JP5982158B2 - リール部材 - Google Patents

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Description

本発明は、テープ状の接着フィルムが巻回されるリール部材に関し、特に、巻芯に弾性体が装着され、該弾性体に接着フィルムが巻回されるリール部材に関する。
従来から、基板に接着フィルムを用いて電子部品を実装する実装法が用いられている。例えば、液晶表示パネル(LCDパネル)の周縁部に導電性の接着フィルムを介して液晶駆動回路であるICチップを実装するCOG(Chip on Glass)実装法や、太陽電池セルにインターコネクタとなるタブ線を接続する接続法が挙げられる。
導電性の接着フィルムは、バインダー樹脂に導電性粒子が分散された接着剤層が、支持体となるベースフィルム上に形成されたものである。このような導電性接着フィルム50は、例えば、図11に示すように、リールフランジ52を有するリール部材51の巻芯53に巻回されたリール巻装体の形状で使用される(例えば、特許文献1を参照)。
ところで、導電性接着フィルム50のリール交換を行うためには一端ラインを停止し、接着フィルムを搬送ローラに引き回す等繁雑な作業を要し、COG実装等の工程において大きなタイムロスとなっている。このため、導電性接着フィルム50のリール交換作業の簡素化や交換回数の低減のための方策が種々試みられている。なかでも、導電性接着フィルム50の長尺化がリール交換の回数低減に効果的である。
しかし、リール部材51の巻芯53に導電性接着フィルム50が長尺に巻回されることで、巻芯53付近に巻圧が累積して巻締まりが起こる。これにより、リール巻装体は、バインダー樹脂がベースフィルムの両側からはみ出し、実使用時に接着性や導通信頼性を損なうおそれがある。また、はみ出したバインダー樹脂がリールフランジ52に付着して導電性接着フィルム50を正常に引き出せなくなるいわゆるブロッキングという現象が発生するおそれがある。この減少は、特に、常温においてバインダー樹脂の粘性が低い導電性接着フィルムにおいて、顕著にみられる傾向があった。
特開2001−171033号公報 特開2010−257983号公報 特開2011−58007号公報
このような不具合に対して、ベースフィルムを接着剤層よりも幅広に設けることではみ出しを抑制する方法(特許文献2、3を参照)や、接着フィルムを巻き取る張力を巻芯部側よりも外周側で弱くすることで巻芯部に巻圧が集中することを防止する方法(いわゆるテーパーテンション)も提案されている。
しかし、ベースフィルムを接着剤層よりも幅広にする方法では、製造が煩雑であることに加え、はみ出しやブロッキングを抑制することはできても、接着剤層が巻圧によって流動することは防止できず、実使用時において接着性や導通信頼性を損なうおそれは依然として残る。
また、テーパーテンションをかけると、図12に示すように、巻芯の外周側で張力不足による巻ズレや巻緩みが発生し、また、図13に点線で示すように、導電性接着フィルム50の巻装体からの脱落などが起きやすくなるなど、別の問題が生じる。
そこで、本発明は、接着フィルムの長尺化を図ると共に、巻圧集中によるはみ出しやブロッキングを抑制し、かつ巻ズレ等も防止することができるリール部材を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明に係るリール部材は、巻芯と、上記巻芯の外周面に嵌合され、テープ状の接着フィルムが巻回される環状の弾性体と、上記巻芯の両側に設けられたリールフランジとを備え、上記弾性体は、ショアA硬度が30°より大きく90°未満であり、上記リールフランジには、上記弾性体が圧縮変形した際に、該弾性体の一部が逃げる退避スペースが設けられている。
本発明によれば、弾性体は、接着フィルムが巻回されるとともに、弾性変形自在とされることにより、接着フィルムの巻装体に巻締まりが発生した場合にも、巻圧を吸収し、はみ出しやブロッキングを防止することができる。
本発明が適用されたリール部材を示す側面図である。 接着フィルムの巻回状態が崩れたリール部材を示す断面図である。 本発明が適用されたリール部材を示す側面図である。 本発明が適用された他のリール部材を示す側面図である。 本発明が適用された他のリール部材を示す側面図である。 本発明が適用された他のリール部材を示す側面図である。 本発明が適用された他のリール部材を示す側面図である。 接着フィルムの構成を示す断面図である。 実施例における、はみ出しの測定方法を示す斜視図である。 実施例における、巻締まり負荷強度の測定方法を示す側面図である。 従来のリール部材を示す斜視図である。 従来のリール部材において巻きズレや巻き緩みが生じた状態を示す側面図である。 従来のリール部材において巻締まりや接着フィルムの巻装体からの脱落が生じた状態を示す側面図である。
