JP6000173B2 - Pvd処理装置及びpvd処理方法 - Google Patents
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Description
されていない場合は、均質な複合皮膜が得られなくなるという問題がある。
例えば、公転テーブルと自転テーブルとの回転比が適正な数値に設定されている場合は、円環状の皮膜が同心状に積層された断面形状の複合皮膜が得られる。しかし、公転テーブルと自転テーブルとの回転比が適正な数値に設定されていない場合は、円環のうち周方向の一部が欠落したようなC字状の皮膜が複合皮膜中に含まれたり、円環のうち周方向の一部だけが重なり合った皮膜が生じたりして、不均質な構造をもった複合皮膜が成膜される。
即ち、本発明のPVD処理装置は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられた公転軸回りに複数の基材を公転させる公転テーブルと、前記基材を公転テーブル上で公転軸と平行な自転軸回りに自転させる自転テーブルと、前記公転テーブルの径外側に周方向に距離をあけて配置されると共に互いに異なる種類の成膜物質から形成された複数のターゲットと、を備え、前記複数のターゲットのそれぞれの中央から公転テーブルの外接円に引かれた2本の接線の間を基材が通過する間に、当該基材が搭載された自転テーブルを公転テーブルに対して180°以上の角度に亘って自転させるテーブル回転機構を有することを特徴とする。
また、本発明に係るPVD処理装置の最も好ましい形態は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられた公転軸回りに複数の基材を公転させる公転テーブルと、前記基材を公転テーブル上で公転軸と平行な自転軸回りに自転させる自転テーブルと、前記公転テーブルの径外側に周方向に距離をあけて配置されると共に互いに異なる種類の成膜物質から形成された複数のターゲットと、を備え、 前記複数のターゲットのそれぞれの中央から公転テーブルの外接円に引かれた2本の接線の間を基材が通過する間に、当該基材が搭載された自転テーブルを公転テーブルに対して180°以上の角度に亘って自転させるテーブル回転機構を有し、前記テーブル回転機構は、前記公転テーブルの回転方向と全ての前記自転テーブルの回転方向とを同方向に回転させることを特徴とする。
さらに、本発明に係るPVD処理方法の最も好ましい他の形態は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられた公転軸回りに複数の基材を公転させる公転テーブルと、前記公転テーブルの径外側に周方向に距離をあけて配置されると共に互いに異なる種類の成膜物質から形成された複数のターゲットと、を備えたPVD処理装置を用いてPVD処理を行うに際しては、前記複数のターゲットのそれぞれの中央から公転テーブルの外接円に引かれた2本の接線の間を基材が通過する間に、当該基材を公転テーブルの公転軸と平行な自転軸回りに、公転テーブルに対して180°以上の角度に亘って自転させると共に、前記公転テーブルの回転方向と全ての前記基材の回転方向とを同方向としつつ、PVD処理を行うことを特徴とする。
本実施形態によるPVD処理装置1は、2種類以上のPVD法を交互あるいは同時に用
いて、基材Wの表面上に複合皮膜の成膜を行う装置である。以降の第1実施形態では、PVD法の中でもアークイオンプレーティング法とスパッタ法との双方を用いて複合皮膜の成膜を行うものの例を挙げて、本発明のPVD処理装置1を説明する。
図1に示すように、第1実施形態によるPVD処理装置1は、内部が処理室とされた真空チャンバ2を有している。この真空チャンバ2の処理室は、図示しない真空ポンプなどを用いて真空または極低圧まで排気できるようになっている。また、PVD処理装置1は、真空チャンバ2の内部に、複数の基材Wを公転させる公転テーブル3と、この公転テーブル3上でそれぞれの基材Wを自転させる自転テーブル4と、公転テーブル3の径外側に互いに周方向に距離をあけて配置されると共に互いに異なる種類の成膜物質から形成された複数のターゲット5と、を備えている。さらに、上述した公転テーブル3と自転テーブル4とは、テーブル回転機構6によって互いに所定のギア比で回転するようになっている。
図1に示すように、第1実施形態の公転テーブル3は、公転軸7回りに基材Wを公転させることができる円板状の部材であり、図例では公転軸7が鉛直方向となるように設置されている。この公転テーブル3には、基材Wを搭載した自転テーブル4が、当該公転テーブル3の外縁の近傍に周方向に距離をあけて複数(図例では8つ)配備されている。また、公転テーブル3には、上述した公転軸7回りに基材Wを公転(旋回)させるテーブル回転機構6(後述)が設けられている。なお、本実施形態の公転テーブル3は、上方から見て時計回りに公転する構成とされている。
上述した自転テーブル4に搭載される基材Wは、例えばドリルやチップなどのように、周方向に沿って円弧状に湾曲した外周面を備えた物品であり、この湾曲した外周面に皮膜を成膜するようになっている。なお、本実施形態では、基材Wに円筒体の物品を挙げているが、基材Wは円筒体に限られない。例えば、先端が尖った円錐状の部材や、複数の円板状の部材を複数枚積層することで全体として円筒状の外形を備えるに至ったような基材セットも本発明の基材Wに含まれる。
具体的には、テーブル回転機構6は、公転テーブル3側に設けられた中心ギア9と、自転テーブル4側に設けられた自転ギア10と、を組み合わせて構成されている。これらの中心ギア9と自転ギア10とは互いに噛み合わされており、図4(a)及び図4(b)に示すように用いるギアの外径や歯数を変化させることで公転テーブル3に対して自転テーブル4をさまざまなギア比で回転できるようになっている。図4(a)は、中心ギア9が大径ギアであり、この中心ギア9に噛み合う自転ギア10が小径ギアの場合である。図4
