以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいて、該カチオン重合性化合物がビニルエーテル基を反応基として有する化合物であり、該光カチオン重合開始剤が光酸発生剤であって、該光酸発生剤の前記で規定する熱酸発生量が、1×10−4(mol/L)以下であり、かつラジカル重合禁止剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにより、経時保存による粘度上昇やノズル面における撥インク性低下を防止し、吐出安定性に優れ、形成した画像の柔軟性、耐候性、安全性、印刷時の耐臭気性、印字物の耐臭気性に優れた活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
すなわち、本発明者らは、ビニルエーテル基を反応基として有する重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(以下、単にインクジェットインクあるいはインクともいう)の保存中に起こりうる暗反応のメカニズム及びそれに対する対策について詳細に検討を行った結果、ビニルエーテル基を有する重合性化合物を用いたインクジェットインクでは、インクの経時保存中に光重合開始剤が極々僅か分解し、ラジカル化合物を生成し、そのラジカル化合物に起因する重合が起きていることが推察された。この重合によって生成した化合物が、インクの粘度を上昇させ、また、インクジェットノズル面に付着することで撥インク性を劣化させて、インクジェットヘッドの吐出不良を引き起こすことが問題であった。また、このラジカル化合物起因のビニルエーテル化合物の重合反応性は、従来既知の他のカチオン重合性化合物であるオキセタン化合物やエポキシ化合物に比べて著しく高かった。そこで、本発明者らは、前記ラジカル化合物を捕捉するためにラジカル重合禁止剤を加えることを試みたところ、ある程度の改善が得られることが分かったが、前述の経時保存性の問題を十分に解決するには、それだけではまだ不足であり、特にインクジェットノズル面における撥インク性の低下を解決するには不十分であった。本発明者らは、さらに光重合開始剤の熱酸発生量と保存性との関係を調べたところ、熱酸発生量をある一定の臨界値以下に抑えることで、光重合開始剤からのラジカル化合物の生成、さらには、ラジカル化合物起因のビニルエーテル化合物の重合反応を押さえることができ、著しく保存性を改善できることを突き止め、本発明の完成に至った。従来既知のその他のカチオン重合性化合物であるオキセタン化合物やエポキシ化合物では、このような著しい改良効果、臨界性は見られなかった。
ビニルエーテル化合物においてのみ、上記の様な改良効果が得られるメカニズムについては、次のように推察している。ラジカル重合禁止剤は、開始剤分解により生ずるラジカル化合物と反応するとその重合禁止作用は消失してしまうことから、一定量のラジカル重合禁止剤が捕捉できるラジカル化合物の量は有限一定量である。反面、ビニルエーテル化合物含有のインクにおいては、詳細な機構は不明であるが、ラジカル化合物のインク中での濃度がある一定濃度に達すると、何らかの再生する反応プロセスが起こるようになり、ラジカル化合物が再生されるため、一定量のラジカル重合禁止剤で、捕捉しきれなくなるのではないかと推定する。しかしながら、熱酸発生量を臨界値以下に抑えることでインク中のラジカル化合物濃度をある一定濃度以下に抑えると、ラジカル化合物の再生プロセスは起こらなくなり、一定量のラジカル重合禁止剤で十分に捕捉が可能となることができたと推定される。
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの各構成要素の詳細について説明する。
《カチオン重合性化合物》
一般に、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいては、カチオン重合性化合物としては、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、およびオキセタン化合物が用いられているが、本発明においては、カチオン重合性化合物として、少なくともビニルエーテル基を反応基として有する重合性化合物VE(ビニルエーテル化合物VE)を、該インクジェットインク中に含有することを一つの特徴とする。ビニルエーテル化合物VEを用いることにより、他のカチオン重合性化合物であるオキセタン化合物、脂環式エポキシ化合物を用いたインクに比べて、良好な耐候性、硬化膜柔軟性を得ることが出来る。本発明の効果であるノズル面における撥インク性低下の防止、良好な吐出安定性と、且つ、硬化膜柔軟性、耐候性、の両面に優れた活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを得るためには、ビニルエーテル化合物VEは、インク組成物全体に対し、好ましくは、35質量%以上、より好ましくは、50質量%以上含有することが好ましい。ビニルエーテル化合物VEが35質量%以下であると、十分な耐候性、硬化膜柔軟性を得ることが困難となる。
ビニルエーテル化合物としては、以下に示すものがある。
〔2官能ビニルエーテル化合物〕
2官能ビニルエーテル化合物としては、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGDVE)、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテルなどを挙げることができる。
この他にも特許第4037856号公報に開示されている少なくとも酸素原子を含む脂環骨格を持つビニルエーテル化合物、特開2005−015396号公報に開示されている脂環式骨格を有するビニルエーテル、特開2008−137974号公報に開示されている1−インダニルビニルエーテル、特開2008−150341号公報に開示されている4−アセトキシシクロヘキシルビニルエーテル等を挙げることができる。
また、上記に挙げたジビニルエーテルのビニルエーテル基をプロペニルエーテル基、イソプロペニルエーテル基、ブテニルエーテル基、イソブテニルエーテル基に置換するなど、ビニルエーテル基のα位またはβに置換基を導入することもできる。
これらの2官能ビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジエチレングリコールジビニルエーテルおよびトリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、が硬化性、種々の素材との相溶性、臭気、安全性の点で優れており好ましい。2官能ビニルエーテル化合物はインク全体に対して35質量%以上、好ましくは50質量%以上である。35質量%以上であれば十分な柔軟性、耐候性を得ることができる。
〔3官能以上の多官能ビニルエーテル化合物〕
本発明に好適な3官能以上の多官能ビニルエーテル化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどが挙げられる。
3官能のビニルエーテル化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物のような分子内にオキシアルキレン基を有する化合物が、その他の化合物との相溶性や溶解性、基材との密着性を得る上で好ましい。また、オキシアルキレン基の総数は10以下であることが好ましい。10より大きいと、硬化膜の耐水性が低下する。なお、下記一般式(I)ではオキシエチレン基を例示しているが、炭素数の異なるオキシアルキレン基とすることも可能である。オキシアルキレン基の炭素数としては1〜4とすることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
上記一般式(I)において、R1は水素または有機基を表す。R1で表される有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリール基、フリル基またはチエニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基または3−ブテニル基等の炭素数1〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基またはフェノキシエチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基またはペンチルカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基またはブトキシカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基、エトキシカルバモイル基、プロピルカルバモイル基またはブチルペンチルカルバモイル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルバモイル基等の基が挙げられるがこれらに限定されない。この中でも有機基としては、ヘテロ原子を含まない炭化水素基が硬化性の観点で好ましい。また、p,q,rは0または1以上の整数であり、p+q+rは3〜10の整数である。
また、ビニルエーテル基を4つ以上有する多官能ビニルエーテル化合物としては、下記一般式(II)、(III)に表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(II)において、R2は、メチレン基、炭素数1〜6のアルキレン基、オキシアルキレン基、エステル基の何れかを含む連結基であり、p、q、l、mはそれぞれ0または1以上の整数であり、p+q+l+mの総数は3〜10の整数である。
上記一般式(III)において、R2は、メチレン基、炭素数1〜6個のアルキレン基、オキシアルキレン基、エステル基の何れかを含む連結基を表し、p、q、r、l、m、nはそれぞれ0または1以上の整数であり、p+q+r+l+m+nの総数は3〜10の整数である。
上記一般式(II)、(III)においてはオキシエチレン基を例示しているが、炭素数の異なるオキシアルキレン基とすることも可能である。オキシアルキレン基の炭素数としては1〜4であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
本発明のインクにおいては、3官能以上の多官能ビニルエーテルは、インク中の35〜70質量%、好ましくは50〜70質量%が好ましい。35質量%以上であれば、所望の柔軟性、耐候性を実現することができ、高湿環境においてインクを重ねて硬化させるときに硬化性速度の低下、臭気の発生、の耐溶媒性や耐候性など硬化膜物性の低下が生じる。70質量%以下であれば、小液滴・高周波数領域のインクジェット記録において十分な吐出安定性を維持することができる。
本発明において、3官能以上の多官能ビニルエーテルとしては4官能以上であることが、硬化の湿度依存性、硬化膜の耐溶媒性や耐候性など優れた硬化特性を得る上で更に好ましい。
また、上述の3官能以上の多官能ビニルエーテルは、ビニルエーテル基として下記一般式(IV)で表される官能基とすることも、硬化感度の向上や湿度依存性の改善、臭気の低減を図る上で好ましい。
上記一般式(IV)において、R1とR2はそれぞれ水素原子または有機基を表し、R1とR2の有機基の炭素原子数の総和が1以上の整数である。有機基は前記一般式(I)におけるR1で表される有機基と同義である。
〔単官能ビニルエーテル化合物〕
単官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
上記以外にも、これまでに開示されている種々のビニルエーテル化合物を適用することが可能である。例えば、特許第3461501号公報に開示されている分子内に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を含む化合物、特許第4037856号公報に開示されている少なくとも酸素原子を含む脂環骨格を持つビニルエーテル化合物、特開2005−015396号公報に開示されている脂環式骨格を有するビニルエーテル、特開2008−137974号公報に開示されている1−インダニルビニルエーテル、特開2008−150341号公報に開示されている4−アセトキシシクロヘキシルビニルエーテル等を挙げることができる。
〔その他のカチオン重合性化合物〕
本発明のインクジェットインクにおいては、本発明に係るビニルエーテル基を反応基として有する重合性化合物と共に、他のカチオン重合性化合物、例えば、エポキシ化合物、オキセタン環含有化合物等を、本発明の目的効果を損なわない範囲で用いることができる。
〈エポキシ化合物〉
エポキシ化合物としては、通常、エポキシ樹脂として用いられるモノマー、オリゴマーまたはポリマーの何れも使用可能である。具体的には、従来公知の芳香族エポキシド、脂環族エポキシド及び脂肪族エポキシドが挙げられる。尚、以下、エポキシドとは、モノマーまたはそのオリゴマーを意味する。これらの化合物は1種または必要に応じて2種以上用いてもよい。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられ、具体例としては、例えば、ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2080、セロキサイド2000、エポリードGT301、エポリードGT302、エポリードGT401、エポリードGT403、EHPE−3150、EHPEL3150CE;ユニオンカーバイド社製のUVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6100、UVR−6216、UVR−6000等を挙げることができる。