以下、本発明が適用されたリール部材について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
本発明が適用されたリール部材1は、図1に示すように、巻芯3と、巻芯3の外周面に嵌合され、テープ状の接着フィルム2が巻回される弾性リング4と、巻芯3の両側に設けられたリールフランジ5とを備える。
[巻芯/弾性リング]
巻芯3は、円筒形状をなし、中心部に弾性リング4を回転駆動する図示しない回転装置が挿通する挿通口3aが形成されている。また、巻芯3は、後述する接着フィルム2と略同じ幅又は接着フィルム2の幅以上の幅を有し、外周面には弾性リング4が嵌合され一体化されている。
弾性リング4は、ゴム等の弾性体からなり、円筒形状をなし、接着フィルム2と略同じ幅又は接着フィルム2の幅以上の幅を有する。また、弾性リング4は、巻芯3に嵌合されることにより、巻芯3及びリールフランジ5と一体化されている。この弾性リング4は、接着フィルム2が巻回されるとともに、弾性変形自在とされることにより、接着フィルム2の巻装体に巻締まりが発生した場合にも、巻圧を吸収し、はみ出しやブロッキングを防止することができる。また、リール部材1は、弾性リング4を設けることにより、接着フィルム2を大きな張力で巻回することができる。
弾性リング4は、ショアA硬度で30°〜90°の硬度を有する。リール部材1は、弾性リング4の硬度がショアA硬度で90°より大きいと、硬くなり過ぎて、リング径によっては円筒形状に成型できず、また成型できた場合にも接着フィルム2の巻回時に巻圧を吸収しきれずにはみ出しやブロッキングが起きる危険がある。また、リール部材1は、弾性リング4の硬度がショアA硬度で30°未満であると、接着フィルム2の巻回時に、巻圧によって弾性リング4が潰れて接着フィルム2の巻装体が変形しやすくなり、巻締まり負荷強度が低下する。
ここで、巻締まり負荷強度とは、巻芯3及び弾性リング4の回転が規制された状態で、巻回された接着フィルム2を引き出したときに掛かる最大負荷をいう。一般に、リールフランジに巻芯が固定されてなる従来のリール部材においては、巻芯の回転が規制された状態で、巻回された接着フィルムを強引に引き出すと、接着フィルム巻装体に巻圧が生じ、巻装体内周側に向かって巻圧が累積していく。そのため、接着フィルムの引き出しに掛かる負荷は増加していくが、ある点を境に急激に減少し、低負荷で引き出しが可能となってしまう。これは、図2に示すように、接着フィルム巻装体に掛かる巻圧の増大によってリールフランジ52がフィルム巻装体を支持しきれずに左右に湾曲するなどにより、巻回状態が崩れて累積した巻圧が開放され、また、接着フィルム50が正常に重畳されずこれ以上正常に巻圧を累積支持し得なくなったことによる。このように巻回状態が崩れるまで巻圧が累積された接着フィルム巻装体では、バインダー樹脂のはみ出しやブロッキング、接着フィルムの脱落などが生じ、正常に接着フィルム2を巻き出すことができない。
リール部材の巻締まり負荷強度とは、接着フィルムの巻装体に巻締まりによる負荷が掛かったときに、正常な巻回状態を維持し得る最大の負荷強度をいい、接着フィルム巻装体にこの負荷強度を超えて負荷が掛かると巻回状態が崩れ、低負荷での引き出しが可能となる。すなわち、巻締まり負荷強度は、接着フィルムの巻装体の巻締まりに対して、巻回状態を維持し巻圧を支持し得る耐性を示すものとなる。
そして、ショアA硬度が90°より大きい弾性リング4では、巻締まりによる巻圧を吸収することができず、巻圧が巻装体に掛かることで巻回状態が崩れる。また、ショアA硬度が30°未満の弾性リング4では、巻締まりに対して容易に変形し、巻回状態を維持し得ず、巻き崩れが生じ、巻締まり負荷強度が低下する。このため、弾性リング4は、ショアA硬度で30°〜90°の硬度を有することが好ましい。
[ショアA硬度が80°以上]
また、弾性リング4は、ショアA硬度で80°以上とすることにより、巻芯3及び弾性リング4の回転が規制された状態で、巻回された接着フィルム2を引き出したときに掛かる最大負荷、すなわち巻締まり負荷強度が、5N以上とすることができる。
弾性リング4は、例えば、ブチゴムル、ニトリルゴム、NE、ウレタンなどのゴムを使用して形成される。また、反発弾性が高い材質を用いることにより、接着フィルム2の巻き品質が向上する。このような弾性リング4の材料としては、ウレタン、NR、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴムがある。
