JP4511299B2 - 電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
ここで、有機感光体には、基体上に、電荷発生剤、結着樹脂及び電荷輸送剤(電子輸送剤、正孔輸送剤)が単一の有機感光層中に分散されている有機単層感光体と、電荷発生剤及び結着樹脂を含有する電荷発生層と、電荷輸送剤及び結着樹脂を含有する電荷輸送層と、を備えた有機積層感光体とが知られている。
この内、有機単層感光体は、特に製造が容易であり、コスト面でも極めて安価であることから、現在、広く使用されるようになってきている。しかしながら、単層感光体は、一般に充分な感度が得られず、繰り返し特性が不安定等になりやすいという問題がある。
そこで、導電性支持基体上に単層型の感光体層を備えた電子写真感光体であって、感光体層の電荷移動度(電界強度:4×105V/cm、温度:23℃、湿度:50%Rh)を1×10-5cm2/(V・sec)以上の値とした電子写真感光体が提案されている(例えば、特許文献1参照)
そこで、このような紙粉付着による不具合の発生の問題を解決するために、クリーニングプロセスが、弾性ブレードを有する画像形成装置であり、像担持体が導電性基体上に、電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤を含有する結着樹脂からなり、かかる結着樹脂の固形分濃度が、全固形分濃度の50wt%以上70wt%以下の単層型電子写真感光体であり、給紙部から転写プロセスへ至る転写紙搬送経路上に一対の紙搬送用ローラが設置され、一対の紙搬送ローラのうち被転写面側の紙搬送ローラが吸着した紙粉を該ローラから取除くクリーニング手段を有することを特徴とする画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、正孔輸送剤の添加量を比較的多くして、正孔輸送性を高める試みもなされているが、感光体が結晶化しやすく感光体用塗工液が作製できないという問題が見られた。
また、特許文献2に記載された感光体層を備えた画像形成装置は、基本的に正孔輸送剤を一種類のみ使用しているため、正孔輸送性が低く、感度特性が不十分であるという問題が見られた。また正孔輸送剤の添加量を比較的多くして、正孔輸送性を高める試みもなされているが、感光体が結晶化しやすいという問題が見られた。
また、特許文献2に記載された画像形成装置は、弾性ブレードを有さない場合、電子写真感光体に紙粉等が付着しやすいという問題があった。
すなわち、本発明の目的は、長期間使用した場合であっても黒点発生が少なく、かつ結晶化を防ぐことができる電子写真感光体、及びそのような電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供することにある。
また、電子写真感光体の結晶化に正孔輸送剤が影響していることが知られているが、所定の接触角差となるように複数の正孔輸送剤を選択することにより、かかる電子写真感光体の結晶化を有効に防止することができる。
また、所定の接触角の差を有する複数の正孔輸送剤を使用することから、感光体層の結晶化を有効に防止して、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
また、除電工程を削除することも可能であり、画像形成装置を小型化することができるとともに、部品点数を減らして効率的にコストダウンを図ることもできる。
第1の実施形態は、結着樹脂と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、電荷発生剤と、を含む単層型の感光体層を備えた電子写真感光体であって、第1の正孔輸送剤として、樹脂分散膜における接触角(純水使用、温度:25℃、感光体層における結着樹脂100重量部に対して、正孔輸送剤を40重量部添加してなる樹脂分散膜において、接触角計により測定される値)が91°未満の値であって、式(2)〜(4)で表わされる化合物(HTM−B〜D)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、第2の正孔輸送剤として、樹脂分散膜における接触角(純水使用、温度:25℃、感光体層における結着樹脂100重量部に対して、正孔輸送剤を40重量部添加してなる樹脂分散膜において、接触角計により測定される値)が91°以上の値であって、式(5)〜(7)、(9)〜(10)及び(12)〜(14)で表わされる化合物(HTM−E〜G、I〜J及びL〜N)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、第1の正孔輸送剤及び第2の正孔輸送剤の合計添加量を、結着樹脂100重量部に対して、20〜100重量部の範囲内の値とするとともに、第1の正孔輸送剤と、第2の正孔輸送剤との重量比率を1:1〜5:1の範囲内の値とし、かつ、第1の正孔輸送剤の樹脂分散膜における接触角と、第2の正孔輸送剤の樹脂分散膜における接触角との差を2〜10°の範囲内の値とした電子写真感光体である。
(1)基本的構成
図1に示すように、単層型感光体10は、導電性基体12上に単一の感光体層14を設けたものである。
また、かかる感光体層は、結着樹脂と、電荷輸送剤と、電荷発生剤と、を含むとともに、さらに必要に応じてレベリング剤やシリル基含有化合物等の添加剤を含むことができる。
