JP4891032B2 - 積層型電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、積層型電子写真感光体及び画像形成装置に関する。特に、耐クラック性に優れるとともに、感度特性にも優れた積層型電子写真感光体及びそれを用いた画像形成装置に関する。
従来、電子写真方式による複写機等の電子写真装置においては、廃棄性や大量生産性等に優れることから、有機感光体が多く使用されている。
しかしながら、有機感光体は、結着樹脂中に電荷発生剤や電荷輸送剤等を含有させることで感光層を構成していることから、有機感光体表面に油脂等が付着した場合には、特に電荷輸送剤が感光層外へと溶出しやすいという問題が見られた。そして、かかる電荷輸送剤の溶出が生じた箇所に対して機械的な応力が作用した場合には、かかる箇所にクラックが発生しやすいという問題が見られた。
そこで、かかるクラックの発生を防止するために、感光層における結着樹脂として、所定の構成単位からなるポリカーボネート樹脂を用いた電子写真感光体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、感光層に対し、少なくとも下記構造式(20)で表される繰り返し単位を有するビスフェノールE型ポリカーボネート及び/または、下記構造式(20)と(21)で表される繰り返し単位を有し、構造式(20)と(21)との比率が1:99〜90:10である共重合ポリカーボネートを含有してなる電子写真感光体が開示されている。

特開平7−281458号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、特許文献1に記載された電子写真感光体は、ある程度は、クラックの発生を防止することができたものの、感度特性を向上させるために、比較的電荷輸送能に優れる高分子量の電荷輸送剤を用いた場合には、かかる電荷輸送剤の溶出を十分に抑制することができず、効果的にクラックの発生を防止できないといった問題が見られた。
そこで、本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、積層型電子写真感光体において、その電荷輸送層における結着樹脂を、所定のポリカーボネート樹脂とするとともに、かかる積層型電子写真感光体における光応答性を所定の範囲に規定することにより、優れた耐クラック性とともに、優れた感度特性を得ることができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、耐クラック性に優れるとともに、感度特性にも優れた積層型電子写真感光体、及びそれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明によれば、導電性基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、が設けられた積層型電子写真感光体であって、電荷輸送層における結着樹脂を、下記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂とするとともに、電荷輸送層が、下記一般式(2)〜(5)のいずれかで表される正孔輸送剤を含有し、かつ、積層型電子写真感光体の表面を絶対値が700Vとなるように帯電させ、かかる表面電位の絶対値が、光照射から0.3msec後に100Vとなる光量(波長780nm)を露光した場合に、表面電位の絶対値が130Vとなるのに要する時間(95%光応答性)を20msec以下の値とすることを特徴とする積層型電子写真感光体が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、本発明で使用する所定のポリカーボネート樹脂であれば、その構成単位及び存在比率を所定の範囲に規定することによって、かかるそれぞれの構成単位が有する特性をバランスよく発揮させることができる。
より具体的には、ポリカーボネート樹脂同士の密着性と、導電性と、をバランスよく発揮することができる。
その結果、電荷輸送層に対して、比較的電荷輸送能に優れる高分子量の電荷輸送剤を含有させた場合であっても、その溶出を効果的に抑制できる一方で、その電荷輸送能を効率的に発揮させて、所定の光応答性を得ることができる。
したがって、耐クラック性に優れるとともに、感度特性にも優れた積層型電子写真感光体を得ることができる。
(一般式(2)中、R 1 〜R 12 はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR 13 (R 13 は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基、であり、R 1 〜R 5 、R 6 〜R 10 、R 11 とR 12 はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、Ar 1 は水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、nは1〜2の整数である。)
(一般式(3)中、R 14 〜R 22 はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR 23 (R 23 は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基であり、また、R 14 〜R 18 、R 19 とR 20 、R 21 とR 22 はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、さらに、R 16 およびR 20 は上記置換基に加えて、下記一般式(3´)で表される置換基であってもよく、X 1 は置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環水素基である。)
(一般式(3´)中、Ar 2 、Ar 3 は水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、cは0〜2の整数である。)
(一般式(4)中、R 24 〜R 34 はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR 35 (R 35 は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基であり、また、R 24 〜R 28 、R 29 とR 30 、R 31 とR 32 、R 33 とR 34 はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、さらに、R 26 は上記置換基に加えて、下記一般式(4´)で表される置換基であってもよく、X 2 は置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環水素基である。)
(一般式(4´)中、Ar 4 、Ar 5 は水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、dは0〜2の整数である。)
(一般式(5)中、R 36 〜R 44 はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR 45 (R 45 は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基であり、また、R 36 〜R 40 、R 41 とR 42 、R 43 とR 44 はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、Ar 6 、Ar 7 は、水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、eは0〜2の整数である。
(一般式(1)中、A1及びA2は、それぞれ独立した置換基であって、水素原子またはメチル基であり、かつ、A 1 またはA2のうちのいずれか一方のみが、メチル基であり、モル比a:bは、20:80〜80:20の範囲内の値である。)
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を10,000〜100,000の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、耐クラック性を向上させつつも、電荷輸送層を形成する際の有機溶剤への溶解性を好適な範囲に調節することができる。
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、積層型電子写真感光体を負帯電型とすることが好ましい。
このように構成することにより、電荷輸送剤として、一般に電子輸送剤よりも電荷輸送能に優れる正孔輸送剤を使用することが容易になることから、耐クラック性を十分に保持しつつも、感度特性をより向上させることができる。
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、電荷輸送層が正孔輸送剤を含有するとともに、当該正孔輸送剤の分子量を500〜1500の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、感度特性をより向上させることができる一方で、耐クラック性についても十分に保持することができる。
