JP5979883B2 - 熱電素子およびこれを備えた熱電モジュール - Google Patents
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Description
すなわち、上記公報に開示された熱電モジュールでは、p型・n型熱電素子と電極との接合面において、p型・n型熱電素子よりも電極の方が小さい部分は存在しているものの、各熱電素子と電極とを接合する半田の形状については言及されていない。
これにより、素子部における発熱面と吸熱面との間の温度差によって熱電モジュール全体に曲げ応力が生じた場合でも、上記フィレット部の形状により、熱電素子近傍に応力が集中してしまうことを回避することが、できる。この結果応力集中に起因する熱電素子の破損を防止することができる。
ここでは、互いに隣接する一対の素子部同士を繋ぐ電極の形状として、略I字型の形状を採用している。
これにより、素子部の第1・第2面と電極部とを接合する際に、電極部の側面にも半田がヌレ広がって、フィレット部を所望の形状にすることができる。
これにより、電極部の側面における半田のヌレ性を容易に向上させることができる。
これにより、より効果的に熱電素子近傍に応力が集中してしまうことを回避して、応力集中に起因する熱電素子の破損を防止することができる。
ここでは、複数の熱電素子を基板上に配置して構成される熱電モジュールにおいて、上述した構成の熱電素子を、少なくともモジュールの外側に配置している。
[熱電モジュール50]
本実施形態の熱電モジュール50は、いわゆるペルチェ効果を利用した温度制御用デバイス、またはゼーベック効果を利用した発電デバイスとして各種デバイスに搭載されるものであって、図1(a)に示すように、基板(上下基板31,32)間に複数の熱電素子10が規則的に配列させた状態で接合されて構成されている。
上基板31は、セラミックによって形成された板状の部材であって、図2(a)に示すように、規則的に配列された複数の上電極11が、メッキ法によって形成される。なお、上電極11については、Cu板を下処理したセラミックに半田付けすることで形成されていてもよい。
熱電素子10は、図3(a)および図3(b)に示すように、半導体素子(n型半導体素子21およびp型半導体素子22)、上電極11、下電極12、および接合部13を備えている。
本実施形態では、熱電素子10に含まれる半導体素子は、一対のn型半導体素子21およびp型半導体素子22によって構成されている。そして、一対のn型半導体素子21およびp型半導体素子22は、それらの上端面同士あるいは下端面同士が上電極11あるいは下電極12を介して互いに接合されている。
なお、熱電モジュール50を構成するn型半導体素子21とp型半導体素子22とは、図3(a)に示すように、互いに隣接する一方向において、上電極11によってπ型に連結され、同方向において次に隣接するp型半導体素子22とn型半導体素子21とは、下電極12によって逆向きのπ型に連結され、同方向においてさらに次に隣接するn型半導体素子21とp型半導体素子22とは、上電極11によってπ型に連結されるのを繰り返して構成されている。
上電極11および下電極12は、Cu製の電極として設けられており、図2(a)および図2(b)に示すように、上下基板31,32上に規則的に配列されている。そして、上下電極11,12は、一対の半導体素子(n型半導体素子21、p型半導体素子22)の上端面同士、下端面同士をそれぞれ電気的に接続するように、接合部13を介して、n型・p型半導体素子21,22の上端面および下端面に対してそれぞれ接合されている。
なお、図4では、説明の便宜上、下基板32上に接合された下電極12とn型半導体素子21の下端面との接合部分の拡大図を示しているが、上基板31上に接合された上電極11とn型半導体素子21の上端面との接合部分についても同様の構成を有しているものとする。また、p型半導体素子22の下端面と下電極12との接合部分、上端面と上電極11との接合部分についても、図4に示すn型半導体素子21の下端面と下電極12との接合部分と同様の構成を有しているものとする。
なお、ここでは説明の便宜上、下電極12の構成について説明するが、図5に示すように、上下電極11,12は同じ形状を有しているものとする。
電極部12a,12bは、平面視において略I字型の形状の両端に配置された太い部分を形成する。また、電極部12a,12bは、上述したn型・p型半導体素子21,22の上端面および下端面に対して接合部13を介して接合される。
