JP6080616B2 - 多孔性高分子金属錯体、ガス吸着材、これを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置 - Google Patents

多孔性高分子金属錯体、ガス吸着材、これを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置 Download PDF

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Description

本発明は多孔性高分子金属錯体及びガス吸着材としての利用ならびにこれを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置に関する。
ガス吸着材は、加圧貯蔵や液化貯蔵に比べて、低圧で大量のガスを貯蔵しうる特性を有する。このため、近年、ガス吸着材を用いたガス貯蔵装置やガス分離装置の開発が盛んである。ガス吸着材としては、活性炭やゼオライトなどが知られている。また最近は多孔性高分子金属錯体にガスを吸蔵させる方法も提案されている(特許文献1、非特許文献1参照)。
多孔性高分子金属錯体は、金属イオンと有機配位子から得られる結晶性固体で、種々の金属イオン、有機配位子の組み合わせおよび骨格構造の多様性から、様々なガス吸着特性を発現する可能性を秘めている。しかしながら、これらの従来提案されてきたガス吸着材は、ガス吸着量や作業性などの点で充分に満足できるものとはいえず、より優れた特性を有するガス吸着材の開発が所望されている。
多孔性高分子金属錯体の特徴の一つが、そのネットワーク構造である。一次元の鎖状物集合体、二次元の四角格子の積層体、ジャングルジム状の三次元構造など様々な構造の多孔性高分子金属錯体が知られている(非特許文献2)。これら多様な多孔性高分子金属錯体は、ネットワーク構造及び、それを構成している金属イオン、配位子の化学的性質、物理的な形状に由来して、様々な物性を発現する。
中でもジャングルジム状の三次元ネットワーク構造を有する多孔性高分子金属錯体は、比較的安定的な構造を有し、構造内にガス分子を吸着しうる細孔を有する可能性があり、ガス吸着分離材としての有力なデザイン候補である(非特許文献3)。この三次元ネットワーク構造を有する多孔性高分子金属錯体を合成する手法としては、二次元無限格子を、別の配位子、たとえば分子両末端にピリジル型の配位点を有する第二配位子で架橋する事で三次元化する方法が知られている(非特許文献4)。しかし、多孔性高分子金属錯体の特徴の一つとして、原料の配位子や金属塩が僅かに異なると、あるいは同一の原料を使用していても、僅かに合成条件、たとえば溶媒、温度、などが変わると、ネットワーク構造がことなる別の多孔性高分子金属錯体が生成してしまうという現象が挙げられる(非特許文献5、6、7)。このため、多孔性高分子金属錯体で目的の構造を得るための合成法は存在しておらず、目的の構造を得るためには合成法を試行錯誤する必要がある。
多孔体のガス吸着特性を制御するために、配位子にふっ素原子を導入する試みが行われている(非特許文献8−11)。ふっ素の材料への一般的な影響として、摺動性、撥水性などは知られているが、前述のふっ素を導入した多孔性高分子金属錯体の例では、ふっ素原子による水素の吸着特性の向上が述べられている。これらは、前記のふっ素原子が惹起する物性とは一致せず、またふっ素原子導入が水素の吸着特性を向上させる原理も詳しくは記載されておらず、すなわち、ふっ素原子の導入が多孔性高分子金属錯体のガス吸着特性にどのような影響を及ぼすかははっきりとはわかっていない。
特開2000-109493号公報 特許第4427236号公報
北川進、集積型金属錯体、講談社サイエンティフィク、2001年214-218頁 Robsonら、Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 1460 ± 1494 Yaghi ら, , Science, 2002, 295, 469. 北川ら、J.Am.Chem.Soc.,2004,126, 14063 Zhouら、J. Mol. Structure 2008 163 北川ら、Cryst. Growth Des. 2005, 837 Jungら、Inorganic Chemistry, Vol. 42, No. 3, 2003、844 Omaryら、J. Am. Chem. Soc., 2007,129, 15454 Omaryら、Angew. Chem. Int. Ed.2009,48,2500 Liら、J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 1308 Fereyら、J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 1127-1136
本発明は、二種類の配位子から形成される三次元のネットワーク構造を有している新規な多孔性高分子金属錯体及びこれを用いた優れた特性を有するガス吸着材を提供することである。また本発明は、前記特性を有するガス吸着材を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を併せて提供することを目的とする。
本発明者らは、前述のような問題点を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、テレフタル酸型の第一配位子及びビピリジル型の第二配位子を使用し、第一配位子か第二配位子のいずれかにふっ素原子を含む官能基が1個以上置換している場合、これらと2価の遷移金属イオンを反応させると、第一配位子により四角形の無限格子が形成され、さらにこれが第二配位子で架橋されることで三次元構造を有するネットワーク構造の多孔性高分子金属錯体が形成され、この多孔性高分子金属錯体はガスを多量に吸着する事を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、2価遷移金属イオンとテレフタル酸型の第一配位子とビピリジル型の第二配位子からなる三次元構造のネットワーク構造を有し、ふっ素原子を含む官能基が第一配位子か第二配位子かのいずれかに1個以上置換した多孔性高分子金属錯体であり、本材料のガス吸蔵材料としての利用及び本ガス吸着材を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置に関する発明である。
すなわち本発明は下記にある。
(1) 下記式(1)
[MXY]n (1)