また、本発明の別の態様は、上述したいずれかの積層型電子写真感光体を備えるとともに、当該積層型電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段をそれぞれ配置することを特徴とする画像形成装置である。
すなわち、本発明に使用される積層型電子写真感光体であれば、耐クラック性に優れるとともに、感度特性にも優れるため、良質な画像を安定的に形成することができる。
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、導電性基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、が設けられた積層型電子写真感光体であって、電荷輸送層における結着樹脂を、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂とするとともに、電荷輸送層が、一般式(2)〜(5)のいずれかで表される正孔輸送剤を含有し、かつ、積層型電子写真感光体の表面を絶対値が700Vとなるように帯電させた後、かかる表面電位の絶対値が、光照射から0.3msec後に100Vとなる光量(波長780nm)を露光した場合に、表面電位の絶対値が130Vとなるのに要する時間(95%光応答性)を20msec以下の値とすることを特徴とする積層型電子写真感光体である。
以下、第1の実施形態の積層型電子写真感光体について、各構成要件に分けて説明する。
1.基本的構成
図1に示すように、積層型感光体20は、基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いで、この電荷発生層24上に、電荷輸送剤等と、結着樹脂を含む電荷輸送層用塗布液を塗布し、それを乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって製造することができる。
また、上述した構造とは逆に、図1に示すように、基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。
ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図1に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
なお、電荷輸送層22においては、一般に、正孔輸送剤または電子輸送剤のいずれか一方を含有することが好ましいが、正孔輸送剤と電子輸送剤の両方を用いてもよい。
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、積層型電子写真感光体を負帯電型とすることが好ましい。
この理由は、積層型電子写真感光体を、負帯電型とすることによって、電荷輸送剤として、一般的に電子輸送剤よりも電荷輸送能に優れる正孔輸送剤を使用することが容易になることから、耐クラック性を十分に保持しつつも、感度特性をより向上させることができるためである。
すなわち、この積層型感光体は、上述の電荷発生層及び電荷輸送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の種類によって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。そして、図1に示すように、基体12上に電荷発生層24を形成し、その上に電荷輸送層22を形成した場合において、電荷輸送層22における電荷輸送剤として、アミン化合物誘導体やスチルベン誘導体等の正孔輸送剤を使用することによって、感光体は負帯電型となる。この場合、電荷発生層24には電子輸送剤を含有させてもよい。そして、このような負帯電型の積層型電子写真感光体であれば、感光層における残留電位を効果的に低下させて、感度特性を向上させることができる。
また、図1に示すように、感光層を形成する前に、かかる基体12上に、中間層25を予め形成しておくことも好ましい。この理由は、かかる中間層25を設けることによって、基体側の電荷が容易に感光体層へ注入されるのを防ぐと共に、感光体層を基体12上に強固に結着させ、基体12における表面上の欠陥を被覆し平滑化することができるためである。
2.基体
積層型感光層が形成される基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができる。例えば、鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮などの金属にて形成された基体や、上述の金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる基体、あるいはヨウ化アルミニウム、酸化スズ、及び酸化インジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示される。
すなわち、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有するものが好ましい。
また、基体の形状は使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、及びドラム状などのいずれであってもよい。
3.中間層
(1)結着樹脂
結着樹脂として、例えば、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を用いることが好ましい。
(2)添加剤
また、中間層には、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止する目的、分散性向上等の目的により、各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を添加することも好ましい。
特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が好ましい添加剤である。
また、微粉末等の添加剤を添加する場合、その粒径を0.01〜3μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかる粒径が大きすぎると中間層の凹凸が大きくなったり、電気的に不均一な部分が生じたり、さらには、画質欠陥を生じ易くなったりする場合があるためである。一方、かかる粒径が小さすぎると、十分な光散乱効果が得られない場合があるためである。
なお、微粉末等の添加剤を添加する場合、その添加量を、中間層の固形分に対して重量比で1〜70重量%、より好ましくは5〜60重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
また、中間層に電荷輸送剤を添加することも好ましい。すなわち、電荷輸送剤を含有させることにより、電荷発生層で発生した電荷を速やかに基体側に移動させて、安定した電気特性を示すことができるためである。
また、このような電荷輸送剤としては、従来公知の種々の化合物を使用することができる。
4.電荷発生層
(1)結着樹脂
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプまたはビスフェノールCタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、N−ビニルカルバゾール等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
(2)電荷発生剤
(2)−1 種類
本発明における電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体や、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンといった無機光導電材料等の従来公知の電荷発生剤を用いることができる。
より具体的には、下記式(6)〜(9)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜CGM−D)を使用することがより好ましい。
この理由は、光源として半導体レーザを備えたレーザビームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置に使用する場合には、600〜800nm以上の波長領域に感度を有する電子写真感光体が必要となるためである。
その一方で、ハロゲンランプ等の白色の光源を備えた静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置に使用する場合には、可視領域に感度を有する電子写真感光体が必要となるため、例えば、ペリレン系顔料やビスアゾ顔料等を好適に用いることができる。
(2)−2 含有量
