JP5988896B2 - 多孔性高分子金属錯体、ガス吸着材、これを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置 - Google Patents

多孔性高分子金属錯体、ガス吸着材、これを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置 Download PDF

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Description

本発明は多孔性高分子金属錯体及びガス吸着材としての利用ならびにこれを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置に関する。
ガス吸着材は、加圧貯蔵や液化貯蔵に比べて、低圧で大量のガスを貯蔵しうる特性を有する。このため、近年、ガス吸着材を用いたガス貯蔵装置やガス分離装置の開発が盛んである。ガス吸着材としては、活性炭やゼオライトなどが知られている。また最近は多孔性高分子金属錯体にガスを吸蔵させる方法も提案されている(特許文献1、非特許文献1参照)。
多孔性高分子金属錯体は、金属イオンと有機配位子から得られる結晶性固体で、種々の金属イオン、有機配位子の組み合わせおよび骨格構造の多様性から、様々なガス吸着特性を発現する可能性を秘めている。しかしながら、これらの従来提案されてきたガス吸着材は、ガス吸着量や作業性などの点で充分に満足できるものとはいえず、より優れた特性を有するガス吸着材の開発が所望されている。
ガス吸着性を有する多孔性高分子金属錯体の開発する手段として、ガス吸着材として広く利用されているゼオライト様の骨格を模倣する手段がある。特にイミダゾールおよびその類似分子を用いて、膨大な数のゼオライト様骨格を有する多孔性高分子金属錯体が合成され、その機能が報告されている(特許文献2、非特許文献2,3,4)。このように、ゼオライト様骨格を多孔性高分子金属錯体で模倣する手法は、機能性材料開発のために優れている事は明らかであるが、ゼオライト様骨格を多孔性高分子金属錯体で模倣した実例は、有機配位子としてイミダゾールまたはイミダゾール誘導体を使用した物がほとんどである。イミダゾールは、窒素2個と炭素3個からなる、5員環化合物であり、その直径は炭素原子6個を含むベンゼン環よりもさらに小さい。イミダゾールは、2個の窒素原子で金属イオンに配位しているが、この架橋部位の長さがイミダゾールよりも大きな有機配位子が利用できれば、金属イオンー有機配位子で形成される細孔の大きさがより大きくなり、より多量のガスを吸着出来る可能性があるが、架橋部位の長さがイミダゾールよりも大きな有機配位子で形成されるゼオライト様骨格を有する多孔性高分子金属錯体の例はほとんど知られていない。また、多孔性高分子金属錯体の機能は、構成している配位子に影響を受けるため、複数の配位子を用る事ができれば、より多様な機能を創成できる可能性があるが、複数の配位子でゼオライト様骨格を有する多孔性高分子金属錯体を合成した例は非常に少ない。ゼオライト様骨格を有する多孔性高分子金属錯体を合成した例において、ガス吸着特性が検討されている(特許文献3、4)。これらは、二酸化炭素、メタン、トルエンの吸着量が多く、これらの貯蔵材として優れている事が開示されているが、ガス種ごとの吸着性の差が不明なため、ガス分離材としての特性が不明であり、また上記三種以外のガスに対する特性も不明である。
多孔体のガス吸着特性を制御するためにふっ素原子を導入する試みが行われている(非特許文献5ー8)。ふっ素の材料への一般的な影響として、摺動性、撥水性などは知られているが、ふっ素を導入した多孔性高分子金属錯体ではふっ素原子による水素の吸着特性の向上が述べられている。これらは、前記のふっ素原子が惹起する物性とは一致せず、またふっ素原子導入が水素の吸着特性を向上させる原理も詳しくは記載されておらず、すなわち、ふっ素原子の導入が多孔性高分子金属錯体のガス吸着特性にどのような影響を及ぼすかははっきりとはわかっていない。また、前記のゼオライト様骨格を有する多孔性高分子金属錯体を合成した例(特許文献3,4)の化合物にもふっ素原子を含む多孔性高分子金属錯体の合成や物性に関しては記載されていない。
特開2000-109493号公報 特表2009-528251号公報 特開2011-37794号公報 特開2012-17268号公報
北川進、集積型金属錯体、講談社サイエンティフィク、2001年214-218頁 Yaghiら、Science (2008)939 Yaghiら、Nature 453 (2008) 207 Yaghiら、J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 3875 Omaryら、J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, 15454 Omaryら、Angew. Chem. Int. Ed.2009, 48, 2500 Liら、J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 1308 Fereyら、J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 1127-1136
