JP6017011B1 - 耐熱離型フィルムおよび耐熱離型フィルムの製造方法 - Google Patents

耐熱離型フィルムおよび耐熱離型フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱硬化性樹脂の成型や電子部品の製造においても好適に用いることが可能な耐熱離型フィルムであって、耐熱性、環境適性、作業性に優れ、本質的に層間剥離が起きない単層の耐熱離型フィルムおよび耐熱離型フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体98〜60質量%とエラストマー2〜40質量%を含有し、かつ、結晶化度が40%以上であることを特徴とする単層の耐熱離型フィルムおよび耐熱離型フィルムの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱離型フィルムおよびその製造方法に関し、特に熱硬化性樹脂の成型や電子部品の製造に好適に用いられる耐熱離型フィルムおよびその製造方法に関する。
従来、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の成型や半導体パッケージ等の電子部品の製造において、熱硬化性樹脂の成型品や電子部品を金型から取り外しやすくするため、離型フィルムが用いられている。
中でも工程用離型フィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系フィルムやポリ(4−メチルペンテン−1)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)表層に離型性を補うためにシリコン系材料を塗布したフィルム等が用いられてきた。
しかし、フッ素系フィルムは高価であり、使用済のフィルムは焼却しにくいため産業廃棄物となり、仮に焼却した場合にはフッ素系ダイオキシンの発生が懸念される。また、ポリ(4−メチルペンテン−1)フィルムは耐熱性が十分でなく、プリント基板製造時、フィルムとステンレス板との間で熱密着が生じてしまうという問題がある。また、二軸延伸PET表層にシリコン系材料を塗布したフィルムは高価であり、かつ、シリコンがプリント基板やセラミックス電子部品、熱硬化性樹脂製品、化粧板等に付着しやすいという問題がある。
これらの問題点を解決する手段として、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)を使用したフィルムが近年開発されている。
例えば、特許文献1では半導体素子封止用離型フィルムが開示されており、その材料としてSPSが用いられている。また、特許文献2や特許文献3では、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン樹脂を主成分とする複層構造の離型フィルムが開示されている。
また近年では、トランスファーモールド方式による半導体パッケージの作製方法の他に、新たにコンプレッションモールド方式の開発が進められている。コンプレッションモールド方式では、離型フィルムは熱硬化性樹脂と下側の金型の間に設置されており、上側から封止したい半導体が下りてくると同時に、加温された下側の金型により熱硬化性樹脂が溶融し、熱硬化する。硬化終了後、半導体パッケージが取り出され、金型から離型フィルムが剥離される(図1参照)。そのため、コンプレッションモールド方式においては、従来の離型フィルム以上に、耐熱性と離型性に優れた耐熱離型フィルムが求められる。
特開2001−168117号公報 特開2001−310428号公報 特許第5557152号明細書
特許文献2や特許文献3に記載の複層フィルムは、その製造に共押出装置などの特殊な装置が必要であり、また、層の界面における剥離等の不具合を本質的な問題として有している。また、特許文献1に記載の離型フィルムは耐熱性に改良の余地があり、特に、上述したコンプレッションモールド方式等に適用するには耐熱性が不十分である。
本発明者らは、熱硬化性樹脂の成型や電子部品の製造(例えば、上記コンプレッションモールド方式による半導体パッケージの作製)においても好適に用いることが可能な耐熱離型フィルムの研究を重ねた。その結果、下側の金型により加温された際に、耐熱離型フィルムが分解することなくフィルム状態を保つことが可能な耐熱性、半導体パッケージの取り出しの際に、金型および熱硬化性樹脂から剥離可能な離型性の他にも、問題があることを着目するに至った。
具体的には、耐熱離型フィルムを金型に設置するために行われる真空引きの際に、フィルムが軟化して吸引孔に引き込まれ、孔が閉塞してしまうという問題がある。また、半導体を熱硬化性樹脂に押し付ける際に、耐熱離型フィルムの高温での伸縮性が不十分であるとフィルムが金型に追従せず、金型形状の半導体パッケージが得られないという問題がある。さらに、半導体パッケージの作製工程中に、耐熱離型フィルムの可とう性が不十分であるとフィルムに裂けや割れが発生する可能性がある。
本発明は、熱硬化性樹脂の成型や電子部品の製造における上記問題点を全て解決することができる耐熱離型フィルムおよびその製造方法を提供することを課題とする。すなわち、本発明は、耐熱性、環境適性、作業性に優れ、本質的に層間剥離が起きない単層の耐熱離型フィルムおよびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体とエラストマーとを特定量含有し、かつ、特定の結晶化度を有する単層の耐熱離型フィルムにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明はかかる知見に基づきなされたものである。
即ち、本発明の上記課題は以下の手段によって解決することができる。
(1)シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体とエラストマーを含有する単層の耐熱離型フィルム(ただし、二軸配向されたものであることはない)であって、
前記エラストマーが、繰り返し単位中にスチレン構造を有し、