(式中、Mは2価の遷移金属イオン、Xはテレフタル酸型の第一配位子、Yはビピリジル型の第二配位子である。X,Yのいずれかは炭素数1から8であるパーフルオロアルキル基を少なくとも1個以上含有する。nは、[MXY]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
で表され、前記ビピリジル型の第二配位子Yは、パーフルオロアルキル基で置換していても置換していなくてもよい芳香環を2または3個含む線状の分子であって、その両端に、配位点となるピリジル基を有している2座配位子であり、配位子Xにより四角格子状のネットワークが形成され、さらにこれが配位子Yにより架橋された三次元のネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体。
(2)
前記ビピリジル型の第二配位子が、パーフルオロアルキル基で置換していても置換していなくてもよいが、4,4’-ビピリジル、3,4’-ビピリジル、3,3’-ビピリジル、3,6-ジ(4-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼンから選択される、上記(1)に記載の多孔性高分子金属錯体。
(3)前記Xが下記式で表される第一配位子である、上記(1)に記載の多孔性高分子金属錯体。
(4)前記Yが下記式で表される第二配位子である、上記(1)または(3)に記載の多孔性高分子金属錯体。
(5)前記パーフルオロアルキル基が、CF,C,n-C,n-C,n-C11,n-C17基から選ばれるものである、上記(1)、(3)〜(4)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体。
(6)前記xが0〜4の整数である、上記(3)〜(5)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体。
(7)前記yが0〜4の整数である、上記()〜(6)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体。
(8)前記金属イオンが、4個のカルボキシル基と配位結合したユニットが上下に二つ配位したパドルホイール構造を有している、上記(1)-(7)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体。
(9)2価の遷移金属イオンが銅イオンまたは亜鉛イオンである、上記(1)-(8)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体。
(10)2価の遷移金属イオンが亜鉛イオンである、上記(1)-(9)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体。
(11)上記(1)-(10)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体を含むガス吸着材。
(12)上記(11)に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
(13)上記(11)に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
本発明の多孔性高分子金属錯体は多量のガスを吸蔵、放出し、かつ、ガスの選択的吸着を行うことが可能である。また本発明の多孔性高分子金属錯体からなるガス吸蔵材料を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を製造することが可能になる。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、また例えば、圧力スイング吸着方式(以下「PSA方式」と略記)のガス分離装置として使用すれば、非常に効率良いガス分離が可能である。また、圧力変化に要する時間を短縮でき、省エネルギーにも寄与する。さらに、ガス分離装置の小型化にも寄与しうるため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減できるため、結局最終製品の製造コストを削減する効果を有する。
本発明の多孔性高分子金属錯体の他の用途としては、ガス貯蔵装置が挙げられる。本発明のガス吸着材をガス貯蔵装置(業務用ガスタンク、民生用ガスタンク、車両用燃料タンクなど)に適用した場合には、搬送中や保存中の圧力を劇的に低減させることが可能である。搬送時や保存中のガス圧力を減少させ得ることに起因する効果としては、形状自由度の向上がまず挙げられる。従来のガス貯蔵装置においては、保存中の圧力を維持しなくてはガス吸着量を高く維持できない。しかしながら、本発明のガス貯蔵装置においては、圧力を低下させても充分なガス吸着量を維持できる。
ガス分離装置やガス貯蔵装置に適用する場合における、容器形状や容器材質、ガスバルブの種類などに関しては、特に特別の装置を用いなくてもよく、ガス分離装置やガス貯蔵装置に用いられているものを用いることが可能である。ただし、各種装置の改良を排除するものではなく、いかなる装置を用いたとしても、本発明の多孔性高分子金属錯体を用いている限りにおいて、本発明の技術的範囲に包含されるものである。
本発明の多孔性高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造を構成する二次元四角格子を示す。 第一配位子の四角格子とビピリジル型の第二配位子から形成される、本発明の多孔性高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造を示す。 本発明の多孔性高分子金属錯体のふっ素を含有する置換基の置換の様子を示す。ふっ素を含有する置換基が第一配位子Xおよび第二配位子Yのうち第一配位子Xに置換している場合を示す。 本発明の多孔性高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造においてふっ素を含有する置換基が第一配位子Xに1個置換している場合を示す。 本発明の多孔性高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造においてふっ素を含有する置換基が第一配位子Xに2個置換している場合を示す。 本発明の多孔性高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造においてふっ素を含有する置換基が第二配位子Yに1個置換している場合を示す。 実施例1で製造した単結晶から得られた構造を示す。 実施例2で製造した単結晶から得られた構造を示す。 実施例1で製造した単結晶の粉末X線回折チャートである。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、下記式(1)で表され、かつ図1から3で模式的にしめされる二次元四角格子の積層型ネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体である。