本発明は、ゼオライト様骨格を有する新規な多孔性高分子金属錯体及びこれを用いた優れた特性を有するガス吸着材を提供することである。また本発明は、前記特性を有するガス吸着材を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を併せて提供することを目的とする。
本発明者らは、前述のような問題点を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、5位に
特定の置換基を有するイソフタル酸誘導体、4,4'-ビピリジン(bpy)及び亜鉛イオンの反応で得られる多孔性高分子金属錯体は、ゼオライトの分類でいうところのいわゆるBCT骨格を有しており、種々のガスを多量に吸着する事を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、BCT型の基本骨格を有し、5位に置換基を有するイソフタル酸誘導体と4,4'-ビピリジン(bpy)と亜鉛イオンからなる多孔性高分子金属錯体であり、本材料のガス吸蔵材料としての利用及び本ガス吸着材を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置に関する発明である。
すなわち本発明は下記にある。
(1) 下記式(1)
[Zn(bpy)X]n (1)
(式中、bpyは4,4'-ビピリジン、Xは5位に炭素数1から8であるパーフルオロアルキル基を置換基として有するイソフタル酸誘導体イオンである。nは、Zn(bpy)Xから成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
で表され、
亜鉛イオンが3個の1座配位のカルボキシル基、1個のbpy分子の窒素原子により配位された4配位状態にあり、さらに全体のネットワーク構造が、ゼオライトの分類でいわゆるBCT骨格に相当する三次元ネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体。
(2) Xの前記置換基が、CF3,C25,n−C37,n−C49,n−C511基から選ばれるものである上記(1)に記載の多孔性高分子金属錯体。
(3) 上記に記載の多孔性高分子金属錯体を含むガス吸着材。
(4) 上記(1)−(3)に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
(5) 上記(4)に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
本発明の多孔性高分子金属錯体は多量のガスを吸蔵、放出し、かつ、ガスの選択的吸着を行うことが可能である。また本発明の多孔性高分子金属錯体からなるガス吸蔵材料を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を製造することが可能になる。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、また例えば、圧力スイング吸着方式(以下「PSA方式」と略記)のガス分離装置として使用すれば、非常に効率良いガス分離が可能である。また、圧力変化に要する時間を短縮でき、省エネルギーにも寄与する。さらに、ガス分離装置の小型化にも寄与しうるため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減できるため、結局最終製品の製造コストを削減する効果を有する。
本発明の多孔性高分子金属錯体の他の用途としては、ガス貯蔵装置が挙げられる。本発明のガス吸着材をガス貯蔵装置(業務用ガスタンク、民生用ガスタンク、車両用燃料タンクなど)に適用した場合には、搬送中や保存中の圧力を劇的に低減させることが可能である。搬送時や保存中のガス圧力を減少させ得ることに起因する効果としては、形状自由度の向上がまず挙げられる。従来のガス貯蔵装置においては、保存中の圧力を維持しなくてはガス吸着量を高く維持できない。しかしながら、本発明のガス貯蔵装置においては、圧力を低下させても充分なガス吸着量を維持できる。
ガス分離装置やガス貯蔵装置に適用する場合における、容器形状や容器材質、ガスバルブの種類などに関しては、特に特別の装置を用いなくてもよく、ガス分離装置やガス貯蔵装置に用いられているものを用いることが可能である。ただし、各種装置の改良を排除するものではなく、いかなる装置を用いたとしても、本発明の多孔性高分子金属錯体を用いている限りにおいて、本発明の技術的範囲に包含されるものである。
