JP3665083B2 - セラミックス粉末スラリー及びセラミックス顆粒の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、バインダー混合セラミックス粉末スラリーおよびそれによるセラミックス顆粒の製造方法に関するものである。
【0002】
セラミックス粉末スラリーは、一部そのままスリップ成形に供されるが、大半は噴霧乾燥によるセラミックス顆粒の製造に使用され、該顆粒は乾式加圧成型に供される。
【0003】
【従来の技術】
従来、バインダー混合セラミックス粉末スラリーは、乾式粉砕されたセラミックス粉末を水に添加してえられた、または湿式粉砕によってえられたセラミックス粉末スラリーにバインダーを添加して製造されており、本発明者らが開発した後述の定量法によれば粒径の大きい凝集物をしかも多量に含むものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなセラミックス粉末スラリーは、成形、焼成などを経てえられる焼結体の密度および強度を高くすることができない。
【0005】
本発明は、この点が解決された、すなわち高密度かつ高強度のセラミックス焼結体を製造することのできる、バインダー混合セラミックス粉末スラリーの提供および上記焼結体を製造することができるセラミックス顆粒の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、バインダー添加前のセラミックス粉末スラリーのpHが低く、この低いpHによってバインダーが析出し、析出したバイダーによって凝集物が生成することを見出だした。そして、従来行われていなかったバインダーと粉末の凝集物を定量化する方法を開発し、これを駆使して、粒径250μm以上の凝集物が全固形物に対してスラリー中に10wt%以下となるようにバインダーを混合することにより、上記の目的に適ったバインダー混合セラミックス粉末スラリーを製造することができることを見出だした。本発明は、これらの知見に基づいて達成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、粒径250μm以上の凝集物が全固形物に対して10wt%以下である、バインダ−混合セラミックス粉末スラリー;およびこのバインダー混合セラミックス粉末スラリーを噴霧乾燥することによる、セラミックス顆粒の製造方法を要旨とする。
【0008】
以下それらの詳細について説明する。
【0009】
本発明のバインダー混合セラミックス粉末スラリーは、粒径250μm以上の凝集物がスラリー中の全固形物に対して10wt%以下でなければならない。凝集物の粒径及び割合が大きくなって粒径250μm以上の凝集物が全固形物に対して10wt%をこえると、バインダー混合セラミックス粉末スラリー中のバインダーとセラミックス粉末の混合状態が不均一となり、それによってスリップ成形を行う場合は成形体に密度むらが生じ;いっぽう顆粒にする場合は、顆粒形状が異形になりやすく、乾式加圧成形の際顆粒が十分に潰れきれず、焼結体にした時の密度や強度の低下原因となるからである。
【0010】
その凝集物の定量は、以下のように行うことができる。すなわち、まずバインダー混合セラミックス粉末スラリーをふるいに適量採取定量し、250μmの網目の円形金属ふるいで分級した後、凝集物をふるい上にのせたまま150℃で乾燥し、乾燥後、室温まで空冷し、ふるいの重量を測定し、ふるいの重量増から凝集物の重量比率を求める。
【0011】
このバインダー混合セラミックス粉末スラリーは、上記セラミックス粉末を含むスラリーにそのpHを調整してバインダーを添加することによって製造することができる。
【0012】
このバインダーとしては、一般に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルブチラート、ワックス、アクリル系等のバインダーを挙げることができるが、中でも分子中にカルボキシル基またはその誘導体(例えば、塩、特にアンモニウム塩など)を有するアクリル系のものが好ましい。このアクリル系のバインダーとして、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体やその誘導体を挙げることができる。バインダーの添加量は、セラミックス粉末スラリー中のセラミックス粉末に対して0.5〜10重量%が好ましく、とくに1〜5重量%がよい。バインダー溶液の揮発成分量は、70〜95wt%がよく、とくに80〜90wt%がよい。揮発成分量がこの範囲に満たないと、バインダーをセラミックス粉末スラリーに添加したときに、該スラリーの粘度が上昇してスリップ成形や噴霧乾燥が困難となり;いっぽう、その範囲を越えると、バインダーを添加した後、スラリー中に占めるセラミックス粉末の重量比率が低くなり、スリップ成形の際着肉速度が遅くなり;顆粒を製造する場合は、噴霧乾燥効率が悪くなるだけでなく、えられた顆粒の嵩密度が小さくなり、結果として焼結体の収縮率が大きくなって高性能の製品をうることが難しくなる。
