び電荷発生層を基体上に形成した状態で測定される中間層及び電荷発生層からなる積層体のJIS Z 8722に準拠して色差計で測定されるb値から、中間層を基体上に形成した状態で測定される中間層のb値を差し引いて実施する。
また、電荷発生層におけるΔb値の測定方法は、後述する実施例1において詳述する。
5.電荷輸送層
(1)正孔輸送剤及び電子輸送剤
(1)−1 種類
また、電荷輸送層に用いる電荷輸送剤(正孔輸送剤及び電子輸送剤)としては、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質;クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、ジフェノキノン化合物等の電子輸送物質;及び上述した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体等の一種単独または二種以上の組合せを挙げることができる。
(1)−2 添加量
結着樹脂に対しては、正孔輸送剤あるいは電子輸送剤のいずれか一方を添加することが好ましく、その添加量は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
(2)結着樹脂
また、電荷輸送層に用いる結着樹脂としては、具体的には、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリエステル樹脂、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプまたはビスフェノールCタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素化ゴム等の絶縁性樹脂或いはポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等及びこれらの共重合体樹脂があげられる。
(3)溶媒
また、電荷輸送層は、電荷輸送剤及び結着樹脂を、適当な溶媒に溶解させた溶液を塗布した後、乾燥することによって形成することができる。
このように電荷輸送層を形成する際に使用する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル、或いはこれらの混合溶剤等が挙げられる。
(4)添加剤
また、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、或いは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光体層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等を添加することが好ましい。
例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が用いられる。また、光安定剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体があげられる。
(5)厚さ
また、電荷輸送層の膜厚は、一般に5〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、電荷輸送層の膜厚が5μm未満の値となると、均一に塗布することが困難となる場合があるためである。一方、電荷輸送層の膜厚が50μmを超えた値となると、機械的強度が低下する場合があるためである。したがって、10〜40μmの範囲内の値に設定することがより好ましい。
6.画像形成装置
(1)基本構成
次いで、図6に、本発明に係る画像形成装置50の基本構成を示す。かかる画像形成装置50は、ドラム型の感光体20を備えており、この感光体20の周囲には、矢印Aで示す回転方向に沿って、一次帯電器14a、露光装置14b、現像器14c、転写帯電器14d、分離帯電器14e、クリーニング装置18、及び除電器23が順次に配設されて構成されている。
また、記録材Pを矢印Bで示す搬送方向に沿って、その上流側から順に、給紙ローラ19a、19b及び搬送ベルト21によって搬送し、その途中に、トナーを定着させて画像形成するための定着ローラ32a及び加圧ローラ32bが配設されている。
そして、感光体20は、上述した所定の電荷発生層を備えている。したがって、連続して画像形成を実施した場合であっても、画像メモリの発生を効果的に抑制できるとともに、優れた感度を得ることがきるため、良質な画像を効率的に形成することができる。
(2)動作
次いで、図6を参照しながら、画像形成装置50の基本動作を説明する。
まず、かかる画像形成装置50の感光体20を、駆動手段(図示せず)によって、矢印Aで示す方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転させるとともに、その表面を一次帯電器14aによって所定の極性及び電位に帯電させる。例えば、導電性弾性ローラを感光体表面に接触させる方式の場合には、1〜2KV程度の直流電圧を印加して、50〜2000Vに正帯電させることが好ましい。
