JP4473430B2 - スチレン系樹脂積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系樹脂積層体の製造方法に関し、さらに詳しくは、食品,薬剤,文具,日用品の包装用フィルム及び容器、離型フィルム,粘着テープ,コンデンサー,誘電体等の産業用フィルム、袋及び容器として有用なスチレン系樹脂積層体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(以下、「SPS」と略称することがある。)延伸フィルムは、耐熱性,耐薬品性,剛性,透明性,易カット性,デッドフォールド性,耐湿性,離型性などの各種特性に優れているため、その製造方法,フィルム特性,その用途について種々の提案がなされている。
また、アタクチック構造のスチレン系重合体(以下、GPPSと略称することがある。)フィルムは、剛性,熱成形性,ヒートシール密着性に優れ、種々の用途に使用されている。また、その延伸フィルムは、透明性に優れている。
さらに、SPS延伸フィルムの特徴を維持しながら、熱成形性,ヒートシール性の向上及びコストダウンを目的として、SPSとGPPSの積層体とすることが提案されている。
しかしながら、通常、GPPSの押出温度は200℃前後であり、熱分解の起こらない温度で押し出すため、高温下で分解しないような特定の酸化防止剤などは添加されておらず、一方、SPSは結晶性であるため、GPPSと同様な分子構造であるにもかかわらず、融点以上で押し出さねばならず、通常、270〜300℃で押し出す必要がある。そのため、GPPSをSPSの押出条件でシート成形を行った場合、分解による発煙、ロール汚れ、目やに、焼け等の問題が発生する。また、SPSとGPPSの共押出を行う場合、合流部からダイスまではSPSの押出温度にする必要があり、GPPSは高温にさらされる時間が長くなり、上記の問題が顕著となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解消し、押出時にGPPSの分解を防止し、連続生産性の良好なSPS/GPPS共押出積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、GPPS層にSPS押出温度に耐えうる酸化防止剤を添加すれば、上記の課題を達成しうることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は、シンジオタクチック構造のスチレン系重合体又はこの重合体を含有する重合体組成物と、アタクチック構造のスチレン系重合体又はこの重合体を含有する重合体組成物に5%重量減少温度が240℃以上の酸化防止剤を0.001〜0.5重量%添加したスチレン系材料とを用い、少なくとも前記スチレン系重合体又は前記の重合体を含有する重合体組成物と前記スチレン系材料との合流部からダイスまでの温度を250〜300℃の範囲として溶融共押出することを特徴とするスチレン系樹脂積層体の製造方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のスチレン系樹脂積層体は、前記のように、シンジオタクチック構造のスチレン系重合体(SPS)又はこの重合体を含有する重合体組成物と、アタクチック構造のスチレン系重合体(GPPS)又はこの重合体を含有する重合体組成物に5%重量減少温度が240℃以上の酸化防止剤を0.001〜0.5重量%添加したスチレン系材料とを用いて製造される。
【0006】
SPSにおけるシンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR)により定量される。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができるが、本発明に言うSPSとは、通常はラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、若しくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン,ポリ(アルキルスチレン),ポリ(ハロゲン化スチレン),ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン),ポリ(アルコキシスチレン),ポリ(ビニル安息香酸エステル),これらの水素化重合体及びこれらの混合物,あるいはこれらを主成分とする共重合体を指称する。なお、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン),ポリ(エチルスチレン),ポリ(イソプロピルスチレン),ポリ(ターシャリーブチルスチレン),ポリ(フェニルスチレン),ポリ(ビニルナフタレン),ポリ(ビニルスチレン)などがあり、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン),ポリ(ブロモスチレン),ポリ(フルオロスチレン)などがある。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)など、またポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン),ポリ(エトキシスチレン)などがある。
【0007】
