JP6036672B2 - 水酸化ニッケル粉末のケーキ乾燥方法およびそれを用いたニッケル粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
まず、ニッケル粉末と、エチルセルロース等の樹脂と、ターピネオール等の有機溶剤等とを混練して得られた導電ペーストを、誘電体グリーンシート上にスクリーン印刷して内部電極を作製する。次に、印刷された内部電極が交互に重なるように誘電体グリーンシートを積層し、圧着する。その後、積層体を所定の大きさにカットし、有機バインダとして使用したエチルセルロース等の樹脂の燃焼除去を行うための脱バインダ処理を行った後、1300℃まで高温焼成してセラミック体を得る。そして、このセラミック体に外部電極を取り付け、積層セラミックコンデンサとする。
近年、小型化及び大容量化が求められている積層セラミックコンデンサでは、それを構成する内部電極及び誘電体ともに、薄層化が進められており、内部電極用のニッケル粉末は、より小径化が進んでいる。
このような凝集体を含む水酸化ニッケル粉末の篩処理では、粗大かつ凝集した乾燥物の乾燥凝集力が非常に強いため、篩上が多量に発生し、焙焼還元工程に用いる篩下の水酸化ニッケル粉末の収率が低下する問題が起きやすい。
水酸化ニッケルのケーキを入れた乾燥機内を減圧雰囲気とし、外気を取り込みながら静置乾燥する第一の工程と、乾燥機内を密閉してさらに減圧し、乾燥機内の金属水酸化物のケーキを撹拌解砕する第ニの工程からなることを特徴とする水酸化ニッケルのケーキ乾燥方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、前記第一の工程で取り込む外気は、1分当り乾燥機内体積の0.375〜1.0倍の流量であることを特徴とする水酸化ニッケルのケーキ乾燥方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1または2の発明において、前記第ニの工程は、減圧後、乾燥機内の圧力が70kPaに到達する前に開始することを特徴とする水酸化ニッケルのケーキ乾燥方法が提供される。
さらに、得られた水酸化ニッケル粉末を非還元雰囲気で焙焼処理して酸化ニッケル粉末とし、次に還元雰囲気で加熱してニッケル粉末とすることで、低コストのニッケル粉末を提供することも可能となる。
本発明の水酸化ニッケルのケーキ乾燥方法は、ニッケル粉の製造方法における最初の工程として採用される。
ニッケル塩としては、例えば塩化ニッケルや硫酸ニッケルなどの水溶性ニッケル塩を用いればよい。またアルカリ土類金属の水溶性塩をニッケル塩水溶液に混合しておき、水酸化ニッケル粉末中のアルカリ土類金属濃度を0.002〜1質量%としてもよい。水酸化ニッケル粉末中にアルカリ土類金属を含有すると、ニッケル粉末への還元時に微細化および球状化、ネッキングの抑制、さらには粒子表面の平滑性改善の効果がある。
また、含水率が40質量%よりも高い状態であると、水分の除去に時間がかかり乾燥工程の時間が長くなるためである。ケーキ含水率は、37〜40質量%であることがより好ましい。
乾燥の第一の工程では、水酸化ニッケルのケーキを入れた乾燥機内の排気をしながら大気圧よりも少し低い減圧雰囲気、例えば大気圧の0.8〜0.99倍の圧力とし、外気を取り込みながら静置乾燥する。
乾燥の第一の工程から第ニの工程に切り換えるタイミングは、水酸化ニッケルのケーキの平均含水率が30質量%に到達してからとするのが望ましい。
その理由としては、含水率が30質量%よりも高いまま第ニの工程の乾燥を行うと、均一な酸化還元処理を促すために酸化還元処理前に行う水酸化ニッケル粉末の篩処理が困難になり、製品に寄与しない篩上に残る水酸化ニッケル粉末の凝集体が多量に発生するためである。
篩上に残る水酸化ニッケル粉末が多量に発生する理由としては、詳細は不明であるが、含水率の高い状態にて乾燥機内で撹拌解砕しながら乾燥しようとすると、水酸化ニッケルのケーキの一部が解砕され微細化した後に、その微細物を造粒させながら乾燥することになり、含水率が低い状態で解砕された場合よりも強固な乾燥凝集が引き起こされるためと思われる。
撹拌解砕を始める時の圧力は、70kPa以上が望ましく、100kPa以上が好ましい。その理由としては、十分に減圧して撹拌解砕を開始すると突沸状態になり水蒸気が多量に発生し、ケーキが飛散し、乾燥機内壁面に水酸化ニッケル粉末が固着してしまうことがあるためである。
密閉が保持できる減圧方式で、機内に撹拌羽根を設置もしくは乾燥機本体に振動もしくは回転を与え乾燥機内の混合、撹拌ができるものであればよい。また、こうした乾燥機であれば、第一の工程の乾燥機内の圧力は大気導入の口径と機内の圧力レベルを調整すれば容易に設定でき、第ニの工程の乾燥機内の圧力も容易に設定できる。具体的には、混合乾燥機、振動流動乾燥機、流動混合乾燥機、回転乾燥機等が挙げられる。
