[高分子化合物]
本発明の高分子化合物は、前記式(a)で表されるモノマー単位a、前記式(b1)〜(b4)から選択される少なくとも1種のモノマー単位b、及び極性基を有する脂環式骨格を含むモノマー単位cを少なくとも含む。
(モノマー単位a)
本発明のモノマー単位aは前記式(a)で表され、酸により酸脱離性基(カルボキシル基の保護基)が速やかに脱離して、アルカリ可溶化に寄与するカルボキシル基が生成する。本発明のモノマー単位aは高分子化合物に酸によりアルカリ可溶性に変化する性質を付与する。本発明のモノマー単位aは下記式(a-1)で表される不飽和カルボン酸エステルを重合に付すことにより高分子化合物内に導入することができる。
式(a-1)中、R、R1、R2、Ra、p、環Z1は前記式(a)中のR、R1、R2、Ra、p、環Z1に対応し、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R1、R2は同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。Raは環Z1に結合している置換基であり、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、又はシアノ基を示す。pは0〜3の整数を示す。pが2以上の場合、2個以上のRaは同一であってもよく、異なっていてもよい。環Z1は炭素数3又は4の脂環式炭化水素環を示す。
前記式(a-1)で表される不飽和カルボン酸エステルは、例えば、下記式(1)又は(2)
R
1MgX
1 (1)
R
1Li (2)
(式中、R
1は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、X
1はハロゲン原子を示す)
で表される有機金属化合物と下記式(3)
(式中、R
2は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、環Z
1は炭素数3又は4の脂環式炭化水素環を示す。R
aは環Z
1に結合している置換基であり、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、又はシアノ基を示し、pは0〜3の整数を示す。pが2以上の場合、2個以上のR
aは同一であってもよく、異なっていてもよい)
で表されるケトンとの付加反応生成物に、第3級アミンの存在下、下記式(4)
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、X
2はハロゲン原子を示す)
で表される不飽和カルボン酸ハライドを反応させることにより製造することができる。
本発明において、前記式(1)又は(2)で表される有機金属化合物と前記式(3)で表されるケトンとの付加反応生成物は、前記式(1)で表される有機金属化合物を使用した場合は下記式(5-1)、前記式(2)で表される有機金属化合物を使用した場合は下記式(5-2)で表される第3級アルコールの有機金属化合物付加物である。
(式中、R
1、R
2、R
a、p、環Z
1、X
1は前記に同じ)
すなわち、上記式(a-1)で表される不飽和カルボン酸エステルは、下記工程を経て製造することができる。
第1工程:前記式(1)又は(2)で表される有機金属化合物と、前記式(3)で表されるケトンを反応させて、前記式(1)で表される有機金属化合物を使用した場合は前記式(5-1)、前記式(2)で表される有機金属化合物を使用した場合は前記式(5-2)で表される第3級アルコールの有機金属化合物付加物を形成する工程
第2工程:前記式(5-1)又は前記式(5-2)で表される第3級アルコールの有機金属化合物付加物に第3級アミンの存在下で前記式(4)で表される不飽和カルボン酸ハライドを反応させ、前記式(a-1)で表される不飽和カルボン酸エステルを形成する工程
前記式(1)又は(2)中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、上記式(a-1)中のR1に対応する。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、ヘキシル基等を挙げることができる。これらのなかでも、C1-4アルキル基が好ましい。
R1において炭素数1〜6のアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換ヒドロキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基など)、シアノ基等を挙げることができる。置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル基等の前記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置き換えられたハロアルキル基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、メトキシメチル、2−メトキシエチル、エトキシメチル、2−エトキシエチル、シアノメチル、2−シアノエチル基等を挙げることができる。
X1におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
式(1)で表される有機金属化合物の代表的な例としては、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリド等の有機マグネシウム化合物(グリニア試薬)が挙げられる。また、式(2)で表される有機金属化合物の代表的な例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物が挙げられる。
前記有機金属化合物としては、なかでも、取り扱いが容易であり、安全にスケールアップすることができ工業化に適している点で、前記式(1)で表される有機金属化合物を使用することが好ましい。
前記式(3)中、R2は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、環Z1は炭素数3又は4の脂環式炭化水素環を示す。Raは環Z1に結合している置換基であり、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、又はシアノ基を示し、pは0〜3の整数を示す。pが2以上の場合、2個以上のRaは同一であってもよく、異なっていてもよい。式(3)中の、R2、Ra、環Z1、pは、上記式(a-1)中のR2、Ra、環Z1、pに対応する。
R2における炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基等を挙げることができる。本発明においては、なかでも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に好ましくは炭素数1〜3、最も好ましくは炭素数1〜2のアルキル基である。
R2において炭素数1〜6のアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換ヒドロキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基など)、シアノ基等を挙げることができる。置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル基等の前記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置き換えられたハロアルキル基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、メトキシメチル、2−メトキシエチル、エトキシメチル、2−エトキシエチル、シアノメチル、2−シアノエチル基等を挙げることができる。
