JP4511305B2 - 湿式現像用電子写真感光体及び湿式現像用画像形成装置 - Google Patents
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Description
このような有機感光体材料のうち、所定の電荷移動度を有する電荷輸送剤として、下記一般式(28)で表されるトリフェニルアミン誘導体を用いた電子写真感光体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
すなわち、本発明の目的は、耐久性や耐溶剤性に優れるとともに、所定感度を維持できる湿式現像用電子写真感光体及びそのような湿式現像用電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供することにある。
すなわち、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体は、分子末端のトリフェニルアミンに特定の置換基を有するビニル基導入していることから、立体障害を生じるため、結着樹脂との相溶性を向上させることができる。
したがって、このようなアミンスチルベン誘導体を湿式現像用電子写真感光体における正孔輸送剤として使用することにより、液体現像剤に長時間使用した場合であっても、感光体層におけるクラックの発生を抑え、電荷輸送剤等の溶出量を低下させることができるとともに、所定の感度特性を維持することができる。
また、本発明の湿式現像用電子写真感光体によれば、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体の分子量を所定以上の値とすることにより、結着樹脂との相溶性を向上させることができる。
したがって、このような分子量のアミンスチルベン誘導体を、湿式現像用電子写真感光体における正孔輸送剤として使用することにより、液体現像液に長時間使用した場合であっても、電荷輸送剤等の溶出量が少なく、かつ結着樹脂との相溶性が良いことから、耐溶剤性や耐久性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができる。
したがって、このような置換基を有するアミンスチルベン誘導体を、湿式現像用電子写真感光体における正孔輸送剤として使用することにより、感光体層中にかかるアミンスチルベン誘導体が均一に分散されるため、耐久性及び耐溶剤性が向上するとともに、電荷移動度を高めることができる。
したがって、このような置換基を有するアミンスチルベン誘導体を、湿式現像用電子写真感光体における正孔輸送剤として使用することにより、液体現像液に長時間使用した場合であっても、感光体層中のクラックの発生を抑え、電荷輸送剤等の溶出量を著しく低下させることができるとともに、所定の感度特性を維持することができる。
したがって、このような置換基を有するアミンスチルベン誘導体を、湿式現像用電子写真感光体における正孔輸送剤として使用することにより、液体現像液に長時間使用した場合であっても、感光体層中のクラックの発生を抑え、電荷輸送剤等の溶出量を著しく低下させることができるとともに、所定の感度特性を維持することができる。
したがって、このような電子輸送剤を、湿式現像用電子写真感光体における電子輸送剤として使用することにより、感光体の製造が容易になるばかりか、電荷の輸送効率があがるため感度特性に優れることができる。さらに、このようにI/O値を所定範囲に制限することにより、液体現像液に対する耐溶剤性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができる。
したがって、湿式現像用電子写真感光体に、かかる電荷発生剤を含むことにより、感度特性、電気特性、及び安定性等がさらに優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができる。
したがって、湿式現像用電子写真感光体に、かかる電荷発生剤を含むことにより、長時間使用時においても、所定の感度特性を維持する湿式現像用電子写真感光体を提供することができる。
したがって、湿式現像用電子写真感光体に、かかる結着樹脂を含むことにより、長時間使用時においても、電荷輸送剤等の溶出量を著しく低下させる湿式現像用電子写真感光体を提供することができる。
したがって、湿式現像用電子写真感光体が単層型であることにより、長時間にわたって所定感度を有する湿式現像用電子写真感光体を効率よく製造することができる。
したがって、湿式現像用画像形成装置に、このような湿式現像用電子写真感光体を備えることにより、長時間にわたって鮮明な画像を提供することができる。
第1の実施形態は、導電性基体上に感光体層を設けた湿式現像用電子写真感光体であって、感光体層における最表面層が、正孔輸送剤として、下記一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を含むとともに、かかるアミンスチルベン誘導体の分子量を900以上の値とするものを含有する湿式現像用電子写真感光体である。
ただし、特に正負いずれの帯電性にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、感光体層を形成する際の被膜欠陥を抑制できることから、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の理由から、単層型に適用することがより好ましい。