なお、弾性リング4は、発泡体のような巻圧に対して体積収縮を伴う材料を用いた場合、所望の硬度を得ることができず、接着フィルム2の巻締まりに対して容易に変形し、巻回状態を維持し得ない。そのため、弾性リング4は、ゴム等のように、所望の硬度を備える材料を用いることが好ましい。例えば、オレフィン系発泡体や発泡ウレタン等の発泡系の弾性材料は、弾性率(ヤング率)で0.005〜0.06GPaであるのに対して、ゴム系では0.01〜0.1GPaと数値的にも優位である。
また、弾性リング4は、ゴム硬度や巻回される接着フィルム2の長さに応じて、適宜厚さを調整することができ、例えば巻回される接着フィルム2の長さが200〜500mの場合では、厚み0.5〜10mmの範囲とすることが好ましい。
[リールフランジ]
これら巻芯3及び弾性リング4の両側にはリールフランジ5が設けられている。リールフランジ5は、弾性リング4に巻回された接着フィルム2を支持するものであり、例えば透明なプラスチック材料を用いて円盤状に形成されている。また、リールフランジ5は、接着フィルム2と接する面に、静電処理を施すようにしてもよい。静電処理を施す方法としては、例えば、ポリチオフェン等の化合物を塗布する方法が挙げられる。
[退避スペース]
リールフランジ5には、累積した巻圧によって弾性リング4が圧縮変形した際に、弾性リング4の一部が退避する退避スペース10が設けられている。弾性リング4は、ゴム等の材料で形成され、巻圧がかかることによって圧縮されると、体積が収縮することなく変形することで巻圧を吸収する。退避スペース10は、変形された弾性リング4の一部が退避するスペースであり、例えば図3に示すように、リールフランジ5の内周面に凹設されている。
この退避スペース10は、リールフランジ5の内周面の、弾性リング4の側面と対峙する位置に設けられている。退避スペース10は、例えば図3に示すように、左右一対のリールフランジ5a、5bの弾性リング4の側面と対峙する位置に、同形状の環状の凹溝11が設けられてなる。この退避スペース10は、一方のリールフランジ5a側の凹溝11aの深さをA、他方のリールフランジ5b側の凹溝11bの深さをC、両リールフランジ5a、5bの凹溝11a,11bの幅をDとすると、幅Dは弾性リング4の厚さと同じとされる。
このとき、退避スペース10は、弾性リング4の幅をBとすると、退避スペース10断面積(A×D+C×D)/弾性リング4断面積(B×D)が3.5〜20%とすることが好ましい。退避スペース10と弾性リング4との断面積比率が3.5%未満、すなわち退避スペース10が狭小すぎると接着フィルム2の巻回時に巻圧に応じて弾性リング4が圧縮変形して退避することができず、巻圧を吸収できない。また、退避スペース10と弾性リング4との断面積比率が20%より大きいと、圧縮変形が不安定となり弾性体としての機能が低下したり、接着フィルム2の巻き崩れなどの不具合が起きる。
また、退避スペース10は、弾性リング4が最大限に変形した際に、弾性リング4と当接して支持する大きさとすることが好ましい。これにより、退避スペース10は、圧縮変形した弾性リング4を支持し、巻圧の安定した吸収が可能となる。
[他の退避スペース:リブ1]
なお、退避スペース10は、リールフランジ5の内周面に凹溝11を形成する他にも、図4に示すように、リールフランジ5の内周面に複数の凸条リブ12を放射状に設けるとともに、凸状リブ12と弾性リング4との間にクリアランスを設け、弾性リング4とリールフランジ5との距離や、弾性リング4と凸状リブ12との距離を調整することにより形成してもよい。
図4に示す場合、弾性リング4とリールフランジ5及び凸状リブ12との間にクリアランスを設けることで、退避スペース10は、弾性リング4と凸状リブ12との間及び弾性リング4とリールフランジ5との間に形成される。
また、退避スペース10は、図5に示すように、凸状リブ12と弾性リング4とを接触させて、凸状リブ12の高さを調整することにより形成してもよい。この場合、退避スペース10は、弾性リング4とリールフランジ5との間となる。
[他の退避スペース:リブ2]
なお、退避スペース10は、リールフランジ5の内周面に凹溝11を形成する他にも、図6に示すように、リールフランジ5の内周面に複数の凸条リブ12を放射状に設けるとともに、当該凸条リブ12の内周側の端部を弾性リング4と対峙する位置との境界位置とすることにより形成してもよい。
すなわち、リールフランジ5は、弾性リング4と対峙する位置には凸条リブ12が設けられず、弾性リング4に巻回される接着フィルム2と対峙して設けられる。これにより、リールフランジ5は、凸条リブ12によって接着フィルム2の巻装体側面を支持し、バインダー樹脂との接触面積を減らし、ブロッキングを抑制することができる。
