JP2004338838A - 線状体巻き付け用ボビン - Google Patents
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Abstract
【課題】周囲の温度変化があった場合でも、巻き付けられた光ファイバ等の線状体が鍔部との間にボビンの幅方向の巻き隙を生じることのない、線状体巻き付け用ボビンを提供する。
【解決手段】ボビン1は、円筒状の胴体部(円筒体12)の両端に鍔部11を有するもので、円筒体12の外周にクッション13が設けられ、その外周に線状体が巻き付けられる。ボビン1は、鍔部11の幅方向(厚み方向)内側に、幅方向の線膨張係数が全体として円筒体12より大きい材質の物質を有する補助鍔を取り付け、温度変化に依らず線状体巻き取り幅を一定に(すなわち鍔部11との隙間無く)保てるようにしている。補助鍔は、例えば鍔部11の幅方向内側に接する中間部14と中間部14の幅方向内側に接する線状体接触部15を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】ボビン1は、円筒状の胴体部(円筒体12)の両端に鍔部11を有するもので、円筒体12の外周にクッション13が設けられ、その外周に線状体が巻き付けられる。ボビン1は、鍔部11の幅方向(厚み方向)内側に、幅方向の線膨張係数が全体として円筒体12より大きい材質の物質を有する補助鍔を取り付け、温度変化に依らず線状体巻き取り幅を一定に(すなわち鍔部11との隙間無く)保てるようにしている。補助鍔は、例えば鍔部11の幅方向内側に接する中間部14と中間部14の幅方向内側に接する線状体接触部15を有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバなどの線状体を巻き付けるための線状体巻き付け用ボビンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の線状体巻き付け用ボビン、例えば線状体として光ファイバを用いたボビンでは、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(以下、ABS樹脂という)や、ポリエチレン等が一般的に用いられている。これらの材料の線膨張係数は、いずれも光ファイバの線膨張係数と同様に正値を持ち、温度上昇に伴い膨張する特性を有する。
【0003】
しかし、その絶対値は、光ファイバの線膨張係数0.6×10−6[1/℃]と比較して、ABS樹脂の線膨張係数は7.0〜9.5×10−5[1/℃]、ポリエチレンの線膨張係数は10〜15×10−5[1/℃]であり、いずれも100倍以上である。そのため、多少の温度変化では光ファイバの巻き付け幅は変わらないが、光ファイバを巻き付けたボビンは幅方向に収縮・膨張する。
【0004】
図4は、従来の線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図である。図4(A)はボビンの斜視図、図4(B)はボビンの軸方向断面図である。図中、3はボビン、10は軸穴、11は鍔部、12は胴体部、13′はクッションである。ボビン3は、円筒状の胴体部(以下、円筒体とも呼ぶ)12の両端に鍔部11を有するもので、円筒体12の外周にはクッション13′が設けられ、その外周に線状体が巻き付けられるものである。ボビン3は、光ファイバを保管(短期間の保管も含む)や輸送する際に使用するものである。ここで、クッション13′は設けなくてもよい。
【0005】
図5は、図4の線状体巻き付け用ボビンにおける巻き隙発生のメカニズムを説明するための図である。図5(A)は高温時におけるボビンの正面図、図5(B)は低温時におけるボビンの正面図、図5(C)は低温時から常温時(室温時)に戻した場合のボビンの正面図である。図5中、3aは高温時のボビン、3bは低温時のボビン、3cは低温時から常温に戻した時のボビン、d1,d2はボビンの幅方向の隙間、Fは光ファイバであり、その他、図4と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0006】
通常、光ファイバFはボビン3に巻かれた状態で保管或いは運搬されるが、保管条件や運搬条件によっては大幅な温度変化を伴う場合がある。光ファイバFの断面の径も上述した光ファイバFの長手方向の線膨張係数にほぼ等しい線膨張係数で膨張収縮し、巻き付けられた光ファイバの巻幅も膨張収縮する。しかしながら、上述したように、ボビン3の材料の線膨張係数は光ファイバFの正値の線膨張係数よりもかなり大きく、鍔部11を有するボビン3の内幅の温度変化、すなわち円筒体12の幅の温度変化による変位量は、光ファイバFの巻幅の変位量よりもかなり大きい。従って、次に例示するように、温度が変化した結果、ボビン3の鍔部11と光ファイバFの巻き取り部との間に隙間が発生してしまうことがある。
【0007】
図4(B)のボビン3に光ファイバFを巻き付けた時の状態から、温度が上昇すると、多少の温度変化では光ファイバFの巻き付け幅は変わらないが、光ファイバFを巻き付けたボビン3の内幅は膨張し、図5(A)に3aで示す状態になる。すなわち、高温時には、鍔部11と光ファイバFの巻幅との間にボビンの幅方向の隙間d1が生じる。
【0008】
一方、図4(B)のボビン3に光ファイバFを巻き付けた時の状態から、温度が低下すると、光ファイバFを巻き付けたボビン3の内幅は収縮し、それに伴い光ファイバFは鍔部11から光ファイバ巻き付け幅を縮める方向に圧縮力が加えられて光ファイバFの巻き付け幅も同じ幅になり、図5(B)に3bで示す状態になる。続いて室内に移動するなどして移動前の温度より高温(光ファイバFを巻き付けた時の温度で例示する)の環境になると、光ファイバFの巻き付け幅は締め付けられ挟まったまま元には戻らないが、光ファイバFを巻き付けたボビン3の内幅は膨張して元に戻り、図5(C)に3cで示す状態になる。すなわち、低温の状態を経て常温に戻った時には、鍔部11と光ファイバFの巻幅との間にボビンの幅方向の隙間d2が生じる。
【0009】