なお、これらのうち特に好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン,ポリ(p−メチルスチレン),ポリ(m−メチルスチレン),ポリ(エチルスチレン),ポリ(ジビニルベンゼン),ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン),ポリ(p−クロロスチレン),ポリ(m−クロロスチレン),ポリ(p−フルオロスチレン),水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。
【0008】
このようなSPSは、例えば不活性炭化水素溶媒中または溶媒の不存在下に、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体(上記スチレン系重合体に対応する単量体)を重合することにより製造することができる(特開昭62―187708号公報)。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については特開平1−46912号公報、これらの水素化重合体は特開平1−178505号公報記載の方法などにより得ることができる。
【0009】
更に、スチレン系共重合体におけるコモノマーとしては、上述の如きスチレン系重合体のモノマーのほか、エチレン,プロピレン,ブテン,ヘキセン,オクテン等のオレフィンモノマー、ブタジエン,イソプレン等のジエンモノマー、環状ジエンモノマーやメタクリル酸メチル,無水マレイン酸,アクリロニトリル等の極性ビニルモノマー等を挙げることができる。
特に、スチレン繰返し単位が80〜100モル%,p−メチルスチレン繰返し単位が0〜20モル%からなるスチレン系重合体が好ましく用いられる。
【0010】
本発明において、SPSの分子量については特に制限はないが、重量平均分子量が10,000以上、3,000,000以下であるのが好ましく、特に50,000以上、1,500,000以下であるのが好ましい。ここで重量平均分子量が10,000未満であると、延伸が充分にできない場合がある。3,000,000を超えると、延伸倍率を大きくできない為、製品として取れる積層体の幅を十分確保できない場合がある。
さらに、分子量分布については、その広狭は制約がなく、様々なものを充当することが可能であるが、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.5以上、8以下であるのが好ましい。
【0011】
上記SPSは、本発明のSPS層中に70〜100重量%、さらには80〜100重量%、特に90〜100重量%含有されるのが好ましい。
本発明の積層体のSPS層としては、上記SPSに、本発明の目的を阻害しない範囲で、SPS以外の熱可塑性樹脂,熱可塑性エラストマー,相溶化剤などを配合することができる。これらの配合剤は、SPS層中に0〜30重量%、さらには0〜20重量%、特に0〜10重量%の範囲で配合してもよい。
さらにSPS層には、必要に応じて各種添加剤を配合してもよい。以下これらの配合剤や添加剤について説明する。
【0012】
(1−1) SPS以外の熱可塑性樹脂
本発明で用いてもよいSPS以外の熱可塑性樹脂としては、直鎖状高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,高圧法低密度ポリエチレン,アイソタクチックポリプロピレン,シンジオタクチックポリプロピレン,ブロックポリプロピレン,ランダムポリプロピレン,ポリブテン,1,2−ポリブタジエン,ポリ4−メチルペンテン,環状ポリオレフィン及びこれらの共重合体に代表されるポリオレフィン系樹脂、アタクチックポリスチレン,アイソタクチックポリスチレン,HIPS,ABS,AS,スチレン−メタクリル酸共重合体,スチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体,スチレン−メタクリル酸グリシジルエステル共重合体,スチレン−アクリル酸共重合体,スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体,スチレン−マレイン酸共重合体,スチレン−フマル酸共重合体に代表されるポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6をはじめとするポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル、PPS等公知のものから任意に選択して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
(1−2) 熱可塑性エラストマー
本発明で用いてもよい熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、天然ゴム,ポリブタジエン,ポリイソプレン,ポリイソブチレン,ネオプレン,ポリスルフィドゴム,チオコールゴム,アクリルゴム,ウレタンゴム,シリコーンゴム,エピクロロヒドリンゴム,スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR),水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB),スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS),水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR),水