JP6017377B2 - コーティング組成物 - Google Patents
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Description
現在検討が進められている防汚性コーティング組成物は、(a)不溶性樹脂を主成分とする、防汚剤を含むコーティング組成物、(b)溶解性または加水分解性樹脂を主成分とする、防汚剤を含むコーティング組成物、および(c)付着物剥離型低弾性樹脂を主成分とする、防汚剤を含まないコーティング組成物に大別することができる。
(A)アルコキシ変性されたシラン基を側鎖に有するポリシラザンと、
(B)末端がアルキル置換された、ポリジアルキルシロキサンと、
(C)末端に水酸基を有するポリジアルキルポリシロキサンと、
を含んでなることを特徴とするものである。
また、本発明による硬化膜は、前記コーティング組成物を基材上に塗布し、硬化させることによって得られたことを特徴とするものである。
さらに本発明による船舶は、前記硬化膜で被覆されたことを特徴とするものである。
本発明によるコーティング組成物は、以下の3つのポリマー成分を含んでなる。
(A)アルコキシ変性されたシラン基を側鎖に有するポリシラザン
(B)末端がアルキル置換された、ポリジアルキルシロキサン
(C)末端に水酸基を有するポリジアルキルシロキサン。
以下、これらの各ポリマー成分と、そのほかに必要に応じて用いられる添加剤について説明する。
(A)アルコキシ変性されたシラン基を側鎖に有するポリシラザン
本発明に用いられるポリシラザンは、主として被膜形成時のバインダーとして機能するものである。このポリシラザンは、一般的にはポリシラザンと同様に、ケイ素と窒素からなる主鎖構造に水素や炭化水素基が結合したものであるが、本発明においてはさらにアルコキシ変性されたシラン基を側鎖に有することを特徴としている。このアルコキシ変性されたシラン基によって組成物成分の架橋反応が進行して硬化膜が形成される。このため、本発明によるコーティング組成物は硬化反応のための触媒や重合開始剤を必須としないものである。しかし、一方で硬化反応の進行が速すぎると、硬化膜にクラックが入るなどの問題が起こることがある。このような観点から、硬化反応の進行を適当な速度に調整するために、アルコキシ変性されたシラン基が、トリアルコキシシラン基であることが好ましい。また、トリアルコキシシラン基を構成するアルコキシ基は、炭素数が1〜3であることが好ましく、特にエトキシシラン基が好ましい。
R1は、水素、炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のアルコキシ基であり、R1のうち少なくとも一つはアルコキシ基であり、それぞれのR1は同一であっても異なっていてもよく、
R2は、水素または炭素数1〜3のアルキル基であり、それぞれのR2は同一であっても異なっていてもよく、式中の2つのR2が結合して環状構造を形成してもよく、また式中のいずれかのR2が、式(a)で表される他のポリシラザンポリマー単位のR2と結合して分岐鎖状構造を形成してもよく、
Lは、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、それぞれのLは同一であっても異なっていてもよく、
a1およびa2は、第一の繰り返し単位と、第二の繰り返し単位との重合度を表す数であり、それぞれ0を超える数であり、
第一の繰り返し単位と第二の繰り返し単位は、ランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよい。
本発明によるコーティング組成物は、末端がアルキル置換された、ポリジアルキルシロキサンを含んでなる。このシロキサン化合物は、末端が活性ではないために反応性に乏しく、コーティング組成物の硬化反応に対する寄与は小さい。しかしながら、硬化反応の際に反応性のポリマー成分とマトリックスを構成して硬化膜を形成し、硬化膜の撥水性を改良する作用を有するものである。
Rbは、炭素数1〜3のアルキル基であり、それぞれのRbは同一であっても異なっていてもよく、式中の2つのRbが結合して環状構造を形成してもよく、また式中のいずれかのRbが、式(b)で表される他のジアルキルシロキサン単位のRbと結合して分岐鎖状構造を形成してもよく、
b1は重合度を表す数であり、0を超える数である。
本発明によるコーティング組成物は、末端に水酸基を有するポリジアルキルシロキサンを含んでなる。このシロキサン化合物は、主鎖構造が前記ポリジアルキルシロキサンと近似した構造なので、硬化膜の撥水性を改良する作用を有する。そして、一方で活性基である水酸基を有しているので、前記のポリシラザン(A)と反応して硬化膜の形成に直接寄与し、硬化膜のヤング率を低下させる作用も有する。この結果、硬化膜の厚膜化も可能となる。
Rcは、炭素数1〜3のアルキル基であり、それぞれのRcは同一であっても異なっていてもよく、式中の2つのRcが結合して環状構造を形成してもよく、また式中のいずれかのRcが、式(c)で表される他のポリジアルキルシロキサン単位のRcと結合して分岐鎖状構造を形成してもよく、
c1は重合度を表す数であり、0を超える数である。