(2)−1 種類
各成分を分散させるための結着樹脂は、従来、感光体層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、ポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性に優れているばかりか、機械的特性や正孔輸送剤との相溶性にも優れていることから好ましい結着樹脂である。
(3)−1 接触角
また、正孔輸送剤の種類を適宜選択し、第1の正孔輸送剤の樹脂分散膜における接触角(純水使用、温度:25℃、感光体層における結着樹脂100重量部に対して、正孔輸送剤を40重量部添加してなる樹脂分散膜において、接触角計により測定される値)と、第2の正孔輸送剤の樹脂分散膜における接触角(純水使用、温度:25℃、感光体層における結着樹脂100重量部に対して、正孔輸送剤を40重量部添加してなる樹脂分散膜において、接触角計により測定される値)との差を2〜10°の範囲内の値とすることを特徴とする。
すなわち、本発明によれば、所定の接触角の差を有する複数の正孔輸送剤を組み合わせて使用することにより、極性を上げずに正孔輸送性を効率的に高めることができ、結果として、黒点発生を効率的に低減することができる。さらに、このような構成であれば、結着樹脂との間の相溶性を高めることにより、感光体層の結晶化を有効に防止して、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
ただし、第1及び第2の正孔輸送剤を含む樹脂分散膜における接触角の差が過度に大きくなると、第1及び第2の正孔輸送剤として、使用可能な種類の選択幅が過度に制限される場合がある。
したがって、黒点発生をより低減できるとともに、種類の選択幅を過度に制限しないことから、第1及び第2の正孔輸送剤を含む樹脂分散膜における接触角の差を2.2〜10°の範囲内の値とすることが好ましく、2.5〜5°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
かかる図2から容易に理解できるように、第1及び第2の正孔輸送剤を含む樹脂分散膜における接触角の差が2°以上の値になると、黒点発生数を効率的に低減することができる。
よって、第1及び第2の正孔輸送剤を含む樹脂分散膜における接触角の差を、所定以上の値に制御することにより、極性を上げずに正孔輸送性を効率的に高めることができ、結果として、黒点発生を効率的に低減することができる。
この理由は、このように第1及び第2の正孔輸送剤を含む樹脂分散膜における接触角の値を制限することにより、第1及び第2の正孔輸送剤を含む樹脂分散膜における接触角の差の調整がさらに容易になるためである。
したがって、黒点発生をより低減できるとともに、結晶化をさらに有効に防止するためには、第1の正孔輸送剤の接触角を90°以下の値とするとともに、第2の正孔輸送剤の接触角を93°以上の値とすることが好ましく、第1の正孔輸送剤の接触角を88°以下の値とするとともに、第2の正孔輸送剤の接触角を96°以上の値とすることがさらに好ましい。
なお、第1及び第2の正孔輸送剤を含む樹脂分散膜における接触角は、それぞれ後述する参考例1に示す方法により測定することができる。
また、正孔輸送剤の種類を適宜選択し、第1の正孔輸送剤の樹脂分散膜における表面粗さ(Ra)を12nm超の値とするとともに、第2の正孔輸送剤の樹脂分散膜における表面粗さ(Ra)を12nm以下の値とすることが好ましい。
すなわち、本発明によれば、所定の表面粗さ(Ra)を有する複数の正孔輸送剤を組み合わせて使用することにより、極性を上げずに正孔輸送性を効率的に高めることができ、結果として、黒点発生を効率的に低減することができる。さらに、このような構成であれば、結着樹脂との間の相溶性を高めることにより、感光体層の結晶化を有効に防止して、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
したがって、黒点発生をより低減できるとともに、結晶化をさらに有効に防止するためには、第1の正孔輸送剤の表面粗さ(Ra)を15nm以上の値とするとともに、第2の正孔輸送剤の表面粗さ(Ra)を11nm以下の値とすることが好ましく、第1の正孔輸送剤の表面粗さ(Ra)を18nm以上の値とするとともに、第2の正孔輸送剤の表面粗さ(Ra)を10nm以下の値とすることがさらに好ましい。
また、正孔輸送剤の種類を適宜選択し、第1の正孔輸送剤と、第2の正孔輸送剤と、を含むとともに、当該第1の正孔輸送剤の溶解度(溶媒:テトラヒドロフラン、以下同様である。)を20重量%以上の値とするとともに、第2の正孔輸送剤の溶解度(溶媒:テトラヒドロフラン、以下同様である。)を20重量%未満の値とすることが好ましい。
すなわち、本発明によれば、所定の溶解度を有する複数の正孔輸送剤を組み合わせて使用することにより、正孔輸送性を効率的に高めることができるとともに、除電工程を削除した場合であっても、未露光時の表面電位と、露光時の次帯電工程後の表面電位との差を小さくすることができる。すなわち、初期及び連続印字後の露光メモリの値を効率的に低減することができ、さらに、このような構成であれば、結着樹脂との間の相溶性を高めることができ、感光体層の結晶化を有効に防止して、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