次いで、レーザー、LED等の露光装置14bにより、画像情報に応じて光変調されながら反射ミラー等を介して、光を照射して、感光体20の表面を露光する。この露光により、感光体10の表面に静電潜像が形成される。
次いで、静電潜像に基づいて、現像器14cにより現像剤(トナー)が現像される。すなわち、現像器14cには、トナーが収納されており、備えてある現像スリーブに、所定の現像バイアスを印加することにより、トナーが感光体20の静電潜像に対応して付着し、トナー像が形成される。
次いで、感光体20上に形成されたトナー像は、記録材Pに転写される。この記録材Pは、給紙カセット(図示せず)から、給紙ローラ19a、19bによって給紙された後、感光体20上のトナー像とタイミングが同期するように調整して、感光体20と転写帯電器14dとの間の転写部に供給される。そして、感光体20上のトナー像は、転写帯電器14dに、所定の転写バイアスを印加することにより、記録材P上に確実に転写することができる。
次いで、トナー像が転写された後の記録材Pは、分離帯電器14eによって感光体20表面から分離され、搬送ベルト21によって定着器に搬送される。ここで、定着ローラ32a及び加圧ローラ32bによって、加熱処理及び加圧処理されて表面にトナー像が定着された後、排出ローラ(図示せず)によって画像形成装置50の外部に排出される。
一方、トナー像転写後の感光体20はそのまま回転を続け、転写時に記録材Pに転写されなかった残留トナー(付着物)が感光体20の表面から、クリーニング装置18によって除去されるとともに、感光体20は、次の画像形成に供されることになる。
そして、上述したように、感光体20は、上述した所定の電荷発生層を備えている。したがって、連続して画像形成を実施した場合であっても、画像メモリの発生を効果的に抑制できるとともに、優れた感度を得ることがきるため、良質な画像を効率的に形成することができる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、を含む積層型電子写真感光体の製造方法であって、樹脂成分を溶解した溶液中に無機微粉末を中間層の固形分に対して0.01〜1重量%の範囲内の値(但し1重量%は除く)で添加して中間層を形成するための中間層用塗布液を製造する工程と、結着樹脂と有機溶剤とを含む結着樹脂溶液中に、電荷発生剤と結着樹脂100重量部に対して5〜40重量部の範囲内の値で、上記式(3)〜(4)で表される化合物を含む電子輸送能を有する化合物(但し、フェナントレン化合物、フェナントロリン化合物およびアセナフテン化合物を除く)を分散させて、電荷発生層を形成するための電荷発生層用塗布液を製造する工程と、中間層を膜厚が0.1〜50μmの範囲内の値で前記基体上に形成する工程と、電荷発生層用塗布液を用いて、前記電荷発生層を膜厚が0.05〜5μmの範囲内の値で中間層上に形成した状態で測定される中間層及び電荷発生層からなる積層体のJIS Z 8722に準拠して色差計で測定されるb値から、中間層を基体上に形成した状態で測定される中間層のb値を差し引いた値をΔb値とした場合に、当該Δb値を−5〜5の範囲内の値とする電荷発生層を形成する工程と、を含むことを特徴とする積層型電子写真感光体の製造方法である。
以下、第1の実施形態の説明と異なる点を中心に具体的に説明する。
1.基体の準備
干渉縞の発生防止のためには、エッチング、陽極酸化、ウエットブラスティング法、サンドブラスティング法、粗切削、センタレス切削等の方法を用いて、支持基体の表面に粗面化処理を行うことが好ましい。
2.中間層の形成
また、上述した基体と、後述する電荷発生層と、の間に、中間層を介することを特徴とする。
この理由は、既に上述した通り、基体側の電荷が容易に感光層へ注入されるのを防ぐとともに、感光層を基体上に強固に結着させ、基体表面における欠陥を被覆し、平滑化することができるためである。
(1)中間層用塗布液の準備
中間層を形成するにあたり、樹脂成分を溶解した溶液中に酸化チタン等を添加して、分散処理を行い、塗布液を製造することが好ましい。
また、分散処理を行う方法は、特に制限されるものではないが、一般的に公知のロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等を用いることが好ましい。
(2)中間層用塗布液の塗布
また、中間層用塗布液の塗布方法については、特に制限されるものではないが、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いることができる。
なお、中間層およびその上の感光層をより安定的に形成するためには、中間層用塗布液の塗布後、30〜200℃で、5分〜2時間、加熱乾燥処理を実施することが望ましい。
3.電荷発生層の形成
(1)電荷発生層用塗布液の準備
また、電荷発生層を形成するにあたり、樹脂成分を溶解した溶液中に電荷発生剤、及び電子輸送能を有する化合物等を添加して、分散処理を行い、塗布液を製造することを特徴とする。
