JP4391919B2 - 湿式現像用電子写真感光体および湿式現像用画像形成装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来の湿式現像用電子写真感光体は、アイソパーと呼ばれる炭化水素系溶媒(液体現像剤)によって、短時間で浸されやすいという問題が見られた。
そこで、本発明者らは、結着樹脂として、特定のポリカーボネート樹脂を使用するとともに、正孔輸送剤として、特定のスチルベン化合物を併用することにより、かかる正孔輸送剤の溶出量を著しく低下させるととともに、感度特性も向上するという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、耐溶剤性や、感度特性に優れた湿式現像用電子写真感光体およびそのような湿式現像用電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供することにある。
すなわち、結着樹脂と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、電荷発生剤と、を含む感光体層を備えた湿式現像用電子写真感光体であって、結着樹脂として、下記一般式(1)で表される共重合ポリカーボネート樹脂を含み、正孔輸送剤として、下記一般式(2)で表わされる分子末端にエナミン構造を含むスチルベン化合物、または下記一般式(3)で表わされる分子末端にトリフェニルアミン構造を含むスチルベン化合物を含有して、正孔輸送剤の分子量を900以上とすることを特徴とする湿式現像用電子写真感光体である。
なお、当該一般式(2)で表されるスチルベン化合物と、後述する一般式(3)で表されるスチルベン化合物とを混合使用することも好ましい。
第1の実施形態は、結着樹脂と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、電荷発生剤と、を含む感光体層を備えた湿式現像用電子写真感光体であって、結着樹脂として、下記一般式(1)で表される共重合ポリカーボネート樹脂を含み、正孔輸送剤として、分子量が900以上であり、下記一般式(2)で表わされる分子末端にエナミン構造を含むスチルベン化合物または下記一般式(3)で表わされる分子末端にトリフェニルアミン構造を含むスチルベン化合物を含む湿式現像用電子写真感光体である。
ただし、特に正負いずれの帯電性にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、感光体層を形成する際の被膜欠陥を抑制できることから、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の理由から、単層型に適用することがより好ましい。
(1)基本的構成
図3(a)に示すように、単層型感光体10は、導電性基体12上に単一の感光体層14を設けたものである。
この感光体層は、例えば、一般式(1)で表される結着樹脂と、正孔輸送剤としての、一般式(2)や一般式(3)で表されるスチルベン誘導体と、電子輸送剤と、電荷発生剤と、さらに必要に応じてレベリング剤等を適当な溶媒に溶解または分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単であって、生産性に優れているという特徴がある。
(2)−1 種類
電荷発生剤等を分散させるための結着樹脂としては、上述したように、一般式(1)で表される共重合ポリカーボネートを使用することを特徴とする。
この理由は、かかる共重合ポリカーボネートであれば、炭化水素系溶媒に対して難溶であるとともに、撥油性も高いためである。その結果、感光体層表面と前述の炭化水素系溶媒との相互作用が小さくなって、長期間にわって、感光体層表面の外観変化が少なくなるためである。
ただし、従来、湿式現像用電子写真感光体に使用されている種々の樹脂を併用することも好ましい。例えば、ビスフェノールZ型、ビスフェノールZC型、ビスフェノールC型、ビスフェノールA型等のポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
ここで、一般式(1)で表される共重合ポリカーボネートの具体例としては、例えば、下記式(4)〜(7)で示される化合物(Resin−1〜Resin−4)が挙げられる。なお、式(7)で表される化合物は、記号*で表されている箇所で結合しており、共重合体であることを示している。
(3)−1 種類
正孔輸送剤の種類として、分子末端にエナミン構造を含むスチルベン化合物または分子末端にトリフェニルアミン構造を含むスチルベン化合物を使用することを特徴とする。
この理由は、分子内の所定箇所に特定のエナミン構造や、トリフェニルアミン構造を導入することにより、アイソパーに対する耐溶剤性を著しく向上させることができ、長期間にわたって安定した画像形成を実施できるためである。
特に、分子末端にエナミン構造を含むスチルベン化合物として、一般式(2)で表されるスチルベン化合物を使用することを特徴として、分子末端にトリフェニルアミン構造を含むスチルベン化合物として、一般式(3)で表されるスチルベン化合物を使用することを特徴とする。
この理由は、このような特定構造を分子末端に導入することにより、耐溶剤性や感度特性をさらに向上できるばかりでなく、機械的特性や成膜性についても向上するためである。よって、長期間にわたって優れた画像特性を維持し、かつ、製造等についても容易な湿式現像用電子写真感光体を効率的に提供することができる。
この理由は、重量平均分子量の値がこのような数値以上であれば、特定の結着樹脂との相溶性が良好になり、また、現像液への正孔輸送剤の溶出量が少なくなり、耐溶剤性や耐久性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
なお、正孔輸送剤の分子量は、構造式をもとに算出することもできるし、あるいはマススペクトルを用いて測定することができる。
(反応式(1)中の複数のR7、R8、R9、R10、R11、R12およびX1は一般式(2)中の内容と同じである。)
(反応式(2)中の複数のR13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびX2は一般式(3)中の内容と同じである。)
分子末端にエナミン構造を含むスチルベン化合物や、分子末端にトリフェニルアミン構造を含むスチルベン化合物の上記以外の具体例としては、例えば、下記式(10)〜(17)で示される化合物(HTM−3〜HTM−10)が挙げられる。
正孔輸送剤の添加量に関し、結着樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる正孔輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、正孔輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、かかる正孔輸送剤の添加量を30〜70重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
(4)−1 種類
