JP4494664B2 - スチレン系樹脂積層フィルム及び包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系樹脂積層フィルム及び包装体に関し、特に、易裂性に優れ、ノッチ加工がなくとも手で容易に開封可能で、レトルト食品用として有用なパウチ包装用のスチレン系樹脂積層フィルム及び包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品包装用のパウチ容器は、プラスチックフィルムとアルミニウム箔等の積層体で構成され、強度的にも強く内容物の保護、保存性に優れており、家庭用及び業務用共に利便性が高く評価され用途が拡大している。
このようなパウチ容器開封時に要求される性能として、切り口の切れやすさである手切れ性及び直線的に開封できる直線カット性がある。直線カット性については、積層材料の組み合わせによる改良技術が数多く提案されているものの、手切れ性については、例えば、実開昭57−80462号公報に包装体の端部に切れ目を入れることが開示され、実開昭58−169044号公報及び実開昭58−156656号公報に包装体の端部にV字型のノッチを設けることが開示されている。このように、従来は開封口にノッチを付ける等の二次加工をする以外には手で容易に開封できないのが実情であり、レトルト食品用パウチ包装においては、ノッチ等の加工をせずに手で容易に開封可能な、手切れ性に優れた材料がなかった。また、高齢者や視力の低下した人には、ノッチの場所を容易に見つけるのが困難な面もあり使い勝手に問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の課題を解決するためなされたもので、易裂性に優れ、ノッチ加工がなくとも手で容易に開封可能で、レトルト食品用として有用なパウチ包装用のスチレン系樹脂積層フィルム及び包装体を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、パウチ包装の材質として、特定の構成及び膜厚を有するシンジオタクチック構造のポリスチレン系二軸延伸多層フィルム(二軸延伸多層SPSフィルム)を使用することにより、前記目的を達成しうるとの知見を得た。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0005】
すなわち、本発明は、少なくともシンジオタクチック構造のポリスチレン系二軸延伸多層フィルムと、アルミニウム箔と、シーラントフィルムとを積層してなるレトルト食品パウチ包装用のスチレン系樹脂積層フィルムであって、
該シンジオタクチック構造のポリスチレン系二軸延伸多層フィルムが、シンジオタクチック構造のスチレン系重合体層/アタクチック構造のスチレン系重合体とシンジオタクチック構造のスチレン系重合体との混合物層/シンジオタクチック構造のスチレン系重合体層からなる3層フィルムであり、
該シンジオタクチック構造のポリスチレン系二軸延伸多層フィルムの厚さが5〜50μm、3層フィルムの層厚比が1/18/1〜2/1/2であり、
該シンジオタクチック構造のスチレン系重合体が、スチレンのみからなる重合体、又はスチレンとメチルスチレンとからなる共重合体であることを特徴とするスチレン系樹脂積層フィルムを提供するものである。
また、本発明は、前記スチレン系樹脂積層フィルムを用いて包装した、レトルト食品類の包装体を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のスチレン系樹脂積層フィルムは、少なくとも二軸延伸多層SPSフィルムと、アルミニウム箔と、シーラントフィルムとを積層してなるレトルト食品パウチ包装用のフィルムである。
二軸延伸多層SPSフィルムは、SPS層/GPPSとSPSとの混合物層/SPS層からなる3層フィルムである。
この3層フィルムにおいて、SPSにおけるシンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR)により定量される。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができるが、本発明に言うSPSとは、通常はラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、若しくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、又はメチルスチレンとスチレンの共重合体である。
【0007】
本発明において、SPSの重量平均分子量は150,000〜300,000であることが好ましい。この範囲であると、成膜時の加工性が良好だからである。
また、本発明におけるSPSは、スチレンのみからなる重合体、又はスチレンとメチルスチレンとからなる共重合体であり、成膜時の加工性の面からスチレンとメチルスチレンとからなる共重合体が好ましい。
【0008】
前記SPS層には、本発明の目的を阻害しない範囲で、SPS以外の熱可塑性樹脂,熱可塑性エラストマー,相溶化剤などを配合することができる。これらの配合剤は、SPS層中に0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜10重量%の範囲で配合するとよい。