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP),スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS),水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などのスチレン系ゴム、さらにはエチレンプロピレンゴム(EPM),エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM),直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム,あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS),メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS),メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS),オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS),アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS),ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR),メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴム等が挙げられる。これらは一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
(1−3) 相溶化剤
本発明で用いてもよい相溶化剤としては、例えば、スチレン構造を含む共重合体であって、分子中にスチレン構造を40モル%以上、好ましくは50モル%以上含む重合体が挙げられる。
このような相溶化剤の具体例としては、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR),水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB),スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS),水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR),水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP),スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS),水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。これらはいずれもスチレン構造を50モル%以上含む重合体である。
【0015】
(1−4) 各種添加剤
▲1▼ アンチブロッキング剤(AB剤)
アンチブロッキング剤としては、下記のような無機粒子又は有機粒子が挙げられる。
無機粒子としては、IA族,IIA族,IVA族,VIA族,VIIA族,VIII族,IB族,IIB族,IIIB族,IVB族元素の酸化物,水酸化物,硫化物,窒素化物,ハロゲン化物,炭酸塩,硫酸塩,酢酸塩,燐酸塩,亜燐酸塩,有機カルボン酸塩,珪酸塩,チタン酸塩,硼酸塩並びにそれらの含水化合物,それらを中心とする複合化合物及び天然鉱物粒子が挙げられる。
【0016】
具体的には、弗化リチウム,ホウ砂(硼酸ナトリウム含水塩)等のIA族元素化合物、炭酸マグネシウム,燐酸マグネシウム,酸化マグネシウム(マグネシア),塩化マグネシウム,酢酸マグネシウム,弗化マグネシウム,チタン酸マグネシウム,珪酸マグネシウム,珪酸マグネシウム含水塩(タルク),炭酸カルシウム,燐酸カルシウム,亜燐酸カルシウム,硫酸カルシウム(石膏),酢酸カルシウム,テレフタル酸カルシウム,水酸化カルシウム,珪酸カルシウム,弗化カルシウム,チタン酸カルシウム,チタン酸ストロンチウム,炭酸バリウム,燐酸バリウム,硫酸バリウム,亜硫酸バリウム等のIIA族元素化合物、二酸化チタン(チタニア),一酸化チタン,窒化チタン,二酸化ジルコニウム(ジルコニア),一酸化ジルコニウム等のIVA族元素化合物、二酸化モリブデン,三酸化モリブデン,硫化モリブデン等のVIA族元素化合物、塩化マンガン,酢酸マンガン等のVIIA族元素化合物、塩化コバルト,酢酸コバルト等のVIII族元素化合物、沃化第一銅等のIB族元素化合物、酸化亜鉛,酢酸亜鉛等のIIB族元素化合物、酸化アルミニウム(アルミナ),水酸化アルミニウム,弗化アルミニウム,アルミノシリケート(珪酸アルミナ,カオリン,カオリナイト)等のIIIB族元素化合物、酸化珪素(シリカ,シリカゲル),石墨,カーボン,グラファイト,ガラス等のIVB族元素化合物、カーナル石,カイナイト,雲母(マイカ,キンウンモ),バイロース鉱等の天然鉱物の粒子が挙げられる。ここで、用いる無機粒子の平均粒径は0.1〜10μmのものが好ましい。
【0017】
有機粒子としては、テフロン,メラミン系樹脂,スチレン−ジビニルベンゼン共重合体,アクリル系樹脂,シリコーン樹脂及びおよびそれらの架橋体が挙げられる。
なお、前記のような無機又は有機のAB剤は、一種のみを単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
