JP2020105115A - 多孔性高分子金属錯体、ガス吸着材、これを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置 - Google Patents

多孔性高分子金属錯体、ガス吸着材、これを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置 Download PDF

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彰宏 堀
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Abstract

【課題】複数のネットワークが結合する事で形成された複層構造が積層した複層積層構造を有する新規な多孔性高分子金属錯体およびこれを用いた優れた特性を有するガス吸着材を提供する。【解決手段】式(I):[MX]n(式中、Mは2価の遷移金属イオンであり、Xは炭素数1〜10であるパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸配位子であり、nは、[MX]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)で表され、遷移金属イオンとイソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークが上下に二層以上結合した複層構造を有し、さらに前記複層ネットワーク構造が積層した複層積層型ネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体。【選択図】図6

Description

本発明は多孔性高分子金属錯体およびガス吸着材としての利用、ならびにこれを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置に関する。
ガス吸着材は、加圧貯蔵や液化貯蔵に比べて、低圧で大量のガスを貯蔵しうる特性を有する。このため、近年、ガス吸着材を用いたガス貯蔵装置やガス分離装置の開発が盛んである。ガス吸着材としては、活性炭やゼオライトなどが知られている。また最近は多孔性高分子金属錯体にガスを吸蔵させる方法も提案されている(特許文献1、非特許文献1参照)。
多孔性高分子金属錯体は、金属イオンと有機配位子から得られる結晶性固体で、種々の金属イオン、有機配位子の組み合わせおよび骨格構造の多様性から、様々なガス吸着特性を発現する可能性を秘めている。しかしながら、これらの従来提案されてきたガス吸着材は、ガス吸着量や作業性などの点で充分に満足できるものとはいえず、より優れた特性を有するガス吸着材の開発が所望されている。
多孔性高分子金属錯体の特徴の一つが、そのネットワーク構造である。一次元の鎖状物集合体、二次元の四角格子ネットワーク構造の積層体、ジャングルジム状の三次元構造など様々な構造の多孔性高分子金属錯体が知られている(非特許文献2)。これら多様な多孔性高分子金属錯体は、そのネットワーク構造、及びそれを構成している金属イオン、配位子の化学的性質、物理的な形状に由来して、様々な物性を発現する。
PCP(Porous Coordination Polymer、以下、本明細書では「多孔性高分子金属錯体」を「PCP」とも表現する。)のネットワーク構造が二次元平面に広がり、それが積層しているいわゆる二次元積層型のPCPが知られている。この様な積層型PCPの一部は、ガスの吸着に際し、層と層の間でずれが生じることで、いわゆるゲート現象が生じ、結果として優れたガス貯蔵、分離特性を発現する事が知られている(非特許文献3;特許文献2)。ピラジン、4,4’‐ビピリジン等の含窒素型配位子を利用して合成されたPCPは非常に多く知られている。一方、窒素原子を含まないカルボン酸型配位子からなる二次元PCPの例は少ない(非特許文献4〜6)。
カゴメ型PCPと呼ばれる一群のPCPは、銅イオンとイソフタル酸類から合成される二次元積層型PCPであり、含窒素配位子を含まないが、置換基の種類は極限られており、金属イオンも銅イオン、ルテニウムイオンに限定されている。一般論として、どの様な金属イオンと、どのような配位子と、どのような合成条件を組み合わせたらよいかは知られていない(非特許文献7〜9、特許文献3)。
多孔性高分子金属錯体のガス吸着特性を制御するために、配位子にふっ素原子を導入する試みが行われている(非特許文献10〜13)。ふっ素の材料への一般的な影響として、摺動性、撥水性などは知られているが、前述のふっ素を導入した多孔性高分子金属錯体の例では、ふっ素原子による水素の吸着特性の向上が述べられている。これらは、前述のふっ素原子が惹起する物性とは一致せず、またふっ素原子導入が水素の吸着特性を向上させる原理も詳しくは記載されていない。すなわち、ふっ素原子の導入が多孔性高分子金属錯体のガス吸着特性にどのような影響を及ぼすかははっきりとはわかっていない。
二次元積層型のPCPの、層間がずれるゲート現象は、吸着ガスを容易に回収できる利点等があり、既存の吸着材であるゼオライトや活性炭とは異なる、特異な現象として知られている。このゲート現象が生じるためには、積層している層間の相互作用の強さが重要な因子であることが示唆されている(上記非特許文献3)。また、パーフルオロアルキル基を含有する、いわゆる四角格子を有する二次元積層型のPCPが、ガス吸着に際してゲート現象を発現する事が知られている(特許文献4)。しかし具体的にどのようなネットワーク構造や、どのような原子を積層している層の間に配置する事でゲート現象が出るのかは知られていない。ふっ素原子同士の相互作用が弱い事から、層間にふっ素原子を導入することで、層間相互作用が弱くなる事は推測されるが、どのようなネットワーク構造の二次元PCPに、どのような形態でふっ素原子を導入すればゲート現象が生じ、さらに優れたガス分離能が発現するかは知られていない。
