JP4295739B2 - 湿式現像用電子写真感光体および湿式現像用画像形成装置 - Google Patents

湿式現像用電子写真感光体および湿式現像用画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、積層型湿式現像用電子写真感光体およびそれを備えた湿式現像用画像形成装置に関し、特に、耐溶剤性や感度特性に優れた積層型湿式現像用電子写真感光体およびそれを備えた湿式現像用画像形成装置に関する。
従来、画像形成装置等に使用される湿式現像用電子写真感光体として、電荷輸送剤(正孔輸送剤、電子輸送剤)、電荷発生剤、および結着樹脂等の有機感光体材料からなる有機感光体が広く使用されている。かかる有機感光体は、従来の無機感光体に比べて、製造や構造が容易である。
しかしながら、従来の湿式現像用電子写真感光体は、アイソパーと呼ばれる炭化水素系溶媒(液体現像剤)によって、短時間で侵されやすいという問題が見られた。
そこで、本出願人は、結着樹脂と、電荷輸送剤と、電荷発生剤と、を含む感光体層を備えた湿式現像用電子写真感光体であって、結着樹脂として、下記一般式(42)で表される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート樹脂を使用することにより、耐溶剤性に優れた湿式現像用電子写真感光体を既に提案している。(例えば、特許文献1)
(一般式(42)中のR58およびR59は、同一または異なっても良い、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
また、耐摩耗性や耐傷性に優れた電子写真特性を長時間にわたって維持することができる、一般式(43)および(44)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂を使用した電子写真感光体が開示されている(例えば、特許文献2)。
(一般式(44)中、R60は各々独立にハロゲン原子または、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリール置換アルケニル基および縮合多環式炭化水素基の群から選択される一価の基を示し、fは0〜4の整数を示す。)
特開2002−116560号(特許請求の範囲等) 特開2001−215739号(特許請求の範囲等)
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された湿式現像用電子写真感光体は、それぞれ湿式現像用電子写真感光体として、未だ耐溶剤性が不十分であり長時間使用した場合に、炭化水素系溶媒(液体現像剤)によって浸されやすく、正孔輸送剤が溶出しやすいという問題が見られた。
そこで、本発明者らは、積層型湿式現像用電子写真感光体において、結着樹脂として特定のポリカーボネート樹脂を使用するとともに、特定分子量の正孔輸送剤を併用することにより、長時間にわたって電荷輸送剤の溶出量を著しく低下させ、優れた感度特性を維持するという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、長時間にわたって耐溶剤性や、感度特性に優れた積層型湿式現像用電子写真感光体およびそのような積層型湿式現像用電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供することにある。
本発明によれば、電荷発生剤を含有する電荷発生層と、正孔輸送剤および結着樹脂を含有する電荷輸送層と、を備えた積層型湿式現像用電子写真感光体であって、正孔輸送剤が、分子末端にジフェニルエテニル基を有するとともに、当該正孔輸送剤の分子量を1001.3以上の値とし、かつ、結着樹脂として、下記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂を含む積層型湿式現像用電子写真感光体が提供され、上述した問題点を解決することができる。
(一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール置換アルケニル基、あるいは置換または非置換の炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基であり、R7は、水素原子、置換または非置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、あるいはトリフルオロメチル基である。)
また、本発明の積層型湿式現像用電子写真感光体を構成するにあたり、一般式(1)中のR5およびR6が水素原子であることが好ましい。
また、本発明の積層型湿式現像用電子写真感光体を構成するにあたり、正孔輸送剤が一般式(2)または(3)で表される構造を有することが好ましい。
(一般式(2)中のR8〜R14は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、下記一般式(4)で表される置換不飽和炭化水素基、−OR15(R15は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)で表される置換基、あるいはR8〜R14のうち二つ以上が結合または縮合して形成した縮合多環式炭化水素基である。但し、一般式(2)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(一般式(3)中のR16〜R21は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、下記一般式(4)で表される置換不飽和炭化水素基、−OR22(R22は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)で表される置換基、あるいはR16〜R21のうち二つ以上が結合または縮合して形成した縮合多環式炭化水素基である。但し、一般式(3)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(一般式(4)中のR23およびR24は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、繰り返し数cは0〜2の整数である。)
また、本発明の積層型湿式現像用電子写真感光体を構成するにあたり、正孔輸送剤が下記一般式(5)〜(8)で表される化合物を少なくとも1種以上含むことが好ましい。
(一般式(5)中のR25〜R32は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、X1は、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基であり、繰り返し数dは、0〜2の整数である。但し、一般式(5)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(一般式(6)中のR33〜R40は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、一般式(4)で表される置換不飽和炭化水素基、−OR41(R41は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)で表される置換基、あるいは複数のR33〜R40のうち二つ以上が結合または縮合して形成した縮合多環式炭化水素基である。