JP6763802B2 - ワーク回転装置およびそれを備えた成膜装置 - Google Patents

ワーク回転装置およびそれを備えた成膜装置 Download PDF

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Description

本発明は、ワーク回転装置およびそれを備えた成膜装置に関する。
従来、エンジンのピストンリングなどのワークの耐摩耗性を向上するために、当該ワークの外周面に窒化クロムなどの硬質皮膜をPVDなどの成膜方法によって形成することが行われる。
ピストンリングは、円環の一部が途切れた形状を有する金属製の部材であり、円環の一部が途切れることにより形成された開口部分、すなわち、合口部を有している。ピストンリングは、その外径を小さくするように合口部が閉じる方向へ変形させながらエンジンのシリンダに挿入された状態で使用される。この使用状態では、ピストンリングの合口部の周辺部には、外側に開こうとする力が最も大きくかかる。このため、当該周辺部は、シリンダ内壁に最も強く押し付けられるので、エンジンの使用時に最も摩耗しやすい。
そこで、ピストンリングの合口部の周辺部の摩耗を防止するために、当該周辺部に部分的に上記の硬質皮膜を厚く形成することが考えられる。
従来では、ピストンリングにおける合口部の周辺部における硬質皮膜の膜厚を他の部位の膜厚よりも厚くする成膜方法として、特許文献1の記載の成膜方法が知られている。
この成膜方法では、ピストンリングを自転および公転させる回転テーブルに載せ、当該回転テーブルを駆動するモータに対して速度指令を与えることにより、ピストンリングの合口部が蒸発源にほぼ正対するときにピストンリングの自転速度が遅くなるようにモータを制御する。これにより、ピストンリングの合口部が蒸発源に正対するときのピストンリングの自転速度を、合口部以外の部位が蒸発源に正対するときよりも遅くして、合口部の周辺部において硬質皮膜を厚く形成することを可能にしている。
特許4680380号公報
しかし、上記のようにモータを制御してピストンリングの自転速度を変える成膜方法を行う場合、モータに対して速度指令を与えてから回転テーブル上のピストンリングが所定の自転速度に達するまでにはタイムラグが生じる。そのタイムラグは、ピストンリングなどのワークの重量、または回転テーブルの状態や温度などにより成膜処理中に変化するので、ピストンリングの自転速度の制御に関する再現性が低くなる。そのため、ピストンリングの合口部およびその周辺部が蒸発源に向いているときにピストリンリングの自転速度を遅くする速度制御を確実に行うことが難しい。その結果、合口部の周辺部における膜厚を精度良く制御するのは非常に困難である。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ワークの自転速度を確実に制御することが可能なワーク回転装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためのものとして、本発明のワーク回転装置は、成膜される外周面を有するワークを、所定の自転軸の回りに自転させながら当該自転軸が延びる方向と異なる所定の移動方向へ移動させるワーク回転装置であって、本体部と、前記ワークを保持して前記自転軸の回りに自転可能な自転部と、前記自転部を前記移動方向へ移動させる自転部移動部と、を備え、前記自転部は、前記ワークを保持して前記自転軸の回りに自転可能な保持部と、前記保持部に連結され、当該保持部とともに前記自転軸の回りに自転可能であり、前記自転軸を中心とする第1のピッチ円に沿って並ぶ複数の歯を有する第1の自転歯列部と、前記保持部に連結され、当該前記保持部とともに前記自転軸の回りに自転可能であり、前記自転軸を中心とする前記第1のピッチ円よりも小さい第2のピッチ円に沿って並ぶ複数の歯を有する第2の自転歯列部とを有し、前記本体部は、前記第1の自転歯列部の歯に噛み合うことが可能な位置で前記移動方向に沿って並ぶ複数の歯を有する第1の本体歯列部と、前記第2の自転歯列部の歯に噛み合うことが可能な位置で前記移動方向に沿って並ぶ複数の歯を有する第2の本体歯列部とを有し、前記第1の自転歯列部、前記第2の自転歯列部、前記第1の本体歯列部、および前記第2の本体歯列部は、前記第1の自転歯列部が前記第1の本体歯列部に噛み合うときには、前記第2の自転歯列部が前記第2の本体歯列部との噛み合いが解除され、かつ、前記第2の自転歯列部が前記第2の本体歯列部に噛み合うときには、前記第1の自転歯列部が前記第1の本体歯列部との噛み合いが解除されていることが可能な位置に、それぞれ配置されていることを特徴とする。
かかる構成では、成膜されるワークを保持する自転部が自転部移動部によって所定の移動方向へ一定の速度で移動されたときに、自転部の第1および第2の自転歯列部のいずれかがそれぞれに対応する本体部の第1および第2の本体歯列部に択一的に噛み合うことによって、ワークを所定の移動方向へ一定の速度で移動させながら当該ワークの自転速度を変えて自転させることを可能にする。
具体的には、ワークを保持する自転部は、自転軸を中心とする第1のピッチ円に沿って配置された複数の歯を有する第1の自転歯列部と、前記第1のピッチ円よりも小さい第2のピッチ円に沿って配置された複数の歯を有する第2の自転歯列部を有する。したがって、第1の自転歯列部は、第2の自転歯列部よりも大きい曲率半径を有し(すなわち大径であり)、第2の自転歯列部は、第1の自転歯列部よりも小さい曲率半径を有する(すなわち小径である)。
ワークを保持する自転部が自転しながら前記移動方向に移動している間、大径の第1の自転歯列部が第1の本体歯列部に噛み合い、かつ、小径の第2の自転歯列部が第2の本体歯列部との噛み合いが解除された状態では、自転部および当該自転部に保持されるワークの自転速度が遅くなる。
一方、小径の第2の自転歯列部が第2本体歯列部に噛み合い、かつ、大径の第1の自転歯列部が第1の本体歯列部との噛み合いが解除された状態では、自転部およびワークの自転速度が速くなる。
このように、自転部の第1の自転歯列部および第2の自転歯列部がそれに対応する本体部の第1の本体歯列部および第2の本体歯列部に択一的に噛み合うことによって、当該自転部の自転速度を確実に変速することが可能になる。その結果、自転部に保持されたワークの自転速度を確実に制御することが可能になる。
前記移動方向は、前記自転軸と平行に延びる公転軸を回転中心として前記自転部が公転する方向であり、前記第1の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする第1の公転円に沿って配置され、前記第2の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする前記第1の公転円よりも大きい第2の公転円に沿って配置されているのが好ましい。
かかる構成によれば、ワークを保持する自転部が自転部移動部によって公転軸を回転中心として公転するときに、自転部の第1および第2の自転歯列部のいずれかがそれに対応する本体部の第1および第2の本体歯列部に択一的に噛み合うことによって、ワークを公転させながら当該ワークの自転速度を変えて自転させることを可能にすることが可能である。
具体的には、第1の本体歯列部は、公転軸を中心とする第1の公転円に沿って配置されている。第2の本体歯列部は、公転軸を中心とする前記第1の公転円よりも大きい第2の公転円に沿って配置されている。したがって、第1の本体歯列部は、第2の本体歯列部よりも小さい曲率半径を有し(すなわち小径であり)、第2の本体歯列部は、第1の本体歯列部よりも大きい曲率半径を有する(すなわち大径である)。
