以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の戸の使用場所は特に限定されるものではないが、ここでは浴室と脱衣室を仕切るための浴室戸の場合を示し、上記の一方側を浴室側、他方側を脱衣室側とする。なお、以下において左右方向とは戸を脱衣室側から見た際の左右方向を示すものとする。この戸の第一実施形態は、図3に示すように、枠体10と、枠体10に開閉自在に納めた障子20とを備えており、障子20が回動自在な開戸である。枠体10は、アルミニウム製の形材からなるものであり、上下の横枠(上枠10aと下枠10b)と、左右の縦枠10cとを四周枠組みしたものである。
図1に示すように、枠体10の上枠10aは、上側部分5と、下側部分6とを有する。上側部分5の見込方向中央部分の下側面51と、下側部分6の上側面61とは、平行であって浴室側に向けて下方に傾斜している。また、両面51,61の見込方向中央には、両面51,61に対して垂直向きであって両面51,61を繋ぐ連結壁7を形成してあり、この連結壁7によって上側部分5と下側部分6とが一体になっている。そして、上側部分5は天井面30にネジ止めしてあり、下側部分6の下側には、障子20の上框20aが垂直軸周りに回動自在に取り付けてある。そして連結壁7には、見込方向に貫通する通気口71を設けてあって、上側部分5の下側面51と下側部分6の上側面61との間に換気経路Cを形成してある。なお、図2(障子は図示省略してある)に示すように、通気口71は略矩形で左右方向に長く、左右に4つ並んでいる。また、図1に示すように、通気口71は連結壁7の上下方向中央に設けてあって、通気口71の上下には、上側部分5の下側面51及び下側部分6の上側面61から立ち上がった連結壁7の壁面が存在している。そしてそれぞれの通気口71には、樹脂製の通気口カバー2a,2bを取り付けてある。右側端の通気口71を除いた左側の3つの通気口71に取り付ける通気口カバー2aは、図6に示すように、通気口71に丁度嵌まる環状の被覆部21と、被覆部21の脱衣室側に形成した額縁部22からなり、被覆部21の左右の両端部にクサビ形の爪部23を形成してある。脱衣室側から被覆部21を通気口71に挿入すると、爪部23が連結壁7を乗り越え、爪部23と額縁部22とで連結壁7を挟み込んで、通気口カバー2aが通気口71に固定され、被覆部21が通気口71の周縁部の小口を覆う。なお、右側端の通気口71には、後述の押圧部材3を取り付けるための構造を備える通気口カバー2bを取り付けてあり、これについては押圧部材3と併せて説明する。
また、上枠10aの浴室側には、カバー材8が取り付けてある。カバー材8は、図1に示すように、上下に延びる垂下片81と、垂下片81の上端から脱衣室側へ延びる上端面82と、上端面82の脱衣室側端から浴室側下方へ向けて垂下片81まで延びる補助面83とを備え、補助面83には開閉弁1が設けてある。開閉弁1は、左右方向長さが上枠10aと略同じであって、左右に長い換気経路Cを単一部材で開閉するものであり、断面円形の軸部11と、軸部11から延びる面部12とを有し、補助面83の脱衣室側端に形成した軸受部84に軸部11が回動自在に嵌め込んである。また、上端面82の見込方向両端には略L字形で脱衣室側に向けて延びる係合部85が設けてある。一方、上側部分5の浴室側端部には、二つの係合部85に対応して、逆向きのL字形の被係合部52が設けてある。また、カバー材8の左右両端には端部キャップ(図示省略)が取り付けてあり、換気経路Cの左右端部に位置する左右の縦枠10cの対向する両面には、キャップ受部(図示省略)が取り付けてある。カバー材8を上枠10aに取り付ける際には、二つの係合部85をそれぞれ上側部分5の被係合部52に係合させ、左右の端部キャップをそれぞれキャップ受部に係合させる。カバー材8を取り付けると、開閉弁1の軸部11が上側部分5側に位置し、開閉弁1は換気経路Cの浴室側寄りの連結壁7から離隔した位置に設けられる。そして開閉弁1の面部12が自重で垂れ下がり、先端が下側部分6の浴室側面に設けたタイト材62に当接して、換気経路Cを閉鎖する。そして、浴室が負圧になると、開閉弁1が時計回りに回動して換気経路Cを開放する。この際、開閉弁1は補助面83と略平行となり、換気経路Cの屈曲部で空気が滞留しないようにガイドの役割を果たす。また、垂下片81が換気経路Cの浴室側出口を下向きに形成しており、浴室内の人に風が直接当たらないようになっている。