脂肪族エポキシドとしては、例えば、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
更に、これらの化合物の他に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル及びフェノール、クレゾールのモノグリシジルエーテル等も用いることができる。これらのエポキシドの内、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドを用いることができ、その中でも脂環式エポキシドが好ましい。
これらエポキシ化合物は、本発明に係るビニルエーテル化合物を含むインク中に、0〜65質量%、好ましくは、0〜20質量%の範囲で配合することができ、硬化性、硬化膜の柔軟性、基材との密着性の点で好ましい。
〈オキセタン化合物〉
オキセタン化合物は、分子内に1以上のオキセタン(トリメチレンオキシド)環を有する化合物である。具体的には3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成社製:OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)、ジ(1−メチル−3−オキセタニル)メチルエーテル等を好ましく用いることができ、特に3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルが好ましい。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらオキセタン化合物は、本発明に係るビニルエーテル化合物を含むインク中に、0〜65質量%の範囲で配合することができ、硬化性、硬化膜の柔軟性、基材との密着性の点で好ましい。
この他にもカチオン重合性化合物としては、本発明に係るビニルエーテル化合物や、エポキシ化合物、オキセタン化合物以外にも、カチオン重合可能な公知の環状化合物を含有しても良い。尚、本発明においては、本発明に係るビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物およびその他の環状化合物を、カチオン重合性化合物と称する。
《ポリマーまたはオリゴマー》
本発明においては、ポリマーまたはオリゴマーを含有させるか、添加することもできる。具体的なポリマーまたはオリゴマーとしては、上述のカチオン重合性化合物のポリマーまたはオリゴマーのうち反応性基を持たないものの他に、ビニルエーテルと相溶性のあるポリウレタン系化合物、ポリ(メタ)アクリル酸(エステル)系化合物、ポリエステル系化合物、ポリスチレン系化合物、ポリ酢酸ビニル系化合物、ポリブタジエン系化合物、ポリブチラール系化合物、ポリエチレン系化合物、など、公知のポリマー類の中から、本発明に係るビニルエーテルを主体とした重合性化合物に対して溶解性が良好なものを使用することができる。
ポリマーまたはオリゴマーは、−15℃においてカチオン重合性化合物全体へ5質量%以上の溶解性があり25℃における粘度が500mPa・s以上が好ましい。
これらのポリマーまたはオリゴマー添加により、高周波数駆動においても連続しての吐出安定性に優れ、硬化膜の平滑性が高く、光沢と高い画像濃度が得られ、基材への密着性、柔軟性、耐候性に優れた画像を形成できるインクを得ることができる。これらの効果は、特に、活性エネルギー線の透過性が低いブラックインクやホワイトインクにおいて顕著に現れる。
上記ポリマーまたはオリゴマーは、−15℃においてカチオン重合性化合物全体へ5質量%以上の溶解性が得られないと、インクを0℃〜10℃程度の間で低温保存をしたときに、好ましくないポリマーゲルの発生またはポリマーの析出を伴うとともに、インクの吐出安定性、硬化膜の柔軟性、耐候性の向上効果を得ることができにくくなる。
カチオン重合性化合物全体への溶解性を向上させるためには、少なくとも構成単位として、オキシエチレン基や、オキシプロピレン基などのエーテル構造を持たせることが好ましい。このような構造を持たせることによりビニルエーテルへの溶解性を向上させるとともに、光重合開始剤の溶解性も向上させることが可能となり、インクの保存性や硬化性を改善することができる。
また、上記ポリマーまたはオリゴマーは、25℃における粘度が500mPa・s以上とすることが好ましい。これにより、高周波数駆動においても連続しての吐出安定性に優れ、硬化膜の平滑性が高く、光沢と高い画像濃度が得られ、基材への密着性、柔軟性、耐候性に優れたインクを得ることができる。500mPa・s以下では十分な基材密着性や耐候性に対する更なる効果を得ることができにくい。上記ポリマーまたはオリゴマーの添加量は、その粘度と溶解性によって適宜設定されるが、好ましくはインク全質量の3〜30質量%、更に好ましくは5〜20質量%である。添加量が3質量%より少ないと上記の効果が得られないし、30質量%より多いと吐出安定性や低温環境下におけるインクの保存安定性の向上効果を得にくくなる。
《ハロゲンイオン含有量》
本発明のインクジェットインクにおいては、ハロゲンイオンの含有量が100μg/g以下であることが好ましい。好ましくは40μg/g以下であり、更に好ましくは10μg/g以下である。ハロゲンイオンの含有量が100μg/gを超えると、硬化性、特に低照度で、薄膜で硬化した場合に硬化不良が起きてしまう場合がある。この現象は、他のカチオン重合性モノマーに比較して、ビニルエーテル化合物を主として用いるインクにおいては特に顕著に生ずることが、本発明者らの検討で判明した。この現象の結果、膜の耐溶媒性が弱くなったり、耐擦過性が弱くなったり、また、重合度が低いために耐候性が悪くなったり、といった不具合が起きる。
ハロゲンイオンとしては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンが挙げられるが、特に塩素イオン、臭素イオンの影響が大きく、とりわけ塩素イオンの影響が大きい。塩素イオン、臭素イオン、とりわけ塩素イオンは、ビニルエーテルを主として用いるインクにおける前述の硬化性の劣化に対して、特に悪影響を及ぼし、耐溶媒性、耐擦過性、耐候性が劣化する。このようなハロゲンイオンのインク中の含有量を100μg/g以下にするためには、予め、原材料であるカチオン重合性化合物、着色剤、光カチオン重合開始剤、その他添加剤のハロゲンイオンを取り除くための精製操作を十分に行う必要がある。特に、着色剤として顔料を用いる場合は、不純物としてハロゲンイオンを含んでいる場合があるので、注意を要する。また、ビニルエーテル化合物を主としたインクに対して影響の大きい塩素イオン、臭素イオンが、これら原材料に不純物として混入している場合が多い。原材料からハロゲンイオンを取り除く精製方法としては、原材料の形態や性質により様々な方法をとりうるが、例えば、液状の重合性化合物の場合は蒸留、固形物であれば昇華、イオン交換水による洗浄と乾燥、イオン交換樹脂の使用が挙げられる。一方、インクに100μg/g以下の含有量になるように、ハロゲンイオンを添加する方法としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等の無機塩やテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩をインクに直接もしくは水や有機溶媒に予め溶解して添加する方法が挙げられる。
インク中のハロゲンイオン含有量の測定は、インクを純水と攪拌し、ハロゲンイオンを水相に抽出し、ろ過により固形分を除いた後、イオンクロマトグラフ法によって定量分析を行うことにより求めることができる。具体例としては、インク1gを精確に秤量し、超純水30mlを加えて30分攪拌し、1時間静置後ろ過を行い、ろ過後の液について、イオンクロマトグラフ分析法により定量分析を行うことで、インク1gあたりからのハロゲンイオン抽出量(μg/g)を求めることができる。
《着色剤》
本発明のインクジェットインクを着色する場合は、顔料を着色剤として用いることが好ましい。顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無色無機顔料または有色有機顔料を使用することができる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系有機顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系有機顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系有機顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系有機顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系有機顔料;チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系有機顔料;イソインドリンイエローなどのイソインドリン系有機顔料;その他の顔料として、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)番号で以下に例示する。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、
C.I.ピグメントグリーン7、36、
C.I.ピグメントブラウン23、25、26、
上記顔料の中でも、キナクリドン系、フタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、キノフタロン系、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が優れているため好ましい。
有機顔料は、レーザ散乱による測定値でインク中の平均粒径が10〜150nmの微細粒子であることが好ましい。顔料の平均粒径が10nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じ、150nmを超える場合は分散の安定維持が困難になり、顔料の沈澱が生じ易くなるとともに、吐出安定性が低下し、サテライトと言われる微小のミストが発生する問題が起こる。ただし、酸化チタンの場合は白色度と隠蔽性を持たせるために平均粒径は150〜300nm、好ましくは180〜250nmとする。
またインク中の顔料の最大粒径は、1.0μmを越えないよう、十分に分散あるいは、ろ過により粗大粒子を除くことが好ましい。粗大粒子が存在すると、やはり吐出安定性が低下する。
有機顔料の微細化は、以下の方法で行うことができる。即ち、有機顔料、有機顔料の3質量倍以上の水溶性無機塩及び水溶性溶媒の少なくとも3成分から成る混合物を粘土状とし、ニーダー等で強く練り込んで微細化した後、水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩及び水溶性の溶媒を、水性処理により除去する。微細化工程において、樹脂、顔料分散剤等を添加してもよい。
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は有機顔料の3〜20質量倍の範囲で用いるが、分散処理を行った後は、本発明で規定するハロゲンイオン含有量を達成するため、塩素イオン(ハロゲンイオン)を水洗処理により取り除く操作を行う。無機塩の量が3質量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られず、また、20質量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
水溶性溶媒は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性無機塩との適度な粘土状態を作り、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶媒であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶媒が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶媒が好ましい。水溶性溶媒として、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(i−ペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
また顔料はその表面に顔料分散剤との吸着を促進するために、酸性処理または塩基性処理、シナージスト、各種カップリング剤など、公知の技術により表面処理を行うことが分散安定性を確保するために好ましい。
顔料は、十分な濃度及び十分な耐光性を得るため、インクジェットインク中に白色を除く色の場合1.5〜8質量%、酸化チタンを用いた白色インクの場合、10〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。
〔顔料分散剤〕
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を挙げることができる。
具体例としては、BYK Chemie社製の「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