また、電荷発生剤の含有量は、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して、5〜1000重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる含有量が結着樹脂100重量部に対して5重量部未満の値となると、電荷発生量が不十分となって、鮮明な静電潜像を形成することが困難となる場合があるためである。一方、かかる含有量が結着樹脂100重量部に対して1000重量部を超えた値となると、均一な電荷発生層を形成することが困難となる場合があるためである。
したがって、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対する電荷発生剤の含有量を30〜500重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
(3)厚さ
また、電荷発生層の厚さを、0.1〜5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電荷発生層の厚さを、0.1〜5μmの範囲内の値とすることによって、露光による電荷発生量を向上させることができるためである。
すなわち、電荷発生層の厚さが0.1μm未満の値となると、十分な電荷発生能を有する電荷発生層を形成することが困難となる場合があるためである。一方、電荷発生層の厚さが5μmを超えた値となると、残留電荷の発生を抑制することが困難となったり、均一な電荷発生層の形成が困難となる場合があるためである。
したがって、電荷発生層の厚さを、0.15〜4μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.2〜3μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
5.電荷輸送層
(1)結着樹脂
(1)−1 種類
本発明における電荷発生層の結着樹脂として、上述した一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂を使用することを特徴とする。
この理由は、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂であれば、ポリカーボネート樹脂同士の密着性と、導電性と、のバランスを良好な状態に保持することができるためである。その結果、比較的電荷輸送能に優れる高分子量の電荷輸送剤を含有させた場合であっても、その溶出量を効果的に抑制できる一方で、その電荷輸送能を効率的に発揮させて、所定の光応答性を得ることができる。
すなわち、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂には、ポリカーボネート樹脂同士の密着性を向上させるのに寄与するビスフェノールFに由来する構成単位(一般式(1)における右側の構成単位)が含まれている。
したがって、電荷輸送層に対して、比較的電荷輸送能に優れる高分子量で嵩高い構造を有する電荷輸送剤を含有させた場合であっても、感光層表面に対する油脂の付着による電荷輸送剤の溶出を効果的に抑制することができる。
一方、かかるビスフェノールFに由来する構成単位は、電荷輸送層の導電性を低下させる要因となる場合がある。したがって、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂においては、ポリカーボネート樹脂同士の密着性を保持しつつも、電荷輸送層における導電性の低下を抑制するために、ビスフェノールEに由来する構成単位(一般式(1)における左側の構成単位)が含まれている。
したがって、電荷輸送層に含有された電荷輸送剤の電荷輸送能を、効率的に発揮させることができる。
よって、以上において説明した二つの構成単位の存在比率を、後述するように所定の範囲とすることによって、耐クラック性に優れるとともに、感度特性にも優れた積層型電子写真感光体を得ることができる。
(1)−2 モル比
また、一般式(1)におけるモル比a:bを20:80〜80:20の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、(a+b)に対するbの割合(ビスフェノールFに由来する構成単位の配合割合)(%)が20%未満の値となると、電荷輸送層におけるポリカーボネート樹脂同士の密着性が低下して、電荷輸送層に対して、特に、高分子量の電荷輸送剤を含有させた場合には、クラックが発生しやすくなる場合があるためである。一方、(a+b)に対するbの割合(%)が80%を超えた値となると、電荷輸送層における導電性が過度に低下して、含有させた電荷輸送剤の電荷輸送能を効率的に発揮させることが困難となり、感度特性が低下する場合があるためである。
したがって、一般式(1)におけるモル比a:bを25:75〜75:25の範囲内の値とすることがより好ましく、30:70〜70:30の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
次いで、図2を用いて、一般式(1)におけるモル比a:bと、積層型電子写真感光体における光応答性との関係を説明する。
図2には、横軸に一般式(1)における(a+b)に対するbの割合(ビスフェノールFに由来する構成単位の配合割合)(%)を採り、縦軸に積層型電子写真感光体における95%光応答性(msec)を採った特性曲線が示してある。
なお、電荷輸送剤としては、後述する式(10)で表される正孔輸送剤(HTM−1)を用い、その添加量は、結着樹脂100重量部に対して70重量部とした。また、その他の条件は、実施例において記載する。
また、積層型電子写真感光体における95%光応答性とは、本発明においては、以下のように定義される。
すなわち、積層型電子写真感光体の表面を絶対値が700Vとなるように帯電させた後、かかる表面電位の絶対値が、光照射から0.3msec後に100Vとなる光量(波長780nm)を露光した場合に、光照射から前記表面電位の絶対値が130Vとなるのに要する時間を意味する。
かかる特性曲線から理解されるように、bの割合が0〜80%の範囲では、95%光応答性は、安定的に5msec前後の値を維持している。一方、bの割合が80%を超えた値となると、かかるbの割合の増加にともなって、95%光応答性が急激に増加してしまうことが理解される。
したがって、bの割合を80%以下の値とすることによって、臨界的に優れた95%光応答性を得ることができることがわかる。
なお、95%光応答性の測定方法は、実施例において詳述する。
次いで、図3を用いて、一般式(1)におけるモル比a:bと、積層型電子写真感光体における明電位と、の関係を説明する。
図3には、横軸に一般式(1)における(a+b)に対するbの割合(ビスフェノールFに由来する構成単位の配合割合)(%)を採り、縦軸に積層型電子写真感光体における明電位の絶対値(V)を採った特性曲線が示してある。
なお、電荷輸送剤としては、後述する式(10)で表される正孔輸送剤(HTM−1)を用い、その添加量は、結着樹脂100重量部に対して70重量部とした。また、その他の条件は、実施例において記載する。
かかる特性曲線から理解されるように、bの割合が0〜80%の範囲では、明電位の絶対値は、bの割合の増加にともなって、緩やかに増加してはいるものの、35V前後の値を安定的に維持している。一方、bの割合が80%を超えた値となると、かかるbの割合の増加にともなって、明電位の絶対値(V)が急激に増加してしまうことが理解される。
したがって、bの割合を80%以下の値とすることによって、臨界的に優れた明電位を得ることができることがわかる。
なお、明電位の測定方法は、実施例において詳述する。
次いで、図4を用いて、一般式(1)におけるモル比a:bと、積層型電子写真感光体における耐クラック性と、の関係を説明する。
図4には、横軸に一般式(1)における(a+b)に対するbの割合(ビスフェノールFに由来する構成単位の配合割合)(%)を採り、縦軸に積層型電子写真感光体におけるクラック発生箇所数(箇所)を採った特性曲線が示してある。
なお、電荷輸送剤としては、後述する式(10)で表される正孔輸送剤(HTM−1)を用い、その添加量は、結着樹脂100重量部に対して70重量部とした。また、その他の条件は、実施例において記載する。
かかる特性曲線から理解されるように、bの割合が0〜20%の範囲では、クラック発生箇所数は、bの割合の増加にともなって、急激に減少していることがわかる。そして、bの割合が20%以上の範囲では、bの割合の変化に関わらず、クラック発生がほぼ完全に抑制されていることがわかる。
したがって、bの割合を20%以上の値とすることによって、臨界的に優れた耐クラック性を得ることができることがわかる。
なお、耐クラック性試験の方法については、実施例において詳述する。
(1)−3 粘度平均分子量
また、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を10,000〜100,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を10,000〜100,000の範囲内の値とすることによって、耐クラック性を向上させつつも、電荷輸送層を形成する際の有機溶剤への溶解性を好適な範囲に調節することができるためである。