環Z1における炭素数3又は4の脂環式炭化水素環としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル等のシクロアルカン環;シクロプロペン、シクロブテン等のシクロアルケン環等を挙げることができる。
Raは環Z1に結合している置換基であり、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、又はシアノ基を示す。
前記アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基等を挙げることができる。
前記ヒドロキシル基が有していてもよい保護基としては、例えば、メチル、エチル、t−ブチル基等のC1-4アルキル基;メトキシメチル基等のヒドロキシル基を構成する酸素原子とともにアセタール結合を形成する基;アセチル基、ベンゾイル基等のヒドロキシル基を構成する酸素原子とともにエステル結合を形成する基等を挙げることができる。
前記ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル基等のヒドロキシC1-6アルキル基等を挙げることができる。
前記ヒドロキシアルキル基が有していてもよい保護基としては、例えば、メチル、エチル、t−ブチル基等のC1-4アルキル基;メトキシメチル基等のヒドロキシル基を構成する酸素原子とともにアセタール結合を形成する基;アセチル基、ベンゾイル基等のヒドロキシル基を構成する酸素原子とともにエステル結合を形成する基等を挙げることができる。
前記カルボキシル基の保護基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロピラニル基、2−オキセパニル基等を挙げることができる。
前記式(3)で表されるケトンの代表的な例としては、シクロプロピルメチルケトン、シクロプロピルエチルケトン、シクロブチルメチルケトン、シクロブチルエチルケトン等を挙げることができる。
前記第3級アミンとしては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン等を挙げることができる。また、ヒドロキシル基やニトロ基等が含まれていてもよい。さらに、モノアミンの他、ジアミン等のポリアミンであってもよい。
前記第3級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチル−ジエチルアミン、N−エチル−ジメチルアミン、N−エチル−ジアミルアミン等の脂肪族アミン;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の芳香族アミン;N,N−ジメチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジエチル−シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、N−メチルピリジン、N−メチルピロリジン等の複素環アミン;テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のジアミン等を挙げることができる。
前記第3級アミンとしては、なかでも、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン、N−メチルモルホリン等の複素環アミンが好ましく、特にトリメチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミンが、不飽和カルボン酸エステルの収率をより向上させることができる点で好ましい。
前記式(4)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、X2はハロゲン原子を示す。式(4)中のRは上記式(a-1)中のRに対応する。
前記R、X2におけるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
前記Rにおける炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、ヘキシル基等を挙げることができる。ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基(ハロアルキル基)としては、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル基等の前記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置き換えられた基等を挙げることができる。
前記式(4)で表される不飽和カルボン酸ハライドとしては、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロミド、(メタ)アクリル酸アイオダイド等が好ましく、特に入手が容易な点で、(メタ)アクリル酸クロライドが好ましい。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」及び/又は「メタクリル酸」を示す。
前記製造方法では第1工程において、出発原料として、前記有機金属化合物との反応性に優れるケトンを使用するため、立体障害が大きい基を有しているケトンであっても速やかに反応させることができ、前記第3級アルコールの有機金属化合物付加物を形成することができる。そして、第1工程終了後、クエンチすることなく(すなわち、水や酸を添加することなく)第2工程に移行するため、第3級アルコールは形成されない。
また、第2工程においては、第1工程で得られた第3級アルコールの有機金属化合物付加物に、式(4)で表される不飽和カルボン酸ハライドを第3級アミンの存在下で反応させるため、前記不飽和カルボン酸ハライドが第3級アミンにより活性化され、立体障害が大きいメタクリル酸ハライド等であっても、第3級アルコールの有機金属化合物付加物と速やかに反応させることができ、高収率で前記式(a-1)で表される不飽和カルボン酸エステルが得られる。
(第1工程)
前記式(1)又は(2)で表される有機金属化合物の使用量としては、出発原料である式(3)で表されるケトン1モルに対して、例えば0.5〜2.0モル、好ましくは0.8〜1.8モル、特に好ましくは1.1〜1.4モルである。式(1)又は(2)で表される有機金属化合物の使用量が前記範囲を下回ると、収率が低下する傾向がある。一方、式(1)又は(2)で表される有機金属化合物の使用量が前記範囲を上回ると、経済性が悪化する傾向がある。
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒を用いる場合には、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル等の飽和又は不飽和炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル系溶媒;スルホラン等のスルホラン類;シリコーンオイル等の高沸点溶媒等を使用することができる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。本発明においては、なかでも、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル系溶媒や、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒を使用することが好ましい。
