JP2004323884A - 超微粒子のニッケル粉末及びその製造方法 - Google Patents

超微粒子のニッケル粉末及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】積層セラミックコンデンサ内部電極用として好適な、ペーストでの分散性に優れた平均粒径が0.1μm未満のニッケル粉末及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ニッケル化合物と焼結防止剤を含む混合物を水素還元し、得られた還元生成物を湿式処理してニッケル粉末を製造する方法であって、ニッケル水溶液に、アルカリ金属化合物を添加して中和反応に付し、ニッケル化合物と焼結防止剤を含むスラリーを形成するスラリー調製工程、前記スラリー調製工程で得られるスラリーを乾燥して、ニッケル化合物と焼結防止剤の混合物を生成する乾燥工程、前記乾燥工程で得られる混合物を水素還元に付し、金属ニッケル粒子を含む還元生成物を形成する還元工程、及び前記還元工程で得られる還元生成物を水溶液による浸出に付し、金属ニッケル粒子を得る湿式処理工程を含むことを特徴とするニッケル粉末の製造方法などによって提供。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超微粒子のニッケル粉末及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、積層セラミックコンデンサ内部電極用として好適な、ペーストへの分散性に優れた平均粒径が0.1μm未満のニッケル粉末及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ニッケル粉末は、厚膜導電体材料として積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板等の積層セラミック部品の電極など電気回路の形成のため、導電ペースト材料として使用されている。
近年、積層セラミックコンデンサは、電子部品として急速に成長している。電子部品の高性能化に伴ない、積層セラミックコンデンサは小型化、高容量化が促進され、セラミック誘電体と内部電極は薄層化、多層化されつつある。積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体と、金属の内部電極とを交互に層状に重ねて圧着し、これを焼成して一体化したものである。内部電極の形成は、ニッケル粉末などを、セルロース系樹脂等の有機バインダーを溶剤に溶解させた有機ビヒクルと混合し、スリーロールミル等によって混練、分散して得た導電ペーストを用いて、セラミック誘電体グリーンシート上に印刷する。その後、積層体を中性又は還元雰囲気下で焼成し、さらに外部電極を形成して製造される。
この積層セラミックコンデンサの内部電極として、従来は白金、パラジウム、銀−パラジウム合金等の貴金属が用いられていたが、近年コスト低減のためより安価なニッケル等の卑金属を用いる技術が進歩し、その使用が増えている。また、内部電極の薄層化及び多層化に対応するために、内部電極用のニッケル粉末として、従来より、微細な、例えば0.5〜2μmの粒径のニッケル粉末が使用されており、さらに微細な、例えば0.1μm未満のニッケル粉末が望まれている。
【0003】
しかしながら、ニッケル粉末は粒径が微細になると、一般に強固な凝集粒子を形成しやすく、また酸化も進みやすい。そこで、内部電極用として使用した場合、上記有機ビヒクルへの分散性が悪く、均質な薄層ニッケル電極膜を得ることが難しいという問題があった。したがって、焼成後に均一な薄層電極膜を形成するために、ペースト中での分散性が良好な、0.1μm未満の粒径で、かつ強固な凝集がない超微粒子のニッケル粉末が求められている。
【0004】
ところで、従来、積層セラミックコンデンサ内部電極用のニッケル粉末及びその製造方法としては、気相還元法、湿式還元法、静置式水素還元法等の方法が提案されており、代表的なニッケル粉末とその製造方法としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)平均粒径が0.1〜1.0μm、タップ密度が所定のニッケル粉末で、塩化ニッケル蒸気の気相還元法によって製造する(例えば、特許文献1参照)。
(2)平均粒径が0.1〜1.0μm、硫黄含有率が0.02〜1.0%のニッケル球状粒子で、塩化ニッケル蒸気の気相水素還元法で製造する(例えば、特許文献2参照)。
(3)粒径が0.1〜1.0μm、硫黄含有率が0.05〜0.2%、かつ硫黄が主として表面部分に存在する球状ニッケル粉末で、硫黄を含有する雰囲気にて、塩化ニッケルの蒸気に気相還元反応を行わせることにより製造する(例えば、特許文献3参照)。