そして、図2に示すように、右側端の通気口71には、他とは異なる構造の通気口カバー2bを取り付けてあり、この通気口カバー2bに押圧部材3を取り付けてある(以下、この通気口カバーを取付用通気口カバーとよぶ)。図5に示すように、この通気口カバー2bは、他の通気口カバー2aの左右方向中央に、押圧部材3を保持するためのホルダ24を設けたものである。よって、被覆部21、額縁部22及び爪部23の構成は、他の通気口カバー2aと同じである。ホルダ24は、見込方向に延びる断面矩形の筒状のものであって、被覆部21及び額縁部22と一体に形成されており、浴室側端は被覆部21の浴室側端と面一であり、脱衣室側端は額縁部22よりも脱衣室側に突出している。そしてホルダ24の左右の側壁の対向する内側面には、見込方向に延びる突条25を形成してある。突条25は、ホルダ24の見込方向中程の、上下方向中央に設けてあり、浴室側端部及び脱衣室側端部において、それぞれ先端に向かって突出幅が大きくなっている。
一方、押圧部材3は、図4に示すように、見込方向に延びる胴部32と、胴部32の脱衣室側端に形成した左右に延びる把持部33からなる。胴部32は断面矩形であって、取付用通気口カバー2bのホルダ24に丁度嵌まる大きさである。そして、胴部32の浴室側の約2/3の範囲は、上下方向に貫通する中空構造となっており、下端の左右方向中央に、見込方向に延びる補強板34を設けてある。また、図4(a)に示すように、胴部32の左右の側壁の見込方向中程には凹部35を形成してある。凹部35の見込方向長さは胴部32の約1/2であり、凹部35の内側は略全域が中空である。そして、凹部35の脱衣室側端と浴室側端に形成される直角の段部が、後述のストッパ31a,31bとなる。さらに、凹部35の見込方向中央には、断面三角形の中間突起36を形成してある。また、胴部32の浴室側端は、平面視して先細形状となっている。さらに、図4(b)に示すように、胴部32は浴室側端部において高さが低くなっており、特に先端部には浴室側に向けて下方に傾斜した傾斜部37を形成してある。
そして、この押圧部材3を取付用通気口カバー2bのホルダ24に挿入してある。押圧部材3の胴部32の外寸とホルダ24の内寸は略同じであるが、胴部32の浴室側端は先細形状となっているので、挿入しやすくなっている。挿入の際、ホルダ24内の突条25が胴部32の左右の側壁に引っ掛かるが、側壁の内側が中空なので、側壁は内側に撓んで挿入が可能となり、突条25は凹部35に納まる。押圧部材3は突条25が凹部35に納まる範囲で見込方向に移動可能であり、脱衣室側から把持部33を持って操作する。押圧部材3を最も浴室側まで押し込むと図7(a)の状態となり、突条25が脱衣室側のストッパ31aと中間突起36の間に嵌まっていて、押圧部材3の見込方向位置が固定されている。この状態の押圧部材3は、図1において実線で表されていて、押圧部材3の浴室側端が開閉弁1を浴室側に押圧して常に換気経路Cを開放状態としており、この状態を押圧状態とよぶ。この際、押圧部材3の浴室側端部の高さが低くなっていることで、開閉弁1の軸部11を回避しており、また、押圧部材3の浴室側端の傾斜部37が、開放状態の開閉弁1の面部12と略平行になって広い面で当接するので、開閉弁1を確実に保持できる。なお、押圧状態においては、ホルダ24の突条25の脱衣室側端が、押圧部材3の脱衣室側のストッパ31aに係合しており、ストッパ31aは直角形状なので突条25がストッパ31aを乗り越えることはできないから、それ以上押圧部材3が浴室側に移動することは規制されている。一方、中間突起36は三角形なので、押圧部材3の胴部32の側壁が撓むことで(内側が中空なので撓みやすい)突条25が中間突起36を乗り越えることができるから、把持部33を持って力を加えれば押圧部材3を脱衣室側に引くことができる。また、押圧部材3を最も脱衣室側まで引くと図7(b)の状態となり、突条25が浴室側のストッパ31bと中間突起36の間に嵌まっていて、押圧部材3の見込方向位置が固定されている。この状態の押圧部材3は、図1において二点鎖線で表されていて、押圧部材3の浴室側端が開閉弁1から離隔して開閉弁1は回動自在となっており(図1(二点鎖線)では自重で垂れ下がって換気経路Cを閉鎖している)、この状態を非押圧状態とよぶ。