溶媒の使用量としては、反応成分を溶解又は分散可能であり、かつ経済性等を損なわない程度であれば特に制限されない。出発原料である式(3)で表されるケトン1重量部に対して、例えば0.1〜100重量部程度、好ましくは1〜20重量部である。
反応は、式(1)又は(2)で表される有機金属化合物に式(3)で表されるケトンを滴下して行ってもよく、式(3)で表されるケトンに式(1)又は(2)で表される有機金属化合物を滴下して行ってもよい。滴下時および反応熟成時温度は、例えば−80℃以上、反応系の沸点以下、好ましくは−20〜80℃、特に好ましくは−5〜50℃である。滴下時と反応熟成時の温度は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
反応の雰囲気は、反応を阻害しない範囲内で適宜選択することができ、空気雰囲気下、酸素雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下等の何れであってもよい。また、反応は、常圧下又は減圧下(例えば0.0001〜0.1MPa程度、好ましくは0.001〜0.1MPa)で行うことができ、操作上の理由により加圧下で行ってもよい。
(第2工程)
式(4)で表される不飽和カルボン酸ハライドの使用量としては、出発原料である式(3)で表されるケトン1モルに対して、例えば0.5〜20モル程度、好ましくは0.8〜8モル、特に好ましくは1〜3モルである。式(4)で表される不飽和カルボン酸ハライドの使用量が前記範囲を下回ると、反応速度が低下する傾向がある。一方、式(4)で表される不飽和カルボン酸ハライドの使用量が前記範囲を上回っても反応成績の向上は認められず、経済性が悪化する傾向がある。
第3級アミンの使用量としては、出発原料である式(3)で表されるケトン1モルに対して、例えば0.5〜20モル程度、好ましくは0.8〜8モル、特に好ましくは1〜3モルである。また、第3級アミンの不飽和カルボン酸ハライドに対する使用量は、不飽和カルボン酸ハライド1モルに対して、例えば0.5〜10モル程度、好ましくは0.8〜5モル、特に好ましくは1〜3モルである。第3級アミンの使用量が前記範囲を下回ると、収率が低下する傾向がある。一方、第3級アミンの使用量が前記範囲を上回ると、経済性が悪化する傾向がある。
反応及び分離・精製の際には、系内に重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤を添加することにより、原料である式(4)で表される不飽和カルボン酸ハライドや、目的物である式(a-1)で表される不飽和カルボン酸エステルがそれぞれ重合して、若しくは共重合して、オリゴマーを副生することを防止することができ、不純物としてのオリゴマー含有量が極めて低い不飽和カルボン酸エステルを得ることができる。
前記重合禁止剤としては、例えば、4,4'−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4'−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、p−メトキシフェノール、フェノチアジン等を挙げることができる。また、反応系に分子状酸素を含む成分(例えば、空気、窒素等で希釈した空気)を共存させることによっても、重合反応を抑制することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
重合禁止剤の使用量は、式(3)で表されるケトン100重量部に対して、例えば0.0001〜5重量部程度、好ましくは0.005〜0.1重量部である。
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒を用いる場合には、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル等の飽和又は不飽和炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;スルホラン等のスルホラン類;ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;シリコーンオイル等の高沸点溶媒等を使用することができる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、第3級アミンが溶媒を兼ねてもよい。本発明においては、なかでも、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル系溶媒や、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒を使用することが好ましい。
溶媒の使用量は、反応成分を溶解又は分散可能であり、かつ経済性等を損なわない程度であれば特に制限されない。式(4)で表される不飽和カルボン酸ハライド1重量部に対して、例えば0.5〜100重量部程度、好ましくは1〜20重量部である。
第2工程の溶媒は、第1工程の溶媒と共通の溶媒を使用してもよく、異なる溶媒を使用してもよい。第1工程の溶媒と共通の溶媒を使用する場合、第1工程終了後、溶媒をそのまま使用してもよく、第1工程終了後、濃縮、希釈によって溶媒の濃度を調整してから使用してもよい。
反応温度は、例えば−50〜150℃程度であり、その下限は、好ましくは−10℃、特に好ましくは0℃、最も好ましくは10℃である。上限は、好ましくは80℃、より好ましくは50℃、特に好ましくは45℃、最も好ましくは40℃、更に好ましくは40℃未満である。
反応の雰囲気は、反応を阻害しない範囲で適宜選択でき、空気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下等の何れであってもよい。また、反応は、常圧下又は減圧下(例えば0.0001〜0.1MPa程度、好ましくは0.001〜0.1MPa程度)で行うことができ、操作上の理由により加圧下で行ってもよい。
反応は、例えば、第1工程で得られた付加反応生成物に第3級アミンを添加し、次いで、式(4)で表される不飽和カルボン酸ハライド(又はこれを含む溶液)を反応系内に逐次添加する方法等により行うことができる。前記重合禁止剤を添加する場合は、式(4)で表される不飽和カルボン酸ハライドを添加する前の適宜な時期に反応系内に添加することが好ましい。また、反応は、回分式、半回分式、連続式等の慣用の方法により行うことができる。
目的物である式(a-1)で表される不飽和カルボン酸エステルは、反応後そのまま、又は分離・精製して使用することができる。分離・精製は、慣用の分離・精製方法、例えば、抽出、洗浄(例えば、酸、アルカリ又は水による洗浄)、蒸留、精留、分子蒸留、吸着等により行うことができる。分離・精製は、連続的に行ってもよく、非連続的(回分式)に行ってもよい。分離・精製操作時の圧力は減圧又は常圧の何れであってもよい。
本発明においては、なかでも、反応後、水と有機溶媒を使用して抽出(分液)する工程を設けることが好ましい。前記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等を挙げることができる。本発明では、特にシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒を使用することが、高純度の式(a-1)で表される不飽和カルボン酸エステルを優れた回収率で得ることができる点で好ましい。