(4)平均粒径が0.2〜0.6μm、かつ平均粒径の2.5倍以上の粗粒子の存在率が個数規準で0.1%以下であるニッケル超微粉で、塩化ニッケル蒸気の気相水素還元法で製造する(例えば、特許文献4参照)。
(5)SEM観察により測定した平均粒子径が1μm以下、特定の粒子密度、結晶子径であるニッケル粉末で、塩化ニッケル蒸気の気相水素還元法で製造する(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
(6)平均粒径が0.1〜2μmの球状ニッケル粉末で、ニッケル化合物粉末とアルカリ土類金属化合物粉末を含む混合物を水素還元し、得られた還元生成物を湿式処理してニッケル粉末を製造する方法であり、さらに、混合工程でニッケル水溶液とアルカリ土類金属化合物の水溶液か粉末を混ぜアルカリで沈殿させ、固液分離して用いることもできる(例えば、特許文献6参照)。
(7)金属塩粉末とアルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類のハロゲン化物のうち少なくとも1種とを混合し、水素還元した後、前記ハロゲン化物の融点以上まで昇温し、得られた反応物を湿式処理してハロゲン化物を除去して、金属粉を製造する方法であり、さらに、混合において、アルカリ金属、アルカリ土類又は希土類の酸化物、水酸化物、炭酸化物等を添加することができる(例えば、特許文献7参照)。
【0006】
これらの提案は、いずれも0.1μm以上の粒径のニッケル粉末であり、0.1μm未満の粒径で、かつ強固な凝集がない超微粒子のニッケル粉末については言及されていない。これは、従来の方法では、下記の理由によって上記超微粒子のニッケル粉末が得られなかったからである。
すなわち、従来の気相還元法によるニッケル粉末の製造では、気相での衝突が確率論的に発生して粒成長するので、粒度分布が広くなり、単一粒径のものが生成しにくい。ここで、0.1μm未満の粒径の粉末を作製しようとする場合には、ニッケルの希薄な雰囲気を採用せざるを得ないために生成速度が遅いうえ、混入してしまう粗粉と分離するために精密な分級操作が必要であるので、製造コスト上の問題のため実用的なものは得られなかった。
【0007】
また、ニッケル溶液に還元剤を反応させる湿式還元法では、微粉末になるほど凝集粒子を形成しやすく、酸化も進みやすいので、ペースト中で分散性が良好な0.1μm未満のニッケル超微粒子は得られていない。
ニッケル化合物を静置式で水素還元法して微細なニッケル粉末を製造する場合には、ニッケルの水酸化物、酸化物、炭酸塩等のニッケル化合物を水素還元できる最低温度の近傍の温度で還元し、微細ニッケル粉の焼結ができるだけ進まないような作製条件が考えられるが、未還元物が残存したり、部分的に焼結が進んだ粒子の混入のため粒度分布が広くなってしまうため、0.1μm未満の微細なニッケル粉を得ることは困難であった。
【0008】
また、ニッケル化合物粉末とアルカリ土類金属化合物粉末を含む混合物を水素還元し、得られた還元生成物を湿式処理してニッケル粉末を製造する方法では、ニッケル粉末が粒成長したり、焼結して粗大粒子ができないように、焼結防止剤としてアルカリ土類金属化合物を混合し、還元後、酸洗浄除去するが、アルカリ土類金属化合物を焼結防止剤とする場合には、得られるニッケル粉末の平均粒径は0.1μm以上であった。
また、金属塩粉末とハロゲン化物、さらにアルカリ金属、アルカリ土類又は希土類の酸化物、水酸化物、炭酸化物等を混合し、水素還元した後、前記ハロゲン化物の融点以上まで昇温し、得られた反応物を湿式処理して金属粉を製造する方法では、ハロゲン化物の融点以上の高温で処理するので0.1μm未満のニッケル超微粒子は得られていない。
【0009】
さらに、熱プラズマ法や有機金属化合物の熱分解法等による金属超微粉の研究開発が行われており、その中で、0.1μm未満の粒径のニッケル超微粒子も作製されているが、工業的には高価なものになる。しかも、前記ニッケル超微粒子は、活性が高いために強固な凝集粒子を形成しているか、酸化が進んでしまっており、あるいは極めて嵩高いため、ペーストへの均一分散が困難であり使用できない。
以上の状況から、積層セラミックコンデンサ内部電極用として、ペーストでの分散性に優れた平均粒径が0.1μm未満のニッケル粉末及びその製造方法が求められている。
【0010】
【特許文献1】
特開平08−246001号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献2】
特開平11−80817号公報(第1〜3頁)
【特許文献3】
特開平11−80816号公報(第1〜3頁)
【特許文献4】
特開平11−189801号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献5】
特開2001−220608号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献6】