したがって、露光メモリの値をより低減できるとともに、結晶化をさらに有効に防止するためには、第1の正孔輸送剤の溶解度を22重量%以上の値とするとともに、第2の正孔輸送剤の溶解度を18重量%未満の値とすることが好ましく、第1の正孔輸送剤の溶解度を25重量%以上の値とするとともに、第2の正孔輸送剤の溶解度を15重量%未満の値とすることがさらに好ましい。
なお、第1及び第2の正孔輸送剤の種類を適宜選択するにあたり、第1の正孔輸送剤と、第2の正孔輸送剤とのイオン化ポテンシャルの差を0.05〜0.2eVの範囲内の値とすることが好ましく、0.07〜0.18eVの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、このようなイオン化ポテンシャルの差を有する第1及び第2の正孔輸送剤を選択することにより、感光体層中に電荷発生剤に対して2種のイオン化ポテンシャルを有する正孔輸送剤が混在した状態を作り出し、初期及び感光体が電気的に疲労する連続印字後であっても、露光メモリの値をより効率的に低減することができるためである。
この理由は、電荷発生剤に対して第1のイオン化ポテンシャルと第2のイオン化ポテンシャルの位置を考慮することにより、初期及び感光体が電気的に疲労する連続印字後においても電荷発生剤から正孔輸送剤への正孔の受け渡しをスムーズに行うことができるためである。
この理由は、正孔輸送剤と、電荷発生剤とのイオン化ポテンシャルの差を考慮することにより、電荷発生層から正孔輸送層への正孔の注入効率が高まるためである。
なかでも、第1の正孔輸送剤の種類を適宜選択し、電荷発生剤とのイオン化ポテンシャルの差を0.15〜0.35eVの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、第1の正孔輸送剤と、電荷発生剤とのイオン化ポテンシャルの差をそれぞれ考慮することにより、感光体層における残留電位を低く抑えられると同時に露光メモリの値をより効率的に低減することができるためである。
したがって、第1の正孔輸送剤と、電荷発生剤とのイオン化ポテンシャルの差を0.18〜0.33eVの範囲内の値とすることがより好ましく、0.25eV〜0.33eVの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、第1及び第2の正孔輸送剤の種類を適宜選択し、第1の正孔輸送剤の移動度(電界強度:3×105V/cm、濃度:30重量%)を1×10-5cm2/(V・sec)以上の値とし、第2の正孔輸送剤の移動度(電界強度:3×105V/cm、濃度:30重量%)を1×10-5cm2/(V・sec)未満の値とすることが好ましい。
この理由は、第1の正孔輸送剤及び第2の正孔輸送剤の移動度をこのような範囲の値とすることにより、相乗効果によって、正孔輸送性が効率的に高まるためである。また、それぞれこのような範囲の値とすることにより、感光体層における正孔輸送剤の移動度の調整についても容易にあるためである。
すなわち、正孔輸送剤の添加量が比較的少ない場合であっても、高感度及び高応答性を有し、結果として、感光体層における露光メモリの値をより効率的に低減することができる。
したがって、正孔輸送性の向上や添加量とのバランスがより良好になることから、第1の正孔輸送剤の移動度を1.2×10-5cm2/(V・sec)以上の値とし、第2の正孔輸送剤の移動度を6×10-6cm2/(V・sec)未満の値とすることがより好ましい。
また、正孔輸送剤の種類を適宜選択するにあたり、第1の正孔輸送剤が、下記式(2)〜(4)で表わされる化合物(HTM−B〜D)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物であり、第2の正孔輸送剤が、下記式(5)〜(7)、(9)〜(10)及び(12)〜(14)で表わされる化合物(HTM−E〜G、I〜J及びL〜N)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする。
この理由は、第1の正孔輸送剤及び第2の正孔輸送剤として、特定の構造を有する化合物を使用することにより、相乗効果により、露光メモリの値をより効率的に低減することができ、また結晶化を有効に防止することができるためである。
正孔輸送剤の添加量に関し、感光体層における第1の正孔輸送剤及び第2の正孔輸送剤の合計添加量を25重量%以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が25重量%未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。但し、かかる正孔輸送剤の添加量が過度に多くなると、正孔輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合がある。