さらにSPS層には、必要に応じて各種添加剤を配合してもよい。以下これらの配合剤や添加剤について説明する。
【0009】
(1−1)SPS以外の熱可塑性樹脂
本発明で用いてもよいSPS以外の熱可塑性樹脂としては、直鎖状高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,高圧法低密度ポリエチレン,アイソタクチックポリプロピレン,シンジオタクチックポリプロピレン,ブロックポリプロピレン,ランダムポリプロピレン,ポリブテン,1,2−ポリブタジエン,ポリ4−メチルペンテン,環状ポリオレフィン及びこれらの共重合体に代表されるポリオレフィン系樹脂、アタクチックポリスチレン,アイソタクチックポリスチレン,HIPS,ABS,AS,スチレン−メタクリル酸共重合体,スチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体,スチレン−メタクリル酸グリシジルエステル共重合体,スチレン−アクリル酸共重合体,スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体,スチレン−マレイン酸共重合体,スチレン−フマル酸共重合体に代表されるポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6をはじめとするポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル、PPS等公知のものから任意に選択して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0010】
(1−2)熱可塑性エラストマー
本発明で用いてもよい熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、天然ゴム,ポリブタジエン,ポリイソプレン,ポリイソブチレン,ネオプレン,ポリスルフィドゴム,チオコールゴム,アクリルゴム,ウレタンゴム,シリコーンゴム,エピクロロヒドリンゴム,スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR),水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB),スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS),水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR),水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP),スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS),水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などのスチレン系ゴム、さらにはエチレンプロピレンゴム(EPM),エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM),直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム,あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS),メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS),メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS),オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS),アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS),ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR),メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴム等が挙げられる。これらは一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
(1−3)相溶化剤
本発明で用いてもよい相溶化剤としては、例えばスチレン構造を含む共重合体であって、分子中にスチレン構造を40モル%以上、好ましくは50モル%以上含む重合体が挙げられる。