前記不飽和カルボン酸エステルの製造方法によれば、優れた収率(例えば50%以上、好ましくは60%以上)で、高純度(例えば、純度75%以上、好ましくは純度80%以上、特に好ましくは純度90%以上)の不飽和カルボン酸エステルを得ることができる。
本発明の式(a-1)で表される不飽和カルボン酸エステルとしては、特に、下記式(a-1-1)〜(a-1-6)で表される化合物が好ましい。
(モノマー単位b)
本発明のモノマー単位bは、下記式(b1)〜(b4)から選択される少なくとも1種のモノマー単位であり、酸により酸脱離性基(カルボキシル基等の保護基)が速やかに脱離して、アルカリ可溶化に寄与するカルボキシル基を生成する。本発明のモノマー単位bは高分子化合物に酸によりアルカリ可溶性に変化する性質及び耐エッチング性を付与する。
下記式(b1)〜(b4)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R3〜R5は同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R6、R7は同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R8は−COORd基を示し、前記Rdは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1〜3の整数を示す。Rbは環Z2に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。qは0〜3の整数を示す。環Z2は炭素数5〜20の脂環式炭化水素環を示す。
前記Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、前記式(4)中のRと同様の例を挙げることができる。
R3〜R7における炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基等を挙げることができる。本発明においては、なかでも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に好ましくは炭素数1〜3、最も好ましくは炭素数1〜2のアルキル基である。
R3〜R7における炭素数1〜6のアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換ヒドロキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基など)、シアノ基等を挙げることができる。置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル基等の前記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置き換えられたハロアルキル基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、メトキシメチル、2−メトキシエチル、エトキシメチル、2−エトキシエチル、シアノメチル、2−シアノエチル基等を挙げることができる。
前記Rdにおける第3級炭化水素基としては、例えば、t−ブチル基、t−ペンチル基等を挙げることができる。
前記Rdにおける第3級炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換ヒドロキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基など)、シアノ基等を挙げることができる。
前記Rbにおける、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基としては、前記式(3)中のRaの例と同様の例を挙げることができる。
前記環Z2における炭素数5〜20の脂環式炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等の5〜20員(好ましくは5〜15員、特に好ましくは5〜12員)程度のシクロアルカン環;シクロペンテン環、シクロヘキセン環等の5〜20員(好ましくは5〜15員、特に好ましくは5〜10員)程度のシクロアルケン環等の単環の脂環式炭素環;アダマンタン環;ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等のノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環;パーヒドロインデン環、デカリン環(パーヒドロナフタレン環)、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環等の多環の芳香族縮合環が水素添加された環(好ましくは完全水素添加された環);トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環等の2環系、3環系、4環系等の橋架け炭素環(例えば、炭素数6〜20程度の橋架け炭素環)等の2〜6環程度の橋かけ環式炭素環等を挙げることができる。
モノマー単位bは、対応する不飽和カルボン酸エステルを重合に付すことにより高分子化合物内に導入することができる。前記モノマー単位bに対応する不飽和カルボン酸エステルとしては下記式で表される化合物等を挙げることができる。
(モノマー単位c)
本発明のモノマー単位cは、極性基を有する脂環式骨格を含むモノマー単位であり、高分子化合物に基盤密着性及び耐エッチング性を付与する。極性基を有する脂環式骨格を含むモノマー単位のうち、モノマー単位bに含まれるものは除かれる。
前記極性基としては、例えば、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−O−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−S(=O)−O−、−S(=O)2−O−、−ORe、−C(=O)−ORe、−CN等を挙げることができる。これらは単独で有していてもよく、2種以上を組み合わせて有していてもよい。
前記Reは置換基を有していてもよいアルキル基を示す。前記アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基等を挙げることができる。
前記Reにおいて、アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等のC1-5ハロアルキル基;ヒドロキシル基、メトキシ基等のC1-4アルコキシ基;アミノ基;ジC1-4アルキルアミノ基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基等のC1-4アルコキシカルボニル基;ニトロ基;シアノ基;アセチル基等のC1-6脂肪族アシル基等を挙げることができる。
本発明のモノマー単位cとしては、下記式(c1)〜(c6)から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。下記式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。Xは非結合、メチレン基、エチレン基、酸素原子、又は硫黄原子を示す。Yはメチレン基、又はカルボニル基を示す。R9〜R13は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、又はシアノ基を示し、RCは保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、又はシアノ基を示す。環Z3は炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示す。rは1〜5の整数を示す。