なお、非押圧状態においては、ホルダ24の突条25の浴室側端が、押圧部材3の浴室側のストッパ31bに係合しており、ストッパ31bは直角形状なので突条25がストッパ31bを乗り越えることはできないから、それ以上押圧部材3が脱衣室側に移動することは規制されている。一方、中間突起36は三角形なので、押圧部材3の胴部32の側壁が撓むことで(内側が中空なので撓みやすい)突条25が中間突起36を乗り越えることができるから、把持部33を持って力を加えれば押圧部材3を浴室側に押すことができる。なお、突条25は、見込方向両端部の突出幅が大きく、見込方向中間部の突出幅が小さいので、突条25の見込方向両端部が中間突起36を乗り越えて押圧状態と非押圧状態の中間状態になった際に、押圧部材3を見込方向に動かしやすくなっている。このように、押圧部材3を押し引きすることで押圧状態と非押圧状態を切替可能であり、押圧状態では開閉弁1が常に換気経路Cを開放した状態となる。一方、非押圧状態では開閉弁1が回動自在であって、通常は自重で垂れ下がって換気経路Cを閉鎖した状態となり、浴室が負圧になると回動して換気経路Cを開放した状態となる。
このように構成した戸の第一実施形態によれば、換気経路Cの浴室寄りに連結壁7から離隔して開閉弁1を設けてあって、開閉弁1から脱衣室まで距離があるので、浴室側から流入する水や水蒸気が開閉弁1を通過しても脱衣室側まで届きにくい。また、換気経路Cの途中に設けた連結壁7が水や水蒸気の浸入を妨げる。特に、通気口71の下側に下側部分6の上側面61から立ち上がる連結壁7の壁面が存在しているので、確実に止水される。よって、水や水蒸気が脱衣室に入り込まない。また、連結壁7により換気経路Cの上下の上側部分5と下側部分6とが一体になっているので、強度が高い。さらに、通気口カバー2a,2bが通気口71の小口の色目の違い(金属の切断面なので周囲と色目が異なる)を覆い隠すので意匠性が良好であり、また、通気口カバー2a,2bが清掃などの際に通気口71の小口のエッジで手を切る怪我を防ぐので安全性も高い。そして、取付用通気口カバー2bに押圧部材3を取り付けるので、上枠10aに加工を施す必要がない。また、開閉弁1は左右に長い単一部材のものであるから、左右方向のどの位置で押圧部材3により押圧してもよいので、任意の通気口71に取付用通気口カバー2b及び押圧部材3を取り付けて適宜操作位置を変更することができ、左右勝手の違いなどにも容易に対応できる。さらに、押圧部材3によって開閉弁1を強制的に開放状態に保持することができるので、24時間換気にも対応可能である。そして、この押圧部材3はストッパ31a,31bにより所定範囲以上動くことはなく、開閉弁1や機構の破損を防いでいる。また、開閉弁1が浴室側に位置しており、押圧部材3を戸の見込中程に設けることができるので、押圧部材3の脱衣室側への露出が少なく意匠性が良好であるとともに、押圧部材3自体は見えにくいので意匠性を考慮する必要性が小さく、設計の自由度が高い。
次に、本発明の戸の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、図10に示すように、枠体10と、枠体10に開閉自在に納めた2枚の障子20とを備えており、2枚の障子20が引き違いとなった引戸である。枠体10は、第一実施形態と同様にアルミニウム製の形材からなるものであり、上下の横枠(上枠10aと下枠10b)と、左右の縦枠10cとを四周枠組みしたものであるが、図8に示すように、2枚の障子20を納めるため見込幅が長くなっている。見込幅以外の構成は第一実施形態と略同じであり、枠体10の上枠10aは上側部分5と下側部分6とを有していて、下側部分6の下側に、2枚の障子20の上框20aを摺動自在に納めてある。上側部分5の下側面51と下側部分6の上側面61の見込方向中央には、両面51,61を繋ぐ連結壁7を形成してある。そして連結壁7には、見込方向に貫通する通気口71を設けてあって、上側部分5の下側面51と下側部分6の上側面61との間に換気経路Cを形成してある。なお、図9(障子は図示省略してある)に示すように、通気口71は略矩形で左右方向に長く、左右に9つ並んでいる。そしてそれぞれの通気口71には、第一実施形態と同じ通気口カバー2a,2bを取り付けてあり、右側端の通気口71を除いた左側の8つの通気口71に取り付けるのはホルダを有さない通気口カバー2a(図6)であり、右側端の通気口71に取り付けるのは取付用通気口カバー2b(図5)である。また、カバー材8及びカバー材8に設けた開閉弁1も、第一実施形態と同じものである。