【0013】
セラミックス粉末としては、一般に用いられる種々の粉末が挙げられるが、その中でも例えば、シリカ、アルミナ、ムライト、ジルコニア等またはそれらの混合物の酸化物粉末が好ましい。
【0014】
そのセラミックス粉末の平均粒径は0.1〜20μmでなければならず、とくに0.1〜3μmが好ましく;BET比表面積は1〜40m2/gでなければならず、とくに5〜20m2/gが好ましい。平均粒径がその範囲をはずれる、すなわち微細すぎるまたは粗大すぎる粒子が多すぎると、良好な成形性および焼結性をえることができず結果として高性能の製品をえることが難しいからである。また、該BET範囲よりBET比表面積が小さい場合は、セラミックス粉末の粒子が大きく粗い場合であり、同様に高密度高強度の焼結体をえることが難しい。逆に該BET範囲よりBET比表面積が大きい場合は、セラミックス粉末が微細な粒子の凝集体となっているために、成形焼結によっても微細粒子間の細孔がそのまま残りやすく、結果として高密度の焼結体がえられにくい。
【0015】
セラミックス粉末スラリー中のセラミックス粉末は30〜80wt%であることが好ましい。この範囲に達しない場合は、スリップ成形時の着肉速度が遅くなり;顆粒にする場合は噴霧乾燥効率が悪くなり、更にえられた顆粒の嵩密度が非常に小さくなり、結果として焼結体の収縮率が大きくなって高性能の製品をえることが難しい。いっぽう、80%より高いとスラリーの粘度が著しく高くなり噴霧乾燥あるいはスリップ成形が困難となるからである。
【0016】
セラミックス粉末スラリーにバインダーを添加して本発明のバインダー混合セラミックス粉末スラリーを製造するには、バインダー添加前にスラリーのpHを十分に高くして、スラリー中でのバインダーの析出を極力抑えねばならない。例えば、析出pH値が7.0以下であるアクリル系バインダーをpH6.0のジルコニア粉末スラリーに添加する場合は、このセラミックス粉末スラリーにアンモニア水等を添加して該スラリーのpHを7.0以上、好ましくは8.0以上に調整したのちに、バインダーを添加することによって、粒径250μm以上の凝集物が全固形物に対して10wt%以下である、バインダ−混合セラミックス粉末をえることができる。
【0017】
この方法を用いる場合は、セラミックス粉末スラリーへのバインダーの添加速度を300ml/min以上とすることができ、従来、慎重にゆっくりと添加したり、バインダー添加後、長時間ボールミル等で混合していた操作を省略することができ、生産性が格段によくなる。
【0018】
以上のようにしてえられたバインダー混合セラミックス粉末スラリーを噴霧乾燥することによってセラミックス顆粒がえられるが、その噴霧乾燥の雰囲気温度は80℃〜220℃であることが好ましい。該範囲よりも雰囲気温度が低い場合は、生産性が低くなり;いっぽう、雰囲気温度が高い場合は、噴霧乾燥した際に、顆粒表面に硬い殻状の層が形成されるため顆粒が潰れにくくなり、それによって密度の高い焼結体がえられにくくなるからである。
【0019】
本発明において、顆粒の平均粒径は10〜100μmの範囲内であることが好ましい。該範囲よりも顆粒粒径が小さい場合、噴霧乾燥時の補集効率が低下するだけでなく、顆粒の流動性が著しく低下し、結果的に良好な成形体をえることが困難となる。いっぽう、顆粒粒径が大きい場合、乾式加圧成形した際に、顆粒が十分に潰れきれなくなるためである。
【0020】
本発明において、製造された顆粒の嵩密度は0.5〜1.6g/cm3の範囲であることが好ましい。該範囲よりも嵩密度が小さい場合、顆粒を加圧成形した際の圧縮比が著しく大きくなるためである。いっぽう、嵩密度が大きい場合、顆粒の圧潰強度が強くなるために、加圧成形時に顆粒が十分に潰れきれず焼結体特性の低下原因となるからである。
【0021】
【作用】