したがって、感光体層における第1の正孔輸送剤及び第2の正孔輸送剤の合計添加量を25〜70重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、28〜60重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が20重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる正孔輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、正孔輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、かかる正孔輸送剤の添加量を30〜80重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、感光体層における第1の正孔輸送剤の添加量をA1とし、第2の正孔輸送剤の添加量をA2としたときに、A1:A2で表される重量比率を1:1〜5:1の範囲の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる重量比率を所定範囲内の値とすることにより、結晶化を有効に防止しつつ、黒点発生をより効率的に低減することができるためである。
したがって、第1の正孔輸送剤と、第2の正孔輸送剤との重量比率を1:1〜3:1の範囲の値とすることがさらに好ましい。
(4)−1 種類
本発明に用いられる電子輸送剤としては、ジフェノキノン誘導体及びピレン誘導体を含む化合物が好ましい。この理由は、電子輸送剤として、このような電子受容性に優れた化合物を使用することにより、電荷発生剤との相溶性が優れたものになることから、感度特性や耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができるためである。
これらの電子輸送剤の具体例として、下記式(15)〜(22)で表わされる化合物(ETM−A〜ETM−H)が挙げられる。
例えば、ベンゾキノン誘導体のほか、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、これらの電子輸送剤のうち、電界強度が5×105v/cmにおける電子移動度が1.0×10-8cm2/V/sec以上である化合物がより好ましい。
また、電子輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる複数の電子輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる複数の電子輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、電子輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、電子輸送剤の添加量を20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかる全ETM/全HTMの比率がかかる範囲外の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。
したがって、かかる全ETM/全HTMの比率を0.5〜1.25の範囲内の値とすることがより好ましい。
(5)−1 種類
本発明の電子写真感光体に使用される電荷発生剤としては、無金属フタロシアニン(τ型又はX型)、チタニルフタロシアニン(α型又はY型)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)、及びクロロガリウムフタロシアニン(II型)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
この理由は、電荷発生剤の種類を特定することにより、正孔輸送剤及び電子輸送剤を併用した場合に、感度特性、電気特性及び安定性等がより優れた電子写真感光体を提供することができるためである。
これらの電荷発生剤のうち、具体的に、下記式(23)〜(26)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜CGM−D)を使用することがより好ましい。
また、電荷発生剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、0.2〜40重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる複数の電荷発生剤の添加量が0.2重量部未満の値になると、量子収率を高める効果が不十分となり、電子写真感光体の感度、電気特性、安定性等を向上させることができなくなるためである。一方、かかる複数の電荷発生剤の添加量が40重量部を超えた値になると、可視光における赤色領域、近赤外領域、あるいは赤外領域に波長を有する光に対する吸光係数を大きくする効果が不十分となり、感光体の感度特性、電気特性、及び安定性等を向上させることができない場合があるためである。
したがって、電荷発生剤の添加量を0.5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、感光体層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光体層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
また、単層型感光体における感光体層の厚さは、通常、5〜100μmの範囲内の値であり、好ましくは10〜50μmの範囲内の値である。