そして押圧部材3は、図11に示すように、第一実施形態と同様の構成であって、上枠10aの見込幅が長い分だけ、胴部32がより見込方向に長いものとなっており、胴部32の脱衣室側端には左右に延びる把持部33を形成してある。胴部32は断面矩形であって、取付用通気口カバー2bのホルダ24に丁度嵌まる大きさである。そして、胴部32の見込方向中程の約1/2の範囲は、上下方向に貫通する中空構造となっており、下端の左右方向中央に、見込方向に延びる補強板34を設けてある。また、図11(a)に示すように、胴部32の左右の側壁の見込方向中程には凹部35を形成してある。凹部35の見込方向長さは第一実施形態と同じであり、凹部35の内側は略全域が中空である。そして、凹部35の脱衣室側端と浴室側端に形成される直角の段部が、ストッパ31a,31bとなる。さらに、凹部35の見込方向中央には、断面三角形の中間突起36を形成してあり、脱衣室側と浴室側それぞれのストッパ31a,31bと、中間突起36との間の距離も第一実施形態と同じである。また、胴部32の凹部35より浴室側に、平面視して浴室側に向けて細くなる部分を形成して、ホルダ24に挿入しやすくしてある。さらに、図11(b)に示すように、胴部32は浴室側端部において高さが低くなっており、特に先端部には浴室側に向けて下方に傾斜した傾斜部37を形成してある。また、胴部32の下側面の脱衣室側寄りの位置(中空ではない部分)の左右両端には、下側に向けて突出する支持部38を形成してある。この押圧部材3を取付用通気口カバー2bのホルダ24に挿入すると、第一実施形態の場合と同様に動作して、押圧状態と非押圧状態を切り替えることができる。この際、図8に示すように、支持部38が下側部分6の上側面61に当接することで、押圧部材3が下側部分6の上側面61に対して常に平行となるように支持しており、見込方向に長い押圧部材3がスムーズに摺動するようにしてある。
このように構成した戸の第二実施形態によれば、水や水蒸気が脱衣室に入り込まず、また連結壁7により換気経路C部分の強度が高く、かつ押圧部材3によって開閉弁1を強制的に開放状態に保持することで24時間換気にも対応できるものであって、その他、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。
次に、本発明の戸の第三実施形態について説明する。第三実施形態は、第一実施形態と押圧部材の構成のみが異なるものであるから、当該部分以外の説明は省略する。第三実施形態においても、4つの通気口71のうち左側の3つの通気口71にはホルダを有さない通気口カバー2aを取り付けてあり、右側端の通気口71に、取付用通気口カバー2cを取り付けてあって、取付用通気口カバー2cに押圧部材4を取り付けてある。第三実施形態の取付用通気口カバー2cは、第一実施形態のものとは異なり、他の通気口カバー2aに後述のストッパ41a,41bを形成したものである。押圧部材4は後述のとおり回動自在であるが、ここでは、図13において実線で示した状態に基づいて説明するものとする。押圧部材4は、図13に示すように、平面視して略L字形であって、浴室側に向けて延びる第一腕部42と、左側(図13の下側)に向けて延びる第二腕部43とを有する。第一腕部は、図12に示すように、高さが低くなっており、先端部には浴室側に向けて下方に傾斜した傾斜部44を形成してある。そして、第一腕部42と第二腕部43の根元側に、回転軸45を取り付けてある。回転軸45は、上側部分5の下側面51及び下側部分6の上側面61に対して垂直に延びており、上端が、取付用通気口カバー2cの上辺の、左右方向中央かつ見込方向中央の位置に固定されている。これにより、押圧部材4は回転軸45周りに回動自在となっている。さらに、押圧部材4にはねじりコイルバネ46が内蔵されている。ねじりコイルバネ46のコイル部分は回転軸45の上側部分に外挿され、ねじりコイルバネ46の一方の足は押圧部材4に係合し、他方の足は取付用通気口カバー2cの上辺に係合していて、押圧部材4を上面視して時計回りに付勢している。