ワークを保持する自転部が自転しながら公転軸回りに公転している間、大径の第1の自転歯列部が小径の第1の本体歯列部に噛み合い、かつ、小径の第2の自転歯列部が大径の第2の本体歯列部との噛み合いが解除された状態では、自転部および当該自転部に保持されるワークの自転速度が遅くなる。
一方、小径の第2の自転歯列部が大径の第2本体歯列部に噛み合い、かつ、大径の第1の自転歯列部が小径の第1の本体歯列部との噛み合いが解除された状態では、自転部およびワークの自転速度が速くなる。
このように、自転部の第1の自転歯列部および第2の自転歯列部がそれに対応する本体部の第1の本体歯列部および第2の本体歯列部に択一的に噛み合うことによって、当該自転部は公転軸の回りに公転しながら自転速度を確実に変速することが可能になる。その結果、自転部に保持されたワークを公転させながら当該ワークの自転速度を確実に制御することが可能になる。
前記本体部は、前記第1の本体歯列部を有する第1の本体ギアと、前記第2の本体歯列部を有する第2の本体ギアとを有し、前記第1の本体ギアおよび前記第2の本体ギアは、前記公転軸に沿って同軸に連結され、前記自転部は、前記第1の自転歯列部を有する第1の自転ギアと、前記第2の自転歯列部を有する第2の自転ギアとを有し、前記第1の自転ギアおよび前記第2の自転ギアは、前記自転軸に沿って同軸に連結されているのが好ましい。
かかる構成によれば、本体部が具備する2枚の本体ギアの組み合わせ、および自転部が具備する2枚の自転ギアの組み合わせによって、ワークの自転速度を容易に設定することが可能である。したがって、回転装置の設計および製造を容易に行なうことが可能である。
前記本体部は、前記第1の本体歯列部および前記第2の本体歯列部が前記公転軸に直交する同一の平面に配置されるように形成された1枚の共通本体ギアを備え、前記自転部は、前記第1の自転歯列部および前記第2の自転歯列部が前記自転軸に直交する同一の平面に配置されるように形成された1枚の共通自転ギアを備えていてもよい。
かかる構成によれば、第1の本体歯列部および第2の本体歯列部は、1枚の共通本体ギアにおいて同一の平面に並ぶように配置され、かつ、第1の自転歯列部および第2の自転歯列部は、1枚の共通自転ギアにおいて同一の平面に並ぶように配置されるので、本体部および自転部の占有スペースが小さくなり、回転装置の小型化が可能になる。
前記移動方向は、前記自転軸と直交する方向へ直進する直進方向であり、前記第1の本体歯列部および前記第2の本体歯列部は、互いに平行に並んで前記直進方向に沿って直線的に配置されていてもよい。
かかる構成によれば、ワークを保持する自転部が自転部移動部によって自転軸と直交する方向へ真っ直ぐに移動されたときに、自転部の第1および第2の自転歯列部のいずれかがそれに対応する本体部の第1および第2の本体歯列部に択一的に噛み合うことによって、ワークを直進させながら自転速度を変えて自転させることを可能にすることが可能である。
すなわち、ワークを保持する自転部が自転しながら直進している間、大径の第1の自転歯列部が直線的に延びる第1の本体歯列部に噛み合い、小径の第2の自転歯列部が直線的に延びる第2の本体歯列部との噛み合いが解除された状態では、自転部および当該自転部に保持されるワークの自転速度が遅くなる。
一方、小径の第2の自転歯列部が第2本体歯列部に噛み合い、かつ、大径の第1の自転歯列部が第1の本体歯列部との噛み合いが解除された状態では、自転部およびワークの自転速度が速くなる。
このように、自転部は第1の自転歯列部および第2の自転歯列部がそれに対応する本体部の直線的に延びる第1の本体歯列部および第2の本体歯列部に択一的に噛み合うことによって、自転部は直進しながら自転速度を確実に変速することが可能になる。その結果、自転部に保持されたワークを直進させながら当該ワークの自転速度を確実に制御することが可能になる。
前記自転部は、前記自転軸を中心とする前記第1のピッチ円より小さく、かつ、前記第2のピッチ円よりも大きい第3のピッチ円に沿って配置された複数の歯を有する第3の自転歯列部をさらに有し、前記本体部は、前記第3の自転歯列部の歯に噛み合うことが可能な位置で前記移動方向に沿って並ぶ複数の歯を有する第3の本体歯列部とを有し、前記第3の自転歯列部および前記第3の本体歯列部は、前記第3の自転歯列部が前記第3の本体歯列部に噛み合うときには、前記第1の自転歯列部と前記第1の本体歯列部との噛み合いおよび前記第2の自転歯列部と前記第2の本体歯列部との噛み合いが解除され、かつ、前記第1の自転歯列部と前記第1の本体歯列部との噛み合いおよび前記第2の自転歯列部と前記第2の本体歯列部との噛み合いのいずれかが行われている状態のときには、前記第3の自転歯列部が前記第3の本体歯列部との噛み合いが解除されていることが可能な位置に配置されていてもよい。
かかる構成によれば、自転部が第1の自転歯列部および第2の自転歯列部の他に第3の自転歯列部をさらに有し、かつ、本体部が第3の本体歯列部をさらに有しているので、ワークの自転速度を多段階に変えることが可能であり、ワークの自転速度をより円滑に変えることが可能である。
本発明の成膜装置は、上記のワーク回転装置と、当該ワーク回転装置の前記自転部に保持される前記ワークの外周面に成膜するための材料となる粒子が飛び出す出射面を有する蒸発源と、を備え、前記自転部の前記移動方向への移動領域は、前記ワークの外周面のうち皮膜を厚く形成すべき特定部分を含む範囲が前記蒸発源が設けられている側に対向する第1領域と、当該第1領域以外の第2領域とを有し、前記第1の自転歯列部、前記第2の自転歯列部、前記第1の本体歯列部、および前記第2の本体歯列部は、前記第1領域では、前記第1の自転歯列部が前記第1の本体歯列部に噛み合い、かつ、前記第2の自転歯列部が前記第2の本体歯列部との噛み合いが解除され、一方、前記第2領域では、前記第2の自転歯列部が前記第2の本体歯列部に噛み合い、かつ、前記第1の自転歯列部が前記第1の本体歯列部との噛み合いが解除されていることが可能な位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、ワーク回転装置の自転部が自転しながら前記移動方向に移動している間、当該自転部に保持されたワークの外周面のうち皮膜を厚く形成すべき特定部分を含む範囲が蒸発源が設けられている側に対向している自転部の第1領域では、大径の第1の自転歯列部が第1の本体歯列部に噛み合い、かつ、小径の第2の自転歯列部が第2の本体歯列部との噛み合いが解除されるので、自転部および当該自転部に保持されるワークの自転速度が遅くなる。その結果、ワークの外周面のうち当該特定部分を含む範囲は、蒸発源の出射面に対向している時間が長くなり、当該特定部分に厚い皮膜を形成することが可能になる。
一方、ワークの外周面のうち前記特定部分が蒸発源が設けられている側に対向していない自転部の第2領域では、小径の第2の自転歯列部が第2本体歯列部に噛み合い、かつ、大径の第1の自転歯列部が第1の本体歯列部との噛み合いが解除されるので、自転部およびワークの自転速度が速くなる。その結果、特定部分以外の部分は、蒸発源の出射面に対向している時間が短くなり、当該特定部分以外の部分に形成される皮膜の厚さを低減することが可能になる。
このように、自転部は第1の自転歯列部および第2の自転歯列部がそれに対応する本体部の第1の本体歯列部および第2の本体歯列部に択一的に噛み合うことによって、ワークの特定部分が蒸発源が設けられている側に対向している間だけワークの自転速度を確実に減速させて、当該特定部分の成膜時間を長くし、当該特定部分に厚い皮膜を確実に形成することが可能になる。その結果、ワークの外周面における特定部分の成膜面の厚さと当該特定部分以外の部分の成膜面の厚さの比である膜厚比を精度良く制御することが可能である。
