JP5663895B2 - ニッケル粉及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ニッケル粉及びその製造方法に係り、より詳しくは、積層セラミックコンデンサーの内部電極形成用として好適に用いることができる微細で均一な粒径のニッケル粉とその製造方法に関する。
積層セラミックコンデンサー(以下、「MLCC」とも称する)は、誘電体層と内部電極を交互に積層させた構造を有する小型高容量の優れたコンデンサーである。誘電体層には、チタン酸バリウムに代表されるセラミックス系材料が用いられており、一方、内部電極には、貴金属系材料が用いられていたが、近年においては、低コストであることからニッケル系材料が主流となっている。
ニッケル粉を内部電極形成用とするMLCCは、概略、以下の方法で製造される。
すなわち、ニッケル粉と有機溶剤を種々の添加剤とともに混練してニッケルペーストを製造し、これを誘電体のグリーンシートに印刷し、乾燥させる。次いで、これを所望数だけ積層し、熱圧着した後にチップ形状に切断し、その後、300℃程度の温度で脱バインダーを行った後、内部電極と誘電体グリーンシートを千数百度の温度で焼結し、ニッケルなどによる外部電極を形成する。
上記脱バインダー処理は、酸化雰囲気中で熱処理しバインダーを燃焼させて行われている。通常、誘電体グリーンシートのバインダーには、ポリビニルアルコール系化合物が用いられ、内部電極形成用のニッケルペーストのバインダーにはエチルセルロース系化合物が用いられている。脱バインダー工程での雰囲気、温度は、両者の燃焼タイミング、発生ガス量を制御することで調整されている。
この脱バインダー工程では、ニッケル粉から意図しないガスが発生したり、ニッケル粉が酸化により顕著な体積変化を生じたりすると、MLCC中に割れや層間剥離が生じる危険性がある。このため、ニッケル粉には、この工程で上記ガス発生や酸化による顕著な体積変化が生じないように、その製造工程にて純度が厳密に制御され、表面状態が調整されている。また、誘電体はセラミックであり、内部電極は金属であることから、一般的に、焼結時の収縮量は内部電極の方が大きく、しかも融点が金属のほうが低いことから、焼結開始温度も内部電極の方が低い。ところが、この焼結時の収縮量や焼結開始温度の差が大きいと、焼結後の電極に穴開きや途切れが発生して電極として機能しなくなる。したがって、ニッケルペーストにはセラミック粉末などを混合し、また、ニッケル粉自体に他の元素を微量に添加して焼結現象を遅延させている。
一方、当業界では、MLCCの更なる小型化、高容量化を目指して、内部電極および誘電体厚みの薄層化、高積層化が進められている。薄層化された内部電極では、ニッケル粉の粒径が大きいと電極厚み方向に存在する粒子数が少なく、また、粒子間の空隙も大きくなることから、上記電極の穴開きや途切れの発生が助長される。このため、内部電極用のニッケル粉にも、さらに微細な粒径のものが求められている。また、薄層化されたMLCCは、粗大なニッケル粉が混入していると電極間のショートが発生するため、粗大粒子が含まれないことが要求されている。ただし、平均粒径よりも大幅に細かい粒子が存在すると脱バインダー工程での酸化、焼結工程での焼結開始温度の低温化が生じるため、極端に粒径の細かい粒子が含まれないことも重要である。
以上のように、内部電極用ニッケル粉には、脱バインダー工程でガスを発生し難いこと、誘電体の焼結収縮特性に近いことだけでなく、微細で均一な粒径であることが最も重要な要求特性とされている。
このような状況下、微細で粗大粒子を含まないニッケル粉とその製造方法が種々提案されている。
まず、塩化ニッケル蒸気の気相水素還元法による平均粒径が0.2〜0.6μmのニッケル粉であり、平均粒径の2.5倍以上の粒径をもつ粗粒子の存在率が個数基準で0.1%以下としたニッケル粉が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、平均粒径が0.1〜1.0μmのニッケル粉の製造方法として、粒径2μm以上のニッケル粉の含有率が個数基準で700/100万以下となるように、塩化ニッケル蒸気の気相水素還元法等で得たニッケル粉を液体サイクロン等で分級する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
上記提案は、いずれも塩化ニッケル蒸気の気相水素還元法によるものであるが、この他に、原料ニッケル塩を水溶液中で還元処理する湿式法によるニッケル粉の製造方法も提案されている(例えば、特許文献3)。ここにはレーザー回折散乱式粒度分布測定による平均粒径の1.5倍以上の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の20%以下であり、平均粒子径の0.5倍以下の粒子径を持つ粒子個数が全粒子個数の5%以下であり、SEM観察による平均一次粒子径が0.1〜2μmであるニッケル粉が記載されている。このニッケル粉は、上記湿式法により得られた凝集体を含むニッケル粉の原粉を解粒処理して得られるものである。