前記シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体と前記エラストマーとの合計質量を100質量%としたとき、該シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体が9579700/997質量%エラストマーが520000/997質量%含有比率であり、
前記耐熱離型フィルムの結晶化度が40%以上であって、かつ少なくともいずれか一方の面の算術平均粗さRaが0.5〜20μmである凹凸を有す
ことを特徴とする耐熱離型フィルム。
)前記エラストマーがスチレン構造を繰り返し単位として有し、前記シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体の質量部Xsに対する、前記エラストマーが繰り返し単位として有するスチレン構造の合計質量部Xaの比率であるXa/Xsが、0を超えて0.18以下であることを特徴とする、(1)に記載の耐熱離型フィルム。
(3)さらに、リン系酸化防止剤を含有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の耐熱離型フィルム。
)175℃での周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が20MPa〜110MPaであることを特徴とする、(1)〜()のいずれか1つに記載の耐熱離型フィルム。
)130℃〜150℃での周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が30MPa以上であることを特徴とする、(1)〜()のいずれか1つに記載の耐熱離型フィルム。
耐熱離型フィルムの製造方法であって、
前記耐熱離型フィルムが、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の耐熱離型フィルムであり、
結晶化処理工程の後に、凹凸を形成する工程を含むことを特徴とする耐熱離型フィルムの製造方法。
(7)前記結晶化処理工程が、フィルム成形を行った後に、120℃〜240℃の温度で1分〜30分加熱する工程であることを特徴とする、(6)に記載の耐熱離型フィルムの製造方法。
)積層板、フレキシブルプリント基板、半導体パッケージ、先端複合材料製品およびスポーツ・レジャー用品の製造に用いられることを特徴とする(1)〜()のいずれか1つに記載の耐熱離型フィルム。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、(メタ)アクリレート(または(メタ)アクリル酸)とは、メタクリレートおよびアクリレートのいずれでもよく、これらの総称として使用する。従って、メタクリレートおよびアクリレートのいずれか一方の場合やこれらの混合物をも含む。
本発明の耐熱離型フィルムは、熱硬化性樹脂の成型や電子部品の製造において、耐熱性、環境適性、作業性に優れ、本質的に層間剥離が起きない単層の耐熱離型フィルムを提供することができる。
すなわち、本発明の耐熱離型フィルムは、下側の金型により加温された際に、耐熱離型フィルムが分解することなくフィルム状態を保つことができる。本発明の耐熱離型フィルムは、半導体パッケージの取り出しの際に、金型および熱硬化性樹脂から剥離することができる。さらに、本発明の耐熱離型フィルムは、当該フィルムを金型に設置するために行われる真空引きの際に、フィルムの軟化による吸引孔の閉塞が抑制され、金型に設置することができる。本発明の耐熱離型フィルムは、半導体を熱硬化性樹脂に押し付ける際に、フィルムの裂けが抑制され、加温された金型に沿って伸びることができる。本発明の耐熱離型フィルムは、半導体パッケージの作製工程中における裂け・割れの発生を抑えることができる。
本発明の耐熱離型フィルムの製造方法は、上記優れた特性を有する耐熱離型フィルムを提供することができる。
図1は、本発明の耐熱離型フィルムを使用する、コンプレッションモールド方式による半導体パッケージの作製工程の一例を説明する概略断面図である。図1(a)は下側金型の上に耐熱離型フィルムを張りその上に熱硬化性樹脂を載せ、上側金型が半導体を有する様子を示す。図1(b)は溶融する熱硬化性樹脂の中に半導体が浸され、半導体パッケージが成型される様子を示す。図1(c)は成型された半導体パッケージを金型および剥離フィルムから剥離する様子を示す。 図2は、本発明の実施例において〔試験例5〕可とう性の評価を行った試験を模式化した説明図であり、円筒にフィルムをひっかけた状態の斜視図を示す。 図3は、本発明の実施例において〔試験例6〕高温離型性と金型追従性の評価を行った試験において使用した、金型を模式化した説明図である。図3(a)は斜視図を、図3(b)は上面図を、図3(c)は図3(b)におけるA−A’線断面図をそれぞれ示す。
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の耐熱離型フィルムは、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(以下、単に「シンジオタクチックポリスチレン」又は「SPS」と呼ぶことがある。)を含有し、かつ、結晶化度が40%以上である単層の耐熱離型フィルムである。
以下、耐熱離型フィルムについて説明する。
<耐熱離型フィルム>
1.シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(SPS)
SPSにおけるシンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものである。そのタクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量される。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。