特開2000−109493号公報 特開2005−232222号公報 特開2012−228667号公報 特開2015−131792号公報
北川進、集積型金属錯体、講談社サイエンティフィク、2001年214-218頁 Robsonら、Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 1460 ± 1494 上代ら、Int. J. Mol. Sci. 2010, 11, 3803 Yaghiら、J. Am. Chem. Soc., Vol. 118, No. 38, 1996、9096 Zhaoら、Inorganic Chemistry, Vol. 45, No. 21, 2006 8677 Roseinskyら、Chem. Commun(2007)1532-1534)。 北川ら、Chem. Commun., 2005, 865-867 Morrisら、Nature Chem., 2011 , 3, 304 Zaworotkoら、Chem. Commun., 2004, 2534-2535 Omaryら、J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, 15454 Omaryら、Angew. Chem. Int. Ed.2009, 48, 2500 Liら、J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 1308 Fereyら、J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 1127-1136
本発明は、2価の遷移金属イオンとふっ素原子を含有するイソフタル配位子から構成された層状構造ネットワークが二層以上結合した、複層ネットワーク構造がさらに積層した複層積層型構造を有する新規な多孔性高分子金属錯体およびこれを用いた優れた特性を有するガス吸着材を提供することである。また本発明は、前記特性を有するガス吸着材を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を併せて提供することを目的とする。
本発明者らは、前述のような問題点を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、5位に炭素数が1〜10のパーフルオロアルキル基を有するイソフタル酸配位子を遷移金属イオンと反応させる際に、水系溶媒を用いて高温で反応させることで合成される層状構造ネットワークが、二層以上結合した構造の層である複層ネットワーク構造を形成し、この複層ネットワーク構造間に、突き出しているパーフルオロアルキル基同士が凝集した部分が存在する新規な複層積層型ネットワークPCPを合成でき、さらにこの二複層積層型ネットワークPCPが特有のガス吸着能を有する事を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、5位に炭素数が1〜10のパーフルオロアルキル基を有するイソフタル酸を遷移金属イオンと反応させて得られる層状構造ネットワークが、二層以上結合した複層ネットワーク構造を形成し、さらにこれらが積層した複層積層型ネットワーク構造を有し、パーフルオロアルキル基が複層積層型ネットワーク構造間に凝集している、多孔性高分子金属錯体であり、本材料のガス吸蔵材料としての利用、本ガス吸着材を内部に収容してなるガス貯蔵装置、およびガス分離装置に関する発明である。
すなわち本発明は下記にある。
(1) 下記式(I)
[MX]n (I)
(式中、Mは2価の遷移金属イオンであり、Xは炭素数1〜10であるパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸配位子であり、nは、[MX]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
で表され、前記遷移金属イオンと前記イソフタル配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークが上下に二層以上結合した複層ネットワーク構造を有し、さらに前記複層ネットワーク構造が積層した複層積層型ネットワーク構造を有し、
前記複層積層型ネットワーク構造の、上側複層ネットワーク構造から下に突き出したイソフタル酸の5位のパーフルオロアルキル基と、下側複層ネットワーク構造から上に突き出したイソフタル酸の5位のパーフルオロアルキル基同士が凝集した部分が存在する、多孔性高分子金属錯体。
(2) 下記式(III)
[MXL]n (III)
(式中、Mは2価の遷移金属イオンであり、Xは炭素数1〜10であるパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸配位子であり、nは、[MXL]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。Lは合成時に使用した溶媒分子、反応促進剤分子、又は水分子であり、zは2価の遷移金属イオン1に対して1または2である。)で表され、前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークが上下に二層以上結合した複層構造を有し、さらに前記複層構造が積層した複層積層型ネットワーク構造を有し、
前記複層積層型ネットワーク構造の、上側複層ネットワーク構造から下に突き出したイソフタル酸の5位のパーフルオロアルキル基と、下側複層ネットワーク構造から上に突き出したイソフタル酸の5位のパーフルオロアルキル基同士が凝集した部分が存在する、多孔性高分子金属錯体。
(3) 前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークの上下の結合が、配位結合、イオン結合、または共有結合である前記(1)または(2)に記載の多孔性高分子金属錯体。