しかしながら、上記気相水素還元法で得られるニッケル粉は結晶性もよく特性面で優れるが、生産性が低くコスト高となる。また、気相水素還元法等で得たニッケル粉を分級することは、歩留が悪化してより高コストとなる。
また、上記湿式法により得られた凝集体を解粒処理しても、解粒前の一次粒子径が均一でなければ分級する必要があり、歩留悪化による高コスト化は避けられない。湿式法で製造すると粒子径が比較的均一なニッケル粉が得られるが、生産性が低くコスト高となってしまう。
そのため、本出願人は、ニッケル粉をより低コストで製造するために、反応槽内のスラリーに、含ニッケル溶液を連続的に添加しつつ、アルカリ溶液を添加して水酸化ニッケルを生成させ、該スラリーを濾過し、水洗し、乾燥して水酸化ニッケルを得、これを還元剤として水素を用い、還元温度を400〜550℃として加熱還元することを提案している(特許文献4)。これにより、水酸化ニッケルの加熱還元によってニッケル粉の大量生産が可能となり、コストを低減できたが、微細で均一な粒径のニッケル粉が得難いという問題があった。
以上のように、微細で均一な粒径のニッケル粉を低コストで大量生産できる方法は、未だ開発されていないのが実状である。
特開平11−189801号公報 特開2001−73007号公報 特開2001−247903号公報 特開2003−213310号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、微細で均一な粒径を持ったニッケル粉、及びそれを大量に低コストで製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ね、特定の水酸化ニッケル粉を焙焼して、酸化ニッケル粉とした後、この酸化ニッケルからなる被還元物を換算厚みで3mm以下に保持しながら、表面に還元ガスを特定の流速で供給して加熱還元することにより、微細で均一な粒径のニッケル粉が得られ、低コストのMLCC内部電極用ニッケル粉として好ましく使用できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、周期表第2族元素の含有量が0.002〜1質量%である水酸化ニッケル粉を焙焼して、酸化ニッケル粉とする工程(A)と、得られた酸化ニッケル粉(被還元物)を還元装置内の容器に積載して静置方式により還元する工程(B)を含むニッケル粉の製造方法であって、
工程(B)では、酸化ニッケル粉の換算厚み(積載物の体積/還元ガスと接する面積)を0.8〜3mmに保持しながら、還元温度まで加熱し、水素と不活性ガスとの混合ガスであり、水素含有量が10〜50容量%である水素含有ガスを0.01〜1m/sの流速で供給して、酸化ニッケル粉を還元することを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、工程(A)において、周期表第2族元素が、マグネシウムであることを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1又は2の発明において、工程(B)において、還元温度が、300〜500℃であることを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
本発明によれば、特定の水酸化ニッケルを焙焼して酸化ニッケルを得ると共に、得られた酸化ニッケルを特定条件で加熱還元するため、微細で均一な粒径のニッケル粉を大量に低コストかつ容易に製造することができる。また、得られるニッケル粉は、特に小型化、高容量化が進むMLCC内部電極形成用として好適なものであり、工業的価値が極めて大きい。
以下、本発明のニッケル粉及びその製造方法について、詳細に説明する。
1.ニッケル粉の製造方法
本発明のニッケル粉の製造方法は、周期表第2族元素の含有量が0.002〜1質量%である水酸化ニッケル粉を焙焼して、酸化ニッケル粉とする工程(A)と、得られた酸化ニッケル粉(被還元物)を還元装置内の容器に積載して静置方式により還元する工程(B)を含むニッケル粉の製造方法であって、
工程(B)では、酸化ニッケル粉の換算厚み(積載物の体積/還元ガスと接する面積)を0.8〜3mmに保持しながら、還元温度まで加熱し、水素含有ガスを0.01〜1m/sの流速で供給して、酸化ニッケル粉を還元することを特徴とする。
本発明のニッケル粉の製造方法においては、酸化ニッケルの還元条件が重要である。
本発明の製造方法においては、まず、原料粉として、周期表第2族元素(アルカリ土類金属)を0.002〜1質量%含有する水酸化ニッケル粉を用いる必要がある。水酸化ニッケル粉に周期表第2族元素を含有させることで、還元時におけるニッケル粒子生成時の粒子の融着を抑制して微細化および球状化し、さらには粒子表面の平滑性を改善するためである。アルカリ土類金属としては、特に制限されないが、微細化および球状化の効果が大きいマグネシウムを用いることが好ましい。