また、Efka CHEMICALS社製の「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」;共栄化学社製の「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」;楠本化成社製の「ディスパロンKS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」等が挙げられる。
更には、花王社製の「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」;ゼネカ社製の「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13240、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、32000、7000」;日光ケミカル社製の「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」、味の素ファインテクノ製のアジスパー821、822、824等が挙げられる。
これらの顔料分散剤は、顔料100に対し5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%の範囲で含有させることが好ましい。5%以上とすることにより、良好な分散安定性が得られ、また、70%以下とすることにより吐出安定性をも良好に維持することが可能である。
更に、これらの顔料分散剤は、0℃におけるカチオン重合性化合物全体へ5質量%以上の溶解性があることが好ましい。溶解性が5質量%以上であると、インクを低温で保存したときに、好ましくないポリマーゲルまたは顔料の軟凝集体が発生しにくく、インクの保存安定性と吐出安定性とを良好にする。
更に、これらの顔料分散剤は、0℃におけるカチオン重合性化合物全体へ5質量%以上の溶解性があることが好ましい。溶解性が5質量%未満であると、インクを0℃〜10℃程度の間で低温保存をしたときに、好ましくないポリマーゲルまたは顔料の軟凝集体が発生し、インクの保存安定性と吐出安定性とが劣化する。
《ラジカル重合禁止剤》
本発明のインクでは、ラジカル重合禁止剤を添加することを特徴の一つとする。
ビニルエーテル基を有するカチオン重合性化合物を用いたインクジェットインクは、経時保存中に光重合開始剤が極々僅かに分解し、ラジカル化合物を生成し、そのラジカル化合物に起因する重合が起きていることが推察されており、この重合によって生成した化合物が、インクの粘度を上昇させ、また、インクジェットノズル面に付着することで撥インク性を劣化させて、インクジェットヘッドの吐出不良を引き起こすと考えられる。
そこで、ラジカル重合禁止剤は、このビニルエーテル化合物特有の重合反応を禁止するために使用される。従来、既知のその他のカチオン重合性化合物であるオキセタン化合物やエポキシ化合物にラジカル重合禁止剤を添加しても、ここで述べているようなビニルエーテル化合物で得られるほどの重合禁止効果は得られない。
本発明に適用可能なラジカル重合禁止剤としては、例えば、フェノール系水酸基含有化合物、メトキノン(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、ハイドロキノン、4−メトキシ−1−ナフトールなどのキノン類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル フリーラジカル、N−オキシル フリーラジカル化合物類、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、各種糖類、リン酸系酸化防止剤、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体、芳香族アミン、フェニレンジアミン類、イミン類、スルホンアミド類、尿素誘導体、オキシム類、ジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンの重縮合物、フェノチアジン等の含硫黄化合物、テトラアザアンヌレン(TAA)をベースとする錯化剤、ヒンダードアミン類などが挙げられる。
ラジカル重合禁止剤としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
フェノール系水酸基含有化合物としては、例えば、次の化合物である:フェノール、アルキルフェノール、例えば、o−、m−またはp−クレゾール(メチルフェノール)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、または2,2′−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−メチルフェノール)、4,4′−オキシジフェニル、3,4−メチレンジオキシジフェノール(ゴマ油)、3,4−ジメチルフェノール、ベンズカテキン(1,2−ジヒドロキシベンゾール)、2−(1′−メチルシクロヘキシ−1′−イル)−4,6−ジメチルフェノール、2−または4−(1′−フェニルエチ−1′−イル)フェノール、2−t−ブチル−6−メチルフェノール、2,4,6−トリス−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール[CAS−Nr.11066−49−2]、オクチルフェノール[CAS−Nr.140−66−9]、2,6−ジメチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3′,5,5′−テトラブロモビスフェノールA、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、BASF Aktiengesellschaft社製のコレシン(Koresin)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−t−ブチルベンズカテキン、2−ヒドロキシベンジルアルコール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、6−イソプロピル−m−クレゾール、n−オクタデシル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾール、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル−イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレートまたはペンタエリスリット−テトラキス−[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、6−s−ブチル−2,4−ジニトロフェノール、Firma Ciba Spezialitaetenchemie社製のイルガノックス(Irganox)565、1010、1076、1141、1192、1222及び1425、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルエステル。3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヘキサデシルエステル、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクチルエステル、3−チア−1,5−ペンタンジオール−ビス−[3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカンジオール−ビス−[3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカンジオール−ビス−[(3′−t−ブチル−4′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)プロピオネート]、1,9−ノナンジオール−ビス−[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,7−ヘプタンジアミン−ビス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、1,1−メタンジアミン−ビス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、3−(3′,5′−ジメチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、ビス−(3−t−ブチル−5−エチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)メタン、ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニ−1−イル)メタン、ビス−[3−(1′−メチルシクロヘキ−1′−イル)−5−メチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル]メタン、ビス−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニ−1−イル)メタン、1,1−ビス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ2−メチルフェニ−1−イル)エタン、ビス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニ−1−イル)スルフィド、ビス−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニ−1−イル)スルフィド、1,1−ビス−(3,4−ジメチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス−(5−t−ブチル−3−メチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)ブタン、1,3,5−トリス−[1′−(3″,5″−ジ−t−ブチル−4″−ヒドロキシフェニ−1″−イル)メチ−1′−イル]−2,4,6−トリメチルベンゾール、1,1,4−トリス−(5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシ−2′−メチルフェニ−1′−イル)ブタン及びt−ブチルカテコール、及びアミノフェノール、例えば、p−アミノフェノール、ニトロソフェノール、例えば、p−ニトロソフェノール、p−ニトロソ−o−クレゾール、アルコキシフェノール、例えば、2−メトキシフェノール(グアヤコール、ベンズカテキンモノメチルエーテル)、2−エトキシフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、モノ−またはジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコール、2,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジルアルコール(シリンガアルコール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−ヒドロキシ−3−エトキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(イソバニリン)、1−((4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)エタノン(アセトバニリン)、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、イソオイゲノール、トコフェロール、例えば、α−、β−、γ−、δ−及びε−トコフェロール、トコール、α−トコフェロールヒドロキノン、及び2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ヒドロキシベンゾフラン(2,2−ジメチル−7−ヒドロキシクマラン)。
また、キノン、ヒドロキノンとして、例えば、ヒドロキノンまたはヒドロキノンモノメチルエーテル(4−メトキシフェノール)、メチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン4−メチルベンズカテキン、t−ブチルヒドロキノン、3−メチルベンズカテキン、ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、4−エトキシフェノール、4−ブトキシフェノール、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、p−フェノキシフェノール、2−メチルヒドロキノン、テトラメチル−p−ベンゾキノン、ジエチル−1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジカルボキシレート、フェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−3−ベンジル−p−ベンゾキノン、2−イソプロピル−5−メチル−p−ベンゾキノン(チモキノン)、2,6−ジイソプロピル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−3−ヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノン、エンベリン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、2−アミノ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ビスフェニルアミノ−1,4−ベンゾキノン、5,8−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2−アニリノ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン、N,N−ジメチルインドアニリン、N,N−ジフェニル−p−ベンゾキノンジイミン、1,4−ベンゾキノンジオキシム、セルリグノン、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチルジフェノキノン、p−ロゾール酸(オーリン)、2,6−ジ−t−ブチル−4−ベンジリデン−ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチル−アミルヒドロキノンが好適である。