本発明によるコーティング組成物から形成された硬化膜は、組成物が前記したポリマー成分のみから構成された場合であっても、高い防汚性を達成できるものである。また、前記のポリマー成分のみから構成された組成物から形成される硬化膜は高い透明性を達成することもできる。このため、例えば模様を有する基板の被覆層として硬化膜を形成させるような場合には、本発明によるコーティング組成物は防汚剤を含まないことが好ましい。
本発明によるコーティング組成物により形成される硬化膜は、被覆膜として用いられることが多い。特に船舶の外装などに用いられる場合には、その被覆膜に応力がかかることが多いので、被覆膜には機械的特性が要求される。例えば、ヤング率が過度に高いと、応力などによって被覆膜が破壊されやすくなるので、ヤング率を適当なレベルに調整することが必要となる。このような目的で、本発明によるコーティング組成物は、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂を含むことができる。好ましい樹脂としては、アクリルポリオールが挙げられる。アクリルポリオールは、水酸基を有しているので前記ポリシラザン(A)や前記ジアルキルシロキサン(C)と反応し、形成される硬化膜のヤング率を低減させる作用を有する。このようなアクリルポリオールは、例えばSetalux 1184、1903(いずれも商品名、米国Nuplex社製)などが市販されている。このようなヤング率調整剤は、用いられる場合には、前記ポリシラザン(A)100重量部に対して、5〜20重量部添加されることが好ましい。
本発明によるコーティング組成物は、前記ポリマー成分のいずれかが常温で液体である場合、さらなる溶剤を添加しなくても液状の組成物とすることができる。このようにコーティング組成物が溶剤を含まない場合、その組成物から形成された硬化膜が水に接触した場合にも溶剤の溶出が無いため、環境への負荷を低減できる。また、硬化膜を得るために基材表面にコーティング組成物を塗布する際に、不揮発性成分が少ないと、一回の塗装で厚い塗膜を形成できるので、厚い塗膜が必要な場合に複数回の塗布を行う必要が無く、製造コストを低減することができる。これらの観点から、コーティング組成物が溶剤を含まないことが好ましい。
30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、全く含まないことが最も好ましい。必要に応じて顔料や塗膜強度を向上させるためのフィラーを加えても良い。
本発明によるコーティング組成物は、前記の各成分を混合し、均一に分散または溶解させることによって調製することができる。ここで、混合順序は特に限定されない。また、本発明によるコーティング組成物が溶剤を含まないか、溶剤の配合量が少ない場合には、比較的粘度の高い組成物が形成される。このために、組成物の調製には機械式分散機を用いることが好ましい。
本発明による硬化膜は、前記したコーティング組成物を基材上に塗布し、硬化させることによって得ることができる。より具体的には、以下の工程により硬化膜が形成される。
ステンレススチール製容器にトリエトキシ変成ポリメチル/ポリジメチルシラザン(ポリシラザン(A)、KiON HTA 1500 slow cure(商品名、クラリアント社製))を2610g計量し、室温で攪拌機Dispermat AE 1C(商品名、VMA−Getzmann社製)を用いて200rpmで撹拌しながら非反応性ポリジメチルシロキサン(ポリジアルキルシロキサン(B)、Sigma−Aldrich社製、粘度:50cst)を129gを徐々に加え、続いてヒドロキシ変成ポリジメチルシロキサン(ポリジアルキルシロキサン(C)、Sigma−Aldrich社製、粘度:65cst)を261gを徐々に加えた。添加終了後、1000rpmで10分間撹拌を行い、コーティング組成物とした。
ポリシラザン(A)を2400g、ポリジアルキルシロキサン(B)を120g、ポリジアルキルシロキサン(C)を480gとし、実施例1と同じ手順でコーティング組成物を調製した。
ポリシラザン(A)を2223g、ポリジアルキルシロキサン(B)を111g、ポリジアルキルシロキサン(C)を444gとし、実施例1と同じ手順で混合物を調製した。引き続き、200rpmで撹拌しながらアクリルポリオール(Setalux C−1184 SS−51(商品名、Nuplex Resins社製))222gを徐々に加えた。添加終了後、撹拌をしながら60℃に加熱し3時間反応を行い、コーティング組成物とした。
ポリシラザン(A)を2214g、ポリジアルキルシロキサン(B)を111g、ポリジアルキルシロキサン(C)を444gとし、実施例1と同じ手順で混合物を調製した。ただし、この混合物を調製する過程で、酸化第一銅9gを2度に分けて加えた。引き続きアクリルポリオールを222gに変更し、実施例3と同じ手順で反応を行い、最後に5000rpmで15分間撹拌を行うことでコーティング組成物を調製した。
ポリシラザン(A)を2610g、ポリジメチルシロキサン(ポリジアルキルシロキサン(B’)、Sigma−Aldrich社製、粘度:20cst)を129g、ポリジメチルシロキサン(ポリジアルキルシロキサン(C’)、Sigma−Aldrich社製、粘度:20,000cst)を261gにそれぞれ変更し、実施例1と同じ手順でコーティング組成物を調製した。
ポリシラザン(A)のみからなるコーティング組成物を準備した。
