JP5981746B2 - 容器詰め加熱処理飲食品の風味維持方法 - Google Patents

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Description

本発明は、容器詰め加熱処理飲食品の風味維持方法、容器詰め加熱処理飲食品の風味維持剤、加熱処理による匂い成分の分解抑制剤、及び飲食物本来の風味が維持された容器詰め加熱処理飲食品の製造方法等に関する。
缶詰、缶飲料やレトルトパウチ食品等といった容器詰め飲食品は、密封後加熱処理を行い、保存性の高い飲食品として、市場に流通している。この容器詰め飲食品は、古くは、風味よりも、非常食的な意味合いから保存性が重要視されていた。しかし、近年では人気有名店の料理や飲料等の調理品を容器詰め加熱処理飲食品として工場生産し、各消費者に販売し、身近に食してもらう等というように、容器詰め加熱処理飲食品といえども風味に関しての要望は非常に高くなってきている。
ところが、容器詰め加熱処理飲食品は、容器詰め後の加熱処理を行うため、加熱前の飲食品とは異なる風味になるということが問題となり、この問題点を解決するための検討がなされている。
例えば、特許文献1には、トレハロースのマスキング機能による、容器詰め飲食品の不快味や不快臭の低減方法が開示されている。
また、特許文献2には、乳入りコーヒー飲料にL−ヒスチジン塩酸塩を添加し殺菌時や加熱時に発生するレトルト臭やイモ臭などを改善する技術が開示されている。
また、特許文献3には、香味成分の劣化防止方法として、フェルラ酸と茶抽出物を含有する香味成分の劣化防止剤が開示されている。
国際公開第2004/060077号パンフレット 特開2005−137266号公報 特開2003−38144号公報
ところで、ココア飲料やコーヒー、紅茶などの飲料、カレーなどのスパイスの風味を楽しむ食品、ミネストローネや野菜スープなどの野菜類を多く含むスープなどは、作り立ては好ましい風味を有している。しかし、容器詰め飲食品製造工程での容器詰め後の加熱処理の際に、飲食物がもつ本来の風味(例えば、香ばしさやフレッシュ感など)が損なわれたりするという問題がある。
一般的に、容器詰め後の加熱処理された飲食物に対するマスキング作用を有する物質が検討されている。しかし、この技術では、発生した不快臭や不快味をマスキングしているに過ぎず、加熱処理によって飲食物本来の風味が損なわれることは考慮していない。しかも、特定の不快臭や不快味成分だけをマスキングするのは難しいので、不快臭等のみならず飲食物本来の風味成分をもマスキングすると考えられる。
また、容器詰め後の加熱処理の際に損なわれる風味を香料等にて補う手法や損なわれる風味を想定して原材料の配合を調整する手法もあるが、斯様な手法をできるだけ行わない方が、飲食物本来の風味を消費者に提供できるので望ましい。
特許文献1や2で示すようなマスキングを用いる手法では、飲食物本来の風味が低減することを抑制する技術について充分に研究されているとは言えない。
また、特許文献3のフェルラ酸、茶抽出物ともに渋味やエグ味を有し、また、特許文献2のL−ヒスチジン塩酸塩は苦味と酸味を有する。このため、飲食物の食味に影響を与え、飲食物本来の風味が損なわれてしまい、飲食物によっては応用することが困難な場合があるので、用途が限定されやすい。
そこで、本発明者は、加熱殺菌等の加熱処理により飲食物本来の風味が消失又は低減するのを抑え、飲食物本来の風味を維持する方法や加熱処理による風味成分分解抑制方法等を検討した。
すなわち、本発明は、容器詰め加熱処理飲食品の風味維持方法等を提供するものである。
従来、容器詰め加熱処理飲食品の製造に際し、飲食物を容器詰めした後に加熱処理すると、飲食物本来の風味が消失又は低減してしまい、飲食物本来のおいしさが損なわれていた。
本発明者は、これは、容器詰め後の加熱処理により、飲食物中に含まれている好ましい風味成分が分解されたり、飲食物中に別の成分が生成されることなどによって、飲食物が本来持つ風味のバランスが崩れてしまうためと考えた。
さらに、本発明者は、従来のマスキング剤による不快味や不快臭を低減することや香料等を添加して風味のバランスを積極的に調整することではなく、新たな試みとして、容器詰め後に加熱しても飲食物が、できるだけ本来持つ風味のバランスを壊さないよう、その本来持つ風味を維持できるような素材の検討を行った。また、本発明者は、加熱処理の際に、飲食物の風味成分が分解されることによる飲食物本来の風味の消失や変質を抑制できるような素材について、種々鋭意検討を行った。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、容器に入れて加熱処理する飲食物に、パノースを含む糖組成物を使用することで、飲食物本来の風味を損ねにくく、飲食物本来の風味のバランスを維持できた容器詰め加熱処理飲食品が得られることを新たに見出した。
さらに、検討を重ねた結果、本発明のパノースを含む糖組成物を使用することにより、加熱処理下での香気成分(匂い成分)の分解を抑制できることを新たに見出し、飲食物本来の風味を維持できることを見出した。
ここで、後記〔実施例〕に示すように、マルトースを主成分とするマルトース水飴(比較例4)では上述の風味維持効果があまり良好ではなく、マルトースでは風味維持効果が得られないことが認められた。
一方、パノース(実施例2)では風味維持効果が良好であることが認められた。
