JP5959214B2 - フィチン酸の変色防止法 - Google Patents
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Description
その一つに、フィチン酸水溶液に2以上のカルボキシル基を有する有機酸、ヒドロキシカルボン酸、ホウ酸及びそれらの塩の少なくとも一種を添加する方法が記載された文献(特許文献1)がある。この文献には、2以上のカルボキシル基を有する有機酸として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、琥珀酸、フマル酸、乳酸、マロン酸、シュウ酸が挙げられている。しかし実験例によれば、50%フィチン酸水溶液に10%の有機酸を加えたもの(即ちフィチン酸に対してクエン酸を20%添加したもの)を40℃で保存した場合、12日間は色の変化が無かったと記載されているが、本願発明者らの追試によれば、12日間でかなりの褐変をみた。従って、この方法も或る程度のフィチン酸水溶液の安定化効果が認められるが、実用化という点では不十分である。
また、フィチン酸水溶液に、クエン酸ナトリウムをフィチン酸に対して同重量添加したものが、2週間は変色防止効果があるものの、8週間では変色したとの実験結果が記載された文献(特許文献2)が公開されている。本願発明者らが行ったこの実験の追試によれば、この液は4週間後にはかなり褐変し、8週間後には黒褐色に変化するとともに、黒色の濁りが生じた。
本発明者らは、これまでにフィチン酸水溶液の着色防止に効果があるとされる物質をフィチン酸水溶液に添加して、その効果を検証したが、いずれも2ヶ月以内にかなりの着色が見られ、食用に供し得ないという結果が得られた。またこのフィチン酸水溶液の着色変化は、温度の上昇とともに加速されることも判明した。
本発明者らは、これらの実験を通して、フィチン酸を水溶液として存在させておく限り、常温(25℃)ではフィチン酸が分解、重合、不純物との反応等により変質して、褐変や沈殿が生ずるものと思い、フィチン酸水溶液をデンプンやデキストリンのような食品に用いられる粉末状賦形剤と混合して吸着させれば褐変が防止できるのではないかと考えた。そこで、フィチン酸50%水溶液を10倍量のデキストリンに混合吸着させて白色粉末状の組成物を作成し、遮光瓶に収容して常温(25℃)で保存したところ、粉体は2週間で黄色に変化し、5週間で褐色に変化した。これを水に溶かしたところ、液は褐色を呈した。
このフィチン酸と粉末状の酢酸ナトリウムの密着状態は、酢酸ナトリウムの粉末の表面にフィチン酸水溶液が直接接触した時両者の接触面で何らかの化学的結合が生じ、その状態で乾燥されることによりフィチン酸が水溶液の状態で進行する分解、重合、副反応などの化学変化が抑制されるものと考えられる。
このフィチン酸と酢酸ナトリウム粉末が密着した粉末状組成物は、フィチン酸と酢酸ナトリウムを溶解した水溶液を乾燥することによっても得られる。
さらに、フィチン酸と粉末酢酸ナトリウムを密着させた本発明の粉末状フィチン酸組成物は、食品に添加したとき、酢酸ナトリウムに由来する酢酸臭が抑制され、食品に対する優れた風味品質改良効果を得ることも確認できた。そして、この組成物に乳化剤を併用することにより食品の味質、風味をより改善し、さらに有機酸およびその塩類を添加することにより食品に対する品質改良性をより高めることもできることを確認した。
本発明はこれらの知見を基に、更に研究を重ね完成したものである。
(1)フィチン酸を酢酸ナトリウム粉末に密着させた状態で含有する安定化粉末状フィチン酸組成物、
(2)酢酸ナトリウム粉末に対するフィチン酸の使用量が、0.003〜3.0重量倍である(1)記載の安定化粉末状フィチン酸組成物、
(3)さらに乳化剤を含有させてなる(1)または(2)記載の安定化粉末状フィチン酸組成物、