上述のごとく、光ファイバを巻き付けたボビンを保管及び輸送する際、温度変化によってボビンの鍔部と巻き付けた光ファイバの間に幅方向の隙間(巻き隙)ができてしまう。特に光ファイバの巻き量を増やすために胴幅を広くした場合、この巻き隙は顕著に現れる。
【0010】
このような「巻き隙」が発生すると、小さな振動でも、光ファイバの巻き状態が崩れる原因になる。すなわち、ボビンの幅方向の隙間が生じると、巻き付けられた光ファイバFがこぼれることによって巻緩みが発生する。このような温度変化が繰り返されると、さらに巻緩みが促進されることになる。
【0011】
また、ボビンの胴径方向の伸縮については、光ファイバが巻き付けられた状態から温度が下がると、光ファイバの長手方向の長さが収縮して短くなり、光ファイバの巻径が収縮する。巻き付けられた光ファイバは、巻径方向に上述した光ファイバの長手方向の線膨張係数にほぼ等しい値で伸縮する。しかしながら、上述したように、ボビン3の胴径方向の膨張係数は光ファイバFの正値の線膨張係数よりもかなり大きいので、円筒体12の胴径が光ファイバFの巻径よりも大幅に小さくなり、円筒体12と光ファイバFとの間にボビンの胴径方向の隙間(図示せず)が生じ、巻き付けられた光ファイバFがこぼれて巻緩みが発生する。これは、従来の線状体巻き付け用ボビンは、その胴部が上述したABS樹脂やポリエチレン等の単一材料で構成されているか、或いは、ボビンの胴部をいくつかのパーツに分けた場合でも、それぞれのパーツの膨張係数が、上述したような正で大きい材料を使用しているためである。なお、光ファイバFの線膨張係数が円筒体12のそれより小さい場合には、温度の上昇によってはこのような胴径方向の隙間は生じず、図5(B),(C)の説明を胴径方向の場合に援用すれば明らかなように、温度上昇後に再度温度が低下することで、胴径方向の隙間が生ずることはある。
【0012】
巻緩みは、光ケーブルを製造するときなどにおいて、光ファイバFの繰り出し工程での製造条件の変動、ひいては光ファイバの製造装置への絡みつきから断線の事態に至る恐れがあり、光ファイバを収容した光ケーブルの品質向上及び製造効率向上に対する大きな障害となる。
【0013】
従来から、胴径方向のボビンの収縮に対し、線状体が巻緩みしにくい線状体巻き付け用ボビンは既知である(特許文献1参照)。特許文献1には、ボビンの胴体部において正負の線膨張係数を有する材料を組み合わせて、ボビン寸法の熱変化を抑えるようにした線状体巻き付け用ボビンが記載されている。
【0014】
図6は、従来の線状体巻き付け用ボビンの他の構成例を示す図で、上述の特許文献1に記載されている線状体巻き付け用ボビンの一例を示す図である。図6(A)は高温時の軸方向断面図、図6(B)は低温時の軸方向断面図である。図6中、4aは高温時のボビン、4bは低温時のボビン、16は内側円筒体、16aは内側円筒体16の凹部、17は外側円筒体、17aは外側円筒体17の凸部、その他、図4と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0015】
図6(A),(B)に示すボビンは、図4及び図5を参照して説明したものに比べて、円筒体の内側に内側円筒体16を有し、内側円筒体16は、径方向の線膨張係数が負となる線膨張係数の材料で形成され、内側円筒体16の線膨張係数の絶対値は、円筒体(ここでは外側円筒体17)の径方向の線膨張係数の絶対値よりも大きくしたものである。ここで、内側円筒体16の線膨張係数の絶対値と、外側円筒体17の線膨張係数の絶対値とをほぼ等しいものとしてもよい。巻き付け時の周囲環境の温度にもよるが、内側円筒体16の外周面は外側円筒体17の内周面に密着しているか、僅かに隙間を有している。
【0016】
なお、内側円筒体16は鍔部11の間に収容されることになるが、内側円筒体16の端部側面と鍔部11とは必ずしも密着している必要はなく、通常、隙間を空ける。この例は、ボビン4a,4bが鍔部11を有するとともに、胴体部の内周面に円周方向に形成された凸部17aを幅方向に複数個、図示の例では、2個有し、内側円筒体16が、外側円筒体17及び鍔部11で囲まれた内部に収容されるとともに、凸部17aに対応し円周方向に形成された凹部16aを外周面の幅方向に複数個、図示の例では2個有し、凸部17aと凹部16aとが嵌合したものである。
【0017】
図6(A)に示すように、高温時は、外側円筒体17が膨張するが内側円筒体16は収縮して、外側円筒体17と内側円筒体16の間には胴径方向の隙間が生じ、内側円筒体16の影響はない。外側円筒体17の径方向の線膨張係数は、巻き付けられた光ファイバの巻径方向の線膨張係数よりも大きいため、巻き取り張力がアップした状態になり巻乱れは生じない。一方、図6(B)に示すように、低温時は、外側円筒体17が収縮し内側円筒体16は膨張するが、内側円筒体16の線膨張係数の絶対値は、外側円筒体17の線膨張係数の絶対値よりも大きいため、外側円筒体17と内側円筒体16とは密着状態にあり、全体としては膨張することとなり、巻き取り張力がアップした状態になり巻乱れは生じない。
【0018】
なお、内側円筒体の線膨張係数の絶対値が、外側円筒体17の線膨張係数の絶対値以下の場合でも、内側円筒体16の線膨張係数が負であれば、内側円筒体16の膨張により外側円筒体17の胴径方向の収縮が抑制されるため、胴径方向の隙間が生じるとしても、その大きさは小さく光ファイバの巻緩みが少なくなる。また、外側円筒体17と内側円筒体16とは、線膨張係数が異方性を持ち胴径方向の線膨張係数よりも幅方向の線膨張係数が小さな材料で形成するようにすることで幅方向の膨張収縮を無視している。
【0019】
【特許文献1】
特開平10−59627号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のごとき従来技術によるボビンを使用した場合、巻き付けられた線状体は、周囲の温度変化に依って鍔部との間にボビン幅方向の巻き隙を生じてしまう。若しくは、ボビンの胴体部の幅方向の伸縮率を線状体の巻幅方向の伸縮率と同じくするなどの方法が考えられるが、1つのボビンに対して所定の線膨張係数をもつ線状体にしか適用できない。
