JP4661726B2 - 微粒ニッケル粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Description
金属粒子の形状を制御することにより、厚さにおいてナノメーターに、長さにおいてサブミクロンメーターにすることができると、積層セラミックスコンデンサの望ましい性能の達成につながる。例えば、ニッケルフレークのように、形状制御された粒子を用いることにより取扱いの容易性を保持したまま、ナノメーターの金属フレークを用いて積層数を著しく増加することができる。したがって、直径0.2〜0.3μm及び厚さ20〜30μmの小板状粒子を用いて、積層数が10倍である高性能の金属電極を製造することができる。
さらに、工程(B)に続いて、金属ニッケルと酸化ニッケルを含む微粒子を工程(B)の加熱温度より低い温度で還元性ガス雰囲気下に加熱処理することにより、金属ニッケルからなる微粒子へ還元する工程(C)を含むことができる。
本発明の製造方法に用いるニッケル化合物粒子としては、特に限定されるものではなく、種々のニッケル化合物粒子を用いることができるが、この中で、特に扁平な形状を有する微粒ニッケル粉末を製造する場合には、扁平な形状を有する水酸化ニッケル粒子が好ましい。したがって、板状の形状を有する微粒ニッケル粉末を製造する場合には、板状の形状を有する水酸化ニッケル粒子を用いる。
上記工程は、上記ニッケル化合物粒子にゼラチンを吸着させてゼラチン被覆ニッケル化合物を形成させる工程である。ここで、ゼラチン被覆ニッケル化合物は、濾過、洗浄、及び乾燥を行ない分離される。
上記工程は、工程(A)で得られたゼラチン被覆ニッケル化合物を不活性ガス雰囲気下に加熱処理して、ニッケル化合物を金属ニッケルと酸化ニッケルを含む微粒子に変換させる工程である。これによって、ニッケル化合物粒子の金属化が行なわれ、金属ニッケルを含む微粒子を生成される。
上記工程で、金属化率が70%以上の微粒ニッケル粉末を得ることができる。
上記工程は、工程(B)で得られた金属ニッケルと酸化ニッケルを含む微粒子を工程(B)の加熱温度より低い温度で還元性ガス雰囲気下に加熱処理して金属ニッケル微粒子に還元する工程である。これによって、ニッケルの金属化が進行する。このとき、従来のゼラチン吸着処理を施さないニッケル化合物粒子の水素還元の場合に比べて、その還元温度を低下せしめ、かつ還元速度を増大させることにより、この工程での焼結を防止することができる。
上記工程で、ニッケルの金属化率としては、90%以上が得られる。
本発明の製造方法において、原料として用いるニッケル化合物粒子の形状を調製すれば、容易に形状制御を行なうことができる。すなわち、扁平で、特に六角板状で粒径のバラツキが少ない均一な厚さを有する水酸化ニッケル粒子を用いることにより、扁平又は六角板状の形状を有し、粒径のバラツキが少ない均一な厚さを有する微粒ニッケル粉末が得られる。
(1)還元率の測定:TGA装置(Perkin Elmer製)を用いて、重量減少量から算出した。
(2)粒子観察:JEOL製FE−SEM JSM−7400Fを用いて、SEM像を得て粒子の形状と大きさを観察した。
(3)粒度分布測定:Brookhaven Instruments Corporation製のZetaPlusで測定した。
ゼラチンを吸着したニッケル化合物粒子を不活性ガス雰囲気下に加熱処理して、金属ニッケルを得た。
まず、水酸化ニッケル粒子を以下の手順で合成した。濃度0.02mol/Lの硝酸ニッケル水溶液と濃度0.04mol/LのNH4OH水溶液を混合し得られた懸濁液を95℃に保持したオーブン中で約5時間エージング処理した。その後、得られた固形分を濾過分離後、真空中110℃で12時間以上乾燥させ、水酸化ニッケル粒子を得た。
まず、25mLの蒸留水中に水酸化ニッケル粒子1.8gを分散させた懸濁液に、濃度0.4重量%のゼラチン水溶液25mLを添加した後、室温で30分間以上保持した後、これを濾過した。なお、最終的なゼラチン水溶液の濃度は、0.2重量%となる。続いて、濾過分離したゼラチンを粒子上に吸着した水酸化ニッケル粒子を、蒸留水1L中に再分散させ、再度濾過を行った後、110℃で12時間以上乾燥して、ゼラチンを被覆した水酸化ニッケル粒子を得た。ここで、ゼラチンの吸着量は4.4重量%であった。
ゼラチンを粒子上に吸着したニッケル化合物粒子を不活性ガス雰囲気下に加熱処理して、ニッケルの金属化する際のゼラチン吸着量の影響を検証した。
ゼラチン吸着処理で用いたゼラチン水溶液の濃度を変えて、ゼラチンを吸着した水酸化ニッケル粒子のゼラチン吸着量を、1.6、4.4、又は7.9重量%に変化させたこと、及びゼラチンを吸着した水酸化ニッケル粒子の加熱処理において、加熱最高温度を、300〜450℃の間で変化させたこと以外は実施例1と同様に行ない、ゼラチンを粒子上に吸着したニッケル化合物粒子を調製した。次に、各試料のTGAによる重量減少曲線を得て、それぞれ加熱処理後の微粒子のニッケル1モル当たりの酸素モル数を表すモル数基準での酸素含有量を求めた。結果を図3に示す。図3は、ゼラチン吸着量を1.6、4.4、又は7.9重量%に変化させた場合のゼラチンを吸着した水酸化ニッケル粒子の加熱最高温度と加熱処理後の微粒子のモル数基準での酸素含有量の関係を表す(実施例2)。なお、参考例として、実施例1と同様の手順で合成した水酸化ニッケル粒子を用いてゼラチン処理を行なわないで加熱処理したときの関係も示す(参考例1)。