(4)乳化剤がグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれた一種または二種以上である(3)記載の安定化粉末状フィチン酸組成物、
(5)さらに酸類またはその塩類を含有させてなる(1)〜(4)記載の安定化粉末状フィチン酸組成物、
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の安定化粉末状フィチン酸組成物を含有する食品の風味品質改良剤、
(7)食品の風味品質改良剤が獣肉、鳥肉、魚介類、植物蛋白、発酵食品、油脂または油脂含有食品の臭み抑制剤である(6)記載の食品の風味品質改良剤、
(8)フィチン酸水溶液を酢酸ナトリウムの粉末と混合し吸着させるか、フィチン酸と酢酸ナトリウムの溶液を乾燥粉末化する安定化粉末状フィチン酸組成物の製造法、
である。
フィチンを酸処理して得られた新鮮なフィチン酸の50重量%水溶液はそのまま、または更に水で希釈して酢酸ナトリウムの粉末に加えることができる。
混合時フィチン酸水溶液中のフィチン酸が50%を超える高濃度である場合、飴状となって均一に分散しにくい場合がある。従って50%以下の水溶液として酢酸ナトリウム粉末と混合攪拌して吸着させ、粉末状にするのが望ましい。また、酢酸ナトリウム粉末を攪拌しながらフィチン酸水溶液を噴霧して加えるとフィチン酸を均一に吸着させることができる。
酢酸ナトリウム粉末にフィチン酸水溶液を混合する際、粉末状酢酸ナトリウムとフィチン酸との接触により熱が発生し、冷却後に安定な粉末となる。この混合の際に高い熱が発生すると組成物が変色することがあるため、冷却しながら混合すると変色せず、且つ短時間で安定な粉末を得ることができる。この混合物の冷却装置は特に制限はなく、例えば混合機自体に冷却装置を付けて攪拌しながら、混合槽の内壁より冷却しても良いし、混合槽の内部圧を陰圧状態にし、水蒸気の蒸発を促進させて気化熱を奪うことにより温度の上昇を抑えてもよい。また、攪拌しながら冷風を混合槽に送風し冷却しても良い。その際の混合物の温度を、通常0〜80℃、好ましくは10〜60℃、より好ましくは10〜50℃になるように冷却すると良い。
本発明の安定化粉末状フィチン酸組成物は、フィチン酸と酢酸ナトリウムを溶解した水溶液を減圧乾燥または、噴霧乾燥機により噴霧乾燥することによっても得ることができる。
また、噴霧方式は高圧ノズル、二流体ノズル、加圧二流体ノズル或いはディスク方式いずれの方法でも良い。この場合の噴霧乾燥槽も吹き込み温度として通常0〜150℃、好ましくは0〜120℃、より好ましくは0〜100℃になるように温度の調節を行うのがよい。更に減圧乾燥を合わせるのが好ましい。また、還元糖、還元澱粉分解物等を賦形剤として用いることもできるが、粉末化において高熱をかけない方法ならば特に制限はなく、凍結乾燥法等の方法でも良い。また、粉末化においては、これらいかなる組合せにより粉末化しても良い。
本発明の組成物中の酢酸ナトリウムに対するフィチン酸の重量比は、通常0.003〜3.0重量倍、好ましくは0.009〜2.5重量倍、より好ましくは0.018〜1.8重量倍である。
本発明の安定な粉末状フィチン酸組成物は、粉末状態、特に乾燥状態で保存する限り、少なくとも6ヶ月は殆ど着色変化がない。そして用時水に溶かせば、微黄色から淡黄色の水溶液となり、特に食品の風味品質改良効果も調製時に比して、遜色がない。
乳化剤はその種類により常温で粉末状、液体状、ペースト状などのものがあるが、本発明の風味品質改良剤に乳化剤を配合する際に均一に配合できるならば、いかなる添加方法でも良い。例えば、液状またはペースト状の乳化剤は、これをフィチン酸水溶液に加え、常温または加温して酢酸ナトリウムに吸着させても良い。粉末状の乳化剤はフィチン酸水溶液を吸着させた酢酸ナトリウム粉末にそのまま混合しても良い。要するに、フィチン酸と酢酸ナトリウム粉末が密着した粉末製剤に乳化剤が均一に含有された状態であれば良い。
好ましくはグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルである。より好ましくはグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルである。
本発明で用いる乳化剤の脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの炭素数C8〜C20のものとリシノール酸であるが、好ましくはC10〜C18とリシノール酸、より好ましくはC12〜C16とリシノール酸のものである。
乳化剤の使用量は、本発明の粉末状フィチン酸組成物に対して0.03〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%である。
油脂の使用量は、乳化剤の重量に対して通常0.1〜5重量倍、好ましくは0.2〜4重量倍、より好ましくは0.3〜3重量倍である。
用いることができる有機酸または、及びその塩類としては、例えばフマル酸、フマル酸一ナトリウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸水素カリウム、酒石酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、フェルラ酸、アジピン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸(グルコノデルタラクトンを含む)グルコン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等があげられる。
有機酸及びその塩類の中で好ましくはフマル酸、フマル酸一ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、フェルラ酸、アジピン酸、乳酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸(グルコノデルタラクトンを含む)グルコン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等があげられる。
より好ましくはフマル酸、フマル酸一ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸一ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸(グルコノデルタラクトンを含む)グルコン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等である。
有機酸または、及びその塩類の本発明の粉末状フィチン酸組成物に対する添加量は通常0.1〜80重量%、好ましくは0.2〜75重量%である。
粉乳及びその代替品の本発明の粉末状フィチン酸組成物に対する添加量は通常1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
本発明の風味品質改良剤のpHは1%の水溶液として通常4.5〜11.0、好ましくは5.0〜10.5、より好ましくは5.2〜10.0である。
本発明の風味品質改良剤及びこれを含む食品は、目的に応じ各種の添加物、例えばグリシン、DL−アラニン、グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸、塩化カリウムや食塩等の調味料、酢酸や醸造酢等のpH調整剤、甘味料、糖類、サトウキビ抽出物、糊料、酸味料、油脂、香辛料及びその抽出物、エタノール、ポリリジン、プロタミン、ナイシン、ホップ抽出物、リゾチーム等の抗菌剤、保存料、各種ビタミン、オルトリン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、栄養強化剤や酸化防止剤等を製剤に加えてもよいし、製剤使用時に併用してもよい。
粉末製剤(1−1)