[MXY]n (1)
(式中、Mは2価の遷移金属イオン、Xはテレフタル酸型の第一配位子、Yはビピリジル型の第二配位子である。X,Yのいずれかは炭素数1から8であるパーフルオロアルキル基を少なくとも1個以上含有する。nは、[MXY]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
本発明の多孔性高分子金属錯体の、配位子Xからなる四角格子ネットワーク構造を図面を用いて模式的に説明する。図1〜6において丸(●)は金属イオン、太い棒は第一配位子X、両端に●を有する細い棒は第二配位子Yを示す。
図1に本発明の多孔性高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造を示す。図1では4*4の格子のみ書き抜いたが、実際は無限格子状である。
テレフタル酸型の第一配位子は、2価の金属イオンと配位結合して、四角格子を形成する(図1(a)(b))。四角格子は、合成条件や、配位子、金属イオンの性質に応じ、正方形格子である場合も、菱形様の格子を形成する場合もあるが、いずれもトポロジー的には同一であり、四角格子と定義する事ができる。この四角格子は、側面から見た場合は、ほぼ平面状をしている(図1(c)(d))。ただし、合成条件や、配位子、金属イオンの性質に応じ、完全に平面に近い場合(図1(c))もジグザグ構造に近い場合(図1(d))もあり得るが、いずれもトポロジー的には同一であり、平面と定義する事ができる。
図2は、第一配位子の四角格子とビピリジル型の第二配位子から形成される、本発明の多孔性高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造を示す。上記の、第一配位子と金属イオンから形成された四角格子は、さらに金属イオンを第二配位子が架橋することで三次元化する。この三次元ネットワーク構造を、側面から見た模式図を示す。第一配位子の四角格子からなる平面が横に、第二配位子が縦に描かれているが、実際には四角格子が紙面の前後に伸びているため、全体としては三次元構造を有している。合成条件によっては、第二配位子は、第一配位子の四角格子に対して斜めになる場合もある(図2(b))が、これもトポロジー的には図2(a)と同一の三次元構造と定義できる。
図3は、ふっ素を含有する置換基の置換の様子を示す。ふっ素を含有する置換基は、配位子X,Yのいずれに置換していても良い。左図はふっ素を含有する置換基で置換されていない第一配位子Xおよび第二配位子Yを示し、右図はふっ素を含有する置換基が第一配位子Xに置換している様子を示す。
図4〜6は、第一配位子Xの四角格子と第二配位子Yから形成される本発明の多孔性高分子金属錯体の三次元ネットワーク構造を示し、いずれも、左図は配位子Xから成る四角格子の抜き書き(上面図)であり、右図は三次元構造の側面図である。いずれも4*4の格子のみの抜き書きであるが、実際は無限格子である。この三次元ネットワーク構造において、第一配位子Xに1個置換している場合を図4に、第一配位子Xに2個置換している場合を図5に、第二配位子Yに1個置換している場合を図6に示す。図4〜6のいずれかに示したとおり、XまたはYのいずれかの配位子が1個以上の置換基を有していれば、三次元ネットワーク構造の格子内にふっ素を含有する置換基が存在しうる。
次に、実施例で製造した単結晶を単結晶測定装置(極微小結晶用単結晶構造解析装置)にて測定し、得られた回折像を解析ソフトウエアを使用して解析して確認された結晶構造に基づいて、本発明の多孔性高分子金属錯体の構造を図面を用いて説明する。
図7(a)に実施例1で得られた多孔性高分子金属錯体の単結晶X線構造解析で得られた構造を結晶学的上のc軸から見た図(図4左図に相当。)、テレフタル酸から成るゆがんだ四角格子を3*3のみ切り抜いて示している。2個の金属イオンからなるクラスタ(SBU)が第一配位子であるテレフタル酸により連結されて四角格子を形成し、格子の間には、第二配位子に置換したふっ素原子を含む置換基が格子内に突き出す様子が見えている。図7(b)には、本錯体の、結晶学的上のb軸から見た図(図5右図に相当。ただし第二配位子のふっ素を含有する置換基が2個である場合。)を示す。図7(a)で示した第一配位子により形成された四角格子平面が横に直線上に伸びており、これらをピリジル型の第二配位子が連結し、三次元化している。ふっ素を含有する置換基は第一配位子のテレフタル酸には置換して居らず、ピリジル型の第二配位子に2個置換している事が判る。図7(c)には金属イオンと配位子の結合様態を示す。図では、見やすくするために水素原子は省略し、亜鉛イオン、酸素原子に符号を付加したが、それ以外はすべて炭素原子である。亜鉛イオンは4個のカルボキシル基と配位結合したユニットが上下に二つ配位したパドルホイール構造を形成している事がわかる。本パドルホイール構造を、テレフタル酸型第一配位子が架橋する事で四角格子平面が形成され、さらにこのパドルホイール構造にピリジル型配位子が連結し、三次元化している。図7(d)に第一配位子および第二配位子の化学式を示す。
図8に実施例2で得られた多孔性高分子金属錯体の単結晶X線構造解析で得られた構造を結晶学的上のc軸から見た図(図5左図に相当)を示す。テレフタル酸から成る四角格子を2*2のみ切り抜いて示している。格子内には、テレフタル酸型第一配位子に2個置換したふっ素を含有する置換基がつきだしている。図8(b)には、本錯体の、結晶学的上のb軸から見た図(図5右図に相当)を示す。図8(a)で示した四角格子平面を側面から見た状態が水平に伸びており、これらをビピリジル型の第二配位子が連結し、三次元化している。第一配位子に置換した2個のふっ素を含有する置換基が格子内に伸びている事が判る。実施例1の化合物と同様に、亜鉛イオン2個をテレフタル酸に置換したカルボキシル基が連結することでパドルホイール構造が形成されている。
図8(c)には金属イオンと配位子の結合様態を示す。この図でも、見やすくするために水素原子は省略し、亜鉛イオン、酸素原子に符号を付加したが、それ以外はすべて炭素原子である。図7(c)と同様に、パドルホイール構造が形成され、さらにこのパドルホイールが配位子により架橋されることで、実施例1の化合物と同様のネットワーク構造が形成されている事がわかる。図8(d)に第一配位子および第二配位子の化学式を示す。