但し、一般式(6)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(一般式(7)中のR42〜R47は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、一般式(4)で表される置換不飽和炭化水素基、−OR48(R48は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)で表される置換基、あるいは複数のR42〜R47のうち二つ以上が結合または縮合して形成した縮合多環式炭化水素基であり、X2は、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基である。但し、一般式(7)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(一般式(8)中のR49〜R55は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、一般式(4)で表される置換不飽和炭化水素基、あるいは−OR56(R56は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)で表される置換基、あるいはR49〜R55のうち二つ以上が結合または縮合して形成した縮合多環式炭化水素基であり、繰り返し数eは0〜2の整数であり、X3は、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基である。但し、一般式(8)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
また、本発明の積層型湿式現像用電子写真感光体を構成するにあたり、正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
また、本発明の積層型湿式現像用電子写真感光体を構成するにあたり、電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン(Y型)を含むことが好ましい。
また、本発明の積層型湿式現像用電子写真感光体を構成するにあたり、湿式現像の現像液として使用される炭化水素系溶媒に、室温で、2000時間の条件で浸漬した場合に、正孔輸送剤の溶出量が1×10-6g/cm3以下であることが好ましい。
また、本発明の別の態様は、上述したいずれかの積層型湿式現像用電子写真感光体を備えるとともに、当該積層型湿式現像用電子写真感光体の周囲に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を実施するためにの部位をそれぞれ配置し、かつ、現像工程において、炭化水素系溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて画像形成を行い積層型湿式現像用画像形成装置である。
本発明の湿式現像用積層型電子写真感光体によれば、特定分子量の正孔輸送剤と、特定の結着樹脂とを併用することにより、湿式現像の現像液として使用される炭化水素系溶媒に、長時間浸漬した場合であっても、正孔輸送剤の溶出量が少なく、かつ、感度特性にも優れた湿式現像用積層型電子写真感光体を提供することができる。
また、本発明の湿式現像用積層型電子写真感光体によれば、一般式(1)で表されるR5およびR6が水素原子であることにより、正孔輸送剤との相溶性に優れるため耐久性や感度特性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができる。また、このような構造のポリカーボネート樹脂であれば製造が容易であるため、優れた特徴を有する湿式現像用積層型電子写真感光体を安定して製造することができる。
また、本発明の湿式現像用積層型電子写真感光体によれば、正孔輸送剤として、一般式(2)または(3)で表される構造を有する化合物を使用することにより、特定の結着樹脂との相溶性に優れており、電荷発生剤から電荷輸送剤への注入効率が高いことから、耐久性や感度特性に優れた湿式現像用積層型電子写真感光体を提供することができる。
また、本発明の湿式現像用積層型電子写真感光体によれば、正孔輸送剤として、一般式(5)〜(8)で表される化合物を少なくとも1種以上含むことにより、特定の結着樹脂との相溶性にさらに優れており、電荷発生剤から電荷輸送剤への注入効率がさらに高くなることから耐久性や感度特性にさらに優れた湿式現像用積層型電子写真感光体を提供することができる。
また、本発明の湿式現像用積層型電子写真感光体によれば、正孔輸送剤の添加量を、所定範囲に制限することにより、正孔輸送剤の結晶化を有効に防ぐことができ、さらに感度特性にも優れた湿式現像用積層型電子写真感光体を提供することができる。
また、本発明の湿式現像用積層型電子写真感光体によれば、特定の電荷発生剤を使用することにより、比較的少量の添加であっても、所定の感度特性を長時間にわたって維持することができる。
また、本発明の湿式現像用電子写真感光体によれば、所定条件における正孔輸送剤の溶出量を制限することにより、比較的短時間(2000時間)において、耐溶剤性を、精度良く判定することができる。例えば、2000時間の浸漬試験により、10万枚の画像形成を実施した場合の耐溶剤性を推定することができる。
また、本発明の湿式現像用画像形成装置によれば、湿式現像用電子写真感光体に、特定の結着樹脂と、特定分子量の正孔輸送剤とを併用することにより、湿式現像液として使用される炭化水素系溶媒に、長時間浸漬した場合であっても、正孔輸送剤の溶出量が少なく、かつ、感度特性にも優れた湿式現像用積層型電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供することができる。
以下、本発明の湿式現像用積層型電子写真感光体および画像形成装置に関する実施の形態を、適宜図面を参照しながら、具体的に説明する。
第1の実施形態は、電荷発生剤を含有する電荷発生層と、正孔輸送剤および結着樹脂を含有する電荷輸送層と、を備えた積層型湿式現像用電子写真感光体であって、正孔輸送剤が、分子末端にジフェニルエテニル有するとともに、当該正孔輸送剤の分子量を1001.3以上の値とし、かつ、結着樹脂として、下記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂を含む積層型湿式現像用電子写真感光体である。
(一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール置換アルケニル基、あるいは置換または非置換の炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基であり、R7は、水素原子、置換または非置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、あるいはトリフルオロメチル基である。)
1.積層型感光体
図1(a)に示すように、積層型電子写真感光体20は、基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、分子量を900以上の値とする正孔輸送剤と、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂と、を含む塗布液を塗布し、それを乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製することができる。
また、上記構造とは逆に、図1(b)に示すように、基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。
ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図1(a)に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