無水酢酸ナトリウム粉末140gを直径20cm、上下2枚の回転撹拌翼を有する攪拌機に収容し、攪拌しながら30%フィチン酸水溶液60gを約15分かけて少量ずつ加え、均一に吸着させた。混合物は吸着の発熱反応により40〜60℃となるが、撹拌を続けるうちに次第に温度が低下した。冷却後、混合物を軽く粉砕し、目開2×2mm篩で篩過して粉末製剤(1−1)を得た。
粉末製剤(1−2)
上記(1−1)と同様の操作により、無水酢酸ナトリウム粉末172gを攪拌機内で攪拌しながら50%のフィチン酸水溶液28gを少量ずつ加え、撹拌、吸着、冷却後粉砕し、篩過して粉末製剤(1−2)を得た。
粉末製剤(1−3)
上記(1−1)と同様の操作により、無水酢酸ナトリウム粉末195gと30%フィチン酸水溶液5gから粉末製剤(1−3)を得た。
粉末製剤(1−4)
乳化剤[ヘキサグリセリン縮合リシノレート(理研ビタミン株式会社製;商品名:ポエムPR−300)]4g及び30%フィチン酸水溶液27.4gを加温しながら分散、混合して得た溶液を、上記(1−1)と同様の操作で無水酢酸ナトリウム粉末168.6gに撹拌しながら加え、吸着、冷却後粉砕、篩過して粉末製剤(1−4)を得た。
粉末製剤(1−5)
無水酢酸ナトリウム30gと50%フィチン酸水溶液60gをフラスコ内で混合溶解し(発熱)、これをロータリーエバポレーターに装着する。ロータリーエバポレーターの冷却管には冷水を循環し減圧下、回転攪拌しながらフラスコを60℃の温浴中で2時間乾燥、粉砕、篩過して粉末製剤(1−5)を得た。
粉末製剤(1−6)
無水酢酸ナトリウム3gと30%フィチン酸水溶液25gをフラスコ内で混合溶解する(発熱)。さらにこれに還元澱粉加水分解物(松谷化学工業株式会社製;商品名:H・パインデックス)を22g溶解し、ロータリーエバポレーターに装着する。ロータリーエバポレーターの冷却管には冷水を循環し減圧下、回転攪拌しながらフラスコを60℃の温浴中で2時間乾燥、粉砕、篩過して粉末製剤(1−6)を得た。
粉末製剤(1−7)
30%フィチン酸水溶液2.5Kg、無水酢酸ナトリウム0.3Kg及び還元澱粉加水分解物(松谷化学工業株式会社製;商品名:H・パインデックス)2.2Kgを水4.0Kgに溶解し(僅かに発熱)、噴霧溶液を調製した。これを吹き込み温度100℃で噴霧乾燥し、粉末製剤(1−7)を得た。
ヘキサグリセリン縮合リシノレート(理研ビタミン株式会社製;商品名:ポエムPR-300)
テトラグリセロール脂肪酸エステル(阪本薬品工業株式会社製;商品名:SYグリスターCR-310)
グリセリンモノ脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製;商品名:ポエムP-200)
デカグリセロールデカ脂肪酸エステル(阪本薬品工業株式会社製;商品名:SYグリスターDA0-7S)
デカグリセロール脂肪酸エステル(阪本薬品工業株式会社製;商品名:SYグリスターOE-750)
蒸留ジグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製;商品名:ポエムDS-100A)
デカグリセリンモノラウレート(理研ビタミン株式会社製;商品名:ポエムJ-0021)
ジグリセリンモノミリステート(理研ビタミン株式会社製;商品名:ポエムDM-100)
ヘキサグリセロールトリ脂肪酸エステル(阪本薬品工業株式会社製:商品名:SYグリスターTS-5S)
下記表4(レシピ)の材料および表5に示す調製6ヶ月後の製剤を混合、練合し、1個50gのハンバーグを成形した。これを250℃に予熱したオーブンで10分間加熱した。調理後、熟練したパネラー(10名)による官能テストを行った。
ハンバーグ調理直後に行ったパネラー(10名)による官能テストの結果を下記に示す。
(注2〜7):残りのパネラーはいずれも製剤例(3−15)と区別が付かなかった。