また、N−オキシル フリーラジカル化合物類(ニトロキシル−またはN−オキシル−基、少なくとも1個の>N−O・−基を有する化合物)としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、BASF Aktiengesellschaft のウビヌル(Uvinul)4040P、4,4′,4″−トリス−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル)ホスフィット、3−オキソ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−N−オキシル、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−メトキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−トリメチルシリルオキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−2−エチルヘキサノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−セバケート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ステアレート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ベンゾエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−(4−t−ブチル)ベンゾエート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)スクシネート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジペート、1,10−デカンジ酸−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルマロネート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)フタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)イソフタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)テレフタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N′−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジピンアミド、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カプロラクタム、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ドデシルスクシンイミド、2,4,6−トリス−[N−ブチル−N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル]トリアジン、N,N′−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ビス−ホルミル−1,6−ジアミノヘキサン、4,4′−エチレン−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−3−オン)が好適である。
芳香族アミンまたはフェニレンジアミンとして、例えば、N,N−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、ニトロソジエチルアニリン、p−フェニレンジアミン、N,N′−ジアルキル−p−フェニレンジアミン(この際、アルキル基は同じまたは異なっていてよく、各々相互に無関係で、1〜4個の炭素原子を含み、直鎖または分子鎖であってよい)、例えば、N,N′−ジ−イソ−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−イソ−プロピル−p−フェニレンジアミン、Firma Ciba Spezialitaetenchemie社製のイルガノックス5057、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン(BASF Aktiengesellschaft社製のケロビット(Kerobit)BPD)、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(Bayer AG社製のブルカノックス(Vulkanox)4010)、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、イミノジベンジル、N,N′−ジフェニルベンジジン、N−フェニルテトラアニリン、アクリドン、3−ヒドロキシジフェニルアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミンが好適である。
イミンとしては、例えば、メチルエチルイミン、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾキノンイミン、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾフェノンイミン、N,N−ジメチルインドアニリン、チオニン(7−アミノ−3−イミノ−3H−フェノチアジン)、メチレンバイオレット(7−ジメチルアミノ−3−フェニチアジノン)である。
ラジカル重合禁止剤として有効なスルホンアミドは、例えば、N−メチル−4−トルオールスルホンアミド、N−t−ブチル−4−トルオールスルホンアミド、N−t−ブチル−N−オキシル−4−トルオールスルホンアミド、N,N′−ビス(4−スルファニルアミド)ピペリジン、3−{[5−(4−アミノベンゾイル)−2,4−ジメチルベンゾールスルホニル]エチルアミノ}−4−メチルベンゾールスルホン酸である。
ラジカル重合禁止剤として有効なオキシムとしては、例えば、アルドキシム、ケトキシムまたはアミドキシム、有利にジエチルケトキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、ベンズアルデヒドキシム、ベンジルジオキシム、ジメチルグリオキシム、2−ピリジンアルドキシム、サリチルアルドキシム、フェニル−2−ピリジルケトキシム、1,4−ベンゾキノンジオキシム、2,3−ブタンジオンジオキシム、2,3−ブタンジオンモノオキシム、9−フルオレノンオキシム、4−t−ブチル−シクロヘキサノンオキシム、N−エトキシ−アセチミド酸エチルエステル、2,4−ジメチル−3−ペンタノンオキシム、シクロドデカノンオキシム、4−ヘプタノンオキシム及びジ−2−フラニルエタンジオンジオイキシムまたは他の脂肪族または芳香族オキシムまたはアルキル転移剤、例えば、アルキルハロゲニド、−トリフレート、−スルホネート、−トシレート、−カルボネート、−スルフェート、−ホスフェート等とのその反応生成物であってよい。
ヒドロキシルアミンは、例えば、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン及びPCT/EP/03/03139の国際特許出願に記載されている化合物を挙げることができる。
尿素誘導体として、例えば、尿素またはチオ尿素が好適である。
燐含有化合物は、例えば、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィット、次亜燐酸、トリノニルホスフィット、トリエチルホスフィットまたはジフェニルイソプロピルホスフィンである。
硫黄含有化合物として、例えば、ジフェニルスルフィド、フェノチアジン及び硫黄含有天然物質、例えば、システインが好適である。
テトラアザアンヌレン(TAA)をベースとする錯化剤は、例えば、Chem.Soc.Rev.1998,27,105−115に挙げられている、例えば、ジベンゾテトラアザ[14]環及びポルフィリンである。
ヒンダードアミン類としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]}、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルベンゾエート、(ミックスト2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β′,β′−テトラメチル−3−9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−N−モルホリル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]}、[N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]プロピオンアミドなどが挙げられる。市販品では、LA−77、LA−57、LA−67(以上、ADEKA社製)、TINUVIN123、TINUVIN152(以上、チバ・ジャパン社製)等が挙げられる。
その他にも、炭酸、塩化、ジチオカルバミン酸、硫酸、サリチル酸、酢酸、ステアリン酸、エチルヘキサン酸等の各金属塩(銅、マンガン、セリウム、ニッケル、クロム等)を挙げることができる。
また、Macromol.Rapid Commun.,28,1929(2007)に記載のビニルエーテル官能基を有するN−オキシル フリーラジカル化合物は、カチオン重合性機能とラジカル捕捉機能を同一分子内に併せ持つ構造であり、硬化性とインク保存性の観点から、本発明のインクに添加するのは好ましい。また、このビニルエーテル官能基を有するN−オキシル フリーラジカル化合物をカチオン重合して得られたポリマーは、側鎖にフリーラジカルを有する構造を持つ高分子であり、耐溶媒性、擦過性、耐候性といった硬化膜物性や、インク保存性の観点から、本発明のインクに添加することが好ましい。
上記各化合物の中で、本発明の目的効果の1つである保存安定性の観点、すなわち、ビニルエーテル化合物の重合によるインクの増粘や、インクジェットノズルの撥インク性の低下の観点から好ましいのは、フェノール類、N−オキシル フリーラジカル化合物類、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル フリーラジカル、フェノチアジン、キノン類、ヒンダードアミン類であるが、とりわけ好ましいのは、N−オキシル フリーラジカル化合物類である。
ラジカル重合禁止剤の添加量は1〜5000ppmであることが好ましく、10〜2000ppmがより好ましい。1ppm以上であれば、所望の保存安定性が得られ、インクの増粘やインクジェットノズルに対する撥インク性を得ることができ、吐出安定性の観点で好ましい。また、5000ppm以下であれば、重合開始剤の酸発生効率を損なうことがなく、高い硬化感度を維持することができる。
《カチオン重合禁止剤》
本発明のインクにおいては、カチオン重合禁止剤を添加することもできる。カチオン重合禁止剤としては、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物もしくは、アミン類を挙げることができる。
アミンとして好ましくは、アルカノールアミン類、N,N−ジメチルアルキルアミン類、N,N−ジメチルアケニルアミン類、N,N−ジメチルアルキニルアミン類などであり、具体的には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、2−アミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、3−メチルアミノ−1−プロパノール、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、2−エチルアミノエタノール、4−エチルアミノ−1−ブタノール、4−(n−ブチルアミノ)−1−ブタノール、2−(t−ブチルアミノ)エタノール、N,N−ジメチルウンデカノール、N,N−ジメチルドデカノールアミン、N,N−ジメチルトリデカノールアミン、N,N−ジメチルテトラデカノールアミン、N,N−ジメチルペンタデカノールアミン、N,N−ジメチルノナデシルアミン、N,N−ジメチルイコシルアミン、N,N−ジメチルエイコシルアミン、N,N−ジメチルヘンイコシルアミン、N,N−ジメチルドコシルアミン、N,N−ジメチルトリコシルアミン、N,N−ジメチルテトラコシルアミン、N,N−ジメチルペンタコシルアミン、N,N−ジメチルペンタノールアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルヘプタノールアミン、N,N−ジメチルオクタノールアミン、N,N−ジメチルノナノールアミン、N,N−ジメチルデカノールアミン、N,N−ジメチルノニルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルトリデシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルペンタデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルヘプタデシルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミンが挙げられる。これらの他にも、4級アンモニウム塩なども使用することができる。カチオン重合禁止剤としては、特に、2級アミンが好ましい。