積層型湿式現像用電子写真感光体は、上記電荷発生層および電荷輸送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の種類によって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。また、積層型の電子写真感光体であれば、感光体の残留電位が大きく低下しており、感度を向上させることができる。
なお、積層型感光体における感光体層の厚さに関しては、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
そして、このような感光体層が形成される基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブテン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等が挙げられる。
また、導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。
また、図1(c)に示すように、感光体層を形成する前に、かかる基体12上に、中間層25を予め形成しておくことも好ましい。この理由は、かかる中間層25を設けることによって、基体側の電荷が容易に感光体層へ注入されるのを防ぐと共に、感光体層を基体12上に強固に結着させ、基体12における表面上の欠陥を被覆し平滑化することができるためである。
さらに、基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、基体は、アルミニウム等のように、使用に際して十分な機械的強度を有するとともに、軽量であることが好ましい。
2.結着樹脂
(1)種類
本発明の積層型湿式現像用電子写真感光体に用いられる結着樹脂として、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂を使用することを特徴とする。
この理由は、ポリカーボネート樹脂を使用することにより、耐久性や耐熱性を高めることができるとともに、初期段階のみならず、長時間使用した場合においても所定の感度特性を維持することができるためである。また、かかるポリカーボネートであれば、炭化水素系溶媒に対して難溶であるとともに、撥油性も高いためである。その結果、感光体層表面と前述の炭化水素系溶媒との相互作用が小さくなって、長期間にわって、感光体層表面の外観変化が少なくなるためである。
また、一般式(1)中のR5およびR6が水素原子であることが好ましい。
この理由は、R5およびR6が水素原子であることにより、正孔輸送剤との間の相溶性が良好になって、現像液として使用される炭化水素系溶媒に長時間浸漬した場合であっても、正孔輸送剤の溶出量が極めて少なくすることができ、耐久性や感度特性に優れた湿式現像用積層型電子写真感光体を提供することができるためである。また、このような構造のポリカーボネート樹脂であれば製造が容易であるため、優れた特徴を有する湿式現像用積層型電子写真感光体を安定して製造することができる。
また、一般式(1)中のR7が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
この理由は、R7が特定置換基であるポリカーボネート樹脂であることにより、正孔輸送剤との間の相溶性がさらに良好になって、現像液として使用される炭化水素系溶媒に長時間浸漬した場合であっても、正孔輸送剤の溶出量が極めて少ない湿式現像用積層型電子写真感光体を提供することができるためである。
(2)具体例
ここで、一般式(1)で表される共重合ポリカーボネートの具体例としては、例えば、下記式(9)〜(12)で示される化合物(Resin−A〜Resin−D)が挙げられる。なお、式(10)で表される化合物は、記号*で表されている箇所で結合しており、共重合体であることを示している。
また、従来、湿式現像用電子写真感光体に使用されている種々の樹脂を併用することも好ましい。例えば、ビスフェノールZ型、ビスフェノールZC型、ビスフェノールC型、ビスフェノールA型等のポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
3.正孔輸送剤
(1)種類
本発明の湿式現像用積層型電子写真感光体に用いられる正孔輸送剤として、分子量を1001.3以上の値とする化合物を含むことを特徴とする。
この理由は、分子量がこのような数値以上であれば、特定の結着樹脂との相溶性が良好となり、また、現像液への溶出量が少なくなり、耐溶剤性や耐久性に優れた積層型湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。なお、正孔輸送剤の分子量は、Chem Draw Std version8(Cambridge Soft社製)を用いて化学構造式を元に算出することもできるし、あるいはマススペクトルを用いて算出することができる。
ここで、図2を参照して、正孔輸送剤の分子量と、正孔輸送剤の溶出量との関係を説明する。図2の横軸には、湿式現像用積層型電子写真感光体に用いられる正孔輸送剤の分子量が採って示してあり、縦軸には、後述する耐溶剤性評価で測定した正孔輸送剤の溶出量(g/cm3)を採って示してある。
かかる図2から理解できるように、正孔輸送剤の分子量が大きくなるほど正孔輸送剤の溶出量が小さくなることがわかる。さらに、正孔輸送剤の分子量が1001.3以上の値になると、正孔輸送剤の溶出量が1×10-6(g/cm3)以下になり、優れた耐溶剤性を示すことがわかる。
また、図3を参照して、正孔輸送剤の溶出量と、感度変化との関係を説明する。図3の横軸には、正孔輸送剤の溶出量(g/cm3)が採って示してあり、縦軸には、後述する感度評価で測定した湿式現像用積層型電子写真感光体の感度変化(V)を採って示してある。
かかる図3から理解できるように、正孔輸送剤の溶出量が1×10-6(g/cm3)以下の値になると、感度変化が5(V)以下の値になり、優れた感度特性を示すことがわかる。
よって、正孔輸送剤の分子量の値を所定以上の値に制御することにより、正孔輸送剤の溶出量を効果的に減らすことができるとともに、湿式現像用電子写真感光体の感度変化を著しく小さくすることができる。
ただし、正孔輸送剤の分子量が過度に大きくなると、感光層中での分散性が低下し、正孔輸送能が低下する場合がある。
したがって、正孔輸送剤の分子量を1001.3〜4000の範囲内の値とすることがより好ましく、1001.3〜2500の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、正孔輸送剤として、下記一般式(2)または(3)で表される構造を含むことが好ましい。
この理由は、正孔輸送剤としてこのような構造を含むことにより、特定のポリカーボネート樹脂との間の相溶性がさらに良好になり、また、電荷発生剤からの正孔の注入効率が高くなることから、耐久性や感度特性にさらに優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができる。