また、パノース・マルトース水飴(実施例1)及びパノース・マルトース混合物(実施例3)では、マルトースを含み、かつ実施例2で使用したパノース量が半分以下になったにもかかわらず、パノース(実施例2)と比較してほぼ同等の効果が認められた。このことから、パノースとマルトースとを併用した糖組成物を使用することで、相乗的な効果が発揮されていると本発明者は考えた。すなわち、本発明者は、パノースとマルトースとを含有する糖組成物を使用することにより、容器詰め後の加熱処理を行っても飲食物本来の風味のバランスを維持できることも新たに見出した。パノース・マルトース含有の糖組成物は、澱粉分解物等の糖質原料から転移酵素等にて粗糖組成物として得ることも可能であるので、大量生産も可能であり、産業上利用性の点で有利である。
また、前記糖組成物を0.1〜7質量%という特定の含有量に調整することで、飲食物本来の食味の風味がより好適に維持されやすいことも新たに見出した。
なお、本発明に係わる「飲食物本来の風味」は、容器に詰めて加熱処理する前の飲食物が本来持つ好ましい風味をいう。また、本発明に係わる「飲食物本来の風味を維持する」とは、容器詰めを行い、加熱処理前の飲食物と比較したときに、多少風味が消失又は低減してもほぼ同等程度の風味か又はより近い風味が得られることをいう。
前記風味として、食感、食味、香気などが挙げられ、一般的に香りは飲食品の嗜好性を決するうえでも重要であるとされている。そして、本発明では、特に、飲食物が本来持つ香気(匂い)成分の分解を抑制できるという優れた利点がある。
前記「香気成分」とは、容器詰め加熱処理前の飲食物がもつものであり、加熱処理にて消失又は低減するものである。該香気成分としては、例えば、ピラジン類、アルデヒド類、テルペン類、含硫化合物、ラクトン類などが挙げられる。
前記ピラジン類として、例えば、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、エチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン及び3,5−ジメチル−2−メチルピラジンなどが挙げられる。これらは単独で又は複数組み合わさって飲食物中に通常含まれているものであり、特にコーヒー、ココア、茶などに特有の香ばしい匂いとして含まれるものである。
前記アルデヒド類として、例えば、シス−3−ヘキセナール、ヘキセナール及びトランス‐2‐ヘキセナールが挙げられ、前記テルペン類として、例えば、シトラール及びα−テルピネンが挙げられ、前記含硫化合物として、例えば、イソチアネートが挙げられる。これらは、単独で又は複数組み合わさって飲食物中に通常含まれているものであり、特に野菜や果物類に特有のフレッシュな匂として含まれるものである。
また、前記ラクトン類として、例えば、γ−ドデカラクトンが挙げられる。これは、乳製品に特有のフレッシュな匂いとして含まれるものである。
本発明の糖組成物は、上述の特有の匂いを利用したもの(例えば、飲食品、特定保健用食品、医薬品等)への利用も可能である。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔6〕に係るものである。
〔1〕 容器に入れて加熱処理する飲食物に、(a)パノースを含有する糖組成物、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物、を含有させることを特徴とする容器詰め加熱処理飲食品の風味維持方法。
〔2〕 加熱処理する飲食物に、(a)パノースを含有する糖組成物、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物、を含有させることを特徴とする加熱処理による飲食物本来の風味成分の分解抑制方法。
〔3〕 容器に入れて加熱処理する飲食物に、(a)パノースを含有する糖組成物、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物、を含有させることを特徴とする、飲食物本来の風味が維持された容器詰め加熱処理飲食品の製造方法。
〔4〕 (a)パノースを含有する糖組成物、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物を含む容器詰め加熱処理飲食品の風味維持剤。
〔5〕 (a)パノースを含有する糖組成物、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物を含む加熱処理による匂い成分の分解抑制剤。
〔6〕 前記糖組成物が、固形分あたりパノースを20質量%以上含有するものであることが好適である。また、前記糖組成物が、固形分あたりパノースを20質量%以上且つマルトースを20質量%以上含有するものであることが好適である。これにより風味維持が良好となる。
前記糖組成物を0.1〜7質量%含有させることで好適である。これにより、前記糖組成物を配合することによる甘さや粘性が問題とならずに、風味維持ができる。
前記風味維持が、飲食物本来の風味の維持であることが好適である。
前記風味維持が、匂い成分の分解抑制であることが好適である。さらに、前記匂い成分が、ピラジン類、アルデヒド類、テルペン類、含硫化合物、ラクトン類から選ばれる1種又は2種以上のものであることが好適である。前記糖組成物は、加熱処理による匂い成分の分解を抑制することが可能であり、これにより容器詰め加熱処理飲食品の風味維持が可能である。
前記糖組成物を、加熱処理前の飲食物に0.1〜7質量%含有させるように使用することが好適である。
本発明によれば、容器詰め加熱処理飲食品において、飲食物本来の風味を維持することが可能となる。
本開示の糖組成物は、少なくとも、(a)パノースを含有するもの、又は(b)パノースと、マルトースを含有するものである。
なお、前記糖組成物には、本技術の効果を損なわない範囲内であれば、これ以外の糖質(例えば直鎖オリゴ糖等)を含ませてもよい。