図7,8で示した構造はいずれも第一配位子であるテレフタル酸型の第一配位子による二次元四角格子のネットワーク構造を有しており、その四角格子が、ビピリジル型の第二配位子により架橋されることで三次元化しているという点で同一である。図7で示した多孔性高分子金属錯体では、ふっ素を含有する置換基は、ビピリジル型の第二配位子に、図8で示した多孔性高分子金属錯体では、ふっ素を含有する置換基は、テレフタル酸型の第一配位子に置換しているが、いずれの場合でもふっ素を含有する置換基は、三次元格子の内部に伸び出している点で同一と見なすことができる。
本発明の化合物の基本構造は、テレフタル酸型の第一配位子により構成される四角格子が、ビピリジル型の第二配位子により架橋された三次元型のネットワーク構造である。ここで重要なのはネットワークのトポロジーであり、個々の結合角は、本化合物が柔軟性を有するが故に、必ずしも常に図と同一の結合角を有するとは限らない。たとえば図8ではピリジル型の第二配位子は、第一配位子が構成する四角格子に対して斜めに配位しているが、トポロジー的には図7の構造と同一と見なすことができる。
本発明の多孔性高分子金属錯体は多孔体であるため、水やアルコールやエーテルなどの有機分子に触れると孔内に水や有機溶媒を含有し、たとえば式(2)
[MXY]n(G)m (2)
(式中、Mは2価の遷移金属イオン、Xはテレフタル酸型の第一配位子、Yはビピリジル型の第二配位子である。X,Yのいずれかは炭素数1から8であるパーフルオロアルキル基を少なくとも1個以上含有する。Gは後述のような合成に使用した溶媒分子や空気中の水分子であり、通常ゲスト分子と呼ばれる。mは金属イオン1に対して0.2から6である。nは、[MXY]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)であるような複合錯体に変化する場合がある。
しかし、これらの複合錯体中の上記Gで表されるゲスト分子は、多孔性高分子金属錯体に弱く結合しているだけであり、ガス吸着材として利用する際の減圧乾燥などの前処理によって除かれ、元の式(1)で表される錯体に戻る。そのため、式(2)で表されるような錯体であっても、本質的には本発明の多孔性高分子金属錯体と同一物と見なすことができる。
本発明の方法では、式(1)で表される化合物は、亜鉛塩や銅塩などの金属塩、テレフタル酸型の第一配位子、ビピリジル型の第二配位子を溶媒に溶かして溶液状態で混合することで製造できる。
溶媒としては、アルコールなどのプロトン系溶媒とジメチルホルムアミドなどのホルムアミドルの混合溶媒を利用すると良好な結果が得られる。アルコールなどのプロトン系溶媒及びジメチルアミドなどのホルムアミド類は亜鉛塩をよく溶解し、さらに亜鉛イオンや対イオンに配位結合や水素結合することで亜鉛塩を安定化し、配位子との急速な反応を抑制することで、副反応を抑制する。アルコールの例としてはメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなどの脂肪族系1価アルコール及びエチレングリコールなどの脂肪族系2価アルコール類を例示できる。安価でかつニ亜鉛塩の溶解性が高いという点でメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコールが好ましい。またこれらのアルコールは単独で用いてもよいし、複数を混合使用してもよい。ホルムアミド類の例としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジブチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが例示出来る。亜鉛塩の溶解性が高いという点で、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドが好ましい。
アルコール類とジメチルホルムアミド類の混合比率は1:100〜100:0(体積比)で任意である。配位子、金属塩の両方の溶解性が高まり、副生成物の発生を抑制出来るという点で、混合比率は90:10〜10:90(体積比)、反応を加速できるという観点から80:20〜20:80(体積比)が好ましい。
溶媒として前記のアルコール類やホルムアミド類の混合溶媒に別種の有機溶媒を混合して使用することも好ましい。混合比率は1:100〜100:0(体積比)で任意である。アルコール類とジメチルホルムアミド類、他の有機溶媒に対する混合比率を30%以上にすることが、金属塩および配位子の溶解性を向上させる観点から好ましい。
本発明の新規な多孔性高分子金属錯体を形成するのに必要な金属イオンとしては、2価の遷移金属イオンが挙げられる。これらは、前述の金属クラスター(パドルホイール構造)を形成することで、配位子を結合して三次元構造を形成する。2価の遷移金属イオンの具体例としてはコバルト、ニッケル、銅、亜鉛イオンが挙げられる。得られた多孔性高分子金属錯体の化学的安定性の観点から、銅イオン、亜鉛イオンが特に好ましい。
本発明の方法で使用する亜鉛塩としては、2価の亜鉛イオンを含有している塩類であればよく、溶媒への溶解性が高いという点で、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、ぎ酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛が好ましく、反応性が高いという点で、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛が特に好ましい。
本発明の方法で使用する銅鉛塩としては、2価の銅イオンを含有している塩類であればよく、溶媒への溶解性が高いという点で、硝酸銅、酢酸銅、硫酸銅、ぎ酸銅、塩化銅、臭化銅、ほうふっ化銅が好ましく、反応性が高いという点で、硝酸銅、硫酸銅、ほうふっ化銅が特に好ましい。