【0021】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、周囲の温度変化があった場合でも、巻き付けられた光ファイバ等の線状体が鍔部との間にボビンの幅方向の巻き隙を生じることのない、線状体巻き付け用ボビンを提供することをその目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明による線状体巻き付け用ボビンは、線状体を巻き付ける円筒状の胴体部と胴体部の両端に設けられた鍔部とを有する線状体巻き付け用ボビンであって、鍔部の幅方向内側に、幅方向の線膨張係数が全体として胴体部より大きい材質の物体を有する補助鍔を取り付け、周囲の温度変化があった場合でも、巻き付けられた線状体が鍔部との間にボビンの幅方向の巻き隙を生じることのないようにしたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態に係る線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図である。図1(A)はボビンの斜視図、図1(B)はボビンの軸を通る平面で切断したときの断面図である。図中、1はボビン、11は鍔部、12は胴体部(円筒体)、13はクッション、14は中間部、15は線状体接触部、lは線状体巻き取り幅である。ボビン1は、円筒状の胴体部12(以下、円筒体12という)の両端に鍔部11を有するもので、円筒体12の外周にクッション13が設けられ、その外周に線状体が巻き付けられるものである。ここで、クッション13は必ずしも設けなくてもよい。補助鍔は、中心が空洞の円筒をスライスした形状をもち、且つ、ボビン胴部(ここでは円筒体12)に触れないように隙間を設けた構造をもつ。
【0024】
本発明に係る線状体巻き付け用ボビンは、胴体部と鍔部とを有するボビンである。胴体部としての円筒体12は線状体を巻き付ける円筒状の部位で、鍔部11は円筒体12の両端に設けられた部位である。本発明に係るボビン1は、鍔部11の幅方向(厚み方向)内側に、幅方向の線膨張係数が全体として円筒体12より大きい材質の物体を有する補助鍔を取り付け、温度変化に依らず線状体巻き取り幅を一定に(線状体自身の膨張収縮による幅の増減分だけの変化を許して、すなわち鍔部11との隙間無く)保てるようにしている。ここで、線状体巻き取り幅とは、ボビン1の鍔間幅(線状体巻き取り幅に相当する鍔間幅)を指し、周囲の温度変化があった場合でもこの幅を一定に保つことにより、巻き隙の発生を抑えることが可能となる。この結果、例えば光ケーブルの製造において、光ファイバの繰り出し工程での製造条件の変動、ひいては光ファイバの製造装置への絡みつきから断線を生じるようなこともなくなり、光ファイバを収容した光ケーブルの品質向上及び製造効率向上へと繋がる。
【0025】
図1では、補助鍔は、中間部14及び線状体接触部15よりなる例を示しているが、中間部14と線状体接触部15とが同じ材質で一体に形成されていてもよい。図1において、中間部14は鍔部11の幅方向内側に接する部位で、線状体接触部15は線状体と中間部14の幅方向内側とに接する部位である。従って、本発明に係るボビン1は、円筒体12(及びクッション13)と鍔部11とによりなる従来技術のボビンに、鍔部11の内側に補助鍔を固定したボビンであるとも言える。
【0026】
図2は、図1の線状体巻き付け用ボビンにおける巻き隙未発生のメカニズムを説明するための図である。図2(A)は高温時におけるボビンの正面図、図2(B)は低温時におけるボビンの正面図である。図2中、1aは高温時のボビン、1bは低温時のボビンであり、その他、図1と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0027】
図1(B)のボビン1に線状体を巻き付けた状態から温度が上昇すると、ボビン1の胴部である円筒体12(及びクッション13)は膨張し幅方向に広がるが、鍔部11の内側に取り付けた補助鍔(中間部14及び線状体接触部15)がボビン1aの幅方向内側に向かって膨張し、鍔間の幅lを一定に保つ(図2(A))。また、図1(B)のボビン1に線状体を巻き付けた状態から温度が下降した場合も、ボビン1の胴部である円筒体12(及びクッション13)は収縮するが、鍔部11に取り付けた補助鍔(中間部14及び線状体接触部15)もボビン1bの幅方向外側に向け収縮することによって、鍔間の幅lを一定に保つ(図2(B))。その結果、高温及び低温時でも、ファイバ巻き付け幅と、胴部の幅は常に一定に保たれ、巻き隙を防ぐことができる。なお、ここでは、線状体自身の膨張収縮による巻き付け幅の増減分を無視して説明しているが、その増減分も考慮してボビンを設計することが好ましい。
【0028】
ボビン1に巻き付ける線状体が光ファイバである場合、胴体部12及び鍔部11はガラス繊維を混ぜたABS樹脂で形成されたものとし、補助鍔はポリエチレンで形成されたものであるようにしてもよい。
【0029】
ここで、図1で示す例のように補助鍔が中間部14と線状体接触部15など複数のパーツに分かれている場合には、円筒体12及び鍔部11及び線状体接触部15はガラス繊維を混ぜたABS樹脂で形成され、中間部14はポリエチレンで形成されているようにとすればよい。このように、中間部14は、幅方向の線膨張係数が円筒体12より大きい材質からなるようにすればよい。このとき、線状体接触部15は円筒体12と同じ材質としてもよい。また、補助鍔を中間部14と線状体接触部15とにパーツ分けして設けた理由は、線状体に接触する部分(ここでは線状体接触部15)が高温(低温)時に外側(内側)に倒れ込むのを防ぐためである。
【0030】
具体的には、例えば、胴幅200mm,鍔部11の厚さ5mmのボビンで考えると、基本となるボビン材にはガラス繊維を混ぜたABS樹脂を用い(線膨張係数2×10−5[1/℃])、中間部14の高膨張率材としては、ポリエチレン(線膨張係数15×10−5[1/℃])を用いて、中間部14の厚さを1.267cmとすると、胴幅の膨張量と補助鍔の膨張量が釣り合い、常に一定の鍔間の幅を保つことができる。なお、この具体例においては各材料の線膨張係数が異方性を持たないものとして例示している。