ここで、本開示に係わる「パノース」は、3個のグルコースから構成される分岐オリゴ糖の一つで、α−1,6とα−1,4グルコシド結合を有する三糖類であり、分岐鎖の糖である。
前記糖組成物中のパノースの含有量は、固形分あたり、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。
また、本開示に係わる「マルトース」は、α−1,4グルコシド結合を有する二糖類であり、直鎖の糖である。
後記〔実施例〕に示すように、マルトース単独では容器詰め飲食品において飲食物本来の風味を維持することが困難である。ところが、全く意外にも、後記〔実施例〕に示すように、マルトース及びパノースの併用であれば、飲食物本来の風味を維持することも可能となる。しかも、パノースの使用量が少なくとも飲食物本来の風味を維持することも可能となる。
パノース及びマルトースを併用する場合、前記糖組成物中のマルトースの含有量は、固形分あたり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20〜40質量%、より更に好ましくは20〜30質量%である。
併用する際の前記糖組成物中のパノースの含有量は、少なくとも25質量%以上であるのが好ましい。なお、前記糖組成物中のマルトース及びパノースの合計量は、100質量%を超えない。
また、パノース及びマルトースを併用する際のパノースとマルトースの質量比は、固形分あたり、好ましくはパノース 1:マルトース 3〜0.5であり、より好ましくはパノース 1:マルトース 2〜0.5であり、さらに好ましくはパノース 1:マルトース 1.5〜0.5である。
また、前記糖組成物には、パノース以外の3糖以上の分岐オリゴ糖を含ませることも可能である。前記分岐オリゴ糖のうち、4糖の分岐オリゴ糖及び/又は5糖以上の分岐オリゴ糖が含まれていてもよい。
後記〔実施例〕に示すように、パノースの他、4糖の分岐オリゴ糖及び/又は5糖以上の分岐オリゴ糖が含まれることで、パノースの使用量を低減化しても飲食物本来の風味を維持することも可能となる。
ここで、「3糖以上の分岐オリゴ糖」は、3個以上のグルコースを構成糖とする分岐オリゴ糖であって、糖鎖中に少なくともα−1,6グルコシド結合を1つ以上有するものである。なお、該オリゴ糖の糖鎖中に、α−1,1グルコシド結合、α−1,2グルコシド結合、α−1,3グルコシド結合、α−1,4グルコシド結合を有していてもよい。
前記パノース以外の3糖以上の分岐オリゴ糖として、例えば、イソマルトトリオース、イソマルトシルマルトース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース等が挙げられる。
なお、前記3糖以上の分岐オリゴ糖として、例えば、α−1,6グルコシド結合のみで構成される3糖以上のオリゴ糖(例えば、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース等);α−1,4グルコシド結合とα−1、6グルコシド結合とを有する3糖以上のオリゴ糖(例えば、パノース、イソパノース、イソマルトシルマルトース等)などが挙げられる。
前記糖組成物中の4糖の分岐オリゴ糖の含有量は、固形分あたり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。
このとき、パノースと4糖の分岐オリゴ糖の質量比は、固形分あたり、好ましくは1:0.1〜1であり、より好ましくは1:0.3〜0.9である。
前記糖組成物中の5糖以上の分岐オリゴ糖の含有量は、固形分あたり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。
このとき、パノースと5糖以上の分岐オリゴ糖の質量比は、固形分あたり、好ましくは1:0.05〜0.9であり、より好ましくは1:0.1〜0.5である。
さらに、前記糖組成物中の4糖の分岐オリゴ糖及び/又は5糖以上の分岐オリゴ糖の含有量は、固形分当たり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15〜35質量%である。
また、前記糖組成物の飲食物への配合量は、飲食物中、好ましくは、0.1〜7質量%、より好ましくは0.5〜5質量%であり、さらに好ましくは1〜3質量%である。
前記各糖類及びその含有量は、例えば、重合度分布を求める排除型イオン交換系カラム、及び、各重合度中における直鎖オリゴ糖と分岐オリゴ糖の比率を求めるアミン結合シリカカラムを用いて、高速液体クロマトグラフィーを行うことにより、測定できる(「澱粉糖関連工業分析法」、p131−137、1991年、食品新聞社出版参照)。
前記糖組成物は、市販品を組み合わせて調整したものでもよいし、原料澱粉を液化後、糖化及び糖転移反応を行って得てもよい。
前記糖組成物の製造方法について、一例として、以下に説明するが、これに限定されるものではない。
前述の(a)パノースを含有する糖組成物、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物は、原料澱粉を液化酵素(例えばα−アミラーゼなど)又は酸により加水分解(液化)後、少なくともトランスグルコシダーゼ(具体的にはα−グルコシダーゼの一種で分岐構造を生成する酵素)を用いて加水分解(糖化)及び糖転移反応を行うことによって得ることができる。
さらに糖化及び糖転位反応の際に、トランスグルコシダーゼに加えて、他のα−グルコシダーゼ、β−アミラーゼ、枝切酵素(例えばプルラナーゼ、イソアミラーゼなど)などの1種以上を用いると、糖転移効率が向上するので、好適である。
より好適な例示として、原料澱粉の液化後、β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼを使用する方法が挙げられ、このときに枝切酵素も使用することも可能である。