(一般式(2)中のR8〜R14は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、下記一般式(4)で表される置換不飽和炭化水素基、−OR15(R15は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)で表される置換基、あるいはR8〜R14のうち二つ以上が結合または縮合して形成した縮合多環式炭化水素基である。但し、一般式(2)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(一般式(3)中のR16〜R21は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、下記一般式(4)で表される置換不飽和炭化水素基、−OR22(R22は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)で表される置換基、あるいはR16〜R21のうち二つ以上が結合または縮合して形成した縮合多環式炭化水素基である。但し、一般式(3)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(一般式(4)中のR23およびR24は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、繰り返し数cは0〜2の整数である。)
また、正孔輸送剤の種類は、より具体的には、下記一般式(5)〜(8)で表される化合物を使用することが好ましい。
この理由は、分子内の所定箇所に特定のエナミン構造や、トリフェニルアミン構造を導入したスチルベン化合物を使用することにより、アイソパー(商品名)等に代表されるパラフィン系溶剤に対する耐溶剤性を著しく向上させることができるためである。したがって、湿式現像用電子写真感光体により、長期間にわたって安定した画像形成を実施することができる。
また、このような特定構造を分子末端に導入したスチルベン化合物を使用することにより、感度特性をさらに向上できるばかりでなく、機械的特性や成膜性についても向上することができるためである。
(一般式(5)中のR25〜R32は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1〜30のアリール基であり、X1は、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基であり、繰り返し数dは、0〜2の整数である。但し、一般式(5)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(一般式(6)中のR33〜R40は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、一般式(4)で表される置換不飽和炭化水素基、−OR41(R41は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)で表される置換基、あるいはR33〜R40のうち二つ以上が結合または縮合して形成した縮合多環式炭化水素基である。但し、一般式(6)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(一般式(7)中のR42〜R47は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、一般式(4)で表される置換不飽和炭化水素基、−OR48(R48は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)で表される置換基、あるいはR42〜R47のうち二つ以上が結合または縮合して形成した縮合多環式炭化水素基であり、X2は、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基である。但し、一般式(7)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(一般式(8)中のR49〜R55は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアルケニル基、一般式(4)で表される置換不飽和炭化水素基、あるいは−OR56(R56は炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)で表される置換基、あるいはR49〜R55のうち二つ以上が結合または縮合して形成した縮合多環式炭化水素基であり、繰り返し数eは0〜2の整数であり、X3は、置換または非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、あるいは炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基である。但し、一般式(8)で表される正孔輸送剤は、分子末端に少なくとも一つのジフェニルエテニル基を有している。
(2)具体例
一般式(5)〜(8)で表される化合物の一例として、例えば、下記式(13)〜(14)及び(16)〜(18)で示される化合物(HTM−A〜B及びD〜F)が挙げられる。
また、従来公知の正孔輸送剤を併用することも好ましい。かかる正孔輸送剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物や、縮合多環式化合物が挙げられる。
(3) 添加量
正孔輸送剤の添加量に関し、結着樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる正孔輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、正孔輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、かかる正孔輸送剤の添加量を30〜70重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
4.電荷発生層
(1)電荷発生剤
(1)−1 種類
本発明の電子写真感光体に使用される電荷発生剤としては、無金属フタロシアニン(τ型またはx型)、チタニルフタロシアニン(α型またはY型)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)、およびクロロガリウムフタロシアニン(II型)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
この理由は、電荷発生剤の種類を特定することにより、感度特性、電気特性および安定性等がより優れた積層型電子写真感光体を提供することができるためである。
(1)−2 具体例
これらの電荷発生剤のうち、具体的に、下記式(19)〜(22)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜D)を使用することがより好ましい。
また、本発明の電子写真感光体に使用される電荷発生剤のうち、チタニルフタロシアニン(Y型)を使用することがより好ましい。
この理由は、チタニルフタロシアニン(Y型)を使用することにより、優れた感度を有する電子写真感光体を提供することができるからである。
また、本発明の電子写真感光体に使用される電荷発生剤のうち、式(20)で表されるチタニルフタロシアニン(Y型)は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラック角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有さず、かつ示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴うピーク以外は、50℃から400℃までの温度変化のピークを有しないことが好ましい。