そして、このような感光体層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上記金属が蒸着又はラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス、あるいはカーボンブッラク等の導電性微粒子を分散してなるプラスッチク材料等があげられる。
また、導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。さらに、感光体層を形成する場合には、結着樹脂と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、電荷発生剤と、を適当な溶剤とともに、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合した後塗布して乾燥させればよい。
また、単層型感光体の構成に関して、図1(b)に示すように、導電性基体12と感光体層14との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層16が形成されている単層型感光体10´でもよい。また、図1(c)に示すように、感光体層14の表面には、保護層18が形成されていてもよい単層型感光体10´´でもよい。
感光体層における正孔移動度(電界強度:3×105V/cm)を3×10-6cm2/(V・sec)以上の値とすることが好ましい。
この理由は、感光体層における正孔移動度を所定値以上とすることにより、露光メモリに影響を及ぼす正孔輸送剤間の正孔の受け渡しが容易になって、未露光時の表面電位と、露光時の次帯電工程後の表面電位との差が小さくなり、露光メモリの値をより効率的に低減することができるためである。
したがって、感光体層における正孔移動度を4×10-6cm2/(V・sec)以上の値とすることがより好ましく、5×10-6cm2/(V・sec)以上の値とすることがさらに好ましい。
帯電電位を850Vから、150Vに減衰させるために必要な露光エネルギーを1μJ/cm2以下の値とすることが好ましい。
この理由は、露光エネルギーを1μJ/cm2以下の値とすることにより、長期間使用時においても、露光エネルギーによる感光体の特性に対する影響が少なく、安定した電気特性を保持することができ、優れた耐久性を有する感光体を得ることができるためである。
第2の実施形態は、第1の実施形態の電子写真感光体(以下、単に、感光体と称する場合がある。)を備えるとともに、電子写真感光体の周囲に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程をそれぞれ配置し、画像形成を行うことを特徴とした画像形成装置である。
(1)構成
第2の実施形態の画像形成方法を実施するにあたり、図3に示すような画像形成装置である複写機30を好適に使用することができる。かかる複写機30は、画像形成ユニット31、排紙ユニット32、画像読取ユニット33、及び原稿給送ユニット34を備えている。また、画像形成ユニット31には、画像形成部31a及び給紙部31bがさらに備えられている。そして、図示された例では、原稿給送ユニット34は、原稿載置トレイ34a、原稿給送機構34b、及び原稿排出トレイ34cを有しており、原稿載置トレイ34a上に載置された原稿は、原稿給送機構34bによって画像読取位置Pに送られた後、原稿排出トレイ34cに排出される。
そして、原稿が原稿読取位置Pに送られた段階で、画像読取ユニット33において、光源33aからの光を利用して、原稿上の画像が読み取られる。すなわち、CCD等の光学素子33bを用いて、原稿上の画像に対応した画像信号が形成される。
一方、給紙部31bに積載された記録用紙(以下、単に用紙と呼ぶ。)Sは、一枚ずつ画像形成部31aに送られる。この画像形成部31aには、像担持体である感光体ドラム41が備えられており、さらに、この感光体ドラム41の周囲には、帯電器42、露光器43、現像器44、及び転写ローラ45が、感光体ドラム41の回転方向に沿って配置されている。
この静電潜像に基づき、現像器44によりトナーを付着させて現像し、感光体ドラム41の表面にトナー像を形成する。そして、このトナー像は、感光体ドラム41と転写ローラ45とのニップ部に搬送される用紙Sに転写像として転写される。次いで、転写像が転写された用紙Sは、定着ユニット47に搬送されて、定着プロセスが行われる。
なお、感光体ドラム41として、第1の実施形態で説明した電子写真感光体を用いることが好ましい。
1.電子写真感光体の作成
容器内に、結着樹脂として、式(27)で表されるZ型ポリカーボネート樹脂(帝人化成製、パンライトTS2020)(Resin−A)を100重量部と、電荷発生剤として、式(23)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−A)を2.0重量部と、第1の正孔輸送剤として、式(1)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)を30重量部と、第2の正孔輸送剤として、式(5)で表されるスチルベン誘導体(HTM−E)を20重量部と、電子輸送剤として、式(15)で表されるナフトキノン誘導体(ETM−A)を20重量部と、溶媒としてのテトラヒドロフランを800重量部と、を収容した。
