JP4104006B2 - 電子写真感光体および画像形成装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来の有機感光体は、使用時に磨耗しやすいとともに、表面電位が安定化せずに、カブリを生じたり、画像濃度が低下したりするという問題が見られた。
また、同様に、本出願人は、電荷発生剤と、正孔輸送材料と、電子輸送材料と、結着樹脂とを含んでなる電子写真感光体であって、電界強度が5×105v/cmにおける正孔移動度が1×10-5cm2/V/sec以上であり、当該正孔移動度に対して、1/20000〜1/10の範囲の電子移動度を有する電子輸送材料を含有する単層型の有機感光体を既に提案している(例えば、参考文献2および3)。
そこで、本発明者らは、特定の電子移動度を有する電子輸送材料を、特定量含むことにより、長期間画像形成を実施した場合であっても、電位変化が少なくなり、感光体の耐久性が向上するという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、長期間画像形成を実施した場合であっても、露光安定性や耐久性に優れている電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することにある。
すなわち、特定の電子移動度を有する電子輸送材料を、特定量含むことにより、長期間画像形成を実施した場合であっても、使用前後での電位変化の値が小さくなり、感光体の耐久性を向上させることができる。
また、電子移動度の測定上のばらつきを小さくするために、該当する電子輸送材料を平均分子量50,000のポリカーボネート樹脂中に、40重量%の濃度になるように添加したものを測定試料用の塗布液とする。次いで、得られた塗布液を基材上に塗布し、80℃で30分間熱処理を行って、膜厚7μmの測定資料を作成する。このようにして得られた測定試料は、常温下で、通常のTOF(Time of Flight)法を用いて電子移動度を測定する。なお、測定の際の電界強度を5×105v/cmの一定値とする。
このように構成することにより、電子写真感光体を使用して、長期間画像形成を実施した場合であっても、使用前後での電位変化の値がより小さくなり、感光体の耐久性を向上させることができる。
このように構成することにより、電子写真感光体を使用して、長期間画像形成を実施した場合であっても、使用前後での電位変化の値がさらに小さくなり、感光体の耐久性を向上させることができる。
このように構成することにより、比較的短時間の試験において、電子写真感光体が所定の耐久性を有することの目処をたてることができる。
このように構成することにより、長期間にわたって、諧調表現に優れ、かつ画像濃度の低下が少ない電子写真感光体を得ることができる。
このように構成することにより、電子写真感光体を使用して、長期間画像形成を実施した場合であっても、使用前後での電位変化の値が小さくなり、感光体の耐久性を向上させることができる。
このように構成することにより、電子写真感光体を使用して、長期間画像形成を実施した場合であっても、使用前後での電位変化の値が小さくなり、感光体の耐久性を向上させることができる。
このように構成することにより、構成や製造が容易であるにもかかわらず、使用前後での電位変化の値が小さく、耐久性が向上した単層型の電子写真感光体を得ることができる。
このように構成することにより、使用前後での電位変化の値がさらに小さくなるとともに、電子写真感光体の劣化を抑制して、画像濃度が安定した画像形成を長期間にわたって得ることができる。
すなわち、電子写真感光体中に、電子移動度が異なる複数の電子輸送材料を含むことにより、分子共役平面の大きさが異なる電子輸送材料が複数存在することになるためである。より具体的には、電子写真感光体に、分子共役平面の大きさが異なる電子輸送材料が複数存在することにより、電子輸送材料と電荷発生材料との接触が密になるため、電荷発生材料から電子輸送材料への電子の移動を効率よく行うことができるのである。その結果、感光層に蓄積される電荷が効率よく移動されるため、長時間使用した場合であっても、安定した電気特性を得る事ができる。
第1の実施形態は、帯電電位が300〜500Vの画像形成装置に用いられるとともに、電子移動度が異なる複数の電子輸送材料を含む感光体層を備えた電子写真感光体であって、TOF法(結着樹脂:平均分子量50,000のポリカーボネート樹脂、電子輸送材料濃度:40重量%、及び電界強度:5×10 5 V/cm)を用いて測定される電子移動度が5×10-8cm2/V/sec以上である電子輸送材料を第1の電子輸送材料とした場合に、電子輸送材料の全体量(全ETM)と、第1の電子輸送材料(ETM1)との添加割合(ETM1/全ETM)を0.5〜0.9の範囲内の値とし、かつ、第1の電子輸送材料と同様の条件にて測定される電子移動度が1×10-9〜5×10-8cm2/V/sec未満である電子輸送材料を第2の電子輸送材料とした場合に、電子輸送材料の全体量(全ETM)と、第2の電子輸送材料(ETM2)との添加割合(ETM2/全ETM)を0.1〜0.5の範囲内の値とすることを特徴とする電子写真感光体である。
ただし、特に正負いずれの帯電型にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、層を形成する際の被膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の理由から、単層型に適用することがより好ましい。
(1)基本的構成
単層型感光体は、導電性基体上に単一の感光層を設けたものである。この感光層は、結着樹脂と、電荷発生剤と、電子輸送材料と、正孔輸送材料と、さらに必要に応じて溶媒とを含む塗布液を、アルミニウム素管上に塗布し、乾燥させることにより得ることができる。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単で生産性に優れているという利点がある。
電荷発生剤等を分散させるための結着樹脂は、従来、感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