また、周期表第2族元素の含有量は、0.005〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.1質量%であることがより好ましい。周期表第2族元素が、0.002質量%未満では、微細化および平滑性改善の効果が見られず、1質量%を超えると、得られるニッケル粉のニッケル品位の低下により、MLCC内部電極の電気抵抗値が大きくなり過ぎ、コンデンサーの損失係数の悪化を招く。
本発明の製造方法では、次に、水酸化ニッケル粉を非還元性雰囲気下に酸化焙焼することで酸化ニッケル粉とし、この酸化ニッケル粉を特定の条件で還元処理する。一般に、還元ガス雰囲気下での還元処理において、酸化ニッケル粉が還元されてニッケル粉が生成するが、このとき、酸化ニッケル粉の形骸を残したまま金属化されてニッケル微粉が生成されることはない。すなわち、酸化ニッケル粉は、表面から還元されて微細なニッケル粒子の生成を伴いながらニッケル粉となるため、このようにして得られたニッケル粉では、生成されたニッケル微粉の表面の活性が高くなるので、形骸を残したまま金属化される他の金属粉の場合と比べると、粒子同士の凝集又は焼結が生じやすい状態となっている。さらに、炭素と結合しやすいニッケルの汚染を防止するため、還元ガスとして水素を用いると還元時の雰囲気中に水蒸気が多く存在することとなり、還元ガスと酸化ニッケル粉との接触の妨げとなるばかりか、金属粒子を凝集又は焼結させる水蒸気の作用がより大きなものとなる。
したがって、還元時に還元ガス、特に水素ガスを十分に供給するとともに、発生した水蒸気を系外に排出することが重要となる。ガスの流通を改善して水素ガスの供給と水蒸気の排出を十分に行うには、酸化ニッケル粉を流動させながら還元する方法が有効であるが、酸化ニッケル粉の還元の場合には、酸化ニッケル粉と還元で得られるニッケル微粉の流動性の違いが大きいため、ニッケル粉が偏在化しやすく、凝集又は焼結したニッケル微粉になりやすいため適切ではない。このため静置式の還元方法で、水素ガスの供給と水蒸気の排出を改善する手段が採用される。
上記静置式の還元方法においては、静置物内部への水素供給及び内部で発生した水蒸気の除去は、濃度勾配を駆動力とする拡散が支配的となる。したがって、十分な水素供給および水蒸気除去を行うということは、水素と水蒸気の拡散量を増加させることになる。拡散量は、拡散速度と距離で決まるため、拡散速度に影響する温度を制御することによっても拡散量を増加させることができる。しかしながら、還元温度は、最終的に要求されるニッケル粒子のサイズや還元装置、還元時間によって調整範囲が決まってしまうため、拡散速度を温度によって制御することは制約が大きくなり困難である。
一方、拡散距離は、静置物の形状に支配され上記制約を受けないため、拡散距離によって拡散量を増加させることが有効である。特に、静置物の中心部は、拡散距離が最大となり、上記水素供給及び水蒸気除去が最も少なくなるため、その距離を短くすることが有効である。したがって、酸化ニッケルの還元時に、上記水素供給及び水蒸気除去を十分なものとして粒子同士の凝集又は焼結を抑制するためには、上記最大拡散距離を制御すればよい。
この最大拡散距離は、例えば、酸化ニッケル粉を耐熱容器に積載して開口面側からのみ還元ガスを供給して還元する場合、積載する酸化ニッケル粉の層厚になる。また、耐熱容器の底部にガス流通可能な材質を用いた場合には、最大拡散距離は、上記開口面側からのみの場合の半分となる。このことからわかるように、最大拡散距離は、積載した酸化ニッケル粉の層厚ではなく、積載した酸化ニッケル粉、すなわち酸化ニッケル粉からなる被還元物の体積を還元ガスと接する面積で除した値に支配されることとなる。本発明では、この概念を換算厚みとして採用し、前記被還元物の換算厚みを特定値以下に制御することで、上記酸化ニッケルの還元処理において微細で均一な粒径のニッケル粉を得ようとするものである。
すなわち、本発明では、還元時の酸化ニッケルからなる被還元物の換算厚みを3mm以下とする必要がある。ここで、換算厚みとは、還元装置内に設置された被還元物の体積を還元ガスと接する面積で除した値を意味する。
還元に用いる被還元物の換算厚みを3mm以下とすることで、被還元物全体で粒子同士の凝集又は焼結を抑制して微細で均一な粒径のニッケル粉が得られる。該換算厚みが3mmを超えと、被還元物の表面からの距離が最大となる部分で、得られる粒子に凝集又は焼結が生じて粗大粒子が生成するので、微細で均一な粒径のニッケル粉を得るためには、後工程で分級等の処理が必要となってしまう。被還元物の換算厚みは、2.5mm以下、さらには2mm以下とすることが好ましい。
こうして換算厚みにより拡散量を制御することができるが、換算厚みを制御するのみでは、微細で均一な粒径のニッケル粉を得ることは困難である。そのため本発明では、換算厚みの制御に加えて、還元ガスの流速を該被還元物の表面で0.01m/s以上とすることが必要である。