(4) 前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が、四角格子である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体。
(5) 前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークが、カゴメネットワークである、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体。
(6) 前記2価の遷移金属イオンが、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオン、ニッケルイオンから選ばれる、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体。
(7) 前記パーフルオロアルキル基が、CF3、C25、n−C37、n−C49、n−C511、n−C817、n−C1021から選ばれる、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体を含むガス吸着材。
(9) 前記(8)に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
(10) 前記(8)に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、多量のガスを吸着、放出し、且つガスの選択的吸着を行うことができる。また本発明の多孔性高分子金属錯体からなるガス吸着材料を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を製造することができる。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、また例えば、圧力スイング吸着方式(Pressure Swing Adsorption、以下「PSA方式」と略記)のガス分離装置として使用すれば、非常に効率良いガス分離が可能である。また、圧力変化に要する時間を短縮でき、省エネルギーにも寄与する。さらに、ガス分離装置の小型化にも寄与しうるため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減できるため、結局最終製品の製造コストを削減する効果を有する。
本発明の多孔性高分子金属錯体の他の用途としては、ガス貯蔵装置が挙げられる。本発明のガス吸着材をガス貯蔵装置(業務用ガスタンク、民生用ガスタンク、車両用燃料タンクなど)に適用した場合には、搬送中や保存中の圧力を劇的に低減させることができる。搬送時や保存中のガス圧力を減少させ得ることに起因する効果としては、形状自由度の向上がまず挙げられる。従来のガス貯蔵装置においては、保存中の圧力を維持しなくてはガス吸着量を高く維持できない。しかしながら、本発明のガス貯蔵装置においては、圧力を低下させても充分なガス吸着量を維持できる。
ガス分離装置やガス貯蔵装置に適用する場合における、容器形状や容器材質、ガスバルブの種類などに関しては、特に特別の装置を用いなくてもよく、ガス分離装置やガス貯蔵装置に用いられているものを用いることが可能である。ただし、各種装置の改良を排除するものではなく、いかなる装置を用いたとしても、本発明の多孔性高分子金属錯体を用いている限りにおいて、本発明の技術的範囲に包含されるものである。
本発明の1つの態様である多孔性高分子金属錯体の層状構造ネットワークが二層結合した複層構造のネットワーク構造を上から見た図である。 図1に表した複層構造のネットワーク構造を、ソフトウエアを用いて1層分のネットワーク構造だけを切り出した図を示す。ソフトウエアを用いて切断しているので、化学結合は正常な状態を示していないが、四角格子構造であることはよく分かる。 図1に表した複層構造のネットワーク構造を横からみた図である。分かりやすくするために、水素とイソフタル酸の置換基は除去されている。合成時に存在するピリジンは表示されている。図1に見られるイソフタル酸からなる格子が積層して二層構造になっている。 本発明の1つの態様である多孔性高分子金属錯体の、遷移金属イオンとイソフタル酸配位子から構成される四角格子の4隅にある金属イオンクラスタの例を示す図である。この図では、コバルト4個がイソフタル酸に連結されることで4核クラスタとなっている。4個のコバルトイオンに計8個のイソフタル酸が配位している為、四角格子がさらに二層連結される構造が生じている。 本発明の1つの態様である多孔性高分子金属錯体の、複層構造の積層型ネットワーク構造を、イソフタル酸の置換基を省略しないで、1つの複層積層型ネットワークのみを側面から見た図である。 図5に示す複層構造が多数積層した状態を示す図である。それぞれの複層構造の間にパーフルオロアルキル基の凝集構造が形成されている。
本発明は、下記式(I)
[MX]n (I)
(式中、Mは2価の遷移金属イオン、Xは炭素数1〜10であるパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸配位子である。nは、[MX]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
で表され、複層積層型ネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体を提供する。本発明の多孔性高分子金属錯体は、2価の遷移金属イオンとイソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークが形成され、さらにその層状構造ネットワークが、配位結合、イオン結合、または共有結合により上下に二層以上積層された複層複層積層型ネットワーク構造を有し、それらの複層積層型ネットワーク構造と複層積層型ネットワーク構造との間にイソフタル酸配位子の5位のパーフルオロアルキル基が突き出して、パーフルオロアルキル基が凝集した部分が存在する。