以下、テレフタル酸型の第一配位子に関して説明する。テレフタル酸型の配位子とは、分子内に2個のカルボキシル基及び1個以上の芳香環を含み、カルボキシル基が芳香環に直接結合している直線状化合物である。基本骨格としては、テレフタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ターフェニルジカルボン酸などを例示できる。第二配位子がふっ素を含有する置換基を含んでいる時は、第一配位子はふっ素を含有する置換基を含む必要は無く、この場合、化学的に安定な多孔性高分子金属錯体を与える点で、テレフタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸が特に好ましい。第二配位子がふっ素を含有する置換基を含んでいない場合は、第一配位子がふっ素を含有する置換基を1個以上含む必要があり、この場合は、2位に置換基を有するテレフタル酸、2位及び5位に置換基を有するテレフタル酸、2位及び3位に置換基を有するテレフタル酸、2位に置換基を有する4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2位及び3位に置換基を有する4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2位及び5位に置換基を有する4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2位及び2’位に置換基を有する4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3位及び3’位に置換基を有する4,4’-ビフェニルジカルボン酸などを例示できる。化学的に安定な多孔性高分子金属錯体を与える点で2位に置換基を有するテレフタル酸、2位及び5位に置換基を有するテレフタル酸、2位及び3位に置換基を有するテレフタル酸、2位に置換基を有する4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2位及び2’位に置換基を有する4,4’-ビフェニルジカルボン酸が好ましい。
本発明のテレフタル酸型の第一配位子として好ましいものとして下記式で表わされる化合物がある。
上記式中、xは、第二配位子がふっ素を含有する置換基を含んでいない場合は1〜4の整数であり、1が好ましく、2または3も好ましいが、CnF2n+1を2個置換する場合、それらの置換位置は2位と3位、2位と5位、2位と6位のいずれでもよく、2位と5位が好ましい。上記式中、xは、第二配位子がふっ素を含有する置換基を含んでいる場合は0〜4の整数であり、0個が好ましく、1個または2個も好ましいが、2個置換する場合、置換位置は2位と3位、2位と5位、2位と6位のいずれでもよく、2位と5位が好ましい。
以下、ビピリジル型の第二配位子に関して説明する。本第二配位子は、線状の分子であって、その両端に、配位点となるピリジル基を有している2座配位子である。具体的には芳香環を二個含む4,4’-ビピリジル、3,4’-ビピリジル、3,3’-ビピリジル、芳香環を3個含む3,6-ジ(4-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼンなどが挙げられる。これらの内、化学的に安定的な多孔性高分子金属錯体が得られるという点で、4,4’-ビピリジル、3,6-ジ(4-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼンが好ましい。第一配位子がふっ素を含有する置換基を含んでいる場合は、第二配位子がふっ素を含有する置換基を含む必要はなく、前記のピリジル型配位子そのものが使用出来る。第一配位子がふっ素を含有する置換基を含んでいない場合は、第二配位子が1個以上のふっ素を含有する置換基を置換している必要がある。この場合は、2位置換の4,4’-ビピリジル、3位置換の4,4’-ビピリジル、2位及び2’位置換の4,4’-ビピリジル、3位及び3’位置換の4,4’-ビピリジル、3個の芳香環の内の中央の芳香環の2位に置換基を有する1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン、3個の芳香環の内の中央の芳香環の2位及び3位に置換基を有する1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン、3個の芳香環の内の中央の芳香環の2位及び5位に置換基を有する1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン等が挙げられる。化学的に安定な多孔性高分子金属錯体を与える点で2位置換の4,4’-ビピリジル、3位置換の4,4’-ビピリジル、2位及び2’位置換の4,4’-ビピリジル、3位及び3’位置換の4,4’-ビピリジル、3個の芳香環の内の中央の芳香環の2位及び3位に置換基を有する1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン、3個の芳香環の内の中央の芳香環の2位及び5位に置換基を有する1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン等が挙げられる。
本発明のビピリジル型の第二配位子として好ましいものとして下記式で表わされる化合物がある。
上記式中、yは第一配位子がふっ素を含有する置換基を含んでいない場合は1〜4の整数であり、1が好ましく、2または3も好ましいが、CnF2n+1を2個置換する場合、それらの置換位置は2位と3位、2位と5位、2位と6位のいずれでもよく、2位と5位が好ましい。上記式中、xは、第二配位子がふっ素を含有する置換基を含んでいる場合は0〜4の整数であり、0個が好ましく、1個または2個も好ましいが、2個置換する場合、置換位置は2位と3位、2位と5位、2位と6位のいずれでもよく、2位と5位が好ましい。
以下、ふっ素を含有する置換基に関して説明する。ふっ素を含有する置換基は多数のふっ素原子が置換した官能基であって、具体的には直鎖状または枝分かれのある炭素数1から8であるパーフルオロアルキル基が例示できる。特にガス分離特性が優れる点で、CF3,C25,n-C37,n-C49,n-C511基が好ましい。ベンゼン環へのパーフルオロアルキル基の導入方法としては、たとえば、柴崎ら、Chem. Asian J. 2006, 1, 314 - 321を参照することができる。
本発明の方法では、反応促進剤として塩基を添加することも可能である。塩基は、配位子のカルボキシル基を陰イオンに変換する事で、反応を加速すると推定される。塩基としてはたとえば無機塩基として水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが例示できる。有機塩基としては、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、ピリジン、2,6-ルチジンなどが例示出来る。反応加速性が高いという点で、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、およびピリジンが好ましい。添加量としては、使用するイソフタル酸の総モルに対し、反応の加速効果が顕著であるという点で好ましくは0.1〜6.0モル、副反応少ないという点でさらに好ましくは0.5から4.0モルである。