原料澱粉は、主にトウモロコシ澱粉(具体的にはコーンスターチ)を原料とするのが好適であるが、小麦粉澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉などその他の原料澱粉を1種以上用いることもできる。
酸加水分解としては、塩酸、硫酸などの無機酸やシュウ酸や酢酸など有機酸を使用し、pH1〜5にて20〜160℃で適宜反応させればよい。
前記酵素反応条件(具体的には反応pH、反応温度など)は、使用する酵素や目的とする生成物に応じて適宜調整すればよい。
得られた糖化液や糖組成物などをさらに分離精製する際に、ろ過、活性炭による脱色、イオン交換樹脂による脱塩、濃縮を適宜行えばよい。さらに、クロマト分離により分画して目的とする分岐オリゴ糖の含有量を高めることもできる。
前記(a)パノースを含有する糖組成物を得る際の、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物を得る際の、液化や糖化の条件を、より詳しく説明する。
原料澱粉20〜40質量%の懸濁液をpH5〜6.5とした後、α−アミラーゼを添加して100〜110℃に5〜15分間加熱処理して得た澱粉液化液を冷却し、β−アミラーゼとトランスグルコシダーゼを添加し、55〜65℃で反応させることにより本開示の分岐オリゴ糖を含有する糖組成物を調製する。さらに、クロマト分離により単糖を除去して本開示の分岐オリゴ糖高含有シラップを調製することも可能である。
斯様に得られる前記糖組成物は、パノースを好ましくは5〜35質量%、より好ましくは25〜35質量%含むものが好適である。なお、得られる糖組成物中のパノース含有量をクロマト分離等にて高めてもよい。
また、斯様に得られる前記糖組成物は、必要に応じて、マルトースを好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%含むものとしてもよい。このとき、糖組成物中、パノースを含む3糖の分岐オリゴ糖を好ましくは25〜45質量%、より好ましくは35〜45質量%とするのが好適である。また、この糖組成物には、4糖の分岐オリゴ糖及び/又は5糖以上の分岐オリゴ糖を10〜30質量%程度含んでいてもよい。
また、パノース含有糖組成物とマルトース含有糖組成物とを別々に製造した際にはこれらを前記糖組成物になるように適宜混合・調整すればよい。
前記糖組成物から、さらに目的とするオリゴ糖を単離することも可能であり、また複数分離することや、不要なオリゴ糖や単糖を除去することも可能である。
さらに、上述の如く、(a)パノースを含有する糖組成物を、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物を、飲食物本来の風味を維持すること、また飲食物本来のもつ香気(匂い)成分が加熱処理の際に加熱分解されるのを抑制することに使用することができる。このことから、前記糖組成物を有効成分として含有させる飲食物本来の風味維持剤、及び容器詰め加熱処理飲食品の風味維持剤、容器詰め加熱処理飲食物の風味成分の加熱分解抑制剤、加熱処理による飲食物本来の風味成分の分解抑制剤等(以下、「風味維持剤等」とする)に使用でき、さらに前記糖組成物を、前記風味維持剤等を製造するために使用することができる。
すなわち、前記糖組成物を有効成分とする飲食物本来の風味維持剤等として使用することが可能であり、前記糖組成物又は前記風味維持剤等を飲食物に配合して使用することが可能である。さらに、この飲食物本来の風味維持剤等を、容器に入れて加熱処理する飲食物に、前記糖組成物を前述の如く特定量含有させるように使用することも可能である。
前記風味維持剤等は、前記(a)パノースを含有する糖組成物又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物の他、必要に応じて、無機塩、酸、アミノ酸類、核酸、糖類、天然調味料、香辛料、賦形剤、pH調整剤、安定化剤、増粘剤、乳化剤などの飲食品に使用可能な添加物を含有させて製造することが可能である。なお、前記製剤の状態は、液状・粉末状・顆粒上・固形状などの何れでもよい。
本開示の飲食物本来の風味を維持する方法、加熱処理による飲食物本来の風味成分の分解抑制方法及び飲食物本来の風味が維持された容器詰め加熱処理飲食品の製造方法等について以下に説明する。
まず、容器に入れて加熱処理する飲食物に、上述の(a)パノースを含む糖組成物、又は(b)パノース及びマルトースを含む糖組成物を、含有させる。
前記飲食物を入れる「容器」は、耐熱性容器であれば特に限定されず、飲食物の保存性を向上させるために、加熱処理後、密閉した状態となることが可能な密閉容器が好ましい。この密閉可能な耐熱性容器としては、例えば、缶、びん、ペットボトル、紙・プラスチック容器及びレトルトパウチ等が挙げられる。
前記「容器に入れて加熱処理する飲食物」の飲食物は、特に限定されない。該飲食物としては、例えば、ココア飲料、コーヒー、紅茶等の飲料(乳製品含有飲料も含む);カレー、シチュー、パスタソース、トマトソース、デミグラスソース、ホワイトソース等のソースベース類;ミネストローネ、コーンポタージュスープ、中華風スープ等のスープ類等が挙げられる。
ここで、乳製品としては、植物性及び動物性の乳製品が挙げられる。動物性乳製品としては、例えば、牛乳及びその粉乳、脱脂乳及びその粉乳等が挙げられる。
前記糖組成物を使用する際の前記糖組成物の状態は、固形状、顆粒上、粉末状や液状の何れでも良い。