本発明のニッケル粉の製造方法では、前記のとおり、最初の工程として、ニッケル塩を含む水溶液を、pH制御し撹拌しながら中和晶析して、水酸化ニッケルスラリーを得るようにし、次に、この水酸化ニッケルスラリーをフィルタープレス等により固液分離して水酸化ニッケルのケーキとし、それを加熱乾燥することで水酸化ニッケル粉末とする。得られた水酸化ニッケル粉末は、篩処理にて平均粒径300μm以下の粉末とするのが望ましい。
本発明では、次の工程として、水酸化ニッケル粉末を非還元雰囲気にて焙焼処理して酸化ニッケル粉末とする。焙焼処理は、公知の方法を用いればよく、例えば静置方式や非還元性雰囲気中に水酸化ニッケル粉末を分散せしめる方式などが用いられる。焙焼温度、時間、非還元雰囲気ガスの導入もしくは排出流量等の条件も、公知の条件から設定すればよい。
最後の工程として、酸化ニッケル粉末を還元雰囲気中で加熱してニッケル粉末とする。還元雰囲気は水素ガスもしくは水素ガスを混合した窒素、アルゴン等の不活性ガスとすればよい。加熱温度及び時間は、所望の結晶粒径、ニッケル粉末の凝集防止の観点から設定すればよいが、一般的に加熱温度は300〜500℃とし、また必要に応じて還元後、凝集粉末の解砕や分級を行ってもよい。
105℃の大気乾燥機内に試料10gを入れ2時間静置乾燥し、以下の式1から含水率を求めた。
含水率={(乾燥前質量)−(乾燥後質量)}÷(乾燥前質量)×100 (%)
乾燥後の水酸化ニッケル粉末から300μmよりも大きな凝集体を除くために篩処理を行い、篩を通過した水酸化ニッケル粉末の質量から、篩下率を以下の式2にて求めた。
篩下率=(篩下質量)÷(乾燥が終了した回収物の篩処理前質量)×100 (%)
含水率35質量%の水酸化ニッケルのケーキ10kgを振動流動乾燥機(型式:VU−30、製造元:中央化工機株式会社)に投入し、物温が最大で150℃になるよう振動流動乾燥機本体の水蒸気圧を設定した。
第一の工程として水酸化ニッケルのケーキを入れた乾燥機内を大気圧よりも少し低い低圧減圧雰囲気にし、外気を乾燥機内に1分当り乾燥機内体積の0.375倍の流量で(乾燥機内体積(20L)に対して7.5L/min.)取り込みながら静置乾燥した。第一の工程は、水酸化ニッケルのケーキの含水率が30質量%になった時点で終了とした。
第ニの工程として、乾燥機内を密閉し真空ポンプを稼動させ圧力が70kPaに到達する前に、撹拌解砕機能である振動運転を開始した。第ニの工程は水酸化ニッケル粉末の含水率が1.0質量%以下になった時点で乾燥終了とした。
乾燥に要した時間は、約90分であった。乾燥終了時点の水酸化ニッケル粉末の乾燥機内への固着状況を確認し、得られた水酸化ニッケル粉末を篩処理して篩下率を測定した。結果を表1に示す。
その後、固定床タイプの炉内の均熱帯部分に水酸化ニッケル粉末を層厚33mmで仕込み、大気を水酸化ニッケル1kg当たり1.2L/min.で導入しながら600℃で3.5時間の間、焙焼処理して酸化ニッケル粉末を得た。引き続き、そのまま窒素ガスでパージしながら450℃まで降温した後に、酸化ニッケル1kg当たり35L/min.の水素ガスと170L/min.の窒素ガス雰囲気下、450℃で6時間加熱処理してニッケル粉末を得た。
含水率40質量%の水酸化ニッケルのケーキ10kgを振動流動乾燥機(型式:VU−30、製造元:中央化工機株式会社)に投入し、物温が最大で150℃になるよう振動流動乾燥機本体の水蒸気圧を設定した。
第一の工程として水酸化ニッケルのケーキを入れた乾燥機内を大気圧よりも少し低い減圧雰囲気にし、外気を乾燥機内に1分当り乾燥機内体積の0.375倍の流量で(乾燥機内体積(20L)に対して7.5L/min.)取り込みながら静置乾燥した。第一の工程は、水酸化ニッケルのケーキの含水率が30質量%になった時点で終了とした。第ニの工程として、乾燥機内を密閉し真空ポンプを稼動させ圧力が70kPaに到達する前に、撹拌解砕機能である振動運転を開始した。第ニの工程は水酸化ニッケル粉末の含水率が1.0質量%以下になった時点で乾燥終了とした。
乾燥に要した時間は、約95分であった。乾燥終了時点の水酸化ニッケル粉末の乾燥機内への固着状況を確認し、得られた水酸化ニッケル粉末を篩処理して篩下率を測定した。結果を表1に示す。その後、実施例1と同様にして水酸化ニッケル粉末を処理してニッケル粉末を得た。
含水率35質量%の水酸化ニッケルのケーキ10kgを振動流動乾燥機(型式:VU−30、製造元:中央化工機株式会社)に投入し、物温が最大で150℃になるよう振動流動乾燥機本体の水蒸気圧を設定した。