本発明に用いられるSPSは、主としてシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体であり、すなわち、ラセミダイアッドで75%以上またはラセミペンタッドで30%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレン系重合体である。シンジオタクティシティーは、ラセミダイアットで85%以上またはラセミペンタッドで30%以上であることが好ましい。
本発明に用いられるSPSにおけるスチレン系重合体とは、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(アリールスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体およびこれらの混合物、あるいはこれらを主成分とする共重合体が挙げられる。なお、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソピルスチレン)、ポリ(tert−ブチルスチレン)等、ポリ(アリールスチレン)としては、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)等、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等、またポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
なお、これらのうち好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−tert−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。
本発明に用いられるSPSの融点(Tm)は、200℃以上が好ましく、240℃以上がより好ましい。上限値に特に制限はないが、300℃以下が好ましい。
また、本発明に用いられるSPSのガラス転移温度(Tg)は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。上限値に特に制限はないが、150℃以下が好ましい。
このようなシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(SPS)は、例えば不活性炭化水素溶媒中または溶媒の不存在下に、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体(上記スチレン系重合体に対応する単量体)を重合することにより製造することができる(特開昭62―187708号公報)。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については特開平1−46912号公報、これらの水素化重合体は特開平1−178505号公報記載の方法などにより得ることができる。
また、市販品としては、ザレック(商品名、出光興産社製)等が挙げられる。SPS以外に後述する3.その他の成分を含有する市販品を用いてもよい。
2.エラストマー
ラストマーの具体例としては、例えば、直鎖状高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ポリブテン、1,2−ポリブタジエン、4−メチルペンテン、環状ポリオレフィン及びこれらの共重合体等のポリオレフィン系樹脂、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸・アルキルエステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸・グリシジルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸・アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−フマル酸共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム、あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチル(メタ)アクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)やメチル(メタ)アクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴム等が挙げられる。なお、これらのエラストマーは一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
このうち、本発明に用いられる、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(SPS)との相溶性の観点から、繰り返し単位中にスチレン構造を有するエラストマーが好ましく、本発明で使用する。具体的には、SBR、SEB、SBS、SEBS、SIR、SEP、SISおよびSEPSならびにこれらを変性したゴムが好ましく用いられる。
本発明に用いられるエラストマー中のスチレン構造の含有量は、20〜80質量%が好ましく、30〜65質量%がより好ましい。
熱離型フィルムは、SPSを98〜60質量%、エラストマーを2〜40質量%の比率で含有する。SPSの含有量は95〜80質量%が好ましく、エラストマーの含有量は5〜20質量%が好ましい。
ただし、本発明では、SPSの含有量は9579700/997質量%であり、エラストマーの含有量は520000/997質量%である。
SPSは離型性が高いため、耐熱離型フィルムに好ましく用いることができると考えられる。しかし、SPSへのエラストマー配合量の増加に伴い、耐熱離型フィルムの柔軟性が改善されるのに対し、離型性が悪化してしまう。また、高温(180℃以上)での柔軟性が高すぎると、耐熱離型フィルムが吸引孔を閉塞する可能性がある。これら、耐熱離型フィルムの柔軟性、金型からの離型性、高温での柔軟性を同時に満たす必要がある。