カチオン重合禁止剤の添加量は10〜5000ppmであることが好ましい。10ppm以上とすることにより良好な保存安定性が得られ、インクの増粘やインクジェットノズルに対する良好な撥インク性が得られ吐出安定性を維持できる点で好ましい。5000ppm以下とすることにより、活性エネルギー線開始剤の酸発生効率を十分に維持することが可能となり、硬化感度を維持することが可能となる。
《光カチオン重合開始剤》
本発明のインクで用いることのできる光カチオン重合開始剤としては光酸発生剤を用い、光酸発生剤としては、熱酸発生量が、1×10−4(mol/L)以下である光酸発生剤を使用することを一つの特徴とする。
本発明でいう熱酸発生量とは、光酸発生剤の0.02mol/Lジオキサン溶液を、大気圧下で20時間リフラックスしたとき、調製直後の状態で、加熱処理を施していない光酸発生剤の0.02mol/Lジオキサン溶液(以下、リフラックス前の溶液と称す)とリフラックス後の溶液中の水素イオン濃度(mol/L)の差をいう。
光酸発生剤の熱酸発生量は、具体的には下記に示す方法に従って測定することができる。
(1)光酸発生剤の0.02mol/Lジオキサン溶液を、大気圧下で20時間リフラックスする。
(2)リフラックス前の溶液とリフラックス後の溶液について、各々、溶液1gと純水4gを混合して、密栓状態で30分静置後、上澄みである水層のpHを測定する。pH測定溶液の温度は、24℃以上、26℃以下とする。
(3)pHの測定結果より、リフラックス前の溶液とリフラックス後の溶液の[H+]濃度を計算で求め、リフラックス前の溶液の[H+]濃度−リフラックス後の溶液の[H+]濃度を、熱酸発生量とする。
熱酸発生量が、1×10−4(mol/L)以下である光酸発生剤を用いることで本発明の効果である経時保存による粘度上昇やノズル面における撥インク性低下を良好に防止し、吐出安定性に優れたインクとなる。5.0×10−5mol/L以下であれば、経時保存による粘度上昇やノズル面における撥インク性低下をより良好に防止できる。
以下に、代表的な光酸発生剤について説明する。
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4−、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、CF3SO3 −塩を挙げることができる。
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例を、以下に示す。
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができ、その具体的な化合物を、以下に例示する。
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
更に、本発明のインクにおいては、熱安定性が高く、熱酸発生量が低いという点で、特に、本発明に係る前記一般式〔1〕〜〔3〕で表されるスルホニウム塩化合物を用いることが好ましい。さらには、S+と結合するベンゼン環に置換基をもつものであれば、光分解時にベンゼンを放出しないことから、環境適性上好ましい。
上記一般式〔1〕〜〔3〕において、R1〜R11はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
R1〜R11で表される置換基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニル基、フェニルチオ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基等を挙げることができる。
Xは、非求核性のアニオン残基を表し、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、B(C6F5)4、R18COO、R19SO3、SbF6、AsF6、PF6、BF4等を挙げることができる。ただし、R18およびR19は、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基を表す。この中でも、安全性の観点から、B(C6F5)4、PF6が好ましい。
上記化合物は、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Voi.71 No.11,1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
その他、WO2005/116038記載のフッ素化アルキルフルオロリン酸オニウム塩、特開2008−273878、特開2008−273879記載のジチエニルベンゼンスルフォニウム塩、特開2008−239519記載のビチオフェンジスルフォニウム塩が挙げられる。
更に、本発明のインクにおいては、光酸発生剤として、前記一般式〔4〕、〔5〕で表される化合物は、熱安定性が高く、熱酸発生量が低いことに加えて、インクジェットインクの光照射時や印刷物の臭気が低いという観点から好ましい。
前記一般式〔4〕において、nは1または2を表し、XはS、O、CH2、CO、単結合、またはRが水素原子またはアルキル基もしくはアリール基であるN−Rを表し、Y1、Y2は、それぞれ水素原子、炭素数が1〜6の直鎖または分枝アルキル基、シクロアルキル基、O−アルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、S−アルキル基またはS−アリール基を表し、Z−はMQpで表され、Mは、B、P、AsまたはSbであり、QはF、Cl、Br、Iまたはパーフルオロフェニルであり、pは4〜6の整数である。Aは、前記一般式〔4A〕で表される。
前記一般式〔4A〕において、mは1または2であり、R1〜R5のうち少なくとも1つが水素原子であるという条件下で、R1〜R9は、単結合、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数が1〜6の直鎖または分枝アルキル基、炭素数が1〜6の直鎖または分枝アルコキシル基、またはS−炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキルチオ基を表す。
mが1である場合、BはO、S、SO、SO2、CH2、単結合、NR(Rは水素原子または炭素数が1〜6の直鎖または分枝アルキル基)、または炭素数2〜18の直鎖または分枝アルキレン基を表し、その末端にO、S及びN−Rから選択される2つのヘテロ原子を有する。上記アルキレン基は、最終的には炭素数1〜6の直鎖または分枝ヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分枝メルカプトアルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、またはアミノアルキル基で置換されるアルキレン基、または環中に2つの窒素原子を含む脂環式基であって、脂環式基は最終的にはOH、NH2、炭素数1〜6の直鎖または分枝アミノアルキル基で置換される脂環式基であることが好ましい。
mが2である場合、BはN、炭素数3〜18の直鎖または分枝アルキル基を表し、O、S及びN−Rから選択された3つのヘテロ原子を有する。上記アルキル基は、最終的には炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のメルカプトアルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基またはアミノアルキル基で置換されたアルキル基、または環中に3つのNを有する脂環式基であって、脂環式基は最終的にはOH、NH2、炭素数1〜6の直鎖または分枝アミノアルキル基で置換された脂環式基から選択される。
一般式〔4〕で表されるスルホニウム塩化合物としては、例えば、
4,4′−ビス−(チアントレニウム−9−イル)−ジフェニルエーテル ジヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス−(2,6−ジメチル−チアントレニウム−9−イル)−ジフェニルエーテル ジヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス−(チアントレニウム−9−イル)−ジフェニルスルフィド ジヘキサフルオロホスフェート、
1,2−ビス−[4−(チアントレニウム−9−イル)−フェノキシ]−エタン ジヘキサフルオロホスフェート、
1,4−ビス−[4−(チアントレニウム−9−イル)−フェニル]−ピペラジン ジヘキサフルオロホスフェート、
1,2,3−トリス−[4−(チアントレニウム−9−イル)−フェノキシ]−プロパン トリヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス−(チアントレニウム−9−イル)−ジフェニル ジヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス−(チオキサンテニウム−10−イル−9−オン)−ジフェニルエーテル ジヘキサフルオロホスフェート
等を挙げることができる。
前記一般式〔5〕において、XはS、O、CH2、CO、単結合、Rが水素原子、アルキル基またはアリール基であるN−Rを表し、Y1′、Y2′、Y3′はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキル基、シクロアルキル基、O−アルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、S−アルキル基、S−アリール基、またはNR1R2を表す。R1、R2は水素原子、直鎖または分枝アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。L−は、MQpで表され、Mは、B、P、AsまたはSbであり、QはF、Cl、Br、Iまたはパーフルオロフェニルであり、pは4〜6の整数である。
Dは、OH、OR、NH2、NHR、NR1R2、SH、及びSR(R、R1、R2は、水素原子、直鎖または分枝アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表す)より選択される1または2以上の基を置換基として有する炭素数が2〜6の直鎖または分枝アルキル基若しくはシクロアルキル基、SH、SR、OH、OR、NH2、NHR、及びNR1R2(R、R1、R2は、水素原子、直鎖または分枝アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表す)より選択される1または2以上の基を置換基として有する炭素数が2〜6の直鎖または分枝アルキルチオ基若しくはシクロアルキルチオ基、またはNR3R4(R3、R4は、水素原子、アリール基、炭素数が1〜12の直鎖または分枝アルキル基を表す)を表す。
一般式〔5〕で表されるスルホニウム塩化合物としては、例えば、9−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−チアントレニウム ヘキサフルオロホスフェート、9−[4−(2,3−ジ−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−チアントレニウム ヘキサフルオロホスフェート等を挙げることができる。
また、これらの光カチオン重合開始剤と同等の作用を有する基若しくは化合物をポリマーの主鎖または側鎖に導入した化合物としては、例えば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。更に、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
一方で、本発明のインクにおいては、前記一般式〔A〕で示されるビス(トリアリール)スルホニウム塩を実質的に含有しないことが好ましい態様である。
前記一般式〔A〕で示されるビス(トリアリール)スルホニウム塩は、熱安定性が低く、熱酸発生量が高い化合物であることから、本発明のインクジェットインクには適さない。したがって、本発明のインクジェットインクは、下記一般式〔A〕で表される化合物を実質的に含有しない。この場合の「実質的に含有しない」実施態様とは、インクに一般式〔A〕で表される化合物を意図的に添加しないことを意味しており、光酸発生剤の製造工程において残留または混入によって、意図的にではなく不純物として微量混入してしまう場合は除外される。従って、不純物としての混入量としては、光酸発生剤全体に対して2質量%以下である。この様な一般式〔A〕で示されるビス(トリアリール)スルホニウム塩である光酸発生剤としては、ダウ・ケミカル(株)製UVI−6992、ダイセル(株)製UVACURE−1591等が挙げられる。