以上より、本発明では、比較例群に比して(I)群、及び(III)群で顕著な豚臭抑制効果が認められた。また(II)群では、(I)群及び(III)群に比して、より高い豚臭抑制効果が認められた。更に、(II)群に比して(IV)群では、極めて顕著な豚臭抑制効果が得られるとともに、良好な風味改良効果が認められた。即ち効果の順序は、比較例<(I)<(III)<(II)<(IV)となった。
前記表4(レシピ)に示す材料と表7に示す調製後6ヶ月の製剤を混合、練合して、1個50gのハンバーグを成形した。250℃に予熱したオーブンで10分間加熱した。調理後、30℃の恒温条件下にてこれら検体を保存し、表8に記載した24時間後ならびに48時間後における検体中の生菌数(cells/g)を観察した。
また、比較例4−2では、やや酸味及び酸臭が認められた。一方、本発明の実施例4−3では、酸味及び酸臭が認められず、風味品質ともに良好であった。
下記表9(レシピ)に従って煮汁を調製し、表10記載の調製後6ヶ月の製剤を煮汁に溶かして添加した。これに生サバの切り身を入れ弱火で加熱し、沸騰後、更に弱火で5分間加熱した。調理直後、熟練したパネラー(10名)にてサバの煮付けの風味の官能テストを実施した。その結果を表11に記載した。
(注2〜4):残りのパネラーはいずれも、サバの生臭み抑制効果は製剤例(5−15)と同程度であった。
(注5):残りのパネラーは、サバの生臭み抑制、風味改質効果は共に製剤例(5−23)と同程度であった。
以上より、本発明では比較例群に比して(I)群で顕著なサバの生臭み抑制効果が認められた。また、(I)群に比して(II)群では極めて顕著なサバの生臭み抑制効果が認められた。(III)群では(I)群に比して風味改良効果が認められた。更に、(II)、(III)群に比して(IV)群では、極めて顕著なサバの生臭み抑制効果が得られるとともに、良好な風味改良効果が認められた。
下記表12(レシピ)の配合割合で練り合わせ、これに表13記載の調製後6ヶ月の各製剤を同表に示す量でそれぞれ均一に練り込み成形後、85〜90℃の温度条件下、10分間蒸し上げた。調理後、該検体を自然冷却し、熟練したパネラー(10名)にてイワシの蒸団子の風味について官能テストを実施した。その結果を表14に掲げる。
イワシの蒸団子調理直後に行ったパネラー(10名)による官能テスト結果は下記の通りであった。
表15(レシピ)に示す材料を混合し、これに表16記載の調製後6ヶ月の製剤を添加し、ケーシング袋に1個50gずつ流し入れて口を閉じた。その後、それらケーシング袋を80〜85℃の湯浴で25分間加熱した。加熱後、冷却しこれらを25℃にて保存した。調理直後、熟練したパネラー(10名)にてケーシング玉子の風味品質の程度等について官能テストを実施した。その結果を表17に記載した。更に、ケーシング玉子の保存効果についても検討し、その結果を表18に記載した。
下記表19に示す製剤を用いて1重量%水溶液を調製した。この液250g中に、2mmの厚さにスライスしたキャベツ50gを10分間浸漬した後水切りし、10℃にてこれらを表20に記載の時間保存し、熟練したパネラー(10名)により変色の程度およびキャベツの食感を観察・確認した。その結果を表20に掲げた。
24時間及び48時間経過後では、製剤例(8−1)を除く検体では変色を認めなかった(10名)。一方、120時間経過後では、フィチン酸を含む製剤を使用した製剤例(8−3)、(8−4)、(8−5)、及び(8−6)で変色を認めなかった(10名)ものの、フィチン酸を含まない製剤を使用した製剤例(8−2)ではやや変色することがわかった(9名)。更に、食感については120時間経過後における製剤例(8−3)、(8−4)、(8−5)、及び(8−6)ではキャベツ繊維の好ましい歯切れ感(シャキシャキ感)が保持されていたが、製剤例(8−2)では製剤(8−3)、(8−4)、(8−5)、及び(8−6)に比してシャキシャキ感が劣っていた。
また、144時間経過後では、製剤例(8−2)では変色がかなり進むことがわかったが、製剤例(8−3)、(8−4)、(8−5)、及び(8−6)では極僅しか変色していなかった(10名)。