本発明では、耐熱離型フィルムがSPSとエラストマーを上記比率で含有することで、常温での衝撃耐性に優れるためフィルムの取扱性が良好で、かつ、高温(180℃以上)での離型性が良好なフィルムとなる。また、含有比率が上記好ましい範囲内にあることで、成形機等によるフィルムの取り扱い性が向上する。具体的には、成形機等にセットしたロールからフィルムを引き出す作業において、フィルムが破断する可能性が低減される。また、金型との親和性の増加が抑制されるためフィルムが取り外しやすくなる。
また、本発明に用いられるエラストマーが繰り返し単位中にスチレン構造を有する場合、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体の質量部Xsに対するエラストマーに含まれるスチレン部分の質量部Xaの比率であるXa/Xsは、0を超えて0.18以下が好ましく、0.02〜0.15がより好ましい。
Xa/Xsが大きすぎると、180℃以上の高温で使用される際の耐熱性が低下する場合がある。
3.その他の成分
本発明の耐熱離型フィルムには、本発明の目的を阻害しない限り、各種添加剤(例えば、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、核剤、帯電防止剤、プロセスオイル、可塑剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、顔料)等のその他の成分を配合することができる。これらの配合量についても特に問わず、特段の断りがない限り、目的に応じて適宜決めればよい。さらに、各種添加剤は、それぞれ1種のみを単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下、各種添加剤について説明する。
(1)アンチブロッキング剤(AB剤)
アンチブロッキング剤としては、以下のような無機粒子又は有機粒子が挙げられる。
無機粒子としては、IA族、IIA族、IVA族、VIA族、VIIA族、VIII族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩及びそれらの含水化合物、それらを中心とする複合化合物及び天然鉱物粒子が挙げられる。
具体的には、弗化リチウム、ホウ砂(硼酸ナトリウム含水塩)等のIA族元素化合物、炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、酸化マグネシウム(マグネシア)、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、弗化マグネシウム、チタン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウム含水塩(タルク)、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、亜燐酸カルシウム、硫酸カルシウム(石膏)、酢酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、弗化カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウム、燐酸バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸バリウム等のIIA族元素化合物、二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタン、窒化チタン、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、一酸化ジルコニウム等のIVA族元素化合物、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、硫化モリブデン等のVIA族元素化合物、塩化マンガン、酢酸マンガン等のVIIA族元素化合物、塩化コバルト、酢酸コバルト等のVIII族元素化合物、沃化第一銅等のIB族元素化合物、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等のIIB族元素化合物、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、弗化アルミニム、アルミナシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)等のIIIB族元素化合物、酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラス等のIVB族元素化合物、カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱等の天然鉱物の粒子が挙げられる。
有機粒子としては、テフロン(登録商標)、メラミン系樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系レジンシリコーンおよびそれらの架橋体が挙げられる。
ここで、用いる無機粒子の平均粒径は0.1〜10μmが好ましく、添加量は、樹脂成分(すなわち、本発明に用いられるSPSおよびエラストマー。以下同じ。)の合計100質量部に対して0.01〜15質量部が好ましい。
(2)酸化防止剤
酸化防止剤としては、リン系、フェノール系、イオウ系等の任意の酸化防止剤を用いることができ、例えば、2−〔1−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートが好ましく挙げられる。
(3)核剤
核剤としては、アルミニウムジ(p−tert−ブチルベンゾエート)等のカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム等のリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等の任意の核剤を用いることができる。
(4)可塑剤
可塑剤としては、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル等の任意の可塑剤を用いることができる。
(5)離型剤