▲2▼ 酸化防止剤
酸化防止剤としては、リン系,フェノール系,イオウ系等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの酸化防止剤は一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。さらには、2−〔1−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕なども好適に使用される。
【0019】
▲3▼ 核剤
核剤としては、アルミニウムジ(p−t−ブチルベンゾエート)をはじめとするカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウムをはじめとするリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等、公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの核剤は一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる
【0020】
▲4▼ 可塑剤
可塑剤としては、ポリエチレングリコール,ポリアミドオリゴマー,エチレンビスステアロアマイド,フタル酸エステル,ポリスチレンオリゴマー,ポリエチレンワックス,シリコーンオイル等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの可塑剤は一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
▲5▼ 離型剤
離型剤としては、ポリエチレンワックス,シリコーンオイル,長鎖カルボン酸,長鎖カルボン酸金属塩等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの離型剤は一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
▲6▼ プロセスオイル
本発明においては、伸度の向上のために、さらに40℃での動粘度が15〜600mm2 /sであるプロセスオイルを配合することが好ましい。
プロセスオイルは、油種により、パラフィン系オイル,ナフテン系オイル,アロマ系オイルに大別されるが、この中でもn−d−M法で算出されるパラフィン(直鎖)に関わる炭素数の全炭素数に対する百分率が60%Cp以上のパラフィン系オイルが好ましい。
プロセスオイルの粘度としては、40℃での動粘度が15〜600mm2 /sが好ましく、15〜500mm2 /sが更に好ましい。
プロセスオイルの動粘度が15mm2 /s未満では伸度向上効果があるものの、沸点が低くSPSとの溶融混練、及び成形時に白煙、ガス焼け、ロール付着等の発生原因になる。また動粘度が600mm2 /sを超えると、白煙ガス焼け等は抑制されるものの、伸度向上効果に乏しい。なおこれらのプロセスオイルは一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
上記の各種添加剤の添加量は、SPS層中に、必要に応じて、好ましくは0〜3重量%、より好ましくは0〜1.5重量%の範囲で配合すればよい。
また、上記の各種添加剤は、使用する重合体を用いてマスターバッチを作製して添加することもできる。
【0024】
一方、本発明で用いるGPPSとは、工業的には塊状重合,溶液重合,懸濁重合,乳化重合などの方法によるラジカル重合で得られるスチレン系重合体である。このようなラジカル重合で得られたポリスチレンは、通常アタクチック構造のもので立体規則性を有していない。また、ここで言うアタクチック構造のポリスチレンは、一種類以上の芳香族ビニル化合物からなる重合体、あるいは一種類以上の芳香族ビニル化合物と共重合可能な一種類以上の他のビニル単量体の共重合体、これらの重合体の水素化重合体及びこれらの混合物であっても良い。
【0025】
ここで芳香族ビニル化合物としては、スチレン,α―メチルスチレン,メチルスチレン,エチルスチレン,イソプロピルスチレン,ターシャリーブチルスチレン,フェニルスチレン,ビニルスチレン,クロロスチレン,ブロモスチレン,フルオロスチレン,クロロメチルスチレン,メトキシスチレン,エトキシスチレン等があり、これらは一種または2種以上で使用される。これらのうち、好ましい芳香族ビニル化合物としては、スチレン,p−メチルスチレン,m−メチルスチレン,エチルスチレン,p−ターシャリーブチルスチレンが挙げられる。
【0026】
共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリロニトリル,メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物、メチルアクリレート,エチルアクリレート,プロピルアクリレート,ブチルアクリレート,アミルアクリレート,ヘキシルアクリレート,オクチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,シクロヘキシルアクリレート,ドデシルアクリレート,オクタデシルアクリレート,フェニルアクリレート,ベンジルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、メチルメタクリレート,エチルメタクリレート,ブチルメタクリレート,アミルメタクリレート,ヘキシルメタクリレート,オクチルメタクリレート,2−エチルヘキシルメタクリレート,シクロヘキシルメタクリレート,ドデシルメタクリレート,オクタデシルメタクリレート,フェニルメタクリレート,ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、マレイミド,N−メチルマレイミド,N−エチルマレイミド,N−ブチルマレイミド,N−ラウリルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド,N−フェニルマレイミド,N−(p−ブロモフェニル)マレイミド等のマレイミド化合物等がある。