本発明の多孔性高分子金属錯体のBCT構造を結晶学上のc軸から見た図である。 図1の本発明の多孔性高分子金属錯体のBCT構造の一部(小さい細孔部分)の部分拡大図を示す。 図1の多孔性高分子金属錯体のBCT構造を結晶学上のa軸から見た図(対称性の関係上、b軸から見た構造も本a軸から見た構造と同一である)を示す。 図1の本発明の多孔性高分子金属錯体のBCT構造の図2と異なる他の部分の部分拡大図を示す。 図1の化合物の亜鉛イオンが3個のカルボキシル基の酸素原子と、1個の窒素原子と配位結合した4配位構造を拡大して示す。 ゼオライトのBCT骨格のモデル図を示す。 実施例1で製造した単結晶から得られた構造により、ふっ素原子の存在状況を示す。大小二種類の細孔のうち、直径が大きい細孔のみにふっ素原子が存在し、大きい細孔の内部がふっ素原子で覆われているのがわかる。 実施例1で製造した単結晶を元にシミュレートした粉末X線パターンおよび実施例1で製造した粉末を粉末X線装置により測定した粉末X線回折チャートを示す。 実施例2で製造した単結晶を元にシミュレートした粉末X線パターンおよび実施例1で製造した粉末を粉末X線装置により測定した粉末X線回折チャートを示す。 実施例3で製造した単結晶を元にシミュレートした粉末X線パターンおよび実施例1で製造した粉末を粉末X線装置により測定した粉末X線回折チャートを示す。 実施例4で製造した単結晶を元にシミュレートした粉末X線パターンおよび実施例1で製造した粉末を粉末X線装置により測定した粉末X線回折チャートを示す。 比較例1で製造した単結晶を元にシミュレートした粉末X線パターンおよび実施例1で製造した粉末を粉末X線装置により測定した粉末X線回折チャートを示す。 比較例2で製造した単結晶を元にシミュレートした粉末X線パターンおよび実施例1で製造した粉末を粉末X線装置により測定した粉末X線回折チャートを示す。 実施例1で得られた多孔性高分子金属錯体の吸着等温線を示す。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、下記式(1)で表され、かつ図1〜6で示されるいわゆるゼオライトのBCT骨格を有する多孔性高分子金属錯体である。
[Zn(bpy)X]n (1)
(式中、bpyは4,4'-ビピリジン、Xは5位に炭素数1から8であるパーフルオロアルキル基を置換基として有するイソフタル酸誘導体イオンである。nは、Zn(bpy)Xから成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
以下に、実施例1で製造した単結晶を単結晶測定装置(極微小結晶用単結晶構造解析装置)にて測定し、得られた回折像を解析ソフトウエアを使用して解析して確認された結晶構造(BCTネットワーク)を用いて、本発明の多孔性高分子金属錯体のBCT骨格構造を示す。
図1に本発明の多孔性高分子金属錯体のBCT骨格構造を結晶学的上のc軸から見た図、図2にその一部(小さい細孔部分)の拡大図、図3に多孔性高分子金属錯体のBCT骨格構造を結晶学的上のa軸から見た図(対称性の関係から、b軸から見ても同一構造を有している)、図4に亜鉛の4配位状態、図5にc軸から見た図の他の一部(大きな細孔のイソフタル酸によって構成された辺の部分)の拡大図を示す。これらの図において、黒は亜鉛イオン、灰色は炭素原子、薄い灰色は窒素原子、濃い灰色は酸素原子であるが、テレフタル酸の5位の置換基および水素原子は見易さのために省略している。
図1を参照すると、c軸から見た図では、大きな細孔と小さな細孔からなるネットワーク構造が形成されている。大きな細孔は、イソフタル酸のみの辺と、イソフタル酸とbpyから構成される辺があり、これらの辺が交互に並ぶことで8角形を形成している。小さな細孔はイソフタル酸とbpyから構成される辺による4角形を形成している。
図2はc軸から見た小さな細孔の部分を拡大した図である。図3に示したa軸から見た図を参照すると、対称性の関係からb軸から見てもa軸からと同一構造を有しているが、4つの角の亜鉛イオンに対してイソフタル酸から構成される辺とbpyから構成される辺が交互に並んで形成される4角形が、c軸方向(図1,2の図に対して垂直方向)に交互に並んでいるために、c軸方向から見た図1,2では小さな細孔はイソフタル酸とbpyから構成される辺による4角形を形成しているように見えることが理解される。
図4は、図1では、大きな細孔のイソフタル酸のみから構成される辺の部分の拡大図である。
図5に、細孔の角にある亜鉛イオンの結合状態を示す。亜鉛イオンが3個の1座配位のカルボキシル基、1個のbpyの窒素原子により配位された4配位構造であることが示されている。ただし、カルボキシル基の酸素が亜鉛イオンに配位しているかどうかは、酸素と亜鉛の結合距離の定義により変わりうる。4配位構造に於いては配位していないとみなす1座配位のカルボキシル基の配位していない酸素原子は、亜鉛イオンの近傍に存在しているため、本配位構造は、5配位とみなす事も可能である。いずれにせよこのような配位構造を通じて亜鉛イオンbpy及びイソフタル酸類により連結されることで、図1に示すような、いわゆるゼオライトのBCT骨格構造が形成される。
このように、本多孔性高分子金属錯体は、図1〜5で示される三次元構造を有している。なお、これらの図は、いずれも分子ネットワーク構造の一部を切り抜いた物であり、実際は無限格子である。
