JP6028551B2 - ボンド磁石製造方法及びボンド磁石製造装置 - Google Patents
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Description
特許文献1には、ネックレス等に用いられて身体に血行促進作用を及ぼす磁気治療器具において、所定の方向に延びて、シリコーンゴムと磁性粉との混合物により形成されるとともに着磁された可撓性を有する長尺な磁石部と、シリコーンゴムにより形成されるとともに前記磁石部の外周をその全域にわたって被覆する可撓性を有する被覆部とを備えたことを特徴とする磁気治療器具が記載されている。
特許文献3に記載の発明は、磁性体粒子を熱可塑性樹脂に練り込み、押出し成形時に動揺を与えることで磁性体粒子を配向させ、これにより磁束密度などの磁気特性を向上させている。
しかし、特許文献3に記載の発明は熱可塑性樹脂を用いるので、これによって製造された磁気治療器具は常温では十分な柔軟性を保持することができない。そのため、当該磁気治療器具は、皮膚等に直接接触させて使用するのに適しているとは言えない。十分な柔軟性を保持させるためには、常温での柔軟性に優れる熱硬化性樹脂を用いるとよいが、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂は硬化プロセスが全く異なる。そのため、当該特許文献3に記載されている技術をそのまま転用することができない。なお、熱可塑性樹脂は、加熱して軟化させた樹脂を冷却して硬化させるのに対し、熱硬化性樹脂は、常温で硬化していない樹脂(液体状の樹脂)を加熱し、架橋反応させて硬化させる。熱硬化性樹脂の硬化は、一旦反応が開始されると制御が難しく、押出成形機の金型内で安定的に磁性粉末を配向させつつ、これを硬化させ、成形品を製造するという技術は実現できていないのが現状であった。
本発明に係るボンド磁石製造方法及び製造装置は、皮膚等に直接接触させて使用するのに適しており、磁気特性に優れたボンド磁石を製造することができる。
はじめに、本発明に係るボンド磁石の一実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係るボンド磁石は、磁性粉末と熱硬化性樹脂を含んでなる。より具体的には、ボンド磁石は、熱硬化性樹脂を母材樹脂として含み、この熱硬化性樹脂中に磁性粉末を固定した熱硬化性樹脂組成物である。
配効率(%)={(測定σr−無配向σr)/(フル配向σr−無配向σr)}×100
他方、磁性粉末2の配向率が10%よりも低いと、磁気特性が劣ったものとなる。そのため、十分な磁気効果を得ることができず、軽量化を図ることもできない。
熱硬化性樹脂としては、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム(シリコーン生ゴム)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、アリル樹脂などを用いることができるが、これらの中でも、化学的安定性、耐熱性、耐寒性の点で、シリコーンゴムを用いるのが好ましい。熱硬化性樹脂としてシリコーンゴムを用いれば、化学的安定性、耐熱性、耐寒性に優れ、適度な可撓性を有したものとすることができるので、皮膚等に直接接触させて使用するのにより適したものとすることができる。
また、シリコーンゴムは、ラジカル反応型及び付加反応型のうちのいずれであってもよいが、本実施形態に係るボンド磁石1の物理的強度や圧縮歪み特性の低下の防止、着色による黄変の防止、可使時間の長さ、成形加工性などの点を考慮すると、付加反応型シリコーンゴムを用いるのが好ましい。
付加反応型シリコーンゴムを用いる場合、当該シリコーンゴムは、1分子中に少なくとも2個のビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基を含むアルケニル基含有シリコーンゴムであるのが好ましい。
他方、充填剤の配合量が熱硬化性樹脂100質量部に対して、25質量部よりも低いと、充填剤の配合量が少な過ぎるため、所望の強度、加工性を得ることができないおそれがある。また、充填剤の配合量が熱硬化性樹脂100質量部に対して、65質量部より高くなると熱硬化性樹脂への配合が困難となり、熱硬化性樹脂(より具体的には、磁性粉末と熱硬化性樹脂を混練した混練物)が硬くなって成形加工性が低下するおそれがある。さらに、硬化後の強度が劣るようになる。なお、充填剤の配合量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、33〜53質量部とするのが好ましい。
そのため、本実施形態に係るボンド磁石1によれば、従来と同量の磁性粉末2を用いた場合、従来のものよりも高い磁気特性を得ることができる。また、本実施形態に係るボンド磁石1によれば、従来と同程度の磁気特性を、従来よりも少ない量の磁性粉末2で得ることができる。さらに、本実施形態に係るボンド磁石1によれば、従来と同程度の磁気特性(磁気効果)を備えたボンド磁石を、従来よりも軽量化して提供することができる。本実施形態に係るボンド磁石1であれば、同等の磁気効果を有する従来品よりも、例えば、15%軽量化することができる。これは、磁気ネックレスを想定した場合、従来品であれば26.5gとなるところ、本発明の実施品であれば22.6gにできることを意味する。