なぜ、本発明のバインダー混合セラミックスを噴霧乾燥することによりえられた顆粒を成形した後、焼結することにより高性能のセラミックス焼結体を製造することができるかについては必ずしも明らかではないが、以下の理由によるものと推定される。すなわち、本発明のバインダー混合セラミックス粉末スラリーのバインダーによる250μm以上の凝集物が全固形物に対して10wt%以下であるということは、バインダーとセラミックス粉末スラリーとが十分に均一混合されていて、焼結体特性の低下の原因となる粗大凝集粒子が少ないこととなり、これによりよい焼結体特性を示すものと認められる。また、スリップ成形においても同様の理由から高性能なセラミックス焼結体がえられるものと考えている。逆に、バインダーによる凝集粒子が多いスラリーを噴霧乾燥してえられた顆粒を成形し焼結すると、バインダーが脱脂するときに、焼結体中に大きな欠陥を残すために、高性能なセラミックス焼結体をえることができないと考えられる。
【0022】
【発明の効果】
本発明のバインダー混合セラミックス粉末スラリーおよびセラミックス顆粒の製造方法によってえられた製品は、いずれも成形し、焼結することにより密度および強度が従来のものより高いセラミックス焼結体を製造することができる。
【0023】
【実施例】
実施例1
平均粒径0.8μmのジルコニア粉末および水を湿式混合し、ジルコニア粉末スラリー中に占めるジルコニア粉末が45wt%となるように調整し、えられたジルコニア粉末スラリーのpHが8.5となるように撹拌機で撹拌しながら 0.2wt%アンモニア水を添加した。次いで、バインダーであるアクリル系共重合体溶液(商品名:リカボンド、中央理化製、析出pH領域<8)をジルコニア粉末スラリー中のジルコニア粉末に対して2wt%添加し、1時間混合撹拌を行った。
【0024】
このバインダー混合ジルコニア粉末スラリーを適量採取定量し、250μmの網目の円形金属篩で分級操作後、オーブン乾燥した。なお、このオーブン乾燥時の温度は150℃であった。えられた250μm以上の凝集物は,0.9wt%であった。えられたスラリー特性を表1に示す。
【0025】
このようにしてえられたバインダー混合ジルコニア粉末スラリーを熱風温度 190℃で噴霧乾燥して顆粒をえた。えられた顆粒の軽装嵩密度は1.12g/cm3であった。この顆粒を約25g採取し、金属製金型を用いて700kg/cm2の圧力で成形した。えられた成形体の成形体密度は2.71g/cm3であった。
【0026】
この成形体を酸化性雰囲気の電気炉で焼成(1500℃、1時間保持)し、 6.07g/cm3の密度を有する焼結体がえられた。えられた焼結体の特性を表2にまとめて示した。
【0027】
比較例1
ジルコニア粉末スラリーの初期pHを7.0とした以外は、実施例1と同様にしてバインダー混合ジルコニア粉末スラリーをえた。かくしてえられたバインダー混合ジルコニア粉末スラリーは、250μm以上の凝集物が多い不均一なスラリーであった。えられたスラリー特性値を表1に示す。
【0028】
比較例2
ジルコニア粉末スラリーの初期pHを6.1とした以外は、実施例1と同じ条件で実施した。
【0029】
えられたバインダー混合ジルコニア粉末スラリーは、250μm以上の凝集物が極めて多い不均一なスラリーであった。その特性値を表1に示す。
【0030】
また、焼結体は、内部に顆粒の形骸粒子が残存しており、それに起因してその機械的強度は低かった。その焼結体特性値を表2に示す。
【0031】
比較例3
ジルコニア粉末スラリーの初期pHを4.0とした以外は、実施例1と同じ条件で実施した。えられた焼結体は、内部に顆粒の形骸粒子が残存しており、それに起因してその機械的強度は低かった。その焼結体特性値を表2に示す。
【0032】
【産業上の利用分野】
本発明は、バインダー混合セラミックス粉末スラリーおよびそれによるセラミックス顆粒の製造方法に関するものである。
【0002】
セラミックス粉末スラリーは、一部そのままスリップ成形に供されるが、大半は噴霧乾燥によるセラミックス顆粒の製造に使用され、該顆粒は乾式加圧成型に供される。
【0003】
【従来の技術】
従来、バインダー混合セラミックス粉末スラリーは、乾式粉砕されたセラミックス粉末を水に添加してえられた、または湿式粉砕によってえられたセラミックス粉末スラリーにバインダーを添加して製造されており、本発明者らが開発した後述の定量法によれば粒径の大きい凝集物をしかも多量に含むものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなセラミックス粉末スラリーは、成形、焼成などを経てえられる焼結体の密度および強度を高くすることができない。