このときも、退避スペース10は、一方のリールフランジ5a側の凸条リブ12aの高さをAとし、他方のリールフランジ5b側の凸条リブ12bの高さをCとし、弾性リング4の厚さをDとし、弾性リング4の幅をBとすると、退避スペース10断面積(A×D+C×D)/弾性リング4断面積(B×D)が3.5〜20%とすることが好ましい。
[他の退避スペース:環状リブ]
また、退避スペース10は、図7に示すように、リールフランジ5の内周面に、環状リブ13を突設することにより形成してもよい。環状リブ13は、内側が圧縮変形された弾性リング4の退避スペースとなるものであり、リールフランジ5と同心円状に形成され、かつ、弾性リング4の外周側の側面に当接される。
[接着フィルム]
ここで、リール部材1に巻回される接着フィルム2について説明する。接着フィルム2は、図8に示すように、接着剤層20と接着剤層20を支持する支持体となるベースフィルム21とを備える。
接着剤層20は、バインダー(絶縁性接着剤組成物)20aに導電性粒子22を含有する異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)とすることができるが、これに限定されず、バインダー20aに導電性粒子22を含有しない絶縁性接着フィルム(NCF:Non-Conductive Film)であってもよい。
接着フィルム2のバインダー20aは、例えば、膜形成樹脂、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤、シランカップリング剤等を含有する通常のバインダーを用いることができる。接着フィルム2は、バインダー20aに導電性粒子22が分散された異方性導電組成物、又は、バインダー20aに導電性粒子22を含有しない絶縁性接着剤組成物を、ベースフィルム21上に塗布することにより、ベースフィルム21上に形成される。
ベースフィルム21は、バインダー20aをフィルム状に支持するものであり、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等にシリコーン等の剥離剤を塗布することにより形成される。
バインダー20aに含有される膜形成樹脂としては、平均分子量が10000〜80000程度の樹脂が好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変形エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の各種の樹脂が挙げられる。中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が特に好ましい。
熱硬化性樹脂としては、常温で流動性を有していれば特に限定されず、例えば、市販のエポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
アクリル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じてアクリル化合物、液状アクリレート等を適宜選択することができる。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等を挙げることができる。なお、アクリレートをメタクリレートにしたものを用いることもできる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
潜在性硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、加熱硬化型、UV硬化型等の各種硬化剤が挙げられる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、熱、光、加圧等の用途に応じて選択される各種のトリガにより活性化し、反応を開始する。熱活性型潜在性硬化剤の活性化方法には、加熱による解離反応などで活性種(カチオンやアニオン)を生成する方法、室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法、モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤を高温で溶出して硬化反応を開始する方法、マイクロカプセルによる溶出・硬化方法等が存在する。熱活性型潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミン塩、ジシアンジアミド等や、これらの変性物があり、これらは単独でも、2種以上の混合体であってもよい。中でも、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が好適である。
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。シランカップリング剤を添加することにより、有機材料と無機材料との界面における接着性が向上される。