還元中の被還元物表面は、被還元物内部から拡散により排出された水蒸気が存在する。この水蒸気の量が多くなると、水蒸気拡散の駆動力となる濃度勾配を十分なものとすることができないばかりか、被還元物表面への水素の供給も阻害される。そのため、本発明では、還元ガスの流速を0.01m/s以上とし、被還元物表面において該内部から拡散してきた水蒸気を除去し、前記濃度勾配を十分なものとするとともに十分な水素が供給されるようにする。これにより、上記水素供給及び水蒸気除去が確保され、被還元物全体で粒子同士の凝集又は焼結を抑制して微細で均一な粒径のニッケル粉が得られるようになる。
還元ガスの流速が0.01m/s未満では、上記被還元物表面における水蒸気の除去が十分でなく、微細で均一な粒径のニッケル粉が得られない。一方、流速の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、こう鉢内に酸化ニッケル粉末を入れる場合では、こう鉢形状や風速方向によるものの、流速が大きすぎると、粉末が飛び散る可能性があるので1m/sを超えることは好ましくない。還元ガスの流速は、被還元物の表面で0.02m/s以上、さらには0.03m/s以上とすることが好ましい。
流速は、投入する水素に窒素等の不活性ガスを混合することで調整するか、あるいは還元装置内の形状、被還元物の形状等を適宜設計して調整すればよい。前記水素含有ガスは、水素と不活性ガスとの混合ガスとする場合、不活性ガスの種類は、特に限定されるものではないが、コスト面を考慮すると窒素ガスが好ましい。また、水素含有量は10〜50容量%とすることが好ましい。水素含有量が10容量%未満では、還元反応速度が遅くなり、ニッケル微粉の凝集又は連結が発生する。一方、水素含有量が50容量%を超えると、反応が急激に進行して水蒸気発生量が高くなるため、やはりニッケル微粉の凝集又は連結が発生する原因となる。水素含有量は30〜50容量%とすることがより好ましい。
以下、本発明の製造方法を工程の順に説明する。
(1)工程(A) 水酸化ニッケル粉の調製
本発明では、周期表第2族元素を0.002〜1質量%含有する水酸化ニッケル粉を用いる。水酸化ニッケル粉は、通常の公知の方法により得ることができる。例えば、塩化ニッケルや硫酸ニッケルなどの水溶性ニッケル塩の水溶液をpH制御して中和沈殿させること、沈殿生成速度を一定に保つことで、均一な沈殿として水酸化ニッケル粉を得ることができる。
前記水溶性ニッケル塩の水溶液としては、特に限定されるものではなく、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、ニッケル有機酸塩等の水溶性ニッケル塩を含む水溶液が用いられるが、この中で、特に廃水処理の容易さなど環境への影響とコスト面から、塩化ニッケル塩水溶液を用いることが好ましい。
一方、水酸化ニッケル粉に含有される周期表第2族元素は、水溶性塩などの水溶性物質としてニッケル塩水溶液に混合しておき、水酸化ニッケルの生成時に共沈させればよい。
前記pHとしては、特に限定されるものではないが、7〜9.5が好ましく、8〜9がより好ましい。すなわち、pHが7未満であると、ニッケル塩の中和が十分に行われない場合があり、一方、pHが9.5を超えると、微細なコロイド状の水酸化ニッケル粒子を形成し、固液分離が非常に困難となるとともに、次工程の酸化焙焼で酸化ニッケル粉が凝集又は焼結し、最終的に得られるニッケル微粉の分散性が十分でなくなる場合がある。
上記中和沈殿させる際の方法は、特に限定されるものではなく、十分に攪拌されている反応槽内に、ニッケル塩水溶液とアルカリ水溶液をダブルジェット方式で添加しながら中和生成することが、均一な特性の水酸化ニッケルを得るため有効である。ここで、反応槽内に純水をあらかじめ入れておくことができるが、中和生成に一度使用したろ液をアルカリで所定のpHに調整して用いることがより好ましい。
前記アルカリ水溶液の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の水酸化アルカリ金属の水溶液が好ましく、入手しやすさや価格などの点で水酸化ナトリウム水溶液がより好ましい。なお、アルカリ水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物を直接用いることができるが、沈殿が不均一になる場合があるので注意しなければならない。
水酸化ニッケル粉を製造する反応設備は、特に制限はなく、例えば、攪拌機を有する貯槽でpH管理が行える公知の設備でよい。
上記中和処理により生成された水酸化ニッケル沈澱は、ろ過により脱水し、ろ過ケーキを得ることで回収される。
ここで、ろ過操作としては、十分に残留塩素濃度を下げることができる手段を用いることが好ましい。このため、公知技術であるレパルプ洗浄、クロスフロー方式のろ過洗浄、硫酸などの酸を用いた洗浄などが用いられる。
洗浄後の水酸化ニッケル沈澱は、大気乾燥、真空乾燥などの公知方法により、乾燥させる。これにより、周期表第2族元素を0.002〜1質量%含有する水酸化ニッケル粉が得られる。