【0027】
このGPPSの分子量には特に制限はないが、一般的に重量平均分子量が100,000以上のものが用いられ、好ましくは150,000以上500,000以下である。ここで重量平均分子量が100,000未満のものでは、得られた積層フィルムの力学物性が低下し、好ましくない。
【0028】
本発明においては、GPPS又はGPPS含有組成物に5%重量減少温度が240℃以上の酸化防止剤を0.001〜0.5重量%添加して用いる。ここで、この酸化防止剤の添加量が0.001重量%未満であると、GPPS層の分解が起こり、発煙、目ヤニ等の発生がある。0.5重量%を超えると、酸化防止剤による着色や黄変の発生がある。
なお、5%重量減少温度は、熱分析装置(パーキンエルマー社製)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で昇温し、重量減少率を測定して、5%重量減少時の温度をこの温度とした。
本発明に使用しうる酸化防止剤としては、5%重量減少温度が240℃以上であれば、特に制限はなく、例えば、住友化学工業株式会社製SumilizerGS(N2 下での5%重量減少温度270℃),ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバスペシャリチティーケミカル社製、商品名IRGANOX 1010:N2 下での5%重量減少温度335℃),アデカアーガス化学株式会社製PEP36(N2 下での5%重量減少温度332℃)などが挙げられる。
【0029】
本発明においては、上記酸化防止剤を添加したGPPSに、本発明の目的を阻害しない範囲で他の熱可塑性樹脂,熱可塑性エラストマー,相溶化剤などの配合剤、さらには必要に応じて各種添加剤を配合してもよい。これらの具体例は、前記SPS層のところで述べたものを用いることができる。その配合割合についても同様である。
ただし、他の熱可塑性樹脂には、(1−1)で例示したアタクチックポリスチレン,アイソタクチックポリスチレン,HIPSは除かれ、これに代わって(1−1)にはなかったSPSが含まれる。
なお、GPPSを主成分とする層は、スチレン系重合体成分を70%以上、好ましくは80%、さらに好ましくは90%以上含むことが好ましい。スチレン系重合体成分が少ないと積層後の透明性が悪化したり、SPSを主成分とする層との密着性が不十分となり、熱加工時に層間剥離が生ずることがある。
【0030】
本発明による積層体は、SPS層とGPPS層から構成されるが、SPS層/GPPS層/SPS層の3層構造であるのが好ましい。この場合に、GPPS層の両外面に存在する2つのSPS層は、同一の組成、性質であってよいが、上記の範囲内で互いに異なる組成、性質であってもよい。
また、SPS層/GPPS層/SPS層の層厚みの比については、1/18/1〜2/1/2、さらには1/18/1〜3/2/3、特に1/18/1〜1/1/1にするのが好ましい。ここでSPS層が相対的に薄すぎると、積層フィルムの耐熱性,耐油性に問題が生じやすく、SPS層が相対的に厚すぎると、積層フィルムの熱加工性に問題が生じやすい。
また、SPS層の厚みは、1〜500μm、さらには1〜400μm、特に1〜300μmが好ましい。SPS層が1μm未満では積層体の耐熱性,耐油性に問題が生じやすく、500μmを超えると、積層体の熱加工性に問題が生じやすい。
【0031】
本発明の積層体の製造方法は、前記のような材料を250〜300℃で溶融共押出することから成る。共押出方式は、特に制限はないが、フィードブロック方式,マルチマニホールド方式のいずれでもよく、ダイスはコートハンガーダイ,T−ダイ,円環ダイなどを用いることができる。
【0032】
溶融共押出後、冷却し、共延伸することでSPS層の結晶化度を向上させるとともに、透明性を発現させることができる。共延伸の方法としては、例えば一軸延伸,同時二軸延伸,逐次二軸延伸およびこれらを組み合わせた多段延伸法を用いることができる。なかでも本発明においては同時又は逐次二軸延伸法を用いることが好ましい。また、その場合の面積延伸倍率は3〜20倍が好ましく、5〜10倍がより好ましい。この共延伸温度は、90〜200℃が好ましく、90〜150℃がより好ましい。なお共延伸後、熱処理を行うことが好ましく、緊張下において、好ましくは100〜270℃、より好ましくは150〜270℃で、好ましくは1〜300秒、より好ましくは1〜60秒行えばよい。
以上の方法により接着剤を用いることなく、層間密着性に優れ、透明性がより高い積層体を製造することができる。
なお、上記方法以外の方法として、それぞれ単体フィルムを作成し、それを接着剤を用いて積層してもよい。
【0033】