第一の工程として水酸化ニッケルのケーキを入れた乾燥機内を大気圧よりも少し低い低圧減圧雰囲気にし、外気を乾燥機内に1分当り乾燥機内体積の0.375倍の流量で(乾燥機内体積(20L)に対して7.5L/min.)取り込みながら静置乾燥した。第一の工程は、水酸化ニッケルのケーキ含水率が32質量%になった時点で終了とした。第ニの工程として、乾燥機内を密閉し真空ポンプを稼動させ圧力が70kPaに到達する前に、撹拌解砕機能である振動運転を開始した。第ニの工程は水酸化ニッケル粉末の含水率が1.0質量%以下になった時点で乾燥終了とした。
乾燥に要した時間は、約95分であった。乾燥終了時点の水酸化ニッケル粉末の乾燥機内への固着状況を確認し、得られた水酸化ニッケル粉末を篩処理して篩下率を測定した。結果を表1に示す。その後、実施例1と同様にして水酸化ニッケル粉末を処理してニッケル粉末を得た。
実施例1において、第一の工程で水酸化ニッケルのケーキを入れた乾燥機内を大気圧よりも少し低い低圧減圧雰囲気にし、外気を乾燥機内に1分当り乾燥機内体積の1.0倍の流量(乾燥機内体積(20L)に対して20L/min.)で取り込みながら静置乾燥した以外は同様にして乾燥した。
乾燥に要した時間は、約85分であった。また乾燥終了時点の水酸化ニッケル粉末の乾燥機内への固着はなく、得られた水酸化ニッケル粉末を篩処理した後の篩下率は99%であった。結果を表1に示す。その後、実施例1と同様にして水酸化ニッケル粉末を処理してニッケル粉末を得た。
含水率35質量%の水酸化ニッケルのケーキ10kgを振動流動乾燥機(型式:VU−30、製造元:中央化工機株式会社)に投入し、物温が最大で150℃になるよう振動流動乾燥機本体の水蒸気圧を設定した。乾燥機内を密閉し真空ポンプを稼動させ圧力が70kPaに到達する前に、撹拌解砕機能である振動運転を開始した。水酸化ニッケル粉末の含水率が1.0質量%以下になった時点で乾燥終了とした。
乾燥に要した時間は、約240分であった。乾燥終了時点の水酸化ニッケル粉末の乾燥機内への固着状況を確認し、得られた水酸化ニッケル粉末を篩処理して篩下率を測定した。結果を表1に示す。
含水率35質量%の水酸化ニッケルのケーキ10kgを振動流動乾燥機(型式:VU−30、製造元:中央化工機株式会社)に投入し、物温が最大で150℃になるよう振動流動乾燥機本体の水蒸気圧を設定した。そのまま、大気圧にて静置乾燥を実施し、水酸化ニッケル粉末の含水率が1.0質量%以下になった時点で乾燥終了とした。
乾燥に要した時間は、約480分であった。乾燥終了時点の水酸化ニッケル粉末の乾燥機内への固着状況を確認し、得られた水酸化ニッケル粉末を篩処理して篩下率を測定した。結果を表1に示す。
上記実験結果を示す表1から、水分を含む水酸化ニッケルのケーキを加熱乾燥する工程において、本発明の第一の工程を行わず最初から第ニの工程のみとした比較例1は、乾燥中に造粒してしまい、造粒した粒子中の水分除去に時間がかかり乾燥時間が長くなったことが分かる。
Claims (5)
- ニッケル塩を含む水溶液を中和晶析して水酸化ニッケルスラリーとし、このスラリーを固液分離して得られる水分を含んだ水酸化ニッケルのケーキを加熱乾燥させる水酸化ニッケルのケーキ乾燥方法において、
水酸化ニッケルのケーキを入れた乾燥機内を減圧雰囲気とし、外気を取り込みながら静置乾燥する第一の工程と、乾燥機内を密閉してさらに減圧し、乾燥機内の金属水酸化物のケーキを撹拌解砕する第二の工程からなることを特徴とする水酸化ニッケルのケーキ乾燥方法。 - 前記水酸化ニッケルのケーキの平均含水率が30質量%以下に到達した時点で、前記第一の工程から前記第二の工程に移行することを特徴とする請求項1記載の水酸化ニッケルのケーキ乾燥方法。
- 前記第一の工程で取り込む外気は、1分当り乾燥機内体積の0.375〜1.0倍の流量であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の水酸化ニッケルのケーキ乾燥方法。
- 前記第二の工程は、減圧後、乾燥機内の圧力が70kPaに到達する前に開始することを特徴とする請求項1または請求項2記載の水酸化ニッケルのケーキ乾燥方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の乾燥方法で水酸化ニッケルのケーキを加熱乾燥して得られる水酸化ニッケル粉末を、非還元雰囲気下で焙焼処理して酸化ニッケル粉末を得る工程と、酸化ニッケル粉末を還元雰囲気下で加熱処理してニッケル粉末を得る工程を含むことを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
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