また、前記糖組成物を含有させる際の手段としては、特に限定されず、飲食物に添加したり、添加後混合攪拌してもよいし、飲食物に接触(例えば付着、まぶし、浸漬、噴霧など)させてもよい。好適には、飲食物中に均一に混合することで、飲食物本来の風味を維持しやすいので、混合攪拌が好ましい。なお、前記糖組成物になるように、パノース含有糖組成物とマルトース含有糖組成物とを同時に又は別々に添加して調整してもよい。
このとき前記糖組成物の添加量は、上述のとおり、飲食物中、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%、より更に好ましくは1〜3質量%である。
さらに、前記糖組成物中のパノースは、飲食物中、0.02〜2質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%、さらに好ましくは0.2〜1質量%となるように添加されるのが好適である。パノース及びマルトース含有の糖組成物中のマルトースは、パノースを1としたときに、固形分あたり、好ましくは3〜0.5、より好ましくは2〜0.5、さらに好ましくは1.5〜0.5とするのが好適である。
このような数値範囲にすることによって、前記糖組成物を配合することによる甘さや粘性が問題とならずに、風味維持ができるので、好適である。
さらに、前記飲食物に、前記糖組成物を使用するタイミングは、特に限定されず、加熱処理時に、容器内に飲食物及び前記糖組成物が入っていればよい。
そして、前記糖組成物の飲食物が入った容器を、密閉や密封後、加熱処理することで容器詰め飲食品を得ることができる。
ここで、加熱処理とは、缶飲料やレトルト食品等を得る際に行う加熱可能な条件であれば特に限定されない。具体的には、80〜140℃、好適には100〜140℃、さらに好適には、110〜130℃程度で、5〜60分間(好適には10〜50分間)で行うのが、風味を維持しつつ、保存性を高める点で望ましい。また、高温短時間加熱処理も風味維持のためには有用であり液体食品の殺菌には用いられるが、その際の加熱条件は120〜140℃で1秒から30秒であり、本技術の加熱処理条件に含まれる。
さらに、加熱処理の際に加圧すると、飲食物本来の風味がより一層損なわれやすくなるが、前記糖組成物を使用すれば、飲食物本来の風味を維持することが可能である。
加圧下の加熱処理として、具体的には、1〜3気圧(通常2気圧)で100〜140℃(好適には、110〜130℃)程度で5〜60分間(好適には10〜50分間)行うのが、風味を維持しつつ、保存性を高める点で望ましい。
上述の方法にて得られる加熱処理飲食品は、缶入り飲食品、瓶詰め飲食品、レトルト飲食品、ペットボトル飲料、紙パック飲料等が挙げられる。これにより、容器詰め飲食品を開封し喫食する際に、加熱前の飲食物本来の風味を維持することが可能となる。特に香気成分の熱分解を抑制することが可能となる。
この香気成分としては、上述の如く、コーヒー、茶、ココア飲料等に含まれる、ピラジン類;野菜や果物類等に含まれる、アルデヒド類、テルペン類、含硫化合物;乳製品等に含まれるラクトン類等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明(本開示)を詳細に説明するが、本発明(開示)はこれらの実施例に限定されるものではない。
試験例1:ミルクココア飲料
以下の配合(質量部)で、ミルクココアを調整し、飲料用缶に注入後密閉し、120℃40分間加熱処理した後、25℃まで冷却した。なお、加熱処理前の試験糖質無添加のミルクココアを参考例1、試験糖質を添加せずに加熱処理したミルクココアを比較例1とした。
ミルクココア飲料
ココア粉末 2 質量部
牛乳 50 質量部
砂糖 5 質量部
食塩 0.1質量部
試験糖質(固形分) 1 質量部
水 up to 100 質量部
試験糖質は以下のとおりである。
パノース・マルトース水飴(実施例1)
パノース(実施例2):和光純薬工業製 パノース 固形分95%以上
パノース・マルトース混合物(実施例3): パノース(和光純薬工業製、固形分95%以上)とマルトース(和光純薬工業製 固形分95%以上)を1:1で混合
砂糖(比較例2):日新製糖株式会社製 上白糖 固形分95%以上
異性化糖(比較例3):昭和産業株式会社製 ニューフラクト55 固形分75%
マルトース水飴(比較例4):昭和産業株式会社製MR750 固形分75%(マルトース74質量%及びマルトトリオース16質量%を含む)
マルトシルトレハロース水飴(比較例5):株式会社林原商事製 ハローデックス 固形分75%(マルトシルトレハロースを52質量%含む)
トレハロース(比較例6):林原商事製 トレハ
なお、比較例4及び5の水飴については、パノース及び分岐オリゴ糖は検出されなかった。
実施例1の糖組成物の製造方法
パノース・マルトース水飴は、コーンスターチ30質量%の懸濁液をpH6とした後、αアミラーゼを添加して105℃で10分間加熱処理して得たデンプン液化液を60℃程度に冷却し、βアミラーゼとトランスグルコシダーゼを添加し、60℃で反応させ、さらに、クロマト分離により単糖を除去して調製した。
この水飴は、マルトース22質量%、パノース27質量%、4糖分岐オリゴ糖16質量%、5糖分岐オリゴ糖9質量%を含有していた。固形分は75%であった。
フレッシュ感、香ばしさ、酸臭、苦味、カカオの匂いの強さ、嗜好性について、以下の評価基準に従い官能評価を実施した(n=12)。官能評価の結果を表1に示す。
<フレッシュ感、香ばしさ、酸臭、苦味、カカオの匂いの強さ>
1:殆ど感じない
2:僅かに感じる
3:感じる
4:やや強く感じる
5:強く感じる
<嗜好性>
1:良くない
2:あまり良くない
3:やや良い
4:良い
5:非常によい