【0031】
このように、本発明に係るボビンは、光ファイバの被覆材によっては線膨張係数が異なるためにそのまま他の光ファイバには使用できないが、補助鍔の材質(主として線膨張係数)を変える及び寸法(厚さ)を調節することによって、巻き付ける光ファイバの線膨張係数に合わせ、鍔間の温度変化を調節することは可能(光ファイバの線膨張係数が正負何れの場合でも調整可能)であり、鍔間幅の温度変化量を補助鍔により自由に調節可能なボビンであるとも言える。すなわち、中間部14の材質(線膨張係数)若しくは厚さを変えることによって、温度変化時の鍔間の幅を自由に調節することが可能なため、線状体の膨張幅に合わせて調節することができ、線膨張係数の大きい被覆材を使用した光ファイバなどに対しても、本発明に係るボビンを、円筒体12(及びクッション13)及び鍔部11をそのままにして補助鍔を取り換えるなどして使用することができる。これは、鍔部11と中間部14とが取り外し及び取り付け可能なように構成しておけばよい。
【0032】
なお、図1及び図2に示した円筒体12は、内部に空心部のある円筒体であるが、円筒体12は、円周面の外形を有するものであれば内部に空心部のない円柱体状のものでもよく、このようなものも含めて円筒体と表現している。なお、ボビン1の鍔部11及び内部に空心部のない円筒体12には、中心軸を通すための軸穴10が設けられたり、或いは、中心軸が直接に固定されて使用される。また、上述した説明では、線状体として光ファイバを用いた例を説明したが、同様な特性を有するものであれば、他の線状体であっても同様の作用効果を奏する。また、鍔部11は、円筒体12と一体的に成型されたものでも、また、ねじ止めや嵌合によって一体化されたものでもよい。鍔部11の材質を円筒体12の材質と同じにする必要はない。
【0033】
本発明の他の実施形態として、円筒体12の胴径方向の線膨張係数の絶対値が、線状体の巻径方向の線膨張係数の絶対値にほぼ等しいか或いはそれ以上であるようにしてもよい。この実施形態によれば、周囲の温度変化があった場合でも、巻き付けられた光ファイバ等の線状体が鍔部との間にボビンの幅方向の巻き隙を生じることがなくなるだけでなく、胴径方向の隙間も生じることがなくなる。
【0034】
図3は、本発明の他の実施形態に係る線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図で、胴径方向隙間未発生のメカニズムを説明するための図である。図3(A)は高温時におけるボビンの軸を通る平面で切断したときの断面図、図3(B)は低温時におけるボビンの軸を通る平面で切断したときの断面図である。図中、2aは高温時のボビン、2bは低温時のボビンであり、その他、図1及び図6と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。ここで、クッション13は設けなくてもよい。
【0035】
図3で例示する実施形態のボビン2a,2bは、図1及び図2で説明したボビン1と図6で説明した胴体部(外側円筒体17及び内側円筒体16)をもつボビンとを組み合わせたものである。従って、胴体部は、線状体が巻き付けられる外側円筒体17と、外側円筒体17の内側に収容される内側円筒体16とを有し、鍔部11は外側円筒体17の両端に設けられている。そして、外側円筒体17は、胴径方向の線膨張係数が正の材料で形成され、内側円筒体16は、胴径方向の線膨張係数が負の材料で形成され、外側円筒体17と内側円筒体16とは、高温時に隙間を有し低温時に密着するよう構成されている。但し、外側円筒体17と内側円筒体16とは、図6で例示したボビンと異なり、線膨張係数が異方性を持ち胴径方向の線膨張係数よりも幅方向の線膨張係数が小さな材料で形成する必要はない。
【0036】
なお、線状体が負の線膨張係数を有する場合に、上述した構成を用いても、負の線膨張係数を有する内側円筒体16により、低温時に外側円筒体17の胴径方向の収縮のため、巻き付けられた線状体と外側円筒体17との間に隙間が生じることによる巻緩みを防止できるという効果がある。なお、線状体の線膨張係数の正負を逆にしたことに対応させて、外側円筒体17及び内側円筒体16の線膨張係数の正負を逆にすれば、低温時と高温時とで変化が逆になるだけで同様な作用効果を奏することができる。
【0037】
なお、図1乃至図3を参照して説明した各実施形態において、各構成材料の弾性率については言及しなかったが、線膨張係数についてだけでなく、厳密には弾性率なども考慮して構成材料が選択的に採用される。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、線状体巻き付け用ボビンにおいて、周囲の温度変化があった場合でも、巻き付けられた光ファイバ等の線状体が鍔部との間にボビンの幅方向の巻き隙を生じることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図である。
【図2】図1の線状体巻き付け用ボビンにおける巻き隙未発生のメカニズムを説明するための図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図である。
【図4】従来の線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図である。
【図5】図4の線状体巻き付け用ボビンにおける巻き隙発生のメカニズムを説明するための図である。