(1)基本的構成
図1(a)に示すように、単層型感光体10は、導電性基体12上に単一の感光体層14を設けたものである。
この感光体層は、例えば、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体(正孔輸送剤)と、電荷発生剤と、結着樹脂と、さらに必要に応じて電子輸送剤、レベリング剤等を適当な溶媒に溶解又は分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成することができる。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単であって、生産性に優れているという特徴がある。
また、得られた単層型感光体は、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を含んでいることから、残留電位が低下しており、所定感度を有しているという特徴がある。
さらに、単層型感光体の感光体層に、電子輸送剤を含有させる場合には、電荷発生剤と正孔輸送剤との電子の授受が効率よく行われるようになり、感度等がより安定する傾向が見られる。
(2)−1 種類
正孔輸送剤として、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体であり、かつ分子量を900以上とするものを含有することを特徴とする。
この理由は、正孔輸送剤として、分子末端のトリフェニルアミン構造に特定の置換基を有したビニル基を導入したアミンスチルベン誘導体を使用することにより、炭化水素系溶剤等に対する耐溶剤性を著しく向上させることができるためである。したがって、湿式現像用電子写真感光体により、長期間にわたって安定した画像形成を実施することができる。
また、分子末端のトリフェニルアミン構造に特定構造が導入されたアミンスチルベン誘導体を使用することにより、感度特性をさらに向上できるばかりでなく、機械的特性や成膜性についても向上することができるためである。
また、かかるアミンスチルベン誘導体の分子量を900以上の値とすることにより、このような分子量のアミンスチルベン誘導体を、湿式現像用電子写真感光体における正孔輸送剤として使用することにより、結着樹脂との相溶性が良いことから、耐溶剤性や耐久性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
この理由は、このような置換基を有することにより、結着樹脂との相溶性が向上し、電気的特性及び耐熱性を向上することができるためである。また、電子の分布が非局在化し、かつ平面的になることによって、電荷移動度が大きくなるとともに、電荷発生剤からの電荷の注入性を高めることができるためである。
この理由はこのような置換基を有することにより、立体障害により正孔輸送剤の平面性が低下し、より効果的に結晶化を防ぐためである。また、結着樹脂との相溶性がさらに優れ、感光層中で均一に分散されるため、長時間にわたって感度特性に優れるという効果を提供することができるためである。
この理由はこのような置換基を有することにより、立体障害により正孔輸送剤の平面性が低下し、より効果的に結晶化を防ぐためであり、結着樹脂との相溶性がさらに優れ、感光層中で均一に分散されるため、長時間にわたって感度特性に優れるという効果を提供することができるためである。また、このような構造であれば、製造が容易であるため、比較的安価に湿式現像用電子写真感光体を提供することができるからである。
また、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体の具体例として、下記構造式(2)〜(5)で表されるアミンスチルベン誘導体(HTM−A〜D)を示す。
また、正孔輸送剤の添加量に関し、結着樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる正孔輸送剤の添加量が80重量部を超えた値になると、正孔輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、かかる正孔輸送剤の添加量を30〜70重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
(3)−1 I/O値(無機性値/有機性値)
また、電子輸送剤の選択にあたり、I/O値を0.6以上とすることが好ましい。
この理由は、かかる電子輸送剤のI/O値を特定範囲に制限することにより、電子輸送剤の無機性を増加させ、有機性溶媒である炭化水素系溶剤に対して、優れた耐溶剤性が得られるためである。ただし、かかるI/O値の値が過度に大きくなると、溶剤及び結着樹脂に対する溶解性が低下する場合がある。
したがって、電子輸送剤のI/O値を0.7〜1.7の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜1.5の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、具体的に、電子輸送剤の無機性値(I値)を240〜900の範囲内の値、有機性値(O値)を240〜1000の範囲内の値とすることが好ましい。