以上より、表20に記載した製剤の千切りキャベツに対する変色抑制効果及び品質改良効果は、10℃144時間保存条件下において製剤例(8−6)≒(8−5)≒(8−4)≒(8−3)>(8−2)≫(8−1)の順に得られることが示された(10名)。
1cm程度の厚みにカットした牛レバー40gを検体とした。調製後6ヶ月の表21に記載の製剤を同表記載の添加量(重量%)にて水100gに添加・混合し、4℃の条件下、0分、10分、20分、30分、及び1時間、浸漬した後、検体を液切りした。これら検体を250℃にて3分30秒間加熱した後、冷却し、検体の臭い・風味を熟練したパネラー(10名)が比較、評価した。その結果を表22に掲げた。
(注2)他のパネラーのうち、1名は製剤例(9−1)(浸漬時間:20分)の検体に比して、血生臭さ、及び血の味に対する抑制傾向を認めなかった。
(注3)他のパネラーは、製剤例(9−3)(浸漬時間:10分)に比して血生臭さ、及び血の味の抑制を認めなかった。
(注4)他のパネラーは、製剤例(9−5)(浸漬時間:1時間)の検体に比して血生臭さ、及び血の味の抑制を製剤例(9−5)と同程度認めるも、やや塩味を感じた。
以上より、表21に記載した各製剤の各濃度における風味品質改良効果は、本発明実施例3の製剤(P)の濃度依存的に得られることがわかった。
調製後6ヶ月の下記表23(レシピ)の配合割合(重量%)で材料を充分に練り合わせ、これに表24記載の各製剤を同表に示す割合でそれぞれ均一に練り込んで1個7.0gの肉団子を成形した。これを85〜90℃の温度条件下、10分間蒸し上げた。調理直後、熟練したパネラー(10名)が大豆蛋白入りの鶏肉蒸し団子の風味等について、官能テストを実施した。その結果を表25に掲げる。
クッキーを下表26に示すレシピの材料を充分に混合・撹拌し、これに対して12ヶ月保存した表27に示す製剤を同表に示す割合(重量%)で均一になるように添加・混合してクッキーの種とした。
クッキーの種(およそ7g/枚)を170℃のオーブンにて20分間加熱調理した。冷却後、検体をポリ袋に小分けし、室温にて保存した。2週間後、及び4週間後にこれら検体の風味を熟練したパネラー(10名)が比較、評価した。その結果を表28に示す。
以上より、表27記載各製剤のクッキーに対する風味品質改良効果は、製剤無添加(11−1)のクッキーでは経時的に油脂の劣化臭が強く認められた。一方、本発明実施例3の製剤(Q)(11−2)、及び(11−3)を同表の割合(重量%)で添加した場合、添加量に応じて油脂に対する顕著な劣化防止効果が認められた。
貝類特有の生臭さ・泥臭さに対する調製後6ヶ月の表29に記載の製剤の効果を下記要領にて比較した。
充分に水洗したしじみ30gを1検体とした。表29記載の各製剤と食塩を同表に示す割合(重量%)で水80gに添加・混合し、中火で4分間加熱した。冷却後、各検体溶液、及びしじみの身の臭いを熟練したパネラー(10名)が比較・評価した。結果を表30に示す。
(注2)他のパネラーは、製剤例(12−2)に比して同程度の臭いを認めた。
以上より、表29各製剤のしじみのすまし汁に対する風味品質改良効果は、本発明実施例3の製剤(Q)>本発明実施例3の製剤(R)≫比較例製剤(3)≧比較例製剤(2)≒比較例製剤(1)の順に得られることがわかった。
冷凍臭、及び貝類特有の生臭さ・泥臭さに対する表31記載製剤の効果を下記要領にて比較した。
解凍したあさり30gを1検体とした。調製後6ヶ月保存した下表31記載の各製剤と食塩を同表に示す割合(重量%)で水90gに添加・混合し、中火で5分間加熱した。冷却後、各検体溶液、及びの身の臭いを熟練したパネラー(10名)が比較・評価した。結果を表32に示す。
(注2)他のパネラーは、製剤例(13−1)、及び(13−2)に比して加熱後の検体溶液の臭い、及び検体の臭いのいずれでも、僅かに生臭さの抑制を認めた。