すなわち、かかる粘度平均分子量が10,000未満の値となると、感光体表面に対して油脂等が付着した場合に、かかる油脂等が電荷輸送層に対して浸潤しやすくなって、耐クラック性が低下する場合があるためである。一方、かかる粘度平均分子量が100,000を超えた値となると、電荷輸送層を形成する際の電荷輸送層用塗布液を作成する際に、有機溶剤への溶解性が過度に低下したり、電荷輸送層用塗布液の粘度が過度に高くなって、均一に塗布することが困難となる場合があるためである。
したがって、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を20,000〜70,000の範囲内の値とすることがより好ましく、30,000〜50,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる粘度平均分子量は、オストワルド粘度計によって、極限粘度(η)を求め、Schnellの式によって、(η)=1.23×10-40.83より算出することができる。なお、(η)は、20℃で、塩化メチレン溶液を溶媒として、濃度が6.0g/cm3となるようにポリカーボネート樹脂を溶解させて得られたポリカーボネート樹脂溶液から測定することができる。
(2)正孔輸送剤
(2)−1 種類
また、正孔輸送剤としては、積層型電子写真感光体に対し、所定の95%光応答性を付与することができる化合物であれば、従来公知の種々の正孔輸送性化合物を使用することができる。例えば、ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物〔例えば2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなど〕、スチリル系化合物〔例えば9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなど〕、カルバゾール系化合物〔例えばポリ−N−ビニルカルバゾールなど〕、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物〔例えば1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなど〕、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、及びジフェニレンジアミン系化合物などが好適に使用される。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
但し、上述した化合物の中でも、特に、一般式(2)〜(5)で表される正孔輸送剤を用いることを特徴とする。
この理由は、一般式(2)〜(5)で表される正孔輸送剤であれば、正孔輸送能に優れるため、積層型電子写真感光体の感度特性をさらに向上させることができるためである。ところが、これらの正孔輸送剤は、比較的高分子量であり、嵩高い立体構造を有していることから、電荷輸送層における結着樹脂同士の密着性を低下させて、耐クラック性を低下させる場合がある。一方、本発明においては、電荷輸送層の結着樹脂としての特定のポリカーボネート樹脂を用いていることから、耐クラック性を効果的に維持しつつも、これらの正孔輸送剤の優れた正孔輸送能を、効率的に発揮させることができる。
(2)−2 分子量
また、上述した一般式(2)〜(5)で表される正孔輸送剤の分子量を、500〜1500の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、これらの正孔輸送剤の分子量を500〜1500の範囲内の値とすることによって、感度特性をより向上させることができる一方で、耐クラック性についても十分に保持することができるためである。
すなわち、かかる正孔輸送剤の分子量が500未満の値となると、豊富なπ電子を有し、正孔輸送能に優れた正孔輸送剤を得ることが困難となる場合があるためである。一方、かかる正孔輸送剤の分子量が1500を超えた値となると、正孔輸送能には優れるものの、耐クラック性を著しく低下させる場合があるためである。
したがって、一般式(2)〜(5)で表される正孔輸送剤の分子量を、600〜1300の範囲内の値とすることがより好ましく、700〜1100の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、正孔輸送剤の分子量は、Chem Draw Std version8(Cambridge Soft社製)を用いて化学構造式を元に算出することもできるし、あるいはマススペクトルを用いて算出することができる。
(2)−3 具体例
また、上述した一般式(2)〜(5)で表されるとともに、分子量が500〜1500の範囲内の値である正孔輸送剤の具体例としては、下記式(10)〜(13)で表される化合物(HTM−1〜4)を挙げることができる。
(2)−4 添加量
また、正孔輸送剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。なお、正孔輸送剤と、電子輸送剤とを併用する場合には、その合計量を、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
(3)電子輸送剤
(3)−1 種類
また、電子輸送剤としては、積層型電子写真感光体に対し、所定の95%光応答性を付与することができる化合物であれば、従来公知の種々の電子輸送性化合物がいずれも使用可能である。特にベンゾキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、フルオレノン系化合物〔例えば2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノンなど〕、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、無水こはく酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、2,4,7−トリニトロフルオレノンイミン系化合物、エチル化ニトロフルオレノンイミン系化合物、トリプトアントリン系化合物、トリプトアントリンイミン系化合物、アザフルオレノン系化合物、ジニトロピリドキナゾリン系化合物、チオキサンテン系化合物、2−フェニル−1,4−ベンゾキノン系化合物、2−フェニル−1,4−ナフトキノン系化合物、5,12−ナフタセンキノン系化合物、α−シアノスチルベン系化合物、4,’−ニトロスチルベン系化合物、及びベンゾキノン系化合物の陰イオンラジカルとカチオンとの塩などの電子吸引性化合物が好適に使用される。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
(3)−2 分子量
また、電子輸送剤の分子量を、250〜850の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電子輸送剤の分子量を250〜850の範囲内の値とすることによって、感度特性をより向上させることができる一方で、耐クラック性についても十分に保持することができるためである。
すなわち、電子輸送剤の分子量が250未満の値となると、豊富なπ電子を備えた電子輸送能に優れた電子輸送剤を得ることが困難となる場合があるためである。一方、かかる電子輸送剤の分子量が850を超えた値となると、電子輸送能には優れるものの、耐クラック性を著しく低下させる場合があるためである。
したがって、電子輸送剤の分子量を、250〜750の範囲内の値とすることがより好ましく、350〜600の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、電子輸送剤の分子量についても、正孔輸送剤の分子量と同様に、Chem Draw Std version8(Cambridge Soft社製)を用いて化学構造式を元に算出することもできるし、あるいはマススペクトルを用いて算出することができる。
(3)−3 添加量
また、電子輸送剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。なお、電子輸送剤と、前述の正孔輸送剤とを併用する場合には、その合計量を、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、電子輸送剤と、正孔輸送剤とを併用して用いる場合、電子輸送剤の添加量を、正孔輸送剤100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
(4)添加剤
また、上述した各成分のほかに、従来公知の種々の添加剤、例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が用いられる。また、光安定剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体があげられる。その他にも、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。
(5)厚さ