前記Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、前記式(4)中のRと同様の例を挙げることができる。
前記Aにおける連結基としては、例えば、アルキレン基、カルボニル基(−C(=O)−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)、及びこれらが複数個連結した基等を挙げることができる。前記アルキレン基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基や、1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン、シクロヘキシリデン基等の2価の脂環式炭化水素基(特に2価のシクロアルキレン基)等を挙げることができる。
前記R9〜R13におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基等を挙げることができる。
前記R9〜R13における保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基としては、前記式(3)中のRaと同様の例を挙げることができる。
前記環Z3は炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示し、例えば、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等の6〜20員(好ましくは6〜15員、特に好ましくは6〜12員)程度のシクロアルカン環;シクロヘキセン環等の6〜20員(好ましくは6〜15員、特に好ましくは6〜10員)程度のシクロアルケン環等の単環の脂環式炭素環;アダマンタン環;ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等のノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環;パーヒドロインデン環、デカリン環(パーヒドロナフタレン環)、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環等の多環の芳香族縮合環が水素添加された環(好ましくは完全水素添加された環);トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環等の2環系、3環系、4環系等の橋架け炭素環(例えば、炭素数6〜20程度の橋架け炭素環)等の2〜6環程度の橋かけ環式炭素環等を挙げることができる。
モノマー単位cのなかでも、式(c1)、(c2)、(c3)、(c4)、及び(c5)で表されるモノマー単位は、「−C(=O)−O−」、又は「−S(=O)2−O−」を含むため親水性が高く、高分子化合物に優れた基板密着性機能を付与することができる。また、式(c6)で表されるモノマー単位は、高分子化合物に、高い透明性、及びエッチング耐性を付与することができる。そのため、本発明の高分子化合物としては、前記モノマー単位a、モノマー単位bと共に、モノマー単位cとして、特に、式(c1)、(c2)、(c3)、(c4)、及び(c5)で表されるモノマー単位から選択される少なくとも1種と、式(c6)で表されるモノマー単位を含むことが、基板密着性、耐エッチング性、及び透明性を兼ね備えることができる点で好ましい。
本発明の高分子化合物において、式(c1)、(c2)、(c3)、(c4)、及び(c5)で表されるモノマー単位から選択されるモノマー単位の含有量(2種以上含む場合は合計量)と、式(c6)で表されるモノマー単位の含有量の比(前者/後者(モル比))は、例えば1以上、好ましくは2以上、特に好ましくは3以上である。
本発明のモノマー単位cとしては下記式で表されるモノマー単位等を挙げることができる。前記モノマー単位cは、対応する重合性モノマーを重合に付すことにより高分子化合物内に導入することができる。
本発明の高分子化合物を得るに際し、少なくとも式(a-1)で表される不飽和カルボン酸エステル、モノマー単位bに対応する不飽和カルボン酸エステル、及びモノマー単位cに対応する重合性モノマーを含むモノマー混合物の重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合等、アクリル系ポリマー等を製造する際に用いる慣用の方法により行うことができるが、特に、溶液重合が好適である。さらに、溶液重合のなかでも滴下重合が好ましい。滴下重合は、具体的には、(i)単量体を有機溶媒に溶解して得られる単量体溶液と、重合開始剤を有機溶媒に溶解して得られる重合開始剤溶液とを予め調製し、一定温度に保持した有機溶媒中に前記単量体溶液と重合開始剤溶液とを各々滴下する方法、(ii)単量体と重合開始剤とを有機溶媒に溶解して得られる混合溶液を、一定温度に保持した有機溶媒中に滴下する方法、(iii)単量体を有機溶媒に溶解して得られる単量体溶液と、重合開始剤を有機溶媒に溶解して得られる重合開始剤溶液とを予め調製し、一定温度に保持した前記単量体溶液中に重合開始剤溶液を滴下する方法、(iv)一部の単量体を有機溶媒に溶解して得られる単量体溶液1と残りの単量体を有機溶媒に溶解して得られる単量体溶液2、重合開始剤を有機溶媒に溶解して得られる重合開始剤溶液とを予め調製し、一定温度に保持した前記単量体溶液1中に単量体溶液2および重合開始剤溶液を滴下する方法等により行われる。
重合溶媒としては慣用の溶媒を使用することができ、例えば、エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類を含む鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル等)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等の鎖状エステル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素等)、及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。また、重合開始剤としては、慣用の重合開始剤を使用することができる。重合温度は、例えば30〜150℃程度、好ましくは50〜120℃、特に好ましくは60〜100℃である。
重合により得られた高分子化合物は、沈殿又は再沈殿により精製できる。沈殿又は再沈殿溶媒は有機溶媒及び水の何れであってもよく、2種以上の有機溶媒の混合溶媒であってもよいし、有機溶媒と水の混合溶媒であってもよい。沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒としては、例えば、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素等)、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタン等)、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリル等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等)、カルボン酸(酢酸等)、及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