図6に、いわゆるゼオライトのBCT骨格をモデル的に示す(国際ゼオライト学会のHPから引用)。図1〜5に示されたネットワーク構造は、本BCT骨格と同一構造を有している事がわかる。
図7(a)および図7(b)に、本発明の実施例3で製造した多孔性高分子金属錯体におけるテレフタル酸の5位の置換基を加えた図1のc軸方向およびa軸方向から見た構造を示し、置換基に存在するふっ素原子の分布状況を示す。ふっ素原子を黒、それ以外の原子を灰色で示す。ふっ素原子は、大きい細孔の細孔壁を覆うように存在し、小さい細孔には存在しないという、特殊な分布を示している。そして、大きい細孔の内部はふっ素原子で覆われていることが見られる。
図8に実施例1で製造した単結晶を元にシミュレートした粉末X線パターン(下段)および実施例1で製造した粉末を粉末X線装置により測定した粉末X線回折チャート(上段)を示す。二つのパターンはよい一致を示しており、実施例1で得られた単結晶と粉末が同一物質であることを示している。
本発明の化合物の基本構造は、亜鉛イオンとbpy分子と、5位に置換基を有するイソフタル酸から形成される図1〜7に示す上記の所謂BCTネットワーク構造を有している。ここで重要なのはネットワークのトポロジーであり、個々の結合角は、本化合物が柔軟性を有するが故に、必ずしも常に図と同一の結合角を有するとは限らない。
本発明の多孔性高分子金属錯体は多孔体であるため、水やアルコールやエーテルなどの有機分子に触れると孔内に水や有機溶媒を含有し、たとえば式(2)
[Zn(bpy)X]n(G)m (2)
(式中、bpyは4,4'-ビピリジン、Xは5位に置換基を有するイソフタル酸誘導体イオンである。Gは後述のような合成で使用した溶媒分子や空気中の水分子を表す。nは、Zn(bpy)Xから成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。mは亜鉛イオン1に対して0.2から6である。)
であるような複合錯体に変化する場合がある。
しかし、これらの複合錯体中の水やアルコール、エーテルなどの有機分子は、多孔性高分子金属錯体に弱く結合しているだけであり、ガス吸着材として利用する際の減圧乾燥などの前処理によって除かれ、元の式(1)で表される錯体に戻る。そのため、式(2)で表されるような錯体であっても、本質的には本発明の多孔性高分子金属錯体と同一物と見なすことができる。
本発明の方法では、式(1)で表される化合物は、亜鉛塩、bpy、5位に置換基を有するイソフタル酸を溶媒に溶かして溶液状態で混合することで製造できる。
溶媒としては、アルコールなどのプロトン系溶媒とジメチルホルムアミドなどのホルムアミドルの混合溶媒を利用すると良好な結果が得られる。アルコールなどのプロトン系溶媒及びジメチルアミドなどのホルムアミド類は亜鉛塩をよく溶解し、さらに亜鉛イオンや対イオンに配位結合や水素結合することで亜鉛塩を安定化し、配位子との急速な反応を抑制することで、副反応を抑制する。アルコールの例としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどの脂肪族系1価アルコール及びエチレングリコールなどの脂肪族系2価アルコール類を例示できる。安価でかつニ亜鉛塩の溶解性が高いという点でメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールが好ましい。またこれらのアルコールは単独で用いてもよいし、複数を混合使用してもよい。ホルムアミド類の例としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジブチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが例示出来る。亜鉛塩の溶解性が高いという点で、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドが好ましい。
アルコール類とジメチルホルムアミド類の混合比率は1:100〜100:0(体積比)で任意である。配位子、亜鉛塩の両方の溶解性が高まり、副生成物の発生を抑制出来るという点で、混合比率は90:10〜10:90(体積比)、反応を加速できるという観点から80:20〜20:80(体積比)が好ましい。
溶媒として前記のアルコール類やホルムアミド類の混合溶媒に別種の有機溶媒を混合して使用することも好ましい。混合比率は1:100〜100:0(体積比)で任意である。アルコール類とジメチルホルムアミド類、他の有機溶媒に対する混合比率を30%以上にすることが、亜鉛塩および配位子の溶解性を向上させる観点から好ましい。
用いる有機溶媒としては、極性の高い溶媒が溶解性に優れるという点で好ましく、具体的にはテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、アセトン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