(2)工程(A) 酸化ニッケル粉の調製
次に、上記水酸化ニッケル粉を非還元性雰囲気下に酸化焙焼することで酸化ニッケル粉を調製する。
焙焼方法は、特に限定されるものではなく、静置式焙焼炉、転動炉、バーナー炉、搬送式連続炉、流動焙焼炉等の一般的な焙焼炉を用いて、公知方法で行うことができる。この際、分散性に優れ、かつ均一なニッケル微粉を得るためには、特性が均一で十分に酸化ニッケル形態に変換された酸化ニッケル粉を得ることが重要である。酸化ニッケル形態への変換が不十分であると、水酸化ニッケルが残留し、後工程の還元処理の際に水酸化ニッケルの分解による水蒸気が発生し、ニッケル粒子間の凝集又は焼結が生じて、分散性に優れたニッケル微粉が得られない。
焙焼条件は、特に限定されるものではなく、目的とするニッケル微粉の粒子径などの特性が得られるように、炉の特性に応じて任意に設定することができるが、均一な処理を行うためには、ガス気流中で行うことが好ましい。
焙焼の雰囲気は、非還元性雰囲気下であれば問題なく、雰囲気ガスとして、不活性ガス又は酸化性ガスが用いられるが、酸化性ガスである空気を用いることがコスト及び取り扱いやすさの点で好ましい。
また焙焼温度は、特に限定されるものではなく、十分に酸化ニッケル形態に変換することができる温度であればよいが、一般的な静置式で焙焼する炉の場合には、350〜550℃とすることが好ましく、400〜500℃とすることがより好ましい。すなわち、焙焼温度が350℃未満では、酸化ニッケル形態への変換が十分でなく水酸化ニッケルが残留することがある。一方、焙焼温度が550℃を超えると、酸化ニッケル粉の凝集又は焼結が起こり、還元処理によって得られるニッケル微粉の粒子が粗大化するとともに、分散性が十分でない場合がある。
また焙焼時間は、特に限定されるものではなく、焙焼温度、処理量、用いる装置等を考慮して、水酸化ニッケル粉が十分に酸化ニッケル形態に変換され、かつ水酸化ニッケル粉の形骸を残すことができればよい。例えば、1〜5時間の範囲とすることができる。
(3)工程(B) 還元処理
その後、上記酸化ニッケルからなる被還元物は、換算厚みで3mm以下に保持して、還元ガスとして水素含有ガスを用い、還元ガスの流速を被還元物の表面で0.01m/s以上となるように供給して、酸化ニッケルを還元することによりニッケル粉とする。
本発明の製造方法は、酸化ニッケルからなる被還元物を換算厚みで3mm以下に保持して還元することを特徴とするものである。該被還元物は、還元処理される酸化ニッケル粉の積載物を意味するものであり、こう鉢に酸化ニッケル粉を積載したものの他に、網状の容器に酸化ニッケル粉を詰めたものであってもよく、酸化ニッケル粉を造粒したものであってもよい。網状の容器あるいは造粒を利用することは、還元ガスと接する面積を増加させ換算厚みを減少させることができ、多量のニッケル粉を効率よく製造できるために好ましい手段である。
上記酸化ニッケル粉を造粒する方法は、特に限定されるものではないが、酸化ニッケル粉の個々の造粒体の密度及び大きさのバラツキを極力抑え、かつ、原料酸化ニッケル粉の粒径、微細構造などの変化を避けることが好ましい。したがって、造粒方法としては、湿式方法が適しており、例えば、以下のような方法で行うことができる。
まず、酸化ニッケル粉と純水などの溶媒を、成型に適した粘度などの特性が得られるように混合してスラリー化する。スラリー化に際しては、一般的な混練機又は攪拌機を用いることができ、例えば、規模や特性に応じて、二軸スクリューニーダー、自転公転式攪拌機など任意の方法を用いることができる。
次に、得られたスラリーを成型して成型体とする。成型に際しては、一般的な成型機、例えば、一軸押出成型機、ロールプレス機などを使用することができる。
造粒体の形状は、特に限定されるものではなく、成型体の強度、或いはガスとの均一な反応性を得るため、球形、回転楕円体又は円筒形のいずれかであることが好ましい。上記造粒体の寸法は、換算厚みが3mm以下となる範囲になれば特に限定されるものではないが、乾燥後において、例えば、球形の場合には、直径が2〜6mmであることが好ましく、円筒形の場合には、直径が2〜6mmで長さが2〜50mmであることが好ましい。乾燥後の造粒体の直径が10mmを超えると、還元反応時に造粒体の内部と外部の反応が不均一になって特性のバラツキが生じることがある。一方、乾燥後の造粒体の直径が2mm未満では、造粒体間の空隙が小さく、還元反応に際して、造粒体表面における還元ガスの流速を0.01m/s以上とすることが困難になることがある。また、円筒形の場合、長さが上記範囲外であると、還元処理などの取り扱い時に、造粒体が崩れ、発塵の原因となる。