金属塩の溶液および配位子を反応させるに当たり、金属塩および配位子を容器に装填した後、溶媒を添加する方法以外に、亜鉛塩、配位子をそれぞれ別個に溶液として調製した後、これらの溶液を混合してもよい。溶液の混合方法は、金属塩溶液に配位子溶液を添加しても、その逆でもよい。また、金属塩溶液と配位子溶液を、積層した後に自然拡散による方法で混合してもよい。混合法としては、必ずしも溶液で行う必要はなく、例えば、金属塩溶液に固体の配位子を投入し、同時に溶媒を入れる方法や、反応容器に金属塩を装填した後に、配位子の固体または溶液を注入し、さらに金属塩を溶かすための溶液を注入するなど、最終的に反応が実質的に溶媒中で起こる方法であれば、種々の方法が可能である。ただし、金属塩の溶液と配位子の溶液を滴下混合する方法が、工業的には最も操作が簡便であり、好ましい。
金属塩の溶液および配位子を反応させるに当たり、反応溶液を調製した後に、超音波を当てることが好ましい。超音波を当てることにより、配位子や金属塩の溶解が促進されるとともに、溶液中での配位子と金属イオンの配位が促進されることで、本願発明の三次元の積層型ネットワーク構造の形成が促進される。構造形性促進の観点から超音波としては20KHz以上、1200KHz以下が好ましい。超音波を当てる時間は、5分以上8時間未満が好ましい。5分未満では効果が低く、8時間以上では効果が実質的に飽和する。
溶液の濃度は、金属塩溶液は80mmol/L〜2mol/L、好ましくは40mmol/L〜4mol/Lであり、配位子の有機溶液は80mmol/L〜2mol/L、好ましくは60mmol/L〜3mol/Lである。これより低い濃度で反応を行っても目的物は得られるが、製造効率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では、吸着能が低下するため好ましくない。
反応温度は−40〜180℃、好ましくは−10〜150℃である。これ以下の低温で行うと、原料の溶解度が下がるため好ましくない。オートクレーブなどを用いて、より高温で反応を行うことも可能であるが、加熱などのエネルギーコストの割には、収率は向上しないため実質的な意味はない。
本発明の反応で用いられる金属塩と配位子の混合比率は、金属:配位子(第一配位子と第二配位子を合わせて)の比が1:5〜5:1のモル比、好ましくは1:3〜3:3のモル比の範囲内である。これ以外の範囲では、目的物の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して、目的物の取り出しが困難となる。
本発明の反応で用いられる金属塩と第一配位子と第二配位子の混合比率は、金属:2種配位子の合計の比が1:5〜5:1のモル比、好ましくは1:3〜3:3のモル比の範囲内である。さらに、第一配位子と第二配位子の比が1:3〜3:1のモル比、好ましくは1:2〜2:1のモル比の範囲内である。これ以外の範囲では、目的物の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して、目的物の取り出しが困難となる。
反応は通常のガラスライニングのSUS製の反応容器および機械式攪拌機を使用して行うことができる。反応終了後は濾過、乾燥を行うことで目的物質と原料の分離を行い、純度の高い目的物質を製造することが可能である。
上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体が目的とする三次元のネットワーク構造を有しているかどうかは、単結晶X線結晶解析により得られた反射を解析することで確認することが出来る。上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体のガス吸着能は、市販のガス吸着装置を用いて測定が可能である。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、原料として複数種のふっ素原子を含有する側鎖を有する二座配位子を混合使用して、使用した複数種の配位子を含有する多孔性高分子金属錯体を合成する、いわゆる固溶体型の多孔性高分子金属錯体を形成する事が可能であることが確認された。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、三次元のネットワーク構造であり、本ネットワーク構造がふっ素を含む官能基を有する構造をしている。この格子内に存在するふっ素を含む官能基がガス吸着性に影響を与えていると考えられる。しかし、本発明は理論に拘束されるものではなく、本発明の多孔性高分子金属錯体の特性もこの理論によって制限されるものではない。
多孔性高分子金属錯体の調製方法は種々の条件があり、一義的に決定できるものではないが、ここでは実施例に基づき説明する。
粉末X線回折測定には、ブルカーAX(株)社製粉末X線装置DISCOVER D8 with GADDSを用いた。
実施例1
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、テレフタル酸0.01ミリモルとジエチルホルムアミド(1mL)に溶解し、卓上型超音波洗浄器BRANSON(型式B2510J−DTH)を使用して超音波を1時間当てた。2,5-ビスノルマルノナフルオロブチル-1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン(2,5位にそれぞれノルマルCF基を有し、かつ、1,4位それぞれに4-ピリジル基を有するベンゼン)0.01ミリモルをジエチルエーテル1mLに分散し、1時間超音波を当て、これらの溶液を混合し、直径8ミリのガラス管に入れて、10℃で14日間保持した。得られた無色の単結晶を大気に暴露させないようにパラトンにてコーティングした後、(株)リガク社製単結晶測定装置(極微小結晶用単結晶構造解析装置VariMax、MoK・線(λ=0.71069Å))にて測定し(照射時間32秒、d=45ミリ、2θ=−20,温度=−103℃)、得られた回折像を解析ソフトウエア、リガク(株)製解析ソフトウエア「CrystalStructure」を使用して解析し、図7に示すような三次元構造を有していることを確認した(a=21.328(12), b=21.347(11), c=18.300(1); α=90.00、β=100.132, γ=90.00; 空間群=C2/m))。また得られた単結晶を軽くすりつぶして得られた粉末を測定した、粉末X線回折チャートを図9に示す。
解析により、細孔内に存在するジメチルホルムアミド分子の存在が明らかになったが、図の見やすさの為に図7からは削除した。本ジメチルホルムアミド分子(ゲスト分子)は、後述の吸着のための前処理により細孔から除かれる。
実施例2