ただし、下記式(4)〜(6)で表されるポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性および機械的特性に優れているばかりか、正孔輸送材料との相溶性にも優れていることから好ましい結着樹脂である。
本発明に用いられる電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、半導体レーザ等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、下記式(7)で表されるX型無金属フタロシアニンや、下記式(8)で表されるオキソチタニルフタロシアニン等が好適に用いられる。
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、ペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
(4)−1 種類
本発明に用いられる電子移動度が異なる複数の電子輸送材料としては、高い電子輸送能を有する種々の化合物の組み合わせが挙げられるが、具体的に、ベンゾキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、TOF法(結着樹脂:平均分子量50,000のポリカーボネート樹脂、電子輸送材料濃度:40重量%、及び電界強度:5×10 5 V/cm)を用いて測定される電子移動度が5×10-8cm2/V/sec以上である電子輸送材料(第1の電子輸送材料)の具体例としては、下式(1)、(2)、(9)、および(10)で表される化合物が挙げられる。
また、TOF法(結着樹脂:平均分子量50,000のポリカーボネート樹脂、電子輸送材料濃度:40重量%、及び電界強度:5×10 5 V/cm)を用いて測定される電子移動度が1×10-9〜5×10-8cm2/V/sec未満である電子輸送材料(第2の電子輸送材料)を所定量添加することを特徴とする。
このような比較的電子移動度が遅い電子輸送材の具体例としては、下式(11)、(12)、および(3)で表される化合物が挙げられる。
また、電子輸送材料の全体量(全ETM)と、第1の電子輸送材料(ETM1)との添加割合(ETM1/全ETM)を0.5〜0.9の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかるETM1/全ETMの比率が0.5未満の値になると、使用前後における電位変化が大きくなって、長期間にわたって安定した画像濃度を有する画像形成が困難となる場合があるためである。一方、かかるETM1/全ETMの比率が0.9を超えた値になると、やはり使用前後における電位変化が少々大きくなる場合があるためである。
したがって、ETM1/全ETMの比率を0.55〜0.75の範囲内の値とすることがより好ましく、0.6〜0.8の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この図から容易に理解できるように、ETM1/全ETMの比率が0.5〜0.9の範囲内であれば、電位変化の絶対値は50V未満の低い値である。ETM1/全ETMの比率が0.5未満になると、電位変化の絶対値は50V〜90Vと著しく大きくなる傾向があり、同様に、ETM1/全ETMの比率が0.9を超えた値になっても、電位変化の絶対値は50Vを超える傾向が見られている。
よって、電子写真感光体における使用後の電位を安定させるためには、電子移動度が比較的早い第1の電子輸送材料を使用することが必須である一方、かかる第1の電子輸送材料単独使用であっても、安定性が低下する傾向があり、そのために、電子移動度が比較的遅い第2の電子輸送材料を所定量使用することも重要である。すなわち、電位変化の絶対値を小さくするためには、ETM1/全ETMの比率を0.5〜0.9の範囲内の値とすることが有効である。
したがって、ETM1/全ETMの比率が0.6〜0.8の範囲内の値とすることがより好ましく、0.6〜0.75の範囲内の値とすることがさらに好ましい。このような値であれば、電位変化の絶対値はさらに低い値となっている。
また、感光体層に、電界強度が5×105v/cmにおける電子移動度が1×10-9〜5×10-8cm2/V/sec未満である電子輸送材料を第2の電子輸送材料とした場合に、電子輸送材料の全体量(全ETM)と、第2の電子輸送材料との添加割合(ETM2/全ETM)を0.1〜0.5の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかるETM2/全ETMの比率が0.1未満の値になると、使用前後における電位変化が少々大きくなって、長期間にわたって安定した画像濃度を有する画像形成が困難となる場合があるためである。一方、かかるETM2/全ETMの比率が0.5を超えた値になると、使用前後における電位変化が著しく大きくなって、長期間にわたって安定した画像濃度を有する画像形成が困難となる場合があるためである。
したがって、ETM2/全ETMの比率を0.2〜0.45の範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜0.4の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、第1の電子輸送材料の電子移動度(ETD1)と、第2の電子輸送材料の電子移動度(ETD2)との割合(ETD1/ETD2)を2〜1,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるETD1/ETD2の比率が2未満の値になると、使用前後における電位変化が著しく大きくなって、長期間にわたって安定した画像濃度を有する画像形成が困難となる場合があるためである。
一方、かかるETD1/ETD2の比率が1,000を超えた値になると、使用前後における電位変化が少々大きくなる場合があるためである。