前記移動方向は、前記自転軸と平行に延びる公転軸を回転中心として前記自転部が公転する方向であり、前記第1の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする第1の公転円に沿って配置され、前記第2の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする前記第1の公転円よりも大きい第2の公転円に沿って配置され、前記蒸発源は、前記自転部が前記公転軸を回転中心として公転する軌道よりも外側に配置されているのが好ましい。
かかる構成によれば、蒸発源が自転部の公転軌道よりも外側に配置されているので、蒸発源を自転部および本体部に干渉しない位置に自由に配置することが可能である。また、蒸発源を本体部の外周を取り囲む位置に複数個配置することが可能である。
前記移動方向は、前記自転軸と平行に延びる公転軸を回転中心として前記自転部が公転する方向であり、前記第1の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする第1の公転円に沿って配置され、前記第2の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする前記第1の公転円よりも大きい第2の公転円に沿って配置され、前記蒸発源は、前記第1の公転円の内側に配置されていてもよい。
かかる構成によれば、蒸発源が第1の公転円の内側、すなわち、第1の本体歯列部および第2の本体歯列部よりも公転軸に近い位置に配置されているので、本体部および自転部の外周側に蒸発源を設置するためのスペースが不要になる。その結果、成膜装置の小型化が可能である。
前記蒸発源は、前記公転軸に沿うように配置され、前記出射面は、前記公転軸の周囲を取り囲むように配置され、前記公転軸から離れる方向を向くのが好ましい。
かかる構成によれば、公転軸に沿って配置された蒸発源によって、複数のワークを同時に成膜することが可能である。したがって、蒸発源の数が少なくて済む。
前記ワークは、円環の一部が途切れた形状を有する部材であり、前記ワークの特定部分は、前記円環の一部が途切れた部分の周辺部であってもよい。
上記のように成膜されるワークとして円環の一部が途切れた形状を有するピストンリングなどの部材が適用される場合には、ワークの特定部分である前記円環の一部が途切れた部分(いわゆる合口部)の周辺部が蒸発源の出射面に対して対向している間だけワークの自転速度を確実に減速させて、当該周辺部に厚い皮膜を確実に形成することが可能になる
以上説明したように、本発明のワーク回転装置によれば、ワークの自転速度を確実に制御することが可能である。
また、本発明の成膜装置によれば、上記のワーク回転装置を備えた成膜装置によって、ワークの特定部分に厚い皮膜を確実に形成することが可能になり、ワークの特定の向きの成膜面とそれ以外の成膜面の膜厚比を精度良く制御することが可能である。
本発明の実施形態に係わるワーク回転装置を備えた成膜装置の全体構成を示す断面図である。 図1のワーク回転装置の正面図である。 図2の自転部のワーク載置部およびそれに載置されたピストンリングの平面図である。 図1の成膜装置を用いたピストンリングの成膜方法を説明するための図であって、ピストンリングの合口部の向きおよびそれに関連する第1の本体歯列部と第1の自転歯列部との噛合状態ならびに第2の本体歯列部と第2の自転歯列部との噛合状態を示す説明図である。 本発明のワーク回転装置の変形例として、第1の本体歯列部および第2の本体歯列部を有する共通本体ギアと第1の自転歯列部および第2の自転歯列部を有する共通自転ギアとを備えたワーク回転装置の構成を概略的に説明した図である。 本発明のワーク回転装置の他の変形例として、複数の歯が直線的に並ぶ第1の本体歯列部および第2の本体歯列部の組とこれらの本体歯列部に択一的に噛み合うことが可能な第1の自転歯列部および第2の自転歯列部の組とを備えた構成を概略的に説明した図である。 本発明のワーク回転装置のさらに他の変形例として、3段階の自転速度の変更が可能な構成として、第1の本体歯列部、第2の本体歯列部、および第3の本体歯列部の組とこれら3つの本体歯列部に択一的に噛み合うことが可能な第1の自転歯列部、第2の自転歯列部、および第3の自転歯列部の組とを備えた構成を概略的に説明した図である。 本発明の成膜装置の変形例として、蒸発源が自転部の公転軌道の内側、例えば、公転軸S1に沿う位置に配置された構成を概略的に示す平面図である。 本発明の成膜装置で成膜されるワークの他の例としての切削加工用のバイトの斜視図である。 図9のバイトが自転部の保持部に立直状態で保持されている状態を示す斜視説明図である。
つぎに、図面を参照しながら本発明の成膜装置およびそれを用いた成膜方法の実施形態について詳細に説明する。
図1に示される成膜装置1は、成膜されるワークである複数のピストンリング100を自公転させながらピストンリング100の外周面にPVDなどによって成膜処理を行なう装置である。成膜装置1は、チャンバ2と、複数のピストンリング100を自公転させるワーク回転装置3と、ターゲット20を含む蒸発源19とを備えている。
チャンバ2は、中空の筐体からなり、具体的には、天壁2aと、天壁2aの下方に位置する底壁2bと、当該天壁2aおよび底壁2bの側縁同士を連結する複数の側壁2cと、側壁2cに形成された開口2dを開閉する扉2fとを有する。これら天壁2a、底壁2b、複数の側壁2c、および扉2fによって、密閉された空間2eが形成される。この空間2eには、ピストンリング100およびワーク回転装置3が収納される。扉2fが開かれた状態では、ワーク回転装置3を、ピストンリング100を保持した状態で開口2dを通してチャンバ2から外部へ取り出し、またはチャンバ2内部へ挿入することが可能である。
蒸発源19は、ターゲット20と、ターゲット20と電気的に接続されたターゲット電極21と、ターゲット電極21を介してターゲット20に電圧を印加するアーク電源22とを有する。
ターゲット20は、当該ワーク回転装置3の後述の自転部5に保持されるピストンリング100の外周面に成膜するための材料(例えば、例えば、窒化クロムや窒化チタンの硬質皮膜を形成するためのチタンやクロムなどの材料)を含む。ターゲット20は、当該材料となる粒子が飛び出す出射面20aを有する。蒸発源19のターゲット20は、自転部5が公転軸S1を回転中心として公転する軌道Q(図4参照)よりも外側に配置されている。
ワークであるピストンリング100は、図3に示されるように、円環の一部が途切れた形状を有する部材である。すなわち、ピストンリング100は、円環の一部が途切れた開口部分である合口部101を有する。ピストンリング100の外周面には、摩耗防止のために上記の成膜装置1によって硬質皮膜が形成される。ピストンリング100の外周面のうち皮膜を厚く形成すべき周辺部102は、エンジンの使用時にシリンダの内部で最も磨耗が激しい合口部101の周辺部102である。
ピストンリング100の成膜を行う場合、チャンバ2内部がほぼ真空状態まで減圧された環境下で、ピストンリング100は、ワーク回転装置3を介してバイアス電位印加部23からバイアス電位が印加される。この状態で、アーク電源22からターゲット20へ電圧を印加することにより、ターゲット20の出射面20aから当該ターゲット20の材料が蒸発して高エネルギーの粒子が飛び出てピストンリング100の外周面に衝突することにより、ピストンリング100の外周面に被膜が形成される。
ワーク回転装置3は、成膜プロセス中に、ピストンリング100を所定の自転軸S2の回りに自転させながら当該自転軸S2が延びる方向と異なる所定の移動方向として公転方向Sへ移動させる装置である。ここで、公転方向Sとは、自転軸S2と平行に延びる公転軸S1を回転中心として自転部5が公転する方向のことである。