また、電荷輸送層の厚さを0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電荷輸送層の厚さが0.1μm未満の値となると、機械的強度が著しく低下する場合があるためである。一方、電荷輸送層の厚さが50μmを超えた値となると、膜厚を均一に形成することが困難となったり、層が剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって、電荷輸送層の厚さを1〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
6.光応答性
また、本発明としての積層型電子写真感光体は、その表面を絶対値が700Vとなるように帯電させた後、かかる表面電位の絶対値が、光照射から0.3msec後に100Vとなる光量(波長780nm)を露光した場合に、光照射から表面電位の絶対値が130Vとなるのに要する時間(95%光応答性)を20msec以下の値とすることを特徴とする。
この理由は、既に電荷輸送層における結着樹脂の項において記載したように、本発明は、一般式(1)で表される特定のポリカーボネート樹脂を用いることによって、耐クラック性と感度特性という相反する特性を効果的に両立することを目的としている。したがって、本発明において、耐クラック性を十分に保持しながらも最低限満足すべき感度特性のレベルを、95%感度特性として定量的に規定するためである。
すなわち、95%光応答性が20msecを超えた値となると、たとえ優れた耐クラック性を得ることができたとしても、感度特性が不十分となり、積層型感光体表面に対して、静電潜像を明確に描くことが困難となる場合があるためである。一方、95%光応答性が過度に小さな値となると、それに対応して電荷輸送能に優れた高分子量で嵩高い立体構造を有した電荷輸送剤を、大量に使用する必要が生じるため、耐クラック性を十分に保持することが困難となる場合がある。
したがって、95%光応答性を3〜10msecの範囲内の値とすることがより好ましく、4〜7msecの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、95%光応答性の測定方法については、実施例において詳述する。
7.製造方法
本発明の積層型感光体層の製造方法に関し、以下のように電荷輸送層用塗布液と、電荷発生層用塗布液とを作成して、それぞれ基体上に塗布した後、乾燥させて製造することが好ましい。
(1)塗布液作成工程
塗布液作成工程は、例えば、結着樹脂と、正孔輸送剤と、溶剤と、からなる電荷輸送層用塗布液、および結着樹脂と、電荷発生剤と、溶剤と、からなる電荷発生層用塗布液と、をそれぞれ作成する工程である。例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合し、塗布液とすることが好ましい。
より具体的には、電荷輸送層用塗布液の固形分濃度が10〜30重量%の範囲内の値、電荷発生層用塗布液の固形分濃度が1〜10重量%の範囲内の値の塗布液を作成することが好ましい。この理由は、電荷輸送層用塗布液の固形分濃度は10重量%未満の値になると、被膜欠陥を生じるおそれがあるためであり、一方、塗布液の固形分濃度は30重量%を超えると、層むらが生じやすくなり、均一な厚さを有する薄膜を形成することが困難となる場合があるためである。また、同様に電荷発生層用塗布液の固形分濃度も1重量%未満の値になると被膜欠陥を生じるおそれがあり、固形分濃度が10重量%を超えると、層むらを生じやすくなり、均一な厚さを有する薄膜を形成することが困難となる場合がある。
また、電荷輸送層用塗布液および電荷発生層用塗布液を作成するための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能である。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤等の分散性や、感光体層表面における平滑性を良くするために、塗布液を作成する際に、界面活性剤やレベリング剤等を添加することも好ましい。
(2)塗布工程および乾燥工程
第1塗布工程および第1乾燥工程と、第2塗布工程および第2乾燥工程とを設けて、電荷輸送層と電荷発生層からなる感光体層を形成することが好ましい。例えば、第1塗布工程および第1乾燥工程により、図1(a)に示すように、基体12の上に、電荷発生層24を形成し、次いで、第2塗布工程および第2乾燥工程により、電荷発生層24の上に、電荷輸送層22を形成することが好ましい。
(2)−1 塗布工程
また、塗布工程を実施するにあたり、基体上に、塗布液を直接的に塗布することも好ましいし、あるいは、中間層を介して間接的に塗布することも好ましい。
また、塗布方法としては、均一な厚さの感光体層を形成するために、例えば、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、バーコーター、ディップコーター、ドクターブレード等を用いることが好ましい。
なお、電荷発生層は残留電位を低くするため、電荷輸送層よりも薄く塗膜を形成するのが好ましい。
(2)−2 乾燥工程
また、塗布工程の後、乾燥工程において、高温乾燥機や減圧乾燥機等を用いて、例えば、60℃〜150℃の乾燥温度で乾燥させることが好ましい。この理由は、かかる乾燥温度が60℃未満の値になると、乾燥時間が過度に長くなって、均一な厚さを有する感光体層を効率的に形成することが困難になる場合があるためである。一方、かかる乾燥温度が150℃を超えると、感光体層が熱分解する場合があるためである。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態の積層型電子写真感光体を備えるとともに、当該積層型電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段をそれぞれ配置することを特徴とする画像形成装置である。
以下、第1の実施形態において既に説明した内容については省略しつつ、第2の実施形態としての画像形成装置について説明する。
第2の実施形態の画像形成装置としては、図5に示すような画像形成装置である複写機40を好適に使用することができる。かかる複写機40は、画像形成ユニット41、排紙ユニット42、画像読取ユニット43、及び原稿給送ユニット44を備えている。また、画像形成ユニット41には、画像形成部41a及び給紙部41bがさらに備えられている。そして、図示された例では、原稿給送ユニット44は、原稿載置トレイ44a、原稿給送機構44b、及び原稿排出トレイ44cを有しており、原稿載置トレイ44a上に載置された原稿は、原稿給送機構44bによって画像読取位置Pに送られた後、原稿排出トレイ44cに排出される。
そして、原稿が原稿読取位置Pに送られた段階で、画像読取ユニット43において、光源43aからの光を利用して、原稿上の画像が読み取られる。すなわち、CCD等の光学素子43bを用いて、原稿上の画像に対応した画像信号が形成される。
一方、給紙部41bに積載された記録用紙(以下、単に用紙と呼ぶ。)Sは、一枚ずつ画像形成部41aに送られる。この画像形成部41aには、像担持体である感光体ドラム51が備えられており、さらに、この感光体ドラム51の周囲には、帯電器52、露光器53、現像器54、及び転写ローラ55、並びにクリーニング装置56が、感光体ドラム51の回転方向に沿って配置されている。
これらの構成部品のうち、感光体ドラム51は、図中、実線矢印で示す方向に回転駆動されて、帯電器52により、その表面が均一に帯電される。その後、前述の画像信号に基づいて、露光器53により感光体ドラム51に対して露光プロセスが実施され、この感光体ドラム51の表面において静電潜像が形成される。この静電潜像に基づき、現像器54によりトナーを付着させて現像し、感光体ドラム51の表面にトナー像を形成する。そして、このトナー像は、感光体ドラム51と転写ローラ55とのニップ部に搬送される用紙Sに転写像として転写される。次いで、転写像が転写された用紙Sは、定着ユニット57に搬送されて、定着プロセスが行われる。
ここで、定着後の用紙Sは、排紙ユニット42に送られることになるが、後処理(例えば、ステイプル処理等)を行う際には、用紙Sは中間トレイ42aに送られた後、後処理が実施される。その後、用紙Sは、画像形成装置の側面に設けられた排出トレイ部(図示せず)に排出される。一方、後処理を行わない場合には、用紙Sは中間トレイ42aの下側に設けられた排紙トレイ42bに排紙される。
なお、中間トレイ42a及び排紙トレイ42bは、いわゆる胴内排紙部として構成されている。
上述のようにして、転写が行われた後、感光体ドラム51に残留する残留トナー(及び紙粉)については、クリーニング装置56で除去される。すなわち、感光体ドラム51がクリーニングされる一方、残留トナーについては、廃トナーコンテナ(図示せず)に回収されることになる。
なお、本発明に使用される積層型電子写真感光体であれば、耐クラック性に優れるとともに、感度特性にも優れるため、良質な画像を安定的に形成することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載内容に限定されるものではない。
[実施例1]
1.積層型電子写真感光体の製造
(1)中間層の形成