この理由は、チタニルフタロシアニン(Y型)が上述した物性を満たすことにより、有機溶媒中でのかかるチタニルフタロシアニンの結晶の安定性に優れており、結晶転移を抑えることができるためである。このようなチタニルフタロシアニン(Y型)を感光体塗布液に用いることにより、長期間にわたって良好な感度特性を維持する電子写真感光体を提供することができる。
また、本発明の電子写真感光体に使用される電荷発生剤のうち、式(20)で表されるチタニルフタロシアニン(Y型)の製造方法は、下記の工程(1)と(2)を含むことが好ましい。
工程(1): チタニルフタロシアニン化合物を水溶性有機溶媒中に加え、加熱下で一定時間、撹拌処理し、次いで前記撹拌処理よりも低温の温度条件下で一定時間、液を静置して安定化処理する顔料化前処理の工程
工程(2): 前記水溶性有機溶媒を除去して得たチタニルフタロシアニン化合物の粗結晶を溶媒に溶解したのち、この溶液を貧溶媒中に滴下してチタニルフタロシアニン化合物を再結晶させ、次いで水の存在下、非水系溶媒中でミリング処理する顔料化の工程
また、かかるチタニルフタロシアニン製造方法の工程(2)は、下記工程(2´)で表される製造方法を用いることも好ましい。
工程(2´): 上記工程(1)で得られた顔料化前処理液の水溶性有機溶媒を除去して得たチタニルフタロシアニン化合物の粗結晶を、アシッドペースト法にて処理し、得られた低結晶性チタニルフタロシアニン化合物を、水の存在下、非水系溶媒中でミリング処理する工程
また、工程(1)で用いられる水溶性有機溶媒としては、種々の有機溶媒が使用可能である。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオン酸、酢酸、N−メチルピロリドン、エチレングリコール等の1種または2種以上が挙げられる。なお水溶性有機溶媒には、少量であれば、非水溶性の有機溶媒を添加してもよい。
また、顔料化前処理のうち撹拌処理の条件は特に限定されないが、およそ70〜200℃程度の温度範囲の一定温度条件下で、1〜3時間程度の撹拌処理を行うのが好ましい。
また、撹拌処理後の安定化処理の条件も特に限定されないが、およそ10〜50℃程度、特に好ましくは23±1℃前後の温度範囲の一定温度条件下で、5〜10時間程度、液を静置して安定化させるのが好ましい。
また、上記顔料化前処理の終了後、水溶性有機溶媒を除去して得たチタニルフタロシアニン化合物の粗結晶を、さらに常法に従って溶媒に溶解したのち貧溶媒中に滴下して再結晶させ、ついでろ過、水洗、ミリング処理、ろ過、乾燥などの工程を経て顔料化することが好ましい。
ここでミリング処理は、水洗後の固体を乾燥させずに水が存在した状態で、非水系溶媒中に分散して撹拌する処理である。粗結晶を溶解する溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、臭化エチル、臭化ブチル等のハロゲン化炭化水素類、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸等のトリハロ酢酸類、および硫酸等の1種または2種以上の任意の組み合わせが挙げられる。
また再結晶のための貧溶媒としては、例えば水が挙げられる他、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類やアセトン、ジオキサン等の水溶性有機溶媒が挙げられ、これらがそれぞれ1種単独で、もしくは2種以上の任意の組み合わせで使用される。さらにミリング処理のための非水系溶媒としては、例えばクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒が挙げられる。
その他、アシッドペースト法に使用する酸としては、例えば濃硫酸、スルホン酸等が挙げられる。またミリング処理に使用する非水系溶媒は前記と同様である。
また、式(20)で表されるチタニルフタロシアニンは、下記反応式(1)に示されるように、式(23)で表されるフタロニトリルと、式(24)で表されるチタンアルコキシドとを反応させるか、あるいは、下記反応式(2)で示されるように、式(25)で表される1,3−ジイミノインドリンと、式(24)で表されるチタンアルコキシドとを反応させ、合成することが好ましい。
(反応式(1)中のR57は、炭素数1〜6のアルキル基である。)
(反応式(2)中のR57は、炭素数1〜6のアルキル基である。)
また、従来公知の電荷発生剤を使用することも好ましい。かかる電荷発生剤の種類としては、オキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体や、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンといった無機光導電剤料等の一種単独または二種以上の混合物が挙げられる。
また、電荷発生層を電荷発生層用塗布液を作成し、塗布及び乾燥によって形成する方法において、電荷発生剤の添加量は、電荷発生層中の結着樹脂を100重量部としたとき、5〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる複数の電荷発生剤の添加量が5重量部未満の値になると、量子収率を高める効果が不十分となり、電子写真感光体の感度、電気特性、安定性等を向上させることができなくなるためである。一方、かかる複数の電荷発生剤の添加量が500重量部を超えた値になると、赤外ないし近赤外領域に吸収波長を有する光に対する吸光係数が低下し、感光体の感度、電気特性、安定性等がそれに伴い低下する場合があるためである。
したがって、電荷発生剤の添加量を30〜300重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
(2)結着樹脂
電荷発生層に使用される結着樹脂としては、従来、感光体層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。結着樹脂の種類としては、例えば、上述した結着樹脂の説明で記載したものが挙げられる。
5.電子輸送剤
(1) 種類
また、本発明の積層型電子感光体の電荷輸送層に、さらに電子輸送剤を含んでもよい。この理由は、電荷輸送層に電子輸送剤を含むことにより、電子輸送層に蓄積した電子を効率よく輸送することができ、残留電位を低下させて感度特性を向上させることができるためである。
また、電子輸送剤の種類としては、ナフタレンカルボン酸ジイミド誘導体、ナフトキノン誘導体、及びアゾキノン誘導体からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
この理由は、電子輸送剤として、特定の化合物を使用することにより、電子受容性に優れており、感度特性や耐溶剤性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
また、正孔輸送剤とCT錯体を形成することができる電子輸送剤を選択することも好ましい。この理由は、電子輸送剤と正孔輸送剤がCT錯体を形成することにより、炭化水素系溶媒(液体現像剤)によって浸され正孔輸送剤が溶出を抑制することができるためである。
また、電子輸送剤の具体例としては、高い電子輸送能を有する種々の化合物、例えば下記式(26)〜(36)で表される化合物(ETM−A〜K)があげられる。
また、従来公知の電子輸送剤を併用することも好ましい。かかる電子輸送剤の種類としては、ジフェノキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体のほか、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の電子受容性を有する種々の化合物が挙げられ、1種単独または2種以上をブレンドして使用することが好ましい。