図1〜2に示されるように、ワーク回転装置3は、本体部4と、積層された複数のピストンリング100を保持して自転軸S2の回りに自転可能な複数の自転部5と、当該複数の自転部5を公転方向Sへ回転移動させる自転部移動部6とを備える。自転部5は、自転軸S2が円環状のピストンリング100の中心に位置するように、当該ピストンリング100を保持する。
ワーク回転装置3の本体部4は、チャンバ2の内部に静止状態で配置され、図示されない固定手段によってチャンバ2の内部に固定される。
本体部4は、具体的には、台車部7と、当該台車部7に搭載された第1の本体ギア8、第2の本体ギア9、および円形案内部10とを備えている。第2の本体ギア9は、第1の本体ギア8の上に配置されている。第1の本体ギア8および第2の本体ギア9は、公転軸S1に沿って同軸に連結されている。
台車部7は、テーブルベース7aと、当該テーブルベース7aの下部に取り付けられた複数の車輪7bとを備えている。車輪7bがチャンバ2外部の平坦面(例えば、ワーク回転装置3を搬送するための搬送台車の載置面、または建物の床面など)の上を転がることにより、ワーク回転装置3は、チャンバ2の内部と外部との間を自由に移動することが可能である。なお、車輪7bを省略して、テーブルベース7aがチャンバ2の底壁2bに固定されていてもよい。
テーブルベース7aの上面には、環状の突起7cが形成されている。第1の本体ギア8および第2の本体ギア9は、テーブルベース7a上面の環状の突起7cの上端に回転できないように固定されている。
図2および図4に示されるように、第1の本体ギア8は、その外周面の全周において、公転方向Sに沿って並ぶ複数の歯を有する第1の本体歯列部31を有する。第1の本体歯列部31は、公転軸S1を中心とする第1の公転円D1に沿って配置される。第1の公転円D1は、第1の本体歯列部31のピッチ円である。
第2の本体ギア9は、第1の本体ギア8よりも大きい直径を有する歯車である。第2の本体ギア9は、公転方向Sに沿って並ぶ複数の歯を有する第2の本体歯列部32を有する。具体的には、その外周面の全周において、第2の本体歯列部32は、公転軸S1を中心とする第2の公転円D2に沿って配置される。第2の公転円D2の直径は、上記の第1の公転円D1よりも大きい。第2の公転円D2は、第2の本体歯列部32のピッチ円である。
したがって、第2の本体歯列部32は、第1の本体歯列部31よりも大きい曲率半径を有する(すなわち大径である)。言い換えれば、第1の本体歯列部31は、第2の本体歯列部32よりも小さい曲率半径を有する(すなわち小径である)。
第1の本体ギア8および第2の本体ギア9の上面には、後述の自転移動部6の回転テーブル15を公転軸S1を回転中心として回転できるように当該公転軸S1の周方向に案内する円形案内部10が取り付けられている。円形案内部10は、環状のレール部10aと、当該レール部10aに沿って設けられた複数のボール10bとを備えている。レール部10aは、第1の本体ギア8および第2の本体ギア9の上面に固定されている。ボール10bは、レール部10aの上面において当該レール部10aに沿って転動自在に配置されている。
自転部移動部6は、複数の自転部5のそれぞれの自転を許容しながら当該複数の自転部5を公転方向Sへ回転移動させる構成を有する。具体的は、自転部移動部6は、回転テーブル15と、駆動モータ16と、駆動モータ16の駆動軸16aに固定された駆動ギア17と、駆動ギア17に噛み合う従動ギア18とを有する。
回転テーブル15は、円盤状の部材であり、複数の自転部5を自転可能に保持するための複数の貫通孔15aを有する。複数の貫通孔15aは、公転軸S1回りに等間隔に配置されている。回転テーブル15は、上記の本体部4の円形案内部10のボール10bによって下方から支持されている。そのため、ボール10bがレール部10a上で転がることによって、回転テーブル15が公転軸S1を回転中心として回転することが許容される。このように構成された回転テーブル15は、ピストンリング100を保持する自転部5とともにで公転軸S1回りに回転することが可能である。
回転テーブル15は、その下面から公転軸S1に沿って下方に延びる軸部15aを有する。軸部15aは、上記のテーブルベース7aおよび第1の本体ギア8および第2の本体ギア9の中央部にそれぞれ形成された貫通孔を通してテーブルベース7aの下方に突出している。これら貫通孔の内径は、軸部15aの回転を許容する大きさに設定されている。軸部15aの下端には、従動ギア18が当該軸部15aと同軸に固定されている。従動ギア18は、チャンバ2内部に配置された駆動ギア17に噛み合っている。駆動ギア17は、モータ16の駆動軸16aに連結されている。モータ16の回転駆動力は、駆動ギア17および従動ギア18を介して回転テーブル15に伝達され、当該回転テーブル15および自転部5を公転軸S1回りに公転させる。
自転部5は、図2〜4に示されるように、保持部11と、第1の自転ギア13と、当該保持部11と第1の自転ギア13とを連結する軸部12と、第2の自転ギア14とを有する。第1の自転ギア13および第2の自転ギア14は、自転軸S2に沿って同軸に連結されている。
軸部12は、回転テーブル15の貫通孔15aに回転可能に挿入されている。これにより、自転部5は、回転テーブル15の貫通孔15aが形成された部分において回転自在に支持される。自転部5は、回転テーブル15とともに公転軸S1を回転中心として公転方向Sへ公転することが可能である。自転部5は、公転している間、第1の自転ギア13および第2の自転ギア14が上記の本体部4の第1の本体ギア8および第2の本体ギア9に択一的に噛み合うことにより、自転軸S2を回転中心として自転することが可能である。なお、択一的な噛み合いについては、後段で詳述する。
保持部11は、ピストンリング100を保持して自転軸S2の回りに自転可能な構成を有する。保持部11は、積層された複数のピストンリング100が載置される台座部11aと、自転軸S2に沿って延びる円柱状の支柱部11bとを有する。支柱部11bは、積層された複数のピストンリング100の内部に挿入されることにより、これらのピストンリング100を内側から保持する。支柱部11bの周面には、ピストンリング100の合口部101の周辺部102の向く方向を決めるためのリブ11b1が形成されている。リブ11b1は、自転軸S2と同じ方向に延び、ピストンリング100の合口部101に挿入可能な幅を有する。
第1の自転ギア13は、軸部12を介して保持部11に連結され、当該保持部11とともに自転軸S2の回りに自転可能である。第1の自転ギア13は、自転軸S2を中心とする第1のピッチ円C1に沿って並ぶ複数の歯を有する第1の自転歯列部33を有する。
図2および図4に示されるように、第1の自転歯列部33は、第1の自転ギア13の外周面の一部に形成されている。当該第1の自転ギア13の外周面の他の部分は、滑らかな円弧状の周面が形成されている。
第2の自転ギア14は、保持部11に連結され、当該保持部11とともに自転軸S2の回りに自転可能であり、自転軸S2を中心とする第1のピッチ円C1よりも小さい第2のピッチ円C2に沿って並ぶ複数の歯を有する第2の自転歯列部34を有する。したがって、第2の自転歯列部34は、第1の自転歯列部33よりも小さい曲率半径を有する(すなわち小径である)。言い換えれば、第1の自転歯列部33は、第2の自転歯列部34よりも大きい曲率半径を有する(すなわち大径である)。