本発明のPCPは、上記の様に特異な複層積層型構造のネットワークを有している。図1〜6を用いて、遷移金属イオンとイソフタル酸配位子から構成される四角格子のネットワークが上下二層形成された複層構造を例に説明する。
図1は、本発明の1つの態様の多孔性高分子金属錯体の、二重になった複層の層状ネットワーク構造を上から見た図である。イソフタル酸の置換基、水素原子、金属イオンに配位している合成時に存在するピリジン(但し、窒素は描画している)は見やすさのために除去してある。この図から層状ネットワーク構造が四角格子であることが分かる。
図2は、複層の層状ネットワーク構造を、見やすさのために、画像処理により1層だけを抜き書きした図である。但し、イソフタル酸の置換基、水素原子、金属イオンに配位している合成時に存在するピリジンは見やすさのために除去してある。ソフトウエアを用いて、複層構造の一方の層との化学結合を切断しているので、化学結合は異常な状態であるが、この図から層状ネットワーク構造が、四角格子であることがはっきりと分かる。
図3は、複層の層状構造を横からから見た図である。但し、イソフタル酸の置換基、水素原子は見やすさのために除去してある。図2で示された四角格子が上下二層積層し、それぞれの層間は、単なるファンデルワールス力や水素結合ではなく、イソフタル酸のカルボキシル基の酸素と金属イオンの間の配位結合により結合して、二層構造が形成されている事が分かる。
図4は、四角格子の四隅にある金属イオンクラスタを示している。ただし、イソフタル酸の置換基、水素原子、金属イオンに配位している合成時に存在するピリジンは見やすさのために除去してある。4個の金属イオン(図4ではコバルトイオン)が8個のイソフタル酸により配位されることで、4核金属イオンクラスタが形成されており、この4核金属イオンクラスタに8個のイソフタル酸が配位しているため、四角格子が二層積層した構造が形成されることが分かる。
ここで、コバルト(II)イオン2個は、フタル酸のカルボキシル基の酸素イオンにより、いわゆるミューオキソ架橋されており、これらの2組が、さらにフタル酸のベンゼン環に置換したカルボキシル基8個の配位を受けて大きな1つのクラスタを形成している。すなわち、4個のコバルト(II)イオンおよびフタル酸のベンゼン環に置換したカルボキシル基8個からなる大きな1つのクラスタクラスタが連続して結合して、本発明の多孔性高分子金属錯体の層状構造ネットワークを構成している。各コバルト(II)イオンは、ベンゼン環に置換したカルボキシル基の酸素4個、およびミューオキソ架橋している酸素1個の配位を受けているため、特徴あるひずんだ5配位構造を形成している。
図5は、図3では省略されていたイソフタル酸の置換基(n−C613基)を略さずに示した図である。
図6は、図5に示す複層の層状構造が積層している事を示している図である。それぞれの層状構造(複層)の間にパーフルオロアルキル基の凝集構造が形成されている。
なお、各図は、実施例にて合成した化合物を単結晶X線回折装置により測定し、得られた電子密度のデータを専用のソフトウエアにて図版化したものである。実際の材料には結晶の格子欠陥や、分子の熱振動が存在するため、それら由来のデータの欠陥が生じ、このため、図面上は芳香環のゆがみ、官能基(特にアルキル基類)の消失等が起こりうる。しかし、仮にそうようなことがあっても、本発明の温和な合成条件においては芳香環のゆがみ、官能基の消失等は起こりえないと考えられ、あくまでも欠陥は測定上の問題であり、実化合物は、原料として使用した配位子により構成されると考えて良い。また、本発明の多孔性高分子金属錯体は、後述するように、錯体分子(結晶)内に溶媒や水分子を含む場合があるが、本発明の多孔性高分子金属錯体の構造は明らかである。
本発明の多孔性高分子金属錯体の構造は、金属イオンと配位子から形成される格子が連続する層状構造ネットワークが、水素結合やファンデルワールス力などの弱い結合ではなく、配位結合、イオン結合、または共有結合等により、上下に二層以上に形成されて複層ネットワーク構造と成っている事が重要である。このため、ここのネットワーク構造の格子形状は特に限定されるものではない。好ましい例として、図1〜6に示した四角格子が上げられるが、いわゆるカゴメネットワーク(非特許文献7〜9)、特許文献3の図1に示す様な六角と三角が組み合わされた構造であってもよい。
また、金属イオンと配位子から形成される格子の層状ネットワーク構造が、水素結合やファンデルワールス力などの弱い結合ではなく、配位結合、イオン結合、または共有結合等により、二層以上に結合されている事が重要であるので、特開2015−086218号公報に記載のPCPの様に、第二配位子で各層が連結されている場合は、層の間の距離が長すぎるため好ましくない。図1〜6に示されたように、配位子と隣接層の金属イオンとの相互作用で複数の層状構造が結合された複層構造であることが重要である。
また、二層以上に複層が形成されるためには、複数個の金属イオンと複数個のカルボン酸が配位結合した複核金属イオンクラスタが形成される必要がある。たとえば図4で示されるような4個のコバルトイオンに計8個のイソフタル酸が配位している4核クラスタが例示されるが、特開2014−166971号公報の図2に示されるような2核クラスタや、特開2014−166969号公報に種々示されるような、配位子のカルボキシル基以外にいわゆるμオキソ架橋を含むクラスタであってもかまわない。
本発明の多孔性高分子金属錯体は多孔体であるため、水やアルコールやエーテル、ピリジン、ホルムアミド類などの有機分子に触れると孔内に水や有機溶媒を含有し、たとえば式(II)
[MX]n(G)m (II)