このような相溶化剤の具体例としては、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR),水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB),スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS),水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR),水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP),スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS),水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。これらはいずれもスチレン構造を50モル%以上含む重合体である。
【0012】
(1−4)各種添加剤
▲1▼アンチブロッキング剤(AB剤)
アンチブロッキング剤としては、下記のような無機粒子又は有機粒子が挙げられる。
無機粒子としては、IA族,IIA族,IVA族,VIA族,VIIA族,VIII族,IB族,IIB族,IIIB族,IVB族元素の酸化物,水酸化物,硫化物,窒素化物,ハロゲン化物,炭酸塩,硫酸塩,酢酸塩,燐酸塩,亜燐酸塩,有機カルボン酸塩,珪酸塩,チタン酸塩,硼酸塩並びにそれらの含水化合物,それらを中心とする複合化合物及び天然鉱物粒子が挙げられる。
【0013】
具体的には、弗化リチウム,ホウ砂(硼酸ナトリウム含水塩)等のIA族元素化合物、炭酸マグネシウム,燐酸マグネシウム,酸化マグネシウム(マグネシア),塩化マグネシウム,酢酸マグネシウム,弗化マグネシウム,チタン酸マグネシウム,珪酸マグネシウム,珪酸マグネシウム含水塩(タルク),炭酸カルシウム,燐酸カルシウム,亜燐酸カルシウム,硫酸カルシウム(石膏),酢酸カルシウム,テレフタル酸カルシウム,水酸化カルシウム,珪酸カルシウム,弗化カルシウム,チタン酸カルシウム,チタン酸ストロンチウム,炭酸バリウム,燐酸バリウム,硫酸バリウム,亜硫酸バリウム等のIIA族元素化合物、二酸化チタン(チタニア),一酸化チタン,窒化チタン,二酸化ジルコニウム(ジルコニア),一酸化ジルコニウム等のIVA族元素化合物、二酸化モリブデン,三酸化モリブデン,硫化モリブデン等のVIA族元素化合物、塩化マンガン,酢酸マンガン等のVIIA族元素化合物、塩化コバルト,酢酸コバルト等のVIII族元素化合物、沃化第一銅等のIB族元素化合物、酸化亜鉛,酢酸亜鉛等のIIB族元素化合物、酸化アルミニウム(アルミナ),水酸化アルミニウム,弗化アルミニウム,アルミノシリケート(珪酸アルミナ,カオリン,カオリナイト)等のIIIB族元素化合物、酸化珪素(シリカ,シリカゲル),石墨,カーボン,グラファイト,ガラス等のIVB族元素化合物、カーナル石,カイナイト,雲母(マイカ,キンウンモ),バイロース鉱等の天然鉱物の粒子が挙げられる。ここで、用いる無機粒子の平均粒径は0.1〜10μmのものが好ましい。
【0014】
有機粒子としては、テフロン,メラミン系樹脂,スチレン−ジビニルベンゼン共重合体,アクリル系樹脂,シリコーン樹脂及び及びそれらの架橋体が挙げられる。
なお、前記のような無機又は有機のAB剤は、一種のみを単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
▲2▼酸化防止剤
酸化防止剤としてはリン系、フェノール系,イオウ系等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの酸化防止剤は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。さらには、2−〔1−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕なども好適に使用される。
【0016】
▲3▼核剤
核剤としては、アルミニウムジ(p−t−ブチルベンゾエート)をはじめとするカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウムをはじめとするリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等、公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの核剤は一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる
【0017】
▲4▼可塑剤
可塑剤としては、ポリエチレングリコール,ポリアミドオリゴマー,エチレンビスステアロアマイド,フタル酸エステル,ポリスチレンオリゴマー,ポリエチレンワックス,シリコーンオイル等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの可塑剤は一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
▲5▼離型剤
離型剤としては、ポリエチレンワックス,シリコーンオイル,長鎖カルボン酸,長鎖カルボン酸金属塩等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの離型剤は一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
▲6▼プロセスオイル