導電性粒子22としては、異方性導電フィルムにおいて使用されている公知の何れの導電性粒子を挙げることができる。導電性粒子22としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、或いは、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等が挙げられる。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を挙げることができる。
なお、上述した説明では、ベースフィルム21上にACF又はNCFからなる接着フィルム2が積層されてなる接着フィルム2を用いたが、この例に限定されるものではない。例えば、フィルム積層体は、ACFとNCFとが積層された2層以上の異方性導電フィルムとしてもよい。
また、接着フィルム2は、接着フィルム2のベースフィルム21が積層された面とは反対の面側にもカバーフィルムを設ける構成としてもよい。また、例えば、複数の太陽電池セルの電極同士を電気的に接続するための銅箔付き接着フィルムとしてもよい。
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、巻芯3に嵌合させる弾性リング4の種類を変えたリール部材を用意し、各リール部材に長さ300mの接着フィルムを巻回した。そして、各リール部材から通常通りに巻芯及び弾性リングが回転しながら接着フィルムを巻き出したときのバインダー樹脂のはみ出しや、ブロッキングの有無について確認した。また、各リール部材の巻芯及び弾性リングの回転を規制した状態で接着フィルムを引き出したときの巻締まり負荷強度を測定するとともに測定後のはみ出しの有無について評価した。
各実施例及び比較例に用いるリール部材は、図3に示すように、リールフランジ5の内周面に凹溝11からなる弾性リング4の退避スペース10が設けられている。また、各リール部材に巻回する接着フィルムは、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製ACFを用いた。接着フィルムの接着剤層の厚みは10〜25μm、バインダーの最低溶融粘度は3.0×10−4Pa・Sである。
実施例1では、弾性リングの材料として、ショアA硬度40°のブチルゴムを用いた。また、弾性リングの厚さDは2mmであり、退避スペース10と弾性リング4との断面積比率:退避スペース10断面積(A×D+C×D)/弾性リング4断面積(B×D)は、5%である。また、接着フィルムの巻回時における張力は0.75Nである。
実施例2では、弾性リングの材料として、ショアA硬度80°のブチルゴムを用いた他は、実施例1と同様の条件とした。
実施例3では、弾性リングの材料として、ショアA硬度40°のニトリルゴムを用いた他は、実施例1と同様の条件とした。
実施例4では、弾性リングの材料として、ショアA硬度80°のニトリルゴムを用いた他は、実施例1と同様の条件とした。
実施例5では、弾性リングの材料として、ショアA硬度40°のNEを用いた他は、実施例1と同様の条件とした。
実施例6では、弾性リングの材料として、ショアA硬度80°のNEを用いた他は、実施例1と同様の条件とした。
実施例7では、弾性リングの材料として、ショアA硬度40°のウレタンを用いた他は、実施例1と同様の条件とした。
実施例7では、弾性リングの材料として、ショアA硬度80°のウレタンを用いた他は、実施例1と同様の条件とした。
比較例1では、弾性リング4が設けられていない従来のリール部材を用いて接着フィルムを巻回した他は、実施例1と同様の条件とした。
比較例2では、弾性リングの材料として、ショアA硬度30°のブチルゴムを用いた他は、実施例1と同様の条件とした。
比較例3では、弾性リングの材料として、ショアA硬度90°のブチルゴムを用いた他は、実施例1と同様の条件とした。
実施例及び比較例に係るリール部材から通常通りに接着フィルムを巻き出したときのバインダー樹脂のはみ出しや、ブロッキングの有無については、図9に示すように、測定治具に各リール部材をセットし、接着フィルムを巻き出し、先端に50gの錘Wを吊した状態で常温で24時間放置する。そして、リールフランジの側面を光学顕微鏡で観察し、はみ出しの有無について確認した。次いで、接着フィルムを通常通りに巻き出して、ブロッキングの有無について確認した。そして、はみ出しが観察されない場合を◎、はみ出しが観察されたが実用上問題ない場合を○、ブロッキングが生じて正常に巻き出せなかった場合を×とした。