図2および図4に示されるように、第2の自転歯列部34は、第2の自転ギア14の外周面のうち上記の第1の自転歯列部33と当該第2の自転ギア14の径方向において重なり合わない範囲に形成されている。当該第の自転ギア14の外周面のうち上記の第1の自転歯列部33と上記の径方向において重なり合う範囲には、滑らかな円弧状の周面が形成されている。
これらの第1の自転歯列部33および第2の自転歯列部34は、本体部4における第1の本体歯列部31および第2の本体歯列部32に対して択一的に噛み合うことが可能な位置に配置されている。第1の自転歯列部33および第2の自転歯列部34の具体的な配置は、以下のようにして決定される。
図4に示されるように、自転部5の公転方向Sへの移動領域は、ピストンリング100の外周面のうち皮膜を厚く形成すべき特定部分である合口部101の周辺部102を含む範囲がターゲット20が設けられている側(具体的には、自転部5の公転軌道Qの外側)に対向する第1領域P1と、当該第1領域P1以外の第2領域P2とを有する。第2領域P2では、当該合口部101の周辺部102を含む範囲がターゲット20のが設けられている側に対向していない。
したがって、第1の自転歯列部33、第2の自転歯列部34、第1の本体歯列部31、および第2の本体歯列部32は、第1領域P1では、第1の自転歯列部33が第1の本体歯列部31に噛み合い、かつ、第2の自転歯列部34が第2の本体歯列部32との噛み合いが解除され、一方、第2領域P2では、第2の自転歯列部34が第2の本体歯列部32に噛み合い、かつ、第1の自転歯列部33が第1の本体歯列部31との噛み合いが解除されていることが可能な位置にそれぞれ配置されている。
すなわち、第1の自転歯列部33は、第1の自転ギア13の外周面において、第1領域P1において第1の本体ギア8の第1の本体歯列部31に噛み合う範囲に配置されている。具体的には、図2および図4に示されるように、第1の自転歯列部33は、自転軸S2に関して、ピストンリング100の合口部101の周辺部102および当該周辺部102の方向を決めるリブ11b1と反対側の位置を向くように配置されている。
第2の自転歯列部34は、第2の自転ギア14の外周面において、第2領域P2において第2の本体ギア9の第2の本体歯列部32に噛み合う範囲に配置されている。
上記のように構成された本実施形態のワーク回転装置3では、成膜されるピストンリング100を保持する自転部5が自転部移動部6からの駆動力を受けて公転軸S1を回転中心として所定の公転方向Sへ一定の回転速度で公転するときに、自転部5の第1自転歯列部33および第2の自転歯列部34のいずれかがそれぞれに対応する本体部4の第1の本体歯列部31および第2の本体歯列部32に択一的に噛み合うことによって、ピストンリング100を一定の回転速度で公転させながら当該ピストンリング100の自転速度を変えて自転させることを可能にする。
具体的には、ピストンリング100を保持する自転部5が自転しながら公転軸S1を回転中心として公転している間、大径の第1の自転歯列部33が小径の第1の本体歯列部31に噛み合い、かつ、小径の第2の自転歯列部34が大径の第2の本体歯列部32との噛み合いが解除される状態になったときには、自転部5および当該自転部5に保持されるピストンリング100の自転速度が遅くなる。
一方、小径の第2の自転歯列部34が大径の第2本体歯列部に噛み合い、かつ、大径の第1の自転歯列部33が小径の第1の本体歯列部31との噛み合いが解除された状態になったときには、自転部5およびピストンリング100の自転速度が速くなる。
ここで、ピストンリング100の自転速度の比率は以下のようにして考えられる。まず、半径r1の第1の自転歯列部33および当該半径r1よりも小さい半径r2の第2の自転歯列部34がそれぞれ自転軸S2の全周に亘って形成されていると仮定する。ピストンリング100が公転軸S1の周囲を半径Rの公転軌道Qに沿って1回公転する間、大径(半径r1)の第1の自転歯列部33がそれに対応する第1の本体歯列部31に噛み合う場合のピストンリング100の自転数は、(R―r1)/r1+1=R/r1回である。
一方、小径(半径r2)の第2の自転歯列部34がそれに対応する第2の本体歯列部32に噛み合う場合のピストンリング100の自転数は、(R―r2)/r2+1=R/r2回である。したがって、大径(半径r1)の第1の自転歯列部33が噛み合うときの自転数(R/r1)は、小径(半径r2)の第2の自転歯列部34が噛み合うときの自転数(R/r2)よりも小さい。したがって、自転数の逆比である自転速度を考えた場合、大径(半径r1)の第1の自転歯列部33が噛み合うときの自転速度v1と小径(半径r2)の第2の自転歯列部34が噛み合うときの自転速度v2との比は、v1/v2=r2/r1になる。
このように、自転部5の第1の自転歯列部33および第2の自転歯列部34がそれに対応する本体部4の第1の本体歯列部31および第2の本体歯列部32に択一的に噛み合うことによって、当該自転部5は公転軸の回りに公転しながら自転速度を確実に変速することが可能になる。その結果、自転部5に保持されたピストンリング100を公転させながら当該ピストンリング100の自転速度を確実に制御することが可能になる。
したがって、上記のように構成されたワーク回転装置3を備えた成膜装置1では、ピストンリング100の外周面において皮膜を厚く形成すべき合口部101の周辺部102における成膜厚さと他の部分との成膜厚さとの比である膜厚比を精度良く制御することが可能になる。すなわち、図4に示されるように、ワーク回転装置3の自転部5が自転しながら公転方向Sに移動している間、当該自転部5に保持されたピストンリング100の外周面のうち皮膜を厚く形成すべき合口部101の周辺部102を含む範囲が蒸発源19のターゲット20が設けられている側(具体的には、自転部5の公転軌道Qの外側)に対向している第1領域P1では、大径の第1の自転歯列部33が第1の本体歯列部31に噛み合い、かつ、小径の第2の自転歯列部34が第2の本体歯列部32との噛み合いが解除されるので、自転部5および当該自転部5に保持されるピストンリング100の自転速度が遅くなる。その結果、ピストンリング100の外周面のうち合口部101の周辺部102を含む範囲は、蒸発源19のターゲット20の出射面20aに対向している時間が長くなり、当該周辺部102に厚い皮膜を形成することが可能になる。
例えば、複数のピストンリング100が自転しながら公転軸S1回りを公転するとき、各ピストンリング100の周辺部102を含む範囲が公転軌道Qの外側を向いたときに自転速度が遅くなる。このとき、複数のピストンリング100のうちの少なくとも1個のピストンリング100の周辺部102を含む範囲がターゲット20の出射面20aに対向することにより、当該周辺部102に厚い皮膜を形成することが可能になる。
なお、複数のピストンリング100について周辺部102とそれ以外の膜厚比を精度良く(すなわち、膜厚比が自転ピッチ円半径比r2/r1になるように)制御するためには、複数のピストンリング100の成膜条件(すなわち、周辺部102がターゲット20の出射面20aを向く時間や頻度など)を同等の条件にする必要がある。そのためには、特定のピストンリング100のみの周辺部102が出射面20aに頻繁に向かないように、自公転のためのギア比、すなわち、自転部5の第1の自転歯列部33と本体部4の第1の本体歯列部31とのギア比、および第2の自転歯列部34と第2の本体歯列部32とのギア比をそれぞれ整数ではないギア比(例えば、1.33など)に設定すればよい。これにより、複数のピストンリング100のそれぞれのピストンリング100が公転軌道Qの外側を向く位置は、1公転ごとに公転方向Sにずれていくので、複数のピストンリング100の成膜条件(すなわち、周辺部102がターゲット20の出射面20aを向く時間や頻度など)を同等の条件にすることが可能になる。その結果、ターゲット20もピストンリング100の移動方向(すなわち公転方向S)に自由に配置することが可能である。一方、ピストンリング100の外周面のうち当該周辺部102がターゲット20が設けられている側に対向していない自転部5の第2領域P2では、小径の第2の自転歯列部34が第2本体歯列部に噛み合い、かつ、大径の第1の自転歯列部33が第1の本体歯列部31との噛み合いが解除されるので、自転部5およびピストンリング100の自転速度が速くなる。その結果、周辺部102以外の部分は、ターゲット20の出射面20aに対向している時間が短くなり、当該周辺部102以外の部分に形成される皮膜の厚さを低減することが可能になる。