特開平11−140513号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献7】
特開平11−21603号公報(第1頁、第2頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、積層セラミックコンデンサ内部電極用として好適な、ペーストでの分散性に優れた平均粒径が0.1μm未満のニッケル粉末及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために、ニッケル粉末を製造する方法において、ニッケル化合物と焼結防止剤を含む混合物を水素還元し、得られた還元生成物を湿式処理する方法について、鋭意研究を重ねた結果、特定の条件で形成したニッケル化合物と焼結防止剤の混合物を用いたところ、平均粒径が0.1μm未満のニッケル粉末が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ニッケル化合物と焼結防止剤を含む混合物を水素還元し、得られた還元生成物を湿式処理してニッケル粉末を製造する方法であって、
(1)ニッケル水溶液に、アルカリ金属化合物を添加して中和反応に付し、ニッケル化合物と焼結防止剤を含むスラリーを形成するスラリー調製工程、
(2)前記スラリー調製工程で得られるスラリーを乾燥して、ニッケル化合物と焼結防止剤の混合物を生成する乾燥工程、
(3)前記乾燥工程で得られる混合物を水素還元に付し、金属ニッケル粒子を含む還元生成物を形成する還元工程、及び
(4)前記還元工程で得られる還元生成物を水溶液による浸出に付し、焼結防止剤を除去して金属ニッケル粒子を得る湿式処理工程、を含むことを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記ニッケル水溶液が、塩化ニッケル又は硫酸ニッケルのニッケル水溶液であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記アルカリ金属化合物が、アルカリ金属の水酸化物、炭酸又は重炭酸塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3いずれかの発明において、前記ニッケル水溶液が塩化ニッケル水溶液であり、かつ前記アルカリ化合物が重炭酸ナトリウムであることを特徴とするニッケル粉末の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの製造方法によって得られる、平均粒径が0.1μm未満のニッケル粉末が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の超微粒子のニッケル粉末及びその製造方法を詳細に説明する。
本発明の超微粒子のニッケル粉末の製造方法は、ニッケル化合物と焼結防止剤を含む混合物を水素還元し、得られた還元生成物を湿式処理してニッケル粉末を製造する方法であって、ニッケル水溶液に、アルカリ金属化合物を添加して中和反応に付し、ニッケル化合物と焼結防止剤を含むスラリーを形成するスラリー調製工程、ニッケル化合物と焼結防止剤の混合物を生成する乾燥工程、金属ニッケル粒子を含む還元生成物を形成する還元工程、及び焼結防止剤を除去して金属ニッケル粒子を得る湿式処理工程を含む方法であり、これによって、平均粒径が0.1μm未満の超微粒子のニッケル粉末が得られる。
【0019】
本発明では、ニッケル化合物と焼結防止剤を含む混合物の生産工程として、ニッケル水溶液にアルカリ金属化合物を添加して中和反応に付し、ニッケル化合物と焼結防止剤を生成させるスラリー調製工程と、それらを含むスラリーを乾燥して混合物を得る乾燥工程とを行い、沈殿生成されたニッケル中和生成物とアルカリ金属を含む焼結防止剤とが、微細に分散混合され、かつ強固な凝集粒子のない状態を実現することが重要な意義を持つ。これによって、前記混合物を水素還元する際に微細な金属ニッケル粒子が析出され、その後の湿式処理において焼結防止剤が確実に溶解除去されて超微粒子のニッケル粉末の製造が達成される。ここで、焼結防止剤は、上記還元工程において生成する金属ニッケル微粒子同士の焼結や融着に対する障壁として働き、その粗大化を防止する。
【0020】
1.ニッケル水溶液
本発明に用いるニッケル水溶液としては、特に限定されるものではなく、水溶性のニッケル化合物を溶解したものが用いられるが、この中で、特に陰イオンがアルカリ金属化合物と反応して新たに生成される化合物が、上記還元工程において好適な焼結防止剤として作用する塩化ニッケル又は硫酸ニッケルのニッケル水溶液が好ましく、排水処理が簡便な塩化ニッケルがさらに好ましい。
【0021】
2.アルカリ金属化合物