(式中、Mは2価の遷移金属イオンであり、Xは炭素数1〜10であるパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸配位子であり、Gは後述のような合成に使用した溶媒分子や空気中の水分子であり、通常ゲスト分子と呼ばれる。nは、[MX]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。mは2価の遷移金属イオン1に対して0.2〜6である。)で表され、前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークが上下に二層以上結合した複層ネットワーク構造を有し、さらに前記複層ネットワーク構造が積層した複層積層型ネットワーク構造を有している複合錯体に変化する場合がある。
しかし、これらの複合錯体中の上記Gで表されるゲスト分子は、多孔性高分子金属錯体に弱く結合しているだけであり、ガス吸着材として利用する際の減圧乾燥などの前処理によって除かれ、元の式(I)で表される錯体に戻る。そのため、式(II)で表されるような錯体であっても、本質的には本発明の多孔性高分子金属錯体と同一物と見なすことができる。
また本発明の多孔性高分子金属錯体は、2価の遷移金属イオンに後述のような合成に使用した溶媒分子、ピリジン等の反応促進剤分子や、空気中の水分子が配位し、たとえば式(III)
[MXL]n (III)
(式中、Mは2価の遷移金属イオンであり、Xは炭素数1〜10であるパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸配位子であり、Lは後述のような合成に使用した溶媒分子や空気中の水分子である。nは、[MXL]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。zは2価の遷移金属イオン1に対して1または2である。)で表され、前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークが上下に二層以上結合した複層ネットワーク構造を有し、さらに前記複層ネットワーク構造が積層した複層積層型ネットワーク構造を有している複合錯体に変化する場合がある。
しかし、これらの複合錯体中の上記Lで表される配位分子は、2価の遷移金属イオンに弱く結合しているだけであり、ガス吸着材として利用する際の減圧乾燥などの前処理によって除かれ、元の式(I)で表される錯体に戻る。そのため、式(III)で表されるような錯体であっても、本質的には本発明の多孔性高分子金属錯体と同一物と見なすことができる。
本発明の複層積層型のネットワーク構造を有する新規な多孔性高分子金属錯体において、金属イオンは2価の遷移金属イオンである。2価の遷移金属イオンは上記の配位構造を安定的に形成する。2価の遷移金属イオンの具体例としては、コバルトイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、銅イオンが挙げられる。得られた多孔性高分子金属錯体の化学的安定性の観点から、銅イオン、コバルトイオンが好ましく、酸素吸着性の観点からはコバルトイオンがさらに好ましい。
本発明の多孔性高分子金属錯体に用いる5位にパーフルオロアルキル基を有するイソフタル酸配位子は、5位のパーフルオロアルキル基としては直鎖状または枝分かれのある炭素数1〜10であるパーフルオロアルキル基のいずれでもよく、特にガス分離特性が優れる点で、CF3、C25、n−C37、n−C49、n−C511、n−C817、n−C1021基が好ましい。ベンゼン環へのパーフルオロアルキル基の導入方法としては、たとえば、柴崎ら、Chem. Asian J. 2006, 1, 314 - 321を参照することができる。
本発明では、式(I)で表される化合物は、2価の遷移金属イオンの供給源、炭素数1〜10であるパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸(単に「イソフタル酸」ともいう)を使用し、これらを溶媒に溶かして溶液状態で混合することで製造できる。
本発明の多孔性高分子金属錯体の製造方法で2価の遷移金属イオンの供給源としては遷移金属塩を使用することができる。コバルト塩としては、2価のコバルトイオンを含有している塩類であればよく、溶媒への溶解性が高いという点で、硝酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルト、ぎ酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルトが好ましく、反応性が高いという点で、硝酸コバルト、硫酸コバルトが特に好ましい。
本発明の多孔性高分子金属錯体の製造方法で使用する他の遷移金属塩である銅塩、亜鉛塩、ニッケル塩も、コバルト塩と同様に、2価の銅イオン、亜鉛イオン、ニッケルイオンを含有している塩類であればよく、溶媒への溶解性が高いという点で、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、ぎ酸塩、塩化塩、臭化塩が好ましく、反応性が高いという点で、硝酸塩、硫酸塩が特に好ましい。
本発明の多孔性高分子金属錯体の製造に用いる5位にパーフルオロアルキル基を有するイソフタル酸は、5位にパーフルオロアルキル基を有するイソフタル酸配位子として上記した配位子を提供すものを用いることができる。
本発明の多孔性高分子金属錯体の製造反応で用いられる2価の遷移金属塩と配位子提供物質(5位にパーフルオロアルキル基を有するイソフタル酸)の混合比率は、金属塩:配位子提供物質の比が1:5〜5:1のモル比であることが好ましく、より好ましくは1:3〜3:3のモル比の範囲内である。これ以外の範囲では、目的物の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して、目的物の取り出しが困難となる恐れがある。