電子輸送剤の種類としては、ナフタレンカルボン酸ジイミド誘導体、ナフトキノン誘導体、及びアゾキノン誘導体からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
この理由は、電子輸送剤として、特定の化合物を使用することにより、電子受容性に優れており、感度特性や耐溶剤性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
これらの電子輸送剤の具体例として、下記式(18)〜(22)で表される化合物(ETM−1〜ETM−4)が挙げられる。
また、これらの化合物のうち、電界強度が5×105v/cmにおける電子移動度が1.0×10-8cm2/V・sec以上である化合物がより好ましい。
また、湿式現像用電子写真感光体を構成するにあたり、結着樹脂100重量部に対して、電子輸送剤の添加量を、10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる複数の電子輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる複数の電子輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、電子輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、電子輸送剤の添加量を20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかる全ETM/全HTMの比率がかかる範囲外の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。
したがって、かかる全ETM/全HTMの比率を0.5〜1.25の範囲内の値とすることがより好ましい。
(5)−1 種類
本発明の電子写真感光体に使用される電荷発生剤としては、無金属フタロシアニン(τ型またはx型)、チタニルフタロシアニン(α型またはY型)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)、およびクロロガリウムフタロシアニン(II型)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
この理由は、電荷発生剤の種類を特定することにより、正孔輸送剤および電子輸送剤を併用した場合に、感度特性、電気特性および安定性等がより優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
これらの電荷発生剤のうち、具体的に、下記式(23)〜(26)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−1〜CGM−4)を使用することがより好ましい。
また、電荷発生剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜40重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる複数の電荷発生剤の添加量が0.5重量部未満の値になると、量子収率を高める効果が不十分となり、電子写真感光体の感度、電気特性、安定性等を向上させることができなくなるためである。一方、かかる複数の電荷発生剤の添加量が40重量部を超えた値になると、赤色および赤外ないし近赤外領域に吸収波長を有する光に対する吸光係数が低下して、感光体の感度、電気特性、安定性等がそれに伴い低下する場合があるためである。
したがって、電荷発生剤の添加量を0.7〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、感光体層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光体層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
また、単層型感光体における感光体層の厚さは、通常、5〜100μmの範囲内の値であり、好ましくは10〜50μmの範囲内の値である。
そして、このような感光体層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、これらの金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、カーボンブラック等の導電性微粒子が分散されてなるプラスッチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル,ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独1種または2種以上を混合して用いられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光体層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
(1)基本的構造
図4(a)に示すように、積層型感光体20は、導電性基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、一般式(2)および一般式(3)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)等の少なくとも1種と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製される。
また、上記構造とは逆に、図4(b)に示すように、導電性基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。
ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図4(a)に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
なお、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、結着剤等については、単層型感光体と基本的に同様の内容とすることができる。ただし、積層型感光体の場合、電荷発生剤の添加量については、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して、0.5〜150重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
なお、積層型感光体における感光体層の厚さに関しては、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
第2の実施形態は、第1の実施形態の湿式現像用電子写真感光体(以下、単に、感光体と称する場合がある。)を備えるとともに、当該湿式現像用電子写真感光体の周囲に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程をそれぞれ配置し、かつ、現像工程において、炭化水素系溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて画像形成を行うことを特徴とした湿式現像用画像形成装置である。なお、この湿式現像用画像形成装置の例では、電子写真感光体として、単層型感光体を用いた場合を想定して説明する。