【0005】
本発明は、この点が解決された、すなわち高密度かつ高強度のセラミックス焼結体を製造することのできる、バインダー混合セラミックス粉末スラリーの提供および上記焼結体を製造することができるセラミックス顆粒の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、バインダー添加前のセラミックス粉末スラリーのpHが低く、この低いpHによってバインダーが析出し、析出したバイダーによって凝集物が生成することを見出だした。そして、従来行われていなかったバインダーと粉末の凝集物を定量化する方法を開発し、これを駆使して、粒径250μm以上の凝集物が全固形物に対してスラリー中に10wt%以下となるようにバインダーを混合することにより、上記の目的に適ったバインダー混合セラミックス粉末スラリーを製造することができることを見出だした。本発明は、これらの知見に基づいて達成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、粒径250μm以上の凝集物が全固形物に対して10wt%以下である、バインダ−混合セラミックス粉末スラリー;およびこのバインダー混合セラミックス粉末スラリーを噴霧乾燥することによる、セラミックス顆粒の製造方法を要旨とする。
【0008】
以下それらの詳細について説明する。
【0009】
本発明のバインダー混合セラミックス粉末スラリーは、粒径250μm以上の凝集物がスラリー中の全固形物に対して10wt%以下でなければならない。凝集物の粒径及び割合が大きくなって粒径250μm以上の凝集物が全固形物に対して10wt%をこえると、バインダー混合セラミックス粉末スラリー中のバインダーとセラミックス粉末の混合状態が不均一となり、それによってスリップ成形を行う場合は成形体に密度むらが生じ;いっぽう顆粒にする場合は、顆粒形状が異形になりやすく、乾式加圧成形の際顆粒が十分に潰れきれず、焼結体にした時の密度や強度の低下原因となるからである。
【0010】
その凝集物の定量は、以下のように行うことができる。すなわち、まずバインダー混合セラミックス粉末スラリーをふるいに適量採取定量し、250μmの網目の円形金属ふるいで分級した後、凝集物をふるい上にのせたまま150℃で乾燥し、乾燥後、室温まで空冷し、ふるいの重量を測定し、ふるいの重量増から凝集物の重量比率を求める。
【0011】
このバインダー混合セラミックス粉末スラリーは、上記セラミックス粉末を含むスラリーにそのpHを調整してバインダーを添加することによって製造することができる。
【0012】
このバインダーとしては、一般に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルブチラート、ワックス、アクリル系等のバインダーを挙げることができるが、中でも分子中にカルボキシル基またはその誘導体(例えば、塩、特にアンモニウム塩など)を有するアクリル系のものが好ましい。このアクリル系のバインダーとして、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体やその誘導体を挙げることができる。バインダーの添加量は、セラミックス粉末スラリー中のセラミックス粉末に対して0.5〜10重量%が好ましく、とくに1〜5重量%がよい。バインダー溶液の揮発成分量は、70〜95wt%がよく、とくに80〜90wt%がよい。揮発成分量がこの範囲に満たないと、バインダーをセラミックス粉末スラリーに添加したときに、該スラリーの粘度が上昇してスリップ成形や噴霧乾燥が困難となり;いっぽう、その範囲を越えると、バインダーを添加した後、スラリー中に占めるセラミックス粉末の重量比率が低くなり、スリップ成形の際着肉速度が遅くなり;顆粒を製造する場合は、噴霧乾燥効率が悪くなるだけでなく、えられた顆粒の嵩密度が小さくなり、結果として焼結体の収縮率が大きくなって高性能の製品をうることが難しくなる。
【0013】
セラミックス粉末としては、一般に用いられる種々の粉末が挙げられるが、その中でも例えば、シリカ、アルミナ、ムライト、ジルコニア等またはそれらの混合物の酸化物粉末が好ましい。
【0014】