溶媒としては、水が好ましく、また水と混合して使用する溶媒としては、アルコール類などのプロトン系溶媒、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒が好ましい。アルコールなどのプロトン系溶媒およびジメチルアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒は2価の遷移金属塩をよく溶解し、さらに2価の遷移金属イオンや対イオンに配位結合や水素結合することで2価の遷移金属塩を安定化し、配位子との急速な反応を抑制することで、副反応を抑制する。アルコール類の例としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどの脂肪族系1価アルコールおよびエチレングリコールなどの脂肪族系2価アルコール類を例示できる。安価でかつ2価の遷移金属塩の溶解性が高いという点でメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールが好ましい。またこれらのアルコール類は単独で用いてもよいし、複数を混合使用してもよい。アミド系溶媒の例としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジブチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが例示できる。2価の遷移金属塩の溶解性が高いという点で、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドが好ましい。
水と混合して使用する溶媒としてアルコール系とアミド系溶媒を用いる場合の、アルコール系とアミド系溶媒の混合比率は1:99〜99:1(体積比)で任意である。配位子提供物質、遷移金属塩の両方の溶解性が高まり、副生成物の発生を抑制できるという点で、混合比率は90:10〜10:90(体積比)、反応を加速できるという観点から80:20〜20:80(体積比)が好ましい。
溶媒として前記のアルコール類やアミド系溶媒の混合溶媒に別種の有機溶媒を混合して使用することも好ましい。アルコール類とアミド系溶媒からなる混合溶媒の別種の有機溶媒に対する混合比率は、30体積%以上にすることが、2価の遷移金属塩および配位子の溶解性を向上させる観点から好ましい。
本発明のパーフルオロアルキル基を有する複層積層型のPCPを合成するためには、水系溶媒を使用して、高温で反応を行う事が好ましい。水単独で使用してもよく、他の溶媒と混合して使用しても良いが、目的の構造を形成させるために、水は20体積%以上混合使用する事が必要である。また温度は、反応温度は、90℃以上、200℃以下が好ましい。得られた目的物の吸着特性が優れる点で、反応温度は、100℃以上、160℃以下であることが特に好ましい。溶媒の沸点以上で反応を行う場合は、封管反応等により溶媒が揮発する事を抑制する事で実施できる。
本発明の多孔性高分子金属錯体の製造方法では、反応促進剤として塩基を添加することも可能である。塩基は、配位子のカルボキシル基を陰イオンに変換する事で、反応を加速すると推定される。塩基としては、たとえば無機塩基として水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが例示できる。有機塩基としては、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、ピリジン、2,6−ルチジンなどが例示できる。反応加速性が高いという点で、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、およびピリジンが好ましい。添加量としては、使用するイソフタル酸の1モルに対し、反応の加速効果が顕著であるという点で好ましくは0.1〜6.0モル、副反応少ないという点でさらに好ましくは0.5〜4.0モルである。
本発明の多孔性高分子金属錯体の製造方法では、反応制御剤として有機酸を添加することも可能である。有機酸は、配位子のカルボキシル基の酸としての解離を制御することで、反応が適切に進む事を制御していると考えられる。脂肪族の有機酸としては、酢酸、プロピオン酸などの1価の酸、シュウ酸、マロン酸などの2価の酸、ビシクロ[2,2,2」-オクタン-1,4-ジカルボン酸などの環状カルボン酸が挙げられる。芳香族の有機酸としては、安息香酸、4−メチル安息香酸などの1価の酸が挙げられる。これらの内、溶解性が高く、2価の遷移金属イオンに配位が強すぎない酢酸、安息香酸、ビシクロ[2,2,2」-オクタン-1,4-ジカルボン酸が好ましい。添加量としては、使用する配位子の1モルに対し、反応の効果が顕著であるという点で好ましくは0.1〜12.0モル、副反応が少ないという点でさらに好ましくは0.5〜8.0モルである。
2価の遷移金属塩の溶液およびパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸を反応させるに当たり、2価の遷移金属塩およびイソフタル酸を容器に装填した後、溶媒を添加する方法以外に、2価の遷移金属塩、イソフタル酸をそれぞれ別個に溶液として調製した後、これらの溶液を混合してもよい。
2価の遷移金属塩およびイソフタル酸をそれぞれの溶液として混合する場合、溶液の濃度としては、2価の遷移金属塩溶液は80mmol/L〜2mol/Lが好ましく、より好ましくは40mmol/L〜4mol/Lである。イソフタル酸の有機溶液は80mmol/L〜2mol/Lであることが好ましく、より好ましくは60mmol/L〜3mol/Lである。これより低い濃度で反応を行っても目的物は得られるが、製造効率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では、ガス吸着能が低下する恐れがある。
2価の遷移金属塩およびイソフタル酸の溶液の混合順序は、2価の遷移金属塩溶液にイソフタル酸溶液を添加しても、その逆でもよい。また、2価の遷移金属塩溶液とイソフタル酸溶液を、混合した後に自然拡散による方法で混合してもよい。混合法としては、必ずしも溶液で行う必要はなく、例えば、2価の遷移金属塩溶液に固体のイソフタル酸を投入し、同時に溶媒を入れる方法や、反応容器に2価の遷移金属塩を装填した後に、イソフタル酸の固体または溶液を注入し、さらに2価の遷移金属塩を溶かすための溶液を注入するなど、最終的に反応が実質的に溶媒中で起こる方法であれば、種々の方法が可能である。2価の遷移金属塩の溶液とイソフタル酸の溶液を滴下混合する方法が、工業的には最も操作が簡便であり、好ましい。