また、感光体31は、矢印の方向に一定速度で回転しており、感光体31の表面で、次の順に電子写真プロセスが行われることになる。より詳細には、帯電器32により、感光体31が全面的に帯電され、次いで、露光光源33によって、印字パターンが露光される。次いで、湿式現像器34によって、印字パターンに対応して、トナー現像され、さらに、転写器35によって、転写材(紙)36へのトナーの転写が行われる。そして、最後に、感光体31に残った余分なトナーに対して、クリーニングブレード37による掻き落としが行われるとともに、除電光源38によって、感光体31の除電が行われることになる。
そして、感光体31において、特定のアミン構造体を有する正孔輸送剤料を使用することにより、耐溶剤性や感度特性に優れた単層型の湿式現像用電子写真感光体が得られ、長時間にわたって、優れた画像特性を維持することができる。
(1)湿式現像用電子写真感光体の作成
超音波分散機内に、電荷発生剤として、式(23)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−1)を4重量部と、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−1)を40重量部と、電子輸送性剤料として、式(18)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物(ETM−1)を50重量部と、結着樹脂として、式(4)で表されるポリカーボネート樹脂であって、粘度平均分子量が50,000である共重合体ポリカーボネート樹脂(Resin−1)を100重量部、レベリング剤としてのジメチルシリコーンオイルであるKF−96−50CS(信越化学工業製)を0.1重量部と、溶媒としてのテトラヒドロフラン750重量部と、を収容した後、超音波分散機にて、1時間混合分散させ、塗布液を作成した。
得られた塗布液を、直径30mm、長さ254mmの導電性基材(アルマイト処理済みアルミニウム素管)の外面全域に、ディップコート法にて塗布した。その後、140℃、20分間の条件で熱風乾燥して、膜厚20μmの単層型感光体層を有する湿式現像用電子写真感光体を得た。
また、共重合ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、オストワルド粘度計によって、極限粘度[η]を求め、Schnellの式によって、[η]=1.23×10-4M0.83より算出した。なお、[η]は、20℃で、塩化メチレン溶液を溶媒として、濃度(C)が6.0g/dm3となるようにポリカーボネート樹脂を溶解させて得られたポリカーボネート樹脂溶液から測定することができる。
(2)−1 感度測定
得られた湿式現像用電子写真感光体における明電位を測定した。すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、700Vになるように帯電させ、次いで、ハロゲンランプの光からハンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光量:1.0μJ/cm2)を露光した。露光後330msec経過後の電位を測定し、初期感度とした。また、感光体全体をアイソパーL(イソパラフィン系溶剤)に、温度25℃、2000時間の条件で浸漬した。その後、アイソパー液から湿式現像用電子写真感光体を取り出し、感度を同様に測定し、初期感度とアイソパー浸漬後の感度の差を算出した。
得られた単層型湿式現像用電子写真感光体を、その感光層の全面が浸るように、湿式現像の現像液として使用されるアイソパーL500mlに、温度25℃、600時間の条件で浸漬させた。一方、正孔輸送剤の濃度を変えて、アイソパーL中に溶解させた。その状態で紫外線吸収ピーク波長における吸光度を測定し、正孔輸送剤に関する濃度−吸光度検量線を予め作成した。次いで、アイソパーLに浸漬した湿式現像用電子写真感光体について、紫外線吸収測定を行い、検量線に照らして、正孔輸送剤の紫外線吸収ピーク波長における吸光度から、正孔輸送剤の溶出量を算出した。得られた結果を表1に示す。
なお、当該実施例1および後述する実施例5、13〜15、17、18では、それぞれ正孔輸送剤として、分子量が900以上のHTM−1〜5、7、8を使用しており、溶出量に関して、1.0×10-7〜2.1×10-7という低い値を示した。それに対して、分子量が900未満の正孔輸送剤を使用した場合には、3.0×10-7〜4.0×10-7という範囲内の値を示した。したがって、当該実施例1のように、分子量が900以上の正孔輸送剤を用いた場合には、正孔輸送剤の溶出量が比較的少なく、優れた耐溶剤性を示すことが確認された。
また、耐溶剤性評価後の湿式現像用電子写真感光体の外観を目視にてクラックの発生の有無を観察し、下記基準に準じて外観評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
◎:外観変化が全く見られない。
○:顕著な外観変化は見られない。
△:外観変化が少々見られる。
×:顕著な外観変化が見られる。
なお、上述したように、当該実施例1および後述する実施例5、13〜15、17、18では、それぞれ正孔輸送剤として、分子量が900以上のHTM−1〜5、7、8を使用しており、分子量が900未満の正孔輸送剤を使用した場合に比べて、外観評価において良好な結果が得られることが確認された。したがって、当該実施例1のように、分子量が900以上の正孔輸送剤を用いた場合には、正孔輸送剤の外観変化が少なく、優れた耐溶剤性や耐久性を示すことが確認された。
実施例2では、実施例1で使用した式(23)で表される無金属フタロシアニン(CGM−1)のかわりに、式(24)〜式(26)で表される電荷発生剤(CGM−2〜CGM−4)をそれぞれ添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例5では、実施例1で使用した式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−1)のかわりに、式(9)で表されるスチルベン化合物(HTM−2)を添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例6〜9では、実施例1で使用した式(18)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物(ETM−1)のかわりに、式(19)〜式(22)で表される化合物(ETM−2〜ETM−5)をそれぞれ添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例10〜12では、実施例1で使用した式(4)で表される結着樹脂(Resin−1)のかわりに、式(5)で表される粘度平均分子量が49,200である共重合ポリカーボネート樹脂(Resin−2)、式(6)で表される粘度平均分子量が50,800である共重合ポリカーボネート樹脂(Reisn−3)、式(7)で表される粘度平均分子量が50,000である共重合ポリカーボネート樹脂(Resin−4)をそれぞれ添加したほかは、実施例1と同様に、単層型の湿式現像用電子写真感光体を作成して、評価した。