本発明においては、前記一般式〔A〕で表される化合物を除く光カチオン重合開始剤は、カチオン重合性化合物100質量部に対して0.2〜10質量部の比率、更に0.5〜5質量部で含有させるのが好ましい。光重合開始剤の含有量が0.2質量部未満では硬化物を得ることが困難であり、10質量部を超えて含有させても開始剤自体が紫外線吸収剤となってインク中の遮蔽効果をもたらすため、更なる硬化性向上効果はないばかりか、低温および高温におけるインクの保存安定性を劣化させてしまう。これら光カチオン重合開始剤は、1種または2種以上を選択して使用することができる。
《光酸発生剤の不純物精製方法》
光酸発生剤は、その主成分のみならず、不純物と推定される成分が、長期間にわたるインクの保存過程により、極僅かに分解が起こる場合がある。この不純物の分解によっても、ラジカル化合物が発生し、インク中のビニルエーテル基を有する重合性化合物が重合を引き起こし、粘度の上昇やインクジェットノズルの撥インク性低下を引き起こす場合がある。
本発明に係る光酸発生剤において、本発明で規定する熱酸発生量を得るためには、光酸発生剤の純度は高いほうが好ましく、純度80%以上、より好ましくは90%以上が好ましい。
光酸発生剤の不純物を減少させる方法としては、活性炭、塩基性吸着剤等への吸着による方法、カラムクロマトグラフィー、晶析、再結晶等の分離する方法などが知られている。これらの工程によって不純物を下げても、熱安定性が不十分な場合は、光酸発生剤と構造が類似しており、熱安定性が低い不純物の残存が考えられる。例えば、光酸発生剤がトリアリールスルホニウム塩誘導体の場合には、ジアリールスルホニウム塩やビス(トリアリールスルホニウム塩)、などの混入が考えられるが、これらは熱に対する安定性が主成分の化合物よりも低い。このような場合には、以下に示すような精製工程をもうけて、不純物を除去しても良い。
(精製工程)
精製工程は、光酸発生剤を加熱処理し、不純物を熱分解させてプロトン酸を発生させる工程及び該加熱工程の後に行われるプロトン除去工程からなる。アリールスルホニウム塩の場合、60℃以上、アリールスルホニウム塩の分解温度(℃)未満の温度範囲で、加熱処理する加熱工程および該加熱工程の後に行われるプロトン除去工程を有し、該加熱処理工程の加熱温度をt(℃)とし、加熱時間をh(hr)としたとき、K−59h≧82である工程が好ましい。
但し、Kは、加熱時間hをx軸とし、加熱温度tをy軸として加熱時間−加熱温度曲線を求めx=0からx=hまで積分した値である。
加熱処理の具体的方法としては、アリールスルホニウム塩を溶解した溶媒を加熱する方法、アリールスルホニウム塩の固体粒子を加熱する方法が挙げられるが、アリールスルホニウム塩を溶解した溶媒を加熱する方法が好ましい。
溶媒としては、トリアリールスルホニウム塩の構造にもよるが、プロトン性、非プロトン性の極性有機溶媒が好適に用いられる。
例えば、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アニソール、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、等のエーテル、アセタール類、アセトン、イソホロン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、炭酸プロピレン、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールとその誘導体、酢酸、プロピオン酸、無水酢酸等の有機酸及びその無水物、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド等の含窒素化合物、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物などが挙げられるが、ジオキサン、炭酸プロピレンが好ましく用いられる。
加熱処理工程の加熱温度t(℃)は、アリールスルホニウム塩を溶解した溶媒を加熱する方法の場合には溶媒の温度を、固体粒子を加熱する方法の場合には、加熱する雰囲気の温度である。
加熱温度が60℃未満であると、インクジェットインクを長期間保存した場合、出射不良などを生ずる。
上記関係式(K−59h≧82)において、K−59hが82未満の場合には、長期間保存した場合、出射不良などを生ずる。
加熱処理においては、加熱温度を上記範囲内であれば変化させてもよい。
加熱温度hは、60℃〜アリールスルホニウム塩の分解温度未満であるが、60℃〜(アリールスルホニウム塩の分解温度(℃)−10(℃))であることがアリールスルホニウム塩を分解させることなく処理できるため好ましい。
プロトン除去工程は、下記に挙げる処理などにより、加熱により発生すると思われるプロトンを除去する工程であり、アルカリ剤と接触させるアルカリ処理、各種クロマトグラフによるクロマト分離処理、水と接触させる水処理などが挙げられる。
アルカリ処理は、アリールスルホニウム塩をアルカリ剤と接触させる処理である。アルカリ処理は、アリールスルホニウム塩を溶解した溶媒中でアルカリ剤と接触させる方法により行われる。アルカリ処理においてアリールスルホニウム塩を溶解する溶媒は、前述の加熱処理で用いられる溶媒を用いる。アルカリ剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の水溶液が挙げられる。接触させる方法としては、アリールスルホニウム塩の溶液とアルカリ剤の混合物を攪拌する方法が挙げられる。アルカリ処理の温度としては、10℃〜アリールスルホニウム塩の分解温度(℃)−10(℃)が好ましく、特に加熱や冷却の装置が不要であることから10℃〜40℃が好ましい。アルカリ処理工程の後は、硫酸マグネシウム等を用いて脱水処理を行い水を除去する工程を有することが好ましい。
クロマト分離処理としては、例えば、陽イオン交換樹脂を充填したカラムに前記アルカリ剤水溶液を通過させた後に、前記加熱処理を行ったアリールスルホニウム塩溶液を通過させる方法が挙げられる。
水処理は、アリールスルホニウム塩を溶解した溶媒と水の混合物を攪拌することにより行うことができる。
以上のような、精製工程を行うことは、本発明の目的効果の1つであるインクの保存安定性、すなわち、ビニルエーテル化合物の重合による増粘や、インクジェットノズルの撥インク性の劣化に対してより好ましい。
《増感剤》
本発明のインクにおいては、重合開始剤(光酸発生剤)の増感剤を用いることができる。増感剤としては、スルホニウム塩を光開始剤とした場合には、アントラセン、アントラセン誘導体(旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−100、ジエトキシアントラセン、ジブトキシアントラセン等)が挙げられる。ヨードニウム塩光開始剤とした場合には、チオキサントン類などが使用できる。これらの増感剤は1種または複数を組み合わせて使用することができる。その添加量はカチオン重合性化合物100質量部に対して0.2〜5質量部の比率、更に好ましくは0.5〜4質量部で含有させるのが好ましい。0.2質量部未満では増感効果が乏しく、5質量部を超えると、増感剤自体の着色や増感剤分解物による着色が問題となる。
増感剤としても用いることができる、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物、カルバゾール誘導体およびチオキサントン誘導体等の具体例としては、以下のような化合物が挙げられる。
多環芳香族化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体が好ましい。置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜18のものが好ましく、特に炭素数1〜8のものが好ましい。アラルキルオキシ基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、特に炭素数7〜8のベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基が好ましい。
これらの増感剤としては、例えば、1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、1−ステアリルオキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、2−ドデシルオキシナフタレン、4−メトキシ−1−ナフトール、グリシジル−1−ナフチルエーテル、2−(2−ナフトキシ)エチルビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1,1′−チオビス(2−ナフトール)、1,1′−ビ−2−ナフトール、1,5−ナフチルジグリシジルエーテル、2,7−ジ(2−ビニルオキシエチル)ナフチルエーテル、4−メトキシ−1−ナフトール、ESN−175(新日鉄化学社製のエポキシ樹脂)またはそのシリーズ、ナフトール誘導体とホルマリンとの縮合体等のナフタレン誘導体、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−メトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−エトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9−イソプロポキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、9−ベンジルオキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、9−(α−メチルベンジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体、1,4−ジメトキシクリセン、1,4−ジエトキシクリセン、1,4−ジプロポキシクリセン、1,4−ジベンジルオキシクリセン、1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等のクリセン誘導体、9−ヒドロキシフェナントレン、9,10−ジメトキシフェナントレン、9,10−ジエトキシフェナントレン等のフェナントレン誘導体などを挙げることができる。これら誘導体の中でも、特に、炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していても良い9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
カルバゾール誘導体としては、カルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−ビニルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール等が挙げられる。
また、チオキサントン誘導体としては、例えば、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン2−クロロチオキサントン等を挙げることができる。
《その他の添加剤》
本発明のインクジェットインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインク包装容器適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、界面活性剤、滑剤、充填剤、消泡剤、ゲル化剤、増粘剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができる。
更に、必要に応じてエステル系溶媒、エーテル系溶媒、エーテルエステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族炭化水素溶媒、含窒素系有機溶媒など少量の溶媒を添加することもできる。
具体例としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、テトラエチレンスルホキシド、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、メチル−イソプロピルスルホン、メチル−ヒドロキシエチルスルホン、スルホラン、或いは、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、β−ラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、イソホロン、シクロヘキサノン、炭酸プロピレン、アニソール、メチルエチルケトン、アセトン、乳酸エチル、乳酸ブチル、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、二塩基酸エステル、メトキシブチルアセテート、等、が挙げられる。これらをインク中に1.5〜30%、好ましくは、1.5〜15%添加するとポリ塩化ビニル等の樹脂記録媒体に対する密着性が向上する。
別の具体例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等が挙げられる。
《インク物性》
本発明のインクにおいては、インク物性は、通常の硬化型インクジェットインクと同様の物性値を有することが好ましい。即ち、粘度は25℃において2〜50mPa・sで、シェアレート依存性ができるだけ小さく、表面張力は25℃において22〜35mN/mの範囲にあること、顔料粒子以外には平均粒径が1.0μmを超えるようなゲル状物質が無いこと、電導度は10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインクとすることが好ましい。コンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