本発明においては、伸度の向上のために、さらに40℃での動粘度が15〜600mm2 /sであるプロセスオイルを配合することが好ましい。
プロセスオイルは、油種により、パラフィン系オイル,ナフテン系オイル,アロマ系オイルに大別されるが、この中でもn−d−M法で算出されるパラフィン(直鎖)に関わる炭素数の全炭素数に対する百分率が60%Cp以上のパラフィン系オイルが好ましい。
プロセスオイルの粘度としては、40℃での動粘度が15〜600mm2 /sが好ましく、15〜500mm2 /sがさらに好ましい。
プロセスオイルの動粘度が15mm2 /s未満では伸度向上効果があるものの、沸点が低くSPSとの溶融混練、及び成形時に白煙、ガス焼け、ロール付着等の発生原因になる。また動粘度が600mm2 /sを超えると、白煙ガス焼け等は抑制されるものの、伸度向上効果に乏しい。なおこれらのプロセスオイルは一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記の各種添加剤の添加量は、SPS層中に、必要に応じて、好ましくは0〜3重量%、より好ましくは0〜1.5重量%の範囲で配合すればよい。
また、上記の各種添加剤は、使用する重合体を用いてマスターバッチを作製して添加することもできる。
【0020】
本発明における3層フィルムで、中間層のGPPSとSPSとの混合物層は、GPPSを主成分とすることが好ましく、GPPSの割合が60〜90重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。GPPSが60重量%よりも少ないと積層後の透明性が悪化したり、SPS層との密着性が不十分となり、熱加工時に層間剥離が生ずることがある。
本発明で用いるGPPSは、工業的には塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの方法によるラジカル重合で得られるスチレン系重合体である。このようなラジカル重合で得られたポリスチレンは、通常アタクチック構造のもので立体規則性を有していない。また、ここで言うアタクチック構造のポリスチレンは、一種類以上の芳香族ビニル化合物からなる重合体、あるいは一種類以上の芳香族ビニル化合物と共重合可能な一種類以上の他のビニル単量体の共重合体、これらの重合体の水素化重合体及びこれらの混合物であってもよい。
【0021】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン,α―メチルスチレン,メチルスチレン,エチルスチレン,イソプロピルスチレン,ターシャリーブチルスチレン,フェニルスチレン,ビニルスチレン,クロロスチレン,ブロモスチレン,フルオロスチレン,クロロメチルスチレン,メトキシスチレン,エトキシスチレン等があり、これらは一種または2種以上で使用される。これらのうち、好ましい芳香族ビニル化合物としては、スチレン,p−メチルスチレン,m−メチルスチレン,エチルスチレン,p−ターシャリーブチルスチレンが挙げられる。
【0022】
共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリロニトリル,メタクロルニトリル等のビニルシアン化合物、メチルアクリレート,エチルアクリレート,プロピルアクリレート,ブチルアクリレート,アミルアクリレート,ヘキシルアクリレート,オクチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,シクロヘキシルアクリレート,ドデシルアクリレート,オクタデシルアクリレート,フェニルアクリレート,ベンジルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、メチルメタクリレート,エチルメタクリレート,ブチルメタクリレート,アミルメタクリレート,ヘキシルメタクリレート,オクチルメタクリレート,2−エチルヘキシルメタクリレート,シクロヘキシルメタクリレート,ドデシルメタクリレート,オクタデシルメタクリレート,フェニルメタクリレート,ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、マレイミド,N−メチルマレイミド,N−エチルマレイミド,N−ブチルマレイミド,N−ラウリルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド,N−フェニルマレイミド,N−(p−ブロモフェニル)マレイミド等のマレイミド化合物等がある。
【0023】
本発明で用いるGPPSとしては、重量平均分子量が220, 000以上のものが好ましい。重量平均分子量が220,000未満のものでは共押出時に幅方向に層比分布ムラが発生する。
また、中間層のGPPSとSPSとの混合物層には、本発明の目的を阻害しない範囲で他の熱可塑性樹脂,熱可塑性エラストマー,相溶化剤などの配合剤、さらには必要に応じて各種添加剤を配合してもよい。これらの具体例は、前記SPS層のところで記載したものを用いることができる。その配合割合についても同様である。
ただし、他の熱可塑性樹脂には、(1−1)で例示した、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)は除かれる。