また、造粒体の見掛け密度は、特に限定されるものではないが、還元反応を造粒体全体で均一に進めるため、乾燥後において、1〜3g/cmであることが好ましい。造粒体の見掛け密度が3g/cmを超えると、還元反応時に造粒体の中心部と外周部の反応が不均一になって特性のバラツキが生じることがある。一方、造粒体の見掛け密度が1g/cm未満では、造粒体に十分な強度が得られず、造粒体が崩壊して、造粒効果が十分に得られないことがあり、また、崩壊による発塵が発生する可能性がある。
一定の条件で成形すれば、乾燥前後での寸法および見掛け密度の変化が安定しているため、溶媒量、形状、造粒圧力などを考慮して、少量の造粒を行って造粒条件を決定することにより、乾燥後の寸法および見掛け密度を上記範囲内に制御し易い。
次に、上記成形体を、十分に乾燥して造粒体とする。造粒体の乾燥が十分でない場合には、還元処理中に水蒸気が発生し、前述したように生成するニッケル微粉の凝集又は焼結が促進され、分散性に優れたニッケル微粉が得られない。
乾燥後の酸化ニッケル粉(造粒体)の含有水分率は、特に限定されるものではないが、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましい。含有水分率が5質量%を超えると、水蒸気の発生による影響で、分散性に優れたニッケル微粉が得られない場合がある。
この乾燥方法は、特に限定されるものではなく、一般的な静置式乾燥機を用いてもよく、また振動式乾燥機を用いてもよい。乾燥の温度及び時間は、造粒体が十分に乾燥する条件であれば特に限定されるものではない。例えば、乾燥温度は、60〜200℃が好ましく、乾燥時間は、乾燥温度及び処理量を考慮して、適宜決定される。
こうして得られた乾燥造粒体は、次に炉で還元処理される。炉は、特に限定されるものではないが、静置式還元炉が好ましく、例えば、バッチ式雰囲気焼成炉、搬送式連続炉などが用いられる。キルン方式などの流動床式還元炉も使用できないわけではないが、上述のように凝集又は焼結したニッケル粉になりやすいため注意を要する。
還元処理条件の処理温度、時間は、目的とする粒子径などに応じて、適宜設定することができる。
還元温度は、特に限定されるものではないが、MLCCの内部電極用として好適な微細なニッケル粉を得るためには、還元温度を300〜500℃とすることが好ましい。還元温度が高いほど、また、還元時間を長く設定するほど、粒子径は大きくなる傾向がある。還元温度が500℃を超えると、還元中に還元されたニッケル粉の凝集又は焼結が発生し、結果として所望の粒径が精度良く得られないことがある。一方、300℃未満の温度では、酸化ニッケルからニッケルへの還元が進みにくく、還元に長時間が必要となりニッケル粉の凝集が進んでしまうことがある。したがって、前記内部電極用としてより好ましい平均粒径である、0.5μm以下のニッケル微粉を得るためには、還元温度は、380〜420℃であることがより好ましい。
また、還元時間は、特に限定されるものではなく、還元時に流す水素量、還元温度、投入する酸化ニッケル粉の量により、全ての酸化ニッケルがニッケルに還元されるのに必要な時間とすればよい。所望の粒径が得られるように時間を制御することが好ましく、上記水酸化ニッケル粉の焙焼と同様に、可能な限り被還元物に均一な気流を与えることが、均一なニッケル微粉を得るために好ましい。
こうして得られる還元後のニッケル粉は、粒径が微細でかつ均一であり粒子間の凝集も非常に少ないものであり、造粒体も含めて容易に分散させることができる。しかしながら、工程中に凝集粉が生成したり、工程中に異物が混入すれば、乾式または湿式による遠心力やフィルターを用いて解砕するか分級を行って異物を除去してもよい。装置は、特に限定されるものではなく、通常のニッケル粉の製造に用いられる振動篩、ジェットミルやサイクロン形式の装置が使用される。
以上のように、本発明のニッケル粉の製造方法は、湿式法により製造した水酸化ニッケルを還元処理するという比較的シンプルな方法であり、複雑な工程を備えておらず、さらに分散性の良い均一なニッケル微粉が得られるため、その製造コストも低く抑えることができる。
2.得られるニッケル粉
本発明の製造方法で得られるニッケル粉は、微細かつ均一で分散性に優れており、電子部品用の材料として好適である。
すなわち、具体的な特性としては、平均粒径が0.2〜0.6μmである。平均粒径が0.2μm未満であると、MLCC内部電極用ペーストの場合、ニッケル粉の焼結温度が低いため、誘電体セラミックスとの焼結挙動の差が大きく、電極の途切れや剥離が起こることがある。一方、平均粒径が0.6μmを超えると、薄層化された内部電極では、焼結後の電極に穴開きや途切れが発生することがあり好ましくない。さらに、走査型電子顕微鏡観察で測定される粒度分布は、D90(体積積算による篩下90%相当径)が1μm以下であることが好ましい。D90が1μmを越えると、ニッケル粉が誘電体層を突き抜けて、MLCCの電極間で短絡が発生することがあり好ましくない。
以下に、本発明の実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、ニッケル粉の粒度分布は、以下のようにして評価した。