次に、上述したn型・p型半導体素子21,22の上下端面と上下電極11,12とを接合する接合部13の構成について、図3(b)および図4を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態の熱電素子10およびこれを備えた熱電モジュール50では、以上のような構成により、熱電モジュール50に電圧が印加された際に吸熱側の面と発熱側の面との温度差によって熱電モジュール50全体に曲げ応力が生じた場合でも、上述した接合部13(フィレット部13a)の形状により、n型・p型半導体素子21,22付近に応力が集中してしまうことなく、下基板32へ応力を分散させることができる。
以下、実施例および比較例等において、本発明の効果について以下で検証する。
ここでは、上記実施形態に係る熱電モジュール50に対して耐久性テストを実施した結果について説明する。
熱電モジュール50への電力は、電源101から14pinバタフライパッケージ104の端子108aおよびリード線108bを経由して供給され、熱電モジュール50の上下面の温度差を発生させる。
T型熱電対102,103は、熱電モジュール50の上下の面の温度を測定するために、熱電モジュール50の上基板31の上面と、熱電モジュール50の下基板32の下面側に配置された熱板105内に設けられている。
本実施例では、Imax=3.1A、上基板サイズ15mm×15mm、下基板サイズ15mm×17mm、72対、半導体素子と電極の接合半田がSn95Sb5であるモジュールを使用し、Imaxの電流値を繰り返しON・OFFさせる試験を実施した。
・熱板 :Th=85℃
・吸熱面 :Tc=−5℃
・雰囲気 :大気中
・パッケージ材質 :Cu20W80
・パッケージとモジュールを接合する半田 :BiSn
・通常電極モジュール
吸熱側基板 :AlN
放熱側基板 :AlN
・小電極モジュール
吸熱側基板 :AlN
放熱側基板 :AlN
なお、図7に示すグラフでは、横軸に繰り返しの回数(サイクル数)、縦軸に熱電モジュール50のリード間の抵抗変化率(ΔR(%))を示している。
ここで、抵抗変化率(ΔR(%))は、次のように定義される。
ΔR(%)=(R2−R1)/R1×100 (%)
R1:試験前(0サイクル)の抵抗値
R2:試験後の抵抗値
図7のグラフから明らかなように、従来の熱電モジュール(通常電極)のテスト結果と比較して、本発明の熱電モジュール(小電極)のテスト結果の方が、グラフの傾きが小さいことが分かる。
次に、上記実施形態と同様の構成を備えた熱電モジュールに含まれる熱電素子(n型半導体素子21)を電極(下電極12)とともに基板(下基板32)に接合した状態で、上端面に治具107を接合し、電極と熱電素子との接合部分付近における素子部の応力分布を検証したシミュレーション結果について、図8(a)〜図9(b)を用いて説明する。
また、図9(b)のグラフから分るように、n型半導体素子21の縦方向に対応するC−C’方向においては、応力分布はなだらかに変化している。なお、本実施例では、n型半導体素子について記載しているがp型半導体素子についても基本的に同様である。
次に、本発明の変形例に係る熱電モジュールに含まれる熱電素子(n型半導体素子21)を電極(下電極12)とともに基板(下基板32)に接合した状態で、上端面に治具107を接合し、電極と熱電素子との接合部分付近における応力分布を検証したシミュレーション結果について、図10(a)〜図11(b)を用いて説明する。
また、図11(b)のグラフから分るように、n型半導体素子21の縦方向に対応するC−C’方向においては、応力分布はなだらかに変化している。
ただし、半導体素子の一部に生じた応力の大きさについては、実施例2の構成の方が、実施例3の構成よりも小さかった。
なお、半田は基板にヌレ広がらないことを考慮すれば、実施例2の構成以上の応力の低下という効果を得ることは難しいものと推測される。
次に、本発明の他の変形例に係る熱電モジュールに含まれる熱電素子(n型半導体素子21)を電極(下電極12)とともに基板(下基板32)に接合した状態で、上端面に治具107を接合し、電極と熱電素子との接合部分付近における応力分布を検証したシミュレーション結果について、図12(a)〜図13(b)を用いて説明する。
次に、本発明とは異なる熱電モジュールに含まれるn型半導体素子121を電極112とともに基板132に接合した状態で、上端面に治具107を接合し、電極112と熱電素子121との接合部分付近における応力分布を検証したシミュレーション結果について、図14(a)〜図15(b)を用いて説明する。
以上のことから、本比較例に係る熱電素子では、素子付近に応力集中部位が見られ、素子の破壊に至るおそれがあることが分かった。この結果、本比較例の構成によれば、熱電モジュールに曲げ応力が生じた場合には、熱電素子近傍に応力集中部位が生じてしまい、応力集中による素子の破壊を防止できないことが分かった。