また、実施例及び比較例に係る巻締まり負荷強度の測定は、図10に示すように、測定治具に各リール部材をセットし、巻芯及び弾性リングの回転を規制した状態でプッシュプルゲージGで接着フィルムを引き出し、荷重のピークを測定した。また、リールフランジの側面を光学顕微鏡で観察し、はみ出しの有無について確認した。測定結果を表1に示す。
Figure 0005982158
表1に示すように、各実施例に係るリール部材においては、実用上問題ない程度のはみ出しが見られた程度で、ブロッキングは発生しなかった。また、巻締まり負荷強度も1N以上と良好であり、接着フィルムの引き出し後においても使用不能なはみ出しは観察されなかった。
また、各実施例のうち、弾性リングのショアA硬度を80°とした実施例2,4,6,8では、巻締まり負荷強度が5N以上と良好な結果となった。
一方、弾性リングを設けていない比較例1では、通常通りに接着フィルムを巻き出す際に、はみ出しによるブロッキングが生じ、実用困難となった。また、ショアA硬度30°の弾性リングを用いた比較例2では、接着フィルムの引き出し時における巻締まり負荷強度が0.5Nと低く、また引き出し後にははみ出しが生じ実用困難となった。さらに、ショアA硬度90°の弾性リングを用いた比較例3では、通常通りに接着フィルムを巻き出す際に、はみ出しによるブロッキングが生じ、実用困難となった。
これより、弾性リングの材料は、ショアA硬度が30°より大きく90°未満とすることが好ましいことが判る。
また、実施例2として、実施例1と同形状の退避スペース10が設けられたリール部材において、退避スペース10と弾性リング4との断面積比率:退避スペース10断面積(A×D+C×D)/弾性リング4断面積(B×D)を2%としたリール部材を用意した。そして、リール部材に、長さ300mの接着フィルムを巻回し、各リール部材から通常通りに接着フィルムを巻き出したときのバインダー樹脂のはみ出しや、ブロッキングの有無について確認した。また、各リール部材の回転を規制した状態で接着フィルムを引き出したときの巻締まり負荷強度を測定するとともに測定後のはみ出しの有無について評価した。
実施例9では、弾性リングの材料として、ショアA硬度40°のブチルゴムを用いた。また、弾性リングの厚さDは2mmであり、接着フィルムの巻回時における張力は0.75Nである。
実施例10では、弾性リングの材料として、ショアA硬度80°のブチルゴムを用いた。また、弾性リングの厚さDは2mmであり、接着フィルムの巻回時における張力は0.75Nである。
各リール部材から通常通りに接着フィルムを巻き出したときのバインダー樹脂のはみ出しや、ブロッキングの有無についての観察や、各リール部材の回転を規制した状態で接着フィルムを引き出したときの巻締まり負荷強度の測定、及び接着フィルムの引き出し時におけるはみ出しの観察、評価手法は実施例1と同様である。測定結果を表2に示す。
Figure 0005982158
表2に示すように、実施例9及び実施例10においては、いずれも実用上問題ない程度のはみ出しが見られた程度で、ブロッキングは発生しなかった。また、巻締まり負荷強度も1N以上と良好であり、接着フィルムの引き出し後においても使用不能なはみ出しは観察されなかった。
また、実施例3として、退避スペース10が設けられていないリール部材を用意した。すなわち、実施例3にかかるリール部材は、退避スペース10と弾性リング4との断面積比率:退避スペース10断面積(A×D+C×D)/弾性リング4断面積(B×D)を0%とした。そして、リール部材に、長さ300mの接着フィルムを巻回し、各リール部材から通常通りに接着フィルムを巻き出したときのバインダー樹脂のはみ出しや、ブロッキングの有無について確認した。また、各リール部材の回転を規制した状態で接着フィルムを引き出したときの巻締まり負荷強度を測定するとともに測定後のはみ出しの有無について評価した。
比較例4では、弾性リングの材料として、ショアA硬度40°のブチルゴムを用いた。また、弾性リングの厚さDは2mmであり、接着フィルムの巻回時における張力は0.75Nである。
比較例5では、弾性リングの材料として、ショアA硬度80°のブチルゴムを用いた。また、弾性リングの厚さDは2mmであり、接着フィルムの巻回時における張力は0.75Nである。
各リール部材から通常通りに接着フィルムを巻き出したときのバインダー樹脂のはみ出しや、ブロッキングの有無についての観察や、各リール部材の回転を規制した状態で接着フィルムを引き出したときの巻締まり負荷強度の測定、及び接着フィルムの引き出し時におけるはみ出しの観察、評価手法は実施例1と同様である。測定結果を表3に示す。
Figure 0005982158
表3に示すように、比較例4及び比較例5においては、いずれも通常通りに接着フィルムを巻き出す際に、はみ出しが生じ、実用が困難となった。これは、弾性リングが圧縮変形された際の退避スペースが設けられていないため、弾性リングが充分に圧縮することができず、接着フィルムの巻装体に生じる巻圧を吸収することができなかったためである。