このように、自転部5は第1の自転歯列部33および第2の自転歯列部34がそれに対応する本体部4の第1の本体歯列部31および第2の本体歯列部32に択一的に噛み合うことによって、ピストンリング100の周辺部102がターゲット20が設けられている側(具体的には、自転部5の公転軌道Qの外側)に対向している間だけピストンリング100の自転速度を確実に減速させて、当該周辺部102の成膜時間を長くし、当該周辺部102に厚い皮膜を確実に形成することが可能になる。その結果、ピストンリング100の外周面における周辺部102の成膜面の厚さと当該周辺部102以外の部分の成膜面の厚さの比である膜厚比を精度良く制御することが可能である。
また、本実施形態の成膜装置1では、蒸発源19のターゲット20が自転部5の公転軌道Qよりも外側に配置されているので、ターゲット20を自転部5および本体部4に干渉しない位置に自由に配置することが可能である。また、ターゲット20を本体部4の外周を取り囲む位置に複数個配置することが可能である。
本実施形態のワーク回転装置3では、本体部4が第1の本体ギア8および第2の本体ギア9を有し、自転部5が第1の自転ギア13および第2の自転ギア14を有している。そのため、本体部4が具備する2枚の本体ギア8、9の組み合わせ、および自転部5が具備する2枚の自転ギア13、14の組み合わせによって、ピストンリング100の自転速度を容易に設定することが可能である。したがって、ワーク回転装置3の設計および製造を容易に行なうことが可能である。
(変形例)
(A)
上記の実施形態のワーク回転装置3は、本体部4が第1の本体ギア8および第2の本体ギア9を有し、自転部5が第1の自転ギア13および第2の自転ギア14を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、本体部4が第1の本体歯列部31および第2の本体歯列部32を有し、自転部5が第1の自転歯列部33および第2の自転歯列部34を有していれば他の構成でもよい。
例えば、本発明のワーク回転装置の変形例として、図5に示されるように、本体部4が第1の本体歯列部31および第2の本体歯列部32が公転軸に直交する同一の平面に配置されるように形成された1枚の共通本体ギア35を備え、それに対応して、自転部5が、第1の自転歯列部33および第2の自転歯列部34が自転軸S2に直交する同一の平面に配置されるように形成された1枚の共通自転ギア36を備えていてもよい。
第1の本体歯列部31は、共通本体ギア35の外周面のうち、ピストンリング100の合口部101の周辺部102を含む範囲がターゲット20が設けられている側(具体的には、自転部5の公転軌道Qの外側)に対向する第1領域P1の範囲に形成されている。また、第2の本体歯列部32は、周辺部102が出射面20aに対向しない第2領域P2の範囲に形成されている。
図5に示されるワーク回転装置の構成においても、上記図4に示される成膜装置と同様に、自転部5は第1の自転歯列部33および第2の自転歯列部34がそれに対応する本体部4の第1の本体歯列部31および第2の本体歯列部32に択一的に噛み合うことによって、ピストンリング100の周辺部102がターゲット20の出射面20aに対向している間だけピストンリング100の自転速度を確実に減速させて、当該周辺部102の成膜時間を長くし、当該周辺部102に厚い皮膜を確実に形成することが可能になる。
この図5に示されるワーク回転装置の構成では、第1の本体歯列部31および第2の本体歯列部32は、1枚の共通本体ギア35において同一の平面に並ぶように配置されている。しかも、第1の自転歯列部33および第2の自転歯列部34は、1枚の共通自転ギア36において同一の平面に並ぶように配置されている。したがって、本体部4および自転部5の占有スペースが小さくなり、回転装置の小型化が可能になる。
(B)
上記の実施形態のワーク回転装置3では、図4に示されるように、固定側の本体部4の第1の本体歯列部31および第2の本体歯列部32が公転軸S1を中心とする第1および第2の公転円D1、D2に沿って円弧状に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の他の変形例として、図6に示されるワーク回転装置は、自転部5が自転軸S2と直交する方向へ直進しながら自転することが可能な構成であってもよい。この場合の自転部5の直進方向は、自転軸S2と直交する方向で、かつ、ターゲット20の出射面20aに沿う方向に設定される。
図6のワーク回転装置の構成では、本体部4の第1の本体歯列部41および第2の本体歯列部42は、互いに平行に並んで自転部5の直進方向に沿って直線的に配置されている。例えば、平行に延びる2本の直線状のラックのそれぞれにおいて、上記の第1の本体歯列部41および第2の本体歯列部42が形成されている。さらに、図6に示されるワーク回転装置は、自転部5を直進方向へ移動させる自転部移動部43を備える。自転部移動部43は、直進方向へ移動可能(往復直線移動または一方向への直線移動どちらでもよい)な構成を有しており、自転部5の軸部12を回転自在に支持する支持孔43aを有する。自転部移動部43は、軸部12から自転部5へ直進駆動力を与えることにより、自転部5を自転させながら直線移動(往復直線移動または一方向への直線移動)させることが可能である。
図6に示されるワーク回転装置の構成では、ピストンリング100を保持する自転部5が自転部移動部43によって自転軸S2と直交する方向へ真っ直ぐに移動されたときに、自転部5の第1および第2の自転歯列部33、34のいずれかがそれに対応する本体部4の第1および第2の本体歯列部32に択一的に噛み合うことによって、ピストンリング100を直進させながら自転速度を変えて自転させることを可能にすることが可能である。
すなわち、ピストンリング100を保持する自転部5が自転しながら直進している間、ピストンリング100の合口部101の周辺部102がターゲット20が設けられている側(具体的には、第1の本体歯列部41および第2の本体歯列部42に対して反対側)に対向する第1領域P1では、大径の第1の自転歯列部33が直線的に延びる第1の本体歯列部41に噛み合い、かつ、小径の第2の自転歯列部34が直線的に延びる第2の本体歯列部42との噛み合いが解除された状態では、自転部5および当該自転部5に保持されるピストンリング100の自転速度が遅くなる。
一方、周辺部102が出射面20aに対向しない第2領域P2では、小径の第2の自転歯列部34が第2の本体歯列部42に噛み合い、かつ、大径の第1の自転歯列部33が第1の本体歯列部41との噛み合いが解除された状態になり、自転部5およびピストンリング100の自転速度が速くなる。
このように、自転部5は第1の自転歯列部33および第2の自転歯列部34がそれに対応する本体部4の直線的に延びる第1の本体歯列部41および第2の本体歯列部42に択一的に噛み合うことによって、自転部5は直進しながら自転速度を確実に変速することが可能になる。その結果、自転部5に保持されたピストンリング100を直進させながら当該ピストンリング100の自転速度を確実に制御することが可能になる。