次に、他の比較例に係る熱電モジュールに含まれるn型半導体素子221を大電極212とともに基板232に接合した状態で、上端面に治具107を接合し、大電極212とn型半導体素子221との接合部分付近における応力分布を検証したシミュレーション結果について、図16(a)〜図17(b)を用いて説明する。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態では、本発明に係る熱電素子(n型半導体素子21,p型半導体素子22)を用いて熱電モジュール50を構成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
上記実施形態では、上下電極11,12として、平面視において略I字型の形状を有する電極を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
ただし、略長方形状の電極を用いた場合には、隣接するp型半導体素子とn型半導体素子とをつなぐように半田を用いて接合した際に、できる限りエッジが形成される可能性を抑制することを考慮すれば、上記実施形態のように、略I字形状の電極を用いる等、電極の形状を工夫することが望ましい。
上記実施形態では、半田のヌレ性を向上させるための電極表面処理として、上下電極11,12の表面に、Niメッキ層14、Auメッキ層15を形成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
上記実施形態では、上下電極11,12表面の半田のヌレ性を向上させるために、製造時の都合上、n型・p型半導体素子21,22の上下端面に対向する上下電極11,12の表面とその側面とに、金属表面処理を施した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の熱電モジュールを支持する基板としては、例えば、表面絶縁処理した銅製水冷板等の剛性のある材料を用いてもよい。
本発明の構造であれば、半田がp型・n型半導体素子側面に接触することを抑制できる。このため、温度の高い環境に熱電モジュールを放置した状態でも、p型・n型半導体素子への半田拡散によるp型・n型半導体素子の機械強度低下を抑制できる。
11 上電極
11a,11b 電極部
11c 連結部
12 下電極
12a,12b 電極部
12c 連結部
13 接合部
13a フィレット部
13b 面接合部
14 Niメッキ層
15 Auメッキ層
21 n型半導体素子(素子部)
22 p型半導体素子(素子部)
23 バリア層
31 上基板
32 下基板
50 熱電モジュール
100 テスト装置
101 電源
102,103 T型熱電対
104 14pinバタフライパッケージ
105 熱板
106a 半田接合部
106b グリス層
107 治具
108a 端子
108b リード線
Claims (7)
- ペルチェ効果またはゼーベック効果を有する半導体材料によって形成されており、第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有する素子部と、
互いに隣接する前記素子部同士を繋ぐように前記素子部の前記第1面と前記第2面とにそれぞれ接合されており、前記第1・第2面との接合部分において前記第1・第2面よりも面積が小さい一対の電極と、
半田によって形成されており、前記素子部の前記第1面あるいは前記第2面と前記電極とが対向する面同士を接合する面接合部と、前記第1面あるいは第2面と前記電極とによって形成される段差部を構成し、前記電極の側面と前記第1面あるいは前記第2面との間を充填するように形成されたフィレット部と、を有する接合部と、
を備えている熱電素子。 - 前記電極は、略I字型の形状を有している、
請求項1に記載の熱電素子。 - 前記電極の側面には、半田のヌレ性を向上させる表面処理層が設けられている、
請求項1または2に記載の熱電素子。 - 前記表面処理層は、Au,Ag,Sn,Rh,Pd,Niおよびハンダメッキのいずれかを含むめっき層である、
請求項3に記載の熱電素子。 - 前記フィレット部は、前記電極の側面を覆うように形成されている、
請求項1から4のいずれかに記載の熱電素子。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載の熱電素子と、
複数の前記熱電素子が規則的に配列された基板と、
を備えた熱電モジュール。 - 前記熱電素子は、少なくともモジュールの外側に配置されている、
請求項6に記載の熱電モジュール。
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