また、これらの化合物のうち、電界強度が5×105V/cmにおける電子移動度が1.0×10-8cm2/V/sec以上である化合物がより好ましい。
(2)添加量
また、電子輸送剤を添加量する場合には、結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる複数の電子輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる複数の電子輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、電子輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、電子輸送剤を添加量する場合は、電子輸送剤の添加量を20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、電子輸送剤の添加量を定めるにあたり、上述した正孔輸送剤の添加量を考慮することが好ましい。より具体的には、電子輸送剤(全ETM)の添加割合(全ETM/全HTM)を、正孔輸送剤(全HTM)に対して、0.25〜1.3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる全ETM/全HTMの比率がかかる範囲外の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。
したがって、かかる全ETM/全HTMの比率を0.5〜1.25の範囲内の値とすることがより好ましい。
6.添加剤
また、感光体層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光体層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
7.中間層
本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、基体上に中間層が形成してあることが好ましい。この理由は、基体上に中間層を形成することにより、感光体層と基体との間の接着性を向上することができるとともに、基体表面を平滑化することができるため、基体表面の欠陥を被覆することができ、さらに残留電位を低下することができるためである。
(1)結着樹脂
中間層に使用される結着樹脂としては、従来、感光体層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。結着樹脂の種類としては、例えば、上述した結着樹脂の説明で記載したものが挙げられる。
また、中間層に使用させる結着樹脂としては、耐溶剤性に優れた樹脂がより好ましい。この理由は、中間層に使用される結着樹脂の耐溶剤性が低いと、中間層の上に塗布される感光体層に溶解してしまい、中間層を適当に作成するのが困難になる場合があるからである。具体的には、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリアミド、ポリエステル、マレイン酸樹脂、イソシアネート樹脂及びシリコン樹脂などのように3次元網目構造を形成する樹脂が挙げられる。また、耐溶剤性にさらに優れていることから、フェノール樹脂、ポリアミドがより好ましい。
(2)添加剤
中間層に含有させる添加剤としては、製造時の沈降等が問題とならない範囲であって、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止したり、分散性向上等を図ったり、導電性を向上させる目的のために、各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を少量添加することも好ましい。
また、中間層に含有させる添加剤の種類としては、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が挙げられる。
また、微粉末等の添加剤を添加する場合、その平均粒径を0.01〜3μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかる粒径が大きすぎると中間層の凹凸が大きくなったり、電気的に不均一な部分が生じたり、さらには、画質欠陥を生じ易くなったりする場合があるためである。一方、かかる粒径が小さすぎると、十分な光散乱効果が得られない場合があるためである。
なお、微粉末等の添加剤を添加する場合、その添加量を、中間層の固形分に対して重量換算で70重量%以下の値、0.01〜50重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.01〜30重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、中間層に従来公知の電荷輸送剤、電荷発生剤等を含有させることも好ましい。また、これらの化合物は単独または2種以上を混合して使用してもよい。例えば、電荷輸送剤および電荷発生剤等の種類としては、上述した正孔輸送剤、電子輸送剤、および電荷発生剤の説明で記載したものが挙げられる。
(3)膜厚
また、中間層は膜厚を厚くすることによって、支持基材における凹凸の隠蔽性が高まるため、スポット状の画質欠陥は低減する方向にあって好ましいが、それとは逆に、残留電位の上昇等の電気的特性が低下する方向にある。
したがって、中間層の膜厚を0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましく、1〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
8.製造方法
本発明の積層型感光体層の製造方法に関し、以下のように電荷輸送層用塗布液と、電荷発生層用塗布液とを作成して、それぞれ基体上に塗布した後、乾燥させて製造することが好ましい。
(1)塗布液作成工程
塗布液作成工程は、例えば、結着樹脂と、正孔輸送剤と、溶剤と、からなる電荷輸送層用塗布液、および結着樹脂と、電荷発生剤と、溶剤と、からなる電荷発生層用塗布液と、をそれぞれ作成する工程である。例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合し、塗布液とすることが好ましい。
より具体的には、電荷輸送層用塗布液の固形分濃度が10〜30重量%の範囲内の値、電荷発生層用塗布液の固形分濃度が1〜10重量%の範囲内の値の塗布液を作成することが好ましい。この理由は、電荷輸送層用塗布液の固形分濃度は10重量%未満の値になると、被膜欠陥を生じるおそれがあるためであり、一方、塗布液の固形分濃度は30重量%を超えると、層むらが生じやすくなり、感光体として均一な厚さを有する薄膜を形成することが困難となる場合があるためである。また、同様に電荷発生層用塗布液の固形分濃度も1重量%未満の値になると被膜欠陥を生じるおそれがあり、固形分濃度が10重量%を超えると、層むらを生じやすくなり、感光体として均一な厚さを有する薄膜を形成することが困難となる場合がある。
また、電荷輸送層用塗布液および電荷発生層用塗布液を作成するための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能である。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤等の分散性や、感光体層表面における平滑性を良くするために、塗布液を作成する際に、界面活性剤やレベリング剤等を添加することも好ましい。
(2)塗布工程および乾燥工程