本発明の方法によれば、押出時にGPPS層の熱分解に伴うロールへの付着物,発煙,目やに,発泡等がなく、成形性がよく、外観の良好な積層体を効率よく製造することができ、連続生産性を著しく向上することができ、様々な用途に有用な積層シート,フィルムを提供することができる。
【0034】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で使用するSPS,GPPS及び酸化防止剤は、下記のとおりである。
・SPS:シンジオタクチックポリスチレン共重合体(出光石油化学社製)
コモノマー:パラメチルスチレン、共重合比12モル%
重量平均分子量230,000
・GPPS:アタクチックポリスチレン(出光石油化学社製、商品名HH30)
重量平均分子量270,000
【0035】
・酸化防止剤
AO1:住友化学工業株式会社製SumilizerGS
(N2 下での5%重量減少温度270℃),
AO2:チバスペシャリチティーケミカル社製IRGANOX 1010
(N2 下での5%重量減少温度335℃)
AO3:アデカアーガス化学株式会社製PEP36
(N2 下での5%重量減少温度332℃)
AO4:チバスペシャリティーケミカルズ製IRGANOX 1222
(N2 下での5%重量減少温度213℃)
【0036】
実施例1
AO1をGPPSへ0.1重量%粉体混合し、300℃で溶融押出後、ペレット化した。
得られたGPPSペレット及びSPSを、それぞれの50mmφ単軸押出機で270℃で押出し、270℃に設定したフィードブロック、500mm幅のコートハンガーダイを介して押出し、85℃の冷却ロールで冷却してSPS/GPPS/SPSの250μm多層未延伸シートを8時間連続成形し、成形後ロールをクロロホルムで洗浄し、洗液を回収し、エバポレータで蒸発乾固し、重量を測定し、結果を第1表に示す。
【0037】
実施例2
酸化防止剤としてAO2を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、ロール洗液の蒸発乾固後の残存物の重量を測定し、結果を第1表に示す。
実施例3
酸化防止剤としてAO3を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、ロール洗液の蒸発乾固後の残存物の重量を測定し、結果を第1表に示す。
【0038】
実施例4
酸化防止剤として、AO1とAO2をそれぞれ0.1重量%添加した以外は、実施例1と同様に操作し、ロール洗液の蒸発乾固後の残存物の重量を測定し、結果を第1表に示す。
実施例5
酸化防止剤として、AO2とAO3をそれぞれ0.1重量%添加した以外は、実施例1と同様に操作し、ロール洗液の蒸発乾固後の残存物の重量を測定し、結果を第1表に示す。
【0039】
比較例1
GPPSに酸化防止剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様に操作し、ロール洗液の蒸発乾固後の残存物の重量を測定し、結果を第1表に示す。
比較例2
酸化防止剤としてAO4を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、ロール洗液の蒸発乾固後の残存物の重量を測定し、結果を第1表に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、、押出時にGPPS層の熱分解に伴うロールへの付着物,発煙,目やに,発泡等がなく、成形性がよく、外観の良好な積層体を効率よく製造することができ、連続生産性を著しく向上することができ、様々な用途に有用な積層シート,フィルムを提供することができる。したがって、本発明は、例えば、食品,薬剤,文具,日用品などの包装用フィルム,袋及び容器、離型フィルム,接着テープ,コンデンサー,誘電体などの産業用フィルムや容器などの製造に特に有効である。
Claims (4)
- シンジオタクチック構造のスチレン系重合体又はこの重合体を含有する重合体組成物と、アタクチック構造のスチレン系重合体又はこの重合体を含有する重合体組成物に5%重量減少温度が240℃以上の酸化防止剤を0.001〜0.5重量%添加したスチレン系材料とを用い、少なくとも前記スチレン系重合体又は前記重合体を含有する重合体組成物と前記スチレン系材料との合流部からダイスまでの温度を250〜300℃の範囲として溶融共押出することを特徴とするスチレン系樹脂積層体の製造方法。
- アタクチック構造のスチレン系重合体又はこの重合体を含有する重合体組成物に5%重量減少温度が240℃以上の酸化防止剤を0.001〜0.5重量%添加したスチレン系材料から成る層の両面に、シンジオタクチック構造のスチレン系重合体又はこの重合体を含有する重合体組成物から成る層を積層した3層構造であり、層比が1/18/1〜2/1/2である請求項1記載のスチレン系樹脂積層体の製造方法。
- 前記酸化防止剤が、2−〔1−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕、及びビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイトの何れかから選択される1種以上である請求項1又は2記載のスチレン系樹脂積層体の製造方法。
- 共押出後、冷却し、二軸延伸する請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系樹脂積層体の製造方法。
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