離型剤としては、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸金属塩等の任意の離型剤を用いることができる。
(6)プロセスオイル
本発明においては、伸度の向上のためにプロセスオイルを配合することが好ましい。
プロセスオイルは油種により、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイルに大別されるが、この中でも環分析(n−d−M法)で算出されるパラフィン(直鎖)に関わる炭素数の全炭素数に対する百分率が60%C以上のパラフィン系オイルが好ましい。
プロセスオイルとしては、40℃での動粘度が15〜600mm/sのものが好ましく、15〜500mm/sのものがより好ましい。
プロセスオイルの動粘度が上記好ましい範囲内にあることで、伸度向上効果が得られ、かつ、SPSとの溶融混練が容易であって、フィルム成形時に白煙、ガス焼け、ロール付着等の発生を抑制することができる。
プロセスオイルの添加量としては、樹脂成分の合計100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.05〜1.4質量部がより好ましく、0.1〜1.3質量部が更に好ましい。
添加量が上記下限値以上であると、伸度向上効果が得られ、また上記上限値以下であると、高粘度のプロセスオイルを用いた場合にも、白煙、ガス焼け等の発生を好適に抑制することができる。
上記各成分の混練は、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(SPS)の製造工程のいずれかの段階においてブレンドし溶融混練する方法や、本発明の耐熱離形フィルムが含有する各成分をブレンドし溶融混練する方法や、本発明の耐熱離形フィルム成形時にドライブレンドし、成形機の押出機中で混練するなど様々な方法で行うことができる。
4.本発明の耐熱離型フィルムの態様
本発明の耐熱離型フィルムは、上述したように、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体とエラストマーを含有してなる、単層のフィルムである。
本発明の耐熱離型フィルムの厚みは25〜200μmが好ましく、より好ましくは38〜100μmである。薄すぎると静電気などで取り扱いが難しく、厚すぎると剛性が強すぎ巻取りが困難となる。また機械での取り扱いを考えると38μm以上とすることが好ましい。機械でフィルムを掴む場合、38μm未満ではつかみ損ねる可能性が高くなる。
本発明の耐熱離型フィルムは、少なくともいずれか一方の面に凹凸を有することが好ましく、少なくとも金型に設置して使用される際に金型に接する側の面に凹凸を有することがより好ましく、両面に凹凸を有することがさらに好ましい。
ここで、凹凸は算術平均粗さRa=0.5〜20μmの凹凸が好ましく、Ra=1〜5μmの凹凸がより好ましい。
このため、本発明の耐熱離型フィルムは、少なくともいずれか一方の面に算術平均粗さRa=0.5〜20μmの凹凸を有する。
なお、フィルムの厚みは、JIS K6783に準拠した定圧厚さ測定器により測定することができ、フィルムの厚みの最大値を指す。なおRaより十分大きい測定子径φを有する測定子を用いて測定する。
なお、算術平均粗さRaは、JIS−B0601(2001)に基づき測定される。測定装置としては、JIS−B0601(2001)に準じた測定器(例えば、東京精密社製、商品名:HANDYSURF E−35A)を用いて測定することができる。
5.本発明の耐熱離型フィルムの性状
本発明の耐熱離型フィルムは、下記式で表される結晶化度が40%以上である。
結晶化度(%)=100×(ΔHf−ΔHTcc)/(53(J/g)×SPS比率)
上記式において、ΔHfは融解エンタルピー、ΔHTccは冷結晶化のエンタルピー、SPS比率は、本発明の耐熱離型フィルム中のシンジオタクチックポリスチレンの質量比率で、0<SPS比率≦1を示す。
ΔHfおよびΔHTccは、示差走査熱量計(例えば、リガク社製)により測定することができる。
結晶化度が40%未満の場合、高温において金型からの剥離性が悪化するおそれがある。
また、本発明の耐熱離型フィルムの高温時における貯蔵弾性率は、下記数値範囲にあることが好ましい。
すなわち、175℃での周波数1Hzにおける貯蔵弾性率(E’)は、20MPa〜110MPaが好ましい。上記条件での貯蔵弾性率が小さすぎるとフィルムの寸法安定性がなくなり、大きすぎると金型へのフィルムの追従性が悪化する可能性がある。
また、130℃〜150℃の間での周波数1Hzにおける貯蔵弾性率(E’)は、30MPa以上の値が好ましい。小さすぎると金型設置時にフィルムが金型に貼り付いてしまい、空気だまりが発生しやすくなる。上限値は特に制限はないが、500MPa以下であることが常温でのフィルムの柔軟性の点から好ましい。
なお、貯蔵弾性率は、JIS K7244に基づいて、動的粘弾性測定装置(例えば、セイコーインスツルメンツ社製、商品名「DMS6100」)を用いて、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で、常温(25℃)から250℃まで測定する。
<耐熱離型フィルムの製造方法>
本発明の耐熱離型フィルムの製造方法は特に問わず、例えば、キャスト成形、インフレーション成形を用いることができる。
形成したフィルムが非晶フィルムであった場合、本発明における結晶化度の範囲に調製するために、これらの成形を行った後に、熱処理等の結晶化処理工程を施してもよい。熱処理の方法としては、成形したフィルムを巻き取った状態で加熱する方法、加熱したロールにフィルムを一定時間接触させる方法、成形直後にフィルムを徐冷する方法などが挙げられる。
結晶化処理工程においては、規定の結晶化度が得られる限り特に制限はないが、120℃〜240℃の温度で1分〜30分加熱することが好ましい。
加熱すると同時に延伸を施してもよい。延伸処理としては常法を用いることができるが、例えば、同時に縦方向(MD:Machine Direction)および横方向(TD:Transverse Direction)の2方向に延伸する、同時二軸延伸が挙げられ、延伸の後に弛緩工程を含んでもよい。