パノースまたは、パノース及びマルトースが含まれている実施例1〜3の糖組成物は、比較例2〜6に示すような、パノースを含んでいない各糖質と比較して、加熱処理後もフレッシュ感や香ばしさ、カカオの匂が強く残っており、酸臭や苦味の生成は抑制されていた。すなわち、パノース、パノースとマルトースを含む糖組成物は、加熱処理後であっても、ミルクココア飲料本来の風味を維持することができた。
また、パノース及びマルトースを含む糖組成物(実施例1および実施例3)では、パノースが実施例2の1/4の量または1/2の量に減少しても、実施例2と同等以上の効果を発揮することが認められた。しかも、比較例4に示すようにマルトースを主として含む水飴では、ミルクココア飲料本来の風味が損なわれていたことも考慮すると、パノースと、マルトース及との併用によって相乗効果を発揮していた。
Figure 0005981746

試験例2:ミルクココア飲料
さらに、試験糖質として、前記実施例1で使用した糖組成物(パノース・マルトース水飴)を用いて、最適配合量を検討した。このとき、表2に示すような濃度になるように前記糖組成物をミルクココア飲料に配合して、添加混合した後、飲料用缶に注入後密閉し、加熱処理(120℃、40分間)を行った。官能評価は上記試験例1と同様にして行った(官能評価の結果を表3に示す)。
パノース・マルトース水飴を固形分として加熱処理前のミルクココアに0.5質量%以上添加することで加熱処理後もココア風味が強く残ることが分かった。また、7質量%添加すると、ココア風味は強く残るが、甘さの増加や粘度が上昇してしまいあまり好ましくなかった。よって、パノース・マルトース水飴を0.5〜5.0質量%添加することで、加熱処理した後もココア風味が強く甘さや粘度も好ましいミルクココア飲料となった。すなわち、当該範囲内であれば、ミルクココア飲料本来の風味(食味、匂い)を良好に維持できる非常に良好な缶入りミルクココア飲料を得ることができた。
Figure 0005981746

Figure 0005981746

試験例3:ミルクココア飲料
試験糖質無添加のミルクココアを飲料用缶に注入後密閉し、120℃40分間加熱後、25℃まで冷却した後、前記実施例1で使用した糖組成物(パノース・マルトース水飴)を固形分として1質量%添加したものを比較例7とした。官能評価は上記試験例1と同様にして行った(官能評価の結果を表4に示す)。
比較例7のように加熱処理後に前記実施例1で使用した糖組成物(パノース・マルトース水飴)を添加しても、酸味や苦味を若干マスキングするが、フレッシュ感、香ばしさ、カカオの匂の強さの何れの評価でも、比較例1の試験糖質無添加とほとんど差が認められなかった。これに対し、実施例1のように加熱処理前に予めパノース・マルトース水飴を添加することで、加熱処理によるココア風味の低下を抑制できた。
Figure 0005981746

参考例1の未処理のミルクココアと、加熱処理後にパノース・マルトース水飴を固形分として1質量%添加したミルクココア(比較例7)、加熱処理前にパノース・マルトース水飴を固形分として1質量%添加したミルクココア(実施例1)について、「2,5−ジメチルピラジン」、「2−エチル−3,5−ジメチルピラジン」、「酢酸」の含有量を、ガスクロマトグラフィーにて分析した。
ピラジン類および酢酸の分析方法
20ml容バイアル瓶にミルクココアを5mlとり、予熱したヒートブロック装置で80℃で20分間加温した。加温後、ヘッドスペースガス1mlをガスクロマトグラフ/マススペクトメトリー分析に供した。
分析条件は次の通りである。
カラム:TC−FFAP;膜厚 0.25μm、60m×0.25mm I.d.(GLサイエンス社)
キャリアーガス及びカラム流量:He 0.98ml/min
実施例1のように加熱処理前に予めパノース・マルトース水飴を添加することで、加熱処理による香気成分(特にピラジン類)の低減を抑制できることが明らかにできた。また、酸臭の原因となる酢酸の生成も抑制することができた(表5)。
Figure 0005981746

試験例4:コーヒー飲料
コーヒー本来の風味維持について以下の配合で前記実施例1の糖組成物(パノース・マルトース水飴)の効果を評価した。
コーヒー豆を粉砕して、コーヒー飲料100mLに対して5.5gを使用するように90℃のお湯で15分間抽出しコーヒー抽出液を得た。得られたコーヒー抽出液に砂糖5質量%、牛乳8質量%、脱脂粉乳0.4質量%、重曹0.1質量%、シュガーエステル(三菱化学フーズ株式会社製:P−1670)0.03質量%となるように添加しコーヒー飲料を得た。得られたコーヒー飲料に実施例1のパノース・マルトース水飴を、固形分としてコーヒー飲料中、0.1、0.5、1.0、3.0、5.0、7.0質量%になるように添加混合した後、120℃かつ2気圧の条件下、20分間加熱処理を行った。加熱処理後、25℃で前記試験例1と同様に官能評価を実施した。なお、コーヒーの匂いの強さとこげ臭の官能評価指標についても、強く感じる場合を5、殆ど感じない場合を1として5段階評価により評価した。また、加熱処理前の試験糖質無添加のコーヒー飲料を参考例2とした(官能評価の結果を表6に示す)。
パノース・マルトース水飴を0.5質量%以上添加するとコーヒーの風味が加熱処理後も残存し、且つ入れたてのコーヒーの香りが残っていた。また7質量%添加すると、コーヒーフレーバーのマスキングによりコーヒーの匂いが低減し、こげ臭が感じられるようになり、好ましさも低減した。
Figure 0005981746

試験例5:トマト
湯剥きしたトマト50質量部に対し、以下の試験糖質(固形分)1質量部、水49質量部を混合し、このトマトをレトルトパウチに封入し密封後、120℃かつ2気圧の条件下、30分間加熱処理を行った。また、試験糖質無添加区も同様に調製した。
試験糖質は、砂糖、実施例1のパノース・マルトース水飴、マルトトリオース高含有水あめ、トレハロースを用いた。