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、2,5-ビス(ノルマルノナフルオロブチル)-1,4-ベンゼンジカルボン酸(2,5位にそれぞれノルマルCF基を有するテレフタル酸)0.01ミリモル及び4,4’-ビピリジン0.01ミリモルをジメチルホルムアミド2mLにとかし、実施例1と同様に1時間超音波を当て、アルミブロックバスで振動を与えないように注意しながら80℃で7日間加熱した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図8に示すような三次元構造を有していることを確認した(a=10.894, b=11.080, c=13.776; α=91.62、β=113.23, γ=90.10; 空間群=P-1))。
実施例3
硝酸銅3水和物0.01ミリモル、テレフタル酸0.01ミリモルとジエチルホルムアミド(1mL)に溶解し、超音波を1時間当てた。2,5-ビスノルマルノナフルオロブチル-1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン(2,5位にそれぞれノルマルCF基を有し、かつ、1,4位それぞれに4-ピリジル基を有するベンゼン)0.01ミリモルをジエチルエーテル1mLに分散し、実施例1と同様に1時間超音波を当て、これらの溶液を混合し、直径8ミリのガラス管に入れて、10℃で14日間保持した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図7に示すような三次元構造を有していることを確認した。
実施例4
硝酸銅3水和物0.01ミリモル、2,5-ビス(ノルマルノナフルオロブチル)-1,4-ベンゼンジカルボン酸(2,5位にそれぞれノルマルCF基を有するテレフタル酸)0.01ミリモル及び4,4’-ビピリジン0.01ミリモルをジメチルホルムアミド2mLにとかし、実施例1と同様に1時間超音波を当て、アルミブロックバスで振動を与えないように注意しながら80℃で7日間加熱した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図8に示すような三次元構造を有していることを確認した。
実施例5
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、テレフタル酸0.01ミリモルとジエチルホルムアミド(1mL)に溶解し、超音波を1時間当てた。2-トリフルオロメチル-1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン(2位にCF基を有し、かつ、1,4位それぞれに4-ピリジル基を有するベンゼン)0.01ミリモルをジエチルエーテル1mLに分散し、実施例1と同様に1時間超音波を当て、これらの溶液を混合し、直径8ミリのガラス管に入れて、10℃で14日間保持した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図7に示すような三次元構造を有していることを確認した。
実施例6
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、テレフタル酸0.01ミリモルとジエチルホルムアミド(1mL)に溶解し、超音波を1時間当てた。2-ノルマルウンデカフルオロペンチル-1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン(2位にCF11基を有し、かつ、1,4位それぞれに4-ピリジル基を有するベンゼン)0.01ミリモルをジエチルエーテル1mLに分散し、実施例1と同様に1時間超音波を当て、これらの溶液を混合し、直径8ミリのガラス管に入れて、10℃で14日間保持した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図7に示すような三次元構造を有していることを確認した。
実施例7
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、テレフタル酸0.01ミリモルとジエチルホルムアミド(1mL)に溶解し、超音波を1時間当てた。2、5-ビストリフルオロメチル-1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン(2、5位にCF基を有し、かつ、1,4位それぞれに4-ピリジル基を有するベンゼン)0.01ミリモルをジエチルエーテル1mLに分散し、実施例1と同様に1時間超音波を当て、これらの溶液を混合し、直径8ミリのガラス管に入れて、10℃で14日間保持した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図7に示すような三次元構造を有していることを確認した。
実施例8
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、テレフタル酸0.01ミリモルとジエチルホルムアミド(1mL)に溶解し、超音波を1時間当てた。2、5-ビスノルマルウンデカフルオロペンチル-1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン(2および5位にCF11基を有し、かつ、1,4位それぞれに4-ピリジル基を有するベンゼン)0.01ミリモルをジエチルエーテル1mLに分散し、実施例1と同様に1時間超音波を当て、これらの溶液を混合し、直径8ミリのガラス管に入れて、10℃で14日間保持した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図7に示すような三次元構造を有していることを確認した。
実施例9
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、2-ノルマルノナフルオロブチル-1,4-ベンゼンジカルボン酸(2位にノルマルCF基を有するテレフタル酸)及び4,4’-ビピリジン0.01ミリモルをジメチルホルムアミド2mLにとかし、実施例1と同様に1時間超音波を当て、アルミブロックバスで振動を与えないように注意しながら80℃で7日間加熱した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図8に示すような三次元構造を有していることを確認した。
実施例10
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、2-トリフルオロメチル-1,4-ベンゼンジカルボン酸(2位にCF基を有するテレフタル酸)0.01ミリモル及び4,4’-ビピリジン0.01ミリモルをジメチルホルムアミド2mLにとかし、実施例1と同様に1時間超音波を当て、アルミブロックバスで振動を与えないように注意しながら80℃で7日間加熱した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図8に示すような三次元構造を有していることを確認した。