延伸処理の条件は目的に応じて適宜設定することができるが、例えば、MDおよびTD共に、延伸速度は50%/分〜10000%/分が好ましく、延伸倍率は2.2〜4.0倍が好ましく、弛緩倍率は0.85〜1.00倍が好ましい。なお、延伸速度とは、下記式で算出される値である。
延伸速度(%/分)={(延伸後の寸法/延伸前の寸法)−1}×100(%)
/延伸時間(分)
ただし、本発明の耐熱離型フィルムは、二軸配向されたものであることはない。
また、本発明の耐熱離型フィルムの製造方法は、耐熱離型フィルムの表面に凹凸を形成する工程(以下、凹凸加工工程とも称す。)を含んでいてもよい。凹凸加工工程としては常法を用いることができるが、例えば、結晶化度を高めたフィルムに対し加熱したエンボスロールを一定時間接触(加圧接触を含む)させる方法、凹凸を有する徐冷ロールを使用する方法が挙げられる。
凹凸加工工程の条件は目的に応じて適宜設定することができるが、例えば、加熱したエンボスロールを用いる場合には、エンボスロール温度は100℃〜200℃が好ましく、線圧は0.1kN/cm〜2kN/cmが好ましい。
乱れのない凹凸構造を形成する観点からは、結晶化処理工程の後に凹凸を形成する工程を施すことが好ましい。
上記凹凸加工工程により形成される本発明の耐熱離型フィルム表面の凹凸構造は、上述の算術平均粗さRaの凹凸であることが好ましい。特に、結晶化処理工程の後に凹凸を形成する工程を施すことにより、上述の算術平均粗さRaの凹凸を形成することができる。
<本発明の耐熱離型フィルムの用途>
離型フィルムは、いわゆる「剥がれる機能」を有するフィルムの総称であり、剥離フィルム、工程フィルム、包装フィルム等に大別されるのであるが、本発明の耐熱離型フィルムは、これらのすべてを包含するものである。
即ち、剥離フィルムとは、具体的には、粘着テープ、両面テープ、マスキングテープ、ラベル、シール、ステッカー等において用いられるフィルム、または不織布等で作られた皮膚貼付用湿布剤の薬面に貼られているフィルムである。また工程フィルムとは、前述のように、プリント基板やセラミックス電子部品、熱硬化性樹脂製品、化粧板等を製造する際に、金属板同士や樹脂同士の接着を防止、抑制するため、成形工程時に金属板同士の間や樹脂同士の間に挟み込まれるフィルムである。
本発明の耐熱離型フィルムを使用した、半導体パッケージ等の電子部品の作製工程の一態様として、コンプレッションモールド方式による半導体パッケージの作製工程を、図1を参照して以下に説明するが、本発明は、本発明で規定されること以外は下記実施形態に限定されるものではない。また、各図面に示される形態は、本発明の理解を容易にするための模式図であり、各部材のサイズ、厚み、ないしは相対的な大小関係等は説明の便宜上大小を変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。また、本発明で規定する事項以外はこれらの図面に示された外形、形状に限定されるものでもない。
本発明の耐熱離型フィルム1は、ロール状の耐熱離型フィルム2から引き出され、下側金型4の上に設置される。設置された本発明の耐熱離型フィルム1の上にさらに熱硬化性樹脂6が設置されている。スペーサー5を有する上側金型3には半導体7が設置されている(図1(a)参照)。
本発明の耐熱離型フィルム1は、張架されると共に下側金型4の空気孔(図示なし)から吸引され、高温(例えば、180℃)に加熱された下側金型4に吸着被覆される。加熱溶融された熱硬化性樹脂6中に、上側金型3を移動することにより半導体7を浸漬させ、熱硬化性樹脂6を加熱硬化することにより、半導体7を熱硬化性樹脂6で被覆した半導体パッケージ8を作製する(図1(b)参照)。
加熱硬化終了後、上側金型3を移動し、成形された半導体パッケージ8を本発明の耐熱離型フィルム1から剥離する。その後、下側金型4の空気孔(図示なし)から乾燥空気を流し、下側金型4から本発明の耐熱離型フィルム1を剥離する(図1(c)参照)。
本発明の耐熱離型フィルムは、特に、積層板、フレキシブルプリント基板、先端複合材料製品およびスポーツ・レジャー用品の製造に好適に用いられる。
積層板製造時に用いられる耐熱離型フィルムとは、具体的には、多層プリント基板を製造する際のプレス成形において、プリント基板とセパレータープレート又は他のプリント基板との間の接着を防止するために間に存在させるフィルム等が挙げられる。
フレキシブルプリント基板製造時に用いられる離型フィルムとは、具体的には、電気製品における可動部分に組み込まれている変形可能なフレキシブルプリント基板の製造時、ベースフィルム上にエッチング等により形成された電気回路を保護するためのカバー樹脂を加熱プレスする際、このカバー樹脂を回路の凹凸部に密着させるためにカバー樹脂を包むように用いられるフィルム等が挙げられる。
先端複合材料製品製造時に用いられる離型フィルムとは、例えば、ガラスクロス、炭素繊維又はアラミド繊維とエポキシ樹脂からなるプリプレグを硬化させて種々の製品を製造する際に用いられるフィルムが挙げられる。
スポーツ・レジャー用品製造時に用いられる離型フィルムとは、例えば、釣り竿、ゴルフクラブ・シャフト、ウィンドサーフィンポール等の製造において、ガラスクロス、炭素繊維又はアラミド繊維とエポキシ樹脂からなるプリプレグを円筒状に巻き、その上にフィルム製のテープを巻き付けてオートクレーブ中で硬化させる際に用いられるフィルムが挙げられる。
以上、具体的に述べたが、本発明の耐熱離型フィルムの用途としては、これらに限定されるものではない。
次に、本発明を実施例及び比較例により詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
参考例1
(a)SPSとしてSPS1(シンジオタクチックポリスチレン、ザレック(商品名)、出光興産社製、Tm=250℃)、(b)エラストマーとしてLDPE(低密度ポリエチレン、ENGAGE8150(商品名)、デュポン・ダウエラストマー社製)、(c)添加剤としてリン系添加剤(アデカスタブNA−11(商品名)、ADEKA社製)を二軸混練機でコンパウンド化しスリットダイから押し出すことで、フィルム化した。