以上より、表31各製剤の冷凍あさり(あさり汁)に対する風味品質改良効果は、本発明実施例3の製剤(S)>本発明実施例3の製剤(R)≫比較例製剤(4)>比較例製剤(2)≒比較例製剤(1)の順に得られることがわかった。
冷凍いか特有の生臭み及び冷凍臭に対する表33記載製剤の効果を比較するために、下記要領にて冷凍いかを調理した。
冷凍いかを流水で解凍した後、2cm×2cm程度の大きさにカットし、30gを1検体とした。調製後6ヶ月の下表33記載の製剤と食塩を同表に示す割合(重量%)で水60gに添加・混合し、中火で4分30秒間加熱した。冷却後、各検体を液部と固形部に分け、それぞれの部分の臭いを熟練したパネラー(10名)が比較、評価した。結果を表34に示す。
(注2)他のパネラーは、製剤例(14−1)、及び(14−2)に比して加熱後の検体溶液の臭い、及び検体の臭いのいずれでも、僅かに生臭さの抑制を認めた。
(注3)他のパネラーは、製剤例(14−2)に比して加熱後の検体溶液の臭い、及び検体の臭いのいずれでも顕著な生臭さの抑制を認めた。
以上より、表33に記載の各製剤の冷凍いか(ボイルいか)に対する風味品質改良効果は、本発明実施例3製剤(T)>本発明実施例3製剤(R)≫比較例製剤(5)>比較例製剤(2)≒比較例製剤(1)の順に得られることがわかった。
頭、殻、及び背ワタを除去したエビ(ブラックタイガー)を合わせて約50gを1検体とした。調製後6ヶ月の表35に記載の製剤と食塩を同表記載の割合(重量%)にて水100gに混合・溶解した。該溶液を沸騰させ、検体を投入した後、6分間加熱した。冷却後、各検体溶液部、及びエビの固体部(身)の夫々の臭いを熟練したパネラー(10名)が比較、評価した。結果を表36に掲げる。
(注2)他のパネラーは、製剤例(15−1)に比してエビの生臭さの抑制を認めた。
(注3)他のパネラーは、エビの生臭さを認めなかった。
以上より、表35各製剤のボイルエビに対する風味品質改良効果は、本発明実施例3製剤(U)>本発明実施例3製剤(R)≫比較例製剤(6)>比較例製剤(2)≒ 比較例製剤(1)の順に得られることがわかった。
表37(レシピ)に示す材料を用いて、いかの塩辛を調理した。
いかを胴体と内臓と足とに分ける。胴体と足は洗って吸盤をこすって落とし、キッチンペーパーに包んでそのまま冷蔵庫で一晩おいた後、5mm幅にカットする(I)。内臓は塩32gにまぶしてタッパーに入れ、冷蔵庫で一晩おいた後、塩を払って端を切り落とし、中身を搾り出す(II)。(I)及び(II)300gを酒15gと和えた後、4℃で一晩熟成した。
上記いかの塩辛と、表38に示す調製後6ヶ月の製剤を混合して、いかの塩辛の風味に対するこれら製剤の効果を下記要領にて比較した。
いかの塩辛20gを検体として、これをポリ袋に小分けした。検体に対して、調製後6ヶ月の表38の製剤を同表記載の割合(重量%)にて混合した。4℃にて3日間保存した該検体を熟練したパネラー(10名)が比較・評価した。結果を表39に掲げる。
(注1)他のパネラーは、製剤例(16−1)に比して抑制を認めた。
(注2)他のパネラーは、製剤例(16−1)に比していかの生臭さの抑制を認めた。
(注3)他のパネラーは、いかの生臭さを認めなかった。
以上より、表38各製剤のいかの塩辛に対する風味品質改良効果は、本発明実施例3の製剤(V)>本発明実施例3の製剤(R)≫比較例製剤(7)>比較例製剤(2)≒比較例製剤(1)の順に得られることがわかった。
Claims (3)
- 新鮮なフィチン酸の50%以下の水溶液を酢酸ナトリウム粉末に噴霧又は少量ずつ添加し、酢酸ナトリウムが粉末状態を保持した状態で撹拌して、フィチン酸を酢酸ナトリウムに密着した状態で存在させるフィチン酸の変色防止法。
- 撹拌を0〜80℃で行う請求項1記載のフィチン酸の変色防止法。
- 酢酸ナトリウムに対するフィチン酸の使用量が、0.003〜3.0重量倍である請求項1又は2記載のフィチン酸の変色防止法。
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