本発明の方法で使用する亜鉛塩としては、2価の亜鉛イオンを含有している塩類であればよく、溶媒への溶解性が高いという点で、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、ぎ酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛が好ましく、反応性が高いという点で、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛が特に好ましい。
以下、5位に置換基を有するイソフタル酸に関して説明する。
5位の置換基としては直鎖状または枝分かれのある炭素数1から8であるパーフルオロアルキル基であればよいが、特にガス分離特性が優れる点で、CF3,C25,n−C37,n−C49,n−C511基が好ましい。5位に置換基を有するイソフタル酸の合成方法としては、たとえば、柴崎ら、Chem. Asian J. 2006, 1, 314 - 321を参照することができる。
本発明の方法では、反応促進剤として塩基を添加することも可能である。塩基は、配位子のカルボキシル基を陰イオンに変換する事で、反応を加速すると推定される。塩基としてはたとえば無機塩基として水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが例示できる。有機塩基としては、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、2,6−ルチジンなどが例示出来る。反応加速性が高いという点で、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。添加量としては、使用するイソフタル酸の総モルに対し、反応の加速効果が顕著であるという点で好ましくは0.1〜6.0モル、副反応少ないという点でさらに好ましくは0.5から4.0モルである。
亜鉛塩の溶液および配位子を反応させるに当たり、亜鉛塩および配位子を容器に装填した後、溶媒を添加する方法以外に、亜鉛塩、配位子をそれぞれ別個に溶液として調製した後、これらの溶液を混合してもよい。溶液の混合方法は、亜鉛塩溶液に配位子溶液を添加しても、その逆でもよい。また、混合法としては、必ずしも溶液で行う必要はなく、例えば、亜鉛塩溶液に固体の配位子を投入し、同時に溶媒を入れる方法や、反応容器に亜鉛塩を装填した後に、配位子の固体または溶液を注入し、さらに亜鉛塩を溶かすための溶液を注入するなど、最終的に反応が実質的に溶媒中で起こる方法であれば、種々の方法が可能である。ただし、亜鉛塩の溶液と配位子の溶液を滴下混合する方法が、工業的には最も操作が簡便であり、好ましい。また、ゼオライト様骨格の形成の為に、金属イオン、配位子を速やかに均一に混合するために、上記方法のいずれを取る場合であっても、攪拌しながら溶液を混合する事が好ましい。ここで、本発明において撹拌するとは、磁気攪拌機やメカニカル攪拌機などを用いて、棒・板・プロペラ状の攪拌子を槽内で一定速度・一方向に回転することで、溶液の均一性を高める、化学反応に一般的な操作を示す。よって、実質的に溶液が攪拌されていればよいが、効率のよい反応の為には、反応容器の直径の1/100〜2/1の長さを持つ攪拌子を用い、1回転/分以上3000回転以下、好ましくは10回転/分以上2000回転以下で攪拌するのが好ましい。本攪拌操作は、特に反応の初期段階に、金属イオンと配位子の分子レベルでの均一性を高めることを目的にしている為、反応の初期の攪拌が好ましい。反応の初期とは、金属イオンと配位子が混合されて20分以内、副反応抑制の観点から好ましくは10分以内である。攪拌時間は、1分以上、副反応抑制の観点から好ましくは50分以上である。反応の初期段階での溶液の均一性を高めることを目的としているため、攪拌は、上記の時間以上実施していればよく、すなわち、所定時間後に攪拌を停止しても、継続してもかまわない。
溶液の濃度は、金属塩溶液は80mmol/L〜2mol/L、好ましくは40mmol/L〜4mol/Lであり、配位子の有機溶液は80mmol/L〜2mol/L、好ましくは60mmol/L〜3mol/Lである。これより低い濃度で反応を行っても目的物は得られるが、製造効率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では、吸着能が低下するため好ましくない。
反応温度は−20〜180℃、好ましくは25〜150℃である。これ以下の低温で行うと、原料の溶解度が下がるため好ましくない。オートクレーブなどを用いて、TMTMより高温で反応を行うことも可能であるが、加熱などのエネルギーコストの割には、収率は向上しないため実質的な意味はない。
本発明の反応で用いられる亜鉛塩とbpyと5位に置換基を有するイソフタル酸類の混合比率は、金属:二種の配位子の合計で1:5〜5:1のモル比、好ましくは1:3〜3:3のモル比の範囲内である。これ以外の範囲では、目的物の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して、目的物の取り出しが困難となる。また、bpyと置換イソフタル酸の混合比は、1:5〜5:1のモル比、好ましくは1:3〜3:1のモル比の範囲内である。これ以外の範囲では、目的物の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して、目的物の取り出しが困難となる。