【0024】
本発明における3層フィルムにおいて、中間層の両面に存在する2つのSPS層は、同一の組成,性質であってもよいが、上記の範囲内で互いに異なる組成、性質であってもよい。
3層フィルムの厚さは、5〜50μmであり、10〜30μmが好ましい。5μm未満であるとフィルム強度が不足し、50μmを越えると強度が高く引き裂きにくくなり、不経済でもある。
3層フィルムの膜厚比は、SPS層/GPPSとSPSとの混合物層/SPS層=1/18/1〜2/1/2であり、1/18/1〜3/2/3が好ましく、1/18/1〜1/1/1がさらに好ましい。SPS層が相対的に薄すぎると、3層フィルムの力学強度に問題が生じやすく、SPS層が相対的に厚すぎると、3層フィルムの熱加工性に問題が生じやすい。
【0025】
前記3層フィルムは、従来用いられている種々の方法により製造することができるが、SPS層となる重合体又は樹脂組成物と中間層となる重合体または樹脂組成物を250〜300℃で溶融共押出する方法を用いることにより効率よく製造することができる。共押出方式は、特に制限はないが、フィードブロック方式,マルチマニホールド方式のいずれでもよく、ダイスはコートハンガーダイ,T−ダイ,円環ダイなどを用いることができる。
【0026】
溶融共押出後、冷却し、共延伸することでSPS層の結晶化度を向上させるとともに、透明性を発現させることができる。共延伸の方法としては、同時二軸延伸法又は逐次二軸延伸法を用いる。また、その場合の面積延伸倍率は3〜20倍が好ましく、5〜10倍がより好ましい。この共延伸温度は、90〜200℃が好ましく、90〜150℃がより好ましい。なお共延伸後、熱処理を行うことが好ましく、緊張下において、好ましくは100〜270℃、より好ましくは150〜270℃で、好ましくは1〜300秒、より好ましくは1〜60秒行えばよい。
以上の方法により接着剤を用いることなく、層間密着性に優れ、透明性がより高い3層フィルムを製造することができる。
なお、上記以外の方法として、それぞれ単体フィルムを作製し、それを接着剤を用いて積層してもよい。
前記3層フィルムは、層比分布が良好であるため、力学的物性が幅方向で均質で、かつ界面荒れなどがなく、包装材料の中間層として好適なものである。
【0027】
本発明において、シーラントフィルムの材質としては、耐ボイル性を有するポリプロピレンフィルムが好ましい。シーラントフィルムの厚さは、20〜100μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0028】
本発明においては、二軸延伸多層SPSフィルムと、アルミニウム箔と、シーラントフィルムとを積層してなるが、シーラントフィルムは、二軸延伸多層SPSフィルム、もしくはアルミニウム箔に貼りあわせて積層してもよい。また、二軸延伸多層SPSフィルム、もしくはアルミニウム箔上に押出コート法によって成膜してもよい。
押出コート法による場合には、種々のアンカーコート剤が用いられ、また、ドライラミネート法による場合には、種々の接着剤が用いられる。アンカーコート剤としては、天然ゴム,カゼイン,ポリビニルアルコール,ポリアクリルアミド,ビニルメチル,エーテル−無水マレイン酸共重合体,スチレン系共重合体,ポリフェニレンエーテル系共重合体等がある。
【0029】
本発明で使用するアルミニウム箔の厚さとしては、3〜15μmが好ましく、5〜10μmであるとさらに好ましい。本発明において、アルミニウム箔を積層するのは、スチレン系樹脂積層フィルムの切れ易さ、遮光性の付与、保温性能を向上させるためである。
本発明のスチレン系樹脂積層フィルムにおいては、二軸延伸多層SPSフィルムとアルミニウム箔の間に補強層としてナイロンフィルムを設けてもよい。ナイロンフィルムは、二軸延伸したものが好ましく、厚さは、5〜75μmが好ましく、10〜50μmがより好ましく、10〜25μmがさらに好ましい。また、ナイロンフィルムには、印刷が施されていてもよい。
【0030】
本発明の包装体は、本発明のスチレン系樹脂積層フィルムを用い、カレー、シチュー、スープ及びお粥等のレトルト食品を包装するのに適している。
包装体の作成方法は、公知の方法に寄れば特に限定されず、例えば、本発明のスチレン系樹脂積層フィルムより一辺が開封した袋体を形成し、内容物を充填した後、開封口をヒートシールしてノッチ無し包装体を作製する。
【0031】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例で使用するSPS及びGPPSは、下記のとおりである。
▲1▼SPS
PMeST:シンジオタクチックポリスチレン共重合体(出光石油化学社製)
コモノマー:パラメチルスチレン、共重合比12モル%、
重量平均分子量230,000
SPS:シンジオタクチックポリスチレン(出光石油化学社製)
重量平均分子量220, 000
▲2▼GPPS
GPPS:アタクチックポリスチレン(出光石油化学社製、商品名HH32)
重量平均分子量340,000
【0032】
▲3▼添加剤(酸化防止剤、アンチブロッキング剤添加用マスターバッチ)