そして、図13に示すように、取付用通気口カバー2cの上辺の、押圧部材4の右側(図13の上側)に隣接する位置の浴室側端と脱衣室側端には、ストッパ41a,41bを形成してある。ストッパ41a,41bは、下側に向けて突出する円柱形のものである。押圧部材4は回動自在であるが、浴室側のストッパ41aにより、第一腕部42が浴室側を向いた状態(図13において実線で示した状態)よりも時計回りに回転しないよう規制されている。また、脱衣室側のストッパ41bにより、第二腕部が脱衣室側を向いた状態(図13において二点鎖線で示した状態)よりも反時計回りに回転しないよう規制されている。
押圧部材4はねじりコイルバネ46により時計回りに付勢されているが、これを操作するために、第二腕部43の先端にワイヤ91を取り付けてある。ワイヤ91を右側(図13の上側)に引くと、押圧部材4がねじりコイルバネ46の付勢力に抗して反時計回りに回転する。ワイヤ91は、右側の縦枠10cの左側面に取り付けた滑車92に掛けられていて下向きに延びており、ワイヤ91の先端は操作部9に接続されている。操作部9は、図14に示すように、ケース93と、スライダ94からなる。なお、図14(a)、(c)は、右側の縦枠10cに取り付けた操作部9を左側から見た正面図であり、図14(b)、(d)は、操作部9を脱衣室側から見た縦断面図であって、ここでは図14(a)、(c)の手前側を表側とする。ケース93は、縦長の箱形であって、右側の縦枠10cの左側面の脱衣室側寄りに取り付けてあり、上端が開口している。そしてケース93の表側面の上下方向中程には、上下に延びる係合溝95を形成してある。係合溝95は、下端に溝幅が広い幅広部95aを形成してある。また、スライダ94は、ケース93内に上下動自在に納めてあり、表側に開口する箱形の受部96と、受部96の表側に被せた蓋部97とを有していて、蓋部97の上端にワイヤ91を接続してある。そして、受部96及び蓋部97の内部にはバネ98を設けてあって、バネ98は受部96に対して蓋部97を表側に付勢している。また、蓋部97の表側には摘み部99を形成してある。摘み部99は、基部99aと、頂部99bからなり、基部99aは、その幅及び上下長さが係合溝95の幅広部95aと略同じである。そして頂部99bは基部99aの表側に形成してあり、基部99aよりも幅が狭く、係合溝95の上側部分の溝幅と略同じである。
続いて、このように構成した押圧部材4及び操作部9の動作について説明する。押圧部材4は、ねじりコイルバネ46により時計回りに付勢されているので、スライダ94は、常にワイヤ91で上側に引っ張られる状態である。スライダ94の摘み部99を裏側へ押し込むと、図14(a)、(b)に示すように、基部99aがケース93内に納まり、頂部99bが係合溝95を上端まで摺動して、スライダ94がケース93の上端部で固定される。すると、押圧部材4は時計回りに回転して浴室側のストッパ41aに当接した状態となる(図13において実線で示した状態)。このとき、図12に示すように、押圧部材4の第一腕部42が開閉弁1を浴室側に押圧して常に換気経路Cを開放状態としており、この状態を押圧状態とよぶ。この際、第一腕部42の高さが低くなっていることで、開閉弁1の軸部11を回避しており、また、第一腕部42の傾斜部44が、開放状態の開閉弁1の面部12と略平行になって広い面で当接するので、開閉弁1を確実に保持できる。なお、押圧状態においては、押圧部材4の第一腕部42が浴室側のストッパ41aに当接しており、それ以上押圧部材4が時計回りに回転することは規制されている。一方、この状態からスライダ94の摘み部99を係合溝95の下端の幅広部95aの位置まで押し下げると、バネ98の付勢力によって摘み部99が表側に飛び出し、基部99aが幅広部95aに納まって、スライダ94がケース93の下端部で固定される。すると、押圧部材4はワイヤ91に引っ張られて、ねじりコイルバネ46の付勢力に抗して反時計回りに回転し、脱衣室側のストッパ41bに当接した状態となる(図13において二点鎖線で示した状態)。このとき、押圧部材4の第一腕部42が開閉弁1から離隔して開閉弁1は回動自在となっており(図12(二点鎖線)では自重で垂れ下がって換気経路Cを閉鎖している)、この状態を非押圧状態とよぶ。なお、非押圧状態においては、押圧部材4の第二腕部43が脱衣室側のストッパ41bに当接しており、それ以上押圧部材4が反時計回りに回転することは規制されている。このように、操作部9のスライダ94を上下させることで、押圧部材4を回転させて押圧状態と非押圧状態を切替可能であり、押圧状態では開閉弁1が常に換気経路Cを開放した状態となる。一方、非押圧状態では開閉弁1が回動自在であって、通常は自重で垂れ下がって換気経路Cを閉鎖した状態となり、浴室が負圧になると回動して換気経路Cを開放した状態となる。