また、分散処理を行う方法は、特に制限されるものではないが、一般的に公知のロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合し、塗布液とすることが好ましい。
(2)電荷発生層用塗布液の塗布
また、電荷発生相溶塗布液の塗布方法については、特に制限されるものではないが、例えば、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、バーコーター、ディップコーター、ドクターブレード等を用いることが好ましい。
また、塗布工程の後、乾燥工程において、高温乾燥機や減圧乾燥機等を用いて、例えば、60℃〜150℃の乾燥温度で乾燥させることが好ましい。
4.電荷輸送層の形成
電荷輸送層の形成は、樹脂成分を溶解した溶液中に電荷輸送剤等を添加して、塗布液を製造することが好ましい。なお、分散処理、塗布方法、乾燥方法は、電荷発生層と重複するため省略する。
[実施例1]
1.積層型電子写真感光体の製造
(1)中間層の作成
容器内に、アルミナ及びシリカで表面処理した後、メチルハイドロジェンポリシロキサンにて表面処理した酸化チタン(テイカ製、SMT−02、数平均一次粒子径:10nm)150重量部と、アルミナ及びシリカで表面処理した酸化チタン(テイカ製、MT−05、数平均一次粒子径:10nm)100重量部と、メタノール600重量部と、ブタノール150重量部と、予めメタノール200重量及びブタノール50重量部の割合で溶解させたアミランCM8000(東レ(株)製、四元共重合ポリアミド樹脂)を50重量部と、を加えた後、ビーズミル(メディア:直径0.5mmのジルコニアボール)を用いて1時間混合して、1次分散溶液とした。
次いで、メタノール200重量部と、ブタノール50重量部の割合で溶解させたCM8000を50重量部とを加えた後、ペイントシェーカーを用いて1時間混合し、中間層用塗布液とした。
次いで、得られた中間層用塗布液を5ミクロンのフィルタにてろ過した後、直径30mm、長さ238.5mmのアルミニウム基体(支持基体)の一端を上にして、得られた中間層用塗布液中に5mm/secの速度で浸漬させて塗布した。その後、130℃、30分の条件で硬化処理を行って、膜厚2μmの中間層を形成した。
なお、上述の中間層用塗布液における各構成材料の添加量に関して、中間層用塗布液に加えられたアミランCM8000の全体量を基準量(100重量部)としている。以下の実施例及び比較例においても同様である。
(2)電荷発生層の作成
次いで、後述する手順で製造したチタニルフタロシアニン結晶100重量部と、式(3)で表される電子輸送能を有する化合物(ETM−1)10重量部と、結着樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業、エスレックKS−5)100重量部と、分散媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル2000重量部と、テトラヒドロフラン6000重量部とを混合し、ボールミルを用いて48時間分散させ、電荷発生層用塗布液を作成した。
得られた電荷発生層用塗布液を、3ミクロンのフィルタにてろ過した後、中間層上にディップコート法にて塗布し、80℃、5分間乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
(3)電荷輸送層の作成
次いで、正孔輸送剤として、下記式(5)で表されるスチルベン化合物(HTM−1)70重量部と、結着樹脂として、ポリカーボネート樹脂100重量部(帝人化成 TS2020)と、溶剤としてテトラヒドロフラン460重量部とを混合溶解し、電荷輸送層用塗布液を調製した。
得られた電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様にして電荷発生層上に塗布し、130℃、30分間の条件で乾燥させた後、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、積層型電子写真感光体とした。
なお、使用したチタニルフタロシアニン結晶は、以下の手順で合成した。
まず、アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル22g(0.17モル)と、チタンテトラブトキシド25g(0.073モル)と、尿素2.28g(0.038モル)とキノリン300gとを加え、攪拌しつつ150℃まで昇温した。次に、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温した後、この反応温度を維持しつつさらに2時間、攪拌して反応させた。
反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。(顔料化前処理)