なかでも、前記沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒として、少なくとも炭化水素(特に、ヘキサン等の脂肪族炭化水素)を含む溶媒が好ましく、炭化水素を含む溶媒において、炭化水素(例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素)と他の溶媒との比率[前者/後者(重量比)]は、例えば10/90〜99/1程度、好ましくは30/70〜98/2、特に好ましくは50/50〜97/3である。
本発明の高分子化合物において、前記モノマー単位aの含有量は、ポリマーを構成するモノマー単位に対して、例えば5〜95モル%程度、好ましくは10〜80モル%、特に好ましくは20〜70モル%、最も好ましくは20〜50モル%である。また、モノマー単位bの含有量は、ポリマーを構成するモノマー単位に対して、例えば5〜90モル%程度、好ましくは5〜70モル%、特に好ましくは5〜50モル%、最も好ましくは5〜40モル%である。更に、モノマー単位cの含有量は、ポリマーを構成するモノマー単位に対して、例えば1〜90モル%程度、好ましくは10〜80モル%、特に好ましくは20〜70モル%、最も好ましくは30〜60モル%である。
また、本発明の高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、例えば1000〜50000程度、好ましくは3000〜20000、特に好ましくは4000〜15000であり、分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mn)は、例えば1.0〜3.0程度、好ましくは1〜2.5である。なお、前記Mnは数平均分子量を示し、Mn及びMwともにポリスチレン換算の値である。
[フォトレジスト用樹脂組成物]
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物は、前記高分子化合物と光酸発生剤と有機溶剤を少なくとも含む。
前記光酸発生剤としては、露光により効率よく酸を生成する慣用の化合物、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードヘキサフルオロホスフェート等)、スルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート等)、スルホン酸エステル[例えば、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、1,2,3−トリスルホニルオキシメチルベンゼン、1,3−ジニトロ−2−(4−フェニルスルホニルオキシメチル)ベンゼン、1−フェニル−1−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)−1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルメタン等]、オキサチアゾール誘導体、s−トリアジン誘導体、ジスルホン誘導体(ジフェニルジスルホン等)、イミド化合物、オキシムスルホネート、ジアゾナフトキノン、ベンゾイントシレート等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
光酸発生剤の使用量は、光照射により生成する酸の強度や前記高分子化合物における各モノマー単位(繰り返し単位)の比率等に応じて適宜選択でき、前記高分子化合物100重量部に対して、例えば0.1〜30重量部程度、好ましくは1〜25重量部、特に好ましくは2〜20重量部である。
前記有機溶剤としては、エーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類を含む鎖状エーテル、ジオキサン等の環状エーテル等)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等の鎖状エステル;γ−ブチロラクトン等の環状エステル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。本発明においては、特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノンから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機溶剤の含有量は、形成されるレジスト膜の厚み等に応じて適宜選択することができ、前記高分子化合物の濃度が、例えば1〜20重量%程度、好ましくは2〜15重量%、特に好ましくは3〜10重量%になる量の範囲である。
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物は、前記高分子化合物と光酸発生剤と有機溶剤以外にも、例えば、露光工程と露光後加熱工程との間の引き置き時の経時安定性を向上させるための塩基性化合物(トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)等)、レジスト性能を改良するための添加樹脂、製膜時の塗布性を向上させるための界面活性剤、現像時の溶解性を制御するための溶解抑制剤、安定剤、可塑剤、光増感剤、光吸収剤等を含んでいてもよい。
[半導体の製造方法]
本発明の半導体の製造方法は、前記フォトレジスト用樹脂組成物を使用してパターンを形成することを特徴とし、前記フォトレジスト用樹脂組成物を基材又は基板上に塗布し、乾燥して、塗膜(レジスト膜)を形成した後、所定のマスクを介して、前記塗膜に光線を露光して(又は、さらに露光後ベークを行い)潜像パターンを形成し、次いで現像することにより、微細なパターンを高い精度で形成できる。
前記基材又は基板としては、例えば、シリコンウエハ、金属、プラスチック、ガラス、セラミック等を挙げることができる。フォトレジスト用樹脂組成物の塗布は、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータ等の慣用の塗布手段を用いて行うことができる。塗膜の厚みは、例えば0.01〜1μm程度、好ましくは0.03〜0.5μmである。
露光には、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線等を利用することができ、特に、半導体レジスト用では、通常、g線、i線、エキシマレーザー(例えば、XeCl、KrF、KrCl、ArF、ArCl、F2、Kr2、KRbr、Ar2等)等が使用される。
本発明の半導体の製造方法では、光照射により光酸発生剤から酸が生成し、この酸により前記高分子化合物のモノマー単位a及びモノマー単位bの酸脱離性基(カルボキシル基の保護基)が速やかに脱離して、可溶化に寄与するカルボキシル基が生成する。また、酸により脱離した化合物は現像液で洗い流すことができ、基板表面においてスカムの発生を抑制することができる。そのため、微細なパターンを精度よく形成することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