第1塗布工程および第1乾燥工程と、第2塗布工程および第2乾燥工程とを設けて、電荷輸送層と電荷発生層からなる感光体層を形成することが好ましい。例えば、図1(a)に示すように、第1塗布工程により電荷発生層用塗布液を塗布し、第1乾燥工程により電荷発生層用塗布膜を乾燥させて、基体12の上に電荷発生層24を形成し、次いで、第2塗布工程により電荷輸送層用塗布液を塗布し、第2乾燥工程により電荷輸送層用塗布膜を乾燥させて、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することが好ましい。
(2)−1 塗布工程
また、塗布工程を実施するにあたり、基体上に、塗布液を直接的に塗布することも好ましいし、あるいは、中間層を介して間接的に塗布することも好ましい。
また、塗布方法としては、均一な厚さの感光体層を形成するために、例えば、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、バーコーター、ディップコーター、ドクターブレード等を用いることが好ましい。
なお、電荷発生層は残留電位を低くするため、電荷輸送層よりも薄く塗膜を形成するのが好ましい。
(2)−2 乾燥工程
また、塗布工程の後、乾燥工程において、高温乾燥機や減圧乾燥機等を用いて、例えば、60℃〜150℃の乾燥温度で乾燥させることが好ましい。この理由は、かかる乾燥温度が60℃未満の値になると、乾燥時間が過度に長くなって、均一な厚さを有する感光体層を効率的に形成することが困難になる場合があるためである。一方、かかる乾燥温度が150℃を超えると、感光体が熱分解する場合があるためである。
また、本発明の積層型電子写真感光体を構成するにあたり、基体上に中間層を形成する場合は、図1(c)に示すように、基体12の上に、中間層25を形成し、次いで、電荷発生層および電荷輸送層を形成することが好ましい。
なお、塗布液作成工程、塗布工程および乾燥工程の条件については、電荷発生層および電荷輸送層の製造方法に準じることができる。なお、中間層の塗布液は、例えば結着樹脂と、添加剤と、から作成することが好ましい。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態の電子写真感光体を含む画像形成装置である。
なお、この画像形成装置の例では、電子写真感光体として、本発明の積層型電子写真感光体を用いた場合を想定して、説明する。
第2の実施形態の画像形成方法を実施するにあたり、図4に示すような画像形成装置である複写機40を好適に使用することができる。かかる複写機40は、画像形成ユニット41、排紙ユニット42、画像読取ユニット43、及び原稿給送ユニット44を備えている。また、画像形成ユニット41には、画像形成部41a及び給紙部41bがさらに備えられている。そして、図示された例では、原稿給送ユニット44は、原稿載置トレイ44a、原稿給送機構44b、及び原稿排出トレイ44cを有しており、原稿載置トレイ44a上に載置された原稿は、原稿給送機構44bによって画像読取位置Pに送られた後、原稿排出トレイ44cに排出される。
そして、原稿が原稿読取位置Pに送られた段階で、画像読取ユニット43において、光源43aからの光を利用して、原稿上の画像が読み取られる。すなわち、CCD等の光学素子43bを用いて、原稿上の画像に対応した画像信号が形成される。
一方、給紙部41bに積載された記録用紙(以下、単に用紙と呼ぶ。)Sは、一枚ずつ画像形成部41aに送られる。この画像形成部41aには、像担持体である感光体ドラム51が備えられており、さらに、この感光体ドラム51の周囲には、帯電器52、露光器53、現像器54、及び転写ローラ55、並びにクリーニング装置56が、感光体ドラム51の回転方向に沿って配置されている。
これらの構成部品のうち、感光体ドラム51は、図中、実線矢印で示す方向に回転駆動されて、帯電器52により、その表面が均一に帯電される。その後、前述の画像信号に基づいて、露光器53により感光体ドラム51に対して露光プロセスが実施され、この感光体ドラム51の表面において静電潜像が形成される。この静電潜像に基づき、現像器54によりトナーを付着させて現像し、感光体ドラム51の表面にトナー像を形成する。そして、このトナー像は、感光体ドラム51と転写ローラ55とのニップ部に搬送される用紙Sに転写像として転写される。次いで、転写像が転写された用紙Sは、定着ユニット57に搬送されて、定着プロセスが行われる。
ここで、定着後の用紙Sは、排紙ユニット42に送られることになるが、後処理(例えば、ステイプル処理等)を行う際には、用紙Sは中間トレイ42aに送られた後、後処理が実施される。その後、用紙Sは、画像形成装置の側面に設けられた排出トレイ部(図示せず)に排出される。一方、後処理を行わない場合には、用紙Sは中間トレイ42aの下側に設けられた排紙トレイ42bに排紙される。
なお、中間トレイ42a及び排紙トレイ42bは、いわゆる胴内排紙部として構成されている。
上述のようにして、転写が行われた後、感光体ドラム51に残留する残留トナー(及び紙粉)については、クリーニング装置56で除去される。すなわち、感光体ドラム51がクリーニングされる一方、残留トナーについては、廃トナーコンテナ(図示せず)に回収されることになる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。
[実施例1]
(1)湿式現像用電子写真感光体の作成
電荷発生剤として、式(20)で表されるY型オキソチタニルフタロシアニン(CGM−B)を1重量部と、結着樹脂としてポリビニルブチラールエスレックBM−1(積水化学工業)1重量部と、ジアセトンアルコールを50重量部と、を収容した後、ボールミルにて、48時間混合分散させ、電荷発生層用途工液を作成した。次いで、得られた塗布液を、直径30mm、長さ254mmのアルミニウム素管上、ディッピングにより塗工し、その後、70℃、10分間の条件で乾燥させて、平均膜厚が0.3μmの電荷発生層を形成した。
さらに、正孔輸送剤として、式(13)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)を50重量部と、結着樹脂として、式(9)で表される粘度平均分子量が50,000のポリカーボネート樹脂(Resin−A)を100重量部と、レベリング剤としてのジメチルシリコーンオイルであるKF−96−50CS(信越化学工業製)を0.1重量部と、溶媒としてのテトラヒドロフラン700重量部と、を収容した後、48時間混合分散させ、電荷輸送用塗工液を作成した。次いで、得られた塗工液を、電荷発生層上にディッピングにより塗工し、その後、130℃、30分間の条件で乾燥させて、平均膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、実施例1の積層型感光体を作成した。
また、共重合ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、オストワルド粘度計によって、極限粘度[η]を求め、Schnellの式によって、[η]=1.23×10-40.83より算出した。なお、[η]は、20℃で、塩化メチレン溶液を溶媒として、濃度(C)が6.0g/dm3となるようにポリカーボネート樹脂を溶解させて得られたポリカーボネート樹脂溶液から測定することができる。
(2)評価
(2)−1 感度評価
得られた湿式現像用電子写真感光体における感度を測定した。すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、700Vになるように帯電させ、次いで、ハロゲンランプの光からハンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光量:1.0μJ/cm2)を露光した。露光後330msec経過後の電位を測定し、初期感度(V)とした。