【図6】従来の線状体巻き付け用ボビンの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…ボビン、1a,2a…高温時のボビン、1b,2b…低温時のボビン、10…軸穴、11…鍔部、12…胴体部(円筒体)、13…クッション、14…中間部、15…線状体接触部、16…内側円筒体、16a…凹部、17…外側円筒体、17a…凸部、l…線状体巻き取り幅。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバなどの線状体を巻き付けるための線状体巻き付け用ボビンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の線状体巻き付け用ボビン、例えば線状体として光ファイバを用いたボビンでは、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(以下、ABS樹脂という)や、ポリエチレン等が一般的に用いられている。これらの材料の線膨張係数は、いずれも光ファイバの線膨張係数と同様に正値を持ち、温度上昇に伴い膨張する特性を有する。
【0003】
しかし、その絶対値は、光ファイバの線膨張係数0.6×10−6[1/℃]と比較して、ABS樹脂の線膨張係数は7.0〜9.5×10−5[1/℃]、ポリエチレンの線膨張係数は10〜15×10−5[1/℃]であり、いずれも100倍以上である。そのため、多少の温度変化では光ファイバの巻き付け幅は変わらないが、光ファイバを巻き付けたボビンは幅方向に収縮・膨張する。
【0004】
図4は、従来の線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図である。図4(A)はボビンの斜視図、図4(B)はボビンの軸方向断面図である。図中、3はボビン、10は軸穴、11は鍔部、12は胴体部、13′はクッションである。ボビン3は、円筒状の胴体部(以下、円筒体とも呼ぶ)12の両端に鍔部11を有するもので、円筒体12の外周にはクッション13′が設けられ、その外周に線状体が巻き付けられるものである。ボビン3は、光ファイバを保管(短期間の保管も含む)や輸送する際に使用するものである。ここで、クッション13′は設けなくてもよい。
【0005】
図5は、図4の線状体巻き付け用ボビンにおける巻き隙発生のメカニズムを説明するための図である。図5(A)は高温時におけるボビンの正面図、図5(B)は低温時におけるボビンの正面図、図5(C)は低温時から常温時(室温時)に戻した場合のボビンの正面図である。図5中、3aは高温時のボビン、3bは低温時のボビン、3cは低温時から常温に戻した時のボビン、d1,d2はボビンの幅方向の隙間、Fは光ファイバであり、その他、図4と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0006】
通常、光ファイバFはボビン3に巻かれた状態で保管或いは運搬されるが、保管条件や運搬条件によっては大幅な温度変化を伴う場合がある。光ファイバFの断面の径も上述した光ファイバFの長手方向の線膨張係数にほぼ等しい線膨張係数で膨張収縮し、巻き付けられた光ファイバの巻幅も膨張収縮する。しかしながら、上述したように、ボビン3の材料の線膨張係数は光ファイバFの正値の線膨張係数よりもかなり大きく、鍔部11を有するボビン3の内幅の温度変化、すなわち円筒体12の幅の温度変化による変位量は、光ファイバFの巻幅の変位量よりもかなり大きい。従って、次に例示するように、温度が変化した結果、ボビン3の鍔部11と光ファイバFの巻き取り部との間に隙間が発生してしまうことがある。
【0007】
図4(B)のボビン3に光ファイバFを巻き付けた時の状態から、温度が上昇すると、多少の温度変化では光ファイバFの巻き付け幅は変わらないが、光ファイバFを巻き付けたボビン3の内幅は膨張し、図5(A)に3aで示す状態になる。すなわち、高温時には、鍔部11と光ファイバFの巻幅との間にボビンの幅方向の隙間d1が生じる。
【0008】
一方、図4(B)のボビン3に光ファイバFを巻き付けた時の状態から、温度が低下すると、光ファイバFを巻き付けたボビン3の内幅は収縮し、それに伴い光ファイバFは鍔部11から光ファイバ巻き付け幅を縮める方向に圧縮力が加えられて光ファイバFの巻き付け幅も同じ幅になり、図5(B)に3bで示す状態になる。続いて室内に移動するなどして移動前の温度より高温(光ファイバFを巻き付けた時の温度で例示する)の環境になると、光ファイバFの巻き付け幅は締め付けられ挟まったまま元には戻らないが、光ファイバFを巻き付けたボビン3の内幅は膨張して元に戻り、図5(C)に3cで示す状態になる。すなわち、低温の状態を経て常温に戻った時には、鍔部11と光ファイバFの巻幅との間にボビンの幅方向の隙間d2が生じる。
【0009】
上述のごとく、光ファイバを巻き付けたボビンを保管及び輸送する際、温度変化によってボビンの鍔部と巻き付けた光ファイバの間に幅方向の隙間(巻き隙)ができてしまう。特に光ファイバの巻き量を増やすために胴幅を広くした場合、この巻き隙は顕著に現れる。
【0010】
このような「巻き隙」が発生すると、小さな振動でも、光ファイバの巻き状態が崩れる原因になる。すなわち、ボビンの幅方向の隙間が生じると、巻き付けられた光ファイバFがこぼれることによって巻緩みが発生する。このような温度変化が繰り返されると、さらに巻緩みが促進されることになる。
【0011】
また、ボビンの胴径方向の伸縮については、光ファイバが巻き付けられた状態から温度が下がると、光ファイバの長手方向の長さが収縮して短くなり、光ファイバの巻径が収縮する。巻き付けられた光ファイバは、巻径方向に上述した光ファイバの長手方向の線膨張係数にほぼ等しい値で伸縮する。しかしながら、上述したように、ボビン3の胴径方向の膨張係数は光ファイバFの正値の線膨張係数よりもかなり大きいので、円筒体12の胴径が光ファイバFの巻径よりも大幅に小さくなり、円筒体12と光ファイバFとの間にボビンの胴径方向の隙間(図示せず)が生じ、巻き付けられた光ファイバFがこぼれて巻緩みが発生する。これは、従来の線状体巻き付け用ボビンは、その胴部が上述したABS樹脂やポリエチレン等の単一材料で構成されているか、或いは、ボビンの胴部をいくつかのパーツに分けた場合でも、それぞれのパーツの膨張係数が、上述したような正で大きい材料を使用しているためである。なお、光ファイバFの線膨張係数が円筒体12のそれより小さい場合には、温度の上昇によってはこのような胴径方向の隙間は生じず、図5(B),(C)の説明を胴径方向の場合に援用すれば明らかなように、温度上昇後に再度温度が低下することで、胴径方向の隙間が生ずることはある。