尚、ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン溶媒を用いたGPC測定(ゲル浸透クロマトグラフ)により求めた。標準試料にはポリスチレンを使用し、検出器としては屈折率計(Refractive Index Detector;RI検出器)を用いた。また、GPC測定には、昭和電工(株)製カラム「KF−806L」を3本直列につないだものを使用し、カラム温度40℃、RI温度40℃、テトラヒドロフラン流速0.8mL/分の条件で行った。
分散度(Mw/Mn)は前記測定値より算出した。
調製例1(1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロプロパンの製造)
容量50mLの4つ口フラスコに還流冷却管と滴下漏斗、温度計を装着した。ここへメチルマグネシウムクロリドのTHF溶液(1.75M)88.3g(メチルマグネシウムクロリドとして0.15mol)を加え、窒素雰囲気下、反応系を撹拌した。
ここへ、シクロプロピルメチルケトン10g(0.12mol)を、反応器内温度を20〜25℃に保持しつつ、約1時間かけて滴下した。滴下終了後、反応器内温度を20〜30℃に保持しつつ4時間撹拌した。
得られた反応液から19.2g(ケトン0.024mol分に相当)を分取し酢酸エチル8.0g、p−メトキシフェノール0.005g、フェノチアジン0.015gを添加した。ここへ、トリエチルアミン3.8g(0.037mol)を添加し、窒素雰囲気下、撹拌し、反応器内温度を15〜20℃に保持しつつ、メタクリル酸クロリド3.2g(0.026mol)を10分間かけて滴下した。さらに、5時間撹拌を継続し、反応を終了した。
反応終了後、反応系を酸処理して分析したところ、目的物である1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロプロパンが86%検出された。主たる副生物は、原料由来の化合物である1−メチル−1−シクロプロピルエタノールが4%、メタクリル酸が9%であった。
実施例1(下記式で表される高分子化合物の製造)
還流管、撹拌子、3方コック、温度計を備えた丸底フラスコに、窒素雰囲気下、シクロヘキサノン35.7gを入れて温度を80℃に保ち、撹拌しながら、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン12.94g(58.3mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン3.44g(14.6mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロプロパン9.80g(58.3mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン3.82g(14.6mmol)、ジメチル2,2'−アゾビスイソブチレート(商品名「V−601」、和光純薬工業(株)製)1.80g、シクロヘキサノン66.3gを混合したモノマー溶液を6時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、さらに2時間撹拌を続けた。重合反応終了後、得られた反応溶液を孔径0.1μmのフィルターで濾過した後、該反応溶液の7倍量のヘキサンと酢酸エチルの9:1(重量比)混合液中に撹拌しながら滴下した。生じた沈殿物を濾別することにより、所望の高分子化合物27.5gを得た。回収した高分子化合物をGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9000、分散度(Mw/Mn)が1.90であった。
実施例2(下記式で表される高分子化合物の製造)
モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン9.96g(44.9mmol)、3−メタクリロイルオキシ−2−オキソテトラヒドロフラン5.08g(29.9mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロプロパン7.54g(44.9mmol)、2−エチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン7.42g(29.9mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の高分子化合物25.4gを得た。回収した高分子化合物をGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8600、分子量分布(Mw/Mn)が1.85であった。
実施例3(下記式で表される高分子化合物の製造)
モノマー成分として、1−シアノ−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン14.17g(57.4mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン3.38g(14.3mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロプロパン7.23g(43.0mmol)、1−エチル−1−メタクリロイルオキシシクロペンタン5.22g(28.7mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の高分子化合物25.9gを得た。回収した高分子化合物をGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8300、分子量分布(Mw/Mn)が1.81であった。
実施例4(下記式で表される高分子化合物の製造)
モノマー成分として、1−シアノ−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン13.73g(55.6mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン3.28g(13.9mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロプロパン9.34g(55.6mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン3.64g(13.9mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の高分子化合物27.0gを得た。回収した高分子化合物をGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8900、分子量分布(Mw/Mn)が1.88であった。
実施例5(下記式で表される高分子化合物の製造)
モノマー成分として、1−シアノ−5−(2−メタクリロイルオキシアセトキシ)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン14.73g(48.3mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン2.85g(12.1mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロプロパン6.09g(36.2mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン6.33g(24.2mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の高分子化合物26.9gを得た。回収した高分子化合物をGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8600、分子量分布(Mw/Mn)が1.86であった。