反応時間は、1時間〜5日間であり、さらには副生成物が少ないという点で4時間〜3日間であることが好ましい。
反応は通常のガラスライニングのSUS製の反応容器および機械式攪拌機を使用して行うことができる。反応終了後は濾過、乾燥を行うことで目的物質と原料の分離を行い、純度の高い目的物質を製造することが可能である。
上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体が目的とする構造を有しているかどうかは、単結晶X線結晶解析により得られた反射を解析することで確認することができる。上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体のガス吸着能は、市販のガス吸着装置を用いて測定が可能である。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、原料として複数種のふっ素原子を含有する側鎖を有するフタル酸を混合使用して、使用した複数種の配位子を含有する多孔性高分子金属錯体を合成することができ、いわゆる固溶体型の多孔性高分子金属錯体を形成する事が可能であることが確認された。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、複層積層型のネットワーク構造であるが、これは、四角格子やカゴメ格子などのネットワーク構造が、金属イオンクラスタを介して二層以上積層した複層構造を有している事が重要である。
ガスの吸着現象としては、活性炭、ゼオライト等、いわゆる固い材料による吸着現象が代表例であるが、近年、柔軟性を有するPCPで特異的なガス吸着現象が報告されており、代表的な物が、非特許文献3(上代ら、Int. J. Mol. Sci. 2010, 11, 3803)に記載されるELM類である。これは、PCP層自体は剛直な配位子から形成されているため、柔軟性を有さず、隣接する層同士がずれることで材料全体としての柔軟性が発現していると考えら得る。ELMでは、PCP層は1層であるのに対し、本発明のPCPは二層以上の複層構造であり、層がより剛直な物になっている。このため、1層構造のELMでは、層自体が歪む可能性があるのに対し、本発明のPCPは層自体の歪みがほとんど生じないため、層間のずれがより明確化し、より優れたガス吸着性が発現すると考えられる。しかし、本発明は理論に拘束されるものではなく、本発明の多孔性高分子金属錯体の特性もこの理論によって制限されるものではない。
さらに、本発明の多孔性高分子金属錯体は、複層積層型のネットワーク構造であり、さらにこの層の上下(層の間)には、複層積層型ネットワーク構造からパーフルオロアルキル基が突き出している。この層間に存在するふっ素原子の影響で、積層状態にある複層ネットワーク構造が、ふっ素凝集部を持たない積層型PCPと比較して容易に滑りやすく、そのために独特のガス吸着特性が発現しうると考えられる。しかし、本発明は理論に拘束されるものではなく、本発明の多孔性高分子金属錯体の特性もこの理論によって制限されるものではない。
本発明の多孔性高分子金属錯体の調製方法は種々の条件があり、一義的に決定できるものではないが、ここでは以下の実施例に基づき説明する。
粉末X線回折測定には、ブルカーAX(株)社製粉末X線装置DISCOVER D8 with GADDSを用いた。
実施例1
硝酸コバルト6水和物96.6mg、5−n−C613イソフタル酸(5位にC613基を有するイソフタル酸)192.8mg、ピリジン320μL、水80mLを100mLのテフロン(登録商標)性耐圧容器に入れ、蓋をして、オーブンにて150℃で2日間加熱した。得られた単結晶を大気に暴露させないようにパラトンにてコーティングした後、(株)リガク社製単結晶測定装置(極微小結晶用単結晶構造解析装置VariMax、MoK・線(λ=0.71069Å))にて測定し(照射時間8秒、d=45ミリ、2θ=−20,温度=−180℃)、得られた回折像を解析ソフトウエア、リガク(株)製解析ソフトウエア「CrystalStructure」を使用して解析し、図1〜6に示したものとパーフルオロカーボン基を除き基本的に同じ、複層積層型のネットワーク構造であり、層の間にはパーフルオロアルキル基が突き出していることを確認した(a=11.3818(5)、b=18.4395、c=21.645;α=95.007、β=94.480、γ=90。910;空間群=P‐1)。
すなわち、実施例1で得られた物質は、コバルトイオンとイソフタル酸(5−n−C613イソフタル酸)の配位子から構成される四角格子から成る層状構造ネットワークが二層積層した複層構造が形成されており、さらにその複層構造と複層構造との間にイソフタル酸の5位のパーフルオロアルキル基が突き出して、パーフルオロアルキル基が凝集した部分が存在する、複層積層型ネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体であった。
実施例2
実施例1と同様に、ただし、硝酸コバルト6水和物96.6mgの代わりに硝酸ニッケル6水和物116.4mgを使用し、同様に反応させ、得られた単結晶を同様に解析したところ、層状構造ネットワーク構造が二層化した複層構造であり、その複層構造と複層構造との間にパーフルオロアルキル基が凝集した部分を有した構造であることを確認した。
実施例3
実施例1と同様に、ただし、硝酸コバルト6水和物96.6mgの代わりに硝酸銅3水和物96.6mgを使用し、同様に反応させ、得られた単結晶を同様に解析したところ、ネットワーク構造が二層化した複層構造であり、その複層構造と複層構造との間にパーフルオロアルキル基が凝集した部分を有した構造であることを確認した。
実施例4