この場合において、無機性値(I値)とは、有機化合物が有している種々の置換基や結合等の沸点への影響力の大小を、水酸基を基準に数値化したものである。具体的には、直鎖アルコールの沸点曲線と直鎖パラフィンの沸点曲線との距離を炭素数5の付近で取ると約100℃となるので、水酸基1個の影響力を数値で100と定め、この数値に基づいて、各種置換基あるいは各種結合などの沸点への影響力を数値化した値が、有機化合物が有している置換基の無機性値である。例えば、−COOH基の無機性値は150であり、2重結合の無機性値は2である。従って、ある種の有機化合物の無機性値とは、該化合物が有している各種置換基や結合等の無機性値の総和を意味する。
一方、有機性値(O値)とは、分子内のメチレン基を単位とし、そのメチレン基を代表する炭素原子の沸点への影響力を基準にして定めたものである。すなわち、直鎖飽和炭化水素の炭素数5〜10付近での炭素1個加わることに沸点上昇の平均値は20℃であるから、これを基準に、炭素原子1個の有機性値を20と定め、これを基準として、各種置換基や結合等の沸点への影響力を数値化した値が有機性値である。例えば、ニトロ基(−NO2)の有機性値は70である。従って、ある種の有機化合物の有機性値とは、該化合物が有している各種置換基や結合等の総和を意味する。
すなわち、かかる化合物は、炭素原子(有機性20)を23個有し、ニトロ基(有機性70)を1個有しており、有機性値は20×23+70=530となる。また、ナフタレン環(無機性60)を1個有し、ベンゼン環(無機性15)を2個有し、ケトン基(無機性65)を2個有し、ニトロ基(無機性70)を1個有し、カルボキシル基(無機性60)を1個有していることから、無機性値は60×1+15×2+65×2+70+60=350となる。したがって、かかる化合物のI/O値は、350/530=0.6604となる。
この理由は、使用する電子輸送剤が特定の置換基を備えることにより、耐溶剤性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
また、電子輸送剤の種類としては、ナフタレンカルボン酸誘導体、ナフトキノン誘導体、及びアゾキノン誘導体からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
この理由は、電子輸送剤として、特定の化合物を使用することにより、電子受容性に優れており、感度特性や耐溶剤性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
これらの電子輸送剤の具体例として、下記式(6)〜(11)で表される化合物(ETM−A〜F)が挙げられる。
また、これらの化合物のうち、樹脂60重量%に対して、濃度40重量%に調整した場合であって、電界強度が5×105v/cmにおける電子移動度が1.0×10-8cm2/V/sec以上である電子輸送剤がより好ましい。
また、湿式現像用電子写真感光体を構成するにあたり、結着樹脂100重量部に対して、電子輸送剤の添加量を、10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる複数の電子輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる複数の電子輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、電子輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、電子輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかる全ETM/全HTMの比率がかかる範囲外の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。
したがって、かかる全ETM/全HTMの比率を0.5〜1.25の範囲内の値とすることがより好ましい。
(4)−1 種類
本発明の電子写真感光体に使用される電荷発生剤としては、無金属フタロシアニン(τ型又はx型)、チタニルフタロシアニン(α型又はY型)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)、及びクロロガリウムフタロシアニン(II型)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
この理由は、電荷発生剤の種類を特定することにより、正孔輸送剤及び電子輸送剤を併用した場合に、感度特性、電気特性及び安定性等がより優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
これらの電荷発生剤のうち、具体的に、下記式(12)〜(15)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜CGM−D)を使用することがより好ましい。
また、電荷発生剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、0.2〜40重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる複数の電荷発生剤の添加量が0.2重量部未満の値になると、量子収率を高める効果が不十分となり、電子写真感光体の感度、電気特性、安定性等を向上させることができなくなるためである。一方、かかる複数の電荷発生剤の添加量が40重量部を超えた値になると、赤色及び赤外ないし近赤外領域に吸収波長を有する光に対する吸光係数が低下して、感光体の感度、電気特性、安定性等がそれに伴い低下する場合があるためである。