加えて、本発明のインクにおいて、インク物性として更に好ましい形態は、毎分5℃の降下速度で25℃から−25℃の範囲でインクのDSC測定を行ったとき、単位質量あたりの発熱量が10mJ/mg以上の発熱ピークを示さないことである。本発明の構成に従って素材の選定を行うことにより、DSC測定において一定量以上の発熱を抑えることができる。このような構成とすることにより、インクを低温で保存した場合においてもゲルの発生や、析出物の発生を抑えることができる。
《インクの調製方法》
本発明のインクジェットインクは、活性エネルギー線硬化性化合物であるビニルエーテル化合物、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め顔料高濃度の濃縮液を調製しておき、活性エネルギー線硬化性化合物で希釈することが好ましい。通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーが掛からず、多大な分散時間を必要としないので、インク成分の分散時の変質を招き難く、安定性に優れたインクが調製できる。調製されたインクは、孔径3μm以下、更には1μm以下のフィルターで濾過することが好ましい。
《記録媒体》
本発明のインクジェット記録方法に用いる記録媒体としては、従来、各種の用途で使用されている広汎な合成樹脂が全て対象となり、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等が挙げられ、これらの合成樹脂基材の厚みや形状は何ら限定されない。この他にも金属類、ガラス、印刷用紙なども使用できる。
本発明のインクジェット記録方法で用いる記録媒体の一つであるポリ塩化ビニルの具体例としては、SOL−371G、SOL−373M、SOL−4701(以上、ビッグテクノス株式会社製)、光沢塩ビ(株式会社システムグラフィ社製)、KSM−VS、KSM−VST、KSM−VT(以上、株式会社きもと製)、J−CAL−HGX、J−CAL−YHG、J−CAL−WWWG(以上、株式会社共ショウ大阪製)、BUS MARK V400 F vinyl、LITEcal V−600F vinyl(以上、Flexcon社製)、FR2(Hanwha社製)LLBAU13713、LLSP20133(以上、桜井株式会社製)、P−370B、P−400M(以上、カンボウプラス株式会社製)、S02P、S12P、S13P、S14P、S22P、S24P、S34P、S27P(以上、Grafityp社製)、P−223RW、P−224RW、P−249ZW、P−284ZC(以上、リンテック株式会社製)、LKG−19、LPA−70、LPE−248、LPM−45、LTG−11、LTG−21(以上、株式会社新星社製)、MPI3023(株式会社トーヨーコーポレーション社製)、ナポレオングロス 光沢塩ビ(株式会社二樹エレクトロニクス社製)、JV−610、Y−114(以上、アイケーシー株式会社製)、NIJ−CAPVC、NIJ−SPVCGT(以上、ニチエ株式会社製)、3101/H12/P4、3104/H12/P4、3104/H12/P4S、9800/H12/P4、3100/H12/R2、3101/H12/R2、3104/H12/R2、1445/H14/P3、1438/One Way Vision(以上、Inetrcoat社製)、JT5129PM、JT5728P、JT5822P、JT5829P、JT5829R、JT5829PM、JT5829RM、JT5929PM(以上、Mactac社製)、MPI1005、MPI1900、MPI2000、MPI2001、MPI2002、MPI3000、MPI3021、MPI3500、MPI3501(以上、Avery社製)、AM−101G、AM−501G(以上、銀一株式会社製)、FR2(ハンファ・ジャパン株式会社製)、AY−15P、AY−60P、AY−80P、DBSP137GGH、DBSP137GGL(以上、株式会社インサイト社製)、SJT−V200F、SJT−V400F−1(以上、平岡織染株式会社製)、SPS−98、SPSM−98、SPSH−98、SVGL−137、SVGS−137、MD3−200、MD3−301M、MD5−100、MD5−101M、MD5−105(以上、Metamark社製)、640M、641G、641M、3105M、3105SG、3162G、3164G、3164M、3164XG、3164XM、3165G、3165SG、3165M、3169M、3451SG、3551G、3551M、3631、3641M、3651G、3651M、3651SG、3951G、3641M(以上、Orafol社製)、SVTL−HQ130(株式会社ラミーコーポレーション製)、SP300 GWF、SPCLEARAD vinyl(以上、Catalina社製)、RM−SJR(菱洋商事株式会社製)、Hi Lucky、New Lucky PVC(以上、LG社製)、SIY−110、SIY−310、SIY−320(以上、積水化学工業株式会社製)、PRINT MI Frontlit、PRINT XL Light weight banner(以上、Endutex社製)、RIJET 100、RIJET 145、RIJET165(以上、Ritrama社製)、NM−SG、NM−SM(日栄化工株式会社製)、LTO3GS(株式会社ルキオ社製)、イージープリント80、パフォーマンスプリント80(以上、ジェットグラフ株式会社製)、DSE 550、DSB 550、DSE 800G、DSE 802/137、V250WG、V300WG、V350WG(以上、Hexis社製)、Digital White 6005PE、6010PE(以上、Multifix社製)等が挙げられる。
また、可塑剤を含有しない樹脂基材または非吸収性の無機基材を構成要素とする記録媒体としては、下記の各種基材を構成要素として、1種類の基材単独で、または複数の種類の基材を組み合わせて、使用をすることができる。本発明に用いられる可塑剤を含有しない樹脂基材としては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、可塑剤を含有しない硬質ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は可塑剤を含有していないことが特徴であるが、その他の厚み、形状、色、軟化温度、硬さ等の諸特性について特に制限はない。
本発明に用いられる記録媒体として好ましくは、ABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、POM樹脂、PA樹脂、PI樹脂、可塑剤を含有しない硬質PVC樹脂、アクリル樹脂、PE樹脂、PP樹脂である。さらに好ましくはABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、PA樹脂、可塑剤を含有しない硬質PVC樹脂、アクリル樹脂である。
また、本発明に用いられる非吸収性の無機基材としては、例えば、ガラス板、鉄やアルミニウムなどの金属板、セラミック板等が挙げられる。これらの無機基材は表面にインク吸収性の層を有していないことが特徴である。これらの非吸収性の無機基材はその他の厚み、形状、色、軟化温度、硬さ等の諸特性について特に制限はない。
《インクジェット記録方法》
本発明のインクジェットインクを吐出して画像形成を行って、本発明の印刷物を作成する際に使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをインクジェットノズルより記録媒体上に吐出して、次いで紫外線などの活性エネルギー線を照射してインクを硬化させる記録方法である。
(インク着弾後の活性エネルギー線照射条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性エネルギー線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1.0秒の間に活性エネルギー線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。
高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いこと好ましい。
活性エネルギー線の照射方法は、特に限定されず、例えば、下記の方法で行うことができる。
特開昭60−132767号に記載のヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査し、照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われ、さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化が完了する方法、あるいは米国特許第6,145,979号に記載の光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外線を照射する方法を挙げることができる。
本発明のインクジェット記録方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
また、活性エネルギー線の照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性エネルギー線を照射し、かつ、全印字終了後、さらに活性エネルギー線を照射する方法も好ましい態様の1つである。
活性エネルギー線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体上にインクが着弾し、活性エネルギー線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが、記録媒体のカール、皺、記録媒体の質感変化、などの面から好ましい。
尚、ここでいう「総インク膜厚」とは、記録媒体に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
(インクの加熱および吐出条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを加熱した状態で、活性エネルギー線を照射することが、吐出安定性の面から、好ましい。
加熱する温度としては、35〜100℃が好ましく、35〜80℃に保った状態で、活性エネルギー線を照射すること、吐出安定性の点でさらに好ましい。
インクジェットインクを所定の温度に加熱、保温する方法として特に制限はないが、例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系や、フィルター付き配管、ピエゾヘッド等を断熱して、パネルヒーター、リボンヒーター、保温水等により所定の温度に加熱する方法がある。
インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃が好ましく、さらに設定温度±2℃が好ましく、特に設定温度±1℃が、吐出安定性の面から好ましい。
各ノズルより吐出する液滴量としては、記録速度、画質の面から2〜20plであることが好ましい。
次いで、本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
以下、記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。
図1は記録装置の要部の構成を示す正面図である。
記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。
この記録装置1は、記録媒体Pの下にプラテン部5が設置されている。
プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録媒体Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。
その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
記録媒体Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行う。
ヘッドキャリッジ2は記録媒体Pの上側に設置され、記録媒体P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。
ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行っているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録媒体Pに向けて吐出する。
記録ヘッド3は記録媒体Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録媒体Pの他端まで移動するという走査の間に、記録媒体Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
上記走査を適宜回数行い、1領域の着弾可能領域に向けて活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの吐出を行った後、搬送手段で記録媒体Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行いながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行う。