実施例11
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、2-ノルマルウンデカフルオロペンチル-1,4-ベンゼンジカルボン酸(2位にCF11基を有するテレフタル酸)0.01ミリモル及び4,4’-ビピリジン0.01ミリモルをジメチルホルムアミド2mLにとかし、実施例1と同様に1時間超音波を当て、アルミブロックバスで振動を与えないように注意しながら80℃で7日間加熱した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図8に示すような三次元構造を有していることを確認した。
実施例12
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、2、5-ビストリフルオロメチル-1,4-ベンゼンジカルボン酸(2および5位にCF基を有するテレフタル酸)0.01ミリモル及び4,4’-ビピリジン0.01ミリモルをジメチルホルムアミド2mLにとかし、実施例1と同様に1時間超音波を当て、アルミブロックバスで振動を与えないように注意しながら80℃で7日間加熱した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図8に示すような三次元構造を有していることを確認した。
実施例13
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、2、5-ビスノルマルウンデカフルオロペンチル-1,4-ベンゼンジカルボン酸(2および5位にCF11基を有するテレフタル酸)0.01ミリモル及び4,4’-ビピリジン0.01ミリモルをジメチルホルムアミド2mLにとかし、実施例1と同様に1時間超音波を当て、アルミブロックバスで振動を与えないように注意しながら80℃で7日間加熱した。得られた無色の単結晶を実施例1と同様に測定、解析を行い、図8に示すような三次元構造を有していることを確認した。
<ガス吸着の結果>
得られたガス吸着材の二酸化炭素吸着性および窒素の吸着性をBET自動吸着装置(日本ベル株式会社製ベルミニII)をもちいて評価した(測定温度:二酸化炭素は195K、窒素は77K)。測定に先立って試料を393Kで6時間真空乾燥して、微量残存している可能性がある溶媒分子などを除去した。
表1に、実施例1ー13で得られた多孔性高分子金属錯体の二酸化炭素と窒素の吸着量を示す。
いずれも二酸化炭素の吸着量が窒素と比較して多く、三次元ネットワーク構造に置換しているふっ素原子を含む官能基が二酸化炭素と相互作用することで特異的な吸着能が発現している事が示唆された。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、配位子の整列によって形成される多数の微細孔が物質内部に存在する。この多孔性を生かして二酸化炭素などのふっ素原子と親和性を有するガスの特異的な吸着が可能であり、これらのガスの分離、貯蔵に好適に使用出来る。

Claims (13)

  1. 下記式(1)
    [MXY]n (1)
    (式中、Mは2価の遷移金属イオン、Xはテレフタル酸型の第一配位子、Yはビピリジル型の第二配位子である。X,Yのいずれかは炭素数1から8であるパーフルオロアルキル基を少なくとも1個以上含有する。nは、[MXY]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
    で表され、
    前記ビピリジル型の第2配位子Yは、パーフルオロアルキル基で置換していても置換していなくてもよい芳香環を2または3個含む線状の分子であって、その両端に、配位点となるピリジル基を有している2座配位子であり、
    配位子Xにより四角格子状のネットワークが形成され、さらにこれが配位子Yにより架橋された三次元のネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体。
  2. 前記ビピリジル型の第2配位子が、パーフルオロアルキル基で置換していても置換していなくてもよいが、4,4’-ビピリジル、3,4’-ビピリジル、3,3’-ビピリジル、3,6-ジ(4-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼンから選択される、請求項1に記載の多孔性高分子金属錯体。
  3. 前記Xが下記式で表される第一配位子である、請求項1に記載の多孔性高分子金属錯体。
  4. 前記Yが下記式で表される第二配位子である、請求項1または3に記載の多孔性高分子金属錯体。
  5. 前記パーフルオロアルキル基が、CF,C,n-C,n-C,n-C11,n-C817基から選ばれるものである、請求項1、3〜4のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体。
  6. 前記xが0〜4の整数である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体。
  7. 前記yが0〜4の整数である、請求項〜6のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体。
  8. 前記金属イオンが、4個のカルボキシル基と配位結合したユニットが上下に二つ配位したパドルホイール構造を有している、請求項1-7のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体。
  9. 2価の遷移金属イオンが銅イオンまたは亜鉛イオンである、請求項1-8のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体。
  10. 2価の遷移金属イオンが亜鉛イオンである、請求項1-9のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体。
  11. 上記請求項1-10のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体を含むガス吸着材。
  12. 上記請求項11に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
  13. 上記請求項11に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
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