したがって、電荷発生剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかる電荷発生剤(CGM−B)と分散補助剤をあわせて用いることにより、塗工溶液中でのCGM−Bの分散性を向上させ、塗工溶液のポットライフを長くすることができるためである。
この理由は、かかる分散補助剤の添加量が30重量部未満の値になると、溶剤及び結着樹脂への溶解性が不十分になり、感光体として適正な膜か製造されないためである。一方、かかる分散補助剤が200重量部を超えると、かかる電荷発生剤の量子収率を高める効果が不十分となり、電子写真感光体の感度特性、電気特性、及び安定性等を向上させることができなくなるためである。
(5)−1 種類
電荷発生剤等を分散させるための結着樹脂としては、I/O値(無機性値/有機性値)が0.38以上の値であるポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。
この理由は、かかる構造を有するポリカーボネート樹脂であれば、有機感光体の耐溶剤性をさらに向上することができるためである。
この理由は、かかるポリカーボネート樹脂であれば、シロキサン構造等を導入することなく、炭化水素系溶媒等に対して難溶であるとともに、撥油性も高いためである。その結果、感光体層表面と前述の炭化水素系溶媒等との相互作用が小さくなって、長期間にわたって、感光体層表面の外観変化が少なくなるためである。
また、一般式(18)で表されるポリカーボネート樹脂の具体例としては、例えば、下記式(19)〜(22)で示される化合物(Resin−A〜Resin−D)が挙げられる。
また、これらの結着樹脂のうち、ポリカーボネート樹脂を使用することがより好ましい。
この理由は、ポリカーボネー樹脂であれば、一般的に、炭化水素系溶媒等に対して難溶であるとともに、撥油性も高いためである。その結果、感光体層表面と前述の炭化水素系溶媒等との相互作用が小さくなって、長期間にわたって、感光体層表面の外観変化が少なくなるためである。
また、感光体層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光体層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
また、単層型感光体における感光体層の厚さは、通常、5〜100μmの範囲内の値であり、好ましくは10〜50μmの範囲内の値である。
そして、このような感光体層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、これらの金属が蒸着又はラミネートされたプラスチック材料、カーボンブラック等の導電性微粒子が分散されてなるプラスッチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
また、単層型感光体の構成に関して、図1(b)に示すように、導電性基体12と感光体層14との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層16が形成されている単層型感光体10´でもよい。
分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独1種又は2種以上を混合して用いられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光体層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
(1)基本的構造
図2(a)に示すように、積層型感光体20は、導電性基体12上に、蒸着又は塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、正孔輸送剤としてアミンスチルベン誘導体等の少なくとも1種と、結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製される。
なお、積層型感光体における感光体層の厚さに関しては、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
第2の実施形態は、第1の実施形態である湿式現像用電子写真感光体(以下、単に、感光体と称する場合がある。)を備えるとともに、当該湿式現像用電子写真感光体の周囲に、帯電工程を実施するための帯電器32、露光工程を実施するための露光光源33、現像工程を実施するための湿式現像器34、及び転写工程を実施するための転写器35を配置し、かつ、現像工程において、炭化水素系溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて画像形成を行う湿式現像用画像形成装置である。
なお、以下の湿式現像用画像形成装置の説明では、電子写真感光体として、単層型感光体を用いた場合を想定して説明する。
また、感光体31は、矢印の方向に一定速度で回転しており、感光体31の表面で、次の順に電子写真プロセスが行われることになる。より詳細には、帯電器32により、感光体31が全面的に帯電され、次いで、露光光源33によって、印字パターンが露光される。次いで、湿式現像器34によって、印字パターンに対応して、トナー現像され、さらに、転写器35によって、転写材(紙)36へのトナーの転写が行われる。そして、最後に、感光体31に残った余分なトナーに対して、クリーニングブレード37による掻き落としが行われるとともに、除電光源38によって、感光体31の除電が行われることになる。