【0012】
巻緩みは、光ケーブルを製造するときなどにおいて、光ファイバFの繰り出し工程での製造条件の変動、ひいては光ファイバの製造装置への絡みつきから断線の事態に至る恐れがあり、光ファイバを収容した光ケーブルの品質向上及び製造効率向上に対する大きな障害となる。
【0013】
従来から、胴径方向のボビンの収縮に対し、線状体が巻緩みしにくい線状体巻き付け用ボビンは既知である(特許文献1参照)。特許文献1には、ボビンの胴体部において正負の線膨張係数を有する材料を組み合わせて、ボビン寸法の熱変化を抑えるようにした線状体巻き付け用ボビンが記載されている。
【0014】
図6は、従来の線状体巻き付け用ボビンの他の構成例を示す図で、上述の特許文献1に記載されている線状体巻き付け用ボビンの一例を示す図である。図6(A)は高温時の軸方向断面図、図6(B)は低温時の軸方向断面図である。図6中、4aは高温時のボビン、4bは低温時のボビン、16は内側円筒体、16aは内側円筒体16の凹部、17は外側円筒体、17aは外側円筒体17の凸部、その他、図4と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0015】
図6(A),(B)に示すボビンは、図4及び図5を参照して説明したものに比べて、円筒体の内側に内側円筒体16を有し、内側円筒体16は、径方向の線膨張係数が負となる線膨張係数の材料で形成され、内側円筒体16の線膨張係数の絶対値は、円筒体(ここでは外側円筒体17)の径方向の線膨張係数の絶対値よりも大きくしたものである。ここで、内側円筒体16の線膨張係数の絶対値と、外側円筒体17の線膨張係数の絶対値とをほぼ等しいものとしてもよい。巻き付け時の周囲環境の温度にもよるが、内側円筒体16の外周面は外側円筒体17の内周面に密着しているか、僅かに隙間を有している。
【0016】
なお、内側円筒体16は鍔部11の間に収容されることになるが、内側円筒体16の端部側面と鍔部11とは必ずしも密着している必要はなく、通常、隙間を空ける。この例は、ボビン4a,4bが鍔部11を有するとともに、胴体部の内周面に円周方向に形成された凸部17aを幅方向に複数個、図示の例では、2個有し、内側円筒体16が、外側円筒体17及び鍔部11で囲まれた内部に収容されるとともに、凸部17aに対応し円周方向に形成された凹部16aを外周面の幅方向に複数個、図示の例では2個有し、凸部17aと凹部16aとが嵌合したものである。
【0017】
図6(A)に示すように、高温時は、外側円筒体17が膨張するが内側円筒体16は収縮して、外側円筒体17と内側円筒体16の間には胴径方向の隙間が生じ、内側円筒体16の影響はない。外側円筒体17の径方向の線膨張係数は、巻き付けられた光ファイバの巻径方向の線膨張係数よりも大きいため、巻き取り張力がアップした状態になり巻乱れは生じない。一方、図6(B)に示すように、低温時は、外側円筒体17が収縮し内側円筒体16は膨張するが、内側円筒体16の線膨張係数の絶対値は、外側円筒体17の線膨張係数の絶対値よりも大きいため、外側円筒体17と内側円筒体16とは密着状態にあり、全体としては膨張することとなり、巻き取り張力がアップした状態になり巻乱れは生じない。
【0018】
なお、内側円筒体の線膨張係数の絶対値が、外側円筒体17の線膨張係数の絶対値以下の場合でも、内側円筒体16の線膨張係数が負であれば、内側円筒体16の膨張により外側円筒体17の胴径方向の収縮が抑制されるため、胴径方向の隙間が生じるとしても、その大きさは小さく光ファイバの巻緩みが少なくなる。また、外側円筒体17と内側円筒体16とは、線膨張係数が異方性を持ち胴径方向の線膨張係数よりも幅方向の線膨張係数が小さな材料で形成するようにすることで幅方向の膨張収縮を無視している。
【0019】
【特許文献1】
特開平10−59627号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のごとき従来技術によるボビンを使用した場合、巻き付けられた線状体は、周囲の温度変化に依って鍔部との間にボビン幅方向の巻き隙を生じてしまう。若しくは、ボビンの胴体部の幅方向の伸縮率を線状体の巻幅方向の伸縮率と同じくするなどの方法が考えられるが、1つのボビンに対して所定の線膨張係数をもつ線状体にしか適用できない。
【0021】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、周囲の温度変化があった場合でも、巻き付けられた光ファイバ等の線状体が鍔部との間にボビンの幅方向の巻き隙を生じることのない、線状体巻き付け用ボビンを提供することをその目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明による線状体巻き付け用ボビンは、線状体を巻き付ける円筒状の胴体部と胴体部の両端に設けられた鍔部とを有する線状体巻き付け用ボビンであって、鍔部の幅方向内側に、幅方向の線膨張係数が全体として胴体部より大きい材質の物体を有する補助鍔を取り付け、周囲の温度変化があった場合でも、巻き付けられた線状体が鍔部との間にボビンの幅方向の巻き隙を生じることのないようにしたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態に係る線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図である。図1(A)はボビンの斜視図、図1(B)はボビンの軸を通る平面で切断したときの断面図である。図中、1はボビン、11は鍔部、12は胴体部(円筒体)、13はクッション、14は中間部、15は線状体接触部、lは線状体巻き取り幅である。ボビン1は、円筒状の胴体部12(以下、円筒体12という)の両端に鍔部11を有するもので、円筒体12の外周にクッション13が設けられ、その外周に線状体が巻き付けられるものである。ここで、クッション13は必ずしも設けなくてもよい。補助鍔は、中心が空洞の円筒をスライスした形状をもち、且つ、ボビン胴部(ここでは円筒体12)に触れないように隙間を設けた構造をもつ。