糖質無添加の試験区は加熱処理によってトマトのフレッシュ感が低減し、異臭がしたのに対し、砂糖、マルトトリオース高含有水あめ、トレハロースは多少異臭が改善された。パノース・マルトース水飴は異臭低減効果が最も高く、加熱処理前のトマトのフレッシュ感が残っていた。すなわち、トマト本来の風味を維持することができた。
試験例6:トマトソース
オリーブ油5質量部で炒めた玉葱100質量部とニンニク5質量部に缶詰のトマト400質量部と塩4質量部、胡椒0.25質量部を混合して実施例1のパノース・マルトース水飴が固形分として3質量%となるように調製したトマトソースと試験糖質無添加のトマトソースを作製した。それぞれのトマトソースを缶に封入し密封後、120℃かつ2気圧の条件下、30分の加熱処理を行った。試験糖質無添加の試験区に比べ、パノース・マルトース水飴を添加した試験区は、風味が良好で、雑味が少なく、トマトのフレッシュ感が有りすっきりとした甘さの好ましい味質となった。
試験例7:ホワイトソース
市販のクリームシチューのルー100質量部を熱湯562.5質量部に溶き、牛乳125質量部を加えクリームシチュー溶液を作製した。試験糖質無添加の試験区と、実施例1のパノース・マルトース水飴が固型分として1質量%となるように調製した試験区を、それぞれレトルトパウチに封入し密閉後、120℃かつ2気圧の条件下、30分間加熱処理した。
試験糖質無添加区は乳の風味がほとんどなく、劣化臭が感じられたのに対し、パノース・マルトース水飴添加区は乳の風味が残り、加熱処理による劣化臭が低減し好ましい味質に保たれていた。
なお、試験糖質は、クリームシチュー溶液と一緒に添加してもよいし、加熱前にパノース・マルトース水飴を添加してもよい。また加熱着色を抑制する為に、水素添加したパノース・マルトース水飴でもよい。
試験例8:デミグラスソース
小麦粉90gとバター50gでルーを作り、50gのブイヨンで伸ばしてルーを作った。牛すじ500g、ニンニク15g、ニンジン50g、玉ねぎ200g、セロリ、50g、ホールトマト 150g、赤ワイン500cc、及びブイヨン1000gを添加して、3時間煮込みデミグラスソースを得た。
前記実施例1のパノース・マルトース水飴をブイヨンに固型分として1質量%添加したデミグラスソースと試験糖質無添加ブイヨンを使用したデミグラスソースをレトルトパウチに封入し密封後、120℃かつ2気圧の条件下、30分加熱処理して、デミグラスソース製造した。
実施例1のパノース・マルトース水飴を添加したブイヨンを使用したデミグラスソースは試験糖質無添加のブイヨンを使用したデミグラスソースと比べて、フレッシュなブイヨンの風味が残り好ましいものであった。
試験例9:レトルトカレー
市販のカレーのルー100質量部を熱湯750質量部に溶き、カレー溶液を調整した。実施例1のパノース・マルトース水飴が固型分として1質量%または3質量%になるように調製した各カレー溶液と、試験糖質無添加のカレー溶液を、それぞれレトルトパウチに封入し密封後、120℃かつ2気圧の条件下、30分加熱処理して、レトルトカレーを製造した。加熱処理後、香辛料の匂いを比較したところ、試験糖質無添加のカレー溶液は風味がほとんど残っていないのに対し、パノース・マルトース水飴を添加したカレー溶液は香辛料の風味を維持していた。添加量の多い3%の試験区の方が効果はより高かった。
試験例10:ミネストローネ
にんじん100質量部、トマト100質量部、キャベツ100質量部とオリーブ油2質量部、チキンスープの素3.5質量部、水496.5質量部を用いてミネストローネを作製した。実施例1のパノース・マルトース水飴の含量が固型分として3質量%になるように調製したミネストローネと、試験糖質無添加のミネストローネを、それぞれレトルトパウチに封入し密封後、120℃かつ2気圧の条件下、30分加熱処理した。実施例1のパノース・マルトース水飴を添加したミネストローネは、にんじん本来の香りを残し、トマトのフレッシュ感が残っていた。すなわち、飲食物本来の風味を維持することができた。
試験例11:コーンポタージュスープ
鍋に市販のコーンクリーム缶325質量部と牛乳300質量部を加え加熱し、顆粒コンソメ2.6質量部、塩1.0質量部、こしょう0.1質量部を加えた。実施例1のパノース・マルトース水飴が固型分として1質量%となるように調製したコーンポタージュスープと、試験糖質無添加のコーンポタージュスープを、それぞれレトルトパウチに封入し密封後、120℃かつ2気圧の条件下、30分加熱処理した。実施例1のパノース・マルトース水飴を添加したコーンポタージュスープは、牛乳のフレッシュ感が残っていた。すなわち、飲食物本来の風味を維持することができた。
試験例12:中華風コーンスープ(卵入り)
市販のコーンクリーム缶200質量部を入れた鍋で加熱し、中華スープの素6.0質量部、塩1.5質量部とこしょう0.1質量部を加えた。水30質量部に溶いた片栗粉10質量部を入れ、とろみをつけた後溶き卵60質量部を加え混ぜた。実施例1のパノース・マルトース水飴が固型分として1質量%となるように調製した中華風コーンスープと、試験糖質無添加の中華風コーンスープを、それぞれレトルトパウチに封入し密封後、120℃かつ2気圧の条件下、30分加熱処理した。実施例1のパノース・マルトース水飴を添加した中華風コーンクリームスープは、加熱処理後も中華スープの風味が残っていた。すなわち、飲食物本来の風味を維持することができた。
試験例13:缶紅茶(加糖、ミルク入り)
市販の加糖・ミルクティーに実施例1のパノース・マルトース水飴が固型分として3質量%となるように調製し、缶に密封後、120℃かつ2気圧の条件下30分加熱処理を行った。同様に加熱処理した試験糖質無添加のミルクティーに比べ、実施例1のパノース・マルトース水飴を添加した紅茶は、紅茶の風味が維持された。