そして、感光体31において、特定のアミンスチルベン誘導体を正孔輸送剤として、使用することにより、耐溶剤性や感度特性に優れた単層型の湿式現像用電子写真感光体が得られ、長時間にわたって、優れた画像特性を維持することができる。
(1)湿式現像用電子写真感光体の作成
電荷発生剤として、式(12)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−A)を4重量部と、正孔輸送剤として、式(2)で表されるアミンスチルベン誘導体(HTM−A)を40重量部と、電子輸送性剤料として、式(6)で表されるナフトキノン誘導体(ETM−A)を50重量部と、結着樹脂として、式(19)で表される粘度平均分子量が50,000のポリカーボネート樹脂(Resin−A)を100重量部、レベリング剤としてのジメチルシリコーンオイルであるKF−96−50CS(信越化学工業製)を0.1重量部と、溶媒としてのテトラヒドロフラン750重量部と、を収容した後、超音波分散機にて、1時間混合分散させ、塗布液を作成した。
得られた塗布液を、直径30mmで、長さ254mm、厚さ5μmのアルマイト処理済みアルミニウム素管外面全域に塗布した。その後、130℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚22μmの単層型感光体層を有する湿式現像用電子写真感光体を得た。
なお、共重合ポリカーボネートの粘度平均分子量(M)は、オストワルド粘度計によって極限粘度[η]を測定し、[η]=1.23×10-4M0.83の式にて粘度平均分子量(M)を算出した。
(2)−1 感度測定
得られた湿式現像用電子写真感光体における明電位を測定した。すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、850Vになるように帯電させ、次いで、ハロゲンランプの光からハンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光量:1.0μJ/cm2)を露光した。露光後330msec経過後の電位を測定し、初期感度(V)とした。
また、得られた湿式現像用電子写真感光体全体を、湿式現像の現像液として使用される炭化水素系溶剤(エクソン化学社製:ノーパ12)500mlに、温度25℃、2000時間の条件で浸漬した。その後、炭化水素系溶剤から湿式現像用電子写真感光体を取り出し、感度を同様に測定し、浸漬後感度(Vr)として、初期感度との差を感度変化(Vr−Vo)とした。得られた結果を表2に示す。
得られた単層型湿式現像用電子写真感光体を、その感光体層の全面が浸るように、炭化水素系溶剤である炭化水素系溶剤(ノーパ12)500mlに、温度25℃、2000時間の条件で浸漬させた。一方、正孔輸送剤の濃度を変えて、炭化水素系溶剤(ノーパ12)中に溶解させた。その状態で紫外領域から可視領域の吸収ピーク波長における吸光度を測定し、正孔輸送剤に関する濃度−吸光度検量線を予め作成した。次いで、炭化水素系溶剤(ノーパ12)に浸漬した湿式現像用電子写真感光体について、紫外領域から可視領域における吸収測定を行い、検量線に照らして、正孔輸送剤の紫外領域から可視領域の吸収ピーク波長における吸光度から、正孔輸送剤の溶出量を算出した。得られた結果を表2に示す。
また、耐溶剤性評価後の湿式現像用電子写真感光体の外観を目視にてクラックの発生の有無を観察し、下記基準に準じて外観評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
◎:外観変化が全く見られない。
○:顕著な外観変化は見られない。
△:外観変化が少々見られる。
×:顕著な外観変化が見られる。
実施例2では、実施例1で使用した電荷発生剤としての式(12)で表される無金属フタロシアニン(CGM−A)のかわりに、上述した式(13)で表される化合物(CGM−B)を4重量部と、式(17)で表される分散補助剤(PigmentYellow16)を3重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例3〜4では、実施例1で使用した電荷発生剤としての式(12)で表される無金属フタロシアニン(CGM−A)のかわりに、上述した式(14)〜(15)で表される化合物(CGM−C、D)をそれぞれ使用したほかは、実施例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例5〜7では、実施例1で使用した正孔輸送剤としての式(2)で表されるアミンスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、上述した式(3)〜(5)で表されるアミンスチルベン化合物(HTM−B〜D)をそれぞれ使用したほかは、実施例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例8〜10では、実施例1で使用した結着樹脂としての式(19)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−A)のかわりに、上述した式(20)〜(22)で表される粘度平均分子量が50,000のポリカーボネート樹脂(Resin−B〜D)をそれぞれ使用したほかは、実施例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例11〜15では、実施例1で使用した電子輸送剤としての式(6)で表されるナフトキノン誘導体(ETM−A)のかわりに、上述した式(7)〜(11)で表される電子輸送剤(ETM−B〜F)をそれぞれ使用したほかは、実施例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