次いで、ボールミルを用いて24時間混合分散して、単層型感光体層用の塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型感光体層を有する電子写真感光体を得た。
(1)接触角の測定
第1及び第2の正孔輸送剤を用いて、それぞれ樹脂膜を作成した。すなわち、式(27)で表されるZ型ポリカーボネート樹脂(帝人化成製、パンライトTS2020)(Resin−A)を100重量部と、第1の正孔輸送剤として、式(1)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)を40重量部と、溶媒としてのテトラヒドロフランを800重量部と、を、ボールミルを用いて24時間混合分散して、塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚20μmの樹脂膜を得た。
また、同様に、式(27)で表されるZ型ポリカーボネート樹脂(帝人化成製、パンライトTS2020)(Resin−A)を100重量部と、第2の正孔輸送剤として、式(5)で表されるスチルベン誘導体(HTM−E)を40重量部と、溶媒としてのテトラヒドロフランを800重量部と、を、ボールミルを用いて24時間混合分散して、塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚20μmの樹脂膜を得た。
得られた第1及び第2の正孔輸送剤に対応した樹脂膜の接触角(測定温度:25℃、純水使用)を、接触角計(協和界面科学社製、FACE-CONTACT-ANGLE METER)を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
得られた電子写真感光体を、京セラミタ製プリンタDP−560に搭載し、35℃、85%Rhの環境条件で、A4紙を10,000枚連続印刷し、12時間放置した。その後、A4紙の白紙を印字して、A4紙上に発生した黒点数を計測した。得られた結果を表1に示す。また、黒点の発生数を下記基準に準じて評価することができる。
0〜5個/A4紙:黒点の発生が全く観察されない。
6〜10個/A4紙:黒点の発生がほとんど観察されない。
11〜20個/A4紙:黒点の発生がわずかに観察される。
21個以上/A4紙:黒点の発生が顕著に観察される。
得られた電子写真感光体を、GENENTEC社製のドラム感度試験機に搭載した後、表面電位を850Vに帯電させた状態で、ハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単光色を露光エネルギー1.5μJ/cm2で照射し、露光開始から0.5秒経過した時点での、表面電位を明電位として、その値から感度評価を実施した。得られた結果を表1に示す。また、明電位の値を下記基準に準じて評価することができる。
139V以下:最適な明電位である。
140〜169V:適応可能な明電位である。
170〜199V:若干明電位不足である。
200V以上:明電位不足である。
参考例2〜3、実施例4〜9、参考例10〜13においては、表1に示すように、第1の正孔輸送剤及び第2の正孔輸送剤の種類を変えて、接触角差を2°以上の範囲で変えたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例1〜3においては、表1に示すように、第1の正孔輸送剤及び第2の正孔輸送剤の種類を変えて、接触角差を2°未満に変えたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して評価した。得られた結果を表1に示す。
1.電子写真感光体の作成
容器内に、結着樹脂として、式(27)で表されるZ型ポリカーボネート樹脂(帝人化成製、パンライトTS2020)(Resin−A)を100重量部と、電荷発生剤として、式(23)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−A)を2.0重量部と、第1の正孔輸送剤として、式(1)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)を30重量部と、第2の正孔輸送剤として、式(5)で表されるスチルベン誘導体(HTM−E)を20重量部と、電子輸送剤として、式(15)で表されるナフトキノン誘導体(ETM−A)を20重量部と、溶媒としてのテトラヒドロフランを800重量部と、を収容した。
次いで、ボールミルを用いて24時間混合分散して、単層型感光体層用の塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型感光体層を有する電子写真感光体を得た。
(1)表面粗さ(Ra)の測定
第1及び第2の正孔輸送剤を用いて、それぞれ樹脂膜を作成した。すなわち、式(27)で表されるZ型ポリカーボネート樹脂(帝人化成製、パンライトTS2020)(Resin−A)を100重量部と、第1の正孔輸送剤として、式(1)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)を40重量部と、溶媒としてのテトラヒドロフランを800重量部と、を、ボールミルを用いて24時間混合分散して、塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚20μmの樹脂膜を得た。