このように構成した戸の第三実施形態によれば、第一実施形態と同様に、換気経路Cの浴室寄りに連結壁7から離隔して開閉弁1を設けてあって、開閉弁1から脱衣室まで距離があるので、浴室側から流入する水や水蒸気が開閉弁1を通過しても脱衣室側まで届きにくい。また、換気経路Cの途中に設けた連結壁7が水や水蒸気の浸入を妨げる。特に、通気口71の下側に下側部分6の上側面61から立ち上がる連結壁7の壁面が存在しているので、確実に止水される。よって、水や水蒸気が脱衣室に入り込まない。また、連結壁7により換気経路Cの上下の上側部分5と下側部分6とが一体になっているので、強度が高い。さらに、通気口カバー2a,2cが通気口71の小口の色目の違い(金属の切断面なので周囲と色目が異なる)を覆い隠すので意匠性が良好であり、また、通気口カバー2a,2cが清掃などの際に通気口71の小口のエッジで手を切る怪我を防ぐので安全性も高い。そして、取付用通気口カバー2cに押圧部材4を取り付けるので、上枠10aに加工を施す必要がない。また、開閉弁1は左右に長い単一部材のものであるから、左右方向のどの位置で押圧部材4により押圧してもよいので、任意の通気口71に取付用通気口カバー2c及び押圧部材4を取り付けて適宜操作位置を変更することができ、左右勝手の違いなどにも容易に対応できる。さらに、押圧部材4によって開閉弁1を強制的に開放状態に保持することができるので、24時間換気にも対応可能である。そして、この押圧部材4はストッパ41a,41bにより所定範囲以上動くことはなく、開閉弁1や機構の破損を防いでいる。また、開閉弁1が浴室側に位置しており、押圧部材4を戸の見込中程に設けることができるので、押圧部材4の脱衣室側への露出が少なく意匠性が良好であるとともに、押圧部材4自体は見えにくいので意匠性を考慮する必要性が小さく、設計の自由度が高い。そして、押圧部材4をねじりコイルバネ46によって付勢してあるので、1本のワイヤ91で押圧状態と非押圧状態の切替操作を行うことができる。このワイヤ91は、端部が操作部9のスライダ94に取り付けてあるので、ワイヤ91がバタついて邪魔になることもない。また、滑車92によりワイヤ91を縦枠10c側に寄せてあって、ワイヤ91の先端に取り付けたスライダ94を上下に動かすだけでよいので、操作が容易である。さらに、押圧部材4を取付用通気口カバー2cの上辺に取り付けてあり、またねじりコイルバネ46のコイル部分が回転軸45の上側部分に外挿され、ねじりコイルバネ46の足が取付用通気口カバー2cの上辺に係合しているので、取付用通気口カバー2cの下辺に滞留する結露水などによって、押圧部材4が固着して動きにくくなったり、ねじりコイルバネ46が腐食したりする不具合が生じない。
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、換気経路は、枠体の下枠に形成してもよいし、障子の横框(上框又は下框)に形成してもよい。また、開閉弁は、カバー材ではなく上側部分に直接取り付けてあってもよい。さらに、押圧状態において、押圧部材を開閉弁の開度が異なる複数の位置で固定できるようにして、換気量を選択調整できるようにしてもよい。また、操作部は、ワイヤの先端に取り付けるものであって、押圧状態と非押圧状態の2箇所で固定できるものであればどのような構造であってもよい。たとえば、スライダは、受部と蓋部の2部材からなるものではなく、単一部材の裏面に樹脂製のバネを一体成型したものであってもよいし、スライダの摺動方向が水平方向となるような構造であってもよい。さらに、押圧部材の形状によっては、スライダを上げたときに非押圧状態とし、下げたときに押圧状態とすることもできる。ただし、24時間換気の状態を維持する場合には、上記の実施形態のように、スライダを上げて押圧部材がねじりコイルバネにより回転した状態で押圧状態となる方が望ましい。