本発明に用いるアルカリ金属化合物としては、特に限定されるものではなく、ニッケルイオンと反応してニッケル化合物を沈殿させるものが用いられるが、この中で、特にニッケル中和生成物と焼結防止剤とが微細に分散混合され、かつ強固な凝集粒子の少ない混合物が得られる、アルカリ金属の水酸化物、炭酸又は重炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、重炭酸塩がさらに好ましい。また、アルカリ金属の水酸化物、炭酸又は重炭酸塩を用いると、上記還元工程において、生成される金属ニッケルの不純物汚染が起きない。
上記化合物のアルカリ金属の種類としては、特に限定されるものではなく、リチウム、ナトリウム、カリウム等が用いられるが、この中で、特にコスト的にナトリウムが好ましい。したがって、上記アルカリ金属化合物としては、重炭酸ナトリウムが特に好ましい。
【0022】
3.スラリー調製工程
本発明のスラリー調製工程は、上記ニッケル水溶液に、上記アルカリ金属化合物を添加して中和反応に付し、ニッケル化合物と焼結防止剤を含むゲル状のスラリーを形成する工程である。
上記アルカリ金属化合物の添加量は、特に限定されるものではなく、アルカリ金属化合物の種類によって異なるが、この中で、ニッケル水溶液中に含まれるニッケル重量の0.5〜5.0倍が好ましい。すなわち、添加量が0.5倍未満では、上記焼結防止剤としての作用が不十分であり、一方5.0倍を超えても焼結防止効果はより増大せず、かえって上記湿式処理工程での水又は酸の使用量が増加する。
【0023】
上記工程において、ニッケル化合物と焼結防止剤が均一に分散されたゲル状のスラリーを形成するため、形成されたスラリーを十分に撹拌する。この際、撹拌による分散操作だけではなく、超音波分散操作を行うのが効果的である。上記工程の分散装置としては、特に限定されるものではないが、市販の商品名ホモジナイザー(日本精機製)、コロイドミル(日本精機製)、デスパ(浅田鉄工製)、ロボミックス(特殊機化製)、フィルミックス(特殊機化製)、ウルトラタラックス(特殊機化製)、超音波分散装置(日本精機製、ギンセン製)、超音波分散機(ギンセン製)等が好ましい。
【0024】
4.乾燥工程
本発明の乾燥工程は、上記スラリー調製工程で得られるゲル状のスラリーを乾燥して、ニッケル化合物と焼結防止剤の混合物を生成する工程である。
上記工程で使用するスラリーの乾燥装置としては、特に限定されるものではなく、市販の噴霧乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、塗布掻き取り乾燥機、回転式乾燥機又は撹拌式乾燥機が好ましい。
上記工程で得られる混合物は、生成されたニッケル化合物と焼結防止剤とが均一に混合されている。
【0025】
5.還元工程
本発明の還元工程は、上記乾燥工程で得られる混合物を水素雰囲気で加熱して水素還元に付し、金属ニッケル粒子を含む還元生成物を形成する工程である。
上記工程において、水素還元の加熱温度は、特に限定されるものではなく、350〜700℃が好ましい。すなわち、温度が350℃未満では、未還元のニッケル化合物が残留し金属ニッケル粒子の酸素濃度及び不純物濃度が上昇する。一方700℃を超えると、混合物中のニッケル化合物と焼結防止剤が反応して複合酸化物を生成して水素還元が困難になるとともに、後続の湿式処理工程で溶解できないので金属ニッケル粒子の酸素濃度及び不純物濃度が上昇する。さらに、得られるニッケル粉末の比表面積及び酸素濃度を低下させるためには、水素還元後に、不活性ガス雰囲気中で水素還元の加熱温度よりも高温度で、また焼結防止剤の融点を超えない温度で加熱処理を行うことが望ましい。
【0026】
6.湿式処理工程
本発明の湿式処理工程は、上記還元工程で得られる還元生成物を水溶液による浸出に付し、上記焼結防止剤を除去して金属ニッケル粒子を得る工程である。
上記工程において、上記還元生成物中の焼結防止剤の浸出に用いる水溶液は、水又は酸が好ましい。例えば、ナトリウムを含む焼結防止剤を形成する場合には、水で溶解することができるがが、浸出液がアルカリ性を呈する。そこで、ニッケル粉末の酸化を防止し、より効率的に浸出するために少量の酸を添加することが好ましい。
【0027】
浸出処理によって還元生成物中の焼結防止剤を溶解した後、通常の方法で洗浄、濾過、乾燥を行ってニッケル粉末を得る。なお、これらの工程において、ニッケル粉末表面が湿潤状態で徐酸化されるので、非常に薄い酸化被膜にて被覆された状態になる。したがって、発火等の危険性は低減する。また、乾燥はニッケル粉末の酸化の進行を抑えるため、真空中又は不活性雰囲気での乾燥が好ましい。
【0028】
7.ニッケル粉末
本発明の製造方法で得られるニッケル粉末は、平均粒径が0.1μm未満であり、好ましくは0.1μm未満、0.04μm以上であり、さらに酸素濃度が2.0重量%以下及び比表面積15m/g以下のペーストでの分散性に優れたニッケル粉末である。前記ニッケル粉末は、積層セラミックコンデンサ内部電極用として好適に用いられる。