試験例14:流動食
デキストリン15質量部、脱脂粉乳8質量部、カゼインナトリウム2質量部、植物油脂4質量部、ショ糖2質量部、炭酸マグネシウム(3MgCO3・Mg(OH2)3H2O)0.1質量部、塩化ナトリウム0.1質量部、クエン酸ナトリウム0.1質量部、水酸化カリウ0.1質量部を混合して、高圧ホモジナイザーにて均質化した溶液を対象区とし、また対象区に更に実施例1のパノース・マルトース水飴3質量部を添加したものをパノース・マルトース水飴添加区とした。
各区の流動食を耐熱フィルム容器に充填した後、121℃かつ2気圧の条件下、15分間加熱処理した。25℃に冷却した各試験区を官能評価したところ、パノース・マルトース水飴添加区は対象区に比べて加熱による劣化臭が抑えられていた。
本開示の技術は、以下のような構成を取ることも可能である。
〔1〕 容器に入れて加熱処理する飲食物に、(a)パノースを含有する糖組成物、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物を含有させることを特徴とする、容器詰め加熱飲食品の風味維持方法、飲食物本来の風味が維持された容器詰め加熱飲食品の製造方法又は飲食物本来の風味成分の分解抑制方法。
〔2〕 前記糖組成物が、固形分あたりパノースを20質量%以上含有するものであることを特徴とする前記〔1〕記載の容器詰め加熱飲食品の風味維持方法。また、前記糖組成物が、固形分あたりマルトースを20質量%以上含有するものであることを特徴とする前記〔1〕記載の方法。
〔3〕 前記糖組成物が、固形分あたりパノースを20質量%以上且つマルトースを20質量%以上含有するものであることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕記載の方法。
〔4〕 前記糖組成物を0.1〜7質量%含有させることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れか1項記載の方法。
〔5〕 前記風味維持が、飲食物本来の風味維持である前記〔1〕〜〔4〕の何れか1項記載の方法。
〔6〕 前記風味維持が、飲食物本来の風味成分の分解抑制である前記〔1〕〜〔5〕の何れか1項記載の方法。
〔7〕 前記風味成分が、匂い成分である前記〔6〕記載の方法。前記匂い成分が、ピラジン類、アルデヒド類、テルペン類、含硫化合物、ラクトン類から選ばれる1種又は2種以上のものであることが好適である。
また、前記〔1〕〜〔4〕の何れか1項記載の糖組成物を加熱処理前に配合するのが好適である。
〔8〕 (a)パノースを含有する糖組成物、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物を含む容器詰め加熱飲食品の風味維持剤。
〔9〕 (a)パノースを含有する糖組成物、又は(b)パノース及びマルトースを含有する糖組成物を含む加熱処理による匂い成分の分解抑制剤。
〔10〕 前記糖組成物が、固形分あたりパノースを20質量%以上、及び/又は固形分あたりマルトースを20質量%以上、含有するものである前記〔8〕又は〔9〕記載の剤。
また、前記糖組成物を、容器に入れて加熱処理する飲食物に、0.1〜7質量%含有させるような前記〔8〕又は〔9〕記載の剤。
また、前記風味の成分が、匂い成分であり、当該匂い成分が、ピラジン類、アルデヒド類、テルペン類、含硫化合物、ラクトン類から選ばれる1種又は2種以上のものである前記〔8〕又は〔9〕記載の剤。

Claims (9)

  1. 容器に入れて加熱処理する飲食物に、固形分あたりパノースを20質量%以上且つマルトースを20質量%以上含有する糖組成物を0.5〜5質量%含有させることを特徴とする容器詰め加熱飲食品における飲食物本来の匂い成分の維持方法。
  2. 前記匂い成分が、ピラジン類、アルデヒド類、テルペン類、含硫化合物、ラクトン類から選ばれる1種又は2種以上のものである請求項記載の容器詰め加熱飲食品における飲食物本来の匂い成分の維持方法。
  3. 前記飲食物本来の匂い成分の維持が、飲食物本来の匂い成分の分解抑制である請求項1又は2記載の容器詰め加熱飲食品における飲食物本来の匂い成分の維持方法。
  4. 固形分あたりパノースを20質量%以上且つマルトースを20質量%以上含有する糖組成物を0.5〜5質量%含む容器詰め加熱飲食品における飲食物本来の匂い成分維持剤。
  5. 前記匂い成分が、ピラジン類、アルデヒド類、テルペン類、含硫化合物、ラクトン類から選ばれる1種又は2種以上のものである請求項記載の容器詰め加熱飲食品における飲食物本来の匂い成分維持剤。
  6. 前記飲食物本来の匂い成分維持が、飲食物本来の匂い成分の分解抑制である請求項4又は5記載の容器詰め加熱飲食品における飲食物本来の匂い成分維持剤。
  7. 容器に入れて加熱処理する飲食物に、固形分あたりパノースを20質量%以上且つマルトースを20質量%以上含有する糖組成物を0.5〜5質量%含有させることを特徴とする、飲食物本来の匂い成分が維持された容器詰め加熱飲食品の製造方法。
  8. 前記匂い成分が、ピラジン類、アルデヒド類、テルペン類、含硫化合物、ラクトン類から選ばれる1種又は2種以上のものである請求項記載の飲食物本来の匂い成分が維持された容器詰め加熱飲食品の製造方法。
  9. 前記飲食物本来の匂い成分が維持された容器詰め加熱飲食品が、飲食物本来の匂い成分の分解が抑制された容器詰め加熱飲食品である請求項7又は8記載の飲食物本来の匂い成分が維持された加熱飲食品の製造方法。
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