次いで、得られた青紫色の固体10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、攪拌しつつ130℃に加熱して2時間、攪拌処理を行った。次いで、2時間経過した時点で加熱を停止し、23±1℃まで冷却した後、攪拌を停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。次いで、安定化された液をガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄した後、真空乾燥して、チタニルフタロシアニン化合物の粗結晶9.83gを得た。(酸処理前工程)
次いで、上述した酸処理前工程で得られたチタニルフタロシアニンの粗結晶5gを、濃硫酸100ミリリットルに加えて溶解した。次に、この溶液を、氷冷下の水中に滴下したのち室温で15分間攪拌し、さらに23±1℃付近で30分間、静置して再結晶させた。次に、上述した液をガラスフィルターによって濾別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗した後、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200ミリリットル中に分散させて50℃に加熱して10時間攪拌した。次いで、液をガラスフィルターによって濾別したのち、得られた固体を50℃で5時間、真空乾燥させて、式(2)で表される無置換のチタニルフタロシアニンの結晶(青色粉末)4.1gを得た。(酸処理工程)
なお、得られたチタニルフタロシアニンは、初期及び1,3−ジオキソランまたはテトラヒドロフラン中に7日間、浸漬しても、CuKα特性X線回折スペクトルにおいてブラッグ角度2θ±0.2°=7.4°及び26.2°にピークが発生していないこと、及び示差走査熱量分析において吸着水の気化に伴なう90℃付近のピーク以外に、296℃において1つのピークを確認した。
なお、チタニルフタロシアニン結晶におけるCuKα特性X線回折スペクトルは、以下に示す測定方法により測定した。
まず、チタニルフタロシアニン結晶0.3gをテトラヒドロフラン5g中に分散させ、温度23±1℃、相対湿度50〜60%RHの条件下、密閉系中で24時間保管した後、X線回折装置(理学電気(株)製 RINT1100)のサンプルホルダーに充填して測定を行った。
なお、測定条件は、下記の通りとした。
X線管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:30mA
スタート角度:3.0°
ストップ角度:40.0°
走査速度:10°/分
また、チタニルフタロシアニン結晶のDSC(示差走査熱量分析)は、示差走査熱量計(理学電機(株)製のTAS−200型、DSC8230D)を用いて行った。測定条件は下記の通りである。
サンプルパン:アルミニウム製
昇温速度:20℃/分
2.評価
(1)Δb値の評価
得られた中間層及び電荷発生層(基準厚さ:中間層2μm、電荷発生層:0.3μm)を積層した基体における、波長550nmの光に対するb値(b1)を、色差計(ミノルタ(株)製、CM1000)を用いて測定した。次に、電荷発生層を積層せず、中間層のみを積層した基体における、波長550nmの光に対するb値(b2)を、同様に測定した。
すなわち、図7(a)及び(b)を用いてより具体的に説明すると、図7(a)は、基体12上に中間層25及び電荷発生層24が積層してある状態を示しており、図7(b)は、基体上に中間層のみが積層してある状態を示している。そして、図7(a)及び(b)中のH0は、それぞれの基体に対して照射された光(入射光)を表しており、H1及びH2は、それぞれの基体に対して照射された入射光における反射光を表している。
したがって、基体及び中間層の影響を排除して、電荷発生層におけるb値(Δb値)を求めるためには、電荷発生層、中間層及び基体の反射光が混在しているH1のb値(b1)から、中間層及び基体のH2のb値(b2)を差し引き、修正値とすればよい。
すなわち、得られたb値(b1、b2)をもとに、下記数式(1)から、電荷発生層の修正b値(Δb値)を算出した。
なお、かかるΔb値を測定することにより、電荷発生層における電子輸送能を有する化合物の分散状態が容易に確認できるようになる。すなわち、かかる電荷発生層を備えた電子写真感光体を用いた場合における画像メモリ特性や明電位等の諸特性が、容易に確認可能となる。
また、中間層12を有さない積層型電子写真感光体におけるΔb値は、基体上に電荷発生層を積層した状態で測定されるb値から、基体単独でのb値を差し引き、求めることができる。
(2)明電位の評価
また、得られた積層型電子写真感光体を用いて、明電位の評価を行った。
すなわち、得られた積層型電子写真感光体を、常温常湿下(温度:20℃、湿度60%)にて、ドラム感度試験機を用いて、コロナ放電により、表面電位−700Vに帯電させた。
次いで、バンドパスフィルターを用いて波長780nm、半値幅20nmに単色化した光強度9マイクロW/cm2の光を、電子写真感光体の表面に1.5秒間、露光しつつ、露光開始から0.5秒後の表面電位を明電位として測定した。