走査型電子顕微鏡(JSM−5510、日本電子製)を用い、ニッケル粉の10,000倍の写真を撮影し、写真一視野で確認できる全ての粒子の粒径を測定して統計処理した。評価項目は、体積積算による篩下50%相当径(D50:平均径)、篩下90%相当径(D90)とした。
(実施例1)
まず、100gの塩化ニッケル6水和物(試薬1級、和光純薬製)と塩化マグネシウム6水和物(試薬1級、和光純薬製)0.2g(水酸化ニッケル中Mg含有量0.06質量%相当)を純水250mLに溶解して塩化ニッケル水溶液を調製した。次いで、水酸化ナトリウム(試薬1級、和光純薬製)35.5gを純水250mLに溶解した溶液を前記塩化ニッケル水溶液に添加し、生成した水酸化物をろ過した。さらに、これを1Lの純水で水洗し、再びろ過した(以下、本操作を「ろ過水洗」と呼ぶ)。同様にろ過水洗を4回繰り返した後に、箱型大気乾燥機(DX601、ヤマト科学製)で150℃、48時間の乾燥を行い、水酸化ニッケル粉を得た。
得られた水酸化ニッケル粉を解砕した後、ローラーハースキルン(デスクトップキルン、ノリタケ製)を用い、400℃で2時間、空気中で酸化焙焼を行うことで酸化ニッケル粉を得た。
さらに、得られた酸化ニッケル粉12gをセラミック製トレイに換算厚み3mmとなるように直径11cmの管状式雰囲気炉中に設置した。酸化ニッケル粉1gあたり0.1リットル/分の水素ガス及び水素と同量の窒素ガスを混合し、還元ガスとして流通し、400℃で1時間保持してニッケル粉を得た。この時、試料上の還元ガスの流速は0.01m/sとなる。得られたニッケル粉を#100の篩にかけ、そのニッケル粉の粒径を走査型電子顕微鏡(以下、SEM)により評価した。
水酸化ニッケル中のMg添加量、還元条件、粒径の測定結果をまとめて表1に示す。
(実施例2)
塩化ニッケル水溶液に添加する塩化マグネシウム6水和物を0.1g(水酸化ニッケル中Mg含有量0.02質量%相当)とした以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉を得るとともに評価した。
水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(実施例3)
窒素の投入量を酸化ニッケル粉1gあたり0.2リットル/分(窒素合計2.4リットル/分)とした以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉を得るとともに評価した。この時の試料上の還元ガスの流速は0.015m/sとなる。
水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(実施例4)
窒素の投入量を酸化ニッケル粉1gあたり0.3リットル/分(窒素合計3.6リットル/分)とした以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉を得得るとともに評価した。この時の試料上の還元ガスの流速は0.02m/sとなる。
水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(実施例5)
酸化ニッケル粉12gをセラミック製トレイに換算厚み2.5mmとなるよう設置した以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉を得るとともに評価した。水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(実施例6)
酸化ニッケル粉12gをセラミック製トレイに換算厚み2mmとなるよう設置した以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉を得るとともに評価した。
水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(比較例1)
塩化ニッケル水溶液を塩化ニッケル6水和のみで調製した以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉を得るとともに評価した。水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(比較例2)
窒素の投入量を酸化ニッケル粉1gあたり0.06リットル/分(窒素合計0.7リットル/分)とした以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉を得るとともに評価した。この時、試料上の還元ガスの流速は0.008m/sとなる。水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(比較例3)
酸化ニッケル粉12gをセラミック製トレイに換算厚み3.5mmとなるよう設置した以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉を得るとともに評価した。水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(比較例4)