したがって、ETD1/ETD2の比率を5〜500の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜100の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、第1の電子輸送材料の電子移動度(ETD1)と、第2の電子輸送材料の電子移動度(ETD2)と差(ETD1−ETD2)を1×10-8〜100×10-8cm2/V/secの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるETD1−ETD2の差が1×10-8cm2/V/sec未満の値になると、使用前後における電位変化が著しく大きくなって、長期間にわたって安定した画像濃度を有する画像形成が困難となる場合があるためである。一方、かかるETD1−ETD2の差が100×10-8cm2/V/secを超えた値になると、逆に、使用前後における電位変化が大きくなる場合があるためである。
したがって、ETD1−ETD2の差を4×10-8〜50×10-8cm2/V/secの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、初期表面電位と、2,000枚連続印刷後における表面電位との差の絶対値を50V以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる表面電位の差の絶対値が50Vを超えた値になると、使用前後における電位変化が著しく大きくなって、長期間にわたって安定した画像濃度を有する画像形成が困難となる場合があるためである。ただし、かかる表面電位の差を過度に小さくしようとすると、使用可能な電子輸送材料等の選択の幅が過度に狭まる場合がある。
したがって、かかる表面電位の差の絶対値を10〜45Vの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜40Vの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、正孔輸送材料と、電子輸送材料との添加割合(全ETM/全HTM)を0.2〜1.0の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる全ETM/全HTMの比率がかかる範囲外の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。
したがって、かかる全ETM/全HTMの比率を0.35〜0.65の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、結着樹脂100重量部に対して、第1の電子輸送材料の添加量を5〜50重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第1の電子輸送材料の添加量が5重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる第1の電子輸送材料の添加量が50重量部を超えた値になると、電子輸送材料が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、かかる第1の電子輸送材料の添加量を10〜40重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜35重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、結着樹脂100重量部に対して、第1の電子輸送材料を含む複数の電子輸送材料の添加量を、7〜70重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる複数の電子輸送材料の添加量が7重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる複数の電子輸送材料の添加量が70重量部を超えた値になると、電子輸送材料が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、第1の電子輸送材料を含む複数の電子輸送材料の添加量を10〜60重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜55重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(5)−1 種類
本発明の電子写真感光体においては、正孔輸送材料として、スチルベン誘導体、オキサジアゾール系化合物、スチリル系化合物、カルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、正孔輸送材料の具体例としては一般式(13)で表されるスチルベン誘導体、より具体的には式(14)で表されるスチルベン誘導体を使用することが好ましいが、その他、下記正孔輸送材料(HT−1)〜(HT−13)も好適例として挙げられる。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、結着樹脂100重量部に対して、正孔輸送材料の添加量を10〜80重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送材料の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる正孔輸送材料の添加量が80重量部を超えた値になると、正孔輸送材料が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、かかる正孔輸送材料の添加量を20〜70重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜60重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、感光層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
本発明の電子写真感光体が単層型の感光体である場合、電荷発生剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲内の値とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜30重量部の範囲内の値とすることである。