そのセラミックス粉末の平均粒径は0.1〜20μmでなければならず、とくに0.1〜3μmが好ましく;BET比表面積は1〜40m2/gでなければならず、とくに5〜20m2/gが好ましい。平均粒径がその範囲をはずれる、すなわち微細すぎるまたは粗大すぎる粒子が多すぎると、良好な成形性および焼結性をえることができず結果として高性能の製品をえることが難しいからである。また、該BET範囲よりBET比表面積が小さい場合は、セラミックス粉末の粒子が大きく粗い場合であり、同様に高密度高強度の焼結体をえることが難しい。逆に該BET範囲よりBET比表面積が大きい場合は、セラミックス粉末が微細な粒子の凝集体となっているために、成形焼結によっても微細粒子間の細孔がそのまま残りやすく、結果として高密度の焼結体がえられにくい。
【0015】
セラミックス粉末スラリー中のセラミックス粉末は30〜80wt%であることが好ましい。この範囲に達しない場合は、スリップ成形時の着肉速度が遅くなり;顆粒にする場合は噴霧乾燥効率が悪くなり、更にえられた顆粒の嵩密度が非常に小さくなり、結果として焼結体の収縮率が大きくなって高性能の製品をえることが難しい。いっぽう、80%より高いとスラリーの粘度が著しく高くなり噴霧乾燥あるいはスリップ成形が困難となるからである。
【0016】
セラミックス粉末スラリーにバインダーを添加して本発明のバインダー混合セラミックス粉末スラリーを製造するには、バインダー添加前にスラリーのpHを十分に高くして、スラリー中でのバインダーの析出を極力抑えねばならない。例えば、析出pH値が7.0以下であるアクリル系バインダーをpH6.0のジルコニア粉末スラリーに添加する場合は、このセラミックス粉末スラリーにアンモニア水等を添加して該スラリーのpHを7.0以上、好ましくは8.0以上に調整したのちに、バインダーを添加することによって、粒径250μm以上の凝集物が全固形物に対して10wt%以下である、バインダ−混合セラミックス粉末をえることができる。
【0017】
この方法を用いる場合は、セラミックス粉末スラリーへのバインダーの添加速度を300ml/min以上とすることができ、従来、慎重にゆっくりと添加したり、バインダー添加後、長時間ボールミル等で混合していた操作を省略することができ、生産性が格段によくなる。
【0018】
以上のようにしてえられたバインダー混合セラミックス粉末スラリーを噴霧乾燥することによってセラミックス顆粒がえられるが、その噴霧乾燥の雰囲気温度は80℃〜220℃であることが好ましい。該範囲よりも雰囲気温度が低い場合は、生産性が低くなり;いっぽう、雰囲気温度が高い場合は、噴霧乾燥した際に、顆粒表面に硬い殻状の層が形成されるため顆粒が潰れにくくなり、それによって密度の高い焼結体がえられにくくなるからである。
【0019】
本発明において、顆粒の平均粒径は10〜100μmの範囲内であることが好ましい。該範囲よりも顆粒粒径が小さい場合、噴霧乾燥時の補集効率が低下するだけでなく、顆粒の流動性が著しく低下し、結果的に良好な成形体をえることが困難となる。いっぽう、顆粒粒径が大きい場合、乾式加圧成形した際に、顆粒が十分に潰れきれなくなるためである。
【0020】
本発明において、製造された顆粒の嵩密度は0.5〜1.6g/cm3の範囲であることが好ましい。該範囲よりも嵩密度が小さい場合、顆粒を加圧成形した際の圧縮比が著しく大きくなるためである。いっぽう、嵩密度が大きい場合、顆粒の圧潰強度が強くなるために、加圧成形時に顆粒が十分に潰れきれず焼結体特性の低下原因となるからである。
【0021】
【作用】
なぜ、本発明のバインダー混合セラミックスを噴霧乾燥することによりえられた顆粒を成形した後、焼結することにより高性能のセラミックス焼結体を製造することができるかについては必ずしも明らかではないが、以下の理由によるものと推定される。すなわち、本発明のバインダー混合セラミックス粉末スラリーのバインダーによる250μm以上の凝集物が全固形物に対して10wt%以下であるということは、バインダーとセラミックス粉末スラリーとが十分に均一混合されていて、焼結体特性の低下の原因となる粗大凝集粒子が少ないこととなり、これによりよい焼結体特性を示すものと認められる。また、スリップ成形においても同様の理由から高性能なセラミックス焼結体がえられるものと考えている。逆に、バインダーによる凝集粒子が多いスラリーを噴霧乾燥してえられた顆粒を成形し焼結すると、バインダーが脱脂するときに、焼結体中に大きな欠陥を残すために、高性能なセラミックス焼結体をえることができないと考えられる。
【0022】
【発明の効果】
本発明のバインダー混合セラミックス粉末スラリーおよびセラミックス顆粒の製造方法によってえられた製品は、いずれも成形し、焼結することにより密度および強度が従来のものより高いセラミックス焼結体を製造することができる。