・共重合体PMeST用には、PMeSTにアンチブロッキング剤アルミノシリケート(水澤化学製、シルトンAMT08)を10,000ppm粉体混合し、300℃で溶融押出後、ペレット化した。
・ホモSPS用には、SPSにアンチブロッキング剤アルミノシリケート(水澤化学製、シルトンAMT08)を10,000ppm及び酸化防止剤ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名IRGANOX 1010)10,000ppm粉体混合し、300℃で溶融押出後、ペレット化した。
・GPPS用には、酸化防止剤としてスミライザーGS(住友化学社製)及びIRGANOX 1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)をそれぞれ10,000ppm粉体混合し、270℃で溶融押出後、ペレット化した。
【0033】
製造例1
マスターバッチをドライブレンドしたPMeST、及びGPPS/SPS=80/20重量%を、それぞれ50mmφ単軸押出機で270℃で溶融混練し、270℃に温度設定したフィードブロック、500mm幅のコートハンガーダイを介して押出し、85℃の冷却ロールで冷却して、PMeST/GPPS+SPS/PMeSTの250μm多層未延伸シートを得、両押出機の吐出比より層厚比をPMeST/GPPS+SPS/PMeST=2/6/2とした。この未延伸シートを連続的に縦方向に105℃で3.3倍に延伸し、次いで横方向に115℃で3.8倍に延伸後、150℃で幅方向に10%弛緩させながら10秒間熱処理を施し、厚さが20μmの3層フィルム(二軸延伸多層SPSフィルム)を得た。
【0034】
実施例1
製造例1で得られた厚さ20μmの二軸延伸多層SPSフィルムを外層とし、厚さ8μmのアルミニウム箔を中間層とし、厚さ80μmのポリプロピレン系シーラントフィルムを内層(内容物と接する層)となるように接着剤で積層してラミネートフィルムを作製し、このフィルムを用いて縦175mm、横130mm、底部形成用折込み40mmのパウチを作製した。このパウチに200gのレトルトカレーを充填し、開封口をヒートシールしてノッチ無しパウチを作製した。
実施例2
実施例1において、外層と中間層との間に、補強層として厚さ15μmのナイロンフィルムを設けたこと以外は同様にしてノッチ無しパウチを作製した。
【0035】
比較例1
実施例1において、外層の二軸延伸多層SPSフィルムを、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代えた以外は同様にしてノッチ無しパウチを作製した。
比較例2
実施例2において、外層の二軸延伸多層SPSフィルムを、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムに代えた以外は同様にしてノッチ無しパウチを作製した。
【0036】
上記実施例1〜2及び比較例1〜2で作製したパウチについて、以下の条件及び評価基準で開封性試験を行った。
実施例1〜2及び比較例1〜2のノッチ無しパウチ、並びに実施例1〜2及び比較例1〜2のパウチにノッチを設けたものを各10袋用意し、15分間、100℃の熱水中で加熱した直後に、側面を手で引き裂いて、引き裂き時の抵抗を下記基準で評価した。それらの結果を、表1に示す。
○:抵抗が小さく、容易に開封することができる。
△:抵抗は若干大きいが、なんとか開封することができる。
×:抵抗が大きく、開封することができない。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のスチレン系樹脂積層フィルムよりなる包装体は、易裂性に優れ、ノッチ加工がなくとも手で容易に開封可能である。このため、利便性が高く、カレー、シチュー、スープ及びお粥等レトルト食品用の包装体として有用である。
Claims (3)
- 少なくともシンジオタクチック構造のポリスチレン系二軸延伸多層フィルムと、アルミニウム箔と、シーラントフィルムとを積層してなるレトルト食品パウチ包装用のスチレン系樹脂積層フィルムであって、
該シンジオタクチック構造のポリスチレン系二軸延伸多層フィルムが、シンジオタクチック構造のスチレン系重合体層/アタクチック構造のスチレン系重合体とシンジオタクチック構造のスチレン系重合体との混合物層/シンジオタクチック構造のスチレン系重合体層からなる3層フィルムであり、
該シンジオタクチック構造のポリスチレン系二軸延伸多層フィルムの厚さが5〜50μm、3層フィルムの層厚比が1/18/1〜2/1/2であり、
該シンジオタクチック構造のスチレン系重合体が、スチレンのみからなる重合体、又はスチレンとメチルスチレンとからなる共重合体であることを特徴とするスチレン系樹脂積層フィルム。 - 前記シーラントフィルムが、ポリプロピレンフィルムであることを特徴とする請求項1に記載のスチレン系樹脂積層フィルム。
- 請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂積層フィルムを用いて包装した、レトルト食品の包装体。
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