上記で得られたフィルムを、ヒーター中を通すことにより180℃で5分間、延伸せずに加熱(以下、180℃5分間(無延伸)加熱工程と称す。)し、その後130℃に加熱したエンボスロールを用い、線圧0.98kN/cm(100kgf/cm)で加圧することでフィルムの両面に凹凸加工(以下、凹凸加工工程と称す。)を施し、参考例1の耐熱離型フィルムを作製した。この耐熱離型フィルムは、厚み50μmであった。
[実施例参考例2〜7、比較例2および3]
(a)SPS、(b)エラストマーおよび(c)添加剤の各成分を表1に記載の種類および含有量に変更した以外は、参考例1と同様の製造方法により、実施例参考例2〜7、比較例2および3の耐熱離型フィルム(いずれも厚み50μm)を作製した。なお、参考例3および実施例1は、エンボス加工時の送り速度を早めることによりRaを表1に記載の値に調製し、参考例7は、エンボス加工時の線圧を変えることにより、深い凹凸を付けた(大きいRa値に調製した)。
参考例8
(a)SPS、(b)エラストマーおよび(c)添加剤の各成分を表1に記載の種類および含有量に変更し、凹凸加工工程の後に180℃5分間(無延伸)加熱工程を施した以外は参考例1と同様の製造方法により、参考例8の耐熱離型フィルム(厚み50μm)を作製した。
参考例9
(a)SPS、(b)エラストマーおよび(c)添加剤の各成分を表1に記載の種類および含有量に変更し、180℃5分間(無延伸)加熱工程に代えて、120℃加熱延伸を施した以外は参考例1と同様の製造方法により、参考例9の耐熱離型フィルムを作製した。なお120℃加熱延伸は以下の手法で行った。120℃で延伸速度500%/分で縦方向(MD)に3.3倍、横方向(TD)に3.4倍となるよう、同時二軸延伸した。延伸後、215℃で縦方向(MD)に0.92倍、横方向(TD)に0.92倍となるよう弛緩処理を施して、厚み50μmの耐熱離型フィルムを得た。
[比較例1および4]
(a)SPS、(b)エラストマーおよび(c)添加剤の各成分を表1に記載の種類および含有量に変更し、180℃5分間(無延伸)加熱工程を施さなかった以外は参考例1と同様の製造方法により、比較例1およびの耐熱離型フィルム(いずれも厚み50μm)を作製した。
[試験例1] 結晶化度
上記で作製した耐熱離型フィルムについて、示差走査熱量計(リガク社製)にて20℃/分の速度で昇温することにより、融解エンタルピー(ΔHf)及び冷結晶化のエンタルピー(ΔHTcc)を測定し、結晶化度(%)を以下の式より算出した。
結晶化度(%)=100×(ΔHf−ΔHTcc)/(53(J/g)×SPS比率)
上記式において、SPS比率とは、耐熱離型フィルム中のシンジオタクチックポリスチレンの質量比率で、0<SPS比率≦1を示す。
[試験例2] 貯蔵弾性率
上記で作製した耐熱離型フィルムの粘弾性率は、JIS K7244に基づいて、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、DMS6100)を用い、引張りモード、サンプルサイズ(長さ15mm、幅5mm、厚み50μm)、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で、常温(25℃)から250℃まで測定することにより評価した。
なお、参考例9の耐熱離型フィルムについては、耐熱離型フィルムにおけるMD方向を引張り方向として測定した。
[試験例3] 算術平均粗さRa
算術平均粗さRaは、HANDYSURF E−35A(商品名、東京精密社製)を用い、JIS B0601(2001)に準拠し、測定長さ2mmで、測定巾4000μm、速度0.6mm/秒で行った。
[試験例4] 異物個数
SPSとエラストマーの相溶性を評価するため、異物個数を測定した。相溶性が不良の場合には、異物個数が増加する。
日本アルミ社製のフィルム中異物検査装置を用いて、上記で作製した耐熱離型フィルムに垂直にストロボを照射し、投下光像をパソコンに取り込み、1cm辺りに観測される500μm以上の長さを有する異物の個数をカウントした。観測する範囲を変えて5回同様のカウントを行い、その平均値を異物個数として評価した。本試験においては、10個以下/cmを合格とした。
[試験例5] 可とう性
図2に示すように5mmφのSUS314製の円筒に上記で作製した耐熱離型フィルムをひっかけた。ひっかけたフィルムを100mm/秒の速度で100m分引き出す試験および1000mm/秒の速度で100m分引き出す試験をそれぞれ行った。引き出した際、いずれの速度条件でもフィルムに割れが起きなかったものを「◎」、100mm/秒の条件では割れは起きなかったが、1000mm/秒の条件ではフィルム端部に若干の割れが見られたものを「○」、いずれの速度条件でもフィルム端部に若干の割れが見られたものを「△」、いずれかの速度条件でフィルムが裂けて途中で試験不能となったものを「×」として、可とう性を評価した。
[試験例6] 金型追従性と高温離型性
図3に示すような、SUS314製の金型(図3におけるa=10cm、b=25cm、c=14cm、d=31cm、e=5mm、f=40mm)を酢酸エチルで脱脂したのち、180℃に加熱した。加熱した金型の上に、上記で作製した耐熱離型フィルムを置き、空気孔(図示せず)から真空吸引することにより、金型にフィルムを吸着させた。吸着させたフィルムの状態を観察し、以下の基準により評価した。
吸着させたフィルムが、金型の凹凸部分に空気を噛みこむことなく追従し、かつ、平坦部分のうち密着していない部分が1割未満であるものを「◎」、金型の凹凸部分に空気を噛みこんでいるが、平坦部分のうち密着していない部分は1割未満であるものを「○」、金型の凹凸部分に空気を噛みこんでいるが、平坦部分のうち密着していない部分が1割以上3割未満であるものを「△」、金型の凹凸部分に空気を噛みこんでおり、平坦部分のうち密着していない部分が3割以上であるものを「×」として、金型追従性を評価した。