また、得られた湿式現像用電子写真感光体全体を、湿式現像の現像液として使用される炭化水素系溶剤(アイソパーL、エクソン化学社製)に、温度25℃、2000時間の条件で浸漬した。その後、炭化水素系溶剤から湿式現像用電子写真感光体を取り出し、感度を同様に測定し、初期感度とアイソパー浸漬後の感度の差を算出し、感度変化(V)とした。得られた結果を表1に示す。
(2)−2 耐溶剤性評価
得られた積層型湿式現像用電子写真感光体を、その感光体層の全面が浸るように、炭化水素系溶剤(アイソパーL、エクソン化学社製)500mlに、温度25℃、2000時間の条件で浸漬させた。一方、正孔輸送剤の濃度を変えて、炭化水素系溶剤(アイソパーL、エクソン化学社製)中に溶解させた。その状態で紫外領域から可視領域の吸収ピーク波長における吸光度を測定し、正孔輸送剤に関する濃度−吸光度検量線を予め作成した。次いで、炭化水素系溶剤(アイソパーL、エクソン化学社製)に浸漬した湿式現像用電子写真感光体について、紫外領域から可視領域における吸収測定を行い、検量線に照らして、正孔輸送剤の紫外領域から可視領域の吸収ピーク波長における吸光度から、正孔輸送剤の溶出量を算出した。得られた結果を表1に示す。
(2)−3 外観評価
また、耐溶剤性評価後の湿式現像用電子写真感光体の外観を目視にてクラックの発生の有無を観察し、下記基準に準じて外観評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
◎:外観変化が全く見られない。
○:顕著な外観変化は見られない。
△:外観変化が少々見られる。
×:顕著な外観変化が見られる。
[実施例2〜4]
実施例2〜4では、実施例1で使用した結着樹脂としての式(9)で表されるポリカーボネート樹脂のかわりに、式(10)〜(12)で表される粘度平均分子量が50,000のポリカーボネート樹脂(Resin−B〜D)を使用したほかは、実施例1と同様に湿式現像用積層型感光体を作成して、評価した。
実施例5、参考例6及び実施例7〜9
実施例5、参考例6及び実施例7〜9では、実施例1で使用した正孔輸送剤としての式(13)で表されるスチルベン誘導体のかわりに、式(14)〜(18)で表される化合物(HTM−B〜F)を使用したほかは、実施例1と同様に湿式現像用積層型感光体を作成して、評価した。
[比較例1〜3]
比較例1〜3では、実施例1で使用した結着樹脂としての式(9)で表されるポリカーボネート樹脂のかわりに、下記式(37)〜(39)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−E〜G)を使用したほかは、実施例1と同様に湿式現像用積層型感光体を作成して、評価した。
[比較例4〜5]
比較例4〜5では、実施例1で使用した正孔輸送剤としての式(13)で表されるスチルベン誘導体のかわりに、下記式(40)〜(41)で表される化合物(HTM―G〜H)を使用したほかは、実施例1と同様に湿式現像用積層型感光体を作成して、評価した。
以上、詳述したように、本発明によれば、特定の結着樹脂と、特定の正孔輸送剤とを組み合わせて用いることにより、耐溶剤性や感度特性に優れた湿式現像用電子写真感光体およびそれを備えた湿式現像用画像形成装置が得られるようになった。
したがって、本発明の湿式現像用電子写真感光体は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置における低コスト化、高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
(a)〜(c)は、積層型感光体の基本構造および変形構造を説明するために供する図である。 正孔輸送剤の分子量と正孔輸送剤の溶出量の関係を説明するために供する図である。 正孔輸送剤の溶出量と感度変化の関係を説明するために供する図である。 湿式現像用電子写真感光体を備えた画像形成装置を説明するために供する
符号の説明
12:導電性基体
20:積層型感光体
22:電荷輸送層
24:電荷発生層
25:中間層
40:複写機40
41:画像形成ユニット
41a:画像形成
41b:給紙部
42:排紙ユニット
43:画像読取ユニット
44:原稿給送ユニット
44a:原稿載置トレイ
44b:原稿給送機構
44c:原稿排出トレイ
51:感光体ドラム
52:帯電器
53:露光器
54:現像器
55:転写ローラ
56:クリーニング装置
57:定着ユニット

Claims (7)

  1. 基体上に、電荷発生剤を含有する電荷発生層と、正孔輸送剤および結着樹脂を含有する電荷輸送層と、を備えた積層型電子写真感光体であって、
    前記正孔輸送剤が、分子末端にジフェニルエテニル基を有するとともに、当該正孔輸送剤の分子量を1001.3以上の値とし、かつ、
    前記結着樹脂として、下記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂を含むことを特徴とする湿式現像用積層型電子写真感光体。

    (一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール置換アルケニル基、あるいは置換または非置換の炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基であり、R7は、水素原子、置換または非置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、あるいはトリフルオロメチル基である。)
  2. 前記正孔輸送剤の分子量を1001.3〜2500の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の湿式現像用積層型電子写真感光体。
  3. 前記一般式(1)中のR5およびR6が、水素原子であることを特徴とする請求項1または2に記載の湿式現像用積層型電子写真感光体。
  4. 前記正孔輸送剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の湿式現像用積層型電子写真感光体。
  5. 前記電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン(Y型)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の湿式現像用積層型電子写真感光体。
  6. 湿式現像の現像液として使用される炭化水素系溶媒に、室温で、2000時間の条件で浸漬した場合に、前記正孔輸送剤の溶出量が1×10-6g/cm3以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の湿式現像用積層型電子写真感光体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の湿式現像用積層型電子写真感光体を備えるとともに、当該湿式現像用電子写真感光体の周囲に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を実施するための部位をそれぞれ配置し、かつ、現像工程において、炭化水素系溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて画像形成を行うことを特徴とする湿式現像用画像形成装置。
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