また、単層型感光体における感光層の厚さは、通常、5〜100μmの範囲内の値であり、好ましくは10〜50μmの範囲内の値である。
そして、このような感光層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、当該金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等が挙げられる。
さらにまた、単層型感光体の構成に関して、導電性基体と感光層との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層が形成されていてもよい。また、感光体の表面には、保護層が形成されていてもよい。
分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
(1)基本的構造
積層型感光体は、まず導電性基体上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層を形成し、次いでこの電荷発生層上に、一般式(13)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送材料)の少なくとも1種と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することによって作製される。
また、上記とは逆に、導電性基体上に電荷輸送層を形成し、その上に電荷発生層を形成してもよい。但し、電荷発生層は電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
なお、電荷発生剤、正孔輸送材料、電子輸送材料、結着剤等については、単層型感光体と同様の内容とすることができる。
そして、本発明の積層型電子写真感光体は、感光体の残留電位が大きく低下しており、感度が向上している。
なお、積層型感光体における感光層の厚さは、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
第2の実施形態は、電子移動度が異なる複数の電子輸送材料を含む感光体層を備えた電子写真感光体であって、TOF法(結着樹脂:平均分子量50,000のポリカーボネート樹脂、電子輸送材料濃度:40重量%、及び電界強度:5×10 5 V/cm)を用いて測定される電子移動度が5×10-8cm2/V/sec以上である電子輸送材料を第1の電子輸送材料とした場合に、電子輸送材料の全体量(全ETM)と、第1の電子輸送材料(ETM1)との添加割合(ETM1/全ETM)を0.5〜0.9の範囲内の値とし、かつ、第1の電子輸送材料と同様の条件にて測定される電子移動度が1×10-9〜5×10-8cm2/V/sec未満である電子輸送材料を第2の電子輸送材料とした場合に、電子輸送材料の全体量(全ETM)と、第2の電子輸送材料(ETM2)との添加割合(ETM2/全ETM)を0.1〜0.5の範囲内の値とする電子写真感光体を備えるとともに、電子写真感光体の帯電電位を300〜500Vの範囲内の値とすることを特徴とする画像形成装置である。
なお、この画像形成装置の例では、電子写真感光体として、単層型感光体を用いた場合を想定して、説明する。
本発明の電子写真感光体(単層型感光体)9は、図2に示すような画像形成装置1に対して好適に使用することができる。すなわち、かかる画像形成装置1には、図上、時計回りに回転する単層型感光体9の周囲に、回転方向に沿って、現像器10、転写ローラ19、クリーニングブレード13、及び帯電ユニット8が配設されている。そして、現像器10には、現像ローラ32が配設され、該現像ローラ32の表面は、感光体9の表面と所定間隔離間しているとともに、この現像器10に対して、トナーコンテナ31から適宜所定量のトナーが供給可能に構成されていることが好ましい。
なお、単層型感光体9は、第1の実施形態において説明したのと同様に構成することができる。
また、画像形成装置1の下部には、後述する該装置を制御するための制御回路71が収納される基部54が設けられており、該基部54の上側には、記録紙コンテナ55が外部から着脱可能に配置されている。この記録紙コンテナ55には、転写前の記録紙を収納するための収納庫14が設けられていることが好ましい。
そして、押圧バネ52上に載置された記録紙は、搬送ローラ53及び15により、通路16および17を通って補助ローラ30に対面して設けられているレジストローラ18まで搬送されるように構成されている。
また、定着後の記録紙は、搬送ローラ25、26により通路27を通って、さらにローラ28、29により転写済記録紙集積庫6に集積されるように構成されている。
さらにまた、画像形成装置1の上部には、各種情報を表示する表示部47、インストールスイッチ48及び電源スイッチ49が設けられている。
このように構成された画像形成装置1は、電源スイッチ49を開閉することにより、メインモータ(図示しない)が、駆動を開始し、スタートスイッチ(図示しない)により単層型感光体9が時計方向に回転して、光学伝送機構5が、単層型感光体9の表面上に、画像を形成することができる。
また、形成された画像は、現像器10の現像ローラ32によって現像され、現像されたトナー画像は、転写ローラ19によって記録紙に転写される。さらにトナーが転写された記録紙は、定着ローラ23、24によって、定着固定され、ローラ25、28、29により集積庫6に搬送されて集積されることになる。
また、現像ローラ32によって、現像されなかったトナーは、クリーニングブレード13により回収されることになる。
したがって、正帯電型の単層型感光体9において、特定の電子移動度を有する電子輸送材料を、特定量含むことにより、最大電位変化が少なくなり、感光体の耐久性を向上させることができる。
(1)電子写真感光体の作成
第1の電子輸送材料として、式(1)で表されるET−1を20重量部と、第2の電子輸送材料として、式(3)で表されるET´−3を15重量部と、正孔輸送材料として、式(14)で表されるスチルベン誘導体を50重量部と、電荷発生剤として、式(7)で表されるX型無金属フタロシアニン(CG1−1)を2.7重量部と、結着樹脂として、式(15)で表されるポリカーボネート樹脂100重量部と、を溶媒としてのテトラヒドロフラン800重量部に対して添加した。次いで、ボールミルを用いて50時間混合分散して、単層型感光層用の塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布した後、100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型感光層を有する電子写真感光体を得た。