また、実施例4として、ウレタンゴムからなる弾性リングを備えたリール部材を用意した。実施例4に係るリール部材は、退避スペース10と弾性リング4との断面積比率:退避スペース10断面積(A×D+C×D)/弾性リング4断面積(B×D)を5%とした。そして、リール部材に、長さ300mの接着フィルムを張力0.75Nで巻回し、各リール部材から通常通りに接着フィルムを巻き出したときのバインダー樹脂のはみ出しや、ブロッキングの有無について確認した。また、各リール部材の回転を規制した状態で接着フィルムを引き出したときの巻締まり負荷強度を測定するとともに測定後のはみ出しの有無について評価した。
実施例11では、ショアA硬度40°、厚さ1mmの弾性リングを用いた。
実施例12では、ショアA硬度40°、厚さ2mmの弾性リングを用いた。
実施例13では、ショアA硬度40°、厚さ5mmの弾性リングを用いた。
実施例14では、ショアA硬度80°、厚さ1mmの弾性リングを用いた。
実施例15では、ショアA硬度80°、厚さ2mmの弾性リングを用いた。
実施例16では、ショアA硬度80°、厚さ5mmの弾性リングを用いた。
各リール部材から通常通りに接着フィルムを巻き出したときのバインダー樹脂のはみ出しや、ブロッキングの有無についての観察や、各リール部材の回転を規制した状態で接着フィルムを引き出したときの巻締まり負荷強度の測定、及び接着フィルムの引き出し時におけるはみ出しの観察、評価手法は実施例1と同様である。測定結果を表4に示す。
Figure 0005982158
表4に示すように、実施例11〜16は、いずれも実用上問題はない。ゴム硬度が40°である実施例11〜13では、接着フィルムを通常通り巻き出す際、はみ出しは観察されなかったが、接着フィルムを引き出す際の巻締まり負荷強度は厚さが増すにつれて低くなる傾向がある。一方、ゴム硬度が80°である実施例14〜16では、厚さが1mmの実施例14において接着フィルムを通常通り巻き出す際、若干のはみ出しが観察されたが、厚さが薄くなるに従って接着フィルムを引き出す際の巻締まり負荷強度は上がる傾向がある。
このように、通常通りに巻芯及び弾性リングが回転しながら接着フィルムを巻き出す際におけるはみ出し評価と、巻芯及び弾性リングの回転を規制した状態で接着フィルムを引き出す際の巻締まり負荷強度とは、弾性リングのゴム硬度や厚みによって、相反する場合がある。
1 リール部材、2 接着フィルム、3 巻芯、4 弾性リング、5 リールフランジ、10 退避スペース、11 凹溝、12 凸条リブ、13 環状リブ、20 接着剤層、21 ベースフィルム、22 導電性粒子

Claims (9)

  1. 巻芯と、
    上記巻芯の外周面に嵌合され、テープ状の接着フィルムが巻回される環状の弾性体と、
    上記巻芯の両側に設けられたリールフランジとを備え、
    上記弾性体は、ショアA硬度が30°より大きく90°未満であり、
    上記リールフランジには、上記弾性体が圧縮変形した際に、該弾性体の一部が逃げる退避スペースが設けられているリール部材。
  2. 上記弾性体は、ショアA硬度が80°以上である請求項1記載のリール部材。
  3. 上記巻芯及び上記弾性体の回転が規制された状態で、巻回された上記接着フィルムを引き出したときに掛かる最大負荷が5N以上である請求項2記載のリール部材。
  4. 上記退避スペースは、上記リールフランジの内面に、上記弾性体と対峙して形成され、断面積比率が、上記弾性体の断面積に対し、3.5〜20%である請求項記載のリール部材。
  5. 上記退避スペースは、上記弾性体が最大限に変形した際に、該弾性体と当接する大きさである請求項記載のリール部材。
  6. 上記退避スペースは、上記リールフランジの内面に、上記弾性体と対峙した位置に環状の凹溝が形成されてなる請求項〜請求項のいずれか1項に記載のリール部材。
  7. 上記退避スペースは、上記リールフランジの内面に複数のリブが放射状に設けられるとともに、上記リブの内周側の端部が上記弾性体と対峙する位置との境界位置とされることにより形成される請求項〜請求項のいずれか1項に記載のリール部材。
  8. 上記退避スペースは、上記リールフランジの内面に、該リールフランジと同心円状の環状リブが上記弾性体と対峙した位置に設けられることにより形成されてなる請求項〜請求項のいずれか1項に記載のリール部材。
  9. 上記接着フィルムが巻回されている請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のリール部材。
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