ペイントシェーカーを用いて、酸化チタン(MT−02、アルミナ及びシリカで表面処理を施した後、メチルハイドロジェンポリシロキサンで表面処理を施した数平均一次粒子径が10nm(テイカ製))250重量部、四元共重合ポリアミド樹脂CM8000(東レ製)100重量部、溶媒としてメタノール1000重量部と、n-ブタノール250重量部とを、10時間混合、分散させ、さらに5ミクロンのフィルタにてろ過処理して、中間層用塗布液を作成した。
次いで、直径30mm、長さ238.5mmのアルミニウム基体(支持基体)の一端を上にして、得られた中間層用塗布液中に5mm/secの速度で浸漬させて塗布した。その後、130℃、30分の条件で熱処理を行って、膜厚2μmの中間層を形成した。
(2)電荷発生層の形成
次いで、ボールミルを用いて、電荷発生剤として、式(7)で表されるチタニルフタロシアニン(CGM−B)の結晶を100重量部、結着樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)製、エスレックKS−5)100重量部、分散媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル6000重量部、テトラヒドロフラン2000重量部を、48時間混合、分散させ、電荷発生層用の塗布液を得た。得られた塗布液を、3ミクロンのフィルタにてろ過後、上述した中間層上にディップコート法にて塗布し、80℃で5分間乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
(3)電荷輸送層の形成
次いで、超音波分散機内に、正孔輸送剤として式(10)で表されるスチルベン化合物(HTM−1)70重量部と、結着樹脂として、下記式(14)で表される粘度平均分子量が34700であるポリカーボネート樹脂100重量部、溶剤としてテトラヒドロフラン460重量部を収容したのち、10分間分散処理させて、電荷輸送層用塗布液を得た。
得られた電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様にして電荷発生層上に塗布し、130℃で30分間乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し積層型電子写真感光体を作製した。
なお、下記式(14)で表されるポリカーボネート樹脂について説明すると、その左側の構成単位は、一般式(1)における置換基A1がメチル基であり、置換基A2が水素原子であるビスフェノールEに由来する構成単位である。また、右側の構成単位は、ビスフェノールFに由来する構成単位である。そして、これらの構成単位を、一般式(1)におけるモル比a:bが30:70となるように共重合させてある。
(4)チタニルフタロシアニン結晶の製造
なお、電荷発生層において、電荷発生剤として含有させたチタニルフタロシアニン結晶は、以下のようにして製造した。
すなわち、アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル25gと、チタンテトラブトキシド28gと、キノリン300gとを加え、撹拌しつつ150℃まで昇温した。
次いで、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温したのち、この温度を維持しつつさらに2時間、撹拌して反応させた。
次いで、反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。
次いで、顔料化前処理として、上述したチタニルフタロシアニン化合物の製造で得られた青紫色の固体10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、撹拌しつつ130℃に加熱して2時間、撹拌処理を行った。
次いで、2時間経過した時点で加熱を停止し、さらに、23±1℃まで冷却した時点で撹拌も停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。そして安定化された後の上澄みをガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄したのち真空乾燥して、チタニルフタロシアニン化合物の粗結晶9.83gを得た。
次いで、顔料化処理として、上述した顔料化前処理で得られたチタニルフタロシアニンの粗結晶5gを、濃硫酸100ミリリットルに加えて溶解した。
次いで、この溶液を、氷冷下の水中に滴下したのち室温で15分間撹拌し、さらに23±1℃付近で30分間、静置して再結晶させ、上澄みと分離させた。
次いで、上澄みをガラスフィルターによってろ別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗したのち、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200ミリリットル中に分散させて50℃に加熱して10時間、撹拌した。そして、上澄みをガラスフィルターによってろ別したのち、得られた結晶を50℃で5時間、真空乾燥させて、式(7)で表される無置換のチタニルフタロシアニンの結晶(青色粉末)4.1gを得た。
なお、得られたチタニルフタロシアニン結晶においては、初期、及び1,3−ジオキソランまたはテトラヒドロフラン中に7日間浸漬させた後においても、光学特性として、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=7.4°及び26.2°にピークが発生していないことを確認した。また、熱特性として、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなう90℃付近のピーク以外は、50〜400℃の範囲に温度変化のピークを示さないことを確認した。
(5)ポリカーボネート樹脂の製造
また、電荷輸送層における結着樹脂としての式(14)で表されるポリカーボネート樹脂は、以下のようにして作成した。
すなわち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(分子量214.26)0.3モルを6%水酸化ナトリウム水溶液550ミリリットルに溶解した溶液と塩化メチレン250ミリリットルとを混合して攪拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ミリリットル/分の割合で15分間吹き込んだ。次いで、この反応溶液を静置分離し、有機相に重合度2〜4であり、分子末端にクロロホルメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。
次いで、得られたオリゴマー溶液に塩化メチレンを加えて450ミリリットルとした後、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(分子量200.23)0.7モルを8%濃度の水酸化ナトリウム水溶液300ミリリットルに溶解した溶液と混合し、これに分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール3gを加えた。次いで、この混合液を攪拌しながら、触媒として7%トリエチルアミンを2ミリリットル加え28℃において攪拌下に1.5時間反応を行った。
次いで、反応終了後に、反応生成物を塩化メチレン1リットルで2回、0.01規定塩酸1リットルで1回、水1リットル2回の順に洗浄し、有機相をメタノール中に投下して再沈精製を行った。
2.評価
(1)95%光応答性の評価
得られた積層型電子写真感光体における95%光応答性を評価した。
すなわち、常温常湿環境下(温度:23℃、相対湿度:50%RH)において、得られた積層型電子写真感光体を、ドラム感度試験機(GENTEC(株)製)を用いて、コロナ放電により、表面電位が−700Vになるように帯電させた。
次いで、バンドパスフィルターを用いて、波長780nm、半値幅20nmに単色化するとともに、光強度が、光照射から0.3msec後に表面電位が−100Vとなる光量を、積層型電子写真感光体の表面に対して露光した。
次いで、表面電位が光照射から−130Vになるまでの時間(95%光応答性)を測定し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:95%光応答性が10msec未満の値である。
△:95%光応答性が10〜20msec未満の値である。
×:95%光応答性が20msec以上の値である。
(2)明電位の評価
また、得られた積層型電子写真感光体における明電位を評価した。
すなわち、負帯電反転現像プロセスを採用したプリンタ(沖データ(株)製MicroLine−22)におけるイメージングユニットから、現像手段を取り外し、そこに電位測定装置を装着して、電位測定用のイメージングユニットを作成した。かかる電位測定装置は、イメージングユニットの現像位置に対して、電位測定プローブを配置する構成とした。また、かかる電位測定プローブを、電子写真感光体の軸方向における中央に対して配置し、電位測定プローブと電子写真感光体表面との距離は、5mmとした。
次いで、常温常湿環境下(温度:23℃、相対湿度:50%RH)において、1%原稿にて10,000枚プリントした後の積層型電子写真感光体を、上述した電位測定用のイメージングユニットに装着し、負帯電させて、ベタ黒画像に相当する露光を行い、かかる露光部の電位を測定した。なお、得られた測定値は負の値であったが、その絶対値(正の値)を明電位(V)とするとともに、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:明電位の値が40V未満の値である。