自転部移動部43は、自転部5を自転させながら往復直線移動させることにより、ピストンリング100の自転および直進移動を連続的に実行することが可能になり、ピストンリング100をターゲット20の出射面20aの前を複数回横切って当該ピストンリング100の成膜を行うことが可能である。
(C)
上記の実施形態のワーク回転装置3は、ピストンリング100の自転速度を2段階に変更する構成を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、多段階(3段階以上)にピストンリング100の自転速度を変更可能な構成であってもよい。
図7に示されるように、本発明の他の変形例のワーク回転装置では、自転部5は、第1および第2の自転ギア13、14の他に、第3の自転ギア51を有する。第3の自転ギア51は、第3の自転歯列部52を有する。第3の自転歯列部52は、自転軸S2を中心とする第1のピッチ円C1より小さく、かつ、第2のピッチ円C2よりも大きい第3のピッチ円C3に沿って配置された複数の歯を有する。第3の自転歯列部52は、自転軸S2の周方向において、第1および第2の自転歯列部33、34が形成されていない範囲に形成されている。
一方、本体部4は第1および第2の本体ギア8、9の他に、第3の本体ギア53を有する。第3の本体ギア53は、第3の本体歯列部54を有する。第3の本体歯列部54は、第3の自転歯列部52の歯に噛み合うことが可能な位置で公転方向Sに沿って並ぶ複数の歯を有する。第3の自転歯列部52および第3の本体歯列部54は、第3の自転歯列部52が第3の本体歯列部54に噛み合うときには、第1の自転歯列部33と第1の本体歯列部31との噛み合いおよび第2の自転歯列部34と第2の本体歯列部32との噛み合いが解除され、かつ、第1の自転歯列部33と第1の本体歯列部31との噛み合いおよび第2の自転歯列部34と第2の本体歯列部32との噛み合いのいずれかが行われている状態のときには、第3の自転歯列部52が第3の本体歯列部54との噛み合いが解除されていることが可能な位置に配置されている。
図7に示されるワーク回転装置の構成によれば、自転部5が第1の自転歯列部33および第2の自転歯列部34の他に第3の自転歯列部52をさらに有し、かつ、本体部4が当該第3の自転歯列部52に対応する第3の本体歯列部54をさらに有している。そのため、ピストンリング100の自転速度を多段階に変えることが可能であり、ピストンリング100の自転速度をより円滑に変えることが可能である。
(D)
上記の実施形態の成膜装置1では蒸発源19のターゲット20が自転部5の公転軌道Qの外側に配置されているが、本発明はこれに限定されるのものではない。本発明の成膜装置1の他の変形例として、図8に示されるように、蒸発源のターゲット61は、第1の公転円D1の内側に配置されていてもよい。
図8に示される成膜装置では、ターゲット61は、公転軸Sに沿うように配置された円筒状の出射面62を有する。円筒状の出射面62は、公転軸S1の周囲を取り囲むように配置され、公転軸S1から離れる方向を向く。
図8に示される成膜装置では、自転部5の移動領域のうちの第1領域P1では、ピストンリング100の合口部101の周辺部102は、ターゲット61が設けられている側、すなわち、公転軌道Qの内側を向き、そのとき円筒状の出射面62を向く。第1の自転歯列部33は、第1の自転ギア13の外周面において、当該第1領域P1において、第1の本体ギア8の第1の本体歯列部31に噛み合う範囲に配置されている。具体的には、第1の自転歯列部33は、自転軸S2に関して、ピストンリング100の合口部101の周辺部102と同じ側に配置されている。この構成であっても、ピストンリング100の合口部101の周辺部102がターゲット61が設けられている側を向く第1領域P1において、大径の第1の自転歯列部33がそれに対応する第1の本体歯列部31に噛み合うことにより、ピストンリング100の自転速度を遅くして、当該周辺部102の成膜時間を長くして、厚い皮膜を形成することが可能である。
第2の自転歯列部34は、上記図4の第2の第2の自転歯列部34と同様に、自転ギア14の外周面において、第2領域P2において第2の本体ギア9の第2の本体歯列部33に噛み合う範囲に配置されている。
図8に示される成膜装置では、蒸発源のターゲット61が第1の公転円D1の内側、すなわち、第1の本体歯列部31および第2の本体歯列部32よりも公転軸S1に近い位置に配置されている。そのため、本体部4および自転部5の外周側に蒸発源のターゲットを設置するためのスペースが不要になる。その結果、成膜装置1の小型化が可能である。
また、図8に示される成膜装置1では、公転軸S1に沿って配置されたターゲット61によって、複数のピストンリング100を同時に成膜することが可能である。したがって、蒸発源のターゲットの数が少なくて済む。
なお、蒸発源のターゲットは、第1の公転円の内側に配置されていれば、公転軸S1からずれた位置に配置されていてもよい。その場合も本体部4および自転部5の外周側に蒸発源のターゲットを設置するためのスペースが不要になり、成膜装置1の小型化が可能である。
(E)
上記実施形態では、成膜装置で成膜されるワークの一例として、ピストンリング100を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の成膜装置で成膜されるワークには、当該ワークの外周面のうち皮膜を厚く形成すべき特定部分を有するものであれば、円筒状のワークや種々の形状のワークが含まれる。円筒状のワークの場合、自転軸が円筒状のワークの中心にあるようにワーク回転装置の自転部を構成すればよい。
例えば、図9に示される切削加工用のバイト200をワークとして採用することも可能である。バイト200は、高速回転する切削加工対象(回転ワーク)に当接するすくい面201と、当該回転ワークとの接触を避ける方向に延びる逃げ面202と、当該すくい面201と逃げ面202との間に形成された鋭利な切れ刃203とを有する。バイト200のすくい面201は、回転ワークに当接して摩耗しやすいので、厚い硬質皮膜が必要である。他方、バイト200のすくい面201以外の部分に硬質皮膜を厚く形成すると、バイト200が折れやすくなるので、硬質皮膜を厚くしない方が好ましい。
このようなバイト200の成膜を行う場合に、上記の実施形態の成膜装置を用いれば、バイト200のすくい面201における硬質皮膜の膜厚を厚くする制御が可能である。例えば、図10に示されるように、複数のバイト200は、複数の自転部5の保持部11にそれぞれ立直状態で取り付られる。自転部移動部6の回転テーブル15を回転すれば、自転部5に保持されたバイト200は、上記の成膜装置のように、バイト200の自転速度を変えながら自公転することが可能である。この場合も、自転部5の移動領域のうち、バイト200のすくい面201がターゲット20が設けられている側に対向している範囲では、バイト200の自転速度を遅くして、すくい面201の成膜時間を長くして形成される皮膜の厚さを厚くする。一方、すくい面201がターゲット20が設けられている側に対向していない範囲では、バイト200の自転速度を速くして、すくい面201以外の部分における皮膜の厚さを抑えることが可能である。
1 成膜装置
3 ワーク回転装置
4 本体部
5 自転部
6、43 自転部移動部
8 第1の本体ギア
9 第2の本体ギア
11 保持部
13 第1の自転ギア
14 第2の自転ギア
19 蒸発源
20、61 ターゲット
20a、62 出射面
31、41 第1の本体歯列部
32、42 第2の本体歯列部