また、得られた測定結果を、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:明電位(V)の値が30V未満の値である。
△:明電位(V)の値が30V以上、45V未満の値である。
×:明電位(V)の値が45V以上の値である。
(3)画像メモリの評価
また、得られた積層型電子写真感光体を用いて、画像メモリの評価を行った。
すなわち、得られた積層型電子写真感光体を、負帯電反転現像プロセスを採用したプリンター(MicroLine−22N 沖データ(株)製)に搭載し、高温高湿下(温度:35℃、湿度:85%)、及び低温低湿下(温度:10℃、20%)において、それぞれ10万枚複写した。次いで、文字画像に続いてハーフトーン画像を連続複写し、ハーフトーン画像上に残像としての文字画像が発生しているかを、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:ハーフトーン画像上において、文字画像の発生が確認されない。
△:ハーフトーン画像上において、わずかに文字画像の発生が確認される。
×:ハーフトーン画像上において、明確に文字画像の発生が確認される。
(4)画像メモリ電位の測定
また、得られた積層型電子写真感光体を用いて、画像メモリ電位の測定を行った。
すなわち、得られた積層型電子写真感光体を、負帯電反転現像プロセスを採用したプリンター(MicroLine−22N 沖データ(株)製)に搭載し、画像メモリ評価用の画像を出力した。次いで、表面電位計を用いて、感光体に対し、ベタ画像に相当する露光を行った箇所における次周の白紙電位を測定した。次いで、かかる測定値と、未露光部分における表面電位との差を算出して画像メモリ電位(V)とし、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:画像メモリ電位が30V未満の値である。
×:画像メモリ電位が30V以上の値である。
[実施例2]
実施例2は、実施例1での電荷発生層の形成において添加した式(3)で表される電子輸送能を有する化合物(ETM−1)10重量部を、20重量部としたほかは、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例3は、実施例1での電荷発生層の形成において添加した式(3)で表される電子輸送能を有する化合物(ETM−1)10重量部のかわりに、式(4)で表される電子輸送能を有する化合物(ETM−2)(C.I.Solvent Red 23)20重量部を添加したほかは、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例1]
比較例1は、実施例1での電荷発生層の形成において添加した式(3)で表される電子輸送能を有する化合物(ETM−1)10重量部を、50重量部としたほかは、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例2は、実施例1での電荷発生層の形成において添加した式(3)で表される電子輸送能を有する化合物(ETM−1)を、添加しなかったほかは、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
本発明にかかる積層型電子写真感光体及びそのような積層型電子写真感光体の製造方法によれば、電荷発生層に電子輸送能を有する化合物を含むとともに、当該電荷発生層のJIS Z 8722に準拠して色差計で測定される値であるΔb値を所定範囲内の値とすることにより、連続的に画像形成を実施した場合であっても、優れた電気特性及び画像特性を得られるようになった。
したがって、本発明の積層型電子写真感光体及びそのような積層型電子写真感光体の製造方法は、複写機やプリンター等各種画像形成装置における電気特性や画像特性のみならず、製造管理を容易にし、さらには経済的効果に著しく寄与することが期待される。
(a)〜(c)は、積層型感光体の構成を説明するために供する図である。 電荷発生層の膜厚(μm)と、電荷発生層におけるΔb値との関係を説明するために供する図である。 電荷発生層におけるΔb値と、電荷発生層における電子輸送能を有する化合物の含有量との関係を説明するために供する図である。 電荷発生層におけるΔb値と、画像メモリ電位(V)との関係を説明するために供する図である。 電荷発生層におけるΔb値と、明電位(V)との関係を説明するために供する図である。 積層型電子写真感光体を備えた画像形成装置を説明するために供する図である。 (a)及び(b)は、電荷発生層におけるb値の測定方法を説明するために供する図である。
符号の説明
20:積層型感光体
20´:積層型感光体
20´´:積層型感光体
22:電荷輸送層
24:電荷発生層
25:中間層
14a:一次帯電器
14b:露光装置
14c:現像器
14d:転写帯電器
14e:分離帯電器
18:クリーニング装置
18a:クリーニングブレード
19a、19b:給紙ローラ
21:搬送ベルト
32a:定着ローラ
32b:加圧ローラ