△:明電位の値が40〜50V未満の値である。
×:明電位の値が50V以上の値である。
(3)耐クラック性の評価
また、得られた積層型電子写真感光体における耐クラック性を評価した。
すなわち、得られた積層型電子写真感光体表面における10箇所に対して、油脂(オレイン酸トリグリセリド)を付着させて、2日間放置した後、光学顕微鏡を用いて観察した、クラックの発生具合を確認し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:クラック発生箇所が0箇所である。
△:クラック発生箇所が1〜3箇所である。
×:クラック発生箇所が4箇所以上である。
(4)溶解性の評価
また、電荷輸送層において用いたポリカーボネート樹脂のテトラヒドロフランに対する溶解性を評価した。
すなわち、電荷輸送層において用いたポリカーボネート樹脂を、テトラヒドロフランに対して、濃度が28重量%となるように添加して、1日間ロールミルにて撹拌した。次いで、撹拌後のテトラヒドロフランにおいて当該ポリカーボネート樹脂の溶解具合を目視にて確認し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:全て溶解している。
×:一部溶解していない。
(5)総合評価
また、上述した95%光応答性、明電位、耐クラック性及び溶解性の各評価の総合評価を行った。
すなわち、以下の基準に沿って、総合評価を行った。
○:上述した4つの評価において、全て○の評価を受けている
×:上述した4つの評価において、×または△の評価を1つ以上受けている。
[実施例2]
実施例2においては、電荷輸送層における結着樹脂を製造する際に、実施例1における2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンの添加量0.3モルを0.5モルに変更し、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンの添加量0.7モルを0.5モルに変更した。そして、式(14)におけるモル比a:b=30:70が、a:b=50:50であって、粘度平均分子量が33800であるポリカーボネート樹脂を得た。それ以外は、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例3においては、電荷輸送層における結着樹脂を製造する際に、実施例2におけるp−tert−ブチルフェノールの添加量3gを5.8gに変更して、粘度平均分子量が68700であるポリカーボネート樹脂を得た。それ以外は、実施例2と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例4においては、電荷輸送層における結着樹脂を製造する際に、実施例1における2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンの添加量0.3モルを0.7モルに変更し、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンの添加量0.7モルを0.3モルに変更した。そして、式(14)におけるモル比a:b=30:70が、a:b=70:30であって、粘度平均分子量が34000であるポリカーボネート樹脂を得た。それ以外は、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例5においては、正孔輸送剤として、式(11)で表される正孔輸送剤(HTM−2)を用いたほかは、実施例2と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例6においては、正孔輸送剤として、式(12)で表される正孔輸送剤(HTM−3)を用いたほかは、実施例2と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例7においては、正孔輸送剤として、式(13)で表される正孔輸送剤(HTM−4)を用いたほかは、実施例2と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[参考例8]
参考例8においては、電荷輸送層における結着樹脂を製造する際に、実施例2における2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに変更して、下記式(15)で表される粘度平均分子量が34100であるポリカーボネート樹脂を得た。それ以外は、実施例2と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、下記式(15)で表されるポリカーボネート樹脂について説明すると、その左側の構成単位は、一般式(1)における置換基A1がメチル基であり、置換基A2もメチル基であるビスフェノールAに由来する構成単位である。また、右側の構成単位は、ビスフェノールFに由来する構成単位である。そして、これらの構成単位を、一般式(1)におけるモル比a:bが50:50となるように共重合させてある。
[比較例1]
比較例1においては、電荷輸送層における結着樹脂を製造する際に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(分子量200.23)1モルを8%水酸化ナトリウム水溶液1.0リットルに溶解した溶液と塩化メチレン700ミリリットルとを混合して攪拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ミリリットル/分の割合で15分間吹き込んだ。これに分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール3gを加えた。次いで、この混合液を攪拌しながら触媒として7%トリエチルアミンを2ミリリットル加え28℃において攪拌下に1.5時間反応を行った。
次いで、反応終了後に、反応生成物を塩化メチレン1リットルで2回、0.01規定塩酸1リットルで1回、水1リットル2回の順に洗浄し、有機相をメタノール中に投下して再沈精製を行った。そして、下記式(16)で表される粘度平均分子量が34800であるポリカーボネート樹脂を得た。それ以外は、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、下記式(16)で表されるポリカーボネート樹脂はビスフェノールFに由来する構成単位のみからなる重合体である。
[比較例2]
比較例2においては、電荷輸送層における結着樹脂を製造する際に、実施例1における2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンの添加量0.3モルを0.1モルに変更し、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンの添加量0.7モルを0.9モルに変更した。そして、式(14)におけるモル比a:b=30:70が、a:b=10:90であって、粘度平均分子量が34700であるポリカーボネート樹脂を得た。それ以外は、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例3]
比較例3においては、電荷輸送層における結着樹脂を製造する際に、実施例1における2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンの添加量0.3モルを0.9モルに変更し、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンの添加量0.7モルを0.1モルに変更した。そして、式(14)におけるモル比a:b=30:70が、a:b=90:10であって、粘度平均分子量が35400であるポリカーボネート樹脂を得た。それ以外は、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
[比較例4]
比較例4においては、電荷輸送層における結着樹脂を製造する際に、1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン1モルを8%水酸化ナトリウム水溶液1.0リットルに溶解した溶液と塩化メチレン700ミリリットルとを混合して攪拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ミリリットル/分の割合で15分間吹き込んだ。これに分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール3gを加えた。次いで、この混合液を攪拌しながら触媒として7%トリエチルアミンを2ミリリットル加え28℃において攪拌下に1.5時間反応を行った。