本実施形態に係るボンド磁石1は、磁気治療器として使用することができ、磁気ネックレスや磁気ブレスレットなどの装身具、磁気枕や磁気マットレスなどの寝具、貼付型磁気治療器や磁気サポーターなどの幅広い磁気治療器製品に適用することができる。
次に、本発明に係るボンド磁石製造方法の一実施形態について説明する。
本発明に係るボンド磁石製造方法は、前記したボンド磁石1を製造するための方法である。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係るボンド磁石製造方法は、成形工程S1と、架橋反応工程S2と、を含んでなり、少なくともこれらの工程をこの順で行うものである。
磁性粉末2の配向率は、例えば、成形条件として成形品の直径が5〜10mmであって、成形装置として押出成形機を使用し、その押出成形速度が3〜15m/minであり、硬化条件として架橋反応装置の硬化温度が400〜700℃である場合、成形装置と架橋反応装置の距離、より具体的には、成形装置に備えられた磁場配向装置と架橋反応装置の距離を10〜500mmとするとよい。このようにすれば、磁性粉末2の配向率を確実に10%以上とすることができる。
次に、本発明に係るボンド磁石製造装置の一実施形態について説明する。
本発明に係るボンド磁石製造装置は、前記したボンド磁石1を製造するための装置である。
図3(a)に示すように、本発明の一実施形態に係るボンド磁石製造装置10は、成形装置11と、架橋反応装置13と、を備えている。
シリコーン生ゴム(商品名「KE−78VBS」、信越化学工業株式会社製)100質量部に対して、疎水性フュームドシリカ(商品名「アエロジルR974」、日本アエロジル株式会社製)33質量部、シリカ分散剤として両末端シラノール基を有するジメチルポリシロキサンを3質量部配合し、ニーダーミキサーを用いて均一に混合し、150℃で2時間熱処理してシリコーンゴム組成物を得た。
磁性コンパウンドのシリコーンゴム組成物と異方性Sm2Fe17N3磁性粉末の配合を100質量部:200質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
金型出口とHAV用の加熱筒との距離(HAV距離)を10mmに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
HAV距離を20mmに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
HAV距離を150mmに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
HAV距離を300mmに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
HAV距離を500mmに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
金型に配向用磁石を備えず、異方性Sm2Fe17N3磁性粉末を配向させないこと以外は、実施例1と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
金型に配向用磁石を備えず、異方性Sm2Fe17N3磁性粉末を配向させないこと、及び、磁性コンパウンドのシリコーンゴム組成物と異方性Sm2Fe17N3磁性粉末の配合を100質量部:200質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
HAV距離を0mmに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造した。しかし、金型への加熱筒の熱の伝播が大きく、シリコーン組成物が金型の中(二層クロスヘッドの中)に詰まってしまい、押出成形は中断された(成形不能)。
HAV距離を2mmに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
HAV距離を5mmに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
HAV距離を700mmに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
HAV距離を1000mmに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法、条件によって紐状のボンド磁石を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
比較例1は従来相当品である。比較例1について、磁束密度は合格していたが、異方性Sm2Fe17N3磁性粉末を配向させていないので、実施例2よりも密度が高い結果となった。比較例2〜7は、異方性Sm2Fe17N3磁性粉末を配向させていないか、HAV距離が適切でなかったため、磁束密度が不合格となった。より詳しい考察を以下に述べる。
表1に示すように、比較例1では65mTであった磁束密度が、実施例1のように配向することで98mTに向上した。