実施例6(下記式で表される高分子化合物の製造)
モノマー成分として、1−シアノ−5−(2−メタクリロイルオキシアセトキシ)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン11.24g(36.8mmol)、3−メタクリロイルオキシ−2−オキソテトラヒドロフラン2.09g(12.3mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン2.90g(12.3mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロプロパン4.13g(24.6mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン9.65g(36.8mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の高分子化合物26.5gを得た。回収した高分子化合物をGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8700、分子量分布(Mw/Mn)が1.86であった。
実施例7(下記式で表される高分子化合物の製造)
モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサ−2−チアトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2,2−ジオン14.06g(54.5mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン3.22g(13.6mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロプロパン9.16g(54.5mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン3.57g(13.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の高分子化合物27.2gを得た。回収した高分子化合物をGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が9100、分子量分布(Mw/Mn)が1.92であった。
実施例8(下記式で表される高分子化合物の製造)
モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサ−2−チアトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2,2−ジオン10.98g(42.6mmol)、3−メタクリロイルオキシ−2−オキソテトラヒドロフラン4.82g(28.4mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロプロパン7.15g(42.6mmol)、2−エチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン7.04g(28.4mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の高分子化合物26.1gを得た。回収した高分子化合物をGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8400、分子量分布(Mw/Mn)が1.83であった。
比較例1(下記式で表される高分子化合物の製造)
モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン10.94g(49.3mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン2.91g(12.3mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン16.15g(61.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の高分子化合物27.6gを得た。回収した高分子化合物をGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8400、分子量分布(Mw/Mn)が1.82であった。
比較例2(下記式で表される高分子化合物の製造)
モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサ−2−チアトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2,2−ジオン12.01g(46.5mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン2.75g(11.6mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン15.24g(58.2mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の高分子化合物28.1gを得た。回収した高分子化合物をGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8600、分子量分布(Mw/Mn)が1.85であった。
実施例9(フォトレジスト用樹脂組成物の調製)
実施例1で得られた高分子化合物100重量部に対して3重量部のトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート及び0.3重量部の1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンを加え、更にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を加えてポリマー濃度10重量%のフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
得られたフォトレジスト用樹脂組成物を0.1μmのポリエチレン製フィルターで濾過し、シリコンウェハ上にスピンコーティング法により塗布し、温度120℃で90秒間加熱処理を行い、厚み約0.3μmの感光層を形成した。波長193nmのArFエキシマレーザーでラインアンドスペースパターンを露光した後、温度120℃で90秒間加熱処理を行い、0.3Mのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像し、純水でリンスした。その結果、0.12μmのラインアンドスペースパターンが鮮明且つ精度よく得られた。
実施例10〜16、比較例3、4(フォトレジスト用樹脂組成物の調製)
実施例1で得られた高分子化合物に代えて実施例2〜8及び比較例1、2で得られた各高分子化合物を使用した以外は実施例9と同様にしてフォトレジスト用樹脂組成物を得た。
得られたフォトレジスト用樹脂組成物について、実施例9と同様にラインアンドスペースパターンを作成したところ、実施例2〜8の高分子化合物を用いた場合には、0.12μmのラインアンドスペースパターンが鮮明且つ精度よく得られた。一方、比較例1、2の高分子化合物を用いた場合には、0.12μmのラインアンドスペースパターンは得られたものの、スペースの部分にレジストのスカムが多く見られた。