密着させてから2分後、空気孔から乾燥空気を流し、フィルムを金型から剥離する試験を行った。フィルムが金型から全て剥離したものを「◎」、金型端部に若干の引っ掛かりはあるが、フィルムが引き伸ばされることなく容易に剥がせたものを「○」、金型端部に若干の引っ掛かりがあり、フィルムが引き伸ばされながらも剥離できたものを「△」、フィルムが剥離せず金型に残ったものを「×」として、高温離型性を評価した。
試験例1〜6の結果を下表に示す。
Figure 0006017011
Figure 0006017011
Figure 0006017011
<表の注>
(a)SPS
SPS1:シンジオタクチックポリスチレン、ザレック(商品名)、出光興産社製、Tm=250℃、ガラス繊維の添加無し
SPS2:シンジオタクチックポリスチレン、ザレック(商品名)、出光興産社製、Tm=270℃、ガラス繊維の添加無し
(b)エラストマー
LDPE:低密度ポリエチレン、ENGAGE8150(商品名)、デュポン・ダウエラストマー社製
SEBS1:水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、セプトン8006(商品名)、クラレ社製、スチレン含有量:35質量%
SEBS2:水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、セプトン8104(商品名)、クラレ社製、スチレン含有量:60質量%
SBS:スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、タフプレンA(商品名)、ADEKA社製、スチレン含有量:40質量%
(c)添加剤
リン系:下記化合物、アデカスタブNA−11(商品名)、ADEKA社製
Figure 0006017011
上記各試験例の結果から、エラストマーを含有せず、結晶化度が特定の範囲外である比較例1の耐熱離型フィルムは、可とう性および金型追従性が十分でなく、エラストマーおよびSPSの含有量が特定の範囲外である比較例3の耐熱離型フィルムは、異物個数が多く、高温離型性および金型追従性が十分でなく、結晶化度が特定の範囲外である比較例4の耐熱離型フィルムは、高温離型性および金型追従性が十分でなかった。また、エラストマーを含有しない比較例2の耐熱離型フィルムは、異物個数が多く、高温離型性および金型追従性が十分でなかった。
これに対して、本発明の耐熱離型フィルムは、異物個数が少なく、かつ、可とう性、高温離型性および金型追従性のいずれにも優れていることがわかった。すなわち、本発明により、耐熱性、環境適性、作業性に優れ、本質的に層間剥離の起きない単層の耐熱離型フィルムが得られた。また、本発明の製造方法により、上記優れた特性を有する耐熱離型フィルムが得られた。
1 耐熱離型フィルム
2 ロール状の耐熱離型フィルム
3 上側金型
4 下側金型
5 スペーサー
6 熱硬化性樹脂
7 半導体
8 半導体パッケージ
10 円筒

Claims (8)

  1. シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体とエラストマーを含有する単層の耐熱離型フィルム(ただし、二軸配向されたものであることはない)であって、
    前記エラストマーが、繰り返し単位中にスチレン構造を有し、
    前記シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体と前記エラストマーとの合計質量を100質量%としたとき、該シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体が9579700/997質量%エラストマーが520000/997質量%含有比率であり、
    前記耐熱離型フィルムの結晶化度が40%以上であって、かつ少なくともいずれか一方の面の算術平均粗さRaが0.5〜20μmである凹凸を有す
    ことを特徴とする耐熱離型フィルム。
  2. 記シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体の質量部Xsに対する、前記エラストマーが繰り返し単位として有するスチレン構造の合計質量部Xaの比率であるXa/Xsが、0を超えて0.18以下であることを特徴とする、請求項に記載の耐熱離型フィルム。
  3. さらに、リン系酸化防止剤を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の耐熱離型フィルム。
  4. 175℃での周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が20MPa〜110MPaであることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の耐熱離型フィルム。
  5. 130℃〜150℃での周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が30MPa以上であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の耐熱離型フィルム。
  6. 耐熱離型フィルムの製造方法であって、
    前記耐熱離型フィルムが、請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱離型フィルムであり、
    結晶化処理工程の後に、凹凸を形成する工程を含むことを特徴とする耐熱離型フィルムの製造方法。
  7. 前記結晶化処理工程が、フィルム成形を行った後に、120℃〜240℃の温度で1分〜30分加熱する工程であることを特徴とする、請求項6に記載の耐熱離型フィルムの製造方法。
  8. 積層板、フレキシブルプリント基板、半導体パッケージ、先端複合材料製品およびスポーツ・レジャー用品の製造に用いられることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の耐熱離型フィルム。
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