次いで、反応終了後に、反応生成物を塩化メチレン1リットルで2回、0.01規定塩酸1リットルで1回、水1リットル2回の順に洗浄し、有機相をメタノール中に投下して再沈精製を行った。そして、下記式(17)で表される粘度平均分子量が32200であるポリカーボネート樹脂を製造して用いたほかは、実施例1と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、下記式(17)で表されるポリカーボネート樹脂はビスフェノールZに由来する構成単位のみからなる重合体である。
[比較例5]
比較例5においては、電荷輸送層における結着樹脂を製造する際に、実施例2における2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを4,4´−ジヒドロキシテトラフェニルメタンに変更した。そして、下記式(18)で表される粘度平均分子量が36000であるポリカーボネート樹脂を得た。それ以外は、実施例2と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、下記式(18)で表されるポリカーボネート樹脂について説明すると、その左側の構成単位は、一般式(1)における置換基A1がフェニル基であり、置換基A2もフェニル基であるビスフェノールに由来する構成単位である。また、右側の構成単位は、ビスフェノールFに由来する構成単位である。そして、これらの構成単位を、一般式(1)におけるモル比a:bが50:50となるように共重合させてある。
[比較例6]
比較例6においては、正孔輸送剤として、下記式(19)で表される正孔輸送剤(HTM−5)を用いたほかは、実施例2と同様に積層型電子写真感光体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
本発明にかかる積層型電子写真感光体及びそれを用いた画像形成装置によれば、積層型電子写真感光体において、その電荷輸送層における結着樹脂を、所定のポリカーボネート樹脂とするとともに、かかる積層型電子写真感光体における光応答性を所定の範囲とすることにより、優れた耐クラック性とともに、優れた感度特性を得ることができるようになった。
したがって、本発明の積層型電子写真感光体及びそれを用いた画像形成装置は、複写機やプリンター等各種画像形成装置における性能を向上させるだけでなく、電子写真感光体の長寿命化を実現して、経済的効果にも著しく寄与することが期待される。
(a)〜(c)は、積層型電子写真感光体の構成を説明するために供する図である。 bの割合と、光応答性と、の関係を説明するために供する図である。 bの割合と、明電位と、の関係を説明するために供する図である。 bの割合と、耐クラック性と、の関係を説明するために供する図である。 積層型電子写真感光体を備えた画像形成装置を説明するために供する図である。
符号の説明
20:積層型感光体
20´:積層型感光体
20´´:積層型感光体
22:電荷輸送層
24:電荷発生層
25:中間層
40:複写機
41:画像形成ユニット
41a:画像形成部
41b:給紙部
42:排紙ユニット
43:画像読取ユニット
43a:光源
43b:光学素子
44:原稿給送ユニット
44a:原稿載置トレイ
44b:原稿給送機構
44c:原稿排出トレイ
51:感光体ドラム
52:帯電器
53:露光源
54:現像器
55:転写ローラ
56:クリーニング装置
57:定着ユニット

Claims (5)

  1. 導電性基体上に、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、が設けられた積層型電子写真感光体であって、
    前記電荷輸送層における結着樹脂を、下記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂とするとともに、
    前記電荷輸送層が、下記一般式(2)〜(5)のいずれかで表される正孔輸送剤を含有し、かつ、
    前記積層型電子写真感光体の表面を絶対値が700Vとなるように帯電させた後、かかる表面電位の絶対値が、光照射から0.3msec後に100Vとなる光量(波長780nm)を露光した場合に、前記表面電位の絶対値が130Vとなるのに要する時間(95%光応答性)を20msec以下の値とすることを特徴とする積層型電子写真感光体。
    (一般式(1)中、A1及びA2は、それぞれ独立した置換基であって、水素原子またはメチル基であり、かつ、A 1 またはA 2 のうちのいずれか一方のみが、メチル基であり、モル比a:bは、20:80〜80:20の範囲内の値である。)
    (一般式(2)中、R 1 〜R 12 はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR 13 (R 13 は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基、であり、R 1 〜R 5 、R 6 〜R 10 、R 11 とR 12 はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、Ar 1 は水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、nは1〜2の整数である。)
    (一般式(3)中、R 14 〜R 22 はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR 23 (R 23 は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基であり、また、R 14 〜R 18 、R 19 とR 20 、R 21 とR 22 はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、さらに、R 16 およびR 20 は上記置換基に加えて、下記一般式(3´)で表される置換基であってもよく、X 1 は置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環水素基である。)
    (一般式(3´)中、Ar 2 、Ar 3 は水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、cは0〜2の整数である。)
    (一般式(4)中、R 24 〜R 34 はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR 35 (R 35 は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基であり、また、R 24 〜R 28 、R 29 とR 30 、R 31 とR 32 、R 33 とR 34 はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、さらに、R 26 は上記置換基に加えて、下記一般式(4´)で表される置換基であってもよく、X 2 は置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環水素基である。)
    (一般式(4´)中、Ar 4 、Ar 5 は水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、dは0〜2の整数である。)
    (一般式(5)中、R 36 〜R 44 はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、−OR 45 (R 45 は炭素数1〜10のアルキル基、パーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である)で表される基であり、また、R 36 〜R 40 、R 41 とR 42 、R 43 とR 44 はそれぞれ互いに2つの置換基が連結して飽和または不飽和の環を形成してもよく、Ar 6 、Ar 7 は、水素原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、eは0〜2の整数である。
  2. 前記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を10,000〜100,000の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の積層型電子写真感光体。
  3. 前記積層型電子写真感光体を負帯電型とすることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型電子写真感光体。
  4. 前記電荷輸送層が正孔輸送剤を含有するとともに、当該正孔輸送剤の分子量を500〜1500の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層型電子写真感光体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層型電子写真感光体を備えるとともに、当該積層型電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段をそれぞれ配置することを特徴とする画像形成装置。
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