【0029】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた酸素の分析方法と平均粒径及び比表面積の評価方法は、以下の通りである。
(1)酸素の分析:燃焼赤外吸収法で行った。
(2)平均粒径の測定:電界放射型走査電子顕微鏡で行った。
(3)比表面積の測定:BET法で行った。
【0030】
(実施例1)
ニッケル水溶液として、試薬の塩化ニッケル六水和物417gを1リットルの純水に溶解して調製したものを用いた。まず、前記塩化ニッケル水溶液を攪拌しながら、試薬の重炭酸ナトリウム300gを徐々に添加し、ゲル状の炭酸ニッケルを含むスラリーを得た。このとき、このスラリー中には反応生成物として塩化ナトリウム200g、余剰として重炭酸ナトリウム15gが含有されている。
次に、このスラリーを噴霧乾燥機で処理して、水分含有率5.0重量%の混合物を得て還元処理用粉末とした。
ついで、前記還元処理用粉末を、水素還元炉に装入して下記の条件で還元処理を行った。冷却後、前記炉より還元生成物を取り出し、水中に投入して下記の条件で湿式処理を行った。その後付着溶液を除去するため純水で洗浄し、濾過し、さらに、真空乾燥機を使用して150℃で10時間真空処理してニッケル粉末を得て、ニッケル粉末の酸素分析、平均粒径及び比表面積を測定した。
【0031】
得られたニッケル粉末の平均粒径は0.07μm、比表面積12.5m/g、酸素濃度は2.0重量%であり、積層セラミックコンデンサ内部電極用として満足できる超微粒子のニッケル粉末が得られた。
【0032】
[還元処理条件]
アルゴン気流中で550℃まで昇温し1時間保持して分解生成した炭酸ガスと水を系内から除去した後、水素ガスに切り替え1時間保持し水素還元処理した。
[湿式処理条件]
還元生成物を純水中で攪拌しながら40℃以下の温度に調節して、焼結防止剤を溶解除去した。その後、47重量%硫酸を5ml使用して洗浄した。
【0033】
(比較例1)
下記の方法で調製した還元処理用粉末を用いた以外は、実施例1と同様に行ってニッケル粉末を得た。その後、ニッケル粉末の酸素分析、平均粒径及び比表面積を測定した。得られたニッケル粉末の平均粒径は0.6μmであり、超微粒子のニッケル粉末は得られなかった。
【0034】
[還元処理用粉末の調製]
試薬水酸化ニッケル167gと試薬塩化ナトリウム200gを混合して、純水1Lでスラリー状にして、ボールミルで粉砕混合した。このスラリーを吸引濾過により固液分離した後、乾燥して得られた混合物を乳鉢で解砕して還元処理用粉末した。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の超微粒子のニッケル粉末及びその製造方法は、積層セラミックコンデンサ内部電極用として好適な、ペーストでの分散性に優れた平均粒径が0.1μm未満のニッケル粉末及びその製造方法であり、その工業的価値は極めて大きい。

Claims (5)

  1. ニッケル化合物と焼結防止剤を含む混合物を水素還元し、得られた還元生成物を湿式処理してニッケル粉末を製造する方法であって、
    (1)ニッケル水溶液に、アルカリ金属化合物を添加して中和反応に付し、ニッケル化合物と焼結防止剤を含むスラリーを形成するスラリー調製工程、
    (2)前記スラリー調製工程で得られるスラリーを乾燥して、ニッケル化合物と焼結防止剤の混合物を生成する乾燥工程、
    (3)前記乾燥工程で得られる混合物を水素還元に付し、金属ニッケル粒子を含む還元生成物を形成する還元工程、及び
    (4)前記還元工程で得られる還元生成物を水溶液による浸出に付し、焼結防止剤を除去して金属ニッケル粒子を得る湿式処理工程、を含むことを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
  2. 前記ニッケル水溶液が、塩化ニッケル又は硫酸ニッケルのニッケル水溶液であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
  3. 前記アルカリ金属化合物が、アルカリ金属の水酸化物、炭酸又は重炭酸塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
  4. 前記ニッケル水溶液が塩化ニッケル水溶液であり、かつ前記アルカリ化合物が重炭酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のニッケル粉末の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって得られる、平均粒径が0.1μm未満のニッケル粉末。
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