各コーティング組成物を、基材の表面にバーコーターを用いて、硬化前膜厚が120μmとなるように塗布した。得られた塗膜を、60℃60%RHの条件下、6時間加熱して硬化膜を得た。なお、比較例については、硬化前膜厚を120μmとすると硬化過程でクラックが発生するため、硬化前膜厚を12μmとなるように塗布を行った。得られた硬化膜について、下記の通り、物性値を評価した。
基材として用いたスライドガラスにバーコータ―で各コーティング組成物を塗膜厚さ120μmに塗布した。実験室条件で16日間乾燥したあと。ヘキサン50mLに24時間浸漬し、30℃で溶剤を乾燥した。ヘキサンの浸漬前後で重量を測定し、その差から、ヘキサンに対する溶解性が高い非反応性ポリシロキサン(ポリシロキサン(B))が溶出するか否かを評価した。いずれの組成物においても、ポリシロキサン(B)の溶出は認められなかった。
Digidrop(GBX Instruments社製)を用いて、5回の水接触角の測定を行い、その平均値を測定値とした。得られた結果は表3に示すとおりであった。
NF T30−038(フランス規格)に準じて実施した。3回の測定を行いその平均値を測定値とした。なお、評価基準は、剥離している被膜面積の割合を目視で評価し、以下の表1に示した基準でランク付けした。得られた結果は表3に示す通りであった。
基材として用いたPVC板(150x210mm2)2枚にバーコータ―でコーティング組成物を塗布し、硬化させて硬化膜を得た。得られた硬化膜を資料として、NF T34−552(フランス規格)に準じて、トゥーロン湾に浮かべた筏で実暴事件を実施した。評価は、IファクターおよびGファクターを表2に示した基準で評価したときのN値(N=Σ(I*G))の比較により行った。
実施例1のコーティング組成物を基材としてのアルミニウム板に塗布し、硬化させた。得られた硬化膜に塩水を噴霧して放置し、浸食の有無を確認したところ、1100時間後の状態で、市販のエポキシプライマーと同等の防食性能を有することが確認された。
さらに実施例4のコーティング組成物を基材としてのアルミニウム板に塗布し、硬化させて得た硬化膜を、10ヶ月間の海洋へ浸漬して防汚性を評価したところ、市販のIntersleek 700(商品名、アクゾノベル社製)と同等の防汚性能を有することを確認した。
Claims (11)
- (A)アルコキシ変性されたシラン基を側鎖に有するポリシラザンと、
(B)末端がアルキル置換された、ポリジアルキルシロキサンと、
(C)末端に水酸基を有するポリジアルキルシロキサンと、
を含んでなることを特徴とするコーティング組成物。 - 前記ポリシラザン(A)が下記一般式(a):
R1は、水素、炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のアルコキシ基であり、R1のうち少なくとも一つはアルコキシ基であり、それぞれのR1は同一であっても異なっていてもよく、
R2は、水素または炭素数1〜3のアルキル基であり、それぞれのR2は同一であっても異なっていてもよく、式中の2つのR2が結合して環状構造を形成してもよく、また式中のいずれかのR2が、式(a)で表される他のポリシラザンポリマー単位のR2と結合して分岐鎖状構造を形成してもよく、
Lは、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、それぞれのLは同一であっても異なっていてもよく、
a1およびa2は、第一の繰り返し単位と、第二の繰り返し単位との重合度を表す数であり、それぞれ0を超える数であり、
第一の繰り返し単位と第二の繰り返し単位は、ランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよい)
で表される、請求項1に記載のコーティング組成物。 - 前記a1と前記a2との比率a1:a2が、0.01:0.99〜0.35:0.65である、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
- 前記ポリシラザン(A)100重量部に対する前記ポリジアルキルシロキサン(B)および前記ポリジアルキルシロキサン(C)の配合量が、それぞれ3〜20重量部および7〜30重量部である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
- 前記ポリシラザン(A)、前記ポリジアルキルシロキサン(B)、および前記ポリジアルキルシロキサン(C)の重量平均分子量が、それぞれ500〜50,000、350〜70,000、および700〜90,000である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
- アクリルポリオールをさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
- 酸化第一銅をさらに含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のコーティング組成物を基材上に塗布し、硬化させることによって得られたことを特徴とする硬化膜。
- 請求項10に記載の硬化膜で被覆されたことを特徴とする船舶。
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