また、同様に、式(27)で表されるZ型ポリカーボネート樹脂(帝人化成製、パンライトTS2020)(Resin−A)を100重量部と、第2の正孔輸送剤として、式(5)で表されるスチルベン誘導体(HTM−E)を40重量部と、溶媒としてのテトラヒドロフランを800重量部と、を、ボールミルを用いて24時間混合分散して、塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚20μmの樹脂膜を得た。
得られた第1及び第2の正孔輸送剤に対応した樹脂膜の表面粗さ(Ra)を、3次元干渉顕微鏡(Veeco社製、Wyko NT-1100)を用いてVSIモードで測定した。得られた結果を表2に示す。
得られた電子写真感光体の外観を目視にて観察し、下記基準に準じて結晶性評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
◎:結晶化が全く観察されない。
○:結晶化がほとんど観察されない。
△:結晶化がわずかに観察される。
×:結晶化が顕著に観察される。
参考例1で説明した黒点発生数の測定法と同様の方法で測定した。得られた結果を表2に示す。
参考例1で説明した感度評価と同様の方法で評価した。得られた結果を表2に示す。
参考例15、実施例16〜17においては、表2に示すように、第1の正孔輸送剤及び第2の正孔輸送剤の種類を変えて、表面粗さ(Ra)の値を一方は12nm以下の範囲、もう一方は12nm超の範囲で変えたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して評価した。得られた結果を表2に示す。
したがって、本発明の電子写真感光体は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置における低コスト化、高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
12:導電性基体
14:感光体層
16:バリア層
18:保護層
30:複写機
31:画像形成ユニット
31a:画像形成部
31b:給紙部
32:排紙ユニット
33:画像読取ユニット
33a:光源
33b:光学素子
34:原稿給送ユニット
34a:原稿載置トレイ
34b:原稿給送機構
34c:原稿排出トレイ
41:感光体ドラム
42:帯電器
43:露光源
44:現像器
45:転写ローラ
Claims (5)
- 結着樹脂と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、電荷発生剤と、を含む単層型の感光体層を備えた電子写真感光体であって、
第1の正孔輸送剤として、樹脂分散膜における接触角(純水使用、温度:25℃、前記感光体層における結着樹脂100重量部に対して、正孔輸送剤を40重量部添加してなる樹脂分散膜において、接触角計により測定される値)が91°未満の値であって、下記式(2)〜(4)で表わされる化合物(HTM−B〜D)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、
第2の正孔輸送剤として、樹脂分散膜における接触角(純水使用、温度:25℃、前記感光体層における結着樹脂100重量部に対して、正孔輸送剤を40重量部添加してなる樹脂分散膜において、接触角計により測定される値)が91°以上の値であって、下記式(5)〜(7)、(9)〜(10)及び(12)〜(14)で表わされる化合物(HTM−E〜G、I〜J及びL〜N)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、
前記第1の正孔輸送剤及び第2の正孔輸送剤の合計添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、20〜100重量部の範囲内の値とするとともに、
前記第1の正孔輸送剤と、第2の正孔輸送剤との重量比率を1:1〜5:1の範囲内の値とし、かつ、
前記第1の正孔輸送剤の樹脂分散膜における接触角と、第2の正孔輸送剤の樹脂分散膜における接触角との差を2〜10°の範囲内の値とすることを特徴とする電子写真感光体。
- 前記感光体層における第1の正孔輸送剤及び第2の正孔輸送剤の合計添加量を25重量%以上の値とすることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記第1の正孔輸送剤の溶解度(溶媒:テトラヒドロフラン)を20重量%以上の値とするとともに、前記第2の正孔輸送剤の溶解度(溶媒:テトラヒドロフラン)を20重量%未満の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体を備えるとともに、当該電子写真感光体の周囲に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を実施するための部位を配置したことを特徴とする画像形成装置。
- クリーナレス方式であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
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