(2)−1 初期表面電位および露光後電位の測定
得られた単層型の電子写真感光体における初期表面電位および露光後電位を測定した。すなわち、得られた電子写真感光体をプリンタFS1010(京セラミタ(株)製、ドラム径30mm、周速度:110mm/sec)に搭載し、400Vになるように帯電させて、初期表面電位および露光後電位を測定した。得られた結果を表1に示す。
初期表面電位(Vo)と、2,000枚連続印刷後における表面電位(V2000)との差を測定した。すなわち、電子写真感光体の帯電電位を400V±5Vに設定し、2,000枚連続印刷後における電子写真感光体の帯電電位(V2000)を同様に測定し、初期表面電位(Vo)との差を求めた。得られた結果を表1に示す。
式(1)で表されるET−1と、式(3)で表されるET´−3との添加比率を変え、実施例2においては、ETM1/全ETMの比率を0.71とし、実施例3においては、ETM1/全ETMの比率を0.86とし、比較例1においては、ETM1/全ETMの比率を1.0とし、比較例2においては、ETM1/全ETMの比率を0とし、比較例3においては、ETM1/全ETMの比率を0.29とし、比較例4においては、ETM1/全ETMの比率を0.43としたほかは、実施例1と同様に、単層型の電子写真感光体を作成して、評価した。得られた結果を表1に示す。
式(1)で表されるET−1のかわりに、式(2)で表されるET−2を使用したほかは、実施例1〜3および比較例1〜4と同様に、単層型の電子写真感光体を作成して、評価した。得られた結果を表2に示す。
したがって、本発明の電子写真感光体は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置における低コスト化、高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
2: ポリゴンミラー
5: 光学伝送機構
7: 上部扉
9: 電子写真感光体
10:現像器
31:トナーコンテナ
32:現像ローラ
33:供給ローラ
39:トナーセンサ
47:表示部
Claims (11)
- 帯電電位が300〜500Vの画像形成装置に用いられるとともに、結着樹脂と、電荷発生剤と、電子移動度が異なる複数の電子輸送材料と、正孔輸送材料と、を含む感光体層を備えた電子写真感光体であって、
TOF法(結着樹脂:平均分子量50,000のポリカーボネート樹脂、電子輸送材料濃度:40重量%、及び電界強度:5×10 5 V/cm)を用いて測定される電子移動度が5×10-8cm2/V/sec以上である電子輸送材料を第1の電子輸送材料とした場合に、電子輸送材料の全体量(全ETM)と、第1の電子輸送材料(ETM1)との添加割合(ETM1/全ETM)を0.5〜0.9の範囲内の値とし、かつ、
前記第1の電子輸送材料と同様の条件にて測定される電子移動度が1×10-9〜5×10-8cm2/V/sec未満である電子輸送材料を第2の電子輸送材料とした場合に、電子輸送材料の全体量(全ETM)と、第2の電子輸送材料(ETM2)との添加割合(ETM2/全ETM)を0.1〜0.5の範囲内の値とすること、
を特徴とする電子写真感光体。 - 前記第1の電子輸送材料の電子移動度(ETD1)と、前記第2の電子輸送材料の電子移動度(ETD2)との割合(ETD1/ETD2)を2〜1,000の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記第1の電子輸送材料の電子移動度(ETD1)と、前記第2の電子輸送材料の電子移動度(ETD2)と差(ETD1−ETD2)を、1×10-8〜100×10-8cm2/V/secの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 初期表面電位と、2,000枚連続印刷後における表面電位との差の絶対値を50V以下の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記正孔輸送材料と、前記電子輸送材料との添加割合(全ETM/全HTM)を0.2〜1.0の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記結着樹脂100重量部に対して、前記第1の電子輸送材料の添加量を5〜50重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記結着樹脂100重量部に対して、前記複数の電子輸送材料の添加量を、7〜70重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記感光体層が、前記第1の電子輸送材料として、下記式(1)で表される電子輸送材料(ET−1)および下記式(2)で表される電子輸送材料(ET−2)、あるいはいずれか一方の電子輸送材料を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記感光体層が、前記第2の電子輸送材料として、下記式(3)で表される電子輸送材料(ET´−3)を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記感光体層が、結着樹脂と、電荷発生剤と、電子移動度が異なる複数の電子輸送材料と、正孔輸送材料と、を単一層中に含む単層型であって、アルミニウム素管上に形成してあるとともに、正帯電性の感光体層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備えるとともに、前記電子写真感光体の帯電電位を300〜500Vの範囲内の値とすることを特徴とする画像形成装置。
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