また、配向した実施例2では、異方性Sm2Fe17N3磁性粉末の量を減らしても、比較例1と同等の65mTを実現することができることが確認された。表1に示すように、実施例2の密度は2.3g/cm3であり、比較例1の2.7g/cm3と比較すると、15%の軽量化を実現したことになる。
表1、図5及び図6に結果をまとめる。
比較例3は、HAV距離0mmであったので、加熱筒から金型への加熱が激しく、シリコーンゴム組成物が激しく硬化して、金型に詰まってしまい、押出成形を途中で中断する結果となった(そのため、図5及び図6には比較例3に相当するマーカーをプロットしていない。)。
また、比較例4、5は、配向率も磁束密度も低い結果となった。これは加熱筒と金型の距離が近すぎるため、金型が加熱筒により加熱され、シリコーンゴム組成物が配向前に硬化してしまい、ほとんど配向できていないことを示している。
実施例3、4にも若干その傾向が見られるが、磁束密度の向上が確認できた。HAV距離40mm以降では、距離が大きくなるにつれ、配向率は低下する傾向にあった。これは金型から成形品が出た瞬間から配向の乱れが始まっており、金型出口と加熱筒との距離が遠く、硬化までに時間がかかるほど、配向の乱れが大きいことを示している。
実施例1〜7から、HAV距離が10〜500mmの範囲であれば、配向率は10%以上であり磁束密度も比較例2よりも大きく、配向の効果を確認することができた。
比較例6はHAV距離700mmであり、加熱筒が金型出口から遠すぎるため、配向はほとんど乱れてしまい配向率は5%となった。このときの磁束密度は40mTであり、これは比較例2と同程度に過ぎなかったため、本発明所望の効果を奏しているとは言えないと結論付けた。
また、比較例7はHAV距離が1000mmであり、加熱筒が金型出口から遠すぎるため配向が完全に乱れてしまい、配向率は0%となった。
なお、表には載せていないが、フェライト系の異方性磁性粉末を用いた場合や、Nd2Fe14B等方性磁性粉末も同様の効果が確認された。
また、異方性Sm−Fe−N系磁性粉末の着磁については、押出成形後の成形品に対して適当な着磁装置を用いて、成形品の形状に応じた方向に30kOe程度の磁場を付与して行ってもよい。
さらに、必要に応じてボンド磁石1を外層で覆ってもよいし、押出成形の際に共押出を行うことで、外層で被覆しながら押出成形を行ってもよい。
こうした変形例等も前記したように本発明の技術的範囲に包含される。
2 磁性粉末
3 熱硬化性樹脂
10 ボンド磁石製造装置
11 成形装置
12 磁場配向装置
13 架橋反応装置
Claims (10)
- 磁性粉末と熱硬化性樹脂を含んでなり、前記磁性粉末の配向率が10%以上であるボンド磁石を製造するボンド磁石製造方法であって、
前記磁性粉末と前記熱硬化性樹脂の混練物を所定の形状に成形すると共に、前記磁性粉末を所定の方向に配向させて成形品を得る成形工程と、
前記成形工程で使用する成形装置の金型出口に備えられた磁場配向装置から10〜500mm離間させて設けられた架橋反応装置で前記成形品中の前記熱硬化性樹脂を架橋反応させる架橋反応工程と、を含むことを特徴とするボンド磁石製造方法。 - 前記磁性粉末が、Sm−Fe−N系磁性粉末であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂が、シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボンド磁石製造方法。
- 前記磁性粉末の平均粒径が1〜10μmである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のボンド磁石製造方法。
- 前記磁性粉末の配合量が、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、50〜800重量部である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のボンド磁石製造方法。
- 磁性粉末と熱硬化性樹脂を含んでなり、前記磁性粉末の配向率が10%以上であるボンド磁石を製造するボンド磁石製造装置であって、
前記磁性粉末と前記熱硬化性樹脂の混練物を所定の形状に成形すると共に、前記磁性粉末を所定の方向に配向させて成形品を得る成形装置と、
前記成形品中の前記熱硬化性樹脂を架橋反応させる架橋反応装置と、を備え、
前記成形装置の金型出口に備えられた磁場配向装置と前記架橋反応装置とを10〜500mm離間させて設けたことを特徴とするボンド磁石製造装置。 - 前記磁性粉末が、Sm−Fe−N系磁性粉末であることを特徴とする請求項6に記載のボンド磁石製造装置。
- 前記熱硬化性樹脂が、シリコーンゴムであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のボンド磁石製造装置。
- 前記磁性粉末の平均粒径が1〜10μmである請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のボンド磁石製造装置。
- 前記磁性粉末の配合量が、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、50〜800重量部である請求項6から請求項9のいずれか一項に記載のボンド磁石製造装置。
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