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段および搬送手段と連動して記録ヘッド3か活性エネルギー線硬化型インクジェットインクらを吐出することにより、記録媒体P上に活性エネルギー線硬化型インクジェットインク滴の集合体からなる画像が形成される。
照射手段4は、例えば特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプおよび特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。
ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザ、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。
特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管および殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行うことができ好ましい。
ブラックライトを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録媒体Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録媒体Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録媒体Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。
また、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にするとさらに好ましい。
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプまたはフィルターを交換することで適宜変更することができる。
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側、すなわち、記録媒体Pが搬送される方向のヘッドキャリッジ2の後部には、同じく記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。
照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2および照射手段4は固定され、記録媒体Pのみが、搬送されて、インク出射および硬化を行って画像形成を行う。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《インクの調製》
〔顔料分散体の調製〕
表1、表2に記載の顔料、顔料分散剤A(アジスパーPB824、味の素ファインテクノ製)及びトリエチレングリコールジビニルエーテル(VE1)を、共にサンドミルに入れて分散を4時間行い、顔料分散体1〜5を得た。
表2に記載の顔料、顔料分散剤A(アジスパーPB824、味の素ファインテクノ製)及びOXT221(オキセタン化合物、東亞合成社製)を、共にサンドミルに入れて分散を4時間行い、顔料分散体6を得た。
〔各インクの調製〕
次いで、表1、表2に記載の様に、上記調製した各顔料分散体と、カチオン重合性化合物、ラジカル重合禁止剤(RS−1〜RS−8)、光カチオン重合開始剤(PI−1〜PI−4)、増感剤(DEA)を所定量添加、溶解して、最後に0.85μmのメンブレンフィルターにてろ過して、インク1〜36を調製した。
尚、上記インク1〜36の調製に用いた顔料、分散剤は、予めイオン交換水で洗浄を行った後、脱水乾燥したものを使用した。また、各カチオン重合性化合物は、予め蒸留精製を行った。また、光カチオン重合開始剤は、メタノールによる洗浄とイオン交換水洗浄を複数回行い、蒸発乾固させたのち、熱酸発生量(光酸発生剤の0.02mol/Lジオキサン溶液を大気圧下で、20時間リフラックスし、調製直後の酸発生剤の0.02mol/Lジオキサン溶液とリフラックス後のジオキサン溶液の各々について、ジオキサン溶液1gと純水4gを混合して、密栓状態で30分静置後、上澄みである水層のpHを25℃の液温で測定し、[H+]濃度を計算で求め、調製直後の酸発生剤の0.02mol/Lジオキサン溶液の[H+]濃度−リフラックス後のジオキサン溶液の[H+]濃度を、熱酸発生量とした。)を測定したものを使用した。上記インクは、いずれも、ハロゲンイオン含有量(塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオンの合計値)は、20μg/g以下であった。
上記調製したインク1〜36の構成を、表1、表2に示す。
なお、表1、表2に略称で記載した各インクの調製に用いた各添加剤の詳細は以下の通りである。また、表1、表2に数値で記載した各添加剤の添加量は、質量部を表す。
(顔料)
PY:C.I.ピグメントイエロー150(表面処理、精製品)
PR:C.I.ピグメントレッド122(表面処理、精製品)
PB:C.I.ピグメントブルー15:4(表面処理、精製品)
CB1:カーボンブラック(表面処理、精製品)
Ti:酸化チタン(表面処理、精製品)
(顔料分散剤)
分散剤A:高分子分散剤PB824(味の素ファインテクノ製)
(カチオン重合性化合物)
〈ビニルエーテル化合物〉
VE−1:トリエチレングリコールジビニルエーテル(精製品、25℃粘度は3.4mPa・s)
VE−2:ジエチレングリコールジビニルエーテル(精製品、25℃粘度は2.2mPa・s)
VE−3:エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートトリビニルエーテル(精製品、25℃粘度は39.8mPa・s)
〈その他のカチオン重合性化合物〉
OXT:OXT221、オキセタン化合物(東亞合成社製、25℃粘度は13mPa・s)
EP:CEL2021P、脂環式エポキシ化合物(ダイセル化学社製,25℃粘度は250mPa・s)
(ラジカル重合禁止剤)
RS1:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル フリーラジカル
RS2:1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル
RS3:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール
RS4:IRGANOX1076(ヒンダードフェノール系化合物、チバ・ジャパン社製)
RS5:ハイドロキノン
RS6:フェノチアジン
RS7:p−メトキシフェノール
RS8:TINUVIN123(ヒンダードアミン系化合物、チバ・ジャパン社製)
(光カチオン重合開始剤)
PI−1:WO2004/113396号明細書の実施例に記載の製造例1の(3)に従って、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートを調製した。次いで、メタノールによる洗浄とイオン交換水洗浄を複数回行い不純物を低減して蒸発乾固させた後、プロピレンカーボネートに溶解して50%溶液とした。このPI−1の熱酸発生量を、前記方法に従って測定した結果、5.0×10−5mol/Lであった。
PI−2:特開2005−146001号公報の実施例(段落0041)に記載の方法に従って、ジ(4−メトキシフェニル)モノ(4−メチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェートを調製した。次いで、メタノールによる洗浄とイオン交換水洗浄を複数行い不純物を低減して蒸発乾固させた後、プロピレンカーボネートに溶解して50%溶液とした。このPI−2の熱酸発生量を、前記方法に従って測定した結果、1.0×10−4mol/Lであった。
PI−3:特表2005−501040号公報の実施例(段落0052)に記載の方法に従って、9−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)チアントレニウムヘキサフルオロホスフェートを調製した。メタノールによる洗浄とイオン交換水洗浄を複数回行い不純物を低減して蒸発乾固させた後、プロピレンカーボネートに溶解して50%溶液とした。このPI−3の熱酸発生量を、前記方法に従って測定した結果、8.0×10−5mol/Lであった。
PI−4:ダウ・ケミカル社製のUVI−6992(ビス−[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェートと(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの8:2混合物)の50%プロピレンカーボネート溶液をPI−4とした。このPI−4の熱酸発生量を、前記方法に従って測定した結果、7.0×10−3mol/Lであった。
(増感剤)
DEA:ジエトキシアントラセン
《インクの評価》
上記調製した各インクについて、下記の方法に従って各評価を行った。
(ノズル撥インク性の評価)
コニカミノルタIJ社製のピエゾヘッド512SHに使用している撥インク性を有するノズルプレート部材を、各インクに70℃で10日間浸漬したのち、撥インク性が保たれているかを目視確認し、下記の基準に従って、ノズル撥インク性を評価した。撥インク性とは、70℃で10日間浸漬後、浸漬状態で室温25℃に戻した後、ノズルプレートをインクから垂直に引き上げて取り出し、即座にノズルプレートを45℃に傾斜させた状態で保持し、インクがノズルプレートから流れ落ちて除去されるまでの時間を目視で確認した。尚、実用時において、吐出安定性を確保するためには、上記の撥インク性が、90秒以内であることが必要である。
◎:インクの浸漬保存後の撥インク性は、45秒以内である。
○:インクの浸漬保存後の撥インク性は、90秒以内である。
△:インクの浸漬保存後の撥インク性は、90秒より長く300秒以内である。但し、新品のインクとウエスを用いてノズルプレートを拭き取るクリーニング動作により、90秒以内の撥インク性に回復する。
×:インクの浸漬保存後の撥インク性は、300秒以上経過してもインクがノズルプレート上に残留する状態である。新品のインクとウエスを用いてノズルプレートを拭き取るクリーニング動作を実施しても回復しない。
(高温保存性の評価)
各インクをガラス瓶に充填、密封した後、70℃で7日間保存し、次いで、各インクの25℃における粘度を振動式粘度計(VISCOMATE VM−1G−MH、YAMAICHI.CO.LTD製)を用いて測定し、下記の基準に従って高温保存性を評価した。
○:高温処理前後での粘度変動率が、5%未満である
△:高温処理前後での粘度変動率が、5%以上、10%未満である
×:高温処理前後での粘度変動率が、10%以上である
《形成画像の評価》
(硬化速度の評価)
25℃、70%RHの環境下で、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、各インクを装填したコニカミノルタIJ社製のピエゾヘッド512SHを用いて膜厚7μmのベタ画像を印字し、高圧水銀灯により15、40、100mJ/cm2の各光量を照射して、硬化膜を形成した。硬化直後の膜表面を触指し、表面タック(粘着性)の有無を確認し、下記の基準に従って硬化性の評価を行った。
○:タックがまったく認められない
△:僅かにタックが認められる
×:明らかなタックが認められる
(硬化膜柔軟性の評価)
コニカミノルタIJ社製のピエゾヘッド512SH及び365nmのLEDを搭載したUVインクジェットプリンタに各インクを装填し、ターポリン基材上に200%のベタ画像を作成した後、25℃、55%RHの環境下で画像形成面を外側にして20回の折り曲げ試験を行い、下記の基準に従って硬化膜柔軟性を評価した。
○:強く折り曲げてもクラックが入らない
△:強く折り曲げると、僅かにクラックが入る
×:強く折り曲げるとクラックが入り、折り曲げ部が白くなる
(耐候性の評価)
塩化ビニルフィルム上に、各インクを装填したコニカミノルタIJ社製のピエゾヘッド512SH及び365nmのLEDを搭載したUVインクジェットプリンタを用い、厚さ3μmとなる条件でインクを塗布し、高圧水銀灯で100mJの紫外線を照射して硬化膜を作成した後、促進耐候試験機Q−Lab Corporation製QUVを用いて、紫外線照射と加湿・結露のサイクルを1ヶ月間行った後、硬化膜の状態を目視観察し、下記の基準に従って耐候性を評価した。
○:硬化膜に変化は見られない
△:僅かに硬化膜の光沢変動が見られる
×:硬化膜が洗い流され、濃度が低下した
以上により得られた結果を、表3に示す。
表3に記載の結果より明らかなように、本発明のインクは、保存安定性(インクの増粘、インクジェットノズルの撥インク性)に優れると同時に、硬化性、柔軟性、耐候性に優れていることが明らかである。反面、比較例において、ビニルエーテル化合物とラジカル重合禁止剤を含有し、熱酸発生量が本発明範囲上限外の光重合開始剤を用いたインク、や、ビニルエーテル化合物と熱酸発生量が本発明範囲の光重合開始剤を含有し、ラジカル重合禁止剤を含有しないインク、では、保存安定性が甚だ劣っていた。また、ビニルエーテル化合物以外の従来既知のカチオン重合性化合物を用いたインクでは、硬化膜の柔軟性、耐候性が、甚だ不十分であった。
尚、調製した本発明インクは、いずれも印字、硬化中の臭気が少なく、印刷物の臭気も少ないものであった。