【0024】
本発明に係る線状体巻き付け用ボビンは、胴体部と鍔部とを有するボビンである。胴体部としての円筒体12は線状体を巻き付ける円筒状の部位で、鍔部11は円筒体12の両端に設けられた部位である。本発明に係るボビン1は、鍔部11の幅方向(厚み方向)内側に、幅方向の線膨張係数が全体として円筒体12より大きい材質の物体を有する補助鍔を取り付け、温度変化に依らず線状体巻き取り幅を一定に(線状体自身の膨張収縮による幅の増減分だけの変化を許して、すなわち鍔部11との隙間無く)保てるようにしている。ここで、線状体巻き取り幅とは、ボビン1の鍔間幅(線状体巻き取り幅に相当する鍔間幅)を指し、周囲の温度変化があった場合でもこの幅を一定に保つことにより、巻き隙の発生を抑えることが可能となる。この結果、例えば光ケーブルの製造において、光ファイバの繰り出し工程での製造条件の変動、ひいては光ファイバの製造装置への絡みつきから断線を生じるようなこともなくなり、光ファイバを収容した光ケーブルの品質向上及び製造効率向上へと繋がる。
【0025】
図1では、補助鍔は、中間部14及び線状体接触部15よりなる例を示しているが、中間部14と線状体接触部15とが同じ材質で一体に形成されていてもよい。図1において、中間部14は鍔部11の幅方向内側に接する部位で、線状体接触部15は線状体と中間部14の幅方向内側とに接する部位である。従って、本発明に係るボビン1は、円筒体12(及びクッション13)と鍔部11とによりなる従来技術のボビンに、鍔部11の内側に補助鍔を固定したボビンであるとも言える。
【0026】
図2は、図1の線状体巻き付け用ボビンにおける巻き隙未発生のメカニズムを説明するための図である。図2(A)は高温時におけるボビンの正面図、図2(B)は低温時におけるボビンの正面図である。図2中、1aは高温時のボビン、1bは低温時のボビンであり、その他、図1と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0027】
図1(B)のボビン1に線状体を巻き付けた状態から温度が上昇すると、ボビン1の胴部である円筒体12(及びクッション13)は膨張し幅方向に広がるが、鍔部11の内側に取り付けた補助鍔(中間部14及び線状体接触部15)がボビン1aの幅方向内側に向かって膨張し、鍔間の幅lを一定に保つ(図2(A))。また、図1(B)のボビン1に線状体を巻き付けた状態から温度が下降した場合も、ボビン1の胴部である円筒体12(及びクッション13)は収縮するが、鍔部11に取り付けた補助鍔(中間部14及び線状体接触部15)もボビン1bの幅方向外側に向け収縮することによって、鍔間の幅lを一定に保つ(図2(B))。その結果、高温及び低温時でも、ファイバ巻き付け幅と、胴部の幅は常に一定に保たれ、巻き隙を防ぐことができる。なお、ここでは、線状体自身の膨張収縮による巻き付け幅の増減分を無視して説明しているが、その増減分も考慮してボビンを設計することが好ましい。
【0028】
ボビン1に巻き付ける線状体が光ファイバである場合、胴体部12及び鍔部11はガラス繊維を混ぜたABS樹脂で形成されたものとし、補助鍔はポリエチレンで形成されたものであるようにしてもよい。
【0029】
ここで、図1で示す例のように補助鍔が中間部14と線状体接触部15など複数のパーツに分かれている場合には、円筒体12及び鍔部11及び線状体接触部15はガラス繊維を混ぜたABS樹脂で形成され、中間部14はポリエチレンで形成されているようにとすればよい。このように、中間部14は、幅方向の線膨張係数が円筒体12より大きい材質からなるようにすればよい。このとき、線状体接触部15は円筒体12と同じ材質としてもよい。また、補助鍔を中間部14と線状体接触部15とにパーツ分けして設けた理由は、線状体に接触する部分(ここでは線状体接触部15)が高温(低温)時に外側(内側)に倒れ込むのを防ぐためである。
【0030】
具体的には、例えば、胴幅200mm,鍔部11の厚さ5mmのボビンで考えると、基本となるボビン材にはガラス繊維を混ぜたABS樹脂を用い(線膨張係数2×10−5[1/℃])、中間部14の高膨張率材としては、ポリエチレン(線膨張係数15×10−5[1/℃])を用いて、中間部14の厚さを1.267cmとすると、胴幅の膨張量と補助鍔の膨張量が釣り合い、常に一定の鍔間の幅を保つことができる。なお、この具体例においては各材料の線膨張係数が異方性を持たないものとして例示している。
【0031】
このように、本発明に係るボビンは、光ファイバの被覆材によっては線膨張係数が異なるためにそのまま他の光ファイバには使用できないが、補助鍔の材質(主として線膨張係数)を変える及び寸法(厚さ)を調節することによって、巻き付ける光ファイバの線膨張係数に合わせ、鍔間の温度変化を調節することは可能(光ファイバの線膨張係数が正負何れの場合でも調整可能)であり、鍔間幅の温度変化量を補助鍔により自由に調節可能なボビンであるとも言える。すなわち、中間部14の材質(線膨張係数)若しくは厚さを変えることによって、温度変化時の鍔間の幅を自由に調節することが可能なため、線状体の膨張幅に合わせて調節することができ、線膨張係数の大きい被覆材を使用した光ファイバなどに対しても、本発明に係るボビンを、円筒体12(及びクッション13)及び鍔部11をそのままにして補助鍔を取り換えるなどして使用することができる。これは、鍔部11と中間部14とが取り外し及び取り付け可能なように構成しておけばよい。
【0032】