反応は通常のガラスライニングのSUS製の反応容器および機械式攪拌機を使用して行うことができる。反応終了後は濾過、乾燥を行うことで目的物質と原料の分離を行い、純度の高い目的物質を製造することが可能である。
上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体が目的とするBCTネットワークを有しているかどうかは、単結晶X線結晶解析により得られた反射を解析することで確認することが出来る。また粉末X線解析の反射パターンによっても確認出来る。上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体が多孔質であるかどうかは、熱重量分析(TGA)により確認することが可能である。たとえば、窒素気流下(流量=50mL/分)で、昇温速度=5℃/分の測定で、温度範囲が室温〜200℃までの重量減が5%以上であるかどうかで確認出来る。上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体のガス吸着能は、市販のガス吸着装置を用いて測定が可能である。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、原料として複数種のイソフタル酸類を混合使用して、使用した複数種のイソフタル酸類を含有する多孔性高分子金属錯体を合成する、いわゆる固溶体型の多孔性高分子金属錯体を形成する事が可能であることが確認された。この際、混合して使用する複数種のイソフタル酸類の少なくとも一種類は、パーフルオロアルキル基を5位に有している必要があり、これの含有率は5%以上、好ましくは20%以上である。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、図7に示したとおり、ふっ素原子で表面が覆われた大きな細孔とふっ素原子が存在しない小さい細孔という、大きさ、化学的性質が全く異なる二種類の細孔が存在する。本発明によれば、理論に拘束されるわけではないが、分極率の大きなふっ素原子が存在する大きな細孔には、二酸化炭素、酸素、一酸化炭素など、小さな細孔には窒素が吸着されやすく、結果として、二酸化炭素、酸素、一酸化炭素などの吸着量が多く、窒素の吸着量が小さいという特異的な性質が生じると推定される。
多孔性高分子金属錯体の調製方法は種々の条件があり、一義的に決定できるものではないが、ここでは実施例に基づき説明する。
なお、官能基が5位に置換したふっ素原子を含有するイソフタル酸類は、以下の文献を参考に合成した。
柴崎ら、Chem. Asian J. 2006, 1, 314 - 321
また、粉末X線回折測定には、ブルカーAX(株)社製粉末X線装置DISCOVER D8 with GADDSを用いた。
実施例1
硝酸亜鉛3水和物0.02ミリモルをジメチルホルムアミド5mLに溶解した。5−ノルマルウンデカフルオロペンチルイソフタル酸(5位にノルマルC511基を有するイソフタル酸)0.02ミリモルおよびbpy0.02ミリモルをエタノール5mLに溶解し、直径3センチのガラス溶液にいれ、直径1センチの攪拌子を入れ、磁気攪拌機により溶液を200rpmで攪拌しながら、前述の亜鉛塩のDMF溶液を加え、室温でさらに1時間攪拌した。そののち、溶液を直径5ミリのガラス試験管に移し、蓋をして、80℃で3日間加熱した。得られた針状の単結晶を大気に暴露させないようにパラトンにてコーティングした後、(株)リガク社製単結晶測定装置(極微小結晶用単結晶構造解析装置VariMax、MoK・線(λ=0.71069Å))にて測定し(照射時間32秒、d=45ミリ、2θ=−20°,温度=−170℃)、得られた回折像をリガク(株)製解析ソフトウエア「CrystalStructure」を使用して解析し、図7に示すようにいわゆるBCTネットワーク構造を有していることを確認した(a=32.50, b=32.50, c=9.23; α=90、β=90, γ=90; 空間群=I4mm))。解析により、細孔内に存在する溶媒(前述の式(2)のG=ゲスト分子)の存在が明らかになったが、図の見やすさの為に図7からは削除した。
また硝酸亜鉛3水和物1ミリモル、5−ノルマルウンデカフルオロペンチルイソフタル酸(5位にノルマルCF11基を有するイソフタル酸)1ミリモルおよびbpy1ミリモルをエタノール50mLとジメチルホルムアミド50mLの混合溶媒に溶解し、ただちに直径3センチのガラス溶液にいれ、直径0.7センチの攪拌子を入れ、磁気攪拌機により溶液を100rpmで攪拌しながら80℃で3日間加熱した。得られた粉末を濾過し、エタノールで洗浄し、真空乾燥し、白色の粉末79mgを得た。この粉末を、ブルカーAX(株)社製粉末X線装置DISCOVER D8 with GADDSにより測定した結果(CuKα(λ =1.54Å)、2θ=4〜40、室温にて測定)、5.6度、8.6度、9.9度、10.9度、11.6度、13.8度、14.8度、15.5度、16.4度、17.2度、19.7度に反射があり、本反射は、上記の単結晶の粉末シミュレーションパターンと同一であった(図8)。すなわち、上記の二種の本方法にて、BCTネットワーク構造を有する多孔性高分子金属錯体が合成出来、それが、単結晶X線回折および粉末X線回折法により解析可能であることを確認した。