23:除電器
50:画像形成装置

Claims (8)

  1. 基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、を含む積層型電子写真感光体であって、
    前記中間層は、膜厚が0.1〜50μmの範囲内の値であって、
    前記中間層は、無機微粉末を含有するとともに、
    前記無機微粉末の添加量を、中間層の固形分に対して0.01〜1重量%の範囲内の値(但し、1重量%は除く)とし、
    前記電荷発生層は、膜厚が0.05〜5μmの範囲内の値であって、
    前記電荷発生層が電子輸送能を有する化合物(但し、フェナントレン化合物、フェナントロリン化合物およびアセナフテン化合物を除く)を含有するとともに、
    前記電子輸送能を有する化合物が下記式(3)〜(4)で表される化合物を含み、
    当該電子輸送能を有する化合物の添加量を、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して5〜40重量部の範囲内の値とし、
    前記中間層及び電荷発生層を前記基体上に形成した状態で測定される中間層及び電荷発生層からなる積層体のJIS Z 8722に準拠して色差計で測定されるb値から、前記中間層を前記基体上に形成した状態で測定される中間層のb値を差し引いた値をΔb値とした場合に、当該Δb値を−5〜5の範囲内の値とすることを特徴とする積層型電子写真感光体。

  2. 前記電子輸送能を有する化合物において、電界強度を5×105V/cmとした場合の電子移動度を5×10-10〜5×10-7cm2/V/secの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の積層型電子写真感光体。
  3. 前記電子輸送能を有する化合物が、吸収スペクトルにおいて450〜650nmの範囲内の波長領域に吸収ピークを有することを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の積層型電子写真感光体。
  4. 前記電荷発生層に含有される電荷発生剤として、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大のピークを有し、かつ、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層型電子写真感光体。
  5. 前記チタニルフタロシアニン結晶が、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=26.2°にピークを有さないことを特徴とする請求項4に記載の積層型電子写真感光体。
  6. 前記チタニルフタロシアニン結晶を、有機溶媒中に7日間浸漬した後に測定したCuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有さないことを特徴とする請求項4または5に記載の積層型電子写真感光体。
  7. 前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4−ジオキサン、及び1−メトキシ−2−プロパノールからなる群の少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の積層型電子写真感光体。
  8. 基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、を含む積層型電子写真感光体の製造方法であって、
    樹脂成分を溶解した溶液中に無機微粉末を中間層の固形分に対して0.01〜1重量%の範囲内の値(但し1重量%は除く)で添加して前記中間層を形成するための中間層用塗布液を製造する工程と、
    結着樹脂と有機溶剤とを含む結着樹脂溶液中に、電荷発生剤と前記結着樹脂100重量部に対して5〜40重量部の範囲内の値で、下記式(3)〜(4)で表される化合物を含む電子輸送能を有する化合物(但し、フェナントレン化合物、フェナントロリン化合物およびアセナフテン化合物を除く)を分散させて、前記電荷発生層を形成するための電荷発生層用塗布液を製造する工程と、
    前記中間層を膜厚が0.1〜50μmの範囲内の値で前記基体上に形成する工程と、
    前記電荷発生層用塗布液を用いて、前記電荷発生層を膜厚が0.05〜5μmの範囲内の値で前記中間層上に形成した状態で測定される中間層及び電荷発生層からなる積層体のJIS Z 8722に準拠して色差計で測定されるb値から、前記中間層を前記基体上に形成した状態で測定される中間層のb値を差し引いた値をΔb値とした場合に、当該Δb値を−5〜5の範囲内の値とする電荷発生層を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする積層型電子写真感光体の製造方法。

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