なお、図1及び図2に示した円筒体12は、内部に空心部のある円筒体であるが、円筒体12は、円周面の外形を有するものであれば内部に空心部のない円柱体状のものでもよく、このようなものも含めて円筒体と表現している。なお、ボビン1の鍔部11及び内部に空心部のない円筒体12には、中心軸を通すための軸穴10が設けられたり、或いは、中心軸が直接に固定されて使用される。また、上述した説明では、線状体として光ファイバを用いた例を説明したが、同様な特性を有するものであれば、他の線状体であっても同様の作用効果を奏する。また、鍔部11は、円筒体12と一体的に成型されたものでも、また、ねじ止めや嵌合によって一体化されたものでもよい。鍔部11の材質を円筒体12の材質と同じにする必要はない。
【0033】
本発明の他の実施形態として、円筒体12の胴径方向の線膨張係数の絶対値が、線状体の巻径方向の線膨張係数の絶対値にほぼ等しいか或いはそれ以上であるようにしてもよい。この実施形態によれば、周囲の温度変化があった場合でも、巻き付けられた光ファイバ等の線状体が鍔部との間にボビンの幅方向の巻き隙を生じることがなくなるだけでなく、胴径方向の隙間も生じることがなくなる。
【0034】
図3は、本発明の他の実施形態に係る線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図で、胴径方向隙間未発生のメカニズムを説明するための図である。図3(A)は高温時におけるボビンの軸を通る平面で切断したときの断面図、図3(B)は低温時におけるボビンの軸を通る平面で切断したときの断面図である。図中、2aは高温時のボビン、2bは低温時のボビンであり、その他、図1及び図6と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。ここで、クッション13は設けなくてもよい。
【0035】
図3で例示する実施形態のボビン2a,2bは、図1及び図2で説明したボビン1と図6で説明した胴体部(外側円筒体17及び内側円筒体16)をもつボビンとを組み合わせたものである。従って、胴体部は、線状体が巻き付けられる外側円筒体17と、外側円筒体17の内側に収容される内側円筒体16とを有し、鍔部11は外側円筒体17の両端に設けられている。そして、外側円筒体17は、胴径方向の線膨張係数が正の材料で形成され、内側円筒体16は、胴径方向の線膨張係数が負の材料で形成され、外側円筒体17と内側円筒体16とは、高温時に隙間を有し低温時に密着するよう構成されている。但し、外側円筒体17と内側円筒体16とは、図6で例示したボビンと異なり、線膨張係数が異方性を持ち胴径方向の線膨張係数よりも幅方向の線膨張係数が小さな材料で形成する必要はない。
【0036】
なお、線状体が負の線膨張係数を有する場合に、上述した構成を用いても、負の線膨張係数を有する内側円筒体16により、低温時に外側円筒体17の胴径方向の収縮のため、巻き付けられた線状体と外側円筒体17との間に隙間が生じることによる巻緩みを防止できるという効果がある。なお、線状体の線膨張係数の正負を逆にしたことに対応させて、外側円筒体17及び内側円筒体16の線膨張係数の正負を逆にすれば、低温時と高温時とで変化が逆になるだけで同様な作用効果を奏することができる。
【0037】
なお、図1乃至図3を参照して説明した各実施形態において、各構成材料の弾性率については言及しなかったが、線膨張係数についてだけでなく、厳密には弾性率なども考慮して構成材料が選択的に採用される。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、線状体巻き付け用ボビンにおいて、周囲の温度変化があった場合でも、巻き付けられた光ファイバ等の線状体が鍔部との間にボビンの幅方向の巻き隙を生じることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図である。
【図2】図1の線状体巻き付け用ボビンにおける巻き隙未発生のメカニズムを説明するための図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図である。
【図4】従来の線状体巻き付け用ボビンの一構成例を示す図である。
【図5】図4の線状体巻き付け用ボビンにおける巻き隙発生のメカニズムを説明するための図である。
【図6】従来の線状体巻き付け用ボビンの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…ボビン、1a,2a…高温時のボビン、1b,2b…低温時のボビン、10…軸穴、11…鍔部、12…胴体部(円筒体)、13…クッション、14…中間部、15…線状体接触部、16…内側円筒体、16a…凹部、17…外側円筒体、17a…凸部、l…線状体巻き取り幅。
Claims (5)
- 線状体を巻き付ける円筒状の胴体部と該胴体部の両端に設けられた鍔部とを有する線状体巻き付け用ボビンであって、前記鍔部の幅方向内側に、幅方向の線膨張係数が全体として前記胴体部より大きい材質の物体を有する補助鍔を取り付けたことを特徴とする線状体巻き付け用ボビン。
- 前記補助鍔は、前記鍔部に接する中間部と、前記線状体に接する線状体接触部と有することを特徴とする請求項1に記載の線状体巻き付け用ボビン。
- 前記中間部は、線膨張係数が前記胴体部より大きい材質で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の線状体巻き付け用ボビン。
- 前記線状体は光ファイバであり、前記胴体部及び前記鍔部はガラス繊維を混ぜたアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂で形成され、前記補助鍔はポリエチレンで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の線状体巻き付け用ボビン。
- 前記線状体は光ファイバであり、前記胴体部及び前記鍔部及び前記線状体接触部はガラス繊維を混ぜたアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂で形成され、前記中間部はポリエチレンで形成されていることを特徴とする請求項3に記載の線状体巻き付け用ボビン。
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