比較例1〜4においては、実施例1で使用した正孔輸送剤として、式(2)で表されるアミンスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、下記式(23)〜(26)で表される化合物(HTM−E〜H)を使用したほかは、実施例1と同様に湿式現像用電子写真感光体を作成して、評価した。
比較例5では、比較例4で使用した結着樹脂としての式(19)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−A)のかわりに、下記式(27)で表される粘度平均分子量が50,000のポリカーボネート樹脂(Resin−E)を使用したほかは、比較例4と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
したがって、本発明の湿式現像用電子写真感光体は、各種画像形成装置の高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
12:導電性基体
14:感光体層
16:バリア層
20:積層型感光体
22:電荷輸送層
24:電荷発生層
31:感光体
32:帯電器
33:露光光源
34:湿式現像器
34a:液体現像剤
34b:現像ローラ
35:転写器
36:転写材
37:クリーニングブレード
38:除電光源
39:プローブ
Claims (10)
- 少なくとも結着樹脂と、正孔輸送剤と、電荷発生剤と、を含む感光体層を備えた湿式現像用電子写真感光体であって、
前記感光層における最表面層が、前記正孔輸送剤として、下記一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を含むとともに、当該アミンスチルベン誘導体の分子量を900以上の値とすることを特徴とする湿式現像用電子写真感光体。
(一般式(1)中、A〜Dは、フェニル基であり、R1、R3〜R5、R8、R10〜R12は、水素原子、R7およびR14は、水素原子、メチル基、R2、R6、R9及びR13は、炭素数1〜6の置換又は非置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換又は非置換のアルコキシ基、あるいは、R2〜R6のうちいずれか二つ、及びR9〜R13のうちいずれか二つは、結合又は縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜dはそれぞれ独立した0〜4の整数である。) - 前記正孔輸送剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記感光体層に、さらに電子輸送剤を含み、当該電子輸送剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電子輸送剤のI/O値(無機性値/有機性値)を0.6以上の値とすることを特徴とする請求項3に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電荷発生剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、0.2〜40重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電荷発生剤として、無金属フタロシアニン(τ型又はx型)、チタニルフタロシアニン(α型又はY型)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)、及びクロロガリウムフタロシアニン(II型)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記結着樹脂として、I/O値(無機性値/有機性値)を0.38以上の値とするポリカーボネート樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 液体現像剤の炭化水素系溶媒中に、室温、2000時間の条件で浸漬させた場合に、前記正孔輸送剤の溶出量が9×10-7g/cm3以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記感光体層が、単層型であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体を備えるとともに、当該湿式現像用電子写真感光体の周囲に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を実施するための部位をそれぞれ配置し、かつ、現像工程において、炭化水素系溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて画像形成を行うことを特徴とする湿式現像用画像形成装置。
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