実施例1と同様に、ただし、5−n−C613イソフタル酸(5位にC613基を有するイソフタル酸)の代わりに5−n−C37イソフタル酸(5位にC37基を有するイソフタル酸)133mgを使用し、同様に反応させ、得られた単結晶を同様に解析し、ネットワーク構造が二層化した複層構造であり、その複層構造と複層構造との間にパーフルオロアルキル基が凝集した層を有した構造であることを確認した。
実施例5
実施例4と同様に、ただし、硝酸コバルト6水和物96.6mgの代わりに硝酸銅3水和物96.6mgを使用し、同様に反応させ、得られた単結晶を同様に解析し、ネットワーク構造が二層化した複層構造であり、その複層構造と複層構造との間にパーフルオロアルキル基が凝集した層を有した構造であることを確認した。
比較例1
実施例3と同様の方法で、ただし、溶媒として水の代わりにメタノール、温度を120℃で反応をおこなった。得られた単結晶を同様に解析した結果、いわゆるカゴメ構造である単層構造であることを確認した。
<ガス吸着の結果>
得られたガス吸着材の二酸化炭素、酸素、窒素およびアルゴンの吸着性を、BET自動吸着装置(日本ベル株式会社製ベルミニII)を用いて評価した(測定温度:二酸化炭素は195K、酸素は90K、窒素は77K)。測定に先立って試料を423Kで6時間真空乾燥して、微量残存している可能性がある溶媒分子などを除去した。
表1に、実施例1〜3および比較例1で得られた多孔性高分子金属錯体のガス吸着特性吸を示す。いずれも酸素やアルゴンの吸着量が二酸化炭素、窒素と比較して顕著に多く、酸素やアルゴンの選択的吸着材として利用できる事が判った。これらの特異的なガス選択性は、強固な多層構造により層間に存在するパーフルオロアルキル基の効果が強調された結果と考えられる。
本発明の多孔性高分子金属錯体は、配位子の整列によって形成される多数の微細孔が物質内部に存在する。この多孔性を生かして酸素やアルゴン等のガスの特異的な吸着が可能であり、これらのガスの分離、貯蔵に好適に使用できる。

Claims (10)

  1. 下記式(I)
    [MX]n (I)
    (式中、Mは2価の遷移金属イオンであり、Xは炭素数1〜10であるパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸配位子であり、nは、[MX]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
    で表され、前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークが上下に二層以上結合した複層ネットワーク構造を有し、さらに前記複層ネットワーク構造が積層した複層積層型ネットワーク構造を有し、
    前記複層積層型ネットワーク構造の、上側複層ネットワーク構造から下に突き出したイソフタル酸の5位のパーフルオロアルキル基と、下側複層ネットワーク構造から上に突き出したイソフタル酸の5位のパーフルオロアルキル基同士が凝集した部分が存在する、多孔性高分子金属錯体。
  2. 下記式(III)
    [MXL]n (III)
    (式中、Mは2価の遷移金属イオンであり、Xは炭素数1〜10であるパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸配位子であり、nは、[MXL]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。Lは合成時に使用した溶媒分子、反応促進剤分子、又は水分子であり、zは2価の遷移金属イオン1に対して1または2である。)で表され、前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークが上下に二層以上結合した複層ネットワーク構造を有し、さらに前記複層ネットワーク構造が積層した複層積層型ネットワーク構造を有し、
    前記複層積層型ネットワーク構造の、上側複層ネットワーク構造から下に突き出したイソフタル酸の5位のパーフルオロアルキル基と、下側複層ネットワーク構造から上に突き出したイソフタル酸の5位のパーフルオロアルキル基同士が凝集した部分が存在する、多孔性高分子金属錯体。
  3. 前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークの上下の結合が、配位結合、イオン結合、または共有結合である請求項1または2に記載の多孔性高分子金属錯体。
  4. 前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が、四角格子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体。
  5. 前記遷移金属イオンと前記イソフタル酸配位子から構成される格子が連続して成る層状構造ネットワークが、カゴメネットワークである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体。
  6. 前記2価の遷移金属イオンが、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオン、ニッケルイオンから選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体。
  7. 前記パーフルオロアルキル基が、CF3、C25、n−C37、n−C49、n−C511、n−C817、n−C1021から選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体を含むガス吸着材。
  9. 請求項8に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
  10. 請求項8に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
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