【0023】
【実施例】
実施例1
平均粒径0.8μmのジルコニア粉末および水を湿式混合し、ジルコニア粉末スラリー中に占めるジルコニア粉末が45wt%となるように調整し、えられたジルコニア粉末スラリーのpHが8.5となるように撹拌機で撹拌しながら 0.2wt%アンモニア水を添加した。次いで、バインダーであるアクリル系共重合体溶液(商品名:リカボンド、中央理化製、析出pH領域<8)をジルコニア粉末スラリー中のジルコニア粉末に対して2wt%添加し、1時間混合撹拌を行った。
【0024】
このバインダー混合ジルコニア粉末スラリーを適量採取定量し、250μmの網目の円形金属篩で分級操作後、オーブン乾燥した。なお、このオーブン乾燥時の温度は150℃であった。えられた250μm以上の凝集物は,0.9wt%であった。えられたスラリー特性を表1に示す。
【0025】
このようにしてえられたバインダー混合ジルコニア粉末スラリーを熱風温度 190℃で噴霧乾燥して顆粒をえた。えられた顆粒の軽装嵩密度は1.12g/cm3であった。この顆粒を約25g採取し、金属製金型を用いて700kg/cm2の圧力で成形した。えられた成形体の成形体密度は2.71g/cm3であった。
【0026】
この成形体を酸化性雰囲気の電気炉で焼成(1500℃、1時間保持)し、 6.07g/cm3の密度を有する焼結体がえられた。えられた焼結体の特性を表2にまとめて示した。
【0027】
比較例1
ジルコニア粉末スラリーの初期pHを7.0とした以外は、実施例1と同様にしてバインダー混合ジルコニア粉末スラリーをえた。かくしてえられたバインダー混合ジルコニア粉末スラリーは、250μm以上の凝集物が多い不均一なスラリーであった。えられたスラリー特性値を表1に示す。
【0028】
比較例2
ジルコニア粉末スラリーの初期pHを6.1とした以外は、実施例1と同じ条件で実施した。
【0029】
えられたバインダー混合ジルコニア粉末スラリーは、250μm以上の凝集物が極めて多い不均一なスラリーであった。その特性値を表1に示す。
【0030】
また、焼結体は、内部に顆粒の形骸粒子が残存しており、それに起因してその機械的強度は低かった。その焼結体特性値を表2に示す。
【0031】
比較例3
ジルコニア粉末スラリーの初期pHを4.0とした以外は、実施例1と同じ条件で実施した。えられた焼結体は、内部に顆粒の形骸粒子が残存しており、それに起因してその機械的強度は低かった。その焼結体特性値を表2に示す。
【0032】
Claims (2)
- 粒径250μm以上の凝集物が全固形物に対して10wt%以下であることを特徴とする、バインダ−混合セラミックス粉末スラリー。
- 請求項1記載のバインダー混合セラミックス粉末スラリーを噴霧乾燥することを特徴とする、セラミックス顆粒の製造方法。
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JP26552492A JP3665083B2 (ja) | 1992-09-09 | 1992-09-09 | セラミックス粉末スラリー及びセラミックス顆粒の製造方法 |
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JP26552492A JP3665083B2 (ja) | 1992-09-09 | 1992-09-09 | セラミックス粉末スラリー及びセラミックス顆粒の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH0692714A JPH0692714A (ja) | 1994-04-05 |
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JP26552492A Expired - Fee Related JP3665083B2 (ja) | 1992-09-09 | 1992-09-09 | セラミックス粉末スラリー及びセラミックス顆粒の製造方法 |
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1992
- 1992-09-09 JP JP26552492A patent/JP3665083B2/ja not_active Expired - Fee Related
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