また、本材料の結晶格子の熱的な膨張収縮を評価するため、粉末X線の温度可変測定を行った。この結果、室温から120℃において、反射ピークの位置がほぼ全く変わらなかった。すなわち、本材料は、室温〜120℃の範囲に於いて、熱的に結晶格子サイズが変化しない、すなわち、材料の熱収縮が極めて小さいことがわかった。
実施例2
実施例1と同様にして、硝酸亜鉛3水和物1ミリモル、5−トリフルオロメチルイソフタル酸(5位にCF基を有するイソフタル酸)1ミリモルおよびbpy1ミリモルをエタノール50mLとジメチルホルムアミド50mLの混合溶媒に溶解し、ただちに100mLのナス形フラスコにいれ、直径1センチの攪拌子を入れ、磁気攪拌機により溶液を400rpmで攪拌しながら80℃で3日間加熱した。得られた粉末を濾過し、エタノールで洗浄し、真空乾燥し、白色の粉末97mgを得た。
本粉末を測定した粉末X線回折チャート及び実施例1で得られた単結晶をもとに作製したシミュレートパターンを図9に示す。下の点線がシミュレートパターン、上の実線が測定データであり、横軸は2θ、縦軸は強度である。これらはほぼ同一であり、実施例2で得られた多孔性高分子金属錯体は、実施例1で得られたBCT骨格と同一の構造を有している事がわかる。
実施例3
実施例1と同様にして、硝酸亜鉛3水和物1ミリモル、5−ノルマルヘプタフルオロプロピルイソフタル酸(5位にノルマルC37基を有するイソフタル酸)1ミリモルおよび4,4'-ビピリジン(bpy)1ミリモルをエタノール50mLとジメチルホルムアミド50mLの混合溶媒に溶解し、ただちに100mLのナス形フラスコにいれ、直径2センチの攪拌子を入れ、磁気攪拌機により溶液を400rpmで攪拌しながら80℃で3日間加熱した。得られた針状の単結晶をすりつぶし、得られた粉末を測定した粉末X線回折チャート及び実施例1で得られた単結晶をもとに作製したシミュレートパターンを図10に示す。下の点線がシミュレートパターン、上の実線が測定データであり、横軸は2θ、縦軸は強度である。これらはほぼ同一であり、実施例3で得られた多孔性高分子金属錯体は、実施例1で得られたBCT骨格と同一の構造を有している事がわかる。
実施例4
実施例1と同様にして、硝酸亜鉛3水和物1ミリモル、5−ノルマルヘプタデカフルオロオクチルイソフタル酸(5位にノルマルC17基を有するイソフタル酸)1ミリモルおよびbpy1ミリモルをエタノール50mLとジメチルホルムアミド50mLの混合溶媒に溶解し、ただちに100mLのナス形フラスコにいれ、直径2センチの攪拌子を入れ、磁気攪拌機により溶液を600rpmで攪拌しながら80℃で3日間加熱した。得られた粉末を濾過し、エタノールで洗浄し、真空乾燥し、白色の粉末81mgを得た。本粉末を測定した粉末X線回折チャート及び実施例1で得られた単結晶をもとに作製したシミュレートパターンを図11に示す。下の点線がシミュレートパターン、上の実線が測定データであり、横軸は2θ、縦軸は強度である。これらはほぼ同一であり、実施例4で得られた多孔性高分子金属錯体は、実施例1で得られたBCT骨格と同一の構造を有している事がわかる。
比較例1
実施例1と同様にして、硝酸亜鉛3水和物1ミリモル、5−ブチルイソフタル酸1ミリモルおよびbpy1ミリモルをエタノール50mLとジメチルホルムアミド50mLの混合溶媒に溶解し、ただちに100mLのナス形フラスコにいれ、直径2センチの攪拌子を入れ、磁気攪拌機により溶液を600rpmで攪拌しながら80℃で3日間加熱した。得られた粉末を濾過し、エタノールで洗浄し、真空乾燥し、白色の粉末128mgを得た。本粉末を測定した粉末X線回折チャート及び実施例1で得られた単結晶をもとに作製したシミュレートパターンを図12に示す。下の点線がシミュレートパターン、上の実線が測定データであり、横軸は2θ、縦軸は強度である。これらはほぼ同一であり、本反応で得られた多孔性高分子金属錯体は、実施例1で得られたBCT骨格と同一の構造を有している事がわかる。
比較例2
実施例1と同様にして、硝酸亜鉛3水和物1ミリモル、5−ジメチルアミノイソフタル酸1ミリモルおよびbpy1ミリモルをエタノール50mLとジメチルホルムアミド50mLの混合溶媒に溶解し、ただちに100mLのナス形フラスコにいれ、直径2センチの攪拌子を入れ、磁気攪拌機により溶液を600rpmで攪拌しながら80℃で3日間加熱した。得られた粉末を濾過し、エタノールで洗浄し、真空乾燥し、薄黄色の粉末81mgを得た。本粉末を測定した粉末X線回折チャート及び実施例1で得られた単結晶をもとに作製したシミュレートパターンを図13に示す。下の点線がシミュレートパターン、上の実線が測定データであり、横軸は2θ、縦軸は強度である。これらはほぼ同一であり、本反応で得られた多孔性高分子金属錯体は、実施例1で得られたBCT骨格と同一の構造を有している事がわかる。