実施例2で得られた粒子上にゼラチン処理を施した水酸化ニッケル粒子(ゼラチン吸着量:1.6、4.4、又は7.9重量%)を窒素ガス中で加熱処理して得られた微粒子を用いて、TGA装置(Perkin Elmer製)で水素ガスによる還元処理を行ない、得られた微粒ニッケル粉末の酸素含有量を求めた。なお、還元は、水素濃度5容量%の水素―窒素混合ガス下、温度190℃で時間150分間で行なわれた。結果を図4に示す。図4は、ゼラチン吸着量が1.6、4.4、又は7.9重量%における、窒素ガス中加熱処理での最高加熱温度と水素/窒素混合ガス下での還元で得られた微粒ニッケル粉末のニッケル1モル当たりの酸素モル数を表すモル数基準での酸素含有量の関係を表す。
水酸化ニッケル粒子の製造条件及びゼラチンの吸着処理条件を実施例1と同様に行ない得られたゼラチンの吸着量が4.4重量%の水酸化ニッケル粒子を用いて、下記の条件で加熱処理を行ない、還元率を求めた。また、得られた微粒ニッケル粉末のFE−SEM像による粒子観察と粒度分布測定を行なった。
また、得られた微粒ニッケル粉末のFE−SEM像を図5に示す。図5より、六角形状はほぼ完全に維持されており、エッジも非常にシャープである。また、粒子間の焼結もほとんど発生していないことが分かる。
また、粒度分布結果を図6にを示す。図6より、平均粒径は63nmであり、131nm以下の粒子が全粒子数の98%を占めていることが分かる。これらの値はFE−SEMで観察された一次粒子径とほぼ等しいといえる。
(a)流速45mL/minの窒素ガス中にて、50℃で3分間保持。
(b)50℃から350℃までを5℃/minの昇温速度で昇温。
(c)350℃から150℃まで5℃/minの冷却速度で冷却。
(d)流速45mL/minの水素濃度5容量%の水素―窒素混合ガス中にて、150℃から180℃まで0.5℃/minの昇温速度で昇温。
(e)180℃で150分間保持。
(f)180℃から100℃まで20℃/minで冷却。
(g)100℃から30℃まで10℃/minで冷却。
(h)流速45mL/minの窒素ガス中にて、30℃で15分間保持。
(i)流速20mL/minの空気中にて、30℃で5分間保持。
水素―窒素混合ガス中での180℃での保持時間が1分間であること以外は実施例4と同様に行ない、得られた微粒ニッケル粉末のFE−SEM像による粒子観察を行なった。結果を図7に示す。図7より、使用した水酸化ニッケル粒子の基本的な形状である板状の六角形が維持されていることが分かる。
水酸化ニッケル粒子の製造条件において、エージング処理条件として室温で2日間放置したこと以外はは実施例4と同様に行ない、得られた微粒ニッケル粉末のFE−SEM像による粒子観察を行なった。この粒子観察から、六角板状の微粒ニッケル粉末が得られることが分かった。
水酸化ニッケル粒子の製造条件において、塩化ニッケル濃度0.02mol/LとNH4OH濃度0.04mol/Lを含有する水溶液を調整したこと、及びエージング処理条件として室温で2日間放置したこと以外は実施例4と同様に行ない、得られた微粒ニッケル粉末のFE−SEM像による粒子観察を行なった。この粒子観察から、六角板状の微粒ニッケル粉末が得られることが分かった。
水酸化ニッケル粒子の製造において下記の条件を用いたこと以外は実施例4と同様に行ない、得られた微粒ニッケル粉末のFE−SEM像による粒子観察を行なった。この粒子観察から、六角板状の微粒ニッケル粉末が得られることが分かった。
濃度0.03mol/Lの硝酸ニッケル水溶液と濃度0.06mol/LのNH4OH水溶液の懸濁液を95℃に保持したオーブン中で約5時間エージング処理して得た水酸化ニッケル粒子を種晶とした。この種晶に、純水を加えて200mLの懸濁液とした。この懸濁液は0.15mol/Lのニッケル濃度である。この懸濁液に濃度1mol/Lの硝酸ニッケル水溶液とNH4OH濃度1.8mol/Lのアンモニア水溶液を1mL/min1の速度で190分間供給した。反応中のpHが8.5になるように各溶液の送液速度を微調整して制御した。
実施例1と同様の方法により、乾燥された水酸化ニッケル粒子を得た。この水酸化ニッケル粒子を用いて、TGA装置(Perkin Elmer製)で水素ガスによる還元処理を行ない、得られた微粒ニッケル粉末の還元度を重量減少量から求めた。また、FE−SEM像により粒子観察を行なった。なお、還元処理条件としては、水素濃度5容量%の水素―窒素混合ガス下、2段階の昇温パターンで加熱処理した。まず、275℃まで5℃/minの昇温速度で昇温し4分間保持後、再度350℃まで2℃/minの昇温速度で昇温し60分間保持したのち、30℃まで冷却した。
また、得られた微粒ニッケル粉末のFE−SEM像を図8に示す。図8より、粒子は変形が大きく、もはや六角形板状ではなく、さらに、粒子間の焼結も顕著であった。