(b)は、中心ギア9が小径ギアであり、この中心ギアに噛み合う自転ギア10が大径ギアの場合である。
このような自公転を実現するテーブル回転機構6を設ける理由を、図1及び図2に示すようなPVD処理装置1を用いて説明する。
なお、公転テーブル3が公転を続けると、ターゲット5から見て基材Wの位置は水平面上で相対的に変化する。つまり、公転する公転テーブル3上に設けられた基材Wは、自転していなくともターゲット5に対して絶対座標上での位置を変え、成膜物質が堆積する場所も外周面上で変化する。
いて考える。図2(a)において丸印で示される外周面上の1点は、公転テーブル3が公転すると図中の(A)→(B)→(C)というように、一方の接線L1上の位置からターゲット5の正面の位置を経由して、他方の接線L2上の位置まで移動する。一方、このようにターゲット5に対する基材Wの位置が相対的に変化して丸印の位置が(C)まで来ると、上述した黒塗りの場所に隣接した位置にも成膜物質が堆積されるようになり、黒塗りの皮膜に加えてグレーで示した皮膜が新たに形成される。
具体的には、上述したテーブル回転機構6を、2本の接線L1、L2の間を基材Wが通過する間に、自転テーブル4を公転テーブル3に対して180°以上の角度に亘って自転させるようなギア比に設定する。このようにすれば、自転テーブル4がより広角度に亘って自転する分だけ上述したグレーの皮膜の範囲が増し、基材Wの外周面に全周に亘って途切れることなく繋がった皮膜が成膜される。
このような場合は、2本の接線L1、L2の間を基材Wが通過する間に、基材Wが搭載された自転テーブル4を公転テーブル3に対して360°以上、より好ましくは720°以上の角度に亘って自転させるようにする。そうすれば、皮膜の厚みにムラが無くなって、均質な構造をもった複合皮膜を成膜することが可能になる。具体的には、2本の接線L1、L2の間を基材Wが通過する間に、自転テーブル4を公転テーブル3に対して180°とした場合には皮膜の厚みに±50%程度のバラツキが生じるが、360°とした場合にはバラツキは±30%程度となり、720°とした場合にはバラツキは±10%程度となる。
図3(a)及び図3(b)に示すように、実験に用いたPVD処理装置1は、外径が400mmφの公転テーブル3上に、外径が160mmφの自転テーブル4を、周方向に等間隔をあけて4つ備えたものである。自転テーブル4に搭載される基材Wは直径が160
mmφの円筒体であり、実施例及び比較例ではこの基材Wの外周面にアークイオンプレーティング法により皮膜を成膜している。
また、実施例及び比較例は、公転テーブル3に設けられる中心ギア9と、自転テーブル4に設けられる自転ギア10とのギア比を、いずれも表1に示すような値としたものである。つまり、図4(a)に示すように、実施例は、180mmφの直径を有する中心ギア9に対して、60mmφの直径を有する自転ギア10を噛み合わせて自公転させた場合に、公転座標系に対する自転角度が337.5°となった例である。また、図4(b)に示すように、比較例は、90mmφの直径を有する中心ギアに対して、150mmφの直径を有する自転ギアを噛み合わせて自公転させた場合に、公転座標系に対する自転角度が67.5°となった例である。
なお、図5(a)及び図5(b)の縦軸に示される膜厚は、ターゲット5の正面に基材Wが位置するときに成膜された膜厚を基準とする相対値で示している。また、図5(a)及び図5(b)の横軸に示される周方向位置は、ターゲット5の正面に基材Wが位置するときを0°とした場合の角度で示している。
ところで、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
2 真空チャンバ
3 公転テーブル
4 自転テーブル
5 ターゲット
51 アークイオンプレーティング用のターゲット
52 スパッタ用のターゲット
6 テーブル回転機構
7 公転軸
8 自転軸
9 中心ギア
10 自転ギア
W 基材
Claims (2)
- 真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられた公転軸回りに複数の基材を公転させる公転テーブルと、前記基材を公転テーブル上で公転軸と平行な自転軸回りに自転させる自転テーブルと、前記公転テーブルの径外側に周方向に距離をあけて配置されると共に互いに異なる種類の成膜物質から形成された複数のターゲットと、を備え、
前記複数のターゲットのそれぞれの中央から公転テーブルの外接円に引かれた2本の接線の間を基材が通過する間に、当該基材が搭載された自転テーブルを公転テーブルに対して180°以上の角度に亘って自転させるテーブル回転機構を有し、前記テーブル回転機構は、前記公転テーブルの回転方向と全ての前記自転テーブルの回転方向とを同方向に回転させる
ことを特徴とするPVD処理装置。 - 真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられた公転軸回りに複数の基材を公転させる公転テーブルと、前記公転テーブルの径外側に周方向に距離をあけて配置されると共に互いに異なる種類の成膜物質から形成された複数のターゲットと、を備えたPVD処理装置を用いてPVD処理を行うに際しては、
前記複数のターゲットのそれぞれの中央から公転テーブルの外接円に引かれた2本の接線の間を基材が通過する間に、当該基材を公転テーブルの公転軸と平行な自転軸回りに、公転テーブルに対して180°以上の角度に亘って自転させると共に、前記公転テーブルの回転方向と全ての前記基材の回転方向とを同方向としつつ、PVD処理を行うことを特徴とするPVD処理方法。
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