<ガス吸着の結果>
得られたガス吸着材の種々のガス吸着特性を種々の温度で測定した。BET自動吸着装置(日本ベル株式会社製ベルミニII)を用いた。測定に先立って試料を393Kで6時間真空乾燥して、微量残存している可能性がある溶媒分子などを除去した。
図14のグラフに、実施例1で得られた多孔性高分子金属錯体の吸着等温線を示す。四角(■)は一酸化炭素(82K),三角(▲)は酸素(90K),丸(●)は二酸化炭素(195K),バツ(×)は窒素(77K)であり、これらのカッコ内は測定温度である。二酸化炭素、酸素、一酸化炭素が多量に吸着していることがわかった。一方で、窒素ガスの吸着量は少なく、二酸化炭素/窒素、酸素/窒素、一酸化炭素/窒素の吸着量比が大きく、ガス分離材料として優れていることがわかった。また、いずれのガスにおいても明確なステップがみられ、ガス吸着にともない、構造が変化している可能性が示唆された。
表1に、実施例2−4で得られた多孔性高分子金属錯体の、二酸化炭素(195K)、酸素(77K)、一酸化炭素(82K)、窒素(77K)(カッコ内は測定温度)の吸着量を示す(mL/g STP)。
いずれの場合も二酸化炭素、酸素、一酸化炭素が多量に吸着していることがわかった。一方で、窒素ガスの吸着量は少なく、二酸化炭素/窒素、酸素/窒素、一酸化炭素/窒素の吸着量比が大きく、ガス分離材料として優れていることがわかった。また、いずれのガスにおいても明確なステップがみられ、ガス吸着にともない、構造が変化している可能性が示唆された。
表2に、実施例2−4で得られた多孔性高分子金属錯体の、二酸化炭素、酸素、一酸化炭素、窒素の、273Kでの吸着量を示す(mL/g STP)。
いずれの場合も二酸化炭素、酸素、一酸化炭素が多量に吸着していることがわかった。一方で、窒素ガスの吸着量は少なく、二酸化炭素/窒素、酸素/窒素、一酸化炭素/窒素の吸着量比が大きく、ガス分離材料として優れていることがわかった。
表3に、比較例1,2で得られた、ふっ素原子を含有しない多孔性高分子金属錯体の、二酸化炭素、酸素、一酸化炭素、窒素の、273Kでの吸着量を示す(mL/g STP)。
いずれの場合も二酸化炭素/窒素、酸素/窒素、一酸化炭素/窒素の吸着量比が小さく、ガス分離材料として優れていないことがわかった。
<耐熱性>
PCPの耐熱性は、熱重量分析装置(TGA)にて評価可能である。ふっ素の耐熱性への影響を評価するために、ふっ素を含む材料(実施例1及び3)と、含まない材料(特開2011-37794号公報、特開2012-17268号公報に基づき合成)の耐熱性をTGAにて評価した所、ふっ素を含む材料はいずれも熱分解温度が380℃程度、ふっ素を含まない材料はいずれも280℃程度であり、ふっ素を含む材料は含まない材料に比較して耐熱性が100℃以上向上することがわかった。熱重量分析は、株式会社リガク 熱重量分析装置TGA8120を用いて、試料容器にはアルミニウムのパンを用い、窒素気流下(100mL/分)で、5℃/分の昇温速度にて測定した。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、配位子の整列によって形成される多数の微細孔が物質内部に存在する。この多孔性を生かして二酸化炭素や酸素、窒素、一酸化炭素の吸着量が多く、さらに骨格構造の特異性などにより、ガスの回収が容易に行えるため、種々のがすの、分離、貯蔵に好適に使用出来る。

Claims (5)

  1. 下記式(1)
    [Zn(bpy)X]n (1)
    (式中、bpyは4,4'-ビピリジン、Xは5位に炭素数1から8であるパーフルオロアルキル基を置換基として有するイソフタル酸誘導体イオンである。nは、Zn(bpy)Xから成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
    で表され、
    亜鉛イオンが3個の1座配位のカルボキシル基、1個のbpy分子の窒素原子により配位された4配位状態にあり、さらに全体のネットワーク構造が、ゼオライトの分類でいわゆるBCT骨格に相当する三次元ネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体。
  2. Xの前記置換基が、CF3,C25,n−C37,n−C49,n−C511基から選ばれるものである請求項1に記載の多孔性高分子金属錯体。
  3. 請求項1又は2に記載の多孔性高分子金属錯体を含むガス吸着材。
  4. 請求項3に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
  5. 請求項3に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
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