33 第1の自転歯列部
34 第2の自転歯列部
35 本体共通ギア
36 自転共通ギア
52 第3の自転歯列部
54 第3の本体歯列部
S1 公転軸
S2 自転軸
C1 第1のピッチ円
C2 第2のピッチ円
D1 第1の公転円
D2 第2の公転円

Claims (11)

  1. 成膜される外周面を有するワークを、所定の自転軸の回りに自転させながら当該自転軸が延びる方向と異なる所定の移動方向へ移動させるワーク回転装置であって、
    本体部と、
    前記ワークを保持して前記自転軸の回りに自転可能な自転部と、
    前記自転部を前記移動方向へ移動させる自転部移動部と、
    を備え、
    前記自転部は、前記ワークを保持して前記自転軸の回りに自転可能な保持部と、前記保持部に連結され、当該保持部とともに前記自転軸の回りに自転可能であり、前記自転軸を中心とする第1のピッチ円に沿って並ぶ複数の歯を有する第1の自転歯列部と、前記保持部に連結され、当該前記保持部とともに前記自転軸の回りに自転可能であり、前記自転軸を中心とする前記第1のピッチ円よりも小さい第2のピッチ円に沿って並ぶ複数の歯を有する第2の自転歯列部とを有し、
    前記本体部は、前記第1の自転歯列部の歯に噛み合うことが可能な位置で前記移動方向に沿って並ぶ複数の歯を有する第1の本体歯列部と、前記第2の自転歯列部の歯に噛み合うことが可能な位置で前記移動方向に沿って並ぶ複数の歯を有する第2の本体歯列部とを有し、
    前記第1の自転歯列部、前記第2の自転歯列部、前記第1の本体歯列部、および前記第2の本体歯列部は、前記第1の自転歯列部が前記第1の本体歯列部に噛み合うときには、前記第2の自転歯列部が前記第2の本体歯列部との噛み合いが解除され、かつ、前記第2の自転歯列部が前記第2の本体歯列部に噛み合うときには、前記第1の自転歯列部が前記第1の本体歯列部との噛み合いが解除されていることが可能な位置に、それぞれ配置されている、
    ワーク回転装置。
  2. 前記移動方向は、前記自転軸と平行に延びる公転軸を回転中心として前記自転部が公転する方向であり、
    前記第1の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする第1の公転円に沿って配置され、
    前記第2の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする前記第1の公転円よりも大きい第2の公転円に沿って配置されている、
    請求項1に記載のワーク回転装置。
  3. 前記本体部は、前記第1の本体歯列部を有する第1の本体ギアと、前記第2の本体歯列部を有する第2の本体ギアとを有し、前記第1の本体ギアおよび前記第2の本体ギアは、前記公転軸に沿って同軸に連結され、
    前記自転部は、前記第1の自転歯列部を有する第1の自転ギアと、前記第2の自転歯列部を有する第2の自転ギアとを有し、前記第1の自転ギアおよび前記第2の自転ギアは、前記自転軸に沿って同軸に連結されている、
    請求項2に記載のワーク回転装置。
  4. 前記本体部は、前記第1の本体歯列部および前記第2の本体歯列部が前記公転軸に直交する同一の平面に配置されるように形成された1枚の共通本体ギアを備え、
    前記自転部は、前記第1の自転歯列部および前記第2の自転歯列部が前記自転軸に直交する同一の平面に配置されるように形成された1枚の共通自転ギアを備えている、
    請求項2に記載のワーク回転装置。
  5. 前記移動方向は、前記自転軸と直交する方向へ直進する直進方向であり、
    前記第1の本体歯列部および前記第2の本体歯列部は、互いに平行に並んで前記直進方向に沿って直線的に配置されている、
    請求項1に記載のワーク回転装置。
  6. 前記自転部は、前記自転軸を中心とする前記第1のピッチ円より小さく、かつ、前記第2のピッチ円よりも大きい第3のピッチ円に沿って配置された複数の歯を有する第3の自転歯列部をさらに有し、
    前記本体部は、前記第3の自転歯列部の歯に噛み合うことが可能な位置で前記移動方向に沿って並ぶ複数の歯を有する第3の本体歯列部とを有し、
    前記第3の自転歯列部および前記第3の本体歯列部は、前記第3の自転歯列部が前記第3の本体歯列部に噛み合うときには、前記第1の自転歯列部と前記第1の本体歯列部との噛み合いおよび前記第2の自転歯列部と前記第2の本体歯列部との噛み合いが解除され、かつ、前記第1の自転歯列部と前記第1の本体歯列部との噛み合いおよび前記第2の自転歯列部と前記第2の本体歯列部との噛み合いのいずれかが行われている状態のときには、前記第3の自転歯列部が前記第3の本体歯列部との噛み合いが解除されていることが可能な位置に配置されている、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のワーク回転装置。
  7. 請求項1に記載のワーク回転装置と、
    当該ワーク回転装置の前記自転部に保持される前記ワークの外周面に成膜するための材料となる粒子が飛び出す出射面を有する蒸発源と、
    を備え、
    前記自転部の前記移動方向への移動領域は、前記ワークの外周面のうち皮膜を厚く形成すべき特定部分を含む範囲が前記蒸発源が設けられている側に対向する第1領域と、当該第1領域以外の第2領域とを有し、
    前記第1の自転歯列部、前記第2の自転歯列部、前記第1の本体歯列部、および前記第2の本体歯列部は、前記第1領域では、前記第1の自転歯列部が前記第1の本体歯列部に噛み合い、かつ、前記第2の自転歯列部が前記第2の本体歯列部との噛み合いが解除され、一方、前記第2領域では、前記第2の自転歯列部が前記第2の本体歯列部に噛み合い、かつ、前記第1の自転歯列部が前記第1の本体歯列部との噛み合いが解除されていることが可能な位置にそれぞれ配置されている、
    ことを特徴とする成膜装置。
  8. 前記移動方向は、前記自転軸と平行に延びる公転軸を回転中心として前記自転部が公転する方向であり、
    前記第1の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする第1の公転円に沿って配置され、
    前記第2の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする前記第1の公転円よりも大きい第2の公転円に沿って配置され、
    前記蒸発源は、前記自転部が前記公転軸を回転中心として公転する軌道よりも外側に配置されている、
    請求項7に記載の成膜装置。
  9. 前記移動方向は、前記自転軸と平行に延びる公転軸を回転中心として前記自転部が公転する方向であり、
    前記第1の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする第1の公転円に沿って配置され、
    前記第2の本体歯列部は、前記公転軸を中心とする前記第1の公転円よりも大きい第2の公転円に沿って配置され、
    前記蒸発源は、前記第1の公転円の内側に配置されている、
    請求項7に記載の成膜装置。
  10. 前記蒸発源は、前記公転軸に沿うように配置され、
    前記出射面は、前記公転軸の周囲を取り囲むように配置され、前記公転軸から離れる方向を向く、
    請求項9に記載の成膜装置。
  11. 前記ワークは、円環の一部が途切れた形状を有する部材であり、
    前記ワークの特定部分は、前記円環の一部が途切れた部分の周辺部である、
    請求項7〜10のいずれか1項に記載の成膜装置。
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