実施例13〜15、参考例16、実施例17〜18、参考例19〜20では、実施例1で使用した式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−1)のかわりに、式(10)〜(17)で表されるスチルベン化合物(HTM−3〜HTM−10)を添加したほかは、実施例1と同様に単層型の湿式感光体を作成して、評価した。
また、比較例1〜3では、実施例1で使用した式(4)で表される結着樹脂(Resin−1)のかわりに、式(27)で表される粘度平均分子量が48,100である共重合体ポリカーボネート樹脂(Resin−5)、式(28)で表される粘度平均分子量が49,800である共重合体ポリカーボネート樹脂(Resin−6)、式(29)で表される粘度平均分子量50,500である共重合ポリカーボネート樹脂(Resin−7)をそれぞれ添加したほかは、実施例1と同様に、単層型の湿式現像用電子写真感光体を作成して、評価した。
比較例4では、実施例1で使用した式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−1)のかわりに、式(30)で表されるスチルベン化合物(HTM−11)を添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
したがって、本発明の湿式現像用電子写真感光体は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置における低コスト化、高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
12:導電性基体
14:感光層
16:バリア層
18:保護層
20:積層型感光体
22:電荷輸送層
24:電荷発生層
31:感光体
32:帯電器
33:露光光源
34:湿式現像器
34a:液体現像剤
34b:現像ローラ
35:転写器
36:転写材
37:クリーニングブレード
38:除電光源
39:プローブ
Claims (9)
- 結着樹脂と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、電荷発生剤と、を含む感光体層を備えた湿式現像用電子写真感光体であって、
前記結着樹脂として、下記一般式(1)で表される共重合ポリカーボネート樹脂を含み、
前記正孔輸送剤として、下記一般式(2)で表わされる分子末端にエナミン構造を含むスチルベン化合物、または下記一般式(3)で表わされる分子末端にトリフェニルアミン構造を含むスチルベン化合物を含有して、
前記正孔輸送剤の分子量を900以上とすることを特徴とする湿式現像用電子写真感光体。
(一般式(1)中の複数のR1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、それぞれ独立しており、同一または異なる基であって、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜30のアリール置換アルケニル基、または炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基であり、かつ、m/(m+n)で表されるモル比が0.05〜0.4の範囲内の値である。)
(一般式(2)中の複数のR 7 、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 、およびR 12 は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数6〜30のアリール置換アルケニル基、または炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基であり、X 1 は、炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、または炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基である。)
(一般式(3)中の複数のR 13 、R 14 、R 15 、R 16 、R 17 、R 18 およびR 19 は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数6〜30のアリール置換アルケニル基、または炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基であり、X 2 は、炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数6〜30のアリール基を有する不飽和炭化水素基、または炭素数10〜30の縮合多環式炭化水素基である。) - 前記正孔輸送剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電子輸送剤として、ナフタレンカルボン酸ジイミド誘導体、ナフトキノン誘導体、およびアゾキノン誘導体からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電子輸送剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電荷発生剤として、無金属フタロシアニン(τ型またはx型)、チタニルフタロシアニン(α型またはY型)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)、およびクロロガリウムフタロシアニン(II型)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電荷発生剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、0.5〜40重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 湿式現像の現像液として使用される炭化水素系溶媒に、室温で、600時間の条件で浸漬した場合に、正孔輸送剤の溶出量が5×10-7g/cm3以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記感光体層が、単層型であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体を備えるとともに、当該湿式現像用電子写真感光体の周囲に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を実施するための部位をそれぞれ配置し、かつ、現像工程において、炭化水素系溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて画像形成を行うことを特徴とする湿式現像用画像形成装置。
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