酸化ニッケル粉12gをセラミック製トレイに換算厚み3.5mmとなるよう設置し、窒素の投入量を酸化ニッケル粉1gあたり0.3リットル/分(窒素合計3.6リットル/分)とした以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉を得るとともに評価した。この時、試料上の還元ガスの流速は0.02m/sとなる。水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(実施例7)
240gの塩化ニッケル6水和物(試薬1級、和光純薬製)と塩化マグネシウム6水和物(試薬1級、和光純薬製)0.33g(水酸化ニッケル中Mg含有量0.04質量%相当)を純水250mLに溶解して塩化ニッケル水溶液を調製した。実施例1と同様に洗浄した後、酸化焙焼して酸化ニッケル粉を得た。
得られた酸化ニッケル粉120gに純水42mlを添加し、自転・公転式混合機により混合し、粘土状のスラリーを得た。この操作を繰り返し、酸化ニッケルの純水スラリーを4kg作製し、一軸造粒機(アキラ機工製、AX−75型)を用いて造粒成形した後、静置式乾燥器により120℃で乾燥して酸化ニッケル造粒体を得た。ここで、成型には直径が4mmのスクリーンを使用した。
得られた円筒形の造粒体の乾燥後における寸法は、直径が約3.8mmで長さが約5mmから約20mmであった。また、その見掛け密度は2.2g/cmであり、含有水分率は2質量%であった。造粒体を約5mmの長さにそろえて原料とした。
縦型管状炉に設置した内径φ43mmのアルミナ管内の加熱ゾーン中心部分の位置に、ガスが流通可能なハニカムレンガをアルミナ管内面との隙間がないように固定し、その上に150メッシュのニッケル網を敷き、ニッケル網の上に上記造粒体40gを積載した。造粒体は、アルミナ管内径と同一径で高さが約22mmとなり、換算厚みは0.8mmであった。
次に、積載した酸化ニッケル粉の造粒体の下面側から還元ガスとして30容量%水素−窒素混合ガスを1.0リットル/分の流量で流しながら、390℃で1.5時間保持してニッケル粉を得た。得られたニッケル粉を実施例1と同様に評価した。なお、造粒体は、アルミナ管内に充填され積載されているので、還元ガスは全て造粒体間の隙間を流れ、還元ガスの流速は0.027m/sとなる。
水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(実施例8)
還元温度を400℃とした以外は、実施例7と同様にしてニッケル粉を得るとともに評価した。水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
(実施例9)
還元温度を430℃とした以外は、実施例7と同様にしてニッケル粉を得るとともに評価した。水酸化ニッケル中のMg含有量、焙焼条件および還元条件、粒径測定結果を表1に併せて示す。
Figure 0005663895
以上、表1に示した結果から明らかなごとく、本発明の製造方法で得られた実施例のニッケル粉は、平均粒径(D50)が0.4〜0.5μmでシャープな粒度分布が得られている。これに対して、比較例1〜4のニッケル粉では、平均粒径(D50)が大きいか、D50が同等であってもD90が実施例よりも大きく粗大なニッケル粉が含まれていることがわかる。したがって、比較例のニッケル粉は、粗大粒子が含まれることからMLCC内部電極用ニッケル粉として好ましくないことがわかる。
本発明により得られるニッケル粉は、微細で均一な粒径を有しており、しかも低コストであるため、電子部品用として、特に小型化、高容量化が進むMLCC内部電極形成用として好適なものであり、その工業的価値は極めて大きい。

Claims (3)

  1. 周期表第2族元素の含有量が0.002〜1質量%である水酸化ニッケル粉を焙焼して、酸化ニッケル粉とする工程(A)と、得られた酸化ニッケル粉(被還元物)を還元装置内の容器に積載して静置方式により還元する工程(B)を含むニッケル粉の製造方法であって、
    工程(B)では、酸化ニッケル粉の換算厚み(積載物の体積/還元ガスと接する面積)を0.8〜3mmに保持しながら、還元温度まで加熱し、水素と不活性ガスとの混合ガスであり、水素含有量が10〜50容量%である水素含有ガスを0.01〜1m/sの流速で供給して、酸化ニッケル粉を還元することを特徴とするニッケル粉の製造方法。
  2. 工程(A)において、周期表第2族元素が、マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
  3. 工程(B)において、還元温度が、300〜500℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のニッケル粉の製造方法。
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