実施例1と同様の方法により、乾燥された水酸化ニッケル粒子を得た。この水酸化ニッケル粒子を用いて、TGA装置(Perkin Elmer製)を使用して、還元開始温度を下げるために、加熱処理を2段にして行なった。ここで、1段目は窒素ガス中で水酸化ニッケルをNiO・nH2Oまで分解し、その後、水素濃度5容量%の水素―窒素混合ガス下で還元処理することを狙った。1段目の最高加熱温度を下げることにより、還元開始温度を下げることができるので、1段目の最高加熱温度を290℃とした。このとき、2段目の還元は約220℃から開始されるが、還元温度260℃で還元時間20時間の還元条件では還元は終了しなかった。
また、得られた微粒ニッケル粉末のFE−SEM像を図9に示す。図9より、粒子間の焼結が明確に認められる。
以上より、窒素ガス中加熱温度を下げることにより還元開始温度を下げることはできるが、この方法により還元時の焼結を防ぐことはできないことが分かる。
Claims (18)
- 事前に形成された異なる大きさと形状を有するニッケル化合物粒子にゼラチンを吸着させてゼラチン被覆ニッケル化合物を形成させる工程(A)と、工程(A)で製造されたゼラチン被覆ニッケル化合物を不活性ガス雰囲気下に加熱処理することにより、該ゼラチン被覆ニッケル化合物を金属ニッケルと酸化ニッケルを含む微粒子に変換させる工程(B)とを含むことを特徴とする微粒ニッケル粉末の製造方法。
- さらに、工程(B)に続いて、前記微粒子を工程(B)の加熱温度より低い温度で還元性ガス雰囲気下に加熱処理することにより、微粒子中の酸化ニッケルを還元する工程(C)を含むことを特徴とする請求項1に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 前記事前に形成されたニッケル化合物粒子の形状が、工程(B)における転換又は工程(C)における還元の後に保持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 前記事前に形成されたニッケル化合物粒子は、水酸化ニッケル粒子であることを特徴とする請求項1〜3に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 前記水酸化ニッケル粒子は、ニッケル塩水溶液をアルカリ水溶液に混合し反応により得られる生成物であることを特徴とする請求項4に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 前記水酸化ニッケル粒子の懸濁液は、撹拌状態のままで室温でエージング処理されることを特徴とする請求項5に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 前記水酸化ニッケル粒子の懸濁液は、撹拌状態のままで加熱下にエージング処理されることを特徴とする請求項5に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 前記反応は、反応溶液のpHを水酸化ニッケル粒子の等電点より低く保持しながら行われることを特徴とする請求項5に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 前記反応は、事前に形成された水酸化ニッケル粒子からなる種晶の存在下で行われることを特徴とする請求項5に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 前記種晶は、細かく分散した均一な形状を有する水酸化ニッケルを合成するため、濃度が0.1mol/L以下に調整されたニッケル塩水溶液をアルカリ水溶液と混合させることにより調製されることを特徴とする請求項9に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 前記事前に形成されたニッケル化合物粒子の形状は、板状であることを特徴とする請求項1〜3に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 前記ゼラチン被覆ニッケル化合物中のゼラチン量は、ニッケル化合物とゼラチンの全量に対して重量濃度で1.7%以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 工程(A)は、事前に形成されたニッケル化合物粒子をゼラチン水溶液中に分散させることにより行われることを特徴とする請求項1〜3に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 工程(B)の加熱温度は、300〜500℃であることを特徴とする請求項1〜3に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 工程(C)の加熱温度は、150〜240℃であることを特徴とする請求項2又は3に記載の微粒ニッケル粉末の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法により得られる微粒ニッケル粉末。
- 扁平な形状を有し、粒径のバラツキが少なく均一な厚さを有することを特徴とする請求項16に記載の微粒ニッケル粉末。
- 1粒子の最大投影直径が30〜300nmであり、かつ50nm以下の厚さを有する板状金属ニッケル粉